エデンジムのジムリーダー:オリバーに勝利し、2個目のジムバッジを手に入れたリゼは"エデン警備隊のレインとバトルしてほしい"とオリバーにお願いされ、詳しい話を聞くためにポケモンセンターのラウンジでアンジュと共にオリバーを待っていた
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「遅くなってすみません、リゼさん、アンジュさん」
「いえ、大丈夫です。どうぞこちらに」
待ち合わせ場所に来たオリバーをリゼ達は席へと案内し、早速本題に入る
「それで、レインさんとバトルしてほしいというのはどういうことなんですか?」
「そうですね…それにはまず、レイン君について話さないといけません。少し長いですが、よろしいでしょうか?」
リゼは頷いて了承する
「今から10年ほど前のことになります。当時の僕は研究者のレオス君と警察官を目指していたローレン君、アクシア君と共にこの地方を旅していました」
と、オリバーは目を瞑って昔のことを思い出す
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レイン君と出会ったのは、まだ街としての発展を遂げていないエデンシティに訪れた時でした
「金目の物は置いていけ!そうすれば見逃してやる!」
当時のレイン君はエデンシティに住む孤児でした
周りの人達と同じように、そこに訪れた人々から物を奪い、生きる糧にする。そんな日々を繰り返していました
事態はバトルに発展し、ローレン君とアクシア君の2人と相討ちになりました
バトルに敗れ、彼女は逃げようとしましたが、疲労が溜まっていたらしく、その場で倒れてしまったんです
僕達は彼女を連れて、近くのポケモンセンターに連れて行きました
その時にお世話になったジョーイさんからエデンシティのことを聞いたんです
エデンシティは、その昔そこを根城としていた人達の子孫と路頭に迷った人達がずっと住んでいる場所
そのために治安が悪く、ずっと避けられ続け、街が発展することはなく、人々も貧しいままだった
その話を聞いて、あの街で生きてきたレイン君を見て…僕は思ったんです。なんとかしてあげたいと
当時、僕は若くして教授になっていましたが、それだけでは大きな支援を得られませんでした
だから僕は強い発言力を得るためにジムリーダーを目指しました
ジムリーダーの資格を得てからは各街の支援を受けて、レオス君達と一緒にエデンシティを少しずつ発展させました
しかし、街が発展してもエデンシティの治安が悪いまま。そこで、ローレン君とアクシア君がジュンサーさん達の協力を得て警備隊を設立し、その時にレイン君を引き入れました
始めは戸惑っていましたが、彼女は根が優しい人間だったこともあり、そのバトルの腕を活かして警備隊として立派に活躍し、この街の治安を守る大きな存在となりました
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「そんなことが…」
オリバーの話を聞いたアンジュは予想以上の壮大さに声を漏らす
「でも、そこからどういった経緯で私とレインさんにバトルを…?」
「これは僕とレオス君達3人の余計なお世話なのかもしれませんが…僕達はレインに旅をさせてあげたいんです」
「旅を…?」
「レイン君はこの街から出たことがありません。警備隊に所属してからもずっと…」
オリバーは慈しむような眼差しで話を続ける
「レイン君はここへ来た人達から旅の話や外の話をよく聞くんです。きっと、興味があるんだと思います。だから1度聞いてみたんです、"旅に出るつもりはないか?"と。しかし、彼女は"この街が好きだから"と言いました。おそらく、優しい彼女のことなので僕達に恩を感じて、それが足枷になっているんだと思います」
一呼吸置いて、オリバーは真剣な眼差しで続ける
「ですが、僕は彼女がこのまま外の世界を知らずに生きるのは勿体ないと思うんです…!多くの人とポケモンに出逢い、様々な経験を得て、彼女の人生をより豊かなものにしてあげたいんです…!」
「…だからオリバーさんに勝ったリゼとバトルすれば、レインさんの旅に出たい気持ちを奮起させられるかもしれない…そういうことですね?」
アンジュの推測に、オリバーは頷いて肯定する
「リゼさん、どうか頼まれてはくれないでしょうか?レイン君が興味を示した君とバトルすれば、彼女の気持ちを後押し出来ると思うんです!」
オリバーは頭を下げて、改めてリゼにお願いする
「…分かりました!そのお願い、引き受けます!」
オリバーの願いを、リゼは快く引き受ける
「…ありがとうございます!」
「いえ、私もレインさんとはバトルしてみたいって思ってたんです!」
「では、レイン君には明日ジムを閉める頃に来るよう連絡するので、その時に来てもらってもいいでしょうか?」
「分かりました!レインさんのためにも、全力を尽くします!」
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「はあ〜!なるほどねぇ〜!そういうことですか〜!」
「ヴィンさん!何してるの?」
時刻は夜…自身の研究所のある一室で作業を行っていたレオスの下にレインがやってくる
「おや、レイン君じゃないですか〜!私は見ての通り研究中ですよ〜!昨日の探索でかなりの進展がありましたからね〜!」
「ふーん、そうなんだ」
レインがそう返答した直後、自身のポケギアが鳴り響く
「もしもし、先生?…うん、その時間は空いてるよ。…リゼさんが私とバトル!?…うん、分かった!じゃあ、明日の夕方だね!バイバーイ!」
「オリバー君ですか?」
「うん!リゼさんが私とバトルしたいから明日ジムに来てほしいって!」
「リゼさん…?ああ〜!あのポッタイシのトレーナーですね?」
「そうだよ!じゃあ、私今日はもう帰るね!リゼさんとのバトルのためにポケモン達を休ませないと!ヴィンさんも研究は程々にして、ちゃんと休むんだぞー!」
レインはそう言いながら走り去る
振り向きはしなかったが、それを静かに見送ってからレオスは呟く
「…オリバー君も必死ですねぇ。まあ、その作戦が成功するにこしたことはないですけど」
そう言って、レオスは研究作業を再開する
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「見つからないね、あの集団」
「ああ、余程逃げ隠れすることが得意みたいだな」
エデンシティ中央区…ローレンとアクシアは夜の街中を歩いていた
「あの洞窟はトンネルから奥に行けば行くほど生息するポケモンも手強くなるが、あの連中がそれを凌げるほど腕が立つとは思えねぇな」
「やっぱり、もう洞窟を出てここから離れたのかな?」
「もしくは、外周区に潜んでいるか、だな」
「そうだね、その警戒をするにこしたことはない。なら、明日から外周区を捜索しようか」
「ああ、あそこに住むチンピラ達にも聞き込みするぞ」
トンネル騒動に関する今後の方針を決めるローレンとアクシア
その2人を尾行し、会話を密かに聞いていたある女性はそこで人混みの中に紛れ、姿を消す
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「え…!?もう僕達の居場所バレちゃったの!?」
「バレてはないけど、見つかるのは時間の問題になるよ」
ローレン達の会話を聞いていた怪しい集団の1人である女性は、エデンシティ外周区の仮拠点に戻った後、ある少女にそのことを話す
「そっか〜…!なら、早く動いた方がいいかな?」
「そうだね、人員を本隊と囮の2つに分けよう!」
警備隊に見つかる前に、2人は目的達成のための計画を企てる
*
「レインさん、オリバーさん、お待たせしました!」
翌日の夕頃…リゼとアンジュはオリバーとの約束通り、ジムへと訪れた
「いえ、時間ぴったりです」
「リゼさん、今日はバトルのお誘いありがとう!急でビックリしたけど、私今凄くワクワクしてる!」
「私も、レインさんとどんなバトルができるのか楽しみです!」
「バトルする前から熱いね〜」
「そうですね。では、早速バトルフィールドへ行きましょう」
オリバーに促され、一同はジムの外にあるバトルフィールドへと移動する
オリバーが審判台に立ち、アンジュは傍に設けられたベンチに座り、リゼとレインはバトルフィールドの定位置に立って互いに向かい合う
「それでは、これよりリゼさんとレイン君のポケモンバトルを始めます!使用ポケモンは3体!1対1のバトルを3回行い、2勝した方の勝利とする!では、お互い最初のポケモンを!」
オリバーの指示を受け、リゼとレインはボールを投げる
「お願い!バタフリー!」
「いけ!ウデッポウ!」
リゼはバタフリー、レインは"みずでっぽうポケモン":ウデッポウを繰り出す
「それでは、バトル始め!」
「バタフリー!"かぜおこし"!」
戦闘開始の宣言とともに、リゼは先手を取り、バタフリーの"かぜおこし"がウデッポウに迫る
「ウデッポウ!"アクアジェット"で避けつつ攻撃!」
ウデッポウは"アクアジェット"を発動し、その勢いで真上へと飛んで"かぜおこし"を避け、そのままバタフリーに迫る
「バタフリー!"しびれごな"!」
「ウデッポウ!"みずでっぽう"で弾いて!」
リゼは相手の攻撃を阻止するためにバタフリーに"しびれごな"を指示するが、ウデッポウは"アクアジェット"をしながら"みずでっぽう"を放ち、撒かれた"しびれごな"を弾き飛ばす
そして、そのままウデッポウは"アクアジェット"をバタフリーに炸裂させる
「上手い…!ウデッポウの素早さの低さを"アクアジェット"で補うだけじゃなく、その技を繰り出している最中でも更に繰り出せる技を備えている…!」
「バトルの腕前なら、レイン君はこの街の誰よりも強いです。僕達と出逢う前から、彼女はバトルの日々を繰り返していた。だからどう工夫すればバトルを有利にできるか、その能力が彼女は頭一つ抜きん出ている」
レインのバトルに、アンジュとオリバーがそれぞれそう口にする
「バタフリー!まだいける!?」
「フリィ…!」
「よし!なら今度は"ねんりき"!」
「ウデッポウ!狙いを定めて"うちおとす"!」
バタフリーは"ねんりき"でウデッポウを空中へと浮かばせてから地面に叩きつけようとするが、その前にウデッポウは冷静に狙いを定め、バタフリーに"うちおとす"を炸裂させる
「フリィ〜…!」
「バタフリー…!」
「トドメだよ、ウデッポウ!"みずのはどう"!」
"うちおとす"を受けて墜落するバタフリーに、ウデッポウは続けて"みずのはどう"を炸裂させる
「フ、フリィ〜…」
「バタフリー、戦闘不能!ウデッポウの勝ち!」
「よし!よくやったな!ウデッポウ!」
「バタフリー、お疲れ様。よく頑張ったね」
1戦目が終わり、リゼとレインはそれぞれ奮闘したポケモン達を労う
「レインさん…やっぱり強い!でも、だからこそ勝ちたい…!」
1戦目は一撃もダメージを与えることなく負けたリゼだが、レインの強さに闘志はむしろ高まっていく
「では、2体目のポケモンを!」
「お願い!イーブイ!」
「いけ!ヤドン!」
2戦目…リゼはイーブイ、レインは"まぬけポケモン":ヤドンを繰り出す
すると、レインのヤドンにリゼは目を丸くする
「あのヤドン…頭と尻尾の色が変…!」
本来であれば、ヤドンの頭はピンク、尻尾の先は白色だが、レインのヤドンはその2箇所が黄色になっていた
「リゼ!あのヤドンはガラル地方でよく見られるリージョンフォームの個体だよ!油断は禁物だからね!」
「ありがとう!アンジュ!」
アンジュの助言を受け、リゼは気を引き締める
「では、バトル始め!」
「今度はこっちからいくよ!ヤドン!"ようかいえき"!」
オリバーのバトル開始の宣言とともに、今度はレインが先手を取り、ヤドンが"ようかいえき"を放つ
「イーブイ!"でんこうせっか"!」
イーブイは"でんこうせっか"の素早さで"ようかいえき"を躱しつつ、ヤドンへと攻撃する
「ヤドン!受け止めて!」
だが、レインの指示でヤドンはイーブイの"でんこうせっか"を正面から難なく受け止める
「正面からじゃビクともしない…!なら、イーブイ!"でんこうせっか"で撹乱!」
リゼの指示で、イーブイは"でんこうせっか"の素早さでヤドンの周りを駆け回る
「後ろに回って"かみつく"!」
そして、ヤドンの背後を取った瞬間にイーブイは尻尾目掛けて"かみつく"を炸裂させる
だが…
「イ、イブィ〜〜…!!」
イーブイは口を真っ赤にさせ、悶えるようにその場で転がり回る
「イーブイ…!?」
「ガラルのヤドンの尻尾は通常のヤドンと違って辛いんだよ!"かみつく"で尻尾に攻撃したのは失敗だったね!ヤドン!"かなしばり"!」
レインはイーブイが悶える理由をリゼに説明しつつ、ヤドンの"かなしばり"でイーブイの"かみつく"を封じる
「しまった…!」
「ヤドン!続けて"ねんりき"!」
ヤドンの弱点をつける"かみつく"を封じられて焦るリゼに、レインは容赦なく追撃を行う
ヤドンの"ねんりき"で宙に浮かせられたイーブイは地面へと叩きつけられる
「イーブイ…!大丈夫…!?」
「イブ…!」
イーブイはすぐに起き上がり、まだやれると意思を示す
「"かみつく"が使えないなら…!イーブイ!"アイアンテール"!」
ヤドンに対して"かみつく"以外で大きくダメージを与えられる技として、リゼは"アイアンテール"の指示を出す
「ヤドン!"まもる"!」
だが、イーブイの"アイアンテール"は絶対防御の技"まもる"によって防がれてしまう
「"かなしばり"と"まもる"で相手を自由に動けなくして、隙を突いて攻撃する…戦術もしっかりしてる…!」
先程のウデッポウのように技の活かし方や組み合わせだけでなく、戦術もしっかりと組み上げているレインのバトルセンスに、アンジュは驚嘆の声を漏らす
「畳み掛けるよ!ヤドン!"ねんりき"!」
「させない!イーブイ!"すなかけ"!」
再びレインが攻撃を仕掛けるが、イーブイの"すなかけ"により、目に砂が入ったヤドンは目を瞑り、"ねんりき"の発動を中断させられる
「"ねんりき"や"サイコキネシス"等の相手の姿が見えていなければ攻撃出来ない技に対して、その視界を奪うのはいい判断です」
リゼの対応にオリバーは感心の言葉を述べる
「イーブイ!"アイアンテール"!」
「ヤドン!"まもる"!」
リゼはヤドンの視界を奪ったところで攻撃に転じるが、それでも防御が可能な"まもる"によってイーブイの"アイアンテール"はまたしても防がれる
「イーブイ!連続で"アイアンテール"!」
だが、リゼの指示でイーブイが"アイアンテール"を何度も繰り出すと、数発後にヤドンの"まもる"が突如として消え、技が炸裂してヤドンを大きく退け反らせる
それと同時に、イーブイにかけられた"かなしばり"が解かれる
「"かなしばり"が解けた…!イーブイ!トドメの"かみつく"!」
ヤドンの頭にイーブイの"かみつく"が炸裂し、ヤドンはその場に倒れ込む
「ヤァ〜…」
「ヤドン、戦闘不能!イーブイの勝ち!」
「やったぁ…!よく頑張ったね!イーブイ!」
「イブィ!」
レインから1勝を勝ち取り、リゼはイーブイと喜び合う
「"まもる"は連続して出すと失敗する…そこを突いてくるなんて、やっぱりリゼさんは凄いですね!」
「いえ、レインさんの戦術には私も驚きました!次が最後ですけど、負けませんよ…!」
「私だって…!」
リゼとレインは互いを讃え合い、最後となる3戦目に胸を高鳴らせる
「では、両者次のポケモン…!?」
オリバーが次のポケモンを出すように指示を出した瞬間、街の方から爆発の音が響き渡る
「な、なに…!?」
全員は爆発の音がした街の方に目を向けると、そこから煙が上がっているのが見えた
それを見て、レインとオリバーが目を見開く
「あの方角…ヴィンさんの研究所があるところだ…!私、行ってくる…!」
そう言って、レインはすぐに駆け出した
「アンジュ!私達も行くよ!」
「いいけど無茶はしないでよ…!」
「僕も行きます!頼みます!アヤシシ!」
オリバーのアヤシシに乗り、リゼ達はレインの後を追う
突如として、エデンシティを襲った爆発…!
はたして、狙われたレオスを助けに走るレインとリゼ達に待ち受けるものとは…!
リゼ・ヘルエスタ
手持ち:ポッタイシ、イーブイ、バタフリー
サイホーン
アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ
レイン・パターソン
手持ち:インテレオン、ウデッポウ、ヤドン(ガラル)