「頼もー!」
「お…!来ましたね、リゼさん。お待ちしておりました」
遊園地でのういはのパフォーマンスを満喫した日の翌朝…リゼはアンジュと共にスメシシティのジムリーダー:加賀美が待つスメシジムを訪れた
「加賀美さん、今日はよろしくお願いします!」
「こちらこそ。それでは、早速バトルフィールドの方へ…」
「社長〜?今日のチャレンジャーさん、もう来たの〜?」
と、加賀美がリゼ達をバトルフィールドに案内しようとしたその時、リゼと同い年くらいの少女が通路の出入り口から顔を出す
「あの人は…?」
「ああ、丁度良いのでご紹介します。私の友人で加賀美インダストリアル特別研究員兼スメシジム審判も務める葉加瀬冬雪さんです」
「どうも〜!葉加瀬冬雪で〜す!」
「ワンパッ!」
加賀美に紹介され、葉加瀬はパートナーのワンパチと共に挨拶する
「ワンパチだ〜!可愛い〜!」
「でしょ〜!私のワンパチ、色々と凄くダメダメちゃんなんだけど、そこがまた可愛いんよ〜!」
「学生の方…?アルバイトってことですか?若い…いや、私も全然若いですけどね?まだ学生なのに大手…それも加賀美インダストリアルで働いてるなんて凄いですね」
「まあ、働いてるというか…。私のプロジェクトを手伝ってもらう代わりに実験室をある程度好きに使用させている、いわゆるギブ&テイクの形に近いですね。もちろん、働いた分の報酬は出してますが」
と、軽い会話を済ませたところで加賀美と葉加瀬の案内に従って、リゼ達はジム内のバトルフィールドへと向かう
「ところで加賀美さん。昨日挑戦しに来たと思う葛葉さん達は…」
「葛葉さん達5名の内、葛葉さんと叶さんは見事初見で私に勝利いたしました。残りの3名…女性の方々は残念ながら…」
「そうですか…。ひまちゃん達は…」
4つ目のジムからは脱落者が出るほどに難易度が上がる
その洗礼を受けたひまわり達を心配するリゼに加賀美が声を掛ける
「そう不安にならなくても大丈夫ですよ。ひまわりさん達はまだ諦めていません。スメシシティにあるバトルスタジアムで特訓した後、また挑戦しに来ると言っていました」
「そうですか…!なら良かった…!」
「人の心配してる場合じゃないよ、リゼ」
「分かってる!葛葉さん達は勝った!ひまちゃん達も頑張ってる!私も負けてられない!」
「うんうん!その意気ですよ、リゼさん!是非社長をボッコボコにしてください!」
「葉加瀬さん?毎度毎度、私の敗北を願うのは何故ですか?」
そう会話をしている内に、リゼ達はスメシジムのバトルフィールドに到着する
「それじゃあ葉加瀬さん、よろしくお願いしますね」
「はーい!」
「リオル、アンジュと一緒に見ててね」
「リオッ!」
「頑張れよ、リゼ!」
「うん!」
葉加瀬は審判台、アンジュはリオルと共に観覧席、リゼと加賀美はバトルフィールドにそれぞれ移動する
「それじゃあ、これよりチャレンジャー:リゼさんとジムリーダー:加賀美さんのジム戦を始めます!使用ポケモンは3体!どちらかのポケモン全てを戦闘不能した方の勝利となります!なお、ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます!それでは、お互いにポケモンを…!」
「お願い!バタフリー!」
「まずは小手調べです!いきなさい!マケンカニ!」
葉加瀬のルール説明が終わり、指示に従ってリゼはバタフリー、加賀美は"けんとうポケモン":マケンカニを繰り出す
「マケンカニ…!その見た目に反してかくとう単タイプのポケモン…!」
「あの拳のような鋏から繰り出される攻撃には注意しないと…!バタフリー!」
「フリィッ!」
リゼがバタフリーと気合いを入れるなか、遂にスメシジムのジムバトルが開始する
「バトル…始め!」
「バタフリー!"エアスラッシュ"!」
「マケンカニ!"バブルこうせん"です!」
葉加瀬のバトル開始の合図とともに、バタフリーとマケンカニはそれぞれの技を繰り出し、ぶつかり合う
「防がれた…!」
「かくとうタイプのポケモンだからと言って、接近戦に特化してるとは限りませんよ!マケンカニ!"がんせきふうじ"です!」
加賀美の攻勢…マケンカニの"がんせきふうじ"がバタフリーに向けて放たれる
「バタフリー!躱して"しびれごな"!」
飛来する"がんせきふうじ"をバタフリーはひらりひらりと躱し、上空から"しびれごな"を撒き散らす
「マケンカニ!"がんせきふうじ"で防御です!」
頭上から降り注ぐ"しびれごな"に対し、マケンカニは繰り出した"がんせきふうじ"をドーム状の盾のように展開して防御する
「岩を盾に…!でも、その状態なら身動きは取れない!バタフリー!"エアスラッシュ"!」
"しびれごな"は防がれてしまったが、逃げ場のない岩のドームの中にいるマケンカニに攻撃を決めるチャンスと見たリゼはバタフリーに"エアスラッシュ"を指示する
「甘いですよ!マケンカニ!"グロウパンチ"です!」
だが、バタフリーが技を繰り出す直前に、マケンカニが"グロウパンチ"を繰り出して中から岩のドームを粉砕させ、それによって吹き飛ばした岩の破片をバタフリーに炸裂させる
「フリィ〜…ッ!」
「バタフリー…っ!」
「いいですよ、マケンカニ!続けて"バブルこうせん"です!」
岩の破片を受けて落下するバタフリーに、マケンカニの"バブルこうせん"が炸裂する
「技の使い方に加えてその利用まで…!これが今のニジサンジ地方4つ目のジムリーダーのバトル…!」
「リオ〜ッ!」
加賀美のバトルにアンジュは目を見張り、リオルはリゼとバタフリーにエールを送る
「バタフリー…!大丈夫…!?」
「フ、フリィ〜ッ!」
「いいガッツです!ですが、次も避けられるでしょうか!?マケンカニ!"がんせきふうじ"です!」
起き上がるバタフリーにマケンカニが"がんせきふうじ"を繰り出す
しかし、今度は正面からではなく、四方八方から迫り来る
「避けるのが厳しいなら、撥ね除けるまで…!バタフリー!回転しながら"サイケこうせん"!」
それに対し、リゼの指示を受けたバタフリーは空中で回転しながら"サイケこうせん"を繰り出し、四方八方から迫る"がんせきふうじ"を粉砕…更にその破片がマケンカニに降り注ぐ
「マ、マケ…ッ!」
「マケンカニ…っ!?」
「今だよ!"エアスラッシュ"!」
降り注がれる岩の破片に襲われて怯むマケンカニにバタフリーの"エアスラッシュ"が炸裂し、地に伏せる
「マ、マケ…」
「マケンカニ、戦闘不能!バタフリーの勝ち!」
「よし!よく頑張ったね!バタフリー!」
「フリィ〜!」
まずは1体目のポケモンを倒し、リゼとバタフリーは喜び合う
「お疲れ様です、マケンカニ。ゆっくり休んでください。まさか、見せたばかりの私の戦法でやり返してくるとは…!やりますね、リゼさん!」
「ありがとうございます!」
「ですが、次のポケモンはそう簡単にはいきませんよ?いきなさい!"ドテッコツ"!」
加賀美は2体目に"きんこつポケモン":ドテッコツを繰り出す
「ドテッコツ…ローブシンの進化前…!あのポケモンもマケンカニみたいに射程のある技を持ってるかもしれない…!油断しないでいこうね!バタフリー!」
「フリィッ!」
「それじゃあ、バトル始め!」
「ドテッコツ!"ビルドアップ"です!」
バトル再開…先制した加賀美は"ビルドアップ"を指示してドテッコツの攻撃力と防御力を高めさせる
「"ビルドアップ"…!これ以上積まれるとマズいかも…!バタフリー!"エアスラッシュ"!」
ドテッコツの能力上昇を厄介だと判断したリゼの指示を受け、バタフリーは"エアスラッシュ"を繰り出す
「ドテッコツ!"ぶんまわす"です!」
迫る"エアスラッシュ"に対し、鉄骨を両手に持ったドテッコツは回転しながらの"ぶんまわす"を繰り出して"エアスラッシュ"を弾き切る
「また防がれた…!もしかして、加賀美さんのどのポケモンも射程のある技への対策はしっかり練られてるっこと…!?」
「かくとうタイプのポケモンは攻撃力が高いこともあってメインとなる技は接触技が多いですからね。だから距離を取って戦えば勝てる…なんてチャレンジャーも多いんだけど、社長のポケモン達はそんな甘えを許さない」
「なるほど、弱点を突くだけじゃ勝てない…!たしかに、初心者トレーナー達にとっての関門と言われるわけだ…!」
「でも、社長のドテッコツの凄さはここからですよ」
と、葉加瀬はアンジュにドテッコツへの注目を促す
「回転しながら鉄骨での防御…!でも、ずっとは出来ないはず!バタフリー!"サイケこうせん"!」
"ぶんまわす"による回転防御の持続力はそう長くないことに賭けたリゼはバタフリーに"サイケこうせん"での持続的な攻撃を指示する
「私のドテッコツの防御に対して持続的な攻撃…悪くないですが、それに正面から付き合ったりはしませんよ!ドテッコツ!跳びなさい!」
"サイケこうせん"が届く直前、ドテッコツは鉄骨を棒高跳びのように利用して回避しつつ、空中へ跳躍する
「嘘…っ!?」
「鉄骨を利用して…!?」
「ドテッコツ!"かみなりパンチ"です!」
そして、バタフリーに迫ったドテッコツは"かみなりパンチ"を繰り出し、炸裂させる
「バタフリー…っ!戻って…っ!」
"かみなりパンチ"を食らって落下するバタフリーが更なる追撃を受けないようにと、交代も兼ねてリゼは素早くボールに戻す
「まさか、鉄骨であんな使い方をするなんて…!」
「ローブシンになると無理だけど、まだ体重も軽いドテッコツだからこそ出来る芸当ですよ!」
と、驚くアンジュに何故か葉加瀬が胸を張って自慢する
「どうですか、リゼさん!私のかくとうポケモン達のバトルは!」
「凄いです…!想像していたかくとうポケモンのバトルとは違って…!でも、だからこそ燃えてきました!」
「その意気です!私のドテッコツをどう攻略するか、見せてください!」
「はい!お願い!サイホーン!」
リゼはバタフリーに代わり、2体目のポケモンとしてサイホーンを繰り出す
「サイホーン…なかなかパワーがありそうなポケモンですね。真っ向勝負…ということですか?」
「さあ、それはどうでしょう…!サイホーン!"すてみタックル"!」
バトル再開…サイホーンが"すてみタックル"でドテッコツへと突っ込む
「ドテッコツ!"ばかぢから"です!」
対するドテッコツは"ばかぢから"を繰り出し、サイホーンとぶつかり合う
「サ…サイ…ッ!?」
両者のぶつかり合いは"ビルドアップ"で攻撃力を増していたドテッコツが勝り、サイホーンは後ろへ大きく吹き飛ばされる
「サイホーン…っ!"ビルドアップ"の能力上昇もあって凄いパワー…っ!」
「でも、"ばかぢから"は使えば攻撃力と防御力が低下する…!また積まれる前に仕掛けたいところだけど…!」
「その距離、吹き飛ばされた直後では間に合いませんよ!ドテッコツ!"ビルドアップ"です!」
吹き飛ばされたサイホーンが体勢を立て直す間にドテッコツは再び"ビルドアップ"による能力上昇を図る
「いや、させません!サイホーン!"じならし"!」
ドテッコツの"ビルドアップ"を阻止するため、リゼの指示を受けてサイホーンはフィールド全体が攻撃範囲となる"じならし"を繰り出す
"じならし"による揺れに体勢を崩されたドテッコツは"ビルドアップ"を中断し、転倒だけは避けようとその場で踏ん張る
「"じならし"ですか…!いい技です!ならば、ドテッコツ!跳びなさい!」
"じならし"から逃れるため、ドテッコツは再び鉄骨を棒高跳びのように地面に突き刺しての跳躍に出る
「きた…!サイホーン!鉄骨に向けて"うちおとす"!」
ドテッコツが跳躍し切る直前、サイホーンが繰り出した"うちおとす"が鉄骨に炸裂して傾き、跳躍する寸前だったドテッコツは鉄骨の天辺でバランスを崩して落下する
「なに…っ!?」
「今だよ、サイホーン!"ドリルライナー"!」
加賀美が驚くなか、落下するドテッコツにサイホーンの"ドリルライナー"が炸裂する
「よし!続けて"すてみタックル"!」
「ドテッコツ…!次の攻撃が来ます…!鉄骨を拾って防御を…!」
勢いに乗ったサイホーンが続けて"すてみタックル"を繰り出してくるなか、加賀美は攻撃が直撃するする前にドテッコツに離れた場所にある鉄骨を拾うよう指示を出す
だが、ドテッコツは"ドリルライナー"で受けたダメージが効いているらしく、その動きは鈍っていた
「さっきの一撃がそんなに…!?まさか、急所に当たって…!くっ…!ならば、"ばかぢから"で迎え撃ちなさい!」
防御するための鉄骨を拾うことが間に合わないと判断した加賀美は"ばかぢから"での迎撃に切り替える
サイホーンとドテッコツ…両者の技が再びぶつかり合い、今度は拮抗したためか大きな爆発が巻き起こる
「サイホーン…っ!」
「ドテッコツ…っ!」
リゼと加賀美が叫ぶなか、爆発の煙が晴れたそこには佇むサイホーンと戦闘不能となって地に伏したドテッコツの姿があった
「ドテッコツ、戦闘不能!サイホーンの勝ち!」
「よし!これで2体目も撃破だ!」
「リオ〜!」
加賀美のポケモンが2体倒れ、観覧席のアンジュとリオルは歓喜の声を上げる
「サイホーン!よく頑張ったよ!」
「サイッ!」
リゼとサイホーンが2体目のポケモン突破に喜ぶなか、加賀美はドテッコツをボールに戻す
「お疲れ様です、ドテッコツ。急所に当たってしまったのは不運でしたが、よくやってくれました。ゆっくり休みなさい。お見事です、リゼさん!まさか1体も倒れることなく、私のポケモン2体を倒すなんて!」
「ポケモン達が私の指示を信じて、頑張ってくれたおかげです!」
「たしかに、バタフリーの回転しながらの"サイケこうせん"!サイホーンの鉄骨を狙った"うちおとす"に"ドリルライナー"の急所!どんな指示にも迷いなく行動し、勝利を手繰り寄せる…リゼさんとポケモン達の絆は実に素晴らしいです!」
"ですが…"と、加賀美は3体目のポケモンが入ったボールを突き出して続ける
「私の最後の1体…!このジムにおける最後にして最大の壁…!そう易々とは越えさせませんよ!いきなさい!カイリキー!」
加賀美はそう言い放つと、3体目となる最後の1体として"かいりきポケモン":カイリキーを繰り出す
「最後のポケモンはカイリキー…!それもさっきのドテッコツに比べて凄く強そう…!」
「サイ…ッ!」
加賀美の3体目…カイリキーの登場にリゼとサイホーンは気を引き締める
そんななか、観覧席のアンジュは真剣な面持ちで口元に手を当てていた
(強敵かと思えたドテッコツも"ドリルライナー"が急所に当たったおかげで、ここまで順調に勝ててる…。でも…)
アンジュはチラリと、リゼとサイホーンに目を向ける
(サイホーンもバタフリーもかなりのダメージを受けてる…。多分、カイリキーの攻撃を一撃でも受ければ即戦闘不能になる…。それに笹木さんが言っていた"切り札"もまだ分からないまま…。油断は禁物だよ、リゼ…!)
アンジュが内心でそう呟くなか、バトル再開の宣言がなされる
「それじゃあ、バトル始め!」
「サイホーン!"ドリルライナー"!」
リゼの先制…サイホーンは"ドリルライナー"を繰り出してカイリキーに突っ込む
「カイリキー!受け止めなさい!」
カイリキーは4本ある内の下腕2本でサイホーンの"ドリルライナー"を正面から受け止め、その勢いを完全に止め切る
「サイ…ッ!?」
「そんな…っ!?」
「カイリキー!"ばくれつパンチ"です!」
そして、カイリキーの上腕2本から繰り出した"ばくれつパンチ"がサイホーンに炸裂する
「サイホーン…っ!?」
「サ、サィ…」
「サイホーン、戦闘不能!カイリキーの勝ち!」
サイホーンの戦闘不能が告げられ、リゼはボールへと戻す
「お疲れ様、サイホーン…ゆっくり休んでね」
「まさか、サイホーンの攻撃を素手で止めるなんて…!」
「社長のカイリキーは攻撃も防御も一級品なんですよ。接触技で攻めたら最後…2本の腕で受け止め捕まえられて、残る2本の腕での一撃を食らわされる」
「物理的な手数の多さとかくとうポケモンだからこそのパワープレイ…!手強い…!」
カイリキーの強さにアンジュが焦りを感じるなか、リゼは2体目のポケモンを繰り出す
「もう一度お願い!バタフリー!」
リゼはサイホーンに代わり、射程のある技で攻撃できるバタフリーを繰り出す
「それじゃあ、バトル始め!」
「ダメージを与えるよりもまず、先のことを考えて有利な状況を作る…!バタフリー!"しびれごな"!」
これまでのバトルでダメージを受けているバタフリーで倒すことは不可能
そう考えたリゼは3体目のポケモンが有利に戦えるようにと、カイリキーを状態異常で弱体化させることを優先し、バタフリーに"しびれごな"を繰り出させる
「カイリキー!地面に向かって"ばくれつパンチ"です!」
対するカイリキーは加賀美の指示に従って"ばくれつパンチ"を少し手前の地面を抉るように繰り出す
"ばくれつパンチ"によって引き起こされた爆発…それに伴う爆風で"しびれごな"を押し返しただけでなく、地面が抉られたことで生まれた岩の破片が弾丸の如くバタフリーへと飛び散り、直撃する
「フリィ〜…ッ!」
「バタフリー…っ!」
思わぬ攻撃に苦しむバタフリーは徐々にその飛行高度を落としていく
「今です!"はたきおとす"!」
そして、バタフリーの飛行高度が十分に下がったところでカイリキーは跳躍して"はたきおとす"を繰り出す
「バタフリー!"エアスラッシュ"!」
バタフリーは"エアスラッシュ"で迎え撃つが、カイリキーはそれを"はたきおとす"を繰り出した腕で強引に突破し、そのままバタフリーの脳天に炸裂させる
「バタフリー…っ!?」
「フ、フリィ…」
「バタフリー、戦闘不能!カイリキーの勝ち!」
地面に叩きつけられたバタフリーは戦闘不能となり、リゼはボールへと戻す
「お疲れ様、バタフリー…よく頑張ったね。最後は任せたよ…!お願い!エンペルト!」
バタフリーに代わり、リゼは最後の1体としてエンペルトを繰り出す
「リゼさんの3体目はエンペルトですか。はがねタイプを持つエンペルトは弱点であるかくとうタイプのカイリキーには相性が悪い。リゼさんは追い込まれた立場になるはずですが…」
と、状況を整理していた加賀美はリゼに目を向け、その表情を見てクスリと笑みを浮かべる
「焦りも多少感じられますが、諦めの様子はまるでありませんね」
「はい…!緊張も不安もあるけど、ポケモン勝負は心が折れたら勝てない…!私が諦めない限り、ポケモン達も応えてくれますから…!」
「エンペッ!」
バトルを最後まで諦めないリゼにエンペルトも呼応する
(いいですね…。勝敗が決まるその瞬間まで諦めないその姿勢…。リゼさんを見ていると、あの人を彷彿とさせられます)
リゼの姿を見て、加賀美は瞳を閉じてある人物のことを思い出す
互いに大人となった今では夢や仕事に奔走してバトルも久しくしていないが、互いにポケモンリーグを目指すトレーナーだった頃は熱く楽しいバトルを何度もしていたな…と
そんな懐かしい過去を振り返った加賀美は目を見開き、最後のバトルに気を引き締める
「1人のトレーナーとして、素晴らしい心構えです!リゼさん!だからこそ、最後まで私も全力で迎え撃ちます!そして、その私を超えてみせてください!」
「はい!そのつもりです!」
「それじゃあ、バトル始め!」
互いの意気込みをぶつけ合い、最後のバトルが始まった
「エンペルト!"うずしお"!からの"ドリルくちばし"!」
先制したのはリゼ…エンペルトは"うずしお"を繰り出した直後にその中へと飛び込み、更に"ドリルくちばし"を発動する
"うずしお"と"ドリルくちばし"は絡み合って昇華し、"渦を纏うドリルくちばし"となってカイリキーへと迫る
「2つの技が1つになった…っ!?」
「いつの間にあんな技を…っ!?」
リゼの戦法にアンジュと葉加瀬が驚愕するなか、加賀美は楽しそうな笑みを浮かべる
「面白いことをしますね…リゼさん!カイリキー!受けて立ちなさい!"ダブルチョップ"です!」
"渦を纏うドリルくちばし"に対し、カイリキーは下腕2本での"ダブルチョップ"をクロスさせる形で繰り出し、真っ向からぶつかり合う
「リ…キィィィ…ッ!!」
だが、技のぶつかり合いはエンペルトが勝り、カイリキーは体勢を崩さずに踏ん張るも後ろへと押し返されていく
「なんて凄まじい威力…!カイリキー!"ばくれつパンチ"です!」
"ダブルチョップ"では止められないと理解した瞬間に加賀美は指示を出し、カイリキーは残る上腕2本での"ばくれつパンチ"を繰り出すことでなんとかエンペルトの攻撃を相殺させた
「これで押し切れない…!なら、もっと確実にダメージを与えられる方法を…!エンペルト!"うずしお"!」
合体技を相殺されたリゼは攻め方を変え、今度はエンペルトに"うずしお"を普通に繰り出させた
「拘束技で動きを封じるつもりなら甘いですよ!カイリキー!"ばくれつパンチ"です!」
迫る"うずしお"にカイリキーは"ばくれつパンチ"を繰り出して爆散させる
「今だよ、エンペルト!"れいとうビーム"!」
その直後、エンペルトから繰り出された"れいとうビーム"が直撃し、カイリキーは氷漬けになってしまう
「こちらが技を繰り出して対処した直後を狙っての"れいとうビーム"…!"うずしお"はその隙を作るためのフェイクでしたか…!」
「そういうことです!エンペルト!"ドリルくちばし"!」
加賀美の推測をリゼが肯定するとともに、エンペルトの"ドリルくちばし"が氷漬けのカイリキーに炸裂する
「カイリキー…っ!」
「リ…リキィ…ッ!」
「畳み掛けるよ!エンペルト!もう一度"ドリルくちばし"!」
効果抜群の技を食らって吹き飛んだカイリキーが立ち上がるなか、エンペルトは再び"ドリルくちばし"を繰り出す
「カイリキー!"ダブルチョップ"で受け止めなさい!白刃取りです!」
加賀美の指示を受け、カイリキーは"ダブルチョップ"を発動…白刃取りのようにエンペルトの"ドリルくちばし"の先端を挟み捉え、数秒間の攻防の末にその勢いを止め切った
「エンペ…ッ!?」
「嘘…っ!?」
「カイリキー!"ばくれつパンチ"です!」
リゼとエンペルトが驚くなか、加賀美はカイリキーに"ばくれつパンチ"を指示する
「マズい…っ!エンペルト…っ!逃げて…っ!」
リゼは距離を取るよう叫ぶが、間に合わなかったエンペルトはカイリキーの"ばくれつパンチ"を諸に食らってしまう
「エンペルト…っ!」
吹き飛ばされたエンペルトにリゼが叫ぶ
効果抜群の大ダメージを受けたエンペルトはなんとか立ち上がるも"ばくれつパンチ"の追加効果による混乱でフラフラとしていた
「"ばくれつパンチ"は当たれば必ず混乱状態になる技…その状態では、攻撃はまず防げませんよ!カイリキー!もう一度"ばくれつパンチ"です!」
そして、まともに動けるか怪しい状態のエンペルトにカイリキーが"ばくれつパンチ"を構えて迫る
「大丈夫、エンペルト…!あなたなら出来る…!私はそう信じてる…!"はがねのつばさ"!」
迫るカイリキーを前に、リゼは冷静にエンペルトに呼び掛けて技の指示を出す
するとリゼの声が届いたからか、エンペルトは目をカッと開いて正気を取り戻し、"はがねのつばさ"でカイリキーの"ばくれつパンチ"を弾いて直撃を防ぐ
「なんですって…!?」
「自力で混乱を解いた…!?」
「いいぞ!リゼ!エンペルト!」
「リオ〜ッ!」
混乱が解けるまでの早さに加賀美と葉加瀬は驚き、アンジュとリオルは声援を送る
"ばくれつパンチ"を決められなかったカイリキーは後ろへと飛び退き、加賀美は笑みを浮かべる
「…先程、リゼさんとポケモン達の絆は素晴らしいと言いましたが、私の認識は甘かったみたいです。想定以上だった」
リゼとエンペルトの絆の深さに加賀美はそう言葉を述べると、突然カイリキーをボールへと戻した
「え…?なんで戻して…」
バトルはまだ終わっていないのに、ポケモンをボールへ戻した
そのことに困惑するリゼに、加賀美は話を続ける
「本当はもっと早く…互いのポケモンが最後になったらお見せするはずだったんですが、リゼさんとのバトルに熱が入ってしまってすっかり忘れていました」
そう言いながら、加賀美が右腕の袖を捲るとそこにはバンドが装着されていた
そして、そのバンドに見覚えのあるリゼは驚愕のあまりに声を上げる
「そのバンド…っ!もしかして、加賀美さんの切り札って…っ!?」
「リゼさん、私がコレを使うのはポケモンリーグを目指すチャレンジャーの皆さんへの洗礼とその過酷さを示すため。ですが、今回はそれともう1つ…リゼさん、私があなたに勝ちたいからです!さあ、カイリキー!ダイマックスです!」
加賀美がそう言い放つと、カイリキーが入ったボールに右腕のバンドからマゼンタ色のエネルギーのようなものが集約…直後、ボールが巨大化する
そして、急にジムの天井にマゼンタ色の暗雲が立ち込めるなか、加賀美がボールを力一杯投げると中から飛び出したカイリキーは何倍にも巨大化した姿となってフィールドに地響きを立てて降り立った
「ダ、ダイマックス…!?」
「そう、ここスメシジムはダイマックスを可能にするパワースポットの上に作られてるんです。街中にあるのはイチカラシティのポケモンリーグスタジアムとオウマジム、ここの3箇所だけです」
「でも、昔私がスメシシティのジムに挑戦した時にはダイマックスなんて…!」
「このパワースポットは私が5年程前に偶然見つけたんです。その後、社長のジムリーダー就任と一緒にここにジムを建てたんです」
「まさか、まだ発見されていないパワースポットがこんなところにあったなんて…!」
「まあ、ここは街の東端でパワースポットが沢山あるトリガー山道が近くにありますからね。それとガラル地方にあるスタジアム同様、ダイマックス技の影響を受けないように審判台と観覧席前にはバリアが張られるので安心してください」
と、アンジュと葉加瀬が話をするなか、リゼはダイマックスを前に武者震いしていた
「これがダイマックス…!テレビや本で見たことはあったけど、生で見ると迫力が全然違う…!」
「呆気に取られてる暇はないですよ、リゼさん!ダイマックスには、その状態でのみ繰り出せるダイマックス技があるんですから!カイリキー!"ダイドラグーン"です!」
ダイマックスしたカイリキーは膨大なドラゴンエネルギーで形成された巨大な刃を複数エンペルトへと放つ
放たれた刃はエンペルトを取り囲むように飛び交ったかと思えば、直後に合わさって巨大な竜巻"ダイドラグーン"となって中に閉じ込めたエンペルトを襲う
「うっ…!凄い威力…!エンペルト!"れいとうビーム"!」
"ダイドラグーン"の凄まじい威力が起こす風圧に耐えながら、リゼは凍らせることで技を打ち消そうと考え、エンペルトに"れいとうビーム"を指示する
だが、エンペルトが繰り出した"れいとうビーム"は"ダイドラグーン"に弾かれてしまう
「効かない…!それなら、エンペルト!"ダイドラグーン"の回転に乗って"ドリルくちばし"!」
技による打ち消しが不可能と判断したリゼは即座に作戦を変え、エンペルトは指示に従って"ダイドラグーン"の回転に合わせて"ドリルくちばし"を繰り出す
"ドリルくちばし"で"ダイドラグーン"の回転に乗ったエンペルトは竜巻の中を上昇し切って脱出…更に"ドリルくちばし"の勢いを増した状態でカイリキーへと突っ込む
「逆らうのではなく、"ダイドラグーン"の回転に乗って逃れつつ"ドリルくちばし"の勢いも増させて攻撃…!良い発想です!ですが、"ダイドラグーン"でエンペルトの攻撃力が落ちていますよ!カイリキー!"ダイナックル"で迎え撃ちなさい!」
"ドリルくちばし"で迫るエンペルトに対し、カイリキーは4本の腕に膨大なかくとうエネルギーを込めた"ダイナックル"を繰り出す
両者ぶつかり合うが、加賀美の指摘通りに"ダイドラグーン"で攻撃力が低下したエンペルトが威力で劣り、"ダイナックル"に押し返されてそのまま地面に叩き付けられる
「エンペルト…っ!」
リゼが叫ぶなか、大ダメージを受けてボロボロの状態となったエンペルトはなんとかその体を起こして立ち上がる
「おお…っ!今のを受けてまだ立ち上がれるんだ…!」
「でも、今の"ダイナックル"でカイリキーの攻撃力が増した…!つまり、次の一撃はさっきよりも強力になる…!」
「生半可な攻撃では打ち勝つことは愚か、相殺することも出来ませんよ。さあ、どうしますか?リゼさん」
エンペルトのタフさに葉加瀬が驚き、カイリキーが次に繰り出す一撃にアンジュは表情を険しくする
そして、加賀美が最後の攻撃を前に問い掛けるなか、リゼはエンペルトを見つめる
「エンペルト…やるよ!」
諦めの気配を一切感じさせないリゼの力強い呼び掛けに、顔を振り向かせたエンペルトはコクリと頷く
エンペルトも勝負を諦めてはいない…それを確認したリゼは左腕の袖を捲り、手首に装着したZリングを露わにする
「それはZリング…っ!ということは…!」
「はい…!私とエンペルトも切り札を使います!勝つために…全力で!」
「…いいじゃないですか!元よりそのつもりですが、敢えて言わせていただきます!こちらも全力を以ってお応えしましょうっ!カイリキー!"ダイナックル"です!」
加賀美の今日1番で力強く熱い指示を受け、カイリキーは先程よりも威力の増した"ダイナックル"をエンペルトへと振り下ろす
「いくよ!エンペルトっ!」
「エンペッ!」
改めてエンペルトに呼び掛けたリゼは左から右へと水が流れていく様子を彷彿させる"みずタイプのゼンリョクポーズ"を取り、直後にリゼから溢れ出したZパワーがエンペルトへと流れ、その体に纏われる
次の瞬間、エンペルトはZパワーによって生み出した激流を身に纏って飛び出し、カイリキーの"ダイナックル"へと激突する
Z技とダイマックス技…2つの強大なパワーの激突は空気を震わせる程の凄まじい衝撃を生み出す
「エンペ…ッ!」
「リキィ…ッ!」
大技のぶつかり合いはカイリキーがやや勝り、徐々にエンペルトを押し返していく
だが、その光景を見守るリゼの目は諦めてはいなかった
「Z技を押し返すなんて…!やっぱりダイマックス…凄く強い…!でも…私達は負けない…!勝ちたい…っ!そうでしょっ!エンペルトっ!」
「エンペェェェッ!!」
リゼの想いにエンペルトが咆哮を轟かせて呼応し、技の威力を更に高める
「リ…リキィ…ッ!?」
エンペルトはカイリキーの"ダイナックル"を押し返し始め、遂には完全に弾き切る
そして、そのまま形成した巨大な渦の激流によるダメージを与えるZ技"スーパーアクアトルネード"をカイリキーに炸裂させる
「リキィィィ…ッ!!」
「カイリキー…っ!」
ダイマックスした巨体をも呑み込む"スーパーアクアトルネード"…その渦の激流から解放されたカイリキーは同時にダイマックスの効果が切れて元の大きさに戻り、バタリと仰向けに倒れる
「リ…リキィ…」
「カイリキー、戦闘不能!エンペルトの勝ち!よって勝者、ヘルエスタシティのリゼ!」
「やった…。やったよ…っ!エンペルト…っ!あわわわ…っ!?」
葉加瀬から勝利を告げられたリゼは勝利した実感が得られた途端に疲弊してその場に座り込むエンペルトへと駆け寄るが、バトルの緊張が解けて少し足がフラつき、フィールドの石に躓いてしまう
「エンペ…ッ!?」
それに気付いたエンペルトはリゼが転ぶ前にボロボロの体を起こして飛び込み、リゼを受け止める
「あ、あはは…。ごめんね、エンペルト。最後の頑張り…凄く格好良かったよ」
「エンペッ!」
リゼは助けてくれたお礼とバトルに対する賛辞の言葉を送り、それを受け取ったエンペルトは笑顔で応える
「カイリキー、ご苦労様でした。最高のバトルでしたね」
「リキィ」
加賀美もカイリキーに労いの言葉を送り、そしてリゼとのバトルが最高だったことを共有し合う
「お疲れ様、リゼ。最後はハラハラドキドキだったけど、なんとか勝てたな。4つ目のジム…クリアおめでとう」
「リオ〜ッ!」
「いや〜!ダイマックスとZ技…迫力満点の試合だったわ〜!ジム戦勝利、おめでとうございます!」
「ありがとう!アンジュ、葉加瀬さん!リオルも応援ありがとうね!」
アンジュとリオル、葉加瀬から祝福にリゼも感謝を伝えるなか、加賀美がリゼの下へと歩み寄る
「本当に素晴らしいバトルでした、リゼさん。あなたのトレーナーとしての素晴らしさはバトル中に何度もお伝えしましたのでこれ以上は語りませんが、最後に1つだけ忠告とアドバイスを」
と、加賀美は一呼吸置いてから言葉を続ける
「これより先のジムでも、私が使用したダイマックス…これに相当する試練があなたを待ち受けています。ですが、リゼさんとポケモン達の絆の深さ…。そして、リゼさん達が抱いている"勝ちたい"気持ちが今のまま揺れなければ、必ず立ちはだかる壁を越えていけると私は確信しています」
「はい…!」
「それでは、私に勝った証としてスメシバッジをあなたに渡します。リゼさんのポケモンリーグ挑戦…応援しています」
「ありがとうございます!」
リゼは加賀美と握手を交わし、4つ目のジムバッジとなるスメシバッジを受け取る
「ところで、リゼさんは次に何処のジムに挑戦されるんですか?」
「私とアンジュはニジサンジ地方をヘルエスタから時計回りに旅してるので、スメシシティの東にあるオウマシティのジムに」
「オウマシティですか。でしたら、その道中となるトリガー山道…その北へ是非足を運んでください」
「トリガー山道の北…?そこに何かあるんですか?」
「実は私がお見せしたダイマックス…それを可能とするこのダイマックスバンドに必要な"ねがいぼし"という石がトリガー山道の北で手に入ります」
「ほ、本当ですか…!?」
「はい。加工してくれる方もオウマシティにいるので丁度良いかと」
「有力な情報ありがとうございます!」
「いえいえ、私に勝って次にオウマシティへ目指すチャレンジャーの皆様全員に言っていますので」
「なら、明日はオウマシティを目指しつつ、トリガー山道の北で"ねがいぼし"のゲットだね!」
「うん!次のジムも絶対に勝つよ!」
「エンペッ!」
「リオ〜ッ!」
こうして、ジムリーダー:加賀美ハヤトに勝利し、4つ目のジムバッジを手に入れたリゼは次なるジムがあるオウマシティとその道中にあるトリガー山道での"ねがいぼし"ゲットに向けてポケモン達と気持ちを新たにする
リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、イーブイ、バタフリー
サイホーン、リオル
アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ
加賀美ハヤト
手持ち:ビーダル、ローブシン、カイリキー
ドテッコツ(ジム戦用)、マケンカニ(ジム戦用)
葉加瀬冬雪
手持ち:ワンパチ