にじさんじ×ポケットモンスター   作:Mr.ソロ

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第33話「じめんの試練!アンジュの決意!」

 

ーイベント前日の夜ー

 

RRRビーチのホテルに宿泊していたアンジュ、ニュイ、竜胆、郡道の4人は施設内にあるバーに集まっていた

 

 

「このメンバーで集まるのも久しぶりねぇ」

 

「最後に集まったのは全員がポケモンリーグに挑戦してた頃のコーヴァスシティでしたよね」

 

「懐かしいねぇ。あれからもう数年か〜」

 

「竜胆さんは四天王、郡道さんはジムリーダー、アンちゃんは道具の錬金術師で有名になったよね〜。本当に凄いですよ」

 

「道具の錬金術師ね〜…!ひゅ〜っ!かっこいい〜!」

 

「茶化さないでくださいよ、郡道先生…!それにソシエだって、今後ポケモンを主役にした競技を作るんでしょ?」

 

「へぇ、そうなのか!」

 

「面白いこと考えるわよね、ニュイは」

 

 

カクテルやお酒を楽しみながらアンジュ達は談笑に浸る

 

 

「…ところでさぁ、アンジュ。あんた、まだトラウマは克服出来てないの…?」

 

 

そんな時間が過ぎること30分…唐突に郡道が真剣な面持ちでアンジュに問いかける

 

 

「え、えっと…」

 

「美玲、今その話をしなくてもいいんじゃないかな?もしかして、もう酔ってる?」

 

「酔ってないわよぉ…。というか逆よぉ、尊ぉ…!今だからこそ聞いておく必要があるんじゃない…!」

 

「アンちゃんはまだ、トラウマを克服出来てはいない…んだよね?」

 

「す、少しだけ…」

 

 

郡道に問いに対し、アンジュはウツロイドと対峙した時のことを話す

 

 

「なるほどねぇ…。でも、オニシズクモの時は無理だったんでしょ…?あれはなんでなの…?」

 

「た、多分…周りに人も相手のポケモンも大勢いたから…だと思う…」

 

「バトルの最中に他人を巻き込んでしまうかもしれない…。まあ、乱戦になればそういう可能性もなくはないでしょうねぇ…」

 

「美玲。アンジュが抱えてるトラウマについては知っておるはずじゃろ?そして、それがどれだけアンジュの心に深い傷を残したのかも。もうこの話はよいじゃろう?」

 

「分かってるけど、良くはないでしょ…!だって、今それを克服出来てないままでいるのはどうかと思うじゃない…!」

 

「と言うと…?」

 

「アンジュは今、リゼと旅をしてるんでしょ…?バトルもまともに出来ないで何で一緒に来たのよ…?」

 

「それは…親御さんに頼まれたのもあるけど…。リゼ、結構無茶することもあるし、個人的にも心配だったから…」

 

「それで…?これからも付いて行くの…?」

 

「そ、それはもちろん…」

 

「なら、はっきり言っておくわよぉ…。アンジュ…今のままだと、この先あんたは必ずリゼの足を引っ張ることになるわ…!」

 

 

郡道の言葉に、アンジュの表情が悲痛に歪む

 

 

「美玲…酔ってるからかもしれないけど、言い過ぎじゃよ」

 

「事実だと思うけどねぇ…。じゃあさ、尊とニュイはこの先の旅で何かあった時、今のアンジュがちゃんとリゼを助けられると思う…?」

 

 

郡道の問いに、竜胆とニュイは口を噤んでしまう

 

 

「スメシシティの次、オウマシティまでは良いとして…!その後のエニカラ雪山にメイフ砂漠…!スローンズ洞窟の奥底もそうだけど、あそこの野生ポケモンは強力な個体が出現しやすいのよぉ…!」

 

 

"それにぃ…!"と、郡道は続ける

 

 

「近年、ウルトラビーストの出現も増えたって聞くじゃない…!アンジュとリゼも遭遇したそうだけど、その時は白雪さんが一緒にいたんでしょ…!次また出くわした時に2人だけだったら無事で済むか分からないわよぉ…!」

 

「そう言われると…それはたしかに心配だね…」

 

 

郡道が示した理由に、竜胆は肯定を示す

 

 

「で、でもアンちゃんのゴルーグなら人を乗せて空を飛べるし、それでも十分…!」

 

「ニュイ…オニシズクモとのバトルでそれを阻止されたこと忘れたのぉ…?」

 

 

アンジュをフォローするニュイに、郡道は最もな指摘で切り返す

 

逃走手段を持ち合わせていても、それを封じられれば最後はバトルで切り抜けるしかない

 

だが、それが場合によっては出来ないなら、アンジュが足手まといになることは否定出来なかった

 

 

「いっそのこと、リゼは葛葉君達と一緒に旅させたらいいんじゃなぁい…?仲良いみたいだし、これから先のことを考えたらあの子達との方が安心だと思うのよねぇ…」

 

「…やっぱり、そうなのかな…?」

 

 

今にも泣き出しそうな声で、アンジュは自身の心中を口にする

 

 

「私も思うんだよね…。このまま一緒に行ってもいいのかなって…。でも、もしリゼに何かあったらって考えたら怖いんだ…。その瞬間に私が傍にいないことが…守ってあげられないことが…凄く怖いんだ…」

 

 

今の自分が不甲斐ないことを分かっている上で、それでもリゼのことが心配で傍にいてあげたい

 

その葛藤を吐露したアンジュの目から涙がポロポロと零れ落ちる

 

そんなアンジュをニュイと竜胆が哀れむなか、見るからに不機嫌そうな郡道が声を上げる

 

 

「だったら、今こそトラウマを克服すべき時でしょ…!アンジュ…あんた、明日のイベントに参加しなさい…!」

 

 

先程までとは打って変わった郡道の発言に、アンジュ達は目を見開く

 

 

「な、なんで明日のイベントに参加することがアンちゃんのトラウマ克服に繋がるんですか…?」

 

「それはもちろん、舞元のイベントにその要素が含まれてるからよぉ…!」

 

「な、内容が分かってるんですか…!?」

 

「本場アローラ地方以上…最も強力な主ポケモン達による試練。それを大人数による競走形式で行う…じゃよね?美玲」

 

「わざわざ主ポケモンを連れて来たのと参加人数の多さからして、それしかないと思う…!そしてぇ…!このイベントにはアンジュが克服しないといけない要素が2つあるのよぉ…!」

 

 

と、郡道はヒクつきながら指を2本V字で突き出して言葉を続ける

 

 

「1つは乱戦…!競走…とは言っても、多分あの主ポケモン相手だと他参加者との協力が必須…!それに前みたく仲間を呼び寄せる可能性もある…!もう1つは倒すべき相手である主ポケモンが非常に強力な個体だってことぉ…!過剰かもだけど、アレに立ち向かえられたら上出来でしょ…!」

 

「この先起こるかもしれない困難をイベントというある程度安全が確保されている状況で体験できる…。たしかに、トラウマの克服をするには絶好の場かも…」

 

 

郡道の説明に竜胆が納得を示すなか、そう簡単にトラウマと向き合うことが出来ないのか、アンジュの表情は暗く俯いていた

 

それを見兼ねたニュイが、アンジュの手を握り締める

 

 

「アンちゃん…!やってみようよ…!リゼちゃんのためだけじゃなくて、アンちゃん自身のためにもこの機会を見逃がしちゃ駄目だと思う…!1人で向き合うのが怖いなら、私が一緒にいてあげるから…!」

 

「ソシエ…」

 

 

ニュイの想いも聞いたアンジュは、まだ恐怖の色が残っていながらもゆっくりと頷き、参加の意志を示す

 

 

 

 

ー現在ー

 

 

「いた…!アレがここの主ポケモン:バンバドロ…!」

 

 

密林の西…断崖絶壁に囲まれた通路を抜けた先にある広い空間に出たアンジュとニュイは、その奥の台座で佇む主ポケモン:"ばんばポケモン":バンバドロを視界に捉える

 

一般的なバンバドロの高さは2.5m前後だが、目の前の主ポケモンはそれを遥かに上回っており、約4m程の大きさを有していた

 

その巨体に加え、主ポケモンとして佇む姿・雰囲気にほのおの試練で相対したエンニュート以上の緊張感を覚えたニュイは冷や汗を流す

 

 

「アンちゃん…心の準備はいい?」

 

 

そのバンバドロを前に、ニュイはアンジュを見る

 

ほのおの試練を終えてから、ここに辿り着くまでの道中で覚悟を決めていたからか、アンジュは呼吸こそ少し荒いものの、その表情からは恐怖に立ち向かおうとする意志を感じられた

 

 

(ほのおの試練では場所が悪かっただけに、その恐怖に押し潰されちゃったんだと思うけど、今のアンちゃんはあの時よりも戦おうとする意志がある…!)

 

 

洞窟という閉所な場所での乱戦に比べ、バンバドロとバトルするこの場は大きく開けた場所であり、何よりも大勢の人やポケモンもいなかった

 

そのことで、アンジュが想像する最悪の状況を生み出してしまう要因が限りなく無くなり、彼女は戦意を保つことが出来ていた

 

 

「ハァ…!ハァ…!」

 

 

だが、まだ恐怖が勝っているらしく、アンジュはバンバドロの下へ進み出すことが出来ないでいた

 

 

「アンちゃ…」

 

「ビパーッ!」

 

 

アンジュには後押しが必要だと思ったニュイが声を掛けようとした時、やる気満々の様子のビッパがアンジュに鳴き声を上げ、前に進み出る

 

 

「ビッパ…」

 

「ビパァッ!」

 

「…ありがとう。あんなこと言った後なのに、私を勇気付けようとしてくれてるんだな…」

 

 

アンジュはしゃがみ込み、まだ恐怖に震える手でビッパの頭を撫でた後、意を決した表情で立ち上がる

 

 

「でも、お前の力じゃ主ポケモンには対抗出来ない。だから、ここは私とゴルーグの2人でバトルするよ。ソシエと一緒に見守っててな」

 

 

ビッパにそう言い残し、ソシエに一瞥してからアンジュはバンバドロの下へ進み出す

 

その後ろ姿をニュイはビッパを抱えながら見守る

 

 

(頑張って…!アンちゃん…!)

 

 

心の中でアンジュを応援するなか、ニュイはふとあることに気付いた

 

 

(よく見ると穴が沢山空いてる…。あのバンバドロが掘った後…?いや、どの穴も巨体より小さい…。もしかして、仲間のポケモンの跡…!)

 

 

この広い空間の地面には、サイズが異なる穴が幾つも空いており、これら全てはバンバドロが呼び寄せた仲間のポケモンが作ったものだろうとニュイは推測した

 

今はその姿が一切見当たらず、気配も感じられないが、自分達が参加したほのおの試練以上に協力が出来ていなかったとされるここの試練で、バンバドロが呼び寄せたポケモン達をここを去った彼等が倒し切っているとは考え辛かった

 

 

(相手を全滅させたから退かせたってことなのかな…?だとしたら、アンちゃんとのバトルで追い詰められたら呼び寄せていくる可能性は十分あるかもしれない…!その時はアンちゃんの邪魔をさせないように、私が対処しないと…!)

 

 

もしものことを想定しつつ、ニュイはマフォクシーにアイコンタクトを送り、その意図を察したマフォクシーは無言で頷く

 

 

「ふぅ…!」

 

 

バンバドロが佇む台座の前まで来たアンジュは深呼吸し、モンスターボールを構える

 

 

「頼んだよ…!ゴルーグ!」

 

 

アンジュの投げたボールからゴルーグが飛び出す

 

 

「ゴルーグ、私に力を貸してほしい…!」

 

 

アンジュの呼び掛けを受けて、ゴルーグは彼女の方へ振り向く

 

その時、ゴルーグの動きが一瞬止まるが、すぐにバンバドロへと向き直った

 

 

「…ありがとう、ゴルーグ。それと、こんな情けない私でごめんね…」

 

 

ゴルーグにだけ聞こえるような小さい声で、アンジュは感謝と謝罪の言葉を述べた

 

ゴルーグは自身に呼び掛けたアンジュの表情から、予期していなかったものを感じた

 

表情が無機質でなければ、見守っていたニュイはゴルーグへの違和感を感じられたかもしれない

 

だが、アンジュのトラウマをよく知るばかりか長い付き合い故に何を考えているかも分かってしまったゴルーグはそれをニュイやビッパに悟らせないよう取り繕った

 

 

(…ごめん、ソシエ。自分のことは自分がよく分かってる…。このトラウマはもう治らない…。治しちゃいけない…。それでも、私はこれからの旅でリゼに何かあった時に何が何でも守りたい…!だからせめて、どうなろうと戦う意志だけは折れないようにするよ…!)

 

 

乗り越えられない、乗り越えるべきではないトラウマとリゼへの想い

 

その2つを解決する、ある1つの方法に至ったアンジュはそれを全うするための心も折れてしまわないために、主ポケモン:バンバドロとのバトルに臨む

 

 

 

 

密林の南…くさの試練の場所となる巨大な大樹の周りでは、そこに集ったトレーナー達と主ポケモン:ラランテス、呼び寄せられた仲間のくさポケモン達とのバトルが佳境に差し掛かっていた

 

 

「ゲコガシラ…!"つばめがえし"!」

 

「リグレー…!"サイケこうせん"!」

 

「ハクリュー…!"ドラゴンテール"!ジャランゴ…!"ドラゴンクロー"!」

 

 

この試練に挑んだひまわり、凛月、天宮の3人は迫るウツドン、コノハナ、タマゲタケ等のくさポケモン達をそれぞれのポケモン…"あわがえるポケモン":ゲコガシラ、"ブレインポケモン":リグレー、RRRビーチ滞在中にミニリュウとジャラコが進化を果たした"ドラゴンポケモン":ハクリューと"うろこポケモン":ジャランゴで迎撃する

 

 

「ど、どんだけおんねん…!」

 

「かなり数は減らせたと思う…!もう10体もいないよ…!でも…!」

 

「まだラランテスの傍のポケモン達も残ってるよ…!」

 

 

くさの試練では、最初こそ主ポケモン:ラランテスの強さの前にトレーナー達は協力してバトルしていた

 

しかし、追い込まれたラランテスが仲間を呼んだ直後に状況は一変

 

呼び寄せられたくさポケモン達を優先して倒す者とそれを無視してラランテスを倒そうとする者に分かれてしまった

 

これにより戦力が分散…くさポケモン達を相手にしていた者達は苦戦しつつもその数を減らしていくことが出来ていたが、ラランテスに挑んだトレーナー達は戦力が半減したために返り討ちとなった

 

現在では、残るトレーナーはひまわり達を含めて数人…対するラランテスはその傍にラフレシアとワタシラガを従え、更に数体のくさポケモン達が残っており、状況は明らかにひまわり達の方が劣勢であった

 

 

「ラフゥー…ッ!」「ワタァー…ッ!」

 

 

そして、更に悪いことに天候は晴れ状態となっており、一部のくさポケモンに有効に働くだけでなく、晴れ状態によって真価を発揮する技"ソーラービーム"が幾度なくトレーナー達を襲った

 

そして、ひまわり達に向けてラランテスの傍にいるラフレシアとワタシラガが今まさに"ソーラービーム"を放とうと構えた

 

 

「りっちゃん…!あまみゃ…!また来る…!」

 

「避けられない…!ベイリーフ…!チェリム…!受け止めて…!」

 

「ジャランゴもお願い…!」

 

 

本来であれば、"ソーラービーム"はチャージに時間のかかる技だが、晴れ状態ではそれが大幅に短縮され、ほぼノータイムで放つことが出来る

 

そのため、攻撃が来ると分かった時には既に回避が間に合わないことを悟った凛月と天宮はそれぞれのポケモンに指示を出し、ベイリーフ達は"ソーラービーム"を受け切る

 

幸い、これまでは凛月のベイリーフの"ひかりのかべ"の効果による威力半減と晴れ状態において発動するチェリムの特性:フラワーギフトによって特防が高められていたことでなんとか持ち堪えることが出来ていた

 

しかし、これまでの疲労もピークに達しており、技を受け切ったもののベイリーフ達は膝を突いてしまう

 

 

「ベイリーフ…!チェリム…!」

 

「ジャランゴ…!」

 

 

凛月と天宮がベイリーフ達の下へ駆け寄る

 

 

「うわぁぁぁぁぁ…っ!!」

 

 

その時、少し離れた場所で凛月達と同じく、くさポケモン達とバトルしていたトレーナー達から悲鳴が上がる

 

ラフレシア達が凛月達に攻撃していた間に、ラランテスは他のトレーナー達に襲いかかり、彼等のポケモン全てを瞬く間に戦闘不能に陥らせた

 

それにより、この場に残された参加者はひまわり達の3人のみとなった

 

 

(私達のポケモンも限界…!この状況で主ポケモンと10体近くいるポケモン達を相手にするのは…!)

 

 

絶望的な状況に凛月が敗北を悟り始めるなか、残り数体のくさポケモン達が一斉に彼女達目掛けて攻撃を仕掛ける

 

 

「も、もう駄目だ〜〜〜…っ!」

 

「みゃ〜〜〜…っ!」

 

 

万事休す…戦意が喪失したひまわりと天宮が悲鳴を上げる

 

 

「リザード!"かえんほうしゃ"!」

 

「ニャルマー!"つばめがえし"!」

 

 

だが、ひまわり達の後ろから飛び出してきたリザードとニャルマーの攻撃によって、くさポケモン達は返り討ちにされる

 

 

「ふぇ…?も、もしかして…このリザードとニャルマーは…!」

 

「みんな…!遅くなってごめん…!」

 

「兄やん…っ!」

 

「葛葉さん…っ!」

 

 

ピンチに颯爽と駆け付けた葛葉と叶の登場に、ひまわり達は希望を取り戻す

 

 

「おい葛葉ァ!お前が兄やんを引き止めたせいでひま達危ないところやったんやからな!」

 

「俺は引き止めてねぇよ。叶が勝手にやったんだろうが」

 

「葛葉が変なことしなければ兄やんがそんなことすることもなかったんや!」

 

「まあまあ、ひまちゃん落ち着いて…」

 

「そんで?残ってんのは俺達だけか?相手は…主ポケモンにラフレシアとワタシラガか」

 

「葛葉、僕達は…」

 

「分かってるよ、主ポケモンにトドメは刺さないだろ。そもそも俺が欲しかったのは別のところのZクリスタルだ。ここのには興味ねぇよ」

 

 

そう言うと、葛葉はリザードと共にラフレシアとワタシラガに向かって行く

 

 

「あの2体は俺に任せろ。叶は姉ちゃん達のサポートだ」

 

「ヘマするなよ、葛葉」

 

「しねぇよ。むしろ速攻で終わらせてすぐにそっちを手伝ってやるよ」

 

 

ラフレシア達を葛葉に任せ、叶はニャルマーに加えてジャノビー、テッシードを繰り出す

 

 

「たしか、あまみゃはZクリスタル要らないんだよね?」

 

「はい…!」

 

「よし…!ひまちゃん、凛月さん!ラランテスの注意は僕とあまみゃが引き付ける!2人は無理しない程度に戦って、ラランテスの限界が近くなったら一気に攻め込んで!」

 

「分かった!」

「分かりました!」

 

 

叶の提案にひまわりと凛月は声を合わせて了承する

 

 

「ニャルマー、ジャノビー!ラランテスの周りを動き回れ!テッシードは"ミサイルばり"!」

 

「ハクリュー、ジャランゴ!ベイリーフ達のカバーに回って!」

 

 

叶と天宮が指示を出し、それぞれのポケモン達が動き出す

 

ニャルマーとジャノビーは持ち前の素早さを活かしてラランテスの周りを動き回って撹乱…下手に攻撃はせず、ラランテスからの攻撃を避けることに専念する

 

そこへ離れたところからテッシードが"ミサイルばり"で攻撃…ニャルマー達に気を取られているラランテスにダメージを与える

 

 

「ララァァァ…ッ!」

 

 

ちょこまかと動き回るニャルマー達と離れたところからチクチクと攻撃してくるテッシードにラランテスは咆哮を上げて激昂…"ソーラーブレード"を繰り出して周囲を大きく斬り払う

 

ニャルマーとジャノビーは飛び退いてこれを躱すが、その隙にラランテスはテッシードへと迫り、"シザークロス"を繰り出す

 

 

「テッシード!"ジャイロボール"!」

 

 

テッシードは"ジャイロボール"で迎え撃つが、力はラランテスが圧倒的に上であり、数秒と持たずに押し返され、吹き飛ばされてしまう

 

 

「ひまちゃん…!凛月さん…!今だ…!」

 

「ゲコガシラ!"つばめがえし"!」

 

「ベイリーフ!"のしかかり"!チェリム!"てだすけ"!」

 

 

ラランテスが"シザークロス"を決め切った瞬間、叫ぶ叶に応じてひまわりと凛月が指示を出す

 

ラランテスの両側面からゲコガシラとベイリーフはチェリムの"てだすけ"を受けて威力の高まったそれぞれの技を繰り出し、炸裂させる

 

 

「ララァ…ッ!」

 

 

攻撃が効いたのか苦悶の鳴き声を上げるラランテスだが、そう長くは怯まず、即座にベイリーフ達への反撃に"リーフブレード"を繰り出す

 

 

「ハクリュー!"ドラゴンテール"!ジャランゴ!"てっぺき"!」

 

 

だが、ベイリーフ達の前にハクリューとジャランゴが飛び出し、それぞれ指示された技でラランテスの攻撃を対処する

 

 

「ニャルマー!"つばめがえし"!ジャノビー!"たたきつける"!」

 

 

そこへニャルマーとジャノビーが背後からラランテスへ攻撃を繰り出し、炸裂させる

 

無防備な背中への攻撃で大ダメージを受けたラランテスは前のめりに倒れていく

 

だが、倒れ切る前に左腕の鎌を地面に突き刺して持ち堪え、直後に後ろへ振り向きながら右腕の鎌を振り切った"リーフブレード"をニャルマーとジャノビーに炸裂させる

 

更に、ラランテスは続けて"ソーラーブレード"を繰り出してハクリューとジャランゴに炸裂させる

 

 

「ニャルマー…!ジャノビー…!」

 

「ハクリュー…!ジャランゴ…!」

 

 

攻撃を受けて大きく吹き飛ばされるポケモン達に叶と天宮が叫ぶ

 

その間にも、限界まで追い込まれたことで最後の力を振り絞る余りに半ば暴走状態に陥ったラランテスはベイリーフとゲコガシラに突っ込んでいく

 

 

「ひまちゃん…!凛月さん…!回避を…!」

 

 

叶が回避をするよう叫ぶが、ベイリーフもゲコガシラも体力の限界が近く、迫るラランテスの攻撃に対する回避は不可能であった

 

やはり無理か…ひまわりと凛月がそう思い掛けたその時だった

 

 

「リザード!"かえんほうしゃ"!」

 

 

ラランテスの側面からリザードの"かえんほうしゃ"が繰り出されて直撃…効果抜群、炎に包まれたラランテスは苦悶の咆哮を上げ、その動きを止める

 

 

「姉ちゃん!りつきんさん!かませぇっ!」

 

 

ラフレシア達を倒し終えて窮地を救いに来た葛葉の援護を受け、ひまわりと凛月は最後の指示を出す

 

 

「ゲコガシラ!"つばめがえし"!」

 

「ベイリーフ!"のしかかり"!」

 

 

ゲコガシラの"つばめがえし"とベイリーフの"のしかかり"が連続して炸裂し、ラランテスは仰向けに倒れ伏す

 

そこへドローンロトムが接近し、ラランテスの様子を確認する

 

 

『ラランテス、戦闘不能!くさの試練勝者…桜凛月!』

 

 

そして、ドローンロトムの判定の結果から凛月の勝利が告げられる

 

 

「わ、私…?」

 

「やったね!りっちゃん!」

 

「おめでとう〜!りっちゃ〜ん!」

 

 

勝利の実感が湧かずに惚ける凛月に、ひまわりと天宮が抱き着いて喜ぶ

 

 

「お、重い〜…!」

 

「あ〜!ライン越えたな〜、りっちゃん!そんなこと言ったら退いてあげないよ〜ん!」

 

「あげないよ〜ん!」

 

 

和気藹々とする3人の少女達…その光景を見て緊張の糸が解けた叶はニャルマー達を労いながら離れたところで樹に腰掛ける葛葉の下へ歩み寄る

 

 

「お疲れ様。本当に早かったな」

 

「相性有利な相手だからな。手こずるわけにはいかねぇよ」

 

 

ぶっきらぼう気味に答える葛葉に"やれやれ"と溜め息を吐きながら、叶はその隣に腰掛ける

 

 

「…竜胆さんに言われたことを気にしてるのか?」

 

「気にする必要はねぇって思ってる…。強さを求めたら強くなれねぇなんて訳分からねぇだろ…」

 

「でも、他ならない四天王の言葉…。何かしら意味があるんじゃないかとは思うんだろ?」

 

 

叶の指摘に、葛葉はこくりと頷く

 

 

「まあ、今考えても分からないなら一旦気にしなくてもいいんじゃないか?それに言葉の真意がなんであれ、見当違いなことかもしれないしね。この先、葛葉が四天王やチャンピオンに勝る強さを得られないなんてまだ誰にも分からないよ」

 

 

"ただ…"と叶は続ける

 

 

「今の葛葉は少し焦り過ぎてると思うな。僕達はまだトレーナーになって日も浅いし、ベテランのトレーナーは当然だけど、同世代のライバルに負けることだっておかしくはないだろ?お互いに強くなる途中なんだから」

 

「強くなる途中…。たしかに、その通りかもな」

 

 

最強のトレーナーになる道はそう簡単ではない

 

故に、まだ自分が未熟なのは当然のことであり、既に経験を豊富に積んだトレーナーとの実力差があるのは当然、同じ時期に旅立った同世代のライバルに負けることがあることもおかしい話ではない

 

 

「四天王やチャンピオンだって、勝ち負けを繰り返して今の強さに至れてると思うよ。それにドーラさんと比べられちゃうのは仕方ないんだし、今は割り切った方がいいよ」

 

「…そうだな。俺の最終目標はポケモンリーグで優勝して、その後のチャンピオンリーグで頂点に立つことだ。それに余計なもんに精神を乱されちゃ、本領も発揮出来ないかもしれないしな」

 

 

叶のアドバイスを聞いて少し気が楽になったか、葛葉の表情が和らぐ

 

 

「終わりよければなんとやらだ…!それまでの過程での負けも屈辱も全部飲み込んで強さに変えて、最後には俺が頂点に立つ…!」

 

 

竜胆の言葉…その真意は不明なままだが、以前までのイキイキとした様子を取り戻した葛葉を見て、叶は安堵の笑みを浮かべた

 

 

 

 

「ゴルーグ!"シャドーパンチ"!」

 

 

密林の南西…じめんの試練にて、アンジュはゴルーグと共に主ポケモン:バンバドロとバトルしていた

 

ゴルーグの"シャドーパンチ"とバンバドロの"10まんばりき"が衝突し、それによって生まれた衝撃がバトルを見守るニュイの下に届く

 

 

「主ポケモンと互角だなんて…!やっぱり、アンちゃんのゴルーグは強い…!」

 

 

目の前で繰り広げられるバトルに、ニュイはそう声を漏らす

 

 

(それにしても、思いの外普通にバトル出来てるな…アンちゃん。1対1なら問題はないってことなのかな?)

 

 

ほのおの試練からここまで来る間に時間があったとはいえ、トラウマに苛まれた後で比較的あっさりとアンジュがバトルに臨めていることにニュイは少し驚いていた

 

だが、アンジュは以前にウルトラビーストという強力なポケモンと対峙出来ていた事実から、バトルそのものに対する抵抗はある程度改善されているのではないかという結論に至った

 

 

(なら、あとは乱戦でも戦えるようになればトラウマは克服出来そう…!でも、なんだろう…この違和感…。アンちゃんはバトル出来てるはずなのに…何か昔とは違うような…)

 

 

アンジュのトラウマ克服に希望を見出したかと思えば、ここまでのバトルから違和感を感じ取ったニュイは不安気な表情を浮かべる

 

 

「お〜…!アンジュ頑張ってるね!」

 

 

その時、後ろから声が聞こえてニュイが振り返るとそこには竜胆の姿があった

 

 

「竜胆さん…!はい…!乱戦に関してはかなり大変そうなんですけど、1対1なら相手が相当強いポケモンでもバトルは出来るみたいです…!ただ…」

 

「どうしたんじゃ?ニュイ」

 

「アンちゃん、昔バトルした時の雰囲気とは違う気がするんです…」

 

 

ニュイの疑問を聞いた竜胆は改めてバトルしているアンジュ達を見る

 

 

「…なるほど、そういうことか」

 

 

数秒後、ニュイが感じた違和感の正体に気付いた様子の竜胆はアンジュの下へ歩み寄る

 

 

「ゴルーグ…!まだやれる…!?」

 

 

バトルを始めて数十分が経過…絶え間ない攻防を繰り返してきたことで疲弊してないか訊ねるアンジュに、ゴルーグはこくりと頷いてバトル続行の意志を示す

 

 

「ありがとう、ゴルーグ…。もう少しだけ頑張って…。私も、バトルへの恐怖が少しでもマシになるように…」

 

「アンジュ」

 

 

アンジュが気合を入れ直そうとしたところで、後ろから竜胆が声を掛けられる

 

 

「尊様…!?いつからここに…!いや、それよりもここから退がって…!」

 

「ううん、退がるのはアンジュの方だよ」

 

 

優しい声音…しかし、竜胆の表情から自身に対する哀れみを感じ取ったアンジュは言葉を詰まらせる

 

 

「だってアンジュ、勝つ気ないんでしょ?」

 

 

そして、竜胆が続けて口にした言葉でアンジュの顔色が一変する

 

 

「み、尊様…?何言ってるの…?私めちゃくちゃ必死に…」

 

「必死なのは見たら分かるよ。でも、それは"戦うこと"にであって、"勝とうとする"ことにじゃないよね?」

 

 

図星を突かれた…そう言わんばかりにアンジュの呼吸は荒さを増し、額からは大量の冷や汗が流れ始め、目は見開いていた

 

 

「アンジュだけじゃない、ゴルーグからも覇気を感じられなかった…それにバンバドロからも。勝つためのバトルが出来ない以上、続ける意味はないよ。だから退がって」

 

「…っ!」

 

 

哀れむと同時に何かを咎めるような声音で告げられた言葉にアンジュは何も言い返すことはなく、ゴルーグをボールに戻し、顔を俯かせてニュイの下へ重い足取りで戻って行く

 

2人の会話が聞こえていないニュイが突然バトルを止めたアンジュに駆け寄るなか、竜胆はバンバドロと向かい合う

 

 

「礼を言うぞ、バンバドロ。お主、アンジュとゴルーグが本気で戦う気がないと分かっていて手を抜いておったんじゃろ?」

 

 

竜胆の礼に、バンバドロは肯定も否定も示さずにただ彼女を見つめる

 

 

「優しいんじゃね、お主は。でも、最後がこれだと消化不良だよね?だから、妾が相手してあげる!いけ!ウーラオス!」

 

 

バンバドロにバトルを申し込み、竜胆は"けんぽうポケモン":ウーラオスを繰り出す

 

本気でバトルに臨もうとする相手…竜胆とウーラオスをそれと認めたバンバドロは咆哮を上げる

 

直後、周囲に出来ていた穴からディグダやサンドパン、ホルード等のじめんポケモン達が顔を出し、ウーラオスを取り囲む

 

そして、再びバンバドロが咆哮を上げるとともに一斉にウーラオスへと攻撃を仕掛ける

 

 

「ウーラオス!"すいりゅうれんだ"!」

 

 

だが、ウーラオスは自身を取り囲み仕掛けてきたじめんポケモン達全てに"すいりゅうれんだ"を炸裂させ、瞬く間に一撃のもと戦闘不能にしてみせた

 

圧倒的な強さを示したウーラオスにバンバドロも火がついたか、勢いをつけての"ばかぢから"を繰り出す

 

 

「ウーラオス!"カウンター"!」

 

 

それに対し、ウーラオスは"カウンター"を発動

 

強力なパワーを以って繰り出された"ばかぢから"は倍の威力となって返され、大ダメージを受けたバンバドロは大きく吹き飛ばされる

 

 

「トドメじゃよ、ウーラオス!"すいりゅうれんだ"!」

 

 

そして、ウーラオスの"すいりゅうれんだ"の連撃が全て炸裂し、バンバドロは地響きを立てながら力無く横倒れる

 

 

『バンバドロ、戦闘不能!じめんの試練勝者、竜胆尊!』

 

 

そして、バンバドロの戦闘不能を確認したドローンロトムが竜胆の勝利を宣言する

 

 

『最後の試練、でんきの試練も達成されました!以上を持ちまして、イベントの終了をお知らせします!参加者の皆様はスタート地点のRRRビーチステージ前にお集まり下さい!』

 

 

更に続けて、でんきの試練の達成を以って全試練の終了が告知される

 

 

「終わったか…。ご苦労様、ウーラオス」

 

 

竜胆はウーラオスをボールに戻し、アンジュとニュイの下へ戻る

 

 

「り、竜胆さん…?アンジュと何を…?」

 

「その話は後でしよう、ニュイ。まずはビーチに戻ろう。アンジュも良いね?」

 

 

暗い表情で頷くアンジュとそんな彼女を心配するニュイは竜胆の後ろを付いて行く形でじめんの試練を後にした

 

こうして、イベント:舞元の五大試練はその幕を下ろした

 





リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、イーブイ、バタフリー
   サイホーン

アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ

葛葉
手持ち:リザード、ゴルバット、ギャラドス
   ガバイト


手持ち:ジャノビー、ニャルマー、テッシード
   ミミッキュ

本間ひまわり
手持ち:ハスブレロ、ゲコガシラ

桜凛月
手持ち:ベイリーフ、チェリム、ピッピ

天宮こころ
手持ち:ハクリュー、チルット、ジャランゴ

ニュイ・ソシエール
手持ち:マフォクシー、ムウマージ、ギャロップ

竜胆尊
手持ち:ウーラオス(れんげきのかた)、ラグラージ、スワンナ
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