「風が気持ちいいね、アンジュ!」
舞元が開催したイベントが終わったその翌日
場所は海上…リゼとアンジュは豪華客船のデッキで風に当たりながら次なる街:スメシシティへの航行を満喫していた
「そうだね。それにしても、まさかこんな凄い客船に乗れるなんて…」
「しかもこれでプライベート用なんだよね…。流石は鷹宮財閥…」
この豪華客船の所有者である鷹宮財閥の凄さをリゼとアンジュは改めて認識する
何故、リゼとアンジュが豪華客船に乗っているのか…それは今朝のことに遡る
*
「あ…!リゼちゃん達だ!おはよー!」
にじレジ団の襲撃があった日の翌朝…次の街:スメシシティへ出発するリゼとアンジュはホテルのロビーで待つひまわり達の下に合流する
その場にはひまわり達以外に、郡道とチグサ達生徒、レインとレオス、ニュイ、竜胆、エクスとアルスの姿もあった
「ひまちゃん、おはよう!皆さんも…って、エクスさん…?その頭どうしたんですか…?」
その場の全員に挨拶するなか、リゼはエクスの頭が少し焦げ、爆発したような髪型になっているのを見て首を傾げる
「いや〜、師匠が酷くてですね…」
「声掛けても摩っても起きない先輩が悪いんじゃんか!」
聞けば、アルスがぐっすりと深い眠りについていたエクスを無理矢理起こすためにトゲデマルの"10まんボルト"を浴びせたからだと言う
相手がエクスだからかもしれないが、人相手に軽い気持ちでポケモンの強力な技を浴びせるアルス…そして、それを受けて怪我未満に済ましているエクスの頑丈さにリゼは"あはは…"と苦笑いする
「とりあえず、全員揃いましたね」
「あとは舞元を待つだけだけど、あの人本当律儀よね。まあ、貰えるなら遠慮なく貰うけど」
レインと郡道が口々に話す
現在、リゼ達がここに集まっているのはニジサンジ地方チャンピオン:舞元にお願いされたからであった
昨夜…ホテルを襲撃したにじレジ団は舞元と葛葉達数名のトレーナーの活躍により、捕らえることこそ出来なかったがその撃退に成功
また、ホテルから盗まれた"いかずちプレート"はリゼ、エクス、アルスの活躍によって取り戻すことができ、事件は一件落着となった
そして、協力してくれたリゼ達に舞元がせめてものお礼をしたいということで翌日の朝改めて集まってほしいと言われたのだ
「お!みんな揃ってるな!」
リゼとアンジュがロビーに来てから数分後、ホテルの奥から舞元がリオン、力一と共にリゼ達の下へやって来た
「みんな!改めて昨夜のにじレジ団の件、力を貸してくれてありがとう!」
「私からも。お父様が今回の件に関して感謝してるって」
と、舞元とリオンがリゼ達にお礼の言葉を述べる
「それでお礼についてなんだが、まずはこれ…今年開催するポケモンリーグの特別観覧室のチケットだ」
「特別観覧室のチケット…!?」
舞元からのお礼に一同は驚きの声を上げる
ニジサンジ地方のイチカラシティで毎年開かれるポケモンリーグ…そのスタジアムの観覧席のチケット販売は抽選であり、普通席であっても入手が非常に困難な物であった
そして、特別観覧室のチケットは抽選に加えて普通の観覧席のチケットと比べてその額の桁が違うこともあり、財閥のような金持ちでなければ購入すら不可能なものなのだ
そんな高価な物を舞元から手渡されるなか、郡道の生徒…チグサ達5人が不安そうに尋ねる
「ほ、本当に貰ってもいいんですか…?」
「ンゴ達、特に何もしてないんですけど…」
「構わないよ。ただ、チケットにも限りがあるから君達には自分の分1枚しか渡せない。加えて、観覧室は郡道と同じ部屋になる。それでもいいかな?」
「で、でも…」
「あなた達、貰える物はありがたく貰っておきなさい。それに公式試合を最高の席で見ることは今後のあなた達のためになるわ」
「そういうことだ。それに俺はこれからトレーナーになる君達に期待してる。これはその餞別だと思って受け取ってくれ」
「…分かりました!ありがとうございます!」
郡道と舞元に説得され、チグサ達は喜んでお礼のチケットを受け取った
「他のみんなは特に頑張ってくれたから3枚ずつ…自分とあと2人誰かを誘うといい。そして、もう1つ細やかではあるんだが…」
「こっちで用意した移動手段でみんなを次の目的地まで送ってあげる。リゼと葛葉達の次の目的地はスメシシティだったよね?」
「う、うん…。そうだけど…」
「スメシシティになら、私の家が所有してる豪華客船で送ってあげる。ここから歩いたら2,3日かかるけど船なら今日中には着くよ」
「船乗れんの…!?」
「しかも豪華客船…!?」
「い、いいんですか…!?」
「リゼ達は旅の途中だからな。その手助けになれればと思ったんだ」
「まあ、丁度スメシシティに行く用事もあったから、そのついでみたいなもんだけどね」
船…それも豪華客船に乗れると聞いて驚くひまわり達に舞元とリオンが理由を告げる
「あ、あの…。わ、私は徒歩にしようかな〜…なんて…」
そんななか、リゼは何かに怯えるような様子でお礼を断ろうとしていた
「あ〜、海にはサメハダーがいるかもしれないからね…」
海にはリゼのトラウマポケモン:サメハダーがいることをアンジュが察し、チラリと舞元、リオン、力一の3人に視線を送る
「安心してください、リゼさん。ここからスメシシティまでの海上にサメハダーは生息していませんから」
「ほ、本当ですか…?」
「はい。スメシシティから物資を運ぶルートでもあるので、運航中に危険な水棲ポケモンに襲われることはありません」
力一の話を聞き、リゼはホッと胸を撫で下ろす
「なら、リゼ達は船で行くことに決まりね。他の皆さんはどうします?」
リオンが郡道とチグサ達、レインとレオス、ニュイ、竜胆、エクスとアルスに行き先を訊ねる
「僕と師匠も乗ります!丁度戻ろうと思ってたんで!」
「ここの遺跡の調査は一先ず終わってますからねぇ〜。私とレイン君も乗させてもらいます」
「私と生徒達はグンカンシティに帰るわ」
「私は次に挑むジムがエデンシティなので…」
「妾はヤオウシティへ観光しに行くつもり〜」
「なら、郡道さん達とニュイさん、尊様はアーマーガア・タクシーで目的地まで送ります」
「スメシシティへの船はここから少し離れた港から出るよ。そこまでは車で行くから、すぐに出発するよ」
それぞれの目的地までの移動手段が決まったところでリオンに促され、リゼ達は別れの挨拶を交わす
「みんな、次のスメシジムも頑張ってね。応援してるわ」
「皆さん、絶対ポケモンリーグに出場してくださいね!」
「次会えた時こそ絶対勝ちますからね!」
「臨むところだ!またボコボコにしてやるよ!」
「神田さんにもよろしく伝えてください」
「アンちゃん、頑張ってね」
「うん…!」
「リゼ、アンジュのことよろしくね。それと2人共じゃけど、無茶はしないように」
「き、肝に銘じておきます…!」
こうして、竜胆達と別れを済ましたリゼ達はリオン同伴の下、その日の午前中にRRRビーチの離れにある港から豪華客船に乗り、次のジムがあるスメシシティへと向かった
*
そして、現在…リゼ達はRRRビーチとスメシシティ間の海を航行していた
「それにしてもにじレジ団…。エデンシティの時と同じでプレートを狙ってたみたいだけど、その目的は謎のまま…。未確認のポケモンもいるらしいし、一層気を付けないと。竜胆さんも言ってたけど、無茶は極力控えてよ?」
「わ、分かってるよ…!」
豪華客船での航行を満喫するなか、ふと異なる場所で2度も接触したにじレジ団に対し、アンジュは不安の声を漏らす
その言葉の中…"未確認のポケモン"について、リゼには1つ思い当たる節があった
アローラ地方やガラル地方等で確認されているポケモンではないなら、通常のソレとは異なる姿形をしたポケモンはRRRビーチの密林で再会を果たした兄:チャイカから聞いた既に絶滅したとされるヒスイのポケモンではないか…と
しかし、それをアンジュに言うことは出来なかった
言えば、アンジュに何故ヒスイのポケモンを知っているのか問われ、下手をすればチャイカとの約束を破ってしまう可能性があったからだ
にじレジ団への推測は自分の中に留め、リゼは話題を変える
「そういえば、次のスメシシティってどんな場所なの?この地方で1番都市化が進んでる、っていうのは知ってるんだけど…」
「スメシシティはこの地方で1番近代的な街だよ。大きな港もあって他地方との交易が盛んだし、街には色んな商業施設だけじゃなくて、遊園地や娯楽施設もあるんだ」
「遊園地…!」
"遊園地"と聞いてリゼのテンションが上がる
トレーナーとなる前…王族であるリゼは1人での外出を許されておらず、その際には常に付き人が同行していた
そのため、公共の場に出ることに抵抗があり、それまでの主な外出はシーズシティにある学校や母兄弟とのショッピングしかなかった
そんなリゼにとって、遊園地やサファリゾーンのようなレジャー施設は子供の頃から一度は訪れたい夢のような場所であった
「スメシシティの遊園地はある程度小柄なポケモンなら連れ歩くことも出来るらしいよ」
「ポケモンと一緒に楽しめるんだ…!楽しみだなぁ…!」
遊園地への楽しみを心を躍らせるなか、リゼは何か思い出したかのようにバッグの中にしまっていたある物を取り出す
「遊園地に行く前に、この子が生まれてくれないかなぁ…!」
ヤオウシティのタッグバトル大会の優勝賞品としてグウェルから貰ったタマゴ
それを両腕に抱えながら、リゼは孵化の時が来るのを待ち遠しく想うように見つめる
そんなリゼを見るアンジュはクスリと微笑む
過去、リゼは兄:チャイカから貰ったタマゴからイーブイを孵化させたことがある
その時は片時もタマゴを手放さず、孵化の時まで"まだかな!まだかな!"とワクワクしていた
そして、大きくなった今もなお、その時と変わらない様子であったのが可愛らしく思い、つい笑みが溢れてしまったのだ
「さて、そろそろお昼の時間だね。みんなも集まると思うし、食堂に行ってご飯にしよっか」
「うん!」
アンジュの提案に、リゼは頷いてその後ろに付いて行く…その時だった
ピシピシ…ッ!と音を立て、リゼのタマゴにヒビが入り始める
「…っ!?アンジュ、タマゴが…っ!」
それに気付いたリゼは目を見開いて叫び、その声に振り返って状況を理解したアンジュもこれから孵化しようとするタマゴに注目する
タマゴ全体にヒビが入った直後、タマゴは光り輝き出してその形がポケモンへと変わっていく
「リオ…?」
タマゴから孵ったそのポケモンはゆっくりと瞼を開き、自身を抱き抱えているリゼを見上げる
「わあ…!リオルだぁ…!」
タマゴから孵った新たな命…"はもんポケモン":リオルの誕生にリゼは歓喜と感動の声を上げる
*
「「「可愛い〜〜っ…!!!」」」
豪華客船内に設けられたレストラン
そこへ最後に来たリゼとアンジュ…そして、リゼに抱えられているリオルに気付いたひまわり達が駆け寄る
「リォ…」
大きな声を上げ、急接近してくるひまわり達に驚いたのか、リオルは少し怯えた様子でリゼにしがみつく
「あっ…!ごめん…!」
「ビックリさせちゃったかな…?」
「そうみたい…。大丈夫だよ、リオル。みんな、私の友達で良い人達だから」
「リオ…?」
ひまわり達に対するリオルの警戒心を和らげようとリゼは優しく声をかける
まだ少し警戒心は残るものの、リゼの言葉でリオルは逸らしていた顔をひまわり達に向き直す
「あ〜っ!可愛い〜っ!」
「ねぇねぇ、リゼちゃん!その子って、もしかしてヤオウシティのタッグバトル大会優勝で貰ったタマゴの…!」
「うん!ついさっき生まれたの!」
「"はどうポケモン"リオルか…。なかなか珍しいポケモンだね」
「なに?こいつ、そんなにレアなポケモンなのか?」
「リオルは主に山岳地帯に生息しているポケモンで、その個体数も比較的少ないですからねぇ。ニジサンジ地方だと確認されている生息地はエニカラ雪山だけなので、ゲットしてる人も少ないんですよ」
「そうなんだ…。たしかに、噂に聞く過酷なエニカラ雪山にしかいないなら、珍しいポケモンって言われるのも納得できるね」
「エニカラ雪山ってそんなにヤバいところなんですか?」
ひまわりやレイン、天宮がリオルを可愛がるなか、リオルのことについて話していた叶達の会話はエクスの質問によってエニカラ雪山の話題に変わる
「次の次の街…オウマシティとコーヴァスシティの間にあるこの地方で最も高い標高となる山"エニカラ雪山"」
「雪山ということもあって、天候は不安定かつ猛吹雪に見舞われても活動できるこおりタイプのポケモンだけでなく、それに耐え得る強靭な強さを有したポケモンが多く生息しているんですよ」
「聞いた話だと、エニカラ雪山に足を踏み入れたトレーナーのほとんどは頂上に到達することはおろか、中腹まで登ることも出来ないらしくて、その先を進めるのは上位のジムリーダーや四天王クラスの実力者じゃないと厳しいと言われてるんだ」
「四天王の実力かぁ…。登るだけなら余裕だけど、襲ってくるポケモンがそんなに強いなら流石にヤバいですね…」
「登頂できる自信はあるんだ…」
「エビ先輩、体の頑丈さだけは人並み外れてるからね」
叶とレオスの話を聞いてエニカラ雪山の過酷さをエクスは理解し、さらっと"野生のポケモンが絡んで来なければ登頂できる"と言ったことに凛月は驚き、アルスは呆れた様子を示す
「はいはい。話の続きはランチしながらにするよー」
と、リオンに促されたリゼ達は豪華客船での昼食を取り始めることにした
*
「お久しぶりです、チャイカさん。本日はどういった要件で?」
『いやなに、あの装置の進捗を聞きに掛けただけだよ』
航行中のリゼ達が昼食を取っていたその頃、スメシシティの北西に構える高層ビル"加賀美インダストリアル"
その社長室で加賀美インダストリアル代表取締役:加賀美ハヤトは電話越しにリゼの兄である花畑チャイカと通話していた
「全力で取り組んではいますが、完成まではまだかかりそうです」
『噂に聞いた話だと、数週間前のヤオウシティ離れの森で現れたウルトラビースト…。アレは加賀美んとこで開発段階だった装置に誘導されて発生したんじゃないのか?』
「あ〜…もしかして、あの装置が誰かに目撃されていたってことですか…?」
『そんなものがあったかもしれない…っていう、確証のない程度でね』
チャイカの話を聞いて、加賀美はこめかみに指を当てて溜め息を吐く
「現状、装置の実験はウルトラホールから現れるウルトラビーストが外へ逃げないよう、本社の地下で行っています。ですが、夜見さんが持ち出す前の実験はまだ誘導の安定性を確実なものにする…という段階でした」
加賀美は一呼吸置いて話を続ける
「ですので、誘導の安定性が確保出来るまでは誘導可能範囲を大きく広げることが出来ず、私と"四天王"が対応可能となるスメシシティとその周辺までを限界として、その範囲内にウルトラホールが発生することがなければ実験そのものが出来ない状態でした」
『なるほど。それで夜見が実験を行うために発生すると予測されたウルトラホールが現状の誘導範囲に収まるヤオウシティ付近に持ち出した…ってわけか』
「はい、その通りです。おかげで現状の設計で誘導の安定性が確保出来ることが実証されましたが、トラブルによってヤオウシティの方々に被害が及んでしまいました…。夜見さんのポケモンを想う気持ちは理解していますが、それ故に思慮に欠けてしまうことがあるのは困ったものです…」
『そうだな。私からも"焦ることはない"と伝えておいてくれ。完成を急ぎたいのは私も同じだが、無茶な実験によって被害が出る上に、装置の存在が今明るみになるのは避けたい』
「ええ。しばらくはエリアに立ち入り出来ないようするつもりです」
『そうか。じゃあ、進捗があれば教えてくれ』
「はい。チャイカさんの方も頑張ってください」
『ああ』
プツリ…と、チャイカとの通話を終わると加賀美は社長室を出てウルトラホール誘導装置の開発・実験を行なっている地下へと向かう
*
「ワンパッ!」
「あ…!社長!やっと来た〜!」
「遅れてすみません、葉加瀬さん。ワンパチさんもお久しぶりです」
加賀美インダストリアル本社の地下約30mに設けられた特別実験室
装置の実験を行う広い隔離部屋を強固なガラスで隔てた観測室に訪れた加賀美は先に来ていた葉加瀬冬雪と合流する
「話は聞いたよ。夜見がやっちゃったらしいね」
「はい…。しばらく本業のマジシャンに専念するよう暇を与えて、この実験室に来るためのICカードも没収しておきました」
「そっかぁ…。まあ、仕方ないよね。でも、夜見のおかげでようやく次の段階に進めるね」
「うーん…それはそうですが…。複雑な気持ちです…」
「加賀美社長!実験開始の準備が整いました!」
観測室のスタッフの1人から声が掛かり、加賀美は気持ちを切り替える
「それでは、実験を始めるとしましょうか」
「社長〜!装置のボタン、私が押してもいい〜?」
「う〜ん…それは許可出来ませんねぇ…。装置の近くにいると誘導されたウルトラホールが開いた際に危険だから…」
「大丈夫、大丈夫〜!開始のボタンを押すだけで後のことはスタッフの人達にちゃんと任せるから!」
「いや、でも万が一がですね…」
「いーじゃん!それくらい〜っ!あ〜あ!誰のおかげでこの誘導装置に必要なエネルギーを見つけられたんだったかな〜!私、拗ねちゃってもう社長の手伝いしなくなるかもな〜!」
「分かりました…!分かりましたから…!でも、くれぐれも注意してくださいよ、葉加瀬さん!押すのは"誘導"の赤のボタンですからね!間違っても青のボタンは押してはいけませんからね!」
「分かってるって〜!社長は心配性だな〜!」
加賀美からの許可を得た葉加瀬は実験室内に足を踏み入れ、小走りで装置へと向かって行く
「葉加瀬さん、足元の配線にお気を付けください」
「大丈夫、大丈夫〜!子供じゃないんだからこんなことで転けたりしない…」
横切った実験室内のスタッフからの注意を葉加瀬が軽く流そうと受け答えしたその時、少し盛り上がっていた配線の一部に爪先が引っかかってしまう
「うわっ…!?」
ビターンッ!
と、躓いた葉加瀬は前のめりに装置の正面へと倒れ込んでしまう
「あいたたた…」
「葉加瀬さん…!だいじょ…っ!?」
「へ、平気へいk…え…?」
今の転倒で怪我をしてないかと案じて叫んだ加賀美が絶句したことに気付いた葉加瀬は装置の何かを押してしまっている自身の右手に恐る恐る視線を向ける
「ああっ…!?」
葉加瀬の右手が押していたもの
それは加賀美から注意されていた青のボタン…"誘導範囲内にあるウルトラホールを強制的に開かせる"ボタンだった
*
「へぇ〜!スメシシティには遊園地があるんだ〜!」
「はい。私とアンジュは着いたら遊園地も含めて街を観光してからジムに挑もうと思ってます」
船内のレストランで昼食を取りながら会話していたリゼ達の話題はスメシシティの遊園地に移っていた
「ねぇねぇ、ヴィンさん!パタち達も遊園地行こうよ!」
「スメシシティには長居するつもりはないんですけどねぇ。まあ、ローレン君達への旅のお土産を買うついでならいいですかねぇ」
「やった〜!」
レオスの同意を得たレインは子供のように喜びを表現する
「葛葉!ひま達も行こうよ!」
「ビーチで十分遊んだだろ…。俺もあんまり長居する気は…」
「まあ、1日で僕達全員がジム戦を終わらせるのは無理だろうから、葛葉が挑戦する日に葛葉抜きで行くからそれなら問題ないだろ?」
「は?それは話が違くね?」
「なんや、葛葉も行きたいんやん」
「違うよ、ひまちゃん。葛葉はボッチにされることが嫌なんだよ」
「寂しがりかよ〜!素直じゃないな〜、葛葉〜!」
「違ぇよ!俺がジム戦してる裏で呑気に遊ぶことに文句があるんだよ!」
「まあまあ葛葉さん、落ち着いてください。そう急ぐこともないと思うし、旅の思い出作りってことで一緒に行きませんか?」
顔を覗かせながらそう提案してきた凛月に、葛葉のひまわり達に噛み付く態度は鳴りを潜める
「ま、まあ…りつきんさんがどうしてもって言うなら…」
「なら決まりやね!」
「で、でも先にジム戦っすよ!ジム戦が終わってからじゃないと行かせないっすから!」
「分かりました!」
「よ〜し!次のジムも頑張るぞ〜!」
葛葉の要望に添ってジム戦を終えてから遊園地に行くこととなり、天宮達は気合を入れる
「エクスさん達も遊園地行くんですか?」
「俺達はスメシシティ…厳密には離れの小さな街出身なんですけど、知り合いの伝手で何回か行ったことがあるんで行くつもりはないですね。師匠も人の多い所が苦手なんで」
「それなんだけどさ、エビ先輩…。僕、今回はちょっと用事があって…」
と、アルスがエクスに何か言いかけたその時…
グラ…ッ!
突如、船が揺れ始める
「な、なに…っ!?」
突然の揺れに混乱する一同がテーブルにしがみついたり、床に伏せて耐えること数秒…程なくして揺れが収まり、直後に船の機関室から異常事態を報せる放送が流れる
『リ、リオンお嬢様…!緊急事態です…!本船の真上…空に大きな穴が開いてそこから見たことのないポケモンが甲板に…!』
「空に穴…!?それに見たことのないポケモン…!?どういうこと…!?」
「レイン君…!」
「うん!状況を確認するためにも、パタち達は甲板に行きます!」
「俺も行くぜ!」
「私も行きます!」
「見たことないポケモンか…!よし、僕も行きます!」
この事態に対して動き出すレイン達にリゼと葛葉、エクスも同行すると名乗りを上げ、そんな彼女達に付いて行く形でアンジュ達も揃って全員で甲板へと向かう
リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、イーブイ、バタフリー
サイホーン、リオル
アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ