にじさんじ×ポケットモンスター   作:Mr.ソロ

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第22話「タッグバトル大会決勝!リゼ&笹木vsイブラヒム&フレン!」

 

「葛葉と兄やん、負けちゃった…」

 

「惜しかったんやけどね…」

 

 

セミファイナル第2試合が終えた頃、出場者の控室で一部始終を見届けたひまわり達は葛葉と叶の敗北を残念がる

 

 

「あのイブラヒムって奴…強いな…!」

 

「あれが決勝戦の相手…!」

 

 

そして、同じく試合を見届けたリゼと笹木は決勝戦の相手となるイブラヒムとフレンのタッグの強さを目にして緊張が増す

 

 

「あ…!帰ってきたよ!」

 

 

そんななか、試合を終えた葛葉と叶が控室に戻り、ひまわり達は2人の下へ駆け寄る

 

 

「葛葉…!兄やん…!」

 

「いやぁ、負けちゃったよ」

 

「でも凄いバトルでした…。葛葉さんとリザードの最後も…葛葉さん…?」

 

「すんません、今はちょっと…。叶、行くぞ」

 

「え…?い、行くって何処に…!?」

 

 

戻って来て早々に控室から出て行こうとする葛葉に凛月が問いかける

 

 

「アイツとバトルする前に少しでも鍛えておきたいんで…。それじゃあ、先に」

 

「そういうわけだからごめんね、みんな。あとリゼさん、決勝戦は観戦出来ないけど、優勝応援してるから。それじゃあ、また後で」

 

 

そう言うと、叶は早々に控室を後にした葛葉を追って行った

 

 

「葛葉さん…どうしたんだろう…?」

 

「多分…負けが悔しくて自分に苛立ってるんやと思う」

 

 

葛葉の様子が気になるリゼに、ひまわりは心配そうな表情でそう答える

 

 

「葛葉な、初めてバトルで負けた日もあんな感じで、1度負けた相手に勝つまでひたすら自分とポケモンを追い込むねん。それからはママとのバトルにも負けたら時々ああなってた」

 

「そうなんだ…。あれ?でも私とのバトルで負けた時はそんな感じはなかったような…」

 

「リゼちゃんとのバトルは純粋に楽しかったんだと思う。葛葉がああなるのは気負った時だけだから…」

 

「葛葉さんがジムリーダーの息子として見られるのを嫌うのと関係があるの?」

 

「うん…。何があったかは分からんけど、多分試合前に対戦相手からそういうことを言われたんちゃうかな…?あと、ジムリーダーの息子って立場が葛葉からしたら凄いプレッシャーになってるんやと思う」

 

「ジムリーダーの息子やから、バトルに負けると親も含めて舐められるから…とか?」

 

「まあ、そういう風に思う奴もいるからな…」

 

「ひまはそうでもないけど、葛葉はバトルの才能もあるし、ママみたいな強いトレーナーになりたいって思ってたから…。みんながみんなそうじゃないのは分かってるけど、そういう目で見てくる人全員がそう見えるんだと思う」

 

 

葛葉をよく知る者もそうでない者も、ひまわりの話を聞いて葛葉というトレーナーが抱えている重荷に心を痛める

 

 

「ご、ごめんな、みんな…!葛葉のせいでなんか空気重くなっちゃって…!あんなん本人の問題やし気にせず忘れてもらっていいから…!あはははは…!」

 

 

そんな重たい空気にハッと気付いたひまわりは慌てて誤魔化そうと作り笑いを浮かべる

 

 

「それよりも!次の決勝戦、ひまはリゼちゃんと咲ちゃんを応援するから!絶対優勝してな!」

 

「…そうだな。リゼ、笹木、あいつのことは気になるだろうけど、今は目先の決勝戦に集中しろよ」

 

「でも…」

 

「リゼさん、人を想うその優しさはあなたの美徳だけれど、あなたらしいバトルが出来ずに負けることは多くの人の想いや期待を裏切ることになるわ。だからバトルの間は、バトルのことだけに集中しなさい」

 

 

葛葉のことは気になるが、その気持ちを抱えたまま決勝戦に臨むべきではなく、それが原因で最高のバトルが出来ずに負けることはそれまでの試合で負けた相手、応援してくれる人達の顔に泥を塗ることになる

 

コウと巴にそう言われ、リゼは葛葉を心配する気持ちを1度抑え、気持ちを切り替える

 

 

「…そうだね。私のことを1番のライバルだって言ってくれた葛葉さんに恥じないためにも、絶対優勝する!」

 

「りりむもコウ君と応援してるね〜!」

 

「まあ、俺達に勝ったからには優勝してほしいわな」

 

「うん!頑張ってね!リゼさん、笹木さん!」

 

 

意気込むリゼにその場のみんなからエールが送られる

 

 

「みんな、ありがとう!頑張ろうね、笹木さん!」

 

「当たり前や!ウチとリゼが組んだら最強だってことを教えてやる!それに決勝戦はバチンキーじゃなくて、ウチの新兵器でバトルするからな!優勝は確実よ!」

 

「新兵器…?一体どんなポケモンなの…?」

 

「それはな〜…!」

 

 

 

 

『さあ、タッグバトル大会もいよいよ大詰め…!予選、セミファイナルを勝ち抜いた2組のタッグがその頂点を争います…!』

 

 

真っ暗闇な空間のなか、スポットライトが当てられたグウェルが決勝戦の開始を告げる

 

 

『1組目…!ポケモントレーナーになってその月日は未だ浅いものの、見事な連携…そして意外性を以って勝ち上がった注目の新星…リゼ殿&笹木殿ぉぉぉ…っ!』

 

 

グウェルの選手紹介とともにリゼと笹木にスポットライトが当てられ、会場から大きな歓声が沸き上がる

 

 

『2組目…!遥々コーヴァスシティから参加したこのタッグ…。その強さと連携力は今大会随一…!イブラヒム殿&フレン殿ぉぉぉ…っ!』

 

 

そして、リゼ達と同様に選手紹介を受けたイブラヒム達にもスポットライトが当てられ、改めて大きな歓声が沸き上がる

 

選手紹介が終わり、会場全体の照明が点いたところで審判からの説明が行われる

 

 

「それではこれより、リゼ&笹木とイブラヒム&フレンのタッグバトル決勝戦を始めます!使用ポケモンは1人1体!どちらかのポケモン全てを戦闘不能にした方の勝利とします!それでは、両者ポケモンを!」

 

「お願い!ポッタイシ!」

 

「任せたで!ガラガラ!」

 

「いけ!コモルー!」

 

「頑張って!パルスワン!」

 

 

審判に指示され、リゼはポッタイシ、笹木は"ほねずきポケモン":ガラガラ、イブラヒムは"にんたいポケモン":コモルー、フレンは"いぬポケモン":パルスワンを繰り出す

 

そして、ある1匹のポケモンに場が騒然とし始める

 

 

「ねぇ、イブちゃん…!あのガラガラおかしくない…!?」

 

 

笹木の繰り出したポケモン:ガラガラが異様な姿をしていたのだ

 

 

「あのガラガラは…!」

 

『これは珍しい…!笹木殿が繰り出したガラガラは通常の個体とは異なるアローラの姿のガラガラです…!』

 

 

イブラヒムがその正体に気付くと同時、グウェルの実況が響き渡る

 

アローラの姿のガラガラは、アローラ地方の環境の影響を受けたカラカラが進化する特別な姿であり、タイプも通常のそれとは異なりほのお・ゴーストタイプに変化する

 

 

「これがアローラの姿…私も初めて見た…!でも、なんでアローラ地方じゃないここでこのガラガラが…?」

 

「それはな…」

 

「両者、準備はよろしいですか?」

 

 

何故アローラのガラガラを持っているのかと問うリゼに笹木が答えようとしたところで審判に試合開始前の確認をされ、リゼ達は話を中断して気持ちを切り替える

 

 

「それでは、バトル始め!」

 

「コモルー!"りゅうのまい"!」

 

 

試合開始…まずはコモルーが"りゅうのまい"で攻撃力と素早さを高める

 

 

「積み技は厄介やな…!面倒なことになる前に倒し切るぞ、リゼ!ガラガラ!"シャドーボーン"!」

 

「分かった!ポッタイシ!"メタルクロー"!」

 

 

能力を上げる技を持つコモルーを先に倒そうとリゼと笹木は攻撃の指示を出し、ポッタイシとガラガラはコモルーへと迫る

 

 

「させない!パルスワン!ポッタイシに"スパーク"!」

 

 

2体同時の攻撃を阻止するべく、フレンの指示でパルスワンがポッタイシ"スパーク"を繰り出して突っ込む

 

だが…

 

 

「ワゥ…ッ!?」

 

 

ポッタイシへと迫る途中で、パルスワンは急に引き寄せられるかのように方向を変え、ガラガラへと突っ込んで行ってしまう

 

 

「パ、パルスワン…!?そっちじゃないよ…!?」

 

 

フレンが叫ぶが、パルスワンは軌道をポッタイシへと修正することなく、"スパーク"をガラガラに炸裂させる

 

 

「ガラァ…!」

 

 

だが、パルスワンの"スパーク"を受けたガラガラの様子は攻撃の苦痛に歪んでおらず、むしろダメージは全く無い様子だった

 

 

「え…?な、なんかよう分からんけど…!ガラガラ!反撃しろ!」

 

 

パルスワンがトレーナーの指示とは違う行動を起こしたこと、何故か攻撃を受けてピンピンしてるガラガラに笹木も困惑するが、売られた喧嘩は買うまでと反撃の指示を出し、ガラガラの"シャドーボーン"をパルスワンに炸裂させる

 

 

「パルスワン…っ!」

 

「フレン!あのガラガラの特性は"ひらいしん"だ!電気技を引き寄せる上にそのダメージや効果を無効化してくる!アイツを倒さない限り、電気技は使っても意味ないぞ!コモルー!"ドラゴンクロー"で迎え撃て!」

 

 

イブラヒムはパルスワンの不可解な行動の理由を簡潔に伝えつつ、コモルーに迫るポッタイシへの迎撃を指示する

 

ポッタイシの"メタルクロー"とコモルーの"ドラゴンクロー"が衝突するが、"りゅうのまい"によって攻撃力を高めたコモルーに軍配が上がり、押し返してポッタイシに"ドラゴンクロー"を炸裂させる

 

 

『パルスワンとポッタイシにそれぞれダメージ…!まずは痛み分けの形となりました…!』

 

「ウチのガラガラの特性:"ひらいしん"なんや…!初めて知った…!」

 

「でも、そのおかげで電気技が封じられてるからこっちには有利な状況だよ!ただ、攻撃力の上がったあのコモルー…!どうにかしないと本当にマズいよ…!」

 

「"りゅうのまい"ってことは技は物理技に固めてるかもしれんし、距離を取ってじわじわダメージ与えるのがええんちゃう?」

 

「それがいいかもしれない…!なら、ポッタイシ!"うずしお"!」

 

 

笹木の意見を聞いたリゼは特殊技かつ拘束による継続ダメージが狙える"うずしお"を指示し、ポッタイシはそれをコモルーへと放つ

 

 

「コモルー!"まもる"!」

 

 

迫る"うずしお"に対し、コモルーは絶対防御の技"まもる"を発動してその身を守る

 

 

「フレン!俺のカバーはいいから、まずはあのガラガラを倒せ!」

 

「OK!パルスワン!"かみつく"!」

 

 

イブラヒムの意見を受けてフレンはパルスワンにガラガラへの攻撃を指示する

 

 

「来るよ…!笹木さん…!」

 

「分かってる!ガラガラ!"シャドーボーン"!」

 

 

迫るパルスワンにガラガラは"シャドーボーン"で迎え撃つ

 

だが、互いの技がぶつかり合うと思った瞬間にパルスワンは素早く横へと飛び退いてガラガラの"シャドーボーン"を躱し、直後に側面から"かみつく"を炸裂させる

 

 

「ガラァ…ッ!」

 

「ガラガラ…!"かえんぐるま"や…!」

 

 

噛み付くパルスワンに"かえんぐるま"での反撃を試みるが、ガラガラがそれを繰り出す前にパルスワンはガラガラから素早く離れて回避する

 

 

「いいよ!パルスワン!速さ勝負に持ち込めば電気技を封じられても勝てる!もう1度"かみつく"!」

 

 

優勢を見せるパルスワンに勢いづくフレンはガラガラへの攻撃を続行させる

 

 

「私がカバーに入る…!ポッタイシ…!」

 

「大丈夫や…!リゼはコモルーを抑えといてくれ…!ガラガラ!受け止めろ…!」

 

 

ガラガラではパルスワンの相手は厳しいと感じ、援護に入ろうとするリゼを笹木は力強くそう言って止める

 

迫るパルスワンに今度は迎撃しようとはせず、ガラガラは防御のタイミングに集中する

 

そして、パルスワンの"かみつく"が繰り出された瞬間、ガラガラは手にしていた骨を以ってその攻撃を受け止める

 

 

「やりますね…!でも、骨を封じられたら反撃出来ないんじゃないですか?」

 

「それはどうかな…!ガラガラ!"ずつき"!」

 

 

ガラガラは武器となる骨を封じられても繰り出せる技…"ずつき"をそれに噛み付くパルスワンの頭部へと炸裂させる

 

硬い頭蓋骨を以ってしたその一撃に、パルスワンは噛み付いていた骨を放し、吹き飛ばされる

 

 

「よし、今なら倒せる!リゼ、同時に攻撃や!ガラガラ!"ほのおのうず"!」

 

「分かった!ポッタイシ!"うずしお"!」

 

 

地に伏すパルスワンにトドメを刺すべく、ポッタイシとガラガラは同時に技を繰り出す

 

 

『これは…!?"うずしお"と"ほのおのうず"が合体して1つの大渦となりました…!なんという迫力…!』

 

 

放たれた"うずしお"と"ほのおのうず"は混ざり合い、炎と水のフュージョンの大きな渦と化してパルスワンへと迫る

 

 

「コモルー!パルスワンに寄れ!"まもる"だ!」

 

 

技が直撃する直前、コモルーはパルスワンへと駆け寄って"まもる"を発動し、渦に呑まれるも自身とパルスワンの身をその攻撃から守る

 

 

「防がれたか…!でも、あの渦の中に囚われてる限り向こうは動けない!渦が消えた瞬間を畳み掛けるぞ!」

 

「うん!ポッタイシ!"メタルクロー"!」

 

「ガラガラ!"シャドーボーン"!」

 

 

大技を"まもる"で防がれるも、相手が身動き出来ないこのチャンスを活かそうと渦の手前まで近付き、ポッタイシとガラガラはいつでも攻撃が出来るように構えて渦が消える瞬間を待つ

 

その最中…ガラガラの足下の地面に突如亀裂が入る

 

 

「いけぇ!パルスワン!"あなをほる"!」

 

 

直後、地中から飛び出してきたパルスワンの"あなをほる"がガラガラに炸裂し、吹き飛ばされたガラガラはその攻撃によって骨を手離してしまう

 

 

「ガラガラ…っ!」

 

「"あなをほる"…っ!それならたしかに、身動きが取れないあの状況でも攻撃が出来る…!」

 

「都合よく覚えてただけだけど、油断したな…!コモルー!"しねんのずつき"!」

 

 

リゼ達が驚くなか、渦の勢いが弱まってきたところでコモルーが"しねんのずつき"を発動させ、渦を突き抜けてリゼ達同様に驚いて余所見をしていたポッタイシに炸裂させる

 

 

「ポッタイシ…っ!」

 

『パルスワンの"あなをほる"を起点に形成が逆転…!ガラガラとポッタイシにダメージです!』

 

「いいよ!パルスワン!これでフィニッシュにしよう!"かみつく"!」

 

 

トドメを刺そうと、パルスワンは瀕死に近い状態の体をなんとか起こそうとするガラガラに攻撃を仕掛ける

 

 

『パルスワンがガラガラに迫る!先程の"あなをほる"で武器である骨を落としてしまったガラガラ…!ここで万事休すか…!」

 

「笹木さん…っ!」

 

「…っ!タダでは負けへん…!そうやろ!ガラガラァ…!"ずつき"ぃ!」

 

 

絶望的な状況…それでも勝負を諦めない笹木の想いにガラガラは最後の力を振り絞って立ち上がる

 

そして、パルスワンが攻撃するタイミングをよく見計らって"かみつく"にずつき"をぶつけ、その衝突によって爆発が引き起こされる

 

数秒後、爆発の煙が晴れたそこにはガラガラとその頭蓋骨にかみついた状態のパルスワンが互いに静止していた

 

直後、2体は体をよろめかせて力無くその場に倒れる

 

 

「ガラガラ、パルスワン、共に戦闘不能!」

 

『相討ちです…!これで残るはポッタイシのコモルーの一騎打ちとなりました…!』

 

 

両者共に最後の1体…バトルも佳境に迫り、グウェルの実況で観客の盛り上がりもヒートアップする

 

 

「ありがとうな、ガラガラ。ゆっくり休んでくれ…。すまん、リゼ…。ウチが下手に攻め込んだから…」

 

「笹木さんのせいじゃないよ。パルスワンが"あなをほる"を覚えるなんて分からなかったんだし。あとは私とポッタイシが頑張るから…!」

 

 

 

「お疲れ様、パルスワン。ごめんね、イブちゃん…」

 

「問題ねぇよ。ポッタイシからの有効打はそうないみたいだし、ダメージも向こうが相当溜まってる。1:1交換でも十分よ」

 

「だよね!私とパルスワン頑張ったもんね!絶対勝ってよ!イブちゃん!」

 

「お前もう少ししおらしさを感じることは出来ねぇの?」

 

 

笹木とフレンが奮闘したそれぞれのポケモンをボールに戻し、1対1となったリゼとイブラヒムは最後のバトルに臨む

 

 

「ポッタイシ!"バブルこうせん"!」

 

「コモルー!"りゅうのまい"!」

 

 

リゼとイブラヒムが同時に指示を出す

 

ポッタイシは"バブルこうせん"を繰り出し、コモルーはダメージ覚悟でその攻撃を受けながらも"りゅうのまい"を発動…更に攻撃力と素早さを高める

 

 

「これで終わりにするぞ…!コモルー!"しねんのずつき"!」

 

 

"りゅうのまい"を2回積んだコモルーが"しねんのずつき"でポッタイシに迫る

 

 

「ポッタイシ!"うずしお"!」

 

 

対するリゼはコモルーの動きを止めようと"うずしお"を指示し、ポッタイシはそれをコモルーへと放つ

 

 

「無駄だ…!いけ!コモルー!」

 

 

だが、イブラヒムは臆することなく迫る"うずしお"にコモルーを突っ込ませる

 

コモルーが"うずしお"にぶつかるが、威力が高まった"しねんのずつき"を以って"うずしお"を突き破り、そのままポッタイシへと炸裂させる

 

 

「ポッタイシ…っ!」

 

 

既に体力も限界のポッタイシに更なるダメージが入り、リゼが叫ぶ

 

ポッタイシはボロボロの体をなんとか起こして立ち上がるが、その様子は息も絶え絶えだった

 

 

「まだ立ち上がるのか…!でも、もうまともに動けないだろうし、次で今度こそ終わりにしてやる…!コモルー!"ドラゴンクロー"!」

 

 

再びコモルーの攻撃が来るが、リゼはすぐに指示を出すことが出来ないでいた

 

 

(どうしよう…!"うずしお"も"バブルこうせん"も強引に突破される…!かといって"メタルクロー"も"つつく"もコモルーの攻撃には歯が立たない…!一先ずここは回避…?でもその後は…?ダメだ…どう考えても勝ち目が…!)

 

 

これまでのバトルでは、たとえ困難に陥っても持ち得る手札から知恵と工夫を活かすことで勝利を手繰りよせてきた

 

だが、目の前の相手はそれを覆すほどの圧倒的な力を有し、今の手札と考え得る限りの知恵と工夫では勝てないと悟ってしまった

 

ポケモントレーナーとなって初めて感じる絶望的な敗北の予感に、リゼの呼吸は荒くなる

 

 

『ポッタイシ…!立ち上がるも反撃も回避も難しいか…!』

 

(ごめん…!笹木さん、みんな…ポッタイシ…!これはもう…!)

 

 

グウェルの実況がダメ押しとなり、リゼは遂に敗北を受け入れ…

 

 

「リゼーーーっ!!ポッタイシはまだ諦めてないぞーーっ!!」

 

 

…ようとした時、観客席から叫ぶアンジュの声にリゼはハッと顔を上げる

 

視線の先…迫るコモルーに身構えるポッタイシの眼にはまだ闘志が宿っており、バトルを諦めてはいなかった

 

その姿を見て、リゼはある人のことを思い出す

 

 

 

 

『リゼ、闘いに負ける時はどんな時だと思う?』

 

『完全にやられ、もう立ち上がれない時…たしかに、そうなれば負けは明白だ』

 

『だが、そうなる前に負けが決まってしまう時がある』

 

『それは勝ちを諦めた時…心が折れてしまった時だ』

 

『リゼ、どんなに頑張っても負けてしまう闘いはある』

 

『だが、勝ちを諦めない限りはどんなに絶望的な状況でも勝ちを引き寄せることが万に一でもある』

 

『そういう経験を繰り返して、人とポケモンは絆を育み、共に生きていくのだ』

 

『よく覚えておくのだぞ、リゼ。絆を育んできたポケモンは必ずお前の想いに応えてくれる。お前が諦めない限り、ポケモンもまた最後まで諦めない』

 

『そして、お前が諦めても、ポケモンが諦めない限りはお前も諦めるな』

 

『トレーナーとポケモンの心が1つになれば、どんな絶望的状況にも希望は見える』

 

『ポケモンバトルとは…そういうものだ』

 

 

 

 

「…ありがとう。アンジュ…それに兄上…!それとごめんね、ポッタイシ…!でも、もう大丈夫…!あなたが諦めない限り、私も諦めない…!だから…一緒に勝とう!」

 

「ポタァァァ…!!」

 

 

リゼの心に再び闘志が宿り、それに呼応してポッタイシが構える

 

口先に冷気が集中してエネルギーとなり、それをビームとしてコモルーへと放つ

 

 

「…っ!?コモルー!"まもる"だ!」

 

 

その技を見たイブラヒムは慌ててコモルーに"まもる"を指示し、すんでのところで間に合い、ダメージを受けずに済む

 

 

「今のは…"れいとうビーム"…!ポッタイシ…!あなた、"れいとうビーム"が使えるようになったのね…!」

 

 

ポッタイシの新たな技の習得にリゼは歓喜の声を上げる

 

 

「ドラゴンタイプに有効な技…!決まれば1発逆転やけど喜んでられへんで、リゼ…!コモルーには"まもる"がある…!効果抜群と言えど守られたら意味がない…!」

 

「甘ぇよ。たしかに、まともに食らえば大ダメージだけど、"しねんのずつき"で正面から行けばダメージを抑えつつ強引に攻撃することは可能なんだぜ…!コモルー!"しねんのずつき"だ!」

 

 

額に集めた思念のエネルギーを一種の盾代わりに攻めればわけはないと言い切るイブラヒムは今度こそ勝負をつけようとコモルーに攻撃の指示を出す

 

 

「くそぉ…っ!せっかくチャンスが見えたと思ったのに…!」

 

「大丈夫だよ、笹木さん!私とポッタイシに任せて!ポッタイシ!地面に向かって"れいとうビーム"!」

 

 

諦める笹木にそう言ってリゼは指示を出し、ポッタイシはコモルーと自身の間の地面全体を"れいとうビーム"で凍らせる

 

 

「コモ…ッ!?」

 

 

そして、凍った地面に足を踏み入れたコモルーは踏ん張りが効かずに滑り転び、技を中断させてしまう

 

 

「コモルー…っ!?」

 

『ポッタイシ…!コモルーに"れいとうビーム"をぶつけるのではなく、フィールドに変化をもたらすことでその攻撃を阻止しました…!』

 

「よし!ポッタイシ!"うずしお"!」

 

 

凍った地面に転ぶコモルーにポッタイシが"うずしお"を放ってその中に拘束する

 

 

「ポッタイシ!渦に飛び込んで"バブルこうせん"!」

 

「"まもる"で防御したいけど、連続での使用は失敗するからな…!出来る限り"れいとうビーム"に対して温存しておきたい…!コモルー!耐え切ってから"しねんのずつき"だ!」

 

 

ポッタイシは渦の中へと飛び込み、その中心に囚われているコモルーに渦の上から"バブルこうせん"を繰り出す

 

それに対してイブラヒムは、"れいとうビーム"を警戒して"まもる"での防御をせずにポッタイシの攻撃を耐えるようコモルーに指示する

 

ドラゴンタイプにみずタイプの技が効果がいまひとつ、更にはまだそれほどのダメージを受けていないこともあっての考えだった

 

 

「コ…コモォ…ッ!」

 

「コモルー…っ!?」

 

 

だが、イブラヒムの予想とは違い、効果いまひとつのはずの"バブルこうせん"を受けるコモルーはそのダメージが大きい様子だった

 

 

「どういうことだ…!なんでこれほどの威力が…!」

 

 

その時、イブラヒムは気付いた

 

何故ポッタイシの技の威力がこれまでに比べて高まっているのか、その理由に

 

 

「最後に当てた"しねんのずつき"で体力が限界になったから…"げきりゅう"が発動してるのか…!」

 

 

ポッタイシの特性は"げきりゅう"…体力が限界に達するとみずタイプの技の威力が高まる起死回生の特性

 

それが"バブルこうせん"…そして"うずしお"の威力を底上げし、コモルーに大きなダメージを与えるに至っていた

 

 

「いけぇぇぇぇ…っ!!」

 

「ポッタァァァァ…ッ!!」

 

 

リゼの叫びに、ポッタイシは"バブルこうせん"に更なる力を加えてコモルーに炸裂させ、そのまま"うずしお"を突き抜けて地面へと叩きつける

 

 

「コモルー…っ!?」

 

「コモォ…」

 

 

イブラヒムが呼び掛けるも、倒れたコモルーに立ち上がる様子はなかった

 

 

「コモルー、戦闘不能!よって勝者、リゼ&笹木!」

 

『〜〜〜…っ!決着です…っ!!決勝戦に相応しい激しい攻防、連携、そしてポケモンとの絆を見せて勝利したのは…っ!リゼ殿&笹木殿〜〜〜…っ!!』

 

「「「うおおおおおおおお〜〜〜っ!!!」」」

 

 

決勝戦の勝敗が盛大に告げられ、会場は観客の大歓声と優勝を祝福するために発射された大量の紙吹雪に包まれる

 

 

「勝った…。勝ったよ…!ポッタイシ…!」

 

 

一瞬呑み込めないでいたが、すぐに勝利の喜びが湧き上がったリゼは奮闘したポッタイシの下へと駆け寄る

 

ポッタイシもリゼの下へ駆け寄るが、飛びつく直前に力が抜け、リゼの懐に倒れ込む

 

 

「…お疲れ様。本当によく頑張ったよ…。ありがとう…」

 

 

ボロボロのポッタイシにリゼは感謝を伝えながらその頭を優しく撫でる

 

 

「マジで凄かったわ…リゼとポッタイシ…!勝ってくれてありがとうな!」

 

「笹木さんとガラガラも凄かったよ。私は最後諦めかけてたし、アンジュの声がなかったらきっと…」

 

「それでも諦めなかったんやから勝てたんやで。ウチらの大勝利や」

 

「…うん!」

 

 

リゼと笹木は互いの奮闘を讃え合い、共にバトル出来たことを感謝し合う

 

 

「いいバトルだった…。最後のあんたとポッタイシの気迫にはまんまと呑まれちまった」

 

 

そう感想を述べながら、リゼと笹木にイブラヒムとフレンが歩み寄る

 

 

「タマゴが貰えないのは残念だけど、お二人とのバトル凄く楽しかったです!いつかまた、機会があればその時はタイマンでバトルしましょう!あ…!よければ連絡先とか交換しません?」

 

「れ、連絡手段は持ってないから出来ないかな…」

 

「くぅ〜…っ!残念…っ!」

 

「何ナンパして困らせてんだ…」

 

「でも、私もお二人とのバトル楽しかったです!それに、大切なことを改めて気付かせてもらえました…ありがとうございます!」

 

「え…!もしかして、これ…脈あり…!?」

 

「なわけねぇだろ…妄想も大概にしろよ。まあ、あんた等もポケモンリーグを目指してるんなら、チャンピオンの座を懸けて争うライバルってわけだ。次会う時は負けねぇからな」

 

「ふん!臨むところやよ!」

 

『それでは、優勝したリゼ殿と笹木殿に賞品のタマゴを贈呈したいと思います!』

 

 

イブラヒム達との話が済んだところでグウェルのアナウンスが響き、リゼと笹木は用意された表彰台に上がる

 

 

「おめでとうございます。リゼ殿、笹木殿。そしてありがとうございます。あなた方、そして出場してくださった多くのトレーナーの方々のおかげでこのタッグバトル大会は大いに盛り上がりました」

 

「いえ、この大会を通して色んな経験や改めて気付くこともありました。こちらこそ、ありがとうございます」

 

「リゼは真面目やな〜。まあ、ウチも楽しかったけど。ありがとうございました」

 

 

グウェルの感謝にリゼと笹木もまた感謝の言葉を述べる

 

 

「そして、このタッグバトル大会で優勝したお二人にはこちらのポケモンのタマゴ…それぞれ1つずつを差し上げます。これからもポケモンと共に切磋琢磨し、いずれ開かれるポケモントレーナーの頂点を決める大会…ポケモンリーグで最高のバトルをしてください。改めて、優勝おめでとうございます」

 

 

グウェルからの激励と祝福とともに、リゼは水色のタマゴを、笹木は洗柿色のタマゴをそれぞれ受け取る

 

 

「「ありがとうございます!」」

 

『それでは皆さん!優勝したリゼ殿と笹木殿!そして、出場してくださった全てのトレーナーに今一度盛大な拍手を!』

 

 

リゼと笹木…そして、大会に参加した全てのトレーナーを讃える拍手に包まれ、タッグバトル大会はその幕を下ろした

 

 

 

 

「アンジュー!」

 

「リゼ〜!お疲れ〜!」

 

 

タッグバトル大会終了後…笹木達と別れたリゼは外で待っていたアンジュと合流する

 

 

「アンジュ!優勝したよ!」

 

「おう、見てたよ!いいバトルだった!それにしても優勝賞品がポケモンのタマゴだなんて気前いいな〜!どんなポケモンが生まれるか今から楽しみやな!」

 

 

優勝賞品で受け取ったタマゴをマジマジと見つめるアンジュに、リゼは俯きながら口を開く

 

 

「アンジュ…あの時、私に諦めるなって言ってくれてありがとう…。アンジュが叫んでくれなかったら私…」

 

 

俯いて弱々しくなるリゼにアンジュはポンッ、と頭に手を乗せる

 

 

「大したことはしてないよ。見守ることしか出来ない私には応援することしか出来ないから。それに、もし立場が逆ならリゼもああしてただろ?」

 

 

優しい口調でそう告げるアンジュに、リゼの眼から思わず一滴の涙が流れ落ちるが、それをすぐに拭ってリゼは笑ってみせる

 

 

「…うん!アンジュ、ありがとう!」

 

「どういたしまして…」

 

 

また1つ大きく、強くなったリゼに、アンジュは優しく微笑んだ

 





リゼ・ヘルエスタ
手持ち:ポッタイシ、イーブイ、バタフリー
   サイホーン

アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ

笹木咲
手持ち:バチンキー、???、ガラガラ(アローラ)

イブラヒム
手持ち:イノムー、コモルー、グソクムシャ

フレン
手持ち:ワカシャモ、ラッキー、パルスワン
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