蒼き鋼のアルペジオ Seeker's route 作:シオヒガリ
戦闘描写とかもまだまだなので、もしかしたら見にくいかもしれません。
「で、相手さんは俺らに気付いてるのか?まぁ、十中八九バレてんだろうけど」
「予測航路から考えた、間違いなく見つかってるわ」
内心に生じた恐怖という感情を、コアを直接弄ることで黙らせる。
「十秒後に音響魚雷発射。数は三、三方向にバラ撒け」
「了解、音響魚雷装填」
私が艦長の命令を復唱すれば、呼応するかのように艦内から魚雷を装填する鈍い音が響いて来た。
人類の艦ならば、複数の人手が必要な作業であっても、霧の艦ならば意志一つで済む。
「起爆と同時に潜行、機関も止めて無音航行」
「デコイは?」
「ここでバカ正直に出しても、カコは乗ってこないだろ。少なくとも、カコはな」
「それもそうね」
口にして思ったけど、確かに今のカコにただのアクティブデコイは通じないでしょうね。
こんなあからさまなタイミングで出されたデコイなんて、偽物ですって言うようなものだし。
まぁ……
「――と、相手さんに読ませてそのまま進め」
その思考の裏を付く訳だけど。
「デコイ一基を射出、その後はさっきの通り」
「デコイ発射、テクスチャ展張」
「本艦はそのままカコに接近、範囲に入り次第雷撃だ」
「相変わらず無茶な作戦立てるわね」
「今は
「ご尤も」
「砲撃もするなよ」
「分かってる」
アクティブデコイは、本物と全く同じ姿をした動く囮だ。
意志に従って動く為、その操作の自由度はかなり高い。
……あくまで演算能力の中に限るけど。
「疑惑があるならばともかく、あからさまな偽物に弾は使わない」
「兵装の出し惜しみをする霧なんて珍しいけどね」
「そうだな。ま、今はそれが嬉しい!」
さっきまでの底冷えするものとは違う、快活な笑いを艦長が浮かべる。
機関出力をコントロールしながら、カコの動きを確認。……変ね、動きが見えない。
「デコイのコースはいつも通り?」
「いや、微妙に変えろ。向こうも学習してるんだ、そっちが偽物だってバレる」
「どんな風に?」
「端から横っ腹を狙いに行く感じに。短期決戦を狙ってるって思わせろ」
「短期決戦狙ってるのは変わりないけども」
「目的が違うさ」
指示通りにデコイを動かしつつ、カコに向け艦を進ませる。
……まだ動きが見えない?おかしい、これは…?何か嫌な予感が……でも、とりあえずはこのままかしら。
「そろそろか。一番に侵蝕魚雷、狙いは後部スラスター」
「一番に装填、照準よし」
「なるべく武器庫は避けてくれよ。
「言われなくとも」
カコの艦体後部にあるスラスターに照準を合わせ、艦長に目を向ける。
彼はニヤリと笑いながら、武器庫は避けるように指示。それに対し私は頷いて答えた。
そして、必殺の一撃を放とうとしたまさにその時―――
「侵蝕魚雷、発―――待て、回避ッ!」
「え!?面舵ッ!」
「クソッ、嵌められたか!」
――カコの後部第三主砲が火を吹き、逃げ場を塞ぐように数多ものミサイルが夜空へと飛び立った。
「チッ、機関最大!迎撃は可能な範囲で、回避を優先しろ!」
「わかっ、た!」
「余裕があるならデコイも使え!出し惜しみはいらない!」
「余裕はないわね!」
次々と艦をターンさせながら、ミサイルの雨を潜り抜けていると、何かに気付いたらしい艦長が、顎に手を当てながら目を細めた。
「主砲と副砲が動いている……このままだと追い込まれるな」
「なんですって!?」
慌ててカメラの倍率を上げ、カコの艦体を表示……本当に方向変わってる……
砲塔の回転方向及び、ミサイルの退避路から逆算すると……
「錨を降ろして急制動!前方のミサイルが海に飛び込んだらバックしろ!」
「
「
ガラガラと音を立てながら錨が水中へと投下されていき、錨が海底へと到達した瞬間。
「対ショック体勢!カッコ俺だけカッコ閉じ!」
ガクンと艦が強く揺れ、慣性の法則に従い、前へ前へと進もうとしていた艦体が大きく回頭する。
私を追尾していたミサイル郡の多くは、突然のドリフトじみた回避に対応できず、ミサイル同士でぶつかり合って夜の闇の中に小さな華を咲かせる。
でも、やっぱり相手が相手な以上、全部を避け切れるという訳でもないというか……
「クラインフィールド展開」
「グッ。何発くらい当たった?」
「十は行ってないけど、五は超えたわね」
「侵蝕魚雷か侵蝕弾頭が飛んでこないとは限らないからな、気を引き締めろよ」
「言ってる側からタナトニウム反応ありよ」
「フラグかよ、迎撃しろ」
「フラグ?……あぁ、あれね」
全速でバックしながらとなると、高速で接近する魚雷を迎撃するというのは、難しいのかもしれない。
……この船が霧に属する艦艇でなければ、だけど。
「照準合わせ、第二砲塔発射」
砲塔からレーザーの光が放たれ、寸分の狂いなく魚雷を撃ち抜く。
若干の強さの赤さを持つピンク色に輝く、球体状のエネルギーの塊が海中に炸裂し、周囲の海水を丸ごと消滅させる。
海水が消え去ることで生じた穴は、周りから海水が流れ込んだことで元に戻ったが、私の艦長はまるで嫌な事を思い出したとでも言うかのように、眉間に皺を寄せていた。
「いつ見てもおっそろしい兵器だな」
「艦長あれ食らったらしいものね」
「あんな任務二度と御免だ」
「一発だけでよかったわね」
「……本当にそう思うか?」
「……」
「だよな」
どこからどう考えても敢えての一発だけです本当にありがとうございました。
「それにしても、よく主砲と副砲が動いてるって分かったわね」
「話の変え方があからさまだな。まぁいい、見えたからな」
「こんな夜中に?」
「星――の光の反射だ」
「光の反射」
「相手はあのキテレツ重巡洋艦だぞ?警戒して損はないだろ」
「どうしよう。全く否定できない」
「正直、火力だけの大戦艦とかより奴の方が脅威だと思――何?」
その時、それまで大きな行動を見せなかったカコが遂に動いた。
……動いたのは良いんだけども。
「艦首下部スラスターを?何をするつもりだ……?」
「エネルギー放出率的に、後部スラスターも点火してるけど……」
カコは突然艦首下部にあるスラスターの出力を全開にしたかと思えば、後部スラスターも利用し艦体を持ち上げ――
「飛んだ!?」
「ええ!?」
「からの急速潜航だと!?」
「嘘でしょ!?何考えてんのよあの重巡!?」
「俺達も潜水艦の真似みたいなことしたりするとはいえ……あれは、あれはおかしいだろ……」
――後部スラスターの出力を全開にすることで空に踊り出て、その勢いを利用して海中へと高速で突っ込んだ。
「まさか普段の逆になるとはな……」
「結構マズイ気が……どうするの?」
「
「分かったわ!」
私から放たれた
「クソッ、ソナー手がいないのが痛いな」
「性能で完全に負けてる分、戦術で補って来たのに……」
「慢心してた、ってことなんだろうなぁ」
相手が潜水艦ならば、
軽巡洋艦である私よりも、サイズも機関出力も、砲の威力その他諸々etcが上の格上である。
相手に潜られた以上、基本的にソナー以外で感知する方法はないし――ってちょっと、これは……
「艦長」
「……とりあえず端的に」
「
「よし、カコの真似するぞ」
「え?」
その時、私のコアの演算が完全に停止した。
カコの時には、まだ”驚愕"という感情をエミュレートする余裕があった。
しかし、今回は違う。
思わず理解という名の解析行動を止めてしまうほどにの衝撃だった。
「艦首スラスター全開、後部スラスターも出力上昇だ。奴さんの魚雷の位置には注意しろ」
「了解」
結果として、私は
これまでは二人しかいなかったこともあって、私の意思も介在していた訳だけど、もうこの際本当の意味での彼の
「まだ本艦は無防備だ。クラインフィールドの展開位置を、なるべく一方向に集中させろ。一極集中で防御力を上げるぞ」
「機関出力上昇。クラインフィールド展開位置を一方向に集中」
「一発防げたらそれでいい。二発以降はもう諦めろ」
先程のカコと全く同じ挙動を取りながら、準備を進めて行くと、焦ったのかカコの主砲が火を吹いた。
流石に主砲に関しては迎撃も何もないから、クラインフィールドで防ぎつつ、艦底部VLSからミサイルを発射。
「飛ぶわよ、衝撃に備えて」
「ついでにソナー、センサー、外部カメラのデータをこっちに寄越せ!」
「分かったわ」
後部スラスターの出力に物言わせて海面を蹴り飛ばし、空へと舞い上がる私の艦体。
ちょうど海面を離れたすぐ後に、無数の魚雷群に紛れた侵蝕魚雷が起爆した。
チラリと艦長に横目に入れると、艦長は目前に表示されたウィンドウを睨み付けるように見ており、そちらに集中しているようだった。
私が艦長に目を向けていた間にも、艦は海面に向けて突き進んでおり、今まさに艦首が海中へと没した。
「あ」
そうだ。忘れてたけど、クラインフィールド艦底部に集中させてたんだった。
戻しとかないとマズイわね。……これでよしっと。
「デコイのシグナルは掴めるな?」
「問題ないわ」
「ならデコイを目標に音響魚雷、続けて通常魚雷だ」
「一番に音響魚雷、二番から4番に通常魚雷装填」
「……なんでデコイに?って思っただろ」
「え?えぇ」
「勘だ」
「は?」
「こうすれば
「は??」
「最も、後が大変だがな」
「は???」
は?
艦長に対して失礼だけど……本当に何言ってんのかしら?
命令だから魚雷も撃つけど、これだけで終わる?何言ってんの?
魚雷で片を付けるのならせめて侵蝕―――え?
「て、敵艦ロスト……」
「やっぱりか」
「やっぱりって、どういう……?」
「普段カコは俺の作戦を真似たり、利用して来たりするだろ?」
「それは、そうね」
逆には初見には弱いみたいだけど……
「なら逆に考えるが、奴がこれまで完全に独自の行動を取ってきたことがあったか?」
独自の行動?
記憶メモリーを参照………無いわね。
「無かっただろ?」
「無かったわ」
「あいつはこれまで、霧としてのセオリーか、これまで沈めた人類艦の戦術、俺の作戦の模範しかして来なかった」
一つ頷く。
「が、今回はあんな滅茶苦茶な……人類じゃ絶対想像もできないような行動を取ってきた。誰が予想できるかよ……あんなの霧でも奴くらいだよな?」
……小声で零した何かは今は考えないでおく。
もし艦長の作戦が戦術ネットワークに挙げられたら、今でもボコボコにされてる人類が更に可哀想なことに……
「つまり、今回のは自分の成長を測る意味を込めての、威力偵察ってとこだな」
「だからこそ、普段の俺達が決めにかかる時の音響、通常、侵蝕の三段階コンボを使った時点で、離脱を始めたってことだ。実験で沈められてちゃ、世話ないからな」
「……」
ポカンと開いた口を閉じれないでいる私に、長々と話しきった艦長。
苦々しげな顔をしている以上、頭の中では今私に対して伝えたソレよりも、遥かに高度な考えが駆け巡っているのだろうが……正直そんなことはどうでもよかった。
お世辞にも演算性能が高いとは言えない私からすれば、こんな意味不明な頭脳戦を繰り広げた艦長とカコが、とにかく気持ち悪かったのである。
中々話が進みません。