にじさんじ×ポケットモンスター   作:Mr.ソロ

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第31話「試練激化!アンジュのトラウマ!」

 

『さあ!各場所でトレーナー達が主ポケモンに挑み始めた!くさ、ほのお、みず、でんきの場所ではトレーナー同士が協力して主ポケモンに挑むなか、じめんの場所は互いを警戒し合って上手く協力出来ていない模様!』

 

 

RRRビーチのステージ上で、マイクを手にする舞元が実況する

 

 

『これ、じめんの主ポケモンに挑んでるトレーナー全滅するんじゃない?素直に協力すればいいのに』

 

『目の前にお宝があると人間、目が曇っちゃうからねぇ。リオン様だって、目の前に伝説や幻のポケモンがいたら他の人を出し抜いてでも欲しいでしょ?』

 

『うぐっ…!ひ、否定出来ない…。で、でも途中まで協力して最後の1体が倒れないようにすれば…!それに協力するフリをしてやり過ごすとか…!』

 

『残念だが、そういう奴には相応の試練が与えられる』

 

『え…?それってどういう…』

 

 

リオンが舞元に質問しようとしたその時、遠くから大きな歓声が沸く

 

舞元達がその方向に目を向けると、葛葉と竜胆…2人のバトルに1つの決着がつけられた

 

 

「キシャァァァァ…ッ!」

 

 

ラグラージに敗北したギャラドスがけたたましい鳴き声を上げるとともに力無く地面に横倒れる

 

 

「ギャラドス…っ!」

 

「うん、バッジ3つで既にこの強さ…なかなかのものじゃね」

 

「…っ!お世辞はいらねぇよ…!」

 

「お世辞じゃないよ。本当に君のギャラドスはよく育てられてると思っておる。でも、妾のラグラージと対等に渡り合えるほどの強さに至れていると思っておったのならそれは否定させてもらうよ」

 

 

竜胆の言葉に葛葉の苛立ちが増す…が、何か言い返すことはなかった

 

否、言い返せなかった

 

竜胆の言っていることは正しい。葛葉のギャラドスは竜胆のラグラージと対等に戦えるほど強くはない。それは葛葉も分かっていた

 

だが、その実力差が葛葉の予想を遥かに上回っていた

 

ラグラージを追い込む…までとはいかずとも、体力のおよそ半分程度まで削れれば上出来と葛葉は考えていたが、目の前のラグラージに疲れている様子は一切見られなかった

 

それもそのはず、ここまでのバトルでラグラージはギャラドスの攻撃をまともに食らってはおらず、直撃を防ぐ形で受け止める、躱す、技で防ぐ等の方法で全て捌かれた

 

ギャラドスも奮闘したが、パワーは圧倒的にラグラージの方が上であったため、防ごうにも強引に突破されてしまい、敗北を喫した

 

予想を上回られた完全な敗北…にもかかわらず、ギャラドスのことを"よく育てられている"と評価竜胆の言葉を葛葉は受け入れられなかった

 

 

(こんなに…こんなにも遠いのか…っ!四天王最強の強さは…っ!)

 

 

予想以上の竜胆の強さに、葛葉の表情は焦りと険しさを増す

 

 

「いけ…!ゴルバット…っ!」

 

 

ギャラドスを戻した葛葉は2体目にゴルバットを繰り出す

 

 

「まだ続けるのか?」

 

「当たり前だろ…!勝負はまだついてねぇ…!ゴルバット!"どくどく"!」

 

 

バトルの続行を宣言するとともに、ゴルバットの"どくどく"がラグラージに直撃し、猛毒状態にさせる

 

 

「ほう、状態異常…」

 

「まさか卑怯だなんて言わねぇよな?」

 

「もちろん、これも立派な戦い方じゃよ。でも…」

 

「ラグァァァ…ッ!」

 

「…っ!?」

 

「妾のラグラージは状態異常になった程度じゃ崩れないよ」

 

 

猛毒状態に苦しむ様子を一切見せず、それがどうしたと言わんばかりに咆哮を上げるラグラージに葛葉とゴルバットは気圧される

 

 

「上等だ…!」

 

 

だが、それで完全に戦意を掻き消されてしまうほど葛葉の苛立ちは小さくない

 

竜胆との第2ラウンドが始まる

 

 

 

 

「わあ…!凄い人の数…!」

 

 

密林の東…リゼ、レイン、レオス、エクスは主ポケモン:オニシズクモと対峙する20人程の参加者達がいる湖に辿り着く

 

 

「オニシズクモ、まだ弱ってないみたいだね」

 

「それに比べて参加者の方々の様子はかなり苦しそうですね…」

 

 

周囲を見渡したレインとレオスが推測を述べる

 

オニシズクモの体には、ここまでのバトルで受けたダメージの痕こそ見受けられたが、その動きは未だ鈍ってはいなかった

 

対して、オニシズクモとのバトルに臨む参加者達は険しい表情を浮かべていた

 

 

「あそこで静観している人達…。もしかして、オニシズクモが弱るまでバトルに参加しないつもりなんでしょうか?」

 

「いや、あの人達の様子を見るに、おそらく既に脱落してしまったんでしょう」

 

 

バトルの場から離れたところで傍観している人達を指摘したリゼに、レオスが答える

 

チャンスが来るのを待つ者の表情は張り詰めているか、相手を出し抜くことの快感や興奮を想像してニヤニヤと笑みを浮かべることが多い

 

だが、傍観していた彼等の表情は暗く、悔しがっているようであり、そこからレオスは彼等が手持ちの3体全てが戦闘不能となり、脱落してしまった者達だと結論付けた

 

 

「主ポケモン強すぎだろ…!まだバトルが始まってから20分も経ってないぞ…!」

 

 

オニシズクモの強さが予想以上だったのか、エクスが声を上げる

 

 

「私達も加わりましょう!あのオニシズクモには回復技もあるって聞いてるし、今これ以上に参加者が減ったら厳しくなります!」

 

「そうだね!他の参加者も出来るだけカバーしつつ立ち回ろう!」

 

「そうするしかないですねぇ…。この試練がアローラのものと同じならオニシズクモを追い込んでからが本番になりますから」

 

「え?どういうことですか…?」

 

「実は…」

 

 

レオスの意味深な発言に問うエクスに、リゼが答える

 

 

 

 

現在、オニシズクモとのバトルに臨む参加者達はその周りを取り囲むように展開して、四方八方から攻撃を仕掛けていた

 

普通のポケモンであれば、大勢に囲まれて攻撃されると手も足も出ずにやられるものだが、主ポケモンには通用しない

 

規格外のタフさに身体能力、技の威力も桁違いでただの野生ポケモンとは比べ物にならないほどバトルに慣れた動きであった

 

数の暴力が劣っていたわけではない。単に、それに対抗できる力を主ポケモン:オニシズクモが有していた

 

 

「キシャァァァァ…ッ!」

 

「く、来るぞ…!一斉に攻撃して阻止するんだ…!」

 

 

一塊になっている3人のトレーナーのそのポケモン達に突っ込もうとするオニシズクモを見て、他のトレーナーの1人が声を上げる

 

そのトレーナーの呼び掛けに応じて、周囲のトレーナー達のポケモンが一斉に技を繰り出す

 

だが、技が直撃する直前にオニシズクモは大きく跳躍して回避…同時に狙いを定めていた3体のポケモン達に向かって"アクアブレイク"を仕掛ける

 

 

「ひぃっ…!ラ、ラクライ…!"スパーク"!」

 

「イ、イルミーゼ…!でんげきは"!」

 

「ハトーボー…!エアカッター"!」

 

 

狙われたポケモン達のトレーナーはそれぞれ指示を出して迎撃に打って出る

 

しかし、"スパーク"を繰り出したラクライは一瞬にしてオニシズクモの"アクアブレイク"に押し負け、イルミーゼとハトーボーの攻撃もその勢いを弱めることが出来ず、直撃する

 

 

「ラ、ラクライ…っ!?」

 

 

ラクライのトレーナー及びイルミーゼとハトーボーのトレーナーは一撃で戦闘不能となった自身のポケモンの元へ駆け寄る

 

このバトル中に何度もあったことが、その光景を目の当たりにした他のトレーナー達はオニシズクモに対する恐怖を覚え、後退りする

 

そして、戦意を喪失したその一瞬はオニシズクモに更なる攻撃の隙を与えることとなる

 

オニシズクモはすぐさま次の相手に狙いを定め、再び"アクアブレイク"を繰り出して突っ込む

 

 

「ひ、ひぃっ…!」

 

 

ここまでのバトルで一向に弱る様子もなく、理不尽にも思える強さを見せつけてきたオニシズクモ

 

それに自分が狙われたと認識した瞬間にトレーナー達は完全に臆してしまい、指示を出すことも出来なくなってしまった

 

 

「出番です!シュバルゴ!"てっぺき"!」

 

 

その時、レオスが投げたボールから飛び出した"きへいポケモン":シュバルゴがトレーナー達のポケモンとオニシズクモの間に割り入り、"てっぺき"によって高めた防御力を以てオニシズクモの"アクアブレイク"を受け止める

 

 

「ヤドン!"サイコショック"!」

 

「コダック!"ねんりき"!」

 

 

シュバルゴがオニシズクモの攻撃を受け止め、その動きを一瞬止めたと同時に、レインのヤドン(ガラル)の"サイコショック"が炸裂し、続くエクスの"あひるポケモン":コダックの"ねんりき"によってオニシズクモを大きく吹き飛ばし、地面に叩きつける

 

 

「今だよ、バタフリー!"しびれごな"!」

 

 

そして、オニシズクモが回避を取れない状態を見計らってリゼのバタフリーが"しびれごな"を繰り出し、麻痺状態にさせる

 

 

「た、助かった…。あ、ありがとうな…」

 

「礼なんて言う暇があったら立ってください!オニシズクモが麻痺状態で動きが鈍っている今こそ一斉攻撃のチャンスです!」

 

「そ、そうだな…!みんな聞いたな…!一斉攻撃だ…!」

 

 

レオスに促され、リゼ達と他のトレーナーは麻痺状態となってダウンしているオニシズクモに一斉攻撃を仕掛ける

 

繰り出された技は全てオニシズクモに直撃し、直後に大きな爆発を引き起こす

 

 

「や、やったか…!?」

 

「気は抜けないよ…!相手は主ポケモン、それもアローラで最も強い個体だってチャンピオンが言ってた…!この程度じゃまだ倒れないよ…!」

 

 

他のトレーナー達に気を抜かないようにレインが呼び掛けるなか、リゼはエクスのコダックに興味を示す

 

 

「凄い力ですね、エクスさんのコダック…!あんなに大きいオニシズクモを軽々と投げ飛ばしちゃうなんて…!」

 

「コダックは激しい頭痛に襲われた時に強力な力を発揮するんですよ。"サイコキネシス"ならともかく、"ねんりき"であれほど力の差があるポケモンに通用させられるのは流石といったところですねぇ」

 

「まあ、1発かますと一旦頭痛治るんでさっきみたいな威力を連発は出来ないですけどね」

 

「キシャァァァァ…ッ!!!」

 

「「「…っ!」」」

 

 

リゼ、レオス、エクスが会話を交えるなか、オニシズクモが爆煙を一瞬にして晴らしてしまうほどの咆哮を轟かせる

 

 

「これは…!やはり、そうきましたか…!」

 

 

その咆哮から、想定していた"ある厄介な展開"が起こることをレオスが察するとともに、オニシズクモは"アクアリング"を発動させる

 

 

「"アクアリング"…!ってことは、さっきの一斉攻撃でかなり弱らせれたんだ…!」

 

「とはいえ、"アクアリング"による回復は厄介です…!状況が厳しくなる前に更にダメージを与えないと後が大変ですよ…!」

 

「なら任せてください!コダック!"かなしばり"!」

 

 

エクスの指示を受け、コダックが繰り出した"かなしばり"によってオニシズクモの"アクアリング"が封じられる

 

 

「よぉし!これでもう回復は…!」

 

「エクスさん…!"アクアリング"は繰り出してから数秒間毎に微量だけどずっと自動で回復する技です…!"かなしばり"は効果がないです…!」

 

「はぁ…!?"じこさいせい"みたいな技じゃないんですか…!?」

 

 

"アクアリング"の効果を知らなかったエクスはリゼから明かされたその内容に驚愕する

 

 

「キシャァァァァ…ッ!」

 

 

そして、意味のない"かなしばり"を受けたオニシズクモからその攻撃元であるコダックに向けて"ねっとう"が繰り出される

 

特性:"すいほう"によって威力を高められた"ねっとう"の直撃…更にその勢いに押し飛ばされ、大木に叩き付けられたコダックは一撃で戦闘不能となった

 

 

「コダック…!?」

 

 

エクスが倒れたコダックの下へ走るなか、他のトレーナー達はまだ立ち上がってくるオニシズクモに冷や汗を流す

 

 

「こ、この場の全員の一斉攻撃を受けてまだあんな力が出せるのかよ…!」

 

「ひ、怯むな…!あの体を見てみろ…!アイツも相当なダメージが溜まってる様子だ…!もう1度一斉攻撃を叩き込めば倒れるだろ…!」

 

「よし…!誰の一撃が最後になっても文句無しだからな…!」

 

 

再び全員での一斉攻撃を繰り出す

 

だが…

 

 

「パレェス…ッ!」

 

 

突如、イワパレスがオニシズクモの壁となるように地中から飛び出し、一斉攻撃をその身に受け止める

 

 

「な、なんだ…!?」

 

「き、急に野生のイワパレスが飛び出してきやがった…!」

 

「ま、まさか主ポケモンを守ってるのか…!?」

 

「なんで野生のポケモンが主ポケモンを庇うんだよ…!」

 

 

突然の出来事に他のトレーナー達が混乱するなか、リゼ達は冷静に次に起こる事態に気を引き締めていた

 

 

「野生ポケモンの介入…!ということは、さっきの咆哮は…!」

 

「もしかして、さっき話してた"アレ"ですか…!?」

 

「ええ、来ますよ…!主ポケモンの仲間が…!」

 

 

リゼ達が身構えるなか、周囲から夥しい数の羽音が聞こえ始め、それから数秒と経たない内に優に50を超える数のむしポケモン達が姿を現す

 

 

「こ、今度はなんだ…!?」

 

「わ、分からねぇ…!なんで野生のポケモンがこんなに沢山…!」

 

 

先程のイワパレス以上の事態にトレーナー達は慌てふためく

 

 

「お、おい…!あれ見ろ…!」

 

 

その最中、1人のトレーナーが声を上げる

 

そのトレーナーが指し示したのは場所にはオニシズクモ…そして、いつの間にかその傍に現れていた数体のパラセクトが"アロマセラピー"を発動してオニシズクモの状態異常を回復させている光景であった

 

 

「い、一体何処から湧いてきたんだ…!?」

 

「イワパレスが出てきた穴からだ…!このまま放っておくとやばいぜ…!」

 

「もうかなり弱ってんだろ…!?だったら早いとこ…!」

 

 

オニシズクモが態勢を立て直す前に決着を付けようと何人かのトレーナーが動く

 

 

「ヤンヤーッ!」「ストライッ!」「テッカ!」

 

 

そのトレーナー達の前に、そうはさせまいと野生のむしポケモン達が行手を阻み、攻撃を仕掛けてくる

 

 

「ぐっ…!邪魔する気か…!なら先にお前等から蹴散らしてやる…!ココロモリ!"エアスラッシュ"!」

 

 

むしポケモン達に対し、1人のトレーナーのココロモリが"エアスラッシュ"で攻撃を仕掛ける

 

だが、技を放つ直前にむしポケモン達の奥からオニシズクモの"ねっとう"が飛来し、ココロモリに直撃…戦闘不能に陥らせる

 

 

「なっ…!コ、ココロモリ…っ!」

 

「は、反則だろ…!この数の野生のポケモンに加えて、その奥から主ポケモンが攻撃してくるなんて…!」

 

「お、俺はもう最後の1体なんだ…!悪いがここは退かせてもらうぜ…!」

 

 

厳しさを増した状況…そして、ここまでのバトルで最後の1体まで追い込まれ、もう後が無いトレーナー達が一時撤退しようとこの場を離れようとする

 

 

「ドクケッ!」「ホイィッ!」

 

「う、後ろにも…!?」

 

「だ、駄目だ…!完全に囲まれてる…!」

 

 

だが、既に周囲はむしポケモン達に囲まれており、逃げることも困難となっていた

 

終わった…と、何人かのトレーナーがそう悟るなか、むしポケモン達が彼等に襲い掛かる

 

 

「いけ!インテレオン!"ねらいうち"!ヤドンは"サイコショック"!」

 

 

その時、レインのインテレオンとヤドンがそれぞれ攻撃を繰り出し、トレーナー達のポケモンに襲い掛かろうとしたむしポケモン達を撃破する

 

 

「た、助かったぜ…!あんた…」

 

「お前達!ヴィンさんから話がある!聞いてくれ!」

 

 

状況が悪くなっていくなか、レインの力強い声にトレーナー達は耳を傾け、"ヴィンさん"と呼ばれた男に目を向ける

 

 

「皆さん、特にこの場から一度逃げようと考えてる人はよく聞いてください!あのオニシズクモを倒すには、まず群がって来たむしポケモン達を倒し切る必要があります!でなければ、オニシズクモとのバトルに横槍を入れられるからです!」

 

 

"しかし…!"と、レオスは続ける

 

 

「あのオニシズクモは"アクアリング"を使った上に、その傍に何体か取り巻きがいます!これを放って置けば、せっかく削ったオニシズクモの体力を回復させられる上に、そこからもむしポケモンとのバトルに横槍を入れられてしまいます!」

 

 

"そこで…!"と、レオスは最後の言葉を述べる

 

 

「このレイン君が1人でオニシズクモとその取り巻きを相手します!その間に我々は協力してオニシズクモが呼び寄せたむしポケモン達を倒し切りましょう!」

 

 

レオスからの提案にトレーナー達がどよめく

 

 

「そ、それはつまり…!俺達が露払いをしてる間にその女にオニシズクモを倒させようって魂胆なんじゃねぇのか…!」

 

「その点はご安心ください。少なくとも私とレイン君はZリングとクリスタルを手に入れるつもりはありません」

 

「もし私がうっかりオニシズクモを倒しちゃった時は、今この場に残ってる人達の中から改めてZリングとクリスタルを手にする人を決めよう!もちろん、その中に私とヴィンさんは抜きで!」

 

 

Zリングとクリスタルは要らない…惜しむ様子一切なくそう断言したレインとレオスにトレーナー達は顔を見合わせる

 

 

「ほ、本当なんだろうな…?」

 

「ここで保身に走る人が多くなってしまえば、オニシズクモの打倒そのものが危うくなります。これはこの場に残っている皆さん全員がチャンスを掴むための提案です」

 

 

出し抜くにしても1人や2人では取り巻きのポケモンも傍にいるオニシズクモに敵うことは出来ない

 

それに比べたら、レオスの提案に乗った方が成功の可能性は高いと誰もが理解する

 

 

「分かった…!その提案に乗るぜ…!」

 

「お、俺もだ…!」

 

「こうなったらやってやる…!」

 

 

1人の承諾を皮切りにその場の全員がレオスの提案を受け入れる

 

 

「それじゃあ、皆さん!共に頑張りましょう!」

 

 

レオスの声掛けとともに、トレーナー達はむしポケモン達とのバトルに臨む

 

 

「よし、それじゃあ私も行ってくる!」

 

「お願いします、レインさん!」

 

「任せてよ!」

 

 

リゼに見送られて、レインはインテレオンとヤドンを連れてオニシズクモ達の下へ走り出す

 

 

「よし、レインさんが頑張ってくれる間に私達も…って、あれ?エクスさん、ポケモンは…?」

 

 

自分達もむしポケモンとのバトルに臨もうと意気込んだリゼだったが、その際にエクスが連れ出しているはずのポケモンが見当たらないことに気付く

 

 

「じ、実は俺…コダック1体しか持ってないからもう脱落しちゃったんですよね…」

 

「えぇぇぇぇぇ…っ!?」

 

 

エクスからのまさかの発言にリゼは大声を上げて驚く

 

 

「たしかに、上を飛んでいるドローンロトムからは一向に警告がありませんね…」

 

 

バトルに巻き込まれないよう、自分達の上空を飛んでいるドローンロトムを見たレオスはそう述べる

 

もし、エクスが1体目を出して以降から誰も連れ出さないというルール違反を犯そうとしていればドローンロトムから警告があるはず

 

しかし、それがないということは連れ出していないことを咎める必要がない

 

つまりは、脱落していることを示していると解釈できる

 

 

「そ、そんな…。一緒に頑張りましょうって協力したばかりなのに…」

 

「あはは…。いやぁ、やらかしちゃいましたよ…。とはいえ、せっかくここまで共に行動してきたんですから、このまま皆さんの近くで行く末を見届けようと思います」

 

「そうですか…。分かりました!離れてると危ないですから、私とレオスさんの近くにいてください!」

 

「ご迷惑おかけします」

 

 

同行を承諾したリゼにエクスがお礼を述べるなか、そんな彼をレオスは怪訝な様子で見つめる

 

 

(脱落した…?本当にそうなんでしょうか…?あの時に何か企んでそうな顔をしていた彼がこんなにあっさりと…?考えすぎでしょうか…?ここまで素直に協力はしてくれましたが…。どうしても引っかかりますねぇ…。何かを見落としている気がします…)

 

 

エクスへの疑心が晴れないレオスだが、今はむしポケモン達を倒すのが最優先

 

エクスへの警戒は引き続き意識し、リゼ達に続いてレオスもむしポケモン達とのバトルに臨む

 

 

 

 

「うわぁぁぁ…っ!サンドパン…っ!」

 

『あなたのポケモン3体全てが戦闘不能になりました。脱落です』

 

「くそっ…!また1人やられた…!」

 

「向こうの数は確実に減ってきてる…!これ以上の追加は無さそうだけど、こっちも残り10人もいない…!」

 

 

密林の南西…主ポケモン:エンニュートに挑むトレーナー達のバトルは佳境に迫っていた

 

ニュイの説得以降、この試練では、アンジュのビッパが"あなをほる"でエンニュートの周囲を出たり潜ったりを繰り返して注意を引きつけている間に全トレーナーで攻撃を仕掛けるという戦法で見事エンニュートを追い込むことに成功していた

 

だが、オニシズクモと同様にエンニュートも仲間の野生のほのおポケモンを呼び寄せ、一気に形勢が逆転…押し寄せて来たほのおポケモン達への対応の最中に横槍を入れてくるエンニュートの攻撃によって脱落者が続出していた

 

 

「アンちゃん…!ビッパは…!?」

 

「ずっと注意を引きつけようとしてる…!でも、最初の時と違ってもう見向きもされなくなってる…!」

 

「攻撃しては来ないと踏まれたか…!」

 

 

ニュイの想定では、エンニュートが仲間を呼び寄せた後もアンジュのビッパが注意を引きつけ、その間に群がって来たポケモン達を倒すはずであった

 

しかし、ビッパが注意を引きつけようとするだけで攻撃はして来ないことがエンニュートに早々にバレてしまい、結果呼び寄せてきたほのおポケモン達と共に攻撃を仕掛けてくる厄介な状況となってしまったのだ

 

 

(でも、アンちゃんのビッパがエンニュートにとって無害な存在だと認識されているなら、この場で唯一虚を突ける存在でもあるということ…!"あなをほる"が決まれば、エンニュートに大ダメージを与えられる…!今こそ、アンちゃんにトラウマを乗り越えさせるべき時…!)

 

 

だが、ニュイはこの状況を打開する方法を考えついていた

 

そして、それは同時にアンジュをこのイベントに参加させた目的である彼女が抱えるトラウマの克服にも繋がると思った

 

 

「アンちゃん…!今ならエンニュートはビッパを警戒してない…!攻撃を確実に決められるチャンスだよ…!」

 

「攻撃…!?で、でもソシエ…!それだと話が違う…!」

 

 

ニュイの提案にアンジュは動揺する

 

予定では、アンジュのトラウマ克服はこの後に向かうじめんの試練で行うはずであり、ここでは援護に徹するだけでいいという話であった

 

 

「アンちゃん…!このままだと全員全滅…最悪、私達も脱落するかもしれない…!この状況を打破するには、アンちゃんの力が必要なんだよ…!」

 

「…っ!ビッパ…っ!」

 

「ビパ…?」

 

 

自分がやらなければこのまま全員脱落…その可能性を告げられたアンジュは何かに苛まれるような苦しい表情でビッパに呼び掛ける

 

アンジュに呼ばれ、彼女の下まで戻って地面から顔を出したビッパは彼女の苦しそうな表情に不安そうな目を向ける

 

 

「ビッパ…っ!エンニュートに"あなを…"っ!」

 

 

何かに抗おうとする苦しそうな声でアンジュは指示を出そうとするが、言い切る直前で言葉が詰まる

 

そして、顔は恐怖に染まり、体はアーボックに睨まれたように硬直し、呼吸は荒くなっていった

 

 

「アンちゃん…っ!」

 

「ご、ごめん…ソシエ…。ここでは…無理だよ…」

 

 

アンジュは想像してしまった

 

ここで攻撃を繰り出し、その結果に起こるかもしれない全員が脱落するよりも"最悪な結果"を

 

バトルにおける1つ1つの行動の結果…それがどんな最悪を引き起こすか等、普通は誰も考えはしない

 

しかし、アンジュは知ってしまっている

 

バトルをする上で、最悪な結末が起こり得ることを

 

それによって、誰かを傷つけてしまうことを

 

大切なものを…傷つけてしまう恐怖を

 

 

(駄目か…。アンちゃん、そこまであの出来事が酷いトラウマに…)

 

 

苦しむアンジュの姿を見て、ニュイはその心情を察する

 

それと同時に、アンジュがそこまで苦しむなら、無理にそれを克服させようとするのは自分達の想いは間違っているのだろうかと考え始める

 

 

「ビパッ!ビパビッ!」

 

 

その時、ビッパが何かを訴えるようにアンジュに鳴き声を上げる

 

リゼと巴と共にウツロイドと対峙していた時と同じように…アンジュにしっかりしろと伝えているようであった

 

 

「ビッパ…。駄目なんだよ、ビッパ…!あの時とは状況が違うんだ…!」

 

「〜ッ!ビパァッ!」

 

「ビッパ…!?」

 

 

まだ話が付かない間に、何かを決意した様子のビッパはアンジュの指示も無しに穴へと潜る

 

 

「まさか…!ごめん、アンちゃん…!まずはここを切り抜けさせてちょうだい…!マフォクシー!"みらいよち"!」

 

 

混乱するアンジュに謝罪を述べ、ビッパの行動の意図を理解したニュイはエンニュートへ"みらいよち"の攻撃を仕掛けるよう、マフォクシーに指示を出す

 

マフォクシーは攻撃となる念の塊をエンニュートではなく、洞窟の天井付近に創られた空間の歪みの中へと放つ

 

そして、空間の歪みが消えた直後、何か仕掛けられたことに気付いたエンニュートはマフォクシーに狙いを定め、数体のほのおポケモン達と共に迫り来る

 

 

「マフォクシー!"サイコショック"!」

 

 

マフォクシーは"サイコショック"を繰り出して、迫るエンニュート達を迎撃する

 

ほのおポケモン達には"サイコショック"が直撃して返り討ちにすることが出来たが、エンニュートには持ち前の素早さでそれを回避され、マフォクシーは繰り出した"ヘドロばくだん"の直撃を受ける

 

主ポケモンからの一撃を受け、マフォクシーはなんとか持ち堪えるものの相当なダメージだったため膝を突いてしまう

 

そして、その隙を逃すまいとエンニュートはマフォクシーを畳み掛けようと追撃に出る

 

その時だった

 

 

「ビパァァ…ッ!」

 

 

エンニュートの真下の地面から飛び出したビッパが渾身の"あなをほる"を炸裂させ、エンニュートを上へと吹き飛ばす

 

吹き飛ばされたエンニュートは洞窟の天井にヒビを入れるほどの勢いで叩き付けられた後、そのまま地面へと落下してダウンするが、まだ戦おうと力を振り絞って起き上がらせる

 

 

「お、おい…!主ポケモンがかなり弱ってるぞ…!」

 

「トドメを決めるのは俺だぁ!」

 

 

そして、ちょうどその時にエンニュートが呼び寄せたほのおポケモン達を倒し切った生き残りのトレーナー達が最後の一撃を決めようと各々のポケモン達に指示を出そうとする

 

 

「申し訳ないけど…私の勝ちだよ!」

 

 

だが、彼等が指示を出し切る前に、エンニュートの頭上に"みらいよち"によって創り出された空間の歪みが再び出現し、そこからマフォクシーが放った念の塊が降り注ぎ、直撃とともに爆発を引き起こす

 

そして、爆発による煙が晴れたそこには、完全に倒れ伏したエンニュートの姿があった

 

 

『エンニュート、戦闘不能!ほのおの試練勝者…ニュイ・ソシエール!』

 

 

ドローンロトムの宣言が洞窟内に響き渡り、エンニュートを最後に倒すことが出来なかったトレーナー達は燃え尽きたように力無くその場に座り、倒れ込む

 

 

「ふぅ…。なんとか倒せた…」

 

「ビパァ!」

 

 

エンニュートを最後に倒すことが出来たニュイが安堵の息を吐くなか、そのチャンスを作り出したビッパがアンジュの下へ駆け戻るのを見てニュイも彼女の下へ歩み寄る

 

 

「なんで勝手なことしたんだ…っ!ビッパ…っ!」

 

 

だが、駆け戻ってきたビッパにアンジュが掛けたのは賞賛ではなく、叱咤の言葉だった

 

 

「お前がやったことをよく見てみろ…!エンニュートを吹き飛ばした時のあの天井のヒビ…!もしお前にもっと力があったら、あのヒビはもっと広がって、最悪崩落を引き起こしてたかもしれない…!吹き飛ばす先を誤れば、誰かを怪我させてたかもしれないんだぞ…!」

 

「アンちゃん…!落ち着いて…!」

 

 

ニュイの言葉で我に返ったアンジュは、先程の発言でしょんぼりするビッパに改めて目を向ける

 

 

「…ごめん。でも、無茶なことはしないでほしいんだ…。私はその結果で、誰かが傷つくのを見たくない…」

 

 

怒ったことへの謝罪を述べながら、アンジュはビッパを抱き締める

 

 

「…アンちゃん。道中で話した通り、これからアンちゃんの克服のためにじめんの試練に向かうつもりだけど…やれる?」

 

 

ニュイの問いかけに、アンジュは首を振って無理だと意思を示す

 

 

「…だよね。トラウマを克服しようなんて、そう簡単に出来るわけないよね…」

 

 

"でも…!"と、ニュイは言葉を続ける

 

 

「いざという時は、アンちゃんがバトルしないと誰かを助けられない状況があるかもしれないんだよ…?今のままで、これから困難が待ち受けてるかもしれないリゼちゃんとの旅が出来るの…?」

 

「それは…」

 

 

ここから先…次のジムがあるスメシシティの先には、これまでよりも強力なポケモンが生息する場所が道中に存在している

 

そこで何かあった時…バトルを避けて通れない状況に遭遇した時、今のままでリゼを守ることが果たして出来るだろうか

 

 

「アンちゃん、挑戦するだけ挑戦しようよ。それでも無理だったら、私はこれ以上なんとかしようとは思わないし、竜胆さん達にも手助けは要らないって言っておくから」

 

「…分かった」

 

 

今ここでトラウマを完全に克服することは不可能だろう

 

だが、ニュイ達が心配するように、これからのリゼとの旅のために少しでもこのトラウマを改善したいと思うアンジュは、恐怖に震える体を奮い立たせ、ニュイと共にじめんの試練へ挑みに向かう

 





リゼ・ヘルエスタ
手持ち:ポッタイシ、イーブイ、バタフリー
   サイホーン

アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ

葛葉
手持ち:リザード、ゴルバット、ギャラドス
   ガバイト

竜胆尊
手持ち:ラグラージ

エクス・アルビオ
手持ち:コダック

ニュイ・ソシエール
手持ち:マフォクシー、ムウマージ、ギャロップ

レイン・パターソン
手持ち:インテレオン、ヤドン(ガラル)、ウデッポウ

レオス・ヴィンセント
手持ち:バクーダ、シュバルゴ
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