にじさんじ×ポケットモンスター   作:Mr.ソロ

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第47話「廃墟の城!憎悪に燃える呪われた騎士!」

 

「よし、なんとか無事に着いたな…!助かったぜ、ビリジオン、テラキオン!晴達が街まで無事に帰れるよう、悪いけどもう一仕事頼む!」

 

「ここまでありがとう!気を付けてね!」

 

 

マナナツの森最北端…そこに位置する廃墟となった巨大な城の前に辿り着いたリゼ達は乗せて来てくれたビリジオンとテラキオンにお礼を言い、甲斐田達の下へ駆け戻って行くのを見送った

 

 

「さて、ここからは俺達の出番だ。この中で何が起こってるか分からない。全員、離れないように付いて来てくれ」

 

 

先頭に立つ長尾の後に続いて、リゼ達はこの事態の原因が潜んでいるとされている廃墟の城へと足を踏み入れる

 

 

「わっ…!真っ暗ですね…!」

 

 

大きな扉を開けると城の中は明かり1つ無く、日が暮れてしまった今ではほとんど何も見えない真っ暗闇となっていた

 

 

「まあ、明かりが無いのは当然だな。ちょっと待っててくれ、携帯ランプを取り出す」

 

「明かりなら私にも任せてください!出てきて!ゴウカザル!ルナトーン!」

 

 

少しでも多く明かりを確保するため、美兎は"かえんポケモン":ゴウカザルと"いんせきポケモン":ルナトーンを繰り出す

 

 

「ゴウカザル…!ヒコザルが進化したんですね!」

 

「はい、あの時と比べてこの子も本当に強くなりました!ルナトーン!"フラッシュ"です!」

 

 

ゴウカザルの頭の炎とルナトーンが発動させた"フラッシュ"が周囲を照らし、城の中の景色を明らかにさせる

 

 

「わあ…っ!凄く広い…!」

 

「外観からなんとなく予想はしてたけど、まさかこれほどとはね…」

 

「通路もいくつかあるよ…。これは調べるのに時間がかかりそうだね…」

 

 

城ということもあって玄関口から広く、内装は廃れる前であれば大層豪華だったことが窺えるほどの造りだった

 

 

「長尾さん、まずは何処から調べますか?」

 

「調べるなら地下だな。奥の扉の先は玉座のある大広間で、その玉座の後ろに地下に繋がる隠し階段があるらしいから、そこから下りるぞ」

 

「らしい…?」

 

「一度来たことはあるんだが、その時は見つけられなくて1階から上までしか知らないんだ。地下について知ったのは、今の四天王の1人のましろさんから聞いたからだ」

 

「ましろさん…!あのゴーストポケモン使いの方ですか…!」

 

「ああ、ましろさんは奈羅花さんと夏芽さんと揃ってオウマの出身でな。トレーナーになる前からこの城に入り浸ってたそうだ」

 

 

"よっと…!"と、話しながらリゼ達を連れて奥の扉の先の大広間に入った長尾は玉座の後ろにあったハッチを開け、現れた地下への階段を下る

 

 

「ましろさんならこの城のことを誰よりも知ってるから居てくれたら楽だったんだが、今はニジサンジ地方にいねぇんだ。人から聞いた話だと、色んな地方のホラースポットを巡ってるらしい」

 

「ゴーストポケモン好きな人らしい趣味ですね。私も怪談やホラーは好きなので、是非一度お会いしてみたいです。リゼさんも機会があれば、いつか一緒にホラースポット巡りしませんか?」

 

「み、美兎委員長からのお誘いは嬉しいんですけど…ホラー系は…ちょっと…」

 

「あっ…!あそこにある人の絵画、今目がこっち向いた」

 

「ひぃぃぃぃぃ…っ!!」

 

「こらこら、緑仙も美兎さんもリゼさんを虐めないの。今怖がられて、これから起こるかもしれない事態にリゼさんが戦力にならなくなったら困るでしょ?やるならせめて、この事態を収拾してからじゃないと」

 

「私のことを弄ること自体は止めないんですか!?」

 

 

と、美兎達がリゼを弄るなか、階段を下り切って広い地下通路に辿り着いた途端に先頭を歩いていた長尾が急に足を止める

 

 

「長尾君、どうかしたの?」

 

「…来るぞ!」

 

 

夢追の問いに長尾がそう答えた直後、通路の正面からゴーストやサマヨール、ムウマ等の多数のゴーストポケモン達がリゼ達に向かって押し寄せて来ると共に"シャドーボール"や"サイケこうせん"等の技を繰り出して攻撃してくる

 

 

「攻撃してきた…!?」

 

「私達も応戦するしかなさそうですね…!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください…!」

 

「どうした?リゼさん」

 

「あのゴーストポケモン達…様子が少し変なんです…。何かに怯えているような…そんな表情に見えるんです…」

 

 

リゼの指摘を受けて、長尾達もゴーストポケモンに改めて目を向ける

 

自分達を敵と見なし、攻撃してきたゴーストポケモン達はどの個体も表情が険しそうで、リゼの言う通り怯えている個体も少なからず確認出来た

 

 

「言われてみればたしかに…!一体何に怯えてるんだ…?」

 

「この城に住むゴーストポケモン達はその殆どが人懐っこい性格をしてるって、ましろさんが言ってた。人を襲うと言っても、せいぜいが悪戯目的で驚かしてくる程度で、バトルはこっちから明確に攻撃しない限りしてこない」

 

「まだ攻撃という攻撃をしていない私達を襲って来たのは、彼等の本意ではないといつことですか?」

 

「おそらくな。今回の事態を引き起こすことになった原因…それが関係してるのかもしれねぇ」

 

「可哀想だけど、倒さないと先へは進ませてくれそうにないよ…!」

 

「分かってる…!みんな、悪いがここは心を鬼にしてくれ!バトルだ!いけ!ニャイキング!」

 

「分かりました…!お願い!イーブイ!」

 

「いけ!ウーラオス!」

 

「頼んだよ!ストリンダー!」

 

 

ゴーストポケモン達の裏にある事情には同情するも事態解決のためにはバトルするしかないと全員は判断し、リゼはイーブイ、緑仙はウーラオス、夢追はストリンダー、長尾は"バイキングポケモン":ニャイキングを繰り出す

 

 

「私はこのままゴウカザルで!ルナトーンは自分の身を守ることに集中しててください!ゴウカザル!"かえんほうしゃ"!」

 

 

美兎は既に出していた2体それぞれに指示を出し、ゴウカザルの繰り出した"かえんほうしゃ"が手前にいたゴーストポケモン達に炸裂するとともに、その後ろにいるポケモン達を怯ませる

 

 

「イーブイ!"アイアンテール"!」

 

「ウーラオス!"あんこくきょうだ"!」

 

「ストリンダー!"オーバードライブ"!」

 

「ニャイキング!"つじぎり"だ!」

 

 

そして、後続のゴーストポケモン達が怯んだ隙を突いてリゼ達はそれぞれのポケモンに指示を出し、瞬く間に半数近くを戦闘不能にさせていった

 

 

「ゴ、ゴースト〜…ッ!」「サマ〜…ッ!」「ムゥマ〜…ッ!」

 

 

リゼ達の攻撃に恐れをなしたか、ゴーストポケモン達は弱々しい声を上げながら通路の奥へと引き返して行った

 

 

「あら、随分と呆気なかったね」

 

「あの子達も嫌々戦ってたみたいですし、そんな相手を倒すのも心が痛いので退いてくれるならそれに越したことはないですね」

 

「そうだな。でも、あいつらが退いて行った先に原因となった何かがあるかもしれねぇ。追いかけ…」

 

「リゼさん…!?それに長尾さんも…!」

 

 

と、ゴーストポケモン達とのバトルが一息つき、逃げた彼等を追おうとしたところでリゼ達の名を呼ぶ声が正面から聞こえる

 

 

「レインさんにレオスさん…!無事だったんですね…!」

 

 

リゼ達の目の前に現れたのはマナナツの森に行ったきり戻って来なかったレインとレオスだった

 

 

「えぇ、すぐ近くの部屋に隠れてたので。もしかして、我々を助けに来てくれたんですか?」

 

「はい、夏芽さんからあなた方が街に戻って来ていないことを聞いたんで」

 

「ありがとうございます…!にじレジ団に襲われた上に、ゴーストポケモン達と森の野生ポケモンの争いに巻き込まれてパタち達のポケモンも体力をかなり消耗してたから…」

 

「にじレジ団が…!?」

 

 

レインの口から"にじレジ団"の名前が出てきたことにリゼは驚愕する

 

 

「にじレジ団…?それは一体何なんですか?」

 

「ポケモンを救うために活動している…とは言ってますが、何の関係があるのか私が夏芽さんからお借りした他に4つあるとされるプレートを狙っていて、そのためなら手段も選ばない野蛮な連中です」

 

「それだけじゃなくて、人からポケモンまで奪おうとする悪い人達なんです!」

 

「先日、チャンピオンの舞元さんから通達された手紙に書いてあった連中だな。まさか、こんな近くに潜んでいたとは…」

 

「まるでカントー地方に存在していたロケット団みたいな悪の組織だね…。初めて聞いたよ…」

 

「とりあえず、詳しい話は後で聞きます。一先ず2人は先に街まで帰ってください。出てこい!コバルオン!」

 

 

長尾はそう言うと再びコバルオンをボールから繰り出す

 

 

「徒歩で戻るのはまだ危険なんで、俺のコバルオンに乗って行ってください。コバルオン、回り道でいいから戦闘は避けて2人を無事に街まで送り届けてくれ。頼むぞ」

 

「バルォンッ!」

 

 

長尾の頼みにコバルオンは"任せろ"と言っているような鳴き声を上げ、レイン達の下に歩み寄る

 

 

「皆さんは一緒に戻らないんですか…?」

 

「私達はこの城のゴーストポケモン達と森のポケモン達が争うことになった原因を調べるんです。このままだと、オウマシティへの被害も収まらないので」

 

「原因…もしかしたら、あのポケモンかも…!」

 

「何か知ってるんですか…!」

 

「一瞬だったけど、多数のゴーストポケモン達を打ち負かした圧倒的な強さを持つポケモンを見たんだ…!その姿はまるで呪われた騎士みたいだった…!」

 

「"呪われた騎士"みたいなポケモン…!聞いた噂と一致してる…!」

 

「あんなポケモンは私も見たことがありません…。おそらく、ニジサンジ地方には本来生息していないポケモンだと…」

 

「ジムリーダーになる前は俺も色んな地方を巡ってたが、その外見的特徴と一致するポケモンは知らねぇ…。俺達にとって未知のポケモンか…」

 

「この地下通路の奥に…それがいるってことだよね…」

 

 

レインとレオスが見た相当な強さを有する"呪われた騎士"のようなポケモン…それが今から進む通路の先にいるかもしれないと想像したリゼ達は固唾を呑む

 

 

「長尾さん…!パタちも一緒に行かせてください…!手持ちのほとんどは消耗し切ってるけど、まだパートナーのインテレオンは戦える…!戦力は少しでも多い方が…!」

 

「…いや、駄目だ。レインさんはレオスさんと一緒に先に街へ戻ってくれ」

 

「どうして…!」

 

「インテレオン1匹しか残ってないなら、そいつが戦闘不能になればレインさんに戦えるポケモンはいなくなる。そうなったら、万が一の時に足手まといだ」

 

「…っ!」

 

 

"呪われた騎士"の強さを一瞬とはいえ目の当たりにしたレインが同行を申し出るが、長尾にあっさりと拒否される

 

自衛の術がなくなれば戦える者に守ってもらわなくてはならなくなり、守る側はそこにも意識とリソースを割かなくてはならなくなる

 

敵の数が少なければなんとかなるが、今回は少なくともマナナツの森全域のポケモンと城から追い出されたゴーストポケモンが襲ってくる可能性があり、その数はあまりにも多かった

 

故に、自衛の術を持てなくなる人を増やしてしまうことは避けたい…という長尾の考えを理解したレインは何も言い返すことが出来ず、力になれない自身の無力さに悔しそうな表情を見せる

 

 

「まあ、本当にヤバい相手なら俺達の手持ちが全滅する前にリゼさん達だけは逃がせるよう手は打つ」

 

「そ、それだと長尾さんは…!」

 

「そうなることも覚悟の上で俺はここに来てる。なに、心配することはねぇよ。こっちも伊達にジムリーダー務めちゃいねぇんだから。なんとかするさ」

 

「長尾さんの足を引っ張らないよう、全員がまず無事でいるために私達も指示には従うつもりです」

 

「だからレインさん、ここは私達に任せてください!必ず戻りますから!」

 

「もし僕達で駄目だった時は次の調査で力を貸してくれる…それでいいんじゃない?」

 

「…分かりました。でも約束ですよ…!皆さん、必ず無事に帰って来てください…!」

 

 

リゼ達の説得を受け入れたレインはそう言い残し、レオスと共にコバルオンに乗って一足先にオウマシティへと戻って行った

 

 

「さて、今言った通りだ。この先に待ってるかもしれない未知のポケモン相手に俺達が勝てるかどうかは分からねぇ。全員、手持ちが最後の1匹…いや、2匹になったらここでのバトルは避けるんだ。そして、原因を取り除く前に2人以上がそうなったら撤退だ」

 

「分かりました…!」

 

 

長尾が告げた撤退の条件に理解を示したリゼ達は"呪われた騎士"のようなポケモンが待つとされる城の地下の通路…その奥へと進んでいく

 

 

 

 

「…っ!?これは…!」

 

「酷い…!」

 

 

レイン達と別れて数分…通路を進んだ先でリゼ達が辿り着いたのは石やレンガで造られた造形された部屋ではなく、自然な形で地下に出来ていた空洞だった

 

そして、その空洞の端には傷付いたゴーストポケモン達が弱々しく横たわっており、その光景にリゼ達は息を呑んだ

 

 

「あの子達凄く弱ってる…!早く手当てしてあげないと…!」

 

「待つんだリゼさん…!」

 

 

傷付き倒れてる野生のゴーストポケモン達の下へリゼが駆け寄ろうとした時、長尾はそれを止めるように手を出す

 

ガシャリ…ッ!

 

直後、正面から聞こえた物音にリゼ達は注意を向ける

 

そして、周囲を"フラッシュ"で照らしていた美兎のルナトーンが少し前に進んで空洞の奥まで光を届かせる

 

そこには…

 

 

「…ッ!」

 

 

頭に青い炎が揺らめき、両腕が剣となっている…まさに"呪われた騎士"と言えるポケモンが佇んでおり、尋常ではない敵意を持ってリゼ達を睨みつけていた

 

 

「アレが"呪われた騎士"のポケモン…!?」

 

「夢追も見たことないの…!?」

 

「分からない…!僕も見るのは初めてのポケモンだ…!」

 

「俺もだ…!何だ、あのポケモンは…!」

 

 

姿を現した未知のポケモン…"呪われた騎士"に一同は驚愕し、身構える

 

 

「そうだ…!天開博士がくれたポケモン図鑑ならもしかしたら…!」

 

 

そんななか、旅立ちの日に天開から貰ったポケモン図鑑を取り出したリゼは"呪われた騎士"に向けて翳し出す

 

ピピピ…ッ!

 

と、リゼの期待通りに少し間を置いてポケモン図鑑は"呪われた騎士"のデータを表示し、その詳細が自動音声で読み上げられる

 

 

『ソウブレイズ:ひのけんしポケモン。ほのお・ゴーストタイプ。カルボウの進化形。怨念の染み付いた古い鎧により進化した姿。両腕の炎の剣で敵を容赦なく斬り刻む。ニジサンジ地方での生息地は不明』

 

「ソウブレイズ…!それがあのポケモンの名前…!」

 

「それに進化ってことは伝説や幻じゃなくて、一般的なポケモンってこと…!?」

 

「とはいえ、レインさんの言ってた通り手強そうな相手だ…!」

 

 

ポケモン図鑑によって判明した"呪われた騎士"…ソウブレイズと相対するなか、ソウブレイズが右腕を振り上げる瞬間に周囲の影の中や物影に潜んでいたゴーストポケモン達が飛び出してくる

 

 

「ゴーストポケモン達を呼び寄せてきた…!?」

 

「でも、さっき私達に攻撃してきた子達と同じでみんな怯えてるみたいです…!」

 

「ああ、おそらくソウブレイズに従わされてるんだろうな。そして、従わなかった他のゴーストポケモン達は追い出されるか刃向かえば打ちのめされてる…ってわけか」

 

「どうしてそんなことを…」

 

「分からねぇ。でも、こいつが原因であることは間違いない。向こうはやる気満々みたいだし、力尽くにはなるがバトルで大人しくさせるしかなさそうだ…!」

 

 

長尾の意見にリゼ達も同意してボールを構えるなか、ソウブレイズは振り上げた右腕をリゼ達に向けるように振り下ろし、直後にゴーストポケモン達がリゼ達に迫り来る

 

 

「俺がソウブレイズを引き受けるから、リゼさん達はゴーストポケモン達を頼む…!」

 

「でも長尾君…!はがねポケモンを使う君だとソウブレイズとは相性が不利なんじゃ…!」

 

「まあ、正直キツい相手っすけど…!タイプ相性の不利で簡単に負けるほどヤワじゃないっすよ俺は…!いけ!ニャイキング!エアームド!"つじぎり"だ!」

 

 

夢追の心配にそう答えた長尾はニャイキングと"よろいどりポケモン":エアームドを繰り出し、2体の"つじぎり"で正面を阻むゴーストポケモン達数体を薙ぎ倒してソウブレイズの下へと走っていく

 

 

「私達も出来る限り素早くゴーストポケモン達を倒して、長尾さんの加勢に行きましょう!いきますよ!ゴウカザル!」

 

「ゴウカッ!」

 

「ゴーストポケモン達の中で特に強そうなポケモンはヨノワール、デスカーン、ポットデス、シャンデラの4体!こっちも丁度4人だから1体ずつ担当していこう!頼んだぞ!ストリンダー!」

 

「全滅だけは避けないといけないから、万が一ヤバくなったら助けを呼んでよ!いけ!ウーラオス!コジョンド!」

 

「可哀想だけど、ソウブレイズの支配から解放させるためにも倒させてもらうよ!お願い!エンペルト!イーブイ!」

 

 

それぞれのポケモンを繰り出してリゼはシャンデラ、美兎はヨノワール、緑仙はデスカーン、夢追はポットデスと数体のゴーストポケモン達とのバトルに臨む

 

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…!なんなんだよ、あのポケモン…!めちゃくちゃ強いじゃんか…!」

 

 

マナナツの森の西端…トリガー山道北部に出る手前のところで、にじレジ団の幹部:マオは十数人の団員を連れて息を切らしていた

 

 

「奴に従ってたゴーストポケモン達が厄介でしたね…。奴等さえいなければ…」

 

「そうだよ!お前達がちゃんとあのゴーストポケモン達を抑えておいてくれてれば、バサギリが負けることなんてなかったんだ!お前達のせいだ!」

 

「す、すみません…!」

 

「我々も全力は尽くしたんですが、ゴーストポケモン達の中にも強い個体が多数おりまして…。あの数相手では、我々のポケモンでは流石に厳しかったと言いますか…」

 

「それに別働隊!お前達の相手は実力も分かってるあの2人組だったんだろう!なんでプレートも奪えず撤退して来てるんだよ!」

 

「も、申し訳ありません…!襲撃中に突然、野生のポケモン達の争いが始まってそれに巻き込まれまして…」

 

「あ〜〜〜っ!も〜〜〜っ!前回と前々回に続いて重要な任務で失敗続き!顔に出ないから分からないけど、3回目だと流石にリーダーに失望されるよ〜〜〜…っ!」

 

 

マオは噂に聞いた"呪われた騎士"のようなポケモンの捕獲及びレイン達からプレートを奪取する任務を任されていたが、それが失敗に終わったことで団員に文句を垂れ、頭を抱え込む

 

ロトロトロトッ…!

 

 

「うひゃあっ…!?」

 

 

と、持っていたスマホが突然鳴り出して驚いたマオは声を上げる

 

画面には"ルイス"と表示されており、マオは恐る恐る電話に出る

 

 

「も、もしもし…?」

 

『マオ…!もう任務は終わった?』

 

「ルイスか…。その…任務は…」

 

『…その様子だと、両方とも失敗に終わった?』

 

「だ、だってさぁ…!」

 

『そんな大声出さないでいいよ。リーダーも出来ることなら、って言ってたし。それよりも、もう撤退してるなら合流しない?私の任務を手伝ってほしいんだよね』

 

「ルイスも何か頼まれたの…?」

 

『トリガー山道にあるダイマックスアドベンチャーでね。任務に必要な物がもうすぐ届くんだけど、あそこってダイマックスしてるポケモンが中を彷徨いてるでしょ?だから人手は多い方がいいな〜って』

 

「分かった…。失敗で終わるのも嫌だし、せめてルイスの任務が成功するように手伝うよ」

 

『それじゃあ、私達が今潜伏してる場所の座標を示したものを送るからそこで合流しようね〜』

 

 

ルイスとの通話を終えたマオは気を取り直して立ち上がり、団員に向けて話し出す

 

 

「お前達!これからルイス達と合流して向こうの任務を手伝うことになったから!リーダーや仲間に申し訳ないと思うなら僕に付いて来い!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

マオの命令に団員達は力強く返答し、一行はルイス達がトリガー山道で潜伏している場所へ目指して移動を開始する

 

 

 

 

「シャ〜〜ン…ッ!」「「「プラ〜〜…ッ!」」」

 

「来るよ!エンペルト!"うずしお"!」

 

 

マナナツの森の最北端…廃墟の城にある地下通路から繋がる地下空洞で遭遇したソウブレイズに従わされているゴーストポケモン達とリゼ達のバトルは佳境に入っていた

 

リゼが相手をしていたのはシャンデラとその進化前となるランプラー達

 

エンペルトでシャンデラの相手をしながら、イーブイが持ち前の素早さとゴーストタイプに弱点の突ける"かみつく"で確実にランプラー達の数を減らしていっていた

 

そして、仲間がどんどんやられていく状況からシャンデラはランプラー達を協力させて全員での"ほのおのうず"を仕掛けてくる

 

それに対し、リゼの指示を受けたエンペルトは"うずしお"を繰り出すが、如何に相性が良くてもその数による威力の高さに押し負けそうになっていた

 

 

「このままだとマズい…!何か突破口を…そうだ!エンペルト!イーブイを打ち上げて!」

 

 

何かを思い付いたリゼの指示に従い、エンペルトはバスケのレシーブをするように組んだ両腕の上に飛び乗ったイーブイを空洞の天井にぶつけない程度に勢いよく打ち上げる

 

 

「イーブイ!"シャドーボール"からの"アイアンテール"!」

 

 

そして、イーブイはこのバトル中にゴーストポケモン達の技を見て新たに覚えた技"シャドーボール"を"アイアンテール"によって打ち放つことでその威力とスピードを増させる

 

上から放たれた渾身の"シャドーボール"はエンペルトとの技のぶつけ合いに集中して気付かなかったシャンデラに見事炸裂し、直後にあまりの威力によって引き起こされた爆発でランプラー達にもダメージを与える

 

 

「シャ〜ン…」「「「プラ〜…」」」

 

「よし、勝った!エンペルト、イーブイ!よく頑張ったね!」

 

 

シャンデラ達を倒したことを確認したリゼは奮闘したエンペルトとイーブイを労う

 

そして、美兎達の状況はどうなっているか周りを見渡すも彼女達のバトルも決着がつくところであった

 

 

「ポッデ〜〜…ッ!」「「「チャ〜〜…ッ!」」」

 

「一斉攻撃か…!でも、そうはさせないよ!ストリンダー!"きんぞくおん"!」

 

 

ポットデスとヤバチャ達を相手にしていた夢追はポットデス達が仕掛けようとした一斉攻撃をストリンダーの"きんぞくおん"を浴びせることで中断させる

 

 

「トドメだよ!"オーバードライブ"!」

 

 

そして、"きんぞくおん"によるポットデス達の攻撃阻止と特防が下がったところに、ストリンダーが持つ特性"パンクロック"によって通常よりも威力が増している"オーバードライブ"を炸裂させ、一気に戦闘不能にさせる

 

 

「デスカ〜ンッ!」

 

「コジョンド!"アクロバット"!ウーラオス!"あんこくきょうだ"!」

 

 

デスカーンとデスマス達を相手していた緑仙は既にデスマス達を全て戦闘不能にしており、残すはデスカーンのみとなっていた

 

4本の腕から繰り出してくるデスカーンの"シャドークロー"をコジョンドが"アクロバット"で全て捌き切り、迎撃不可能となった一瞬の隙に間合いを詰めたウーラオスが渾身の"あんこくきょうだ"を炸裂させる

 

 

「デスカ…ッ!」

 

 

効果は抜群…その一撃を諸に受けたデスカーンは短い呻き声を上げて地に伏した

 

 

「ゴウカッ!」

 

「サマ〜…ッ!」

 

 

ヨノワールとサマヨール達を相手にしていた美兎はゴウカザルとルナトーンの連携でまずはサマヨール達の数を減らしていき、遂に最後の1体を戦闘不能にさせる

 

 

「ヨノ〜ッ!」

 

「ルナトーン!"サイコキネシス"!ゴウカザル!連続で"ほのおのパンチ"です!」

 

 

最後のサマヨールを倒したゴウカザルを背後から攻撃してきたヨノワールをルナトーンが"サイコキネシス"で止める

 

そして、身動きが取れなくなったヨノワールにゴウカザルが"ほのおパンチ"のラッシュを叩き込む

 

 

「ヨ、ヨノ〜…ッ!」

 

 

防御も取れずに諸に攻撃を受けたヨノワールはゴウカザルの"ほのおのパンチ"のラッシュ最後の一撃で壁まで殴り飛ばされ、戦闘不能となった

 

 

「よくやりました!ゴウカザル、ルナトーン!皆さん、大丈夫ですか!?」

 

「問題ないよ。リゼさんは?」

 

「私も大丈夫です!」

 

「どうやら、全員1体も倒されることなく勝てたみたいだね!長尾君は…!」

 

 

ボコォォォン…ッ!

 

リゼ達が4人全員で無事にゴーストポケモン達を倒したことを確認し、ソウブレイズと対峙する長尾の方に目を向けようとしたその時…勢いよく吹き飛ばされたと思われる何かがリゼ達を横切って壁に激突して大きな音を響かせる

 

 

「ニャ…ニャイィ…」

 

「長尾さんのニャイキング…!?」

 

 

吹き飛ばされてきたのは長尾のニャイキング…それに驚くリゼ達は改めて長尾の方へ目を向ける

 

ソウブレイズに対して長尾はエアームドと新たに繰り出していたハッサムで対抗しており、苦戦を強いられているからかその表情は少し険しくなっていた

 

 

「エアームド!"エアカッター"!ハッサム!"つじぎり"だ!」

 

 

ハッサムはここまでのバトルの間に"こうそくいどう"で素早さを上げており、それを活かしてソウブレイズの周囲を複雑に動き回る

 

ソウブレイズはハッサムを警戒してその動きを注視するが、そこに上空からエアームドによる"エアカッター"の雨が降り注ぐ

 

 

(こいつの戦い方は少し妙だ…!だからこそ、この一手で確証を得る…!)

 

 

ソウブレイズとのバトルしていた中で長尾はある違和感を感じていた

 

それを確かめるべく打って出たエアームドとハッサムによる連携攻撃…それに対してソウブレイズは…

 

 

(こいつ…!やっぱりそういうことか…!)

 

 

上空から迫る"エアカッター"をソウブレイズは無視してハッサムの動きに注視し続ける

 

直後、エアカッターがソウブレイズに炸裂するとともに粉塵が巻き起こり、その粉塵に紛れたハッサムはソウブレイズの背後に回って"つじぎり"を繰り出す

 

 

「ブレイ…ッ!」

 

「ハッサ…!?」

 

 

だが、音や気配を頼りにしたのか、ハッサムが背後から攻撃してくることに気付いていたソウブレイズは燃え盛る腕の剣を振るい、ハッサムに炸裂…ニャイキングの時と同様に壁まで吹き飛ばす

 

 

「…っ!ニャイキング、ハッサム…!戻れ…!」

 

 

倒れたニャイキングとハッサムを長尾はボールへと戻し、そこにリゼ達が駆け寄る

 

 

「長尾さん…!加勢します…!」

 

「そっちは片付いたみたいだな…!助かるぜ…!」

 

「苦戦してるみたいですね…。長尾さんはニャイキングとハッサムの2体を倒されてるのに、あのソウブレイズ…全然疲れていないような…」

 

「ああ、厄介なことにアイツには体力を回復する攻撃技があるみたいだ…!」

 

「もしかして、さっきハッサムに繰り出した技…!?」

 

「おそらくな…!ニャイキングが倒されるまで与えていた傷があの技を受けた直後に治ってやがった…!」

 

「でも、ここからは僕達も加わるから数の差で一気に攻めれば…!」

 

「ああ、いけると思う…!それとバトルして分かったんだが、あいつはどうも守りよりも攻めを重視して立ち回って来る…!狙いを定めた相手以外の攻撃は余程危険でもない限り避けようとはしない…!」

 

「つまり、その習性を逆手に取って攻撃を叩き込めばいいってこと?」

 

「そういうことだ…!無理にとは言わないが、その動きが見られたら狙われたポケモンは奴をなんとか足止めしてくれ…!その隙に他の全員で仕留め切る…!」

 

「分かりました…!やるよ!エンペルト、イーブイ!」

 

 

長尾の作戦にリゼとエンペルト達…そして美兎達とそのポケモン達も同意を示し、全員でソウブレイズとのバトルに臨む

 

 

「エンペルト!"うずしお"!イーブイ!"シャドーボール"!」

 

「エアームド!"エアカッター"!」

 

「ストリンダー!"オーバードライブ"!」

 

 

まずはエンペルト、イーブイ、エアームド、ストリンダーがそれぞれ射程のある技をソウブレイズに向けて繰り出し、直撃して爆発を引き起こす

 

 

「どう…!?」

 

「…っ!いや、躱された…!"ゴーストダイブ"で仕掛けて来るぞ…!」

 

 

長尾の指摘通り、エンペルト達の技が直撃したかに思われたソウブレイズは直前に"ゴーストダイブ"を発動させて異空間へと姿を消していた

 

 

「ブレイ…ッ!」

 

「リンダァァ…ッ!」

 

 

そして、異空間へと通じる不気味な穴から飛び出したソウブレイズはストリンダーに"ゴーストダイブ"を炸裂させる

 

 

「ストリンダー…っ!?」

 

「くっ…!ウーラオス!"あんこくきょうだ"!コジョンド!"アクロバット"!」

 

 

ストリンダーが戦闘不能になるなか、緑仙の指示を受けたウーラオスとコジョンドがソウブレイズを挟み込む形で攻撃を仕掛ける

 

 

「ブレイ…ッ!」

 

「コジョ…ッ!?」

 

 

それに対し、ソウブレイズは片腕で"サイコカッター"を繰り出してコジョンドに炸裂させる

 

 

「ウーラァァッ!」

 

「ブレイ…ッ!」

 

 

そして、ソウブレイズは迫るウーラオスの"あんこくきょうだ"を燃え盛る炎を纏った剣を振るう技"むねんのつるぎ"をもう片腕で繰り出して迎え撃つ

 

 

「威力は互角か…!ならウーラオス!ソウブレイズの動きを止めるんだ!」

 

 

押し切ることが出来ないと悟った緑仙は技のぶつけ合いを中断させ、ウーラオスにソウブレイズを捕まえさせる

 

 

「みんな…!今だ…っ!」

 

「悪い…!緑仙さん…!ウーラオス…!出てこい!ボスゴドラ!"ストーンエッジ"!」

 

「すみません…!ルナトーン!"パワージェム"!」

 

「ごめんなさい…!エンペルト!"うずしお"!イーブイ!"シャドーボール"!」

 

 

ウーラオスを攻撃に巻き込んでしまうことに一言謝罪を告げつつ、リゼ達はそれぞれのポケモン達にソウブレイズの弱点を突ける技を繰り出させる

 

 

「…ッ!」

 

 

ウーラオスに捕まえられたことでソウブレイズは"ゴーストダイブ"による異空間への回避も叶わず、エンペルト達が繰り出した技を諸に食らうこととなった

 

 

「ウーラァァ…ッ!」

 

「ブレイ…ッ!」

 

 

エンペルト達の攻撃を受けたウーラオスとソウブレイズは全ての技が炸裂した瞬間に引き起こされた爆発によって吹き飛ばされ、地面に倒れ伏す

 

 

「ウーラオス、大変な役割を引き受けてくれてありがとう…。コジョンドもよく頑張ったな…。ゆっくり休んでくれ」

 

 

総攻撃を確実に叩き込むためにソウブレイズの動きを身を呈して止めてくれたウーラオスと共に奮闘したコジョンドに労いの言葉をかけ、緑仙は2体をボールに戻す

 

 

「ソウブレイズは…?倒せたんでしょうか…?」

 

 

そして、総攻撃を受けて地面に伏したソウブレイズが戦闘不能になったか様子を窺うなか…

 

 

「ブ…ブレイ…ッ!」

 

 

ソウブレイズはボロボロの体を起き上がらせ、少しも弱まっていない憎悪を宿した眼でリゼ達を睨みつける

 

 

「あれだけの攻撃をまともに受けてまだ立ち上がるんですか…!?」

 

「だが、アイツももう瀕死だ…!次で仕留める…!ボスゴドラ!もう一度"ストーンエッジ"!」

 

 

立ち上がるソウブレイズに一同が戦慄するなか、長尾はトドメの一撃として再びボスゴドラに"ストーンエッジ"を繰り出させる

 

だが、"ストーンエッジ"が直撃する寸前でソウブレイズは"ゴーストダイブ"を発動させて異空間の中へと潜り込む

 

 

「しまった…!みんな、気を付けろ…!」

 

 

ソウブレイズの攻撃を長尾が警告し、リゼ達は周囲を警戒する

 

 

「一体何処から…!?」

 

 

ソウブレイズが攻撃してくる瞬間を見逃さないよう、全員が神経を張り詰めさせるなか…

 

 

「ブレェェェイィッッ!!」

 

「「「…っ!!?」」」

 

(後ろ…!?いや、攻撃を仕掛けてきてはない…!どういう…!)

 

 

突如、リゼ達の背後…この地下の出入り口付近に姿を現していたソウブレイズが咆哮を轟かせた

 

すると、その近くで気絶していたシャンデラとランプラー達がソウブレイズの咆哮に驚いて慌ただしく一斉に起き上がった

 

 

「ブレイ…ッ!!」

 

「シャン…ッ!?」「「「ラプゥ…ッ!?」」」

 

 

そして、ソウブレイズがシャンデラ達を一睨みすると、酷く怯えると共に困惑した様子を見せたシャンデラ達はソウブレイズに向けて"ほのおのうず"を繰り出した

 

 

「シャンデラ達に自分を攻撃させた…!?」

 

「一体どういう…!」

 

「…っ!いや、違う…っ!全員、今すぐ伏せろぉぉぉ…っ!!」

 

 

ソウブレイズの突然の行動にリゼ達が驚くなか、その行動の意図を察した長尾が叫ぶ

 

 

「ブ…レェェェイィィッッ!!」

 

 

直後、ソウブレイズが"むねんのつるぎ"を繰り出すが、その威力は先程までとは比べものにならないほどとなっており、その炎が飛ぶ斬撃となってエンペルト達に直撃する

 

 

「エンペェェ…ッ!」「イブゥゥ…ッ!」「エアァァ…ッ!」

「ボスゴォォ…ッ!」「ゴウカァァ…ッ!」「ルナァァ…ッ!」

 

「エンペルト…っ!イーブイ…っ!」

 

「エアームド…!ボスゴドラ…!」

 

「ゴウカザル…っ!ルナトーン…っ!」

 

 

ソウブレイズの一撃でエンペルト達は戦闘不能の大ダメージを受けて地面に倒れ伏す

 

大火力の"むねんのつるぎ"によって空洞内に炎が燃え盛るなか、長尾の警告によって地面に伏せていたことで技の直撃を免れたリゼ達は倒れたそれぞれのポケモンの下へ駆け寄る

 

 

「どういうこと…!?あんなにボロボロだったのに何処にこんなパワーが…!」

 

「シャンデラ達の攻撃を浴びた直後に技の威力が増した…?まさか…!?」

 

「ああ…!アイツの特性は"もらいび"だ…!シャンデラ達にほのおタイプの技を浴びせてもらったことで技の威力を上げやがったんだ…!

 

 

瀕死寸前だったソウブレイズが何故これほどまでの攻撃が出来たのか気付いた夢追に長尾が悪態混じりに説明する

 

 

「しかもこの威力に体力を吸うあの技でポケモン6体分を…!つまり…!」

 

 

そして、表情を険しくする長尾が予想した通り、ソウブレイズは"むねんのつるぎ"によって与えたダメージの幾らかを体力を回復するエネルギーに変換…ボロボロになっていた体は全回復近くまで治ってしまっていた

 

 

(マズいな…!コバルオンがいない今、戦える俺の手持ちはあと1体だけ…!リゼさん達も主力級のポケモン達を今の一撃でやられた…!残りの戦力で勝てる可能性は…!)

 

 

総攻撃で受けたダメージをほぼ完治させたソウブレイズを前に長尾は勝算が限り無く低くなったと判断し、リゼ達に指示を出す

 

 

「撤退だ…っ!俺がアイツを引き止める間に全員ここから逃げろ…っ!」

 

「ま、待ってください、長尾さん…!私はまだ戦えるポケモンが残っています…!」

 

「僕だって…!」

 

「駄目だ…っ!」

 

 

指示に対して意見する美兎と緑仙に長尾は声を荒げて拒否する

 

 

「アイツに勝つには、体力を吸い取るあの技を上回るダメージを与えられるポケモンがいねぇと不可能だ…!そして、それが出来るお前達のポケモン達はもう戦闘不能になってる…!違うか…!?」

 

 

撤退の判断を下した長尾の理由に美兎と緑仙は何も言い返せず、悔しそうに口を噤む

 

 

「街に戻ったら晴達に伝えてくれ…!ほのおタイプに強く、十分なレベルに達しているポケモンを持ったトレーナー達で挑んでくれと…!」

 

「でも、長尾さんを置いてなんて…!」

 

「心配すんな…!これでも今まで色んな窮地を乗り切って来てんだ…!上手くやる…!だからお前達は早く行け…!」

 

「リゼさん、緑仙、月ノさん…ここは長尾君を信じて僕達は一度ここから出よう…!これ以上留まると長尾君の無事にも関わる…!」

 

「…っ!分かり…ました…!」

 

 

夢追の説得も受け、リゼ達は長尾の言う通りに街へ戻るため廃墟の城に繋がる地下通路へと走り出す

 

 

「ブレェェェイィィッッ!!」

 

 

炎が燃え盛るその中心でソウブレイズが再び咆哮を轟かせた時、リゼはチラリと振り向く

 

炎に包まれながらも敵意を剥き出しにして睨むソウブレイズの姿は復讐に燃え、憎悪にその身を焦がしているように見えた

 

それと同時に…

 

 

(なんだろう…。あの子…少し苦しそう…)

 

 

直感でしかなかったが、リゼは憎悪や怒りの感情を放つソウブレイズが何かに苦しんでいるように見えた

 

そして、そう感じ取った瞬間にリゼは地下通路へと向かう足を止めた

 

 

「リゼさん…!?大丈夫ですか…!」

 

「立ち止まってないで…!早く逃げ…!」

 

「ごめんなさい…委員長、緑仙さん。私、あの子を放っておけません…!」

 

「リ、リゼさん…!?」

 

 

驚く緑仙達の静止を振り切ってリゼは長尾の下へ走る

 

 

「長尾さん…!」

 

「なっ…!リゼさん…!?なんで戻って来たんだ…!」

 

「すみません…!でも、私あの子を…ソウブレイズを放っておけないんです…!なんだか苦しんでるようにも見えて…!お願いです!やるだけやらせてください!」

 

 

リゼの必死な懇願に長尾は少し考え込む

 

 

「…勝算はあるのか?」

 

「それは分かりません…。でも、私はソウブレイズを助けたい…!その気持ちだけは止められないし、諦めるつもりもありません…!」

 

 

リゼの言葉を聞いて長尾は目を見開き、直後に少し微笑んだ

 

 

「助けたい…か。いいだろう、ただし1体までだ!1体で勝負を決められないならすぐに逃げろ!」

 

「ありがとうございます…!それじゃあ、お願い!サイホーン!」

 

 

長尾からの許可をもらったリゼはサイホーンを繰り出す

 

 

(いわタイプ…!たしかに、それならアイツのほのお技のダメージは抑えられる…!だが…!)

 

 

タイプ相性ではサイホーンに有利だが、今のソウブレイズは"もらいび"によってほのおタイプの技の威力が増している

 

気持ちを汲みはしたが、それでも勝算は限り無く低いと長尾が感じるなか、リゼはサイホーンと共にソウブレイズとのバトルに臨む

 

 

「サイホーン!"ドリルライナー"!」

 

 

リゼの先制…ソウブレイズに向かってサイホーンは"ドリルライナー"を繰り出して突っ込んでいき、それに対してソウブレイズは"むねんのつるぎ"で迎え撃つ

 

威力はソウブレイズがやや勝り、サイホーンは大ダメージにこそならなかったが押し返されてしまう

 

そして、サイホーンを押し返した直後にソウブレイズは"ゴーストダイブ"を発動し、異空間へと姿を消す

 

 

「"ゴーストダイブ"中のポケモンに攻撃技は当たらない…!でも…!」

 

 

"飛び出して来る瞬間に合わせて攻撃すれば…!"と思考するリゼは指示を出すタイミングを注意深く見計らう

 

 

「まだだよ、サイホーン…!まだ…!まだ…!」

 

 

意識を集中させ、リゼとサイホーンがその瞬間が来るのを待つなか、サイホーンの背後に異空間への穴が現れる

 

 

「今だよ!"じならし"!」

 

 

その瞬間にリゼは指示を出し、サイホーンは"じならし"を繰り出す

 

 

「ブレイッ!」

 

「サイィ…ッ!」

 

 

そして、"じならし"が繰り出されるのと同じタイミングで"ゴーストダイブ"の異空間からソウブレイズが飛び出し、サイホーンに攻撃を炸裂させる

 

 

「ブレイ…ッ!?」

 

 

だが、攻撃後に地面へ足を着いたソウブレイズはまだ収まりきっていない"じならし"の余波を受けて大きく体勢を崩した

 

 

「そこ…!サイホーン!"ドリルライナー"!」

 

 

ソウブレイズに隙が生まれるこの瞬間を狙っていたリゼは力強く指示を出し、それに応えるように攻撃を受けていたサイホーンは根性で体勢を立て直し、"ドリルライナー"を繰り出してソウブレイズに炸裂させる

 

 

「ブレェェイ…ッ!」

 

 

"ドリルライナー"を受けてソウブレイズは吹き飛ばされるが、空中で体勢を立て直し地面へと着地する

 

だが、効果抜群だったこともあってダメージは相当であり、息を切らす様子を見せていた

 

 

「ブレイ…ッ!ブレェェイ…ッ!」

 

 

すると、ソウブレイズは"つるぎのまい"を発動させて自身の攻撃力を高める

 

 

「攻撃力を上げやがった…!次の一撃で確実に決めるつもりか…!」

 

 

攻撃力を高めてきたことに長尾が危機感を感じるなか、ソウブレイズは"むねんのつるぎ"を発動させ、サイホーンに突っ込んで来る

 

 

「…っ!サイホーン!"ドリルライナー"で迎え撃って!」

 

 

回避が間に合わないと判断したリゼはサイホーンに"ドリルライナー"での迎撃を指示するが、先程よりも威力を増した"むねんのつるぎ"にサイホーンはなんとか踏ん張ろうとするも徐々に押し返されていく

 

 

「このままじゃ…!」

 

「マルヤクデ!"とびかかる"攻撃!」

 

「チャーレム!"しねんのずつき"!」

 

「オンバーン!"ドラゴンクロー"!」

 

 

リゼが焦りを感じたその時、美兎のマルヤクデ、緑仙のチャーレム、夢追のオンバーンが技のぶつかり合いに加わる

 

 

「委員長…!それに緑仙さんと夢追さんまで…!」

 

「アンジュさんと約束しましたからね…!リゼさんを置いてなんていけませんよ…!」

 

「長尾はああ言ったけどさ…!僕達もまだ諦めてないし、勝てると思ってるんだよね…!」

 

「って、格好つけて加勢しに来たけど…!これでもちょっと足りてないみたいだね…!?」

 

 

と、美兎達も意気込んで加勢したものの、それでも威力はソウブレイズに軍配が上がっており、サイホーン達の表情は険しくなっていく

 

 

「バルォォンッ!」

 

「コバルオン…!?お前…どうしてここに…!」

 

 

だが、そこへ更にレイン達を街まで送り届けに行ったはずの長尾のコバルオンが現れ、"アイアンヘッド"を繰り出してぶつかり合いに加わる

 

 

「まさか…レインさん達を送り届けた後、最短距離を全速力で駆け戻って来たのか…!?」

 

 

コバルオンの体には所々ダメージを受けたと見られる傷跡があり、そこから長尾はコバルオンがここにいる経緯を推測…それに対して、コバルオンは少し微笑んで頷いた

 

 

「ブ…レェェェイ…ッ!!」

 

 

コバルオンも加わったことで技のぶつかり合いは互角となるが、ソウブレイズにも諦める様子はなく、更に威力を上げようと力を込めていく

 

 

「おいおい嘘だろ…!」

 

「なんて執念だ…!」

 

「特性に"つるぎのまい"で技の威力が増しているとは言え、5体のポケモンの同時攻撃と互角に張り合うなんて…!」

 

「みんな、お願い…!頑張って…!憎悪と一緒に苦しみを抱えてるソウブレイズを…助けてあげて…っ!」

 

「サイィィィッ!」

 

 

全員が見守り、リゼが想いを叫んだその時…咆哮を轟かせたサイホーンの体が突如として光り輝き出した

 

 

「この光は…!」

 

「もしかして…!」

 

「進化が始まったのか…!」

 

 

光り輝いたサイホーンはその姿を変貌させ、"ドリルポケモン":サイドンへと進化を遂げる

 

 

「サイホーン…!あなた、サイドンに進化したのね…!」

 

 

喜ぶリゼにサイドンはニヤリと微笑み返し、進化したことで増した攻撃力を以って改めてソウブレイズとのぶつかり合いに臨む

 

 

「ブ…レイ…ッ!?」

 

 

マルヤクデ、チャーレム、オンバーン、コバルオン…そして進化したサイドン5体の同時攻撃にソウブレイズは遂に押し負け、攻撃をその身に受けて大きく吹き飛ばされる

 

 

「よし…!今度こそ…!」

 

「まだ終わりじゃないぞ…!アイツをここに残したままだと、また同じことが起きるかもしれねぇ…!誰かゲットを…!」

 

「なら、ここはリゼさんに任せます!」

 

「わ、私…!?」

 

「それが妥当だね。リゼの助けたいって想いがあのポケモンを倒すことに繋がったんだ」

 

「だから、あのポケモンを任せるに相応しいのはリゼさんだけだよ」

 

 

美兎達の説得を受けたリゼは意を決し、モンスターボールを手に取る

 

 

「…分かりました!お願い!モンスターボールっ!」

 

 

地面に倒れ伏すソウブレイズにリゼの投げたモンスターボールが当たり、その中へと取り込む

 

モンスターボールは地面に転がり落ちた後、点滅しながら左右にコロコロと数度揺れ…

 

カチッ…!

 

と、ゲット成功の音を立てて静止した

 

 

「ゲット…出来た…」

 

 

激しい危機迫るバトルに終止符が打たれたこと実感を得られず、全員ポカンと呆けていたが、しばらくして脳の理解が先に追い付いた美兎達が歓喜の声を上げる

 

 

「やった…!やりましたよ、リゼさん…!」

 

「凄いよ、リゼ…!リゼさんのおかげで僕達あのポケモンに勝てたよ…!」

 

「い、いえ…!皆さんが協力してくれたおかげですよ…!」

 

 

リゼ達が喜び合うなか、緊張の解けた長尾と夢追はその場に腰をつく

 

 

「ふぅ〜…っ!一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなったね…」

 

「ですね…。いやぁ、マジで危ない状況だったけど、なんだか凄いもん見せられましたわ…」

 

 

ソウブレイズに勝利出来た要因であるリゼの想いとサイドンとの絆…そして、それに呼応して共に諦めなかった美兎達と無茶をして助けに来てくれたコバルオン

 

リゼを起点に勝利へと繋がった一連の出来事に長尾は"参ったね…"と、誰よりも早く諦めた過去の自分を嘲笑するとともにリゼ達の強さに心の中で敬意を表した

 

 

「……」

 

「どうしたんですか?リゼさん」

 

 

ソウブレイズをゲットしたボールを拾い上げて見つめるリゼに、美兎が声を掛ける

 

 

「ゲットしたのはいいんですけど…。よくよく考えてみたら、暴れてるのを止めただけでソウブレイズが何で苦しんでるのかは分かってない…。まだ助けたことにはなってない…と思って…」

 

「…不安ですか?」

 

「少し…。でも、この子を助けたいという気持ちに変わりはありません…!」

 

「だったら問題ねぇ…とは言い切れないが、少なくともそいつを1番に救えるのはリゼさんだけだ。今後何か力になれそうなら遠慮なく言ってくれ。この件に関わったトレーナーとして、全面的に協力するからよ」

 

「当然、私もです!」

 

「僕達もね!」

 

「皆さん…!ありがとうございます…!」

 

(一筋縄とはいかないだろうけど、必ずあなたの苦しみを取り払ってみせるよ…!ソウブレイズ…!)

 

 

ソウブレイズの入ったボールを見つめてリゼは改めて決意を固める

 

 

 

こうして、事件の元凶であったソウブレイズを倒し、ゲットしたリゼ達はアンジュが帰りを待つオウマシティへの帰路につく

 





リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、イーブイ、バタフリー
   サイドン、リオル、ソウブレイズ

アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ

月ノ美兎
手持ち:ゴウカザル、ミミロップ、マルヤクデ
   ルナトーン

緑仙
手持ち:ウーラオス(いちげきのかた)、コジョンド、チャーレム

夢追翔
手持ち:ストリンダー、オンバーン

長尾景
手持ち:コバルオン、ボスゴドラ、エアームド
   ハッサム、ニャイキング
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