RRRビーチの近くに建っている鷹宮財閥が経営する高級リゾートホテル
その1階にある待合室の1室で2人の男性がいた
「歳は食っても実力はまだまだ健在みたいだな、舞元」
「司こそ、博士やってるとは思えないくらい衰えてなかったぞ?」
1人はニジサンジ地方でポケモン博士をしている天開司
そしてもう1人はニジサンジ地方のチャンピオン:舞元啓介
この地方で最も有名な2人は待合室に用意されていたビールを手に、会話に花を咲かしていた
「いやいや、いつかはバトルなんてする暇も体力も無くなるから、時間の問題でしょ」
「俺もあと5年しない内に四天王の誰かには抜かれそうだな〜…!そういえば、この前ライブ中継でやってたタッグバトル大会見たか…!」
「見た見た、あれ優勝したの今年俺からポケモン貰ってトレーナーになったばかりの子なんよ。あと出場者にも何人かいてさ」
「マジか…!いやぁ、あれは熱かったな〜…!俺も参加したかった…!」
「そんなことしたら当然のようにあんたが勝っちまって炎上もんだろ」
「それもそうか〜…。いやぁ、参った…!チャンピオンになったら色んなところに引っ張りだこになる代わりに、そういうイベントに安易に参加し辛くなるとは…」
「まあ、もう長いことチャンピオンやってるんだし、そろそろ追い抜いてきそうな四天王の誰かに譲れば?」
「ちゃんと追い抜いてくれたらな。わざと手加減して負けても誰も納得しねぇし、それこそ炎上ものだろ」
「それもそうだな。というかいっそのこと、自分が出るよりも自分がそういうイベントを開いたらいいんじゃないか?」
「たしかに…!でもなぁ、バトルの大会は避けたいんだよなぁ…。やろうと思えば誰でも開けるわけだし、何かこう違う方向性でいいものはないだろうか…?」
「バトル以外かぁ…。う〜む…」
2人が考え込むなか、待合室の扉が勢いよく開かれる
「ようやく来たか!舞元!天開司!」
「お嬢…!相変わらず元気そうだな!」
「ほんと、後ろの力ちゃんは息切らしてんのにな。大丈夫か?」
「いやもう…この歳で激しい運動は堪えるね…」
元気なリオンと疲れている様子の力一の登場に、舞元と司はそれぞれ反応する
「じゃあ、早速だけど舞元!私とバトルしなさ…!」
「ちょっと待ったぁぁぁ…っ!!」
リオンが舞元にバトルを申し込もうとしたその瞬間、後ろからリオンを追いかけて来た葛葉がそれに待ったをかける
「なっ…!?あんた、さっきの…!」
「チャンピオンとバトルすんのはこの俺だ…!俺に負けたお前は大人しく引っ込んでろ…!」
「ん…?君、もしかしてタッグバトル大会に出てた…」
「葛葉…!なんでこんなところに…!」
「すみませーん…!」
彼等の中に割って入ってきた葛葉にリオンが驚き、彼の存在に舞元と司が気付いた直後、葛葉を追って来たリゼ達がその場に駆け付ける
「リゼ…!それにアンジュに叶達まで…!」
「お久しぶりです、天開博士…!」
「すみません、ウチの葛葉が…!おい葛葉、失礼やろ…!早よ戻るぞ…!」
「うっせぇ!俺はこのチャンスのためにここに来たんだ!みすみす逃せるかよ!」
「おい!何勝手なこと言ってんだよおめぇ!舞元とはあたしが先にバトルする約束してんだよ!そっちこそ引っ込めよ!」
「んだと女ぁ!?」
「やんのかこらぁ!?」
「ちょちょちょ…!お二人共落ち着いて…!」
葛葉とリオンの喧嘩が勃発しそうになるなか、その取り合いにされている張本人…舞元が2人を宥めようとする力一を下がらせてその間に立つ
「いやぁ、2人の熱い御指名は非常に嬉しいんだけど、生憎今はバトルしてやれないんだ」
「はぁ!?」
「どういうことだよ、舞元!」
「実はここに到着する前に司と一戦交えたから、今ポケモン達を休ませてるんだよ。だからすぐにバトルはしてやれないんだ」
「嘘でしょ…!?おい、何やってんだよ天開司!」
「いや俺は悪くねぇだろ!?」
舞元とのバトルが出来ないことにリオンが憤慨するなか、呆然と立ち尽くす葛葉に叶が声を掛ける
「ほら葛葉…。バトルを申し込めないならこれ以上は迷惑になるよ」
「…分かったよ」
チャンピオンとのバトルが出来ないことを惜しみながら、葛葉は渋々と叶に引っ張られてその場から離れる
「すみません、ご迷惑をおかけしてしまって…!それじゃあ、私達はこれで…!」
「ちょっと待ってくれ…!」
そして、一言謝罪を述べてからその場を立ち去ろうとしたリゼ達だったが、舞元に呼び止められる
「君達、タッグバトル大会に出場してた新人トレーナーだろ?お嬢も世話になったみたいだし、よかったらみんなで少しお茶でもどうだ?」
「舞元…!?」
舞元からの突然の提案に、リオン並びにリゼ達は驚く
「い、いいんですか…?」
「ああ。個人的にも君達には興味があったし、それに司の知り合いなら積もる話もあるだろ?お嬢もべつに構わないだろ?」
「まあ、バトルが出来ないなら暇だし…。いいよ、なら大広間に席の用意するからちょっと待ってて」
*
「マジ…!?あんた、大会で優勝してんの…!?」
「大会って言ってもポケモンリーグみたいな大きなものじゃないけどね…?」
舞元達と邂逅してしばらく、ホテルの大広間に設けられた席でリゼ達は舞元、リオン、司、力一を交えて談話していた
「道理で強いわけだわ…」
「そんなことないですよ。リオンさんのテールナーやハッサムだって十分強かったですよ」
「だってさ、リオン様。いい加減そろそろポケモントレーナーとして旅に出てジム巡ったらどうなんですか?」
「え…!リオンちゃん、ポケモンリーグに挑戦してないん!?」
リオンがポケモンリーグに挑戦するトレーナーでないことにひまわりが驚く
「だってお父様とお母様から、地方を巡るなら自分の足で行きなさいって言われてるから…正直面倒くさいんだよね…」
「出たよ、お嬢様特有の我儘」
「だって野宿とか出来るわけねぇだろ!寝てる間にポケモンに襲われるかもしれねぇのに!ジムだけ回らせてくれたらあたしだってなぁ…!」
「まあ、人それぞれ事情はあるもんねぇ。でも勿体ないなぁ、あれだけ強力なZ技を使えるのに」
「そうか…!そういえば、お嬢はZリングとクリスタルを持ってたな!もう使いこなせてるのか!」
「当ったり前じゃん!私はいつかは舞元を越えるトレーナーになるんだから!」
「なら余計ポケモンリーグ挑戦を目指した方がいいだろ…」
司がリオンに呆れるなか、舞元はリゼや葛葉達に体を向ける
「ところで、君達はどうしてポケモンリーグに挑戦するんだ?」
「え…?」
舞元からの唐突な質問に、リゼ達は一瞬思考が停止する
ポケモンリーグを目指す…つまりはチャンピオンになることを目指すのは、ほとんどのポケモントレーナー共通で当然のように目指すものという認識だった
「それは…」
「当然、強いトレーナーになるためだ!」
皆が質問の答えに戸惑うなか、葛葉が真っ先にそう答える
「チャンピオンは絶対的な強さの象徴だ!そこに辿り着いた時、俺自身の実力を誰もが正しく認める!だから俺はチャンピオンのあんたを必ず越える!」
そう宣言する葛葉に、舞元は楽しそうに微笑む
「まあ、チャンピオンはポケモントレーナー共通の憧れみたいなものですから。僕の目指す理由はそんなところです」
「ひまもー!」
「私も…そうかな」
「あまみゃはカントー・ジョウト地方チャンピオンのワタルさんやイッシュ地方チャンピオンのアイリスさんみたいなドラゴンマスターになるためです!」
「私は…」
葛葉に続いて叶達も口々に理由を述べるなか、リゼは今一度自身がポケモンリーグに挑戦する理由が何なのか考える
「私は…まだ漠然としていますが、何かを得たいんだと思います。この旅だけじゃなく、ポケモンリーグ挑戦を通して、ヘルエスタの立派な皇女…そして、立派なポケモントレーナーになるための何かを得たいんだと思います」
リゼ達がそれぞれ出した答えに、舞元は微笑みながら満足気に頷く
「いい理由だ…。そうだ!せっかくだから君達の中で2人、バトルをしてくれないか?」
「バトルを…?」
「ああ、今年のポケモンリーグに挑戦する君達トレーナーのバトルを、是非この目で直に見ておきたいんだ」
「また急なこと言うねぇ、舞元さんは」
「まあ、俺もあの頃から成長した今のお前等のバトルを生で1度見てみてはみたいな」
「なら対戦カードは決まってる…!俺とリゼさんが…!」
「待ってよ、葛葉」
乗り気な様子で舞元の提案を受け、対戦相手を決めようとする葛葉に叶が待ったをかける
「葛葉は1度リゼさんとバトルしてるでしょ?今回は僕に譲ってよ」
「…嫌だって言ったら?」
「べつにいいよ。だって意味ないから」
「どういうこと?」
「だって僕と葛葉、どっちがバトルできるかは指名されてるリゼさん次第だもの。ね?リゼさん」
唐突に叶に聞かれ、リゼはビクリと体を震わせる
「え、えーっと…。たしかに、今の葛葉さんともう1度バトルしてみたい気持ちもあるけど…。叶さんとはまだだし、出来ればそっちの方が…」
「だってさ」
「…まあいいや。楽しみはもう少し後まで取っておいてやるよ」
ニコリと笑って勝ち誇る叶に、葛葉は渋々と諦める
「なら決まりだな。鷹宮、外のバトルフィールド借りるぞ」
こうして、リゼと叶のバトルが決まり、一同はホテルの外にあるバトルフィールドへと移動する
*
「それじゃあ、審判は僕が務めます。お二人共、準備はよろしいですか?」
バトルフィールドに移動した一同…アンジュ達がベンチに座って見守るなか、審判を買って出た力一の確認にリゼと叶は頷いて応える
「それではこれより、ヘルエスタシティのリゼとシーズシティの叶によるポケモンバトルを始めます!使用ポケモンは3体、どちらかのポケモン全てを戦闘不能にした方の勝ちとします!では両者、1体目のポケモンを…!」
「お願い!バタフリー!」
「頼んだぞ!ジャノビー!」
リゼはバタフリー、叶はジャノビーをそれぞれ繰り出す
「バタフリーにジャノビー…。タイプ相性で有利なのはバタフリーだけど…」
「叶の奴、落ち着いてるな…。タイプ相性の不利を理解している上で勝機があるらしい」
「叶さんのジャノビーは強いですからね…」
「さあ、どんなバトルになるのか楽しみだ…!」
リゼと叶のバトルにみんなが注目するなか、いよいよその火蓋が切られる
「それでは、バトル始め!」
「バタフリー!"しびれごな"!」
まずはリゼの先制…バタフリーの"しびれごな"で相手の麻痺状態を狙う
「ジャノビー!"グラスミキサー"!」
迫る"しびれごな"をジャノビーは"グラスミキサー"で迎え撃って掻き消すとともにバタフリーにダメージを与える
「防がれた…!なら、バタフリー!"エアスラッシュ"!」
手堅く状態異常を狙うのをやめ、リゼはバタフリーに"エアスラッシュ"を指示する
「ジャノビー!"リーフブレード"!」
しかし、ジャノビーは"リーフブレード"で迫る"エアスラッシュ"全てを撃ち落とし、またもやバタフリーの攻撃を凌ぐ
「ジャノビー!"まきつく"!」
"エアスラッシュ"を凌ぎ切った直後、ジャノビーはバタフリーに向かって跳躍し、その体にガッチリと巻き付いて拘束する
拘束されたことで羽ばたけないバタフリーはそのまま地面に向けて落下し始める
「ジャノビー!そのまま"たたきつける"!」
「なかなかエグいな…!あの状態からだと、落下の勢いも付いて大ダメージになるぞ…!」
「しかもバタフリーは羽を封じられてるから"しびれごな"も"エアスラッシュ"も繰り出せない…!これは決まったか…!」
「バタフリー!"サイケこうせん"!」
叶の一手に舞元と司が声を唸らせたが、リゼは羽を封じられても繰り出せる"サイケこうせん"をバタフリーに指示し、地面に叩きつけられる直前にジャノビーに炸裂させる
その攻撃によってジャノビーの拘束が緩み、バタフリーは地面に激突するギリギリで抜け出すことに成功する
「"サイケこうせん"かぁ…!冷静にその対応が出来たのは流石だなぁ…!」
危機的状況でも冷静に対処してみせたリゼの判断力に舞元は感心する
「バタフリー!"むしくい"!」
「ジャノビー!"リーフブレード"で迎え撃て!」
バタフリーとジャノビーがそれぞれの技を繰り出して正面から衝突し、爆発を起こす
「威力は互角か…!」
「バタフリーとジャノビーはどうなったん…!?」
爆発による煙がしばらくして晴れると、そこには宙に羽ばたくバタフリーと地に伏せたジャノビーの姿があった
「ジャノビー、戦闘不能!」
「いやぁ、無理だったか…。お疲れ様、ジャノビー」
ジャノビーの戦闘不能宣告を受け、叶は労いの言葉を掛けるとともにジャノビーをボールへと戻す
「"まきつく"からの"たたきつける"の流れは凄く良かったが、あの状態から反撃できる技をバタフリーが覚えていたのが勝敗を分けたな」
「それでもあのジャノビー、よく育てられてましたね。まさか"リーフブレード"で"エアスラッシュ"を全て撃ち落とすなんて…」
「兄やんもバトルの努力は葛葉に負けず劣らずやからなぁ」
「毎日葛葉さんと特訓してますからね」
バタフリーとジャノビーの一戦を見届け、アンジュ達は各々の感想を述べ合う
「次はお前だよ…!ニャルマー!」
続く2体目に、叶はニャルマーを繰り出す
「ニャルマー…!さっきのジャノビーみたいに対処できる技があるか分からないけど、やっぱりまずは手堅くいくのが良いはず…!バタフリー!"しびれごな"!」
バトル再開…リゼは先程と同じく、まずは状態異常を狙ってバタフリーに"しびれごな"を指示する
「ニャルマー!跳べ!」
広範囲で迫る"しびれごな"に対し、叶はジャノビーの時とは打って変わって、迎撃ではなく回避をニャルマーに指示する
特徴的なバネのような尻尾を利用して、ニャルマーはその場から大きく跳躍し、一瞬にしてバタフリーの上を取る
「おお…っ!これは…!」
「凄い跳躍力…!」
ポケモンの特徴を活かした一手に、ベンチから驚嘆の声が上がる
「ニャルマー!"アイアンテール"!」
そして、頭上から振り下ろされたニャルマーの"アイアンテール"が炸裂し、バタフリーは地面へと叩きつけられる
「バタフリー…っ!?」
「フ、フリィ…」
「バタフリー、戦闘不能!」
リゼが呼び掛けるも、地面にめり込んだバタフリーに起き上がる様子はなく、戦闘不能の判定が下される
「お疲れ様、バタフリー…ゆっくり休んでね」
バタフリーをボールに戻し、リゼは改めてニャルマーに目を向ける
「あのニャルマー、素早いだけかと思ったけどパワーもかなりある…!なら、ここは純粋なパワーで勝負…!お願い!サイホーン!」
パワーにはパワーで対抗しようと、リゼは2体目にサイホーンを繰り出す
「出た…!あの時のサイホーン!」
「ニャルマーの"アイアンテール"を見て、パワー勝負に出たな」
「でも甘ぇな、リゼさん…。叶のニャルマーはそう簡単には倒せねぇぞ?」
リゼと繰り出されたサイホーンにベンチの葛葉達が各々反応するなか、バトルが再開する
「サイホーン!"すてみタックル"!」
「ニャルマー!"アイアンテール"!」
リゼと叶は互いに強力な技を指示し、サイホーンとニャルマーは正面から衝突…それにより大きな爆発が起き、サイホーンとニャルマーはその衝撃で互いに後ろへと押し戻され、この衝突は引き分けに終わる
「サイホーン!"じならし"!」
「ニャルマー!跳んで躱せ!」
距離が離れたニャルマーに攻撃すべく、サイホーンは"じならし"を繰り出すが、ニャルマーは先程のバタフリー戦と同様に尻尾を使って大きく跳躍してその攻撃を回避する
「サイホーン!"うちおとす"!」
だが、それを予想していたのか、リゼは素早く指示を出し、サイホーンは空中に飛び出したニャルマーへ"うちおとす"を繰り出す
「ニャルマー!"でんげきは"!」
「"でんげきは"…!?じめんタイプにでんき技は効果無いんじゃ…!」
「いや、あの"でんげきは"の目的は攻撃じゃない…!」
驚くリオンにアンジュがそう指摘した通り、ニャルマーは"でんげきは"で"うちおとす"を迎撃し、爆発を引き起こさせる
爆発によって発生した煙がニャルマーをサイホーンの視界から隠し、その隙に煙を抜けたニャルマーはサイホーンの傍に着地する
「ニャルマー!"さいみんじゅつ"!」
「しまった…!」
そして、至近距離からの"さいみんじゅつ"が決まり、サイホーンは眠ってしまう
「サイホーン…!起きて…!」
「そう簡単には起きないよ…と、言いたいけど、何が起こるかは分からないからね。このまま畳み掛けさせてもらうよ。ニャルマー!連続で"アイアンテール"!」
リゼの呼び掛けに起きる様子がないサイホーンに、ニャルマーの容赦ない"アイアンテール"が連続で炸裂する
「攻撃食らってるのに全然起きないじゃん…!眠り状態強ぇ…!」
「眠りの深さによっては戦闘不能になるまで攻撃を受け続けて起きないこともあるからな」
「その分、命中に不安定さがあるけど、さっきは技同士をぶつけることで発生させた爆発の煙に紛れて容易に距離を詰めることで成功させた。彼もなかなかのバトルセンスを持ってるな」
舞元達が口々に意見を述べるなか、ニャルマーは連続攻撃の終わりとして渾身の一撃を炸裂させ、サイホーンを大きく吹き飛ばす
「サイホーン…っ!」
ニャルマーからの最後の一撃、そしてリゼの呼び掛けもあってか、サイホーンはようやく目を覚ますが、その体は既にボロボロで瀕死寸前だった
「目を覚ましたか…。でも、もう遅いよ…!ニャルマー!トドメの"アイアンテール"!」
立っているのがやっとのサイホーンに、ニャルマーの"アイアンテール"が迫る
「頑張って、サイホーン…!"すてみタックル"!」
リゼの指示に、サイホーンは最後の力を振り絞って応える
だが、繰り出された技はリゼが指示したものではなかった
サイホーンは体を高速で回転させ、そのままニャルマーへと突っ込む
「あれは…!」
「"ドリルライナー"か…!」
新たな技、"ドリルライナー"を覚えたサイホーンはそれを以ってニャルマーの"アイアンテール"に激突
またもや力が拮抗するかに思われたが、"ドリルライナー"の回転が"アイアンテール"を弾き、そのままニャルマーの懐に炸裂する
「ニャルマー…!?」
"ドリルライナー"を受けて吹き飛ばされ、地面に伏すニャルマーに叶が叫ぶ
そして、"ドリルライナー"を繰り出したサイホーンもまた、力尽きてその場に倒れ込む
「ニャルマー、サイホーン、共に戦闘不能!」
ニャルマーとサイホーンに戦闘不能の判定が告げられ、リゼと叶はそれぞれ奮闘したポケモン達をボールへと戻す
「お疲れ様、サイホーン。新しい技を覚えたあなたの頑張り、かっこよかったよ」
「よくやったよ、ニャルマー。僕の理想通りに動いてくれた、文句のないバトルだった」
リゼと叶はそれぞれのポケモンに労いの言葉を掛け、最後の3体目が入ったボールを構える
「あの状況から引き分けに持ち込んだリゼのサイホーン…。よくこの土壇場で新たな技を覚えたな…」
「タッグバトル大会の時もそうやったけど、リゼちゃんのポケモン達ってピンチの時に凄い力を発揮してるよなぁ」
「うん。まるでポケモン達がリゼさんの気持ちに応えてるように感じる」
「トレーナーとポケモンはその絆が深まれば深まるほど真価を発揮し、強くなる…か」
舞元達が見つめるなか、リゼと叶は最後のポケモンを繰り出す
「お願い!イーブイ!」
「頼んだぞ!ミミッキュ!」
リゼはイーブイ、叶は"ばけのかわポケモン":ミミッキュを繰り出す
「ミミッキュ…!これはまた珍しいポケモンが出てきたな…!」
「現在確認されてるなかで唯一のゴースト・フェアリーの複合タイプを持つポケモン…。だが、タイプ上は互いに相性が悪いな」
「ノーマルとゴーストは互いにダメージを与えられないですからね。でも、リゼのイーブイには打点があります」
「それなら叶のミミッキュには1つしか打点がねぇ…。最後はポッタイシ読みだったんだろうが…どうする?叶」
全員が見守るなか、最後のバトルが始まる
「イーブイ!"アイアンテール"!」
リゼの先制…ミミッキュに弱点の突けるはがね技"アイアンテール"で速攻に出る
「ミミッキュ!"つめとぎ"!」
対する叶はイーブイの"アイアンテール"が怖くないのか、ミミッキュに"つめとぎ"を指示して能力を強化させる
「なんで補助技…!?"アイアンテール"は効果抜群なんでしょ…!」
リオンが驚くなか、イーブイの"アイアンテール"がミミッキュに炸裂する
そして、ポキッとミミッキュの首が折れて力無く垂れ下がる
次の瞬間…
「ミミッキュ!"きりさく"攻撃!」
ミミッキュはダメージによる怯みや疲労を一切感じさせない機敏さでイーブイに迫り、"きりさく"を炸裂させる
「え…!どういうこと…!?なんであのミミッキュ、"アイアンテール"を食らったのにピンピンしてんの…!?」
「その理由はミミッキュだけが持つ唯一の特性:"ばけのかわ"によるものだな。ミミッキュはこの特性のおかげで1度だけ相手の攻撃を無効化できるんだ」
「つまり、最初の攻撃を受けるまでは無敵。その間に能力を高める技を使って、反撃の一撃をより強力なものにする…。上手い戦い方だ」
リオンの疑問に司が応え、ミミッキュの特性を活かした叶の戦い方に舞元が感心する
「イーブイ…!大丈夫…!?」
「ブイ…ッ!」
"つめとぎ"によって威力の上がった一撃を受けたイーブイだが、まだまだやれるとすぐに体を起こす
「よし…!"ばけのかわ"で無効化できるのは最初の1回だけ…ここからはダメージを与えられる!イーブイ!もう1度"アイアンテール"!」
今度こそ決めようと、再びイーブイは"アイアンテール"を繰り出す
「ミミッキュ!"シャドークロー"!」
それに対し、ミミッキュは"シャドークロー"をぶつけて"アイアンテール"を受け止める
「ニャルマーの"でんげきは"と同じ…!」
「効果の無い技を防御に使ったか…!」
「これで終わりじゃないよ…!ミミッキュ!"きりさく"攻撃!」
イーブイの"アイアンテール"とミミッキュの"シャドークロー"がぶつかり合うなか、叶の指示でミミッキュはもう片方の腕から"きりさく"を繰り出し、イーブイに炸裂させる
「片腕はタイプ一致で1番威力のある"シャドークロー"での防御に使って、もう片腕は打点となる"きりさく"の攻撃に使うことで攻守を両立させたのか」
「対するイーブイの手数は尻尾の1つだけ…。これは勝負あったか…」
「まだですよ。リゼもイーブイも、まだ諦めてない」
アンジュにそう言われて司が目を向けると、たしかにリゼの表情からは敗北を察したような絶望感ではなく、まだここから勝機を見出そうとする様子が垣間見れた
2度の"きりさく"を受けて、なお立ち上がるイーブイと視線を合わせたリゼは互いに笑みを浮かべた直後、反撃に転じる
「イーブイ!"でんこうせっか"!」
リゼが指示したのは、ゴーストタイプに効果がないノーマル技の"でんこうせっか"
その指示に、イーブイは躊躇も戸惑いもなく応えてミミッキュに迫る
「なんで"でんこうせっか"…!?」
「いや、これも狙いは攻撃じゃない…!素早い動きで翻弄して"アイアンテール"を決めるつもりか…!」
「そう上手くはいかせないよ…!ミミッキュ!"シャドークロー"と"きりさく"を構えろ!イーブイが攻撃してくる瞬間を逃さずに防御だ!」
リゼの狙いを見越し、叶はミミッキュに防御に専念するよう指示を出す
ボロ布の中から飛び出た両腕で指示された技を構えながら、ミミッキュはイーブイが攻撃に転じるその瞬間を待つ
「あんなに警戒されてたら決まらないよ…!」
「ここは1度立て直した方が…!」
このままでは先程の二の舞になると天宮達が心配するが、リゼは何の迷いもなく、そのままイーブイを突っ込ませる
「イーブイ!いっけぇぇぇ…っ!!」
「ちょっと…!?そのまま突っ込んで行くみたいなんだけど…!翻弄して"アイアンテール"を繰り出すんじゃないの…!?」
「いや、リゼの狙いは…!」
アンジュがリゼの狙いに気付くなか、イーブイはミミッキュが迎撃に繰り出した"シャドークロー"と"きりさく"を"でんこうせっか"による素早い身のこなしで躱し、ミミッキュの懐へと突っ込む
そして、ノーマル技はゴーストタイプには効かないため、イーブイはミミッキュの体をすり抜けてしまう
だが、それこそがリゼの狙いだった
「イーブイ、今だよ!"アイアンテール"!」
「しまった…!後ろを…!」
そう、イーブイはミミッキュの体をすり抜けたことで一瞬にしてその背後を取ることに成功したのだ
そして、ミミッキュが振り向く暇も与えず、イーブイの"アイアンテール"がその背中に炸裂し、吹き飛ばされたミミッキュは地面に顔を伏した
「ミミッキュ、戦闘不能!イーブイの勝ち!よって勝者、ヘルエスタシティのリゼ!」
「凄っ…!!頭の回転柔らかすぎでしょ…!」
「まさかそんな方法で相手の背後を取るとはな…!これには俺達も意表を突かれた…!」
「リゼちゃんと兄やん、どっちも凄かった〜!」
ミミッキュの戦闘不能とともにバトルの勝敗が告げられ、歓声が上がる
「お疲れ様、イーブイ!よく頑張ったね!」
「いいバトルだったよ、ミミッキュ。ゆっくり休んでくれ」
「…してやられたな、叶」
リゼと叶がイーブイとミミッキュをそれぞれ労っていると、2人の下にみんなが集まる
「そうだね。追い込んだと思ったら見事に返り討ちにされたよ。やっぱり強いね、リゼさんは」
「そんなことないですよ。ポケモン達が頑張ってくれたおかげです」
「それも含めて、トレーナーの強さだ。2人共、いいバトルだったぞ」
「天開博士…。はい…!ありがとうございます!」
「いや〜!本当にいいバトルだった!君達とポケモンの熱い想いがガンガンに伝わってきてた!ポケモンとの絆を育んだトレーナーが見せるバトルはやっぱり格別だ!」
司と共にリゼと叶のバトルを絶賛する舞元は、大きく深呼吸すると何かを決心したかのように微笑む
「よし!俺は決めたぞ!今年のポケモンリーグがもっと熱くなるように!今ここに、一大イベントの開催を宣言する!」
「一大イベント…!?」
「おう!今から数日後…ここRRRビーチで、俺は参加する全トレーナーにZリングとZクリスタルを手に入れる機会を与えるイベントを開催しようと思う!」
「「「えぇぇぇぇ〜〜〜…っ!!?」」」
リゼと叶のバトルに触発され、Zリング入手のイベントを開催することを宣言したチャンピオン:舞元
果たして、どのような試練がリゼ達を待ち受けるのか…!
そして、リゼ達はZリングとZクリスタルを手に入れることができるのだろうか…!
リゼ・ヘルエスタ
手持ち:ポッタイシ、イーブイ、バタフリー
サイホーン
アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ
叶
手持ち:ジャノビー、ニャルマー、テッシード
ミミッキュ