「アンジュ、今どの辺りかな?」
「ちょうど中間くらいだと思う。この辺りから少し北へ向かえば、加賀美さんが言っていたダイマックスバンド作成に必要な"ねがいぼし"…それが手に入る場所に着くはずだよ」
時刻は正午過ぎ…午前中にスメシシティを出発したリゼとアンジュはオウマシティへと続くトリガー山道を進み、その道中にある"ねがいぼし"を手に入れられる場所へと向かっていた
「なら、もう一踏ん張りだね!」
「リゼ〜!アンジュさ〜ん!待って〜!」
目的地まであと少しと分かったリゼが気合を入れ直したところで、後ろから自分達を呼ぶ声が聞こえた
「え…?って、緑仙さん…!それに夢追さんも…!」
後ろを振り返ると、そこにはスメシシティで親睦を深めた緑仙と夢追の姿があり、2人は息を切らしながらリゼ達の下へ走り寄る
「よかった…!やっと追い付いた…!」
「お二人共、どうして私達を追いかけて…?」
「リゼさん達が今日出発することをハヤトから聞いてね。僕達はこれから緑仙のジム再挑戦のためにコーヴァスシティへ戻るんだけど、その途中でオウマシティを通るから、よかったらそこまで一緒にと思ってね」
「でも、まさか朝一番に出発するとは思ってなかった…」
「そ、そうだったんですね…。オウマシティへ行く前にダイマックスバンドを作るのに必要な"ねがいぼし"を取りに行くつもりだったので…」
「あ〜、なるほど。そういうことなら僕達にも好都合だね」
「どういうことですか?」
「実は僕達…必要なのは緑仙なんだけど、まだ手に入れてないんだ」
「え?そうなんですか?」
「うん。とりあえず、歩きながら話そうか」
緑仙に促され、リゼとアンジュは緑仙と夢追と共に目的地へ向かって歩き出す
「で、話の続きだけど…僕と緑仙は先に全てのジムを制覇してから"ねがいぼし"を取りに行こうと思ってたんだ」
「全て制覇してから…?どうしてですか?」
「実は"ねがいぼし"を手に入れるのはそう簡単なことじゃないんだ。リゼ達はガラル地方のカンムリ雪原って場所にあるマックスダイ巣穴って知ってる?」
「たしか、ポケモンがダイマックスする要因となるガラル粒子が満ちている地下迷宮でしたね」
「そう、それと同じものがこのトリガー山道の北にあることが近年に発見されたんだ。そして、その最奥で大量の"ねがいぼし"が発掘されてる」
「でも、ダイマックスは誰でも扱えていいものじゃない上に、ガラル地方と違ってここニジサンジ地方には"ねがいぼし"が降ってこない。つまり、発掘された分しか数がない…限りがあるってことなんだ」
"そこで…"と、夢追は話を続ける
「リーグ委員会はガラル地方に倣って、マックスダイ巣穴に利用した試練:ダイマックスアドベンチャーを設けた。そして、その試練をクリアしたトレーナーに"ねがいぼし"を与えることにしたんだよ」
「なるほど…。簡単に手に入らないのは、その試練があるからなんですね」
「うん。試練の内容はシンプルで地下迷宮を進んで、その道中と最奥で遭遇するダイマックスポケモンを倒すこと。でも、ダイマックスポケモンは1体1体が強い上に何度かバトルしないといけないから、相当な実力がないと1人でクリアすることは出来ないんだ」
「相当な実力って言うと…?」
「最低でもジムを全て制覇するくらいだね。複数人でも挑めるけど、ある程度の実力に加えて連携も重要になってくるんだ。それに遭遇するポケモンの運も絡んでくる」
「話を聞く限り本当に容易じゃないですね…」
「前に僕と緑仙で挑戦した時は2体目のダイマックスポケモンとのバトルで負けて失敗に終わったけど、リゼさんとアンジュさんもいるならなんとかなると思うよ」
「そ、そうですね…」
「あっ!見えてきた!あの穴だよ!」
夢追の発言にアンジュが気弱そうに答えるなか、目的地が見えた緑仙が指を指しながら全員に呼びかける
緑仙が指し示した先にはダイマックスアドベンチャーの舞台となるマックスダイ巣穴の入り口が見え、その手前には小さな建物が建っていた
「あれがマックスダイ巣穴…!」
「うん。あそこに許可なく入ることは出来ないから、まずは手前にある建物で申請するんだ」
「じゃあ、早く行きま…あれ?」
改めて目的地へとリゼが足を踏み出そうとしたその時、前方から数台の車が走ってくる
車はリゼ達を横切って行くなか、その内の1台が目の前に止まって中から1人の女性が出てくる
「女の子だ〜っ!あなた、ダイマックスアドベンチャーに挑戦しにここまで来たのかな!?」
「は、はい…そうですけど…」
「あちゃ〜…!やっぱりそうだったか〜…!ごめんね、これからしばらくダイマックスアドベンチャーは出来ないんだ〜…!」
「えぇ…っ!そうなんですか…!?」
「いや、というかあなたは一体…」
「そうだった…!自己紹介も無しにごめんね〜…!私は奈羅花、この先にあるダイマックスアドベンチャーの管理責任者をしてるの!」
「ダ、ダイマックスアドベンチャーの管理責任者…!?」
奈羅花の自己紹介を受けて、リゼ達は驚愕する
「奈羅花…もしかして、3年前のポケモンリーグでベスト4の戦績を残したあの奈羅花さんか…!」
「はい、よく知って…って、もしかして夢追さんですか…!?まさかこんなところで直接会うことになるなんて…!」
「過去のポケモンリーグでベスト4の実力者…!」
「流石はここ数年のポケモンリーグで実況を務めてる夢追さん…実力のあるトレーナーに関しては情報通ですね」
「まあね。ところで、どうしてダイマックスアドベンチャーに挑戦出来ないのかな?それにかなりの大所帯みたいだけど、車に乗って何処へ行くの?」
夢追の質問に奈羅花は真剣な表情で答える
「実はさっき、オウマシティの北にあるマナナツの森…そこに住むポケモン達が暴れ出して街にも被害が出ていると連絡を受けたんです」
「ポケモンが暴れ出した…!?どうしてそんなことに…!?」
「原因は分かりません。とにかく、私はダイマックスアドベンチャーのスタッフ全員を連れてオウマシティの応援に向かうところなんです」
「あ、あの…!まだ座席が空いていれば、私達も一緒に連れて行ってくれませんか…!」
「いいよ、いつまで待たせるか分からないしね!でも、これから向かうオウマシティが現状どれくらい危険かは分からないから、そこだけは注意と覚悟をしてね!」
奈羅花の忠告を聞いてリゼ達は頷き、車に乗せてもらってオウマシティへと向かう
*
「着いた…ここがオウマシティ…!」
「風情のある綺麗な街だけど、景色を楽しむ雰囲気じゃないね…」
綺麗な花を咲かせた木々が彩る和風の街:オウマシティ…そこへ辿り着いたリゼ達は奈羅花から聞いた街の現状を目にして冷や汗を流していた
街の北側には煙が上がっており、至る所から悲鳴が聞こえ、人々はそこから遠ざかるように逃げ惑っていた
「さあ、お前達!街の北側に行くよ!」
「「「はい!」」」
「私達も行こう…!」
「いいけど、無茶はしないでよ…!」
ダイマックスアドベンチャーのスタッフを率いる奈羅花の後に続く形で、リゼ達も街の北側へと向かう
走ること数分…街の北出入り口が見え、そこでは野生ポケモン達の侵攻をトレーナー達が食い止めていた
だが、トレーナー達のポケモンはかなり疲弊しており、その防御網は今にも突破されそうになっていた
「凄い数…!お前達!複数人で固まりながら連携して対処するんだよ!」
「「「はい!」」」
奈羅花の指示を聞いたスタッフ達はポケモン達の対応に当たるべくその場から散開する
「人手は多いに越したことはありません!私達も加わりましょう!」
奈羅花達に続こうとするリゼの呼び掛けにアンジュ達は頷き、それぞれエンペルト、ビッパ、ウーラオス、ストリンダーを繰り出す
「グマァッ!」「ニドォッ!」
「ザンッ!」「シャァァッ!」
リゼ達の正面…出入り口の防御網を突破して来た野生のリングマ、ニドクイン、ザングース、アーボックが迫る
「エンペルト!"ドリルくちばし"!」
「ウーラオス!"あんこくきょうだ"!」
「ストリンダー!"ばくおんぱ"!」
エンペルト、ウーラオス、ストリンダーはそれぞれ技を繰り出し、リングマ、ニドクイン、ザングースに炸裂させる
「グゥ…ッ!グマァッ…!」
「一撃じゃ倒れないか…!アンジュ…!気を付けて…!」
エンペルトの一撃を受けてもまだ体力がある様子のリングマを相手に緊張感が高まるなか、リゼはアンジュに注意を呼び掛ける
(落ち着け…!私なら出来る…!出来ないといけない…!じゃないとリゼの足を引っ張ることになる…!)
突っ込んで来るアーボックを前に、アンジュは自身を奮い立たせてバトルに臨む
「ビッパ!"あなをほる"!真上に突き飛ばして!」
アンジュの指示を受けて、ビッパは"あなをほる"を繰り出して地中へと潜る
目の前から消えたことで動揺したアーボックが動きを止めて周囲を警戒するなか、ビッパは真下から飛び出して"あなをほる"を炸裂させ、アンジュの指示通りに真上へと突き飛ばす
「よし…!続けて"ひっさつまえば"!地面に叩き付けるんだ!」
そして、すかさず出された次の指示に従い、ビッパはアーボックの尻尾目掛けて飛び出し、"ひっさつまえば"を繰り出す
「シャァァァッ…!」
「ビッ…!?」
だが、"ひっさつまえば"が決まる寸前でアーボックは"アイアンテール"を繰り出してビッパに炸裂…地面へと叩き飛ばす
「ビッパ…っ!」
アーボックの反撃を受けて地に伏せるビッパを目にしたアンジュはゴルーグが入ってるボールを手にする
(この辺りの野生ポケモン相手はまだビッパには厳しい…!やっぱりゴルーグじゃないと…!でも、ゴルーグのパワーだと誰かを巻き込む可能性が…!だからと言って半端なバトルをしたらこっちが返り討ちに…!)
だが、アンジュはゴルーグでのバトルを躊躇ってしまう
「アンジュ…っ!」
「…っ!?」
リゼの声でアンジュは我に返るが、その間にアーボックはビッパへのトドメを刺そうと"どくどくのキバ"を繰り出そうとしていた
「ミミロップ!"ピヨピヨパンチ"です!」
その時、建物の屋根上から飛び出してきた"うさぎポケモン":ミミロップの"ピヨピヨパンチ"がアーボックに炸裂し、吹き飛ばした
「あのポケモンはミミロップ…!それに今の声は…!」
「お久しぶりですね。リゼさん、アンジュさん」
アンジュのビッパを助けに現れたミミロップ…そのポケモンに指示を出した者に声を掛けられたリゼが振り向くと、そこにはリゼが通っていたトレーナーズスクールの知り合いである美兎がいた
「おーおー、めちゃくちゃ大変なことになってきたなぁ…。って、リゼさんやん…!」
「本当だ、久しぶり〜」
そして更に、美兎の後ろからリーフィアを連れた楓とカメックスを連れた凛がリゼ達の前に現れる
「美兎委員長…!それに楓さん、凛先輩まで…!」
「余所見してたらアカンで、リゼさん!リーフィア!"リーフブレード"!」
「私も手伝うよ。カメックス!"ハイドロポンプ"!」
美兎達との再会にリゼが驚くなか、楓のリーフィアが"リーフブレード"をリングマに、凛のカメックスが"ハイドロポンプ"をニドクインとザングースに炸裂させる
ボロボロになった野生ポケモン達は勝ち目がないと理解したのか、尻尾を巻いて森へと逃げ帰っていく
「た、助かりました…。ありがとうございます…」
「ビパァ!」
「いえいえ、気にしないでください」
「ねぇ、あの人達リゼの知り合い?」
「はい、私が通っていたトレーナーズスクールの同級生と先輩なんです」
「そうなんだ。はじめまして、僕は夢追翔。バトルを手伝ってくれてありがとうね」
「緑仙です、よろしく」
「月ノ美兎です。こちらは樋口楓ちゃんに、静凛先輩。よろしくお願いします」
「っていうか、まさかこんなところでリゼさんと再会出来ただけじゃなく、あの夢追さんと会えるなんてなぁ…」
「楓さん、落ち着いてる暇はないよ。アレ見て」
緑仙達と美兎達が自己紹介し合うなか、凛が指を指して示した先には更に数体の野生ポケモン達が街中に雪崩れ込んで来ていた
「まだ来るの…!?」
「でも、最初に比べて勢いも数も減ってはいます」
「なら、もう一踏ん張りやな!」
「皆さん、私達も一緒にバトルします!頑張りましょう!」
「はい…!」
美兎達と協力し、リゼ達は野生ポケモン達とのバトルに臨んだ
*
「や、やっと終わった〜…!」
野生ポケモン達とのバトルが始まって1時間後…一先ず、街を襲って来ていたポケモン達は撃退し切られ、リゼ達はバトルと緊迫していた空気から解放されたことによる疲れから道の端で座り込む
「トレーナーとの連戦とは違って、凄く疲れたね…」
「今回は数がいましたし、街を守らないといけない緊張感からか普段とは違う気の張り方でしたからね…」
「あっ…!いたいた!おーい!皆さ〜ん!」
野生ポケモン達とのバトルが大変だったことにそれぞれが意見を口にするなか、リゼ達を見つけた奈羅花が2人の男女を連れて駆け寄って来る
「奈羅花さん…!ご無事だったんですね…!」
「それはこっちの台詞だよ〜!リゼさん達もなかなかやるね〜!って、美兎さん達じゃないですか!久しぶりですね!」
「美兎さん達、奈羅花さんと知り合いなんですか?」
「ええ、以前ダイマックスアドベンチャーに挑戦した際にお世話になりまして」
「ところで、そちらの連れはどちら様?」
と、夢追の質問を受けた奈羅花は一緒に来た男性の2人をリゼ達に紹介する
「私の親友の夏芽とオウマシティで1番偉い役人の弦月です!」
「はじめまして、皆さん。来栖夏芽です」
「僕は弦月藤士郎。暴れ出した森のポケモン達から街を守ることに協力してくれて本当にありがとう」
「いえ、こちらこそお役に立てて何よりです。私はリゼと言います。ヘルエスタシティから来ました」
「アンジュ・カトリーナです。どうぞよろしくお願いします」
リゼとアンジュに続いて、緑仙達も夏芽と弦月との自己紹介を交わす
「それにしても酷い有り様ですね…」
「うん…。それに野生のポケモンがわざわざ住処から離れて街を襲うなんて…。一体何があったんですか?」
「原因はまだ分かってないけど、もうじき…」
「藤士郎ー!」「弦月ー!」
と、弦月がリゼの質問に答えてる最中、彼の名を呼ぶ2人の男性がリゼ達の方に駆け寄って来る
「あっ…!2人が帰って来た…!」
「ちょっと長尾!甲斐田はともかく、なんでお前まで一緒に街を離れてるんだよ!私達が来るの遅かったら危なかったんだよ!」
「いや、あのですね奈羅花さん…これには訳が…」
「ち、ちょっと待って、奈羅花さん…!長尾はポケモン達が突然暴れ出した理由を突き止めようと1人調査に行った僕の身を案じて同行しただけなんだ…!」
「だとしても、ジムリーダーなら街を守ることが最優先でしょ!」
「言い返す言葉もねぇ…。面目ない…」
「え…!ジムリーダー…!?」
「そっか、リゼは初めてだもんね。この人がオウマシティのジムリーダー:長尾景だよ」
奈羅花に説教されている青髪の男性…長尾景がオウマシティのジムリーダーであることを知ったリゼは驚きの声を上げる
「お…!緑仙さんに美兎さん達じゃねぇか!どうしてここに?」
「僕はコーヴァスシティのジムに再挑戦するために立ち寄っただけ」
「私達は次に挑戦するジムがあるヘルエスタシティにスメシ、イチカラシティを経由して行く途中です。コーヴァスシティからシーズシティへ行く唯一の道が雪崩で通れなくなっていたので」
「なるほど、そういうことか。そんで、そこの2人は…」
「リゼと言います。こっちは私と旅をしてるアンジュ。オウマジムに挑戦するため来ましたが、この事態が落ち着くまでは何か力になればと思ってます」
「そうか、ジムへの挑戦者だったか。悪いな、ジムへの挑戦を待ってもらうだけじゃなく、手伝わせちまって…。俺は長尾景だ、よろしく」
「僕は甲斐田晴。オウマジムの審判を務めてるけど、本業はポケモンの生態を研究してる研究者だよ。よろしく」
と、リゼは長尾と甲斐田との自己紹介を交わす
「それで、街がこんなに大変な目に遭ってる中で調査してきたんだから、何か有益な情報を持って帰って来たんだよね?」
「そ、そんな怖い顔で睨まないでくれよ、奈羅花さん…」
「それでどうだったの?」
「僕達が調査した結果、森のポケモン達が暴れ出した原因は最北端にある廃墟の城を住処としているはずのゴーストポケモン達との縄張り争いによるものじゃないか…という結論に至った」
甲斐田の言葉…特に"廃墟の城"という単語に驚いたリゼ達は目を見開く
「廃墟の城って、最近"呪われた騎士"のようなポケモンが目撃されたと噂されている場所ですか…?」
「うん、その噂の場所だよ。オウマシティの北に生息しているポケモンの中で全てのゴーストポケモン達は廃墟の城を住処としているんだ。そこから離れることは滅多にない」
「でも、何故かそのゴーストポケモン達が外に出てている…。つまり、何らかの理由で住処を離れざるを得なくなって森のポケモン達との縄張り争いに発展した…」
「そして、縄張り争いから逃げた…もしくは住処を奪われた森のポケモン達が街を襲った、ということだね?」
「はい、そういうことです」
甲斐田の説明を聞き、全員はその結論に納得を示す
「それで、これからどうするんですか?」
「原因が廃墟の城にあるなら調査しに行かないといけない。そして原因を取り除いてゴーストポケモン達が元の住処に戻ってくれれば…」
「森のポケモン達も住処を取り戻せて、街への被害も無くなる。まあ、それしかないよね」
「というわけで、俺はポケモン達を回復させたらすぐに調査へ向かう。ただ、道中は間違いなく森のポケモン達と遭遇するだろうから何人か一緒に同行をお願いするつもりなんだが…」
「あの、長尾さん…1つお聞きしたいことがあるんですけど…」
と、ここで夏芽が恐る恐る長尾に質問する
「どうした?夏芽さん」
「先程の調査の際に、男女の2人組を見かけませんでしたか…?赤髪の女性と青髪の男性なんですけど…」
「いや、見てねぇな…」
「実はエデンシティから来た方々で、私の家で代々保管していた"りゅうのプレート"をお貸しして廃墟の城近くにある遺跡の調査に行ったきりまだ戻って来ていないみたいなんです…」
「エデンシティから来た男女の2人組…!その人達って、レインさんとレオスさんじゃないですか…!?」
「は、はい…。そう名乗っていました…」
「またリゼの知り合いか」
「思い出した!先日、長尾とのジム戦で勝ったインテレオンのトレーナーとその連れの人じゃない!?」
「あ〜、あの2人か…!調査で進めた場所までで見かけなかったってことは、おそらく街に戻ろうとはしていない…。つまり、まだ遺跡か廃墟の城辺りで動けない可能性があるな…」
「…長尾さん。さっき、廃墟の城への調査に何人か同行してもらいたいと言ってましたよね?」
「ああ、言ったが…もしかして…」
「はい、私を一緒に行かせてください!」
廃墟の城への調査の同行にリゼが志願し、それに驚いたアンジュは慌てて止めようとする
「ち、ちょっとリゼ…!それは流石に…!」
「危険なのは分かってる…。でも、取り残されているレインさん達を放っておけない…!」
「…っ!」
迷いのないリゼの覚悟にアンジュは何も言い返すことが出来ず、口を噤んでしまう
「…いいんだな?」
「はい…!」
「なら、こちらからもよろしく頼む!」
リゼの覚悟を確認した長尾は協力を受け入れ、握手を交わす
「リ、リゼが行くなら私も…」
と、アンジュも調査への同行を志願しようとするが、その声には不安と恐怖が混じっていた
そんな様子のアンジュを見たリゼは一瞬目を丸くするが、すぐに何かを察して優しい声音で声を掛ける
「…いや、アンジュはここに残ってて」
「…っ!?ど、どうして…!」
「廃墟の城のゴーストポケモン相手にアンジュのビッパが太刀打ち出来るか分からないし、数が多いならゴーストタイプが弱点のゴルーグも厳しいかもしれない。だったら、アンジュにはこの街の守るために残った方がいいと思う」
「たしかに、街を守る人が多い方がいいですね。これまでのバトルでポケモン達が大きな怪我やダメージを負ったトレーナーも多いですから、奈羅花さんの所の人達の他にも人手は必要になる」
「で、でも私はリゼの傍にいないと…」
「なら、私がアンジュさんの代わりにリゼさんに付いて行きます」
踏ん切りがつかないアンジュを納得させようと美兎が調査への同行を志願する
「美兎委員長…!」
「噂に聞いた廃墟の城にもちょっと行ってみたかったですから。楓ちゃんと凛先輩はアンジュさんと一緒に街の守りに付いててください」
「ま、まあ?美兎ちゃんがそこまで言うなら仕方ないな!」
「でも楓さん、お化けやホラーが苦手だから本当は廃墟の城へ行かずに済んでホッとしてるでしょ?」
「お、おい凛…!リゼさんの前やねんからそこは言わんといてくれよ…!」
普段からクールに立ち振る舞っているため、そのイメージが崩れてしまう秘密を凛に暴露された楓は顔を赤らめる
「そういうことなら僕も付いて行くよ。リゼさんには恩があるし」
「緑仙が行くなら、僕も同行するかな。リゼさんのことは僕達がしっかり見ておくから安心してください、アンジュさん」
「わ、分かりました…。リゼのこと、よろしくお願いします」
「そういうわけだから、リゼのことは何があっても僕と夢追が守ってあげるよ。特に夢追は率先して僕達の盾になってくれるから」
「最悪の場合はそうだろうけど、そこまで緊張感のない軽々しさで言われると傷つくよ…!?」
「緑仙さん…!夢追さんも…!ありがとうございます!」
更に緑仙と夢追も調査への同行を志願し、アンジュは渋々ながらも一先ず納得してリゼの提案を受け入れた
「よし、廃墟の城への調査は俺を含めてこの5人で決定だ。ただ、そこまでの道中で森のポケモン達に消耗させられるのは避けたい…。ってことで、途中まで俺達を護衛してくれる人も何人か欲しいんだが…」
と、長尾はチラリと奈羅花に視線を送る
「はいはい、そんなに目で訴えなくてもやってあげるよ」
「助かるぜ、奈羅花さん!」
「なら、残りのメンバーは私が選ばせてもらうね。甲斐田と弦月、それと楓さんと凛さんにも護衛をお願いしたいかな。夏芽はアンジュさんと待ってて」
奈羅花の要望にそれぞれが頷いて承諾し、各役割のメンバーが決まったところで長尾が呼び掛ける
「よし、それじゃあさっきまでのバトルで傷付いた全員のポケモン達がある程度回復したら出発する!それまで各自、準備を整えてくれ!」
その呼び掛けを以って場は一時解散となり、各々は自身のポケモンの回復と準備に取り掛かった
リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、イーブイ、バタフリー
サイホーン、リオル
アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ
月ノ美兎
手持ち:ミミロップ
樋口楓
手持ち:リーフィア
静凛
手持ち:カメックス
緑仙
手持ち:ウーラオス(いちげきのかた)、コジョンド
夢追翔
手持ち:ストリンダー