「ふぅ〜…。急に暑くなってきたな〜…。まだ夏ちゃうよなぁ…?」
ヤオウシティでのジム戦とタッグバトル大会を終えたリゼとアンジュは、ひまわりの誘いで葛葉、叶、凛月、天宮と共にヤオウシティの北に位置するRRRビーチへと向かっていた
「RRRビーチ周辺は年中通して気温が高くて、気候はアローラ地方に近いって言われてるらしいよ」
「アローラ地方…たしか、島巡りで有名な4つの島から成る地方でしたよね。聞いた話だと、その環境で特別な進化を遂げたポケモンもいるって…。笹木さんがタッグバトル大会で見せたガラガラとか」
「もしかして、RRRビーチにはアローラのポケモンがいたりするのかな?」
「その可能性は高いかもね。僕達と同じ時期にトレーナーになった笹木さんがアローラ地方に行くことなく、アローラのガラガラを持ってたんだし」
「どんなポケモンがおるんやろ…!楽しみですね!」
「楽しみと言えば…リゼちゃん!タッグバトル大会の優勝で貰ったタマゴはどうなったん?生まれた?」
「まだ特に変わったことは…。ちょっと待ってね」
話題はRRRビーチからリゼが貰ったタマゴに移り、リゼはバッグの中に入れていたそれを取り出す
「どんな子が生まれるのか楽しみだね〜」
「うん。タマゴを孵化させるのはこれで2度目だけど、生まれてくるまでのこのワクワク感は抑えられないよ」
「リゼさんは前にもタマゴを孵化させたことがあるんだ?」
「はい。私のイーブイなんですけど、アンジュから貰ったタマゴから孵化させたんです」
「へぇ〜、そんなんや…!タマゴと言えば、葛葉のリザードもママから貰ったのから孵化したよな!」
「え…!そうなんですか…!」
「それで生まれたのが色違いって…人生の運を全て使い果たしましたね、葛葉さん…」
「なんで可哀想な目で見られねぇといけないんだ…?まあ、仮に運を使い切ったとしても関係ねぇっすよ。俺もリザードも運なんかには頼らないんで」
「リザードも凄く努力家なのは見ていて思ってたけど、生まれた頃からずっと葛葉さんと居たから似てるのかな?だとしたら微笑ましいです」
「いや…そんなことないっすよ…」
「うん、それはないかな」
「なんでアンジュさんが否定してるの?」
「だってイーブイはリゼと違ってしっかり者だからね。世話のかかるお姉ちゃんを見て育った妹みたいなものだから」
「そんなこと…ないよぉ!」
「今一瞬だけ自信無くて詰まったよね?」
と、話しながら進んでいると目的地であるRRRビーチが遠目に見えてくる
「見えたよ、あそこがRRRビーチ。そして、そのすぐ近くに建ってるデカい建物が鷹宮財閥が経営している高級リゾートホテルだよ」
「うわぁ〜…!ここからでも凄い眺めだね〜!」
「海も浜辺も綺麗〜…!流石はリゾート地って感じやね!」
「密林もあるし、ポケモンも沢山いそう…!」
「高級リゾートホテルって言うからにはそれなりに想像はしてたけど…結構大きいね…!」
「なあ、兄やん!ひま達今日はあそこに泊まるん?」
「流石にそれは無理かな…。あのホテルの宿泊料は旅をしてる僕達の所持金全部を合わせても1人分足りるかどうか…」
「そんな高いん…!?」
「高級リゾート舐めてんのか?」
視界に映る目的地にリゼ達は胸を躍らせる
「そこのあんた達、ちょっと止まりな!」
その時、ビーチへと続く道…その正面からやって来た金髪ツインテールの少女が強気な声色でリゼ達に声を掛ける
「見た感じ、全員ポケモントレーナーでしょ?だったらあたしとバトルしろ!」
「ぜ、全員と…!?」
「あ…勘違いしないでほしいんだけど、バトルは1対1だから。そんなにポケモン持ってないし、人数多いと時間かかるじゃん」
「なんだ、物足りねぇ。でもいいぜ、相手してやるよ」
少女からのバトルの申し込みに、葛葉は笑みを浮かべながら真っ先に前へ出る
「俺は葛葉…お前は?」
「鷹宮リオン」
「鷹宮…!まさか、RRRビーチにあるリゾートホテルを経営するあの鷹宮財閥の…!」
「そ、あたしのお父様がね」
「お嬢様ってこと…!?」
「そんな人がなんでこんなところに…?」
「なんでって、ポケモンを鍛えるために決まってんじゃん。沢山のトレーナーとバトルすれば、それだけポケモンも強くなる。そしていつか、あたしはチャンピオンに勝つの!」
「チャンピオンに…!?」
「へぇ、なら俄然負けるわけにはいかねぇな…!いけ!リザード!」
"チャンピオンに勝つ"という言葉に火が付いた葛葉は好戦的な笑みを浮かべながらリザードを繰り出す
「ふぅん、リザードね…。結構強そうじゃん。ならあたしはこいつ…!いけ!ハッサム!」
対するリオンは"はさみポケモン":ハッサムを繰り出す
「ハッサムだ…!かっこいい…!」
「凄く強そうな見た目やな…!」
「でも、ハッサムのタイプはむしとはがね…ほのおタイプのリザードとは相性最悪だけど…」
「それでも出してきたってことは、相当な自信があるってことなのかな?」
リオンが繰り出したハッサムにリゼ達が各々の反応を見せる
「先行はどうする?」
「欲しいなら譲ってあげるけど?」
「じゃあ、貰ってやるけど…一瞬で終わっても後悔すんなよ!リザード!"かえんほうしゃ"!」
バトル開始…その先行で、リザードが"かえんほうしゃ"を放つ
「ハッサム!"こうそくいどう"!」
ハッサムは"こうそくいどう"によって高めた素早さを以って"かえんほうしゃ"を躱し、リザードへと迫る
「"メタルクロー"!」
「"ドラゴンクロー"で迎え撃て!」
迫ったハッサムの"メタルクロー"にリザードは"ドラゴンクロー"で迎撃し、2体の攻撃が幾度となくぶつかり合う
「やるじゃん…!なら、これはどう…!ハッサム!"バレットパンチ"!」
"メタルクロー"と"ドラゴンクロー"の打ち合いに見切りをつけ、リオンはハッサムに"バレットパンチ"を指示する
弾丸のように素早いパンチを連続で繰り出すその技に、打ち合うことが間に合わないリザードは防戦一方となる
「いいぞ!ハッサム!そのまま押し切っちゃえー!」
「押し切る…?それは考えが甘ぇんじゃねぇかぁ…!?リザード!"かえんほうしゃ"!」
ハッサムの"バレットパンチ"を耐えながら、再びリザードが"かえんほうしゃ"を放つ
至近距離から放たれた"かえんほうしゃ"を正面から受けてしまったハッサムはそのまま大きく押し飛ばされる
「ハッサム…!?」
リオンの下まで押し飛ばされたハッサムはぐったりと倒れ、起き上がることはなかった
「勝負ありだね。意外というか、危なげなく勝ったな」
「当たり前だろ。タイプ相性の有利取れてんのに負けるわけにはいかねぇよ」
「ザァド…ッ!」
「流石は葛葉さんのリザード…!」
「イブラヒムさんのグソクムシャの"であいがしら"を受けた時もそうだけど、怯んだり仰け反ったりすることなく反撃に転じれるタフネスは凄いね…!」
タイプ相性の有利があったとは言え、相手の攻撃に怯まず反撃してみせたリザードの屈強な精神力と肉体の強さにリゼとアンジュは改めて驚嘆する
「くぅ〜…っ!めちゃくちゃ強いじゃん…!ほら、これ受け取りなよ…!」
バトルに負けて悔しがりながら、リオンは葛葉に何かのチケットを渡す
「なんだこれ…?」
「それはこの先にある鷹宮財閥が経営するホテルの1日無料宿泊券。バトルに付き合ってくれたんだから、それくらいのお礼は当然でしょ?」
「バ、バトルしただけで宿泊券…!?」
「勝っても負けてもってこと…!?」
「流石は財閥のお嬢様…。お礼のレベルが違う…」
「そもそもバトルしただけでお礼って…」
「口調や態度は強気だけど、実は凄く律儀なんやね…」
リオンからのまさかのお礼に、リゼ達は驚きを示す
「さあ、どんどんいくよ!次の相手は?」
「なら私が…!」
葛葉に続き、今度はリゼが前に出る
「私はヘルエスタシティのリゼ!よろしくお願いします!」
「リゼか…いい名前じゃん。こっちこそよろしく…!いけ!テールナー!」
「お願い!ポッタイシ!」
リゼはポッタイシ、リオンは"きつねポケモン":テールナーを繰り出す
「お…!また相性有利な相手だね」
「それに御三家対決だ〜!」
「これはリゼさんの勝ちだな」
「さっきの白毛ぁ!まだ分かんねぇだろうがぁ!」
「誰が白毛だぁ!?女ぁ!」
葛葉の一言に噛み付くリオンだが、すぐに気を取り直してバトルに集中する
「先行はあげるよ、どっからでもかかってきな!」
「じゃあ遠慮なく…!ポッタイシ!"バブルこうせん"!」
バトル開始…先行を貰ったリゼはポッタイシに"バブルこうせん"を指示する
「テールナー!"ひかりのかべ"!」
対するテールナーは"ひかりのかべ"を繰り出し、特殊技である"バブルこうせん"の威力を抑える
「ふふん!これで効果抜群の技も怖くないってもんよ!テールナー!"サイケこうせん"!」
「ポッタイシ!"メタルクロー"!」
"ひかりのかべ"を張ったことで強気になるリオンはテールナーに"サイケこうせん"を指示
放たれた"サイケこうせん"にポッタイシは"メタルクロー"を発動させた腕をクロスする形で前に突き出して突っ込み、"サイケこうせん"を弾きながらテールナーへと迫り、そのまま"メタルクロー"を炸裂させる
「そんなのアリ…!?」
その強引な戦法にリオンは思わず驚きの声を上げる
「ポッタイシ!"うずしお"!」
「…っ!テールナー!"ほのおのうず"!」
ポッタイシの"うずしお"に対して、すかさずテールナーも"ほのおのうず"を繰り出し、衝突した2つの技は爆発を起こして消滅する
「あんたのポッタイシ、結構やるじゃん…!」
「リオンさんのテールナーこそ…!」
「でも、この勝負はあたしが勝つよ!なんたってあたしのテールナーには1発逆転の大技があるんだから!」
リオンはそう言うと左腕の袖を捲り出し、その手首につけているある物をリゼに見せつける
「それは…?」
「クリスタルの嵌ったリング…まさか…!?」
「Zリング…!」
リオンが見せたリングの正体にいち早く気付いたアンジュと叶が声を上げて驚く
「なんか凄そうな名前やけど、あれ一体何なん…?」
「あれはZリングと言って、アローラ地方に伝わる道具なんだ…!それを持つトレーナーはポケモンにZクリスタルという道具を持たせることで、バトルで1度限り使える絶大な威力を誇る技…"Z技"を繰り出すことが出来るって聞いてる…!」
「そういうこと!いくよ!テールナー!」
「ルナ…ッ!」
テールナーに呼び掛けたリオンは、両腕を垂直と水平に2度クロスして組んだ後、両手の人差し指を頭の側面に当てて考え込む様な仕草をし、左腕を前に突き出すポーズを取る
すると、辺りが少し暗くなるとともに、リオンの体からエネルギーのようなものが溢れ出し、テールナーはそれをその身に纏わせる
「これがあたしとテールナーの全力のZ技…!"マキシマムサイブレイカー"!」
Zリングを通してリオンから送られたZパワーを解き放ったテールナーは、エスパータイプのZ技"マキシマムサイブレイカー"を繰り出す
Zパワーによって強化されたサイコパワーがポッタイシを宙に浮かせ、空間に形成された無数の光の壁に何度もぶつけさせる
最後には、その光の壁を突き破るほどの力でぶつけさせ、ポッタイシを大きく吹き飛ばす
「ポッタイシ…っ!」
その一撃で大ダメージを負い、ボロボロになったポッタイシにリゼが叫ぶ
「リゼちゃんのポッタイシが一撃で…!?」
「あれがZ技…!話には聞いてたけど、凄まじい威力だね…!」
「どうよ!あたしとテールナーの全力の一撃は!これはもうあたしの勝ち…」
「いや、まだだよ」
勝利を確信するリオンにアンジュが待ったをかけた時、ポッタイシがボロボロの体を起こして立ち上がる
「嘘でしょ…!?」
Z技を受けても倒れないポッタイシにリオンは驚愕する
「頑張って!ポッタイシ!"バブルこうせん"!」
リゼに鼓舞され、ポッタイシは"バブルこうせん"を繰り出す
「だだ、大丈夫…!"ひかりのかべ"はまだ残ってるし、ここを耐えてからの反撃で…!」
リオンは焦るが、"ひかりのかべ"の効果が持続していることを思い出して落ち着きを取り戻す
だが…
「ルナァ…ッ!」
「テールナー…!?どうして…!」
"ひかりのかべ"で威力を抑えているにもかかわらず、テールナーは"バブルこうせん"のダメージに苦痛な様子を見せる
「ポッタイシは体力が限界に達すると特性の"げきりゅう"でみずタイプの技の威力が上がる!1発逆転の目は何もZ技だけじゃない!」
「いけぇぇぇ…っ!!」
リゼの叫びに呼応し、ポッタイシは"バブルこうせん"の威力を更に上げる
"ひかりのかべ"越しにそのダメージを受けるテールナーは遂に耐え切れなくなり、吹き飛ばされる
「テールナー…っ!」
「ルナァ…」
地に伏し、弱々しい声を上げるテールナーに立ち上がる気配はなかった
「戦闘不能…リゼの勝ちだね」
「よし…!よく頑張ったね、ポッタイシ!」
「くぅ〜…っ!今度こそ勝てると思ったのにぃ〜…っ!」
勝敗が決し、リゼは奮闘したポッタイシを労い、負けたリオンは葛葉の時以上に悔しがる様子を見せる
「それにしても凄い威力だったね、Z技!」
「アレがあればもっと強くなれそうだな…!」
「そうだね。でも、それは無理だと思うよ。さっきも言ったけど、Z技を扱うために必要なZリングとZクリスタルはアローラ地方でないと入手出来ないんだ」
「ってことはリオンちゃんはアローラ地方に行ったことがあるの?」
Z技の印象が余程強く残った一同は、リオンに詳しい話を尋ねる
「まあ、バカンスで何度かね」
「ってことは、島巡りを制覇したんですか?」
「いや、正直島巡りめちゃくちゃしんどくてさ〜、諦めたんだよね。テールナーに持たせてるエスパータイプのZクリスタルもその時のお情けで貰ったようなものなんだし」
「でも、Z技はポケモンとの心が1つになってなかったり、ポケモンの力が不足してると使えないから、それを物にしてるリオンさんは凄いですよ」
「え…?そ、そうかなぁ〜?なんか照れる…。あ、そうだ…!はい、あんたにもバトルしてくれたお礼に…」
「お嬢〜…っ!ようやく見つけた〜…っ!」
バトルのお礼にリオンがリゼにホテルの宿泊券を渡そうとした時、ピエロの様な格好をした人物がビーチへと続く道の先からリオンの名を叫びながら走って来る
「力一じゃん、どうしたの?」
「いやいや、どうしたのじゃないよ〜…!2人が来たら教えてって言っておきながらスマホロトム置いて出て行ってんだからここまで探しに来たんですよ〜…?」
「天開司と舞元のおじさんが…!?分かった!すぐ行く!そういうわけだからごめん、これバトル出来なかったお詫びにあげるから!じゃあね!」
力一と呼んだ人物からの知らせに慌てるリオンはバトルが出来なかったアンジュ達にもホテルの宿泊券を渡し、大急ぎで力一と共にビーチの方へと走り去って行った
「な、なんやったんやろ…?」
「まるで嵐のようやったね…」
突然去って行ったリオンにひまわりや凛月が困惑するなか、リゼ達は違う反応を示していた
「今、"てんかいじ"って言ってたけど…もしかして天開博士のこと…!?」
「おそらくそうだろうね…!でも、博士がなんでこんなところに…?」
「いや、それよりも気になる名前がもう1つあった…!"舞元"ってまさか…!」
「ニジサンジ地方チャンピオン…舞元啓介…!今あのホテルにいんのか…!?」
ニジサンジ地方に住む者なら誰もが知るチャンピオン…舞元啓介
その名前がリオンの口から出ていたことに気付いた叶と葛葉の指摘に、リゼ達は驚愕の表情を露にする
「そういえば、ここでよく目撃されてるって叶さん言ってたね…!」
「あくまでも噂だったから冗談半分に思ってたけど…!もしかして、リオンさんの知り合いか何かなのかな…?」
「んなことはどうでもいいだろ!チャンピオンがいるならこの機会は逃せねぇ!」
「あっ…!待ってください、葛葉さん…!」
「私達も追いかけよう…!」
チャンピオンがいると分かった瞬間に飛び出した葛葉の後を追い、リゼ達もビーチへの道を走り出す
リゼ・ヘルエスタ
手持ち:ポッタイシ、イーブイ、バタフリー
サイホーン
アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ
葛葉
手持ち:リザード、ゴルバット、ギャラドス
ガバイト
鷹宮リオン
手持ち:テールナー、ハッサム