にじさんじ×ポケットモンスター   作:Mr.ソロ

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今回でスメシシティ編は最終話と言いましたね…。

アレは嘘だ(次こそ最終話です)


第43話「バトルへの想い!リゼvs緑仙!」

 

「リゼさ〜ん、ポケモン達の回復終わったよ〜」

 

「ありがとうございます、葉加瀬さん」

 

 

4つ目のジムとなるスメシジムのジムリーダー:加賀美ハヤトに勝利してスメシバッジを手に入れたリゼはジム戦で活躍したポケモン達をジム内の医療機器で回復させてもらっていた

 

 

「まさか、ジムにポケモンセンターと同じ医療機器を置いてるなんてね」

 

「まあ、ジムとポケモンセンターが北東と南西で離れてる上に街が広いですからね。他にも遊園地や南東のバトルスタジアムにも置かれてるんですよ」

 

 

と、ポケモンセンター以外でジムに医療機器が設けられていることが物珍しいと感じるアンジュに葉加瀬がそう答える

 

 

「よし!それじゃあ、ポケモンセンターに戻る途中でデパートに寄って必要な物を買い足しておこう!」

 

「そうだね。それじゃあ、葉加瀬さん…私達はこれで」

 

「ほな、次来た時は一緒にお茶でもしようね〜」

 

「はい、是非!加賀美さんにも"お世話になりました"と伝えてください!」

 

 

ジム戦後、私用でインダストリアル本社に戻った加賀美への伝言を葉加瀬に伝え、リゼとアンジュはジムを出ようと出入り口へと向かった

 

 

「社長!いる!?」

 

 

その時、ジムの自動ドアが開いてアホ毛が特徴的な緑髪の人物が苦渋な表情で駆け込んで来た

 

 

「り、緑仙さん…!?」

 

「葉加瀬…!社長は何処!今いる!?」

 

 

緑髪の人物…緑仙はリゼとアンジュを横切り、葉加瀬に詰め寄りながら加賀美の所在を訊ねる

 

 

「え、えっと…社長なら今インダストリアル本社の方に…」

 

「…っ!そっか…ありがと!」

 

 

苛立っている様子の緑仙は半ば吐き捨てるように葉加瀬にお礼を言うとすぐに踵を返してジムを出ようとする

 

 

「はあ…っ!はあ…っ!追い付いた…っ!緑仙…っ!落ち着いて…っ!」

 

 

その時、再び自動ドアが開いて、今度は緑仙を追いかけて来たと見られる黒髪袖無しの男性が現れた

 

 

「夢追…っ!」

 

「こんなことしても何の解決にもならない…っ!バトルの特訓なら僕が付き合うし、不足なら社長だって手伝って…っ!」

 

「うるさいな…っ!もう放っておいてよ…っ!」

 

「うあっ…!り、緑仙…っ!」

 

 

緑仙は"夢追"と呼んだその男性を突き飛ばし、加賀美のいるインダストリアル本社がある方向へと走って行った

 

 

「だ、大丈夫ですか…!?夢追さん…!」

 

「あ、ありがとう、葉加瀬さん…。僕なら平気だよ…」

 

「夢追さん…!?もしかして…ポケモンリーグや各地のイベントで名実況をやられているあの夢追さんですか…!?」

 

「うぐっ…!やっぱり知名度はまだそっちの方が上か…!緑仙に突き飛ばされたのよりもこっちの方が堪えるな…!」

 

「あ…!す、すみません…!勿論、本業はシンガーソングライターだということは存じてます…!」

 

 

と、葉加瀬に心配されるなか立ち上がる夢追…そんな彼の痛い所を突いてしまったリゼは慌てて謝罪とフォローを述べる

 

 

「葉加瀬さんって、夢追さんと知り合いなんだ…」

 

「うん、社長繋がりで…。それで夢追さん…緑仙さんの様子…なんだか苦しそうだったんですけど、どうしたんですか…?」

 

 

葉加瀬からの問いに夢追は顔を俯かせて答える

 

 

「緑仙は…自分のポケモン達を社長に預けることで手放そうとしてるんだ…」

 

「ポケモンを手放す…!?どうしてそんな…!」

 

 

夢追の言葉にリゼが声を上げて驚く

 

 

「もしよかったら、詳しい事情を聞かせてください…!社長には緑仙さんが来たら止めるよう連絡するんで…!」

 

「ありがとう、葉加瀬さん…」

 

「あの…!私達も話を聞いてもいいですか…!」

 

「ちょっと、リゼ…!そう何でも首を突っ込むのは…!」

 

 

リゼの申し出に夢追はきょとんとした表情になる

 

 

「どうして、君が…?」

 

「ポケモンから離れてしまう人を目の前にして放ってはおけない…。ポケモンが好きで、世の中の人全員にそうあってほしい…そう思っているからです」

 

「…分かった」

 

 

リゼの想いが本気であると理解した夢追は申し出を受け入れ、一同はジム内の応接室へと場所を変える

 

 

 

 

「それじゃあ、まずは改めて自己紹介から…僕は夢追翔。よろしく」

 

「私はアンジュ・カトリーナと言います」

 

「リゼです。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 

スメシジム内の応接室に移動したリゼとアンジュは夢追と互いに自己紹介を交わす

 

 

「それで、緑仙さんはどうして急に自分のポケモン達を社長に預けようと…?」

 

「その前に、まずはリゼさん達に緑仙のことを話さないとね。さっきジムの出入り口で会った緑髪の人が緑仙。緑仙は僕とハヤトの音楽仲間なんだ」

 

「音楽仲間…!加賀美さんも…!?」

 

「ハヤトの方は仕事の忙しさもあってあまり活動はしてないけど、偶に3人で歌の動画をサイトに上げてたりはしてるんだ」

 

「その界隈を知る人からすると、夢追さん達は結構有名なんですよ」

 

「へぇ〜、そうなんだ」

 

「緑仙はバトルも好きでね。これまでは僕や社長、知り合いの人達とよくやってたんだけど、今年からポケモンリーグに挑戦することを決めてトレーナーになったんだ」

 

 

夢追は一呼吸置いて話を続ける

 

 

「この地方で有名な博士…天開さんからポケモンを貰って、グンカンシティを始まりにジムを巡って来たんだ」

 

「グンカンシティから…となると、私達と同じルートですね」

 

「緑仙さんは社長と同じでかくとうポケモンが好きなんですよ!社長とのバトルも白熱の一戦でした!」

 

「まだ粗さはあるけど、緑仙のバトルの素質はなかなかのものだよ。極めれば、本気の社長にだって勝てると思う」

 

「そ、そんなに強いんですか…!?」

 

「社長からは大人になったらスメシジムを継いでほしいって言われてるんだよ」

 

「でも、そんな人がどうして急にポケモンを手放そうだなんて…」

 

 

アンジュの問いに夢追の表情が曇る

 

 

「5つ目…オウマのジムまではなんとか勝ててたんだ…。でも、6つ目の…コーヴァスのジムで負けたんだ…。それも何度も…」

 

「何度も…!?」

 

 

夢追の発言に驚愕したリゼは声を上げる

 

 

「たしか、今のコーヴァスシティのジムリーダーはいわタイプの使い手でしたよね…?手持ち全部がかくとうタイプの緑仙さんが相性有利なのに何度も負けるなんて…」

 

「厳密には少し違うんだけどね…」

 

「どういうことですか…?」

 

「ジムリーダーは原則1つのタイプを専門にしているけど、相手の実力に応じて専門としているタイプの技を覚える異なるタイプのポケモンを使うことが許されてるんだ」

 

「聞いたことある…!シンオウ地方だと、キッサキシティのジムリーダーはこおりタイプの使い手だけど"れいとうパンチ"を覚えたチャーレムを使って来たり、ドラゴンタイプ使いがギャラドスを使って来たり…!」

 

「そういうこと。とは言っても、それだけが勝敗を決する要因だったわけじゃないと思う。1度負けても冷静になって対策を練ったり、ポケモン達を特訓させれば再挑戦した時に勝てたかもしれない」

 

 

"でも…"と、夢追は続ける

 

 

「1体の例外を除いた相手ポケモン全てに相性が有利な状況にも関わらず負けてしまったことが受け入れなかったみたいで…ムキになった緑仙は対策や特訓もせずに何度も挑んだんだ…」

 

「それで負けを重ねてしまってバトルへの自信を失くしてしまった…ということですか?」

 

「そうだと思う…」

 

「でも、ポケモンを手放そうとする理由は…?」

 

「緑仙のポケモン達もバトルをするのが好きなんだ。でも、自分じゃ満足に勝たせてあげることが出来ない…。だからより強いトレーナーの下でなら満足にバトルが出来て、活躍も出来る…そう考えて…」

 

「同じかくとうポケモンを使う加賀美さんに預けようとしてる…というわけですね」

 

 

アンジュの言葉に夢追はコクリと頷く

 

 

「そんな…ここまで頑張ってきたのに…」

 

「でも、頭を冷やしてちゃんと対策を練ったり、特訓すれば次こそ…!」

 

「勝てると思う…。でも、今の緑仙は心が折れてしまってる…。それにコーヴァスのジムリーダーから言われたことも追い討ちになってる…」

 

「なんて言われたんですか…?」

 

 

葉加瀬の問いに夢追は一呼吸置いて答える

 

 

「"1度の敗北を喫してから君が失くしたもの。それを取り戻せない限り、いずれ俺に勝てたとしてもポケモンリーグへの参加はおろか、この先のジムリーダーに勝つことも出来ない"…って」

 

「緑仙さんが失くしたもの…?」

 

「それって一体…」

 

 

と、夢追が話したコーヴァスシティのジムリーダーが緑仙に告げた言葉…その真意についてリゼと葉加瀬が思考を巡らせようとした時、応接室の扉が開いた

 

 

「お久しぶりです、夢追さん」

 

「ハヤト…!それに緑仙…!」

 

 

現れたのは加賀美と緑仙の2人だった

 

 

「ごめん、ハヤト…。仕事の最中だったのにわざわざ抜け出して来てくれて…」

 

「友人のためです、それくらい構いませんよ。それにしても、何故リゼさん達が一緒に…?」

 

「えっと…ポケモン達の回復が終わってジムを出ようとした時に遭遇しちゃって…」

 

「まあ、成り行きです。夢追さんから話は聞きました」

 

 

リゼとアンジュから経緯を聞いた加賀美は何か察したように微笑んだ

 

 

「そうでしたか…気にかけてくださり、ありがとうございます。緑仙さん、リゼさん達も同席させてよろしいですか?」

 

「…なんでもいいよ」

 

「ありがとうございます。それでは、改めて話し合いたいのですが…。緑仙さん、本当にポケモン達を手放してトレーナーも辞めるつもりですか?」

 

「だからそう言ってるじゃん…」

 

 

加賀美から改めて自身の結論を確認された緑仙は不貞腐れたように答える

 

 

「本気ですか?私には、緑仙さんが悔いを残しているように見えます。もしそうなら、悔いが残らないよう私も出来る限り助力します。だから、もう1度挑戦してみてもいいんじゃないでしょうか?」

 

「社長までもう1度もう1度って…!悔いなんて当然残ってる…!でも、もういいんだよ…!僕は諦めたんだ…!ポケモントレーナーは辞める…!辞めて…音楽活躍に専念するんだ…!」

 

「でも緑仙…!あの日以降、歌も上手く歌えなくなってるじゃないか…!それが精神的な影響によるものなら、ここで辞めるのは良くないよ…!」

 

「こんなの一過性のものだよ…!それに簡単に諦めるのが悪いって言うけどさ、夢追だってチャンピオンを目指してたのにポケモンリーグに初めて挑戦した年で辞めたじゃんか…!」

 

「それは…!」

 

「その結果、夢追は歌手も…それ以外のことも今上手くいってるじゃん…!社長や夢追、皆は僕にポケモンバトルの素質があるって言ってたけど、そんなことなかったんだよ…!僕より素質も実力もあるトレーナーなんて沢山いる…!それこそ本気のジムリーダーや四天王だって…!そんな人達を超えてチャンピオンになれる未来が…僕には視えないよ…」

 

 

次第に悲壮を帯びていった緑仙の吐露に誰も反論も励ましの言葉も出せず、数秒の沈黙が流れた

 

 

「…緑仙さんのお気持ちは分かりました。ですが、なにもポケモン達を手放すことはないんじゃないでしょうか?」

 

「そうだよ!緑仙さんと離れることになったら、ポケモン達も悲しんじゃうよ!」

 

 

加賀美と葉加瀬の指摘に緑仙は顔を俯かせる

 

 

「それは…そうかもしれない…。勢いで言ったところもあると思う…。でも、それこそポケモン達は僕と違ってバトルの素質があるかもしれない。もしそうなら、チャンピオンを目指すどころか強いトレーナーになりたいとも思わない僕といるより、腕の立つトレーナーの下で活躍させないと勿体ないよ…」

 

「…でも、緑仙さんのポケモン達はそれを納得するんですか?」

 

 

ポケモン達を想っての結論…それを口にした緑仙にここまで静観していたリゼが物申す

 

 

「えっと…君は…」

 

「リゼと言います。緑仙さん、あなたがポケモン達のことを想ってその考えに至ったのは理解しています。でも、その考えにポケモン達がどう思うのか…どう思っているのか話し合いましたか?」

 

「それは…」

 

「それに勿体ないという話なら、私は緑仙さんがここでチャンピオンを目指す…ポケモンリーグへ挑戦することを諦めることも勿体ないと思います」

 

 

"そこで…"と、リゼは続ける

 

 

「緑仙さんに提案があります。私とバトルしませんか?」

 

 

リゼの発言に"やれやれ…"とアンジュは溜め息を吐き、他は目を丸くして驚いた

 

 

「な、なんでそうなるの…?」

 

「ジムリーダーという大きな壁に当たってバトルへの自信を失くしてるなら、実力がそう離れていないトレーナーとバトルすれば良い気分転換になると思います」

 

「それは良い提案かもしれませんね。緑仙さん、受けてみてはどうでしょう?」

 

「でも、そんなことで僕の気は…」

 

「変わらないかもしれない…。でも、僕も緑仙にここで諦めてほしくない。だから僕からもお願いだ、緑仙」

 

「…分かったよ。やればいいんだろ、やれば」

 

 

頭を下げてお願いする夢追に折れた緑仙は渋々とリゼの提案を受け入れる

 

 

「ありがとうございます!それじゃあ、日は改めて明日…ジムをお借りするのも悪いのでバトルの場所はこの街の南東にあるバトルスタジアムでどうでしょうか?」

 

「分かった、それでいいよ」

 

「それでは、今日のところはこれで解散と致しましょう。それと葉加瀬さん、私は明日仕事の方があるので…」

 

「代わりに同行してってことでしょ?任せてよ!」

 

 

リゼと緑仙がバトルの約束を交わしたところで話し合いは終わり、一同は解散した

 

 

 

 

そして、翌日の昼過ぎ…リゼ達はスメシシティ南東のバトルスタジアムに集まった

 

 

「わあ…!凄い熱気ですね…!」

 

 

ポケモンや技がバトルの範囲外へ飛ばないよう作られた特殊なバリアによって囲まれた4つのバトルフィールドが屋内に設けられているバトルスタジアム

 

そこに集ってバトルしているトレーナーとそれを観戦する人達の熱気にリゼは思わず声を漏らす

 

 

「このバトルスタジアムはバトル好きやポケモンリーグに挑戦するトレーナー達に人気だからね。ポケモンリーグが開催される時期を除けば、毎日こんな感じだよ」

 

「スメシシティはヤオウ・オウマ・イチカラシティの3つと隣接していて、港もあって他の地方からの観光客も多いですからね」

 

「流石はイチカラ・ヘルエスタシティ以上に人が集まる街ですね」

 

「バトルは予約制で細かいルールも自分達で決められるんだよ」

 

「そういうことだから、待ち時間が長くなる前に登録するよ」

 

 

そう緑仙に促されたリゼはバトルの登録を行う

 

登録を終えてから数分後…順番が回って来たリゼと緑仙は空いたバトルフィールドに立つ

 

 

「リゼ〜!頑張れよ〜!」

 

「緑仙さんもファイト〜!」

 

「ありがとう!アンジュ、葉加瀬さん!それじゃあ、緑仙さん!よろしくお願いします!」

 

「…よろしく」

 

 

アンジュ達がリゼと緑仙を見守るなか、バトルの審判を執り行うドローンロトムが現れる

 

 

『これより参加者リゼさんと緑仙さんのバトルを行います。使用ポケモンは2体。どちらかのポケモン全てを戦闘不能にした方の勝利となります。それでは、お互いに最初のポケモンを』

 

「いけ…!コジョンド!」

 

 

ドローンロトムに指示され、緑仙は"ぶじゅつポケモン":コジョンドを繰り出す

 

 

「緑仙さんの1体目はコジョンド…!なら私は…!」

 

 

緑仙のコジョンドを見て1体目の選出を決めたリゼがボールを構えようとした時、ポケットの中のボールから勝手にあるポケモンが飛び出す

 

 

「リオッ!」

 

「リ、リオル…!?」

 

「あれ…?なんかリゼさんも予想外なことになってるみたいだけど…」

 

「バトルへの意欲が抑え切れずに出てきちゃったみたいだね…」

 

 

先日のういはとメロエッタとの出逢いと2人に関わる事件を経たリオルは強くなることに意欲的になっていた

 

そして、昨日行われたリゼのジム戦を目の当たりにして更に意欲が高まっていたリオルはこうして飛び出してきたのである

 

 

「リ、リオル…?あなたがバトルするのはもう少し…」

 

「リオッ!」

 

 

トレーナーとのバトルはまだ早いと考えていたリゼはリオルに声を掛けるが、リオルのやる気に満ちた表情を見て考えを改める

 

 

「…分かった!そこまでやる気なら止めない!頑張ろうね!」

 

「リオッ!」

 

「…よく分からないけど、仕切り直しはしなくていいんだね?」

 

「はい!問題ありません!」

 

「そっか…。なら、始めようか」

 

 

リゼと緑仙…2人の準備が整ったことを確認し、ドローンロトムが試合開始の合図を出す

 

 

『それでは、バトル…始め!』

 

「リオル!"でんこうせっか"!」

 

 

先制したリゼの指示でリオルは"でんこうせっか"を繰り出し、コジョンドへと突っ込んでいく

 

 

「コジョンド!"ねこだまし"!」

 

 

緑仙の指示を受けて、コジョンドは突っ込んで来るリオルに対して"ねこだまし"を繰り出し、その動きを止める

 

 

「"ねこだまし"は必ず相手を怯ませる技…君のリオルはこれでしばらく動けない。早速で悪いけど終わりだよ…コジョンド!"とびひざげり"!」

 

 

"ねこだまし"を繰り出した直後、コジョンドはその場で高く跳躍してリオルに向かって急降下する形で"とびひざげり"を繰り出す

 

 

「出たか…!緑仙のコジョンドお得意の"ねこだまし"からの"とびひざげり"のコンボ…!」

 

「相手が怯んで動けない瞬間を突いて、かくとうタイプの技でも強力な"とびひざげり"を決める容赦ない攻撃…!これで社長のポケモン達もジム戦で大きなダメージを食らったんだ…!」

 

 

これまでに何度もその戦法を見てきた夢追と葉加瀬が声を上げる

 

 

「いや、これは問題ないですよ」

 

 

しかし、声を上げた2人に対してアンジュが冷静にそう告げる

 

その直後、リゼがリオルに指示を出した

 

 

「リオル!もう一度"でんこうせっか"!」

 

 

"ねこだまし"で怯んでしまったリオルに指示は意味がない…はずだったが、リオルはリゼの指示に反応して"でんこうせっか"を発動してその場から距離を取る

 

そして次の瞬間、コジョンドの"とびひざげり"が直前までリオルがいた地面に直撃する

 

 

「コジョ〜…ッ!!?」

 

 

技を外して地面に膝を直撃させてしまったコジョンドは"とびひざげり"のデメリットである反動のダメージに苦しむ声を上げる

 

 

「コジョンド…っ!?なんで…"ねこだまし"は決まったはずなのに…!」

 

 

予想していなかった展開に緑仙は激しい動揺を見せる

 

 

「動けた…!?なんで…!?」

 

「もしかして、あのリオルの特性は…!」

 

「"せいしんりょく"ですね。技や特性による怯みの影響を受けないだけでなく、特性"いかく"による攻撃の低下も無効化する特性。"ねこだまし"を受けた時、リゼに焦る様子が無かったからそうかもしれないとは思ってました」

 

 

緑仙同様に驚く葉加瀬とこの展開となった要因に気付いた夢追にアンジュが答える

 

 

「今だよ、リオル!"いわくだき"!」

 

 

コジョンドが反動のダメージに苦しむ隙を見逃さず、リゼの指示を受けたリオルは"いわくだき"を繰り出してコジョンドの懐に炸裂させる

 

 

「コジョ…ッ!」

 

「コジョンド…っ!」

 

 

反動のダメージに苦しむなか、"いわくだき"をまともに食らって大きく後ろへと退いたコジョンドに緑仙が叫ぶ

 

 

「くそっ…!コジョンド!"アクロバット"!」

 

 

自慢の戦法が逆に自身を窮地に追い込ませたからか、緑仙は苛立った様子で指示を出し、コジョンドは未だ残る反動のダメージの痛みに表情を歪ませながらも"アクロバット"を繰り出してリオルへと突っ込む

 

 

「リオル!"みきり"!」

 

 

決まれば大ダメージになったであろう"アクロバット"だったが、"みきり"を発動させたリオルに全て躱されてしまう

 

 

「そんな…!」

 

「決めるよ、リオル!"いわくだき"!」

 

 

攻撃が悉く失敗に終わってしまうことに緑仙が戸惑うなか、"アクロバット"を凌ぎ切ったリオルの返しの"いわくだき"が再びコジョンドの懐に炸裂する

 

 

「コジョ〜…ッ!!」

 

 

"いわくだき"を受けたコジョンドは苦痛の声を上げながら吹き飛ばされ、仰向けに地面へ倒れ伏した

 

 

『コジョンド、戦闘不能!リオルの勝ち!』

 

「やったね!リオル!」

 

「リオ〜ッ!」

 

「"ねこだまし"と"とびひざげり"のコンボ…その弱点を利用して勝っちゃうなんて…!」

 

「とは言っても、コジョンドが反動のダメージで体力を削られてただけじゃ勝ててはなかった。リゼのリオルは生まれて間もないから、緑仙さんのコジョンドとはレベルの差がかなりあったはず」

 

「それなのに勝てたのは、おそらく最初に決めた"いわくだき"の追加効果でコジョンドの防御力が下がってたからかもしれないね」

 

 

コジョンドを倒し、その勝利をリゼとリオルが喜び合うなか、アンジュ達はその一戦についての感想を口々に述べる

 

傍からすれば分からないことだが、リオルとコジョンドには相当のレベル差があり、まともに戦えば間違いなくコジョンドが勝っていた

 

しかし、"とびひざげり"失敗による反動ダメージと最初の"いわくだき"によってコジョンドの防御力が密かに下がっていたことが勝利に繋がったのだ

 

 

(それはそれとして、緑仙にとっては堪える負けになったな…。というか、よくよく考えればおかしな点がある…。かくとうポケモンが好きな緑仙がリオルの特性を把握していないはずない…。なのに最初から"ねこだまし"で攻撃した…。まさか、それを考えられないほど余裕が…)

 

 

バトルを振り返って夢追があることに気付くなか、倒れたコジョンドをボールに戻した緑仙は顔を俯かせたまま立ち尽くしていた

 

 

「もういいよ…今ので分かっただろ?僕は君よりも先に行ってるのに完全に敗北した…。これが僕の実力なんだよ…。だからもう、この勝負の結果は見えてる…僕の負k…」

 

「緑仙さん」

 

 

コジョンドが一撃もダメージを与えることなく負けたことで、自信も戦意も失くした緑仙がバトルを終わらせるために敗北を宣言しようとしたところをリゼが呼び止める

 

 

「緑仙さん…今のバトル、本気でしたか?」

 

「…何が言いたいの?」

 

「緑仙さんなら、リオルの特性が"せいしんりょく"である可能性に気付けたんじゃないですか?」

 

「…っ!それは…!」

 

 

夢追も気付いた不審な点をリゼに指摘され、緑仙は動揺する

 

リゼと夢追の推測通り、緑仙はリオルの特性を知っている

 

だが、コジョンドの"とびひざげり"を躱され、夢追達が気付くまで脳裏に過ぎることもなく忘れていた

 

場に出ていたのが相性上通用しないゴーストタイプであれば無論この戦法を使うことはないが、今の緑仙はポケモンの特性にまで思考が働いていなかった

 

6つ目のジムで負け込んで余裕を無くしていたことが大きな要因ではあったが、緑仙自身はそのことに気付いておらず、それすら忘れてしまうから負ける…それが自分の実力だと思っていた

 

 

(やっぱり僕にはバトルの才能も実力もないんだ…)

 

 

自身の不甲斐なさに歯を食いしばり、拳を握り締めて悔しがる緑仙にリゼが声をかける

 

 

「緑仙さん…これが最後のバトルになるかもしれないなら、いっそ本気で全力で楽しんでみたらどうですか?」

 

 

リゼの言葉に緑仙は顔を上げる

 

 

「楽しむ…?」

 

「はい。相手に勝ちたい気持ちだけじゃなくて、勝つために全力でバトルを楽しむ。そうすれば、ポケモン達と心が1つなれる…勝つために一緒に頑張れる気持ちになる。それがポケモンバトルの醍醐味じゃないでしょうか?」

 

 

ポケモンバトルの楽しさ…リゼの言葉を受けて緑仙はそれを思い直す

 

 

「楽しむ…か。そうだね…どうせ最後になるなら楽しんだ方がずっといいや」

 

 

緑仙はそう呟くと改めてリゼに向き直り、ボールを構える

 

 

「最後くらい楽しんで…勝って終わらせよう!いけ!ウーラオス!」

 

 

最初の不機嫌な様子は消え、生き生きとした表情を見せる緑仙は"けんぽうポケモン":ウーラオスを繰り出す

 

 

「ウーラオス…!でも、竜胆さんの持っていたウーラオスと少し違うような…?」

 

「リゼ!あのウーラオスは"いちげきのかた"の姿と言って尊様の持ってる"れんげきのかた"とはタイプが異なるんだ!」

 

 

以前に見た尊のウーラオスと姿が少し異なっていることに疑問を持ったリゼにアンジュが助言する

 

 

「へぇ、もう1つの姿を見たことがあるんだ。あの人の言う通り、僕のウーラオスは"いちげきのかた"…タイプはかくとう・あく。僕のとっておき…1番の相棒だよ」

 

「ウーラァァァッ!」

 

「緑仙さんの相棒…!何処まで通用するか…頑張るよ!リオル!」

 

「リオッ!」

 

「緑仙さん…笑ってる!」

 

「これはもしかするかも…!」

 

 

笑う緑仙と咆哮を轟かせるウーラオスを前にリゼとリオルが改めて気を引き締め、緑仙の変化に葉加瀬と夢追が希望を見出すなか、ドローンロトムが試合再開の合図を出す

 

 

『それでは、バトル始め!』

 

「ウーラオス!"かわらわり"!」

 

「リオル!"みきり"!」

 

 

再開と同時に、緑仙の指示でウーラオスは"かわらわり"を繰り出して突っ込み、リゼは最初の攻撃を凌いで反撃しようとまずは回避のためにリオルに"みきり"を発動させる

 

 

「無駄だよ!いけぇ!ウーラオス!」

 

 

コジョンドの時と同様にウーラオスの攻撃は躱される…と思いきや、"みきり"を発動させたはずのリオルはウーラオスの"かわらわり"を躱すことが出来ず、炸裂してしまう

 

 

「嘘…っ!?なんで…!」

 

「リオルの"みきり"が失敗したのはウーラオスの特性"ふかしのこぶし"によるものだよ。この特性は"みきり"や"まもる"の絶対防御の技を掻い潜って攻撃を当てることが出来るんだ」

 

「そ、そんな特性が…!」

 

「つまり、君のリオルにウーラオスの攻撃を凌ぐ方法はない!ウーラオス!"アイアンヘッド"!」

 

 

ウーラオスの特性にリゼが驚くなか、緑仙の指示でウーラオスは"かわらわり"を受けて地面に伏したリオルを逃がさないように掴み捕らえ、"アイアンヘッド"を炸裂させる

 

 

「リオル…っ!」

 

 

リゼが叫ぶなか、"アイアンヘッド"を食らってウーラオスに掴まれたまま微動だにしないリオルの状態をドローンロトムが確認しに近寄る

 

 

『リオル、戦闘不能!ウーラオスの勝ち!』

 

 

戦闘不能が告げられたリゼはリオルをボールへと戻す

 

 

「お疲れ様、リオル。よく頑張ったね。最後はあなたに託すよ…お願い!エンペルト!」

 

 

リオルに労いの言葉をかけ、リゼは2体目のポケモンとしてエンペルトを繰り出す

 

 

「エンペルト…それが君の切り札ってわけだね。でも、はがねタイプを持ってるエンペルトだと僕のウーラオスには相性が悪いと思うんだけど?」

 

「問題ありません!エンペルトならやれます!」

 

「…そうだね。相性の有利があるからと言って油断は出来ない。もう何度も味わってるしね」

 

 

リゼと緑仙は軽く言葉を交わし、互いに最後となるポケモンでのバトルが再開される

 

 

『それでは、バトル始め!』

 

「ウーラオス!"かわらわり"!」

 

「エンペルト!"ドリルくちばし"!」

 

 

ドローンロトムの合図と同時にリゼと緑仙は指示を出し、エンペルトの"ドリルくちばし"とウーラオスの"かわらわり"がぶつかり合う

 

技のぶつかり合いは相性もあってか僅かにエンペルトが勝り、ウーラオスを後ろへと押し返す

 

 

「エンペルト!"うずしお"!からのもう一度"ドリルくちばし"!」

 

 

ウーラオスを押し返したところでエンペルトは"うずしお"を繰り出して直撃…ウーラオスを渦の中に捕らえる

 

そして、エンペルトはすかさず"ドリルくちばし"を繰り出して渦で足を取られて動けないウーラオスへと突っ込む

 

 

「ウーラオス!"あんこくきょうだ"で"うずしお"を掻き消せ!」

 

 

これに対して緑仙の指示に素早く動いたウーラオスは自身特有の技である"あんこくきょうだ"を繰り出し、その衝撃を以って渦を弾け飛ばす

 

 

「続けて"アイアンヘッド"で迎え撃て!」

 

 

そして、エンペルトの"ドリルくちばし"が直撃する寸前でウーラオスは"アイアンヘッド"を繰り出し、技のぶつかり合いに持ち込ませることで直撃を免れた

 

 

「凄いパワー…!それに指示への反応も早い…!距離を詰められたら厳しいかも…!」

 

「だろうね、接近戦はかくとうポケモンの得意分野だから!ウーラオス!"あんこくきょうだ"!」

 

 

エンペルトではウーラオスに対して接近戦は部が悪いと判断するリゼだが、先手を打たせまいと緑仙の指示を受けてウーラオスが"あんこくきょうだ"を繰り出して突っ込む

 

 

「早い…っ!エンペルト!"はがねのつばさ"で迎え撃って!」

 

 

素早く突っ込んで来るウーラオスの攻撃を回避するのは困難だと判断したリゼはエンペルトに"はがねのつばさ"を用いて防御させる

 

エンペルトは"はがねのつばさ"を発動させた両腕をクロスさせてウーラオスの"あんこくきょうだ"を受け止めるが、徐々に押されていく

 

 

「よし!このまま押し切れる!」

 

「まだです!エンペルト!"れいとうビーム"!」

 

 

このまま押し切ってエンペルトの体勢を崩せると思った緑仙だったが、リゼの指示を受けたエンペルトは"はがねのつばさ"で防御している状態から"れいとうビーム"を繰り出してウーラオスを氷漬けにする

 

 

「嘘だろ…!?」

 

「基本的にポケモンは2つの技を同時に繰り出すことは出来ない。でも、順序を踏んで且つ先に繰り出している技を中断するような動作を必要する又は同じ箇所から繰り出すような技でなければ、結果的に2つの技を同時で繰り出すことが出来る」

 

「"はがねのつばさ"は腕、"れいとうビーム"は口元から繰り出す技だから可能だったってことなんですね…!」

 

「まさか、そんな方法を思いつくなんて…!」

 

 

ピンチをチャンスに変えたリゼの戦法に緑仙だけでなく葉加瀬と夢追も目を丸くして驚く

 

 

「今だよ、エンペルト!"ドリルくちばし"!」

 

 

そして、氷漬けとなって動けないウーラオスにエンペルト渾身の"ドリルくちばし"が炸裂する

 

 

「ウーラァ…ッ!!」

 

「ウーラオス…っ!?」

 

 

緑仙が叫ぶが、吹き飛ばされて地面に倒れ伏したウーラオスに立ち上がる様子はなかった

 

 

『ウーラオス、戦闘不能!エンペルトの勝ち!よって勝者…リゼ!』

 

 

ドローンロトムによって勝敗が宣言され、2人のバトルはリゼの勝利に終わった

 





リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、イーブイ、バタフリー
   サイホーン、リオル

アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ

緑仙
手持ち:ウーラオス(いちげきのかた)、コジョンド
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