にじさんじ×ポケットモンスター   作:Mr.ソロ

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第65話「リゼvsフェローチェ!覚醒の波導使い!」

 

「はあ…はあ…」

 

「やった…のか…?」

 

 

フェローチェとの激しいバトルを終えたイブラヒム達はメガシンカが切れたポケモン達と共に息を切らし、フェローチェが本当に戦闘不能になったのか様子を窺っていた

 

 

「起きてくる様子はないみたいだね…」

 

「じゃあ、私達勝ったんだね…!」

 

「うん、よかっ…。うわぁっ…!?」

 

 

フェローチェが戦闘不能になったと分かった途端、一安心するメリッサにフレンが抱き着く

 

 

「メリー…!凄く心配したんだからね…!無事だったから良かったけど、もうあんな無茶二度としないで…!」

 

「…ごめんね、フレン」

 

 

泣きじゃくりながら叱るフレンを安心させるように、メリッサも抱き返して反省を口にする

 

 

「あ、そうだ…!」

 

 

しばらくして落ち着いた頃、メリッサはあることを思い出してポケットからウルトラボールを取り出す

 

 

「メリー、そのボールは何なの…?」

 

「これはウルトラボール。ウルトラビーストを捕まえるために開発されたモンスターボールなんだって」

 

「どうしてそんなものをメリッサさんが…?」

 

「実はフレンと逸れた後に人と逢って…。その人がキーストーン、スピアーナイトと一緒にくれたんだ」

 

 

メリッサはフレンとコウからの質問に答えると倒れたフェローチェに向けてウルトラボールを投げ、捕獲する

 

 

「あんなに強いポケモンをゲットしちゃった!」

 

「うん。でも、このポケモンは手放すよ。ウルトラボールをくれた人からも、ウルトラビーストは危険だから捕獲出来たら加賀美インダストリアルに預けてほしいって頼まれてるし」

 

「そうなの…!?でも、たしかにあんな凶暴なポケモン手に余っちゃうかも…」

 

「それにしても、そんなボールに加えてキーストーンにメガストーンをくれたその人って何者なんだ…?というか、どうしてこんなところに…?」

 

「さあ?詳しく聞いてないから分からないけど…」

 

「メリッサ…っ!」

 

 

コウの疑問にメリッサが答えるなか、突然イブラヒムが俯いたまま大きな声を上げる

 

 

「イブラヒム…?」

 

「すまん、メリッサ…!俺があの時踏み止まったせいで、こんなことに…!確証が持てなかったからと目を逸らして、俺の都合を優先した結果、お前を危険に晒しちまった…!」

 

「な、何の話…?」

 

「…お前がウルトラビーストに襲われたのは、俺のせいなんだよ!」

 

「…っ!」

 

 

その言葉を聞いて、メリッサはイブラヒムが自分の正体に辿り着いたことを知った

 

 

「え…?イブちゃん、急に何の話をしてるの…?」

 

「……」

 

 

突然の告白にフレンは理解が追い付かず、それを事前に聞いていたコウは口を挟まず静観する

 

 

「…そっか。イブラヒムにはバレちゃったんだね。僕もね、ついさっき知ったんだ。自分が何者でどうしてウルトラビーストに強く敵意を向けられたのか」

 

「本当にすまねぇ、メリッサ…!俺はそうかもしれないと前から気付いてたのに、お前に言い出すことが出来なかった…!」

 

「…ねぇ、イブラヒム。どうして言い出さなかったの?」

 

 

メリッサにそう問われ、イブラヒムの表情が更に険しくなる

 

 

「…言い出そうとした日の夜に、部屋でフレンとしていた会話を聞いたんだ。俺達と世界を旅して、色んなものを見てみたいって。それを聞いて、俺も望んじまったんだ…。まだお前と一緒にいたいって…」

 

 

メリッサの身の安全よりも自身の願望を優先したと知れば失望されるだろう、幻滅されるだろう、嫌われるか最悪恨まれるかもしれない

 

だが、そうなっても仕方のないことをしたとイブラヒムは自分を責め戒めるように拳を強く握り締めながら言葉を続ける

 

 

「謝って済む話じゃないのは分かってる…!俺が正しい選択をしていれば、お前は今頃安全な場所で過ごせてたはずだ…!なんなら、故郷に帰れてたかもしれねぇ…!」

 

「…うん、そうかもしれない」

 

「…お前もこんな怖い思い、二度と味わいたくないよな。だからメリッサ、お前は然るべき機関に…」

 

 

声を震わせ、イブラヒムは苦しそうにメリッサとの決別を告げようとする

 

 

「ごめんね、イブラヒム」

 

 

だが、まるでその先を言わせないかのように、メリッサはイブラヒムの言葉を遮り、握り締められた拳に手を添える

 

 

「僕、これからもずっとイブラヒム達に迷惑かけちゃ駄目かな?」

 

「…え?」

 

 

予想していなかったメリッサからの言葉に、イブラヒムは思わず涙を流し、力が抜けて膝から崩れ落ちる

 

 

「なんでだ…?このまま俺達と一緒にいても何も解決しないんだぞ…?お前の本当の居場所は…?俺のこと…嫌いになっただろ…?」

 

「…たしかに、僕には本当の帰る場所があるのかもしれない。それに一緒にいることで、僕だけじゃなく、2人を危険な目に遭わせるかもしれない」

 

 

"それでも"と、メリッサは涙を浮かべて言葉を続ける

 

 

「イブラヒムとフレン…。2人と一緒にいる何気ないこの幸せを手放すなんてこと…出来ないよ…」

 

「…っ!」

 

 

その言葉にイブラヒムは思わず泣き崩れ、メリッサも身を屈ませてその背中にそっと手を添える

 

そして、メリッサは自分達2人のやり取りから何かを察し、涙を流して立ち尽くしているフレンを手招いて自身の左へ抱き寄せる

 

 

「…何が何だか理解し切れてないけど、メリーはこのまま私達と一緒にいたら危ないの?」

 

「うん…。2人のことも巻き込んじゃう…。でも、僕は強くなるって決めたよ。2人とずっといられるように、どんな危機からも2人を守れるように」

 

「…そんなの駄目だよ、メリー。1人で頑張ろうとするなんて。ずっと一緒にいるなら、3人で助け合おうよ」

 

「ああ…。俺達3人で強くなろう…」

 

「…うん。ありがとう…イブラヒム、フレン」

 

 

3人で一緒にいるための決意を固め、イブラヒム達は改めて互いを強く抱きしめ合う

 

 

「…よかったな、イブラヒム。…ん?」

 

 

そんな3人の姿にコウも貰い涙を浮かべるなか、ふと隣に目をやるとベルモンドから預かったチビノーズが慌ただしくその場をクルクルと周っていた

 

 

「この様子…何かを必死に伝えようとしてるのか?もしかして、向こうの方で何かあったんじゃ…!イブラヒム…!」

 

 

感動の場面に水を差すようで申し訳ないが、コウはチビノーズの様子を伝えるためイブラヒム達に声を掛ける

 

 

「…そうだった。とりあえず、一度ベルさん達と合流しよう。あの様子から判断は出来ねぇけど、もしかしたら向こうがりりむと合流出来たから呼んでるのかもしれねぇ」

 

「うん!まずは無事にコーヴァスシティに帰らないとね!」

 

「そうだね」

 

 

感傷に浸るのはここまでにし、涙を拭ったイブラヒム達はチビノーズの案内を頼りにリゼ達の下へ向かう

 

 

 

 

その頃、フェローチェの"とびひざげり"が直撃し、瓦礫に埋もれてしまったリオルを助けようとリゼはイーブイと共にその除去を行っていた

 

 

「イィ…ブイッ!」

 

 

イーブイの幾度ない"アイアンテール"で瓦礫の大部分が取り除かれ、最後の一撃によって遂にリオルがその中から解放される

 

 

「ありがとう、イーブイ!」

 

 

リゼは力を貸してくれたイーブイに御礼を言い、すぐさまリオルを抱き抱える

 

 

「リオル…!大丈夫…!?」

 

「リ…オ…」

 

 

リゼの呼び掛けにリオルは弱々しい声を上げる

 

 

(私の考えが甘かった…!思い返せば、あのポケモンはベルモンドさんとのバトルで高い知能と対応力を見せてた…!なのに、"とびひざげり"の反動ダメージを狙えることに意識し過ぎて…!)

 

 

リオルの痛ましい姿を前に、リゼは自責の念に駆られる

 

 

「フリィ…ッ!?」

 

「…っ!バタフリー…っ!?」

 

 

だが、そんな暇は与えないと言わんばかりに、傷付いたバタフリーが突然すぐ近くに吹き飛ばされてき、リゼはフェローチェとバトルしているアンジュ達に目を向ける

 

 

「フェロッ!」

 

「また"ドリルライナー"…!みんな…!地中からの攻撃に気を付けて…!」

 

 

リゼの視線の先では、攻勢に出たフェローチェに注意するよう、アンジュがエンペルト達に呼び掛けていた

 

ここまで、エンペルト達は各々が覚える"うずしお"や"いわなだれ"等の非接触技を絶え間無く繰り出すことでフェローチェの接近を阻み時間を稼いでいたが、それに痺れを切らしたフェローチェはベルモンドのイシヘンジンを破った時のように攻撃がまず届かない地中に"ドリルライナー"を駆使して潜り、そこから接近して飛び出し、飛んでいるバタフリーに"とびひざげり"を炸裂させた

 

そして、フェローチェは再び"ドリルライナー"を駆使して地中へと潜り、先程と同様の攻撃を仕掛けてくるとアンジュは警戒していた

 

だが、フェローチェはアンジュ達の警戒を上回る予想外の手に打って出てきた

 

 

「サイ…ッ!?」

 

「エンペ…ッ!?」

 

「ゴルゥ…ッ!?」

 

 

突然、エンペルト達の足下の地面が崩れ落ち、彼等は約1m程の深さがある穴に嵌ってしまう

 

 

(急に地面が沈んだ…!?まさか、あのポケモン…!"ドリルライナー"でエンペルト達の足下の地面を削ったのか…!)

 

 

アンジュの推察通り、"ドリルライナー"で地中に潜ったフェローチェはエンペルト達が立つ地面の真下ギリギリを掘削することで簡易的な落とし穴を作り出したのだ

 

 

「フェロッ!」

 

 

そして、エンペルト達が穴に嵌った直後、すかさず地中から飛び出たフェローチェは身動きの取れないエンペルトとサイドンに"とびひざげり"を炸裂させる

 

 

「エンペェ…ッ!?」「サァイ…ッ!?」

 

 

フェローチェの"とびひざげり"を諸に食らってしまったエンペルトとサイドンはぐったりと意識を失い、戦闘不能となってしまう

 

 

「エンペルト…っ!サイドン…っ!」

 

「…っ!?」

 

 

倒されてしまったエンペルトとサイドンにリゼが叫ぶ

 

一方で、その声を聞いたベルモンドはリゼ達の方へ一瞬視線を向け、状況を把握すると表情を険しくした

 

 

(くっ…!足止めとは言え、やはりウルトラビースト相手は厳しかったか…!)

 

 

カバルドンを筆頭とした野生ポケモン達をりりむと共に相手していたベルモンドはその数を残すところあと半分まで減らしていた

 

手持ちが万全の状態ならば、ベルモンドは既に目の前の野生ポケモン達を全て片付けられていたが、バンギラスは先の鉱山のバトルのダメージが完全には癒えておらず、ダイノーズは3体いるチビノーズのうち1体をイブラヒム達に預けていることで力を十全に発揮出来ずにいた

 

更に、途中砂漠で取り戻した化石を博物館に送り届けるためにトロッゴンが抜け、直前のフェローチェとのバトルでアーケオスとイシヘンジンが戦闘不能となり、戦力を大きく削られてしまったことが未だ野生ポケモン達を倒し切れない要因となっていた

 

 

(このままだと、リゼちゃん達の方が先に限界を迎える…!せめて、彼女達だけは無事に帰さなきゃならん…!こうなったら、俺が1人残って全員の逃げる隙を…!)

 

「カバァァァッ!」

 

(そのためには、あともう少し数を減らさなければ…!)

 

「ベルさん…!来るよ…!」

 

「ああ…!バンギラス!"はかいこうせん"!ダイノーズ!"ラスターカノン"!」

 

「ジュペッタ!"おにび"!」

 

 

全員での生還を諦め、自らを犠牲にすることを決意したベルモンドはりりむと共に襲い来る野生ポケモン達とのバトルを続行する

 

 

「フェロ」

 

 

そんななか、フェローチェは"とびひざげり"が効かないゴルーグに歩み寄ると両手から繰り出す"じこくづき"を連続で叩き込み始めた

 

 

「ゴ…ゴルゥ…ッ!」

 

「…っ!ゴルーグ…!」

 

 

足が穴に嵌ったことで逃げることも出来ず、成す術なく"じごくづき"の猛打を浴びせられるゴルーグにアンジュは胸を痛ませるが、自身が身を乗り出したところで命を危険に晒すだけであり、ただ眺めることしか出来ない辛さから苦しい声を漏らす

 

 

(このままだとみんなやられちゃう…!あのポケモンを止めるにはもう…!)

 

 

次々とポケモン達がやられていく絶望的な状況を前に、リゼは最後の1体が収まっているモンスターボールを握り取る

 

 

(ソウブレイズ…!あなたの力を借りるしか…!)

 

 

リゼが頼ろうとしたそのポケモンはソウブレイズ

 

だが、リゼはソウブレイズをボールからすぐに繰り出せずにいた

 

ソウブレイズは以前、オウマジムのジム戦で我を忘れて暴走したことがある

 

仮にフェローチェを倒せたとしてもソウブレイズがまた同じ状況に陥った際、手がつけられなくなる危険があった

 

しかし、リゼがソウブレイズを繰り出すことに躊躇している最大の理由はその危険からではない

 

ソウブレイズを頼ることに罪悪感を抱いてしまったからだった

 

 

「…ごめんなさい、ソウブレイズ。勝手な想いであそこから連れ出した私が助けてあげないといけないのに、あなたに助けを求めるなんて…」

 

 

今は亡き前の主人が眠る城を離れてなお、怒り苦しむ姿を見せたソウブレイズ

 

オウマジムの一件を経てから今日まで、リゼはそれが何なのか、どうすれば助けてあげられるか考えたが、未だ答えには辿り着けないでいる

 

そんななか、自分達が窮地に陥っているこの状況を打破するために、助けるべき存在であるソウブレイズに助けを求めなければならないことにリゼは罪悪感を抱くと同時に、自身の不甲斐なさを痛感する

 

 

「でも、みんなを助けるためにあなたの力が必要なの…!お願い、ソウブレイズ…!力を貸して…!」

 

 

それでも、全員が助かるためにはその力に頼る他ないと、リゼは恥を忍んで懇願すると共にソウブレイズを繰り出した

 

 

「ブレイ」

 

「ソウブレイズ…」

 

 

ボールから出たソウブレイズは後ろめたさが読み取れる不安げな表情を浮かべるリゼと一瞬目を合わせるが、特にこれといった反応は示さず、指示を待つことなく力強く地を蹴り駆け出した

 

 

「フェロ…ッ!?」

 

 

殺気とも取れるただならぬ敵意を感じたフェローチェはゴルーグへの攻撃を止め、咄嗟にその場から飛び退く

 

ドゴォッ!

 

と、直後に先程までフェローチェが立っていた場所へソウブレイズの"むねんのつるぎ"の一撃が振り下ろされる

 

 

「ブレイ…ッ!」

 

「フェロ…ッ!」

 

 

ソウブレイズとフェローチェは互いに睨み合うが、程なくして同時に仕掛け出す

 

 

「ブレイッ!」

 

 

ソウブレイズは連続で刃の腕を振るい、"サイコカッター"を放つ

 

だが、フェローチェはそれを容易く躱しながらソウブレイズとの距離を詰める

 

ソウブレイズは"サイコカッター"が通用しないと諦めたか、今度は"むねんのつるぎ"を構える

 

炎タイプの技である"むねんのつるぎ"は直撃すれば大ダメージとなるが、接近戦ならば素早さで勝る自身に分があると、フェローチェは臆することなくソウブレイズへと突っ込む

 

 

「ブレイッ!」

 

「フェロ…ッ!?」

 

 

だが、ソウブレイズが取った行動にフェローチェは思わず目を見開く

 

ソウブレイズはフェローチェが接近し切る前に"むねんのつるぎ"を地面に向けて振るい、瞬間、地面に切り付けられた痕が発火して燃え上がり、炎の壁となって両者を阻んだ

 

技そのものの攻撃ではないとは言え、それでも突っ込めば相応のダメージを負うことを理解していたフェローチェは咄嗟に踏み止まる

 

ボッ!

 

次の瞬間、炎の壁越しからソウブレイズの刃が突き出されるが、フェローチェは反射的に仰け反ることで紙一重で躱し、すぐにその場から飛び退いて距離を取る

 

 

「フェロッ!」

 

 

ソウブレイズへの認識を改めたか、フェローチェは今度は正面からではなく、"ドリルライナー"を駆使して地中からの攻撃を仕掛ける

 

 

「地中からの攻撃…!それとも、さっきみたいに穴に嵌めて確実な隙を作る狙い…!?」

 

「ソウブレイズ…!気を付けて…!」

 

 

心配してリゼが声を掛けるが、ソウブレイズはそれに微塵も反応を示さず、注意深く周囲を見渡す

 

 

「…ッ!」

 

 

だが、リゼの呼び掛けも虚しく、ソウブレイズはフェローチェによって足下の地面を崩され、そこに出来た穴へ下半身を嵌られてしまう

 

 

「フェロッ!」

 

 

直後、地面から飛び出たフェローチェは穴に嵌って身動きが取れないソウブレイズへ迫り、"じごくづき"を繰り出す

 

 

「ソウブレイズ…っ!」

 

 

ソウブレイズの絶体絶命の危機にリゼは思わず叫ぶが、フェローチェの"じごくづき"が直撃するかに思われた瞬間、ソウブレイズはまるで吸い込まれるように嵌った穴の中へと姿を消した

 

 

「フェロ…ッ!?」

 

「ソウブレイズが消えた…!まさか、穴の中に落ちた…!?」

 

「ううん…!今の感じ…!あれは"ゴーストダイブ"…!」

 

「ブレイッ!」

 

 

嵌った穴からソウブレイズが消えた理由にリゼが気付くと同時、ソウブレイズはフェローチェの背後から"ゴーストダイブ"による空間移動で姿を現し、右腕の刃を振り下ろす

 

 

「フェロ…ッ!」

 

 

背後に現れたソウブレイズの気配に気付いたフェローチェは素早く体の向きを変え、振り下ろされた刃に"じごくづき"をぶつける

 

しばらく競り合うが、互いに相手を押し切るには至れず、2体は同時に一度距離を取るべく後ろへと飛び退いた

 

 

「ブレイ…!」

 

「フェロ…!」

 

「ソウブレイズ…やっぱり凄い…!」

 

「うん…。あのポケモンの圧倒的な素早さを目にした途端、正面からの戦いを避けて"むねんのつるぎ"を駆使した炎の壁で接近を阻止…。加えて、それを前に踏み止まったところに合わせて炎の壁を利用した死角からの攻撃…。トレーナーの指示も無しに、これほどのバトルの組み立てが出来るなんて…」

 

「互角に渡り合えてるし、これなら…!」

 

(たしかに、この調子なら勝てるかもしれない…けど…)

 

 

フェローチェ相手に一歩も譲らないバトルを繰り広げるソウブレイズにリゼは希望を見出すが、アンジュはまだ楽観視してはいなかった

 

そんななか、再びフェローチェが動き出すが、今度は先程までのように攻勢的に距離を詰めようとはせず、ソウブレイズと一定の距離を保ちながらその周囲を駆け回っていた

 

 

「ブレイ…!」

 

(さっきまでの攻勢的な動きじゃない…?でも、動き出したということは…!)

 

「何か仕掛けて来る…!ソウブレイズ、気を付けて…!」

 

 

リゼとアンジュはフェローチェが何か狙っていそうな雰囲気を感じ取り、ソウブレイズに注意を呼び掛ける

 

その数秒後、ソウブレイズの周囲を一周分ほど駆け回ったところでフェローチェは動き出した

 

フェローチェはソウブレイズへ真っ直ぐに距離を詰めようとはせず、自身の姿を隠せるほどの大岩の裏へ飛び込む

 

 

「フェロッ!」

 

 

次の瞬間、フェローチェは大岩を強力な蹴りで砕き、岩の礫にしてソウブレイズへと飛ばした

 

 

「ブレイッ!」

 

 

迫る岩の礫をソウブレイズは"サイコカッター"を放つことで打ち落とす

 

 

「フェロッ!フェロォッ!」

 

 

だが、それを防がれてもフェローチェは次から次へと大岩へ飛び込んでは蹴り砕いて岩の礫を飛ばし、ソウブレイズへ攻撃を続ける

 

 

「ブレイッ!ブレェイッ!」

 

 

四方八方から迫る岩の礫を打ち落とそうとソウブレイズも連続で"サイコカッター"を放つが、フェローチェの素早く絶え間ない攻撃に対応が追い付かず、少しずつ岩の礫全てを打ち落とし切れなくなり、じわじわとダメージを与えられていく

 

 

「自然物を利用した攻撃…!たしかにこれなら、さっき接近を阻んだソウブレイズの炎の壁も関係無く攻撃出来る…!」

 

「ソウブレイズ…!早くそこから抜け出して…!」

 

「ブレイ…ッ!」

 

 

激しさを増す岩の礫に対処し切れなくなる前に離れるようリゼが叫ぶと、ソウブレイズもこのままではマズいと判断したのか、"ゴーストダイブ"を発動して異空間へと姿を消す

 

 

「フェロ…ッ!」

 

 

直後、それを確認したフェローチェは足を止め、瞳を閉じて静かに身構える

 

 

「ブレイッ!」

 

 

数秒後、フェローチェの真上に"ゴーストダイブ"の穴が開き、そこからソウブレイズが飛び出る

 

 

「フェロッ!」

 

「…ッ!」

 

 

だが、それとほぼ同時にフェローチェは真上から現れたソウブレイズに気付いて顔を上げる

 

そして、ソウブレイズが攻撃として振り下ろした刃を躱すと、反撃に懐へ"じごくづき"を炸裂させる

 

 

「ブレイ…ッ!?」

 

 

"じごくづき"を食らったソウブレイズはその勢いで吹き飛ばされ壁に激突する

 

 

「ソウブレイズ…っ!」

 

 

効果抜群の一撃を諸に受け、大ダメージを負ったであろうソウブレイズを心配し、リゼが叫ぶ

 

 

「……」

 

「ブ…レイ…」

 

 

リゼ達が固唾を呑んで見守り、フェローチェが静かに様子を窺うなか、ソウブレイズはよろめきながらボロボロになった体を起き上がらせる

 

 

「ソウブレイズ…!」

 

 

無事とは言えないが、立ち上がったソウブレイズにリゼはホッと安堵の声を漏らす

 

 

「…いや、なんだか様子がおかしい…!この感じは…!」

 

 

だが、アンジュは立ち上がったソウブレイズを見て不穏な気配を感じ取る

 

 

「ブレェェェェェェイッ!!!」

 

「「…っ!?」」

 

 

次の瞬間、ソウブレイズは体の炎を激しく燃え上がらせ、噴き荒れるような怒りと憎悪を帯びた咆哮を轟かせる

 

 

「ソウブレイズ…!?あなた、もしかして…!」

 

 

リゼも様子の変化に気付くなか、ソウブレイズは右手に"むねんのつるぎ"、左手に"サイコカッター"を構える

 

 

「…っ!?リゼっ!!伏せてっ!!」

 

 

それを見たアンジュは身の危険を感じると同時にリゼに叫びながら彼女に飛びつき無理矢理伏せさせる

 

その直後、ソウブレイズは2つの技を同時に振るい、自身の前方広範囲を焼き斬る炎の斬撃を放った

 

 

「フェロ…ッ!?」

 

 

フェローチェは咄嗟に跳躍して迫る炎の斬撃を避けようとするが、直撃こそ免れたものの、炎に掠めてしまった右脚がそれだけで大きな火傷を負ってしまう

 

フェローチェは激痛に顔を歪ませるも、そのままソウブレイズへ迫る

 

 

「ブレェェェイッ!!」

 

 

ソウブレイズは"むねんのつるぎ"を振るって迎え撃つが、フェローチェはそれを躱して"じこくづき"を叩き込む

 

 

「ブッ…レェェェイ…ッ!!」

 

 

だが、ソウブレイズは"じごくづき"が炸裂してもすぐに反撃を繰り出し、"むねんのつるぎ"を振るい続ける

 

それでも、フェローチェはソウブレイズの攻撃を悉く躱し、隙を突いて何度も"じこくづき"を炸裂させる

 

 

「ソウブレイズ…っ!やっぱり、怒りで我を忘れてる…!」

 

「うん…!そのせいか、攻撃も大振りばかりの単調なものになって動きを読み切られてる…!このままだと、やられるのは時間の問題だよ…!ベルさん達が間に合うまで持ち堪えられるかどうか…!」

 

 

ベルモンドとりりむが相手をしている野生ポケモン達は残り十数体まで減っていたが、このまま一方的にダメージを与え続けられれば先にソウブレイズが力尽きるだろうと、これ以上ない手を尽くしても状況を覆せない現実にアンジュは歯噛みする

 

 

「そんな…!どうしたら…!」

 

 

リゼ達の残る戦力はイーブイとビッパだが、その2体をソウブレイズとフェローチェのバトルに介入させても邪魔になるか1分と保たずにやられてしまうだろう

 

仮に、残りのポケモン達での時間を稼ぎ切り、ベルモンド達が退路を塞ぐ野生ポケモン達全てを倒したとしても、その後にフェローチェから逃げ切るには誰かが足止めをしなければならない

 

アンジュはそれを覚悟していたが、リゼは全員で助かる道を諦められなかった

 

とは言え、ソウブレイズが力尽きるであろう時間まで猶予はあまりなく、何か他に打つ手は無いかと模索するリゼだったが、焦りで思考がまとまらないでいた

 

 

「リォ…!」

 

「…っ!リオル…!?」

 

 

その最中だった

 

リオルが目を覚まし、自身を抱いているリゼの腕を振り解くとボロボロの体を引き摺らせながらフェローチェ達の下へ向かおうとする

 

 

「もしかして、バトルするつもりなの…!?駄目だよ…!そんな怪我で無茶したら…!」

 

「リオ…ッ!」

 

「…っ!」

 

 

心配する自分の声を聞かないリオルに、リゼは口を噤む

 

何故、リオルが動くのも辛いはずのボロボロの体を起こしてまで立ち向かおうとするのか、リゼには明確には分からなかった

 

ただ、前を向いているリオルの眼からは、何かを諦めたくない強い意志のようなものが感じられた

 

 

「…分かったよ、リオル!本当は凄く心配だから今すぐにでも止めたいけど、私もまだ諦めたくない…!あなたが私の想いに応えようとしてくれるなら、私もあなたの想いに応えてあげたい!だから、最後まで一緒に戦おう!」

 

「リオッ!」

 

 

リゼはリオルの意志を尊重し、共にバトルへ臨むことを決意する

 

そして、その言葉にリオルが力強く応えた次の瞬間、その体が眩く光り輝き出した

 

 

「…っ!?この光は…!」

 

「進化が始まったんだ…!」

 

 

リゼとアンジュが驚くなか、リオルは光に包まれた中で姿形を変え、"はどうポケモン":ルカリオに進化を遂げる

 

 

「ルオォォォッ!」

 

「リオル…!あなた、ルカリオに進化したのね!」

 

 

リオルの進化にリゼは興奮して声を上げ、ルカリオは顔を振り向かせて笑みを浮かべる

 

 

「うん!ルカリオ、勝つよ!」

 

「ルオッ!」

 

 

リゼの呼び掛けに頷き、ルカリオは駆け出す

 

 

「ブレ…ッ!」

 

 

幾度なく"じごくづき"を受けたソウブレイズは体が限界に近付いたことで遂に膝を突き、フェローチェはトドメを刺そうと"じごくづき"に力を込める

 

 

「ルオォッ!」

 

「…ッ!?」

 

 

その時、ルカリオが新たに覚えた技"はどうだん"を繰り出してフェローチェに炸裂させる

 

 

「フェロ…ッ!」

 

 

虫タイプへの格闘タイプ技は効果が今一つなため、大きなダメージにこそならなかったが、新たな相手の出現に警戒したフェローチェはソウブレイズへのトドメを止め、その場から飛び退く

 

 

「ルオッ!」

 

 

フェローチェが距離を取ったのを見たルカリオは追い掛けようとはせずに足を止め、更に新たに覚えた技"ラスターカノン"を繰り出して攻撃する

 

フェローチェはそれを躱すが、ルカリオは逃すまいと"ラスターカノン"を放ち続ける

 

 

「…ッ!」

 

 

当てるまでしつこく追い放ち続けられることが煩わしくなったフェローチェは"ドリルライナー"を繰り出して攻撃が届かない地中の中へと潜り込む

 

 

「"ドリルライナー"…!」

 

「ううん、ルカリオなら大丈夫!」

 

 

"ドリルライナー"を駆使した地中からの攻撃に焦るアンジュにリゼが自信に満ちた声でそう告げるなか、ルカリオは目を閉じて波導の力を集中させる

 

波導とは、全ての物質が持つ固有の振動であり、いわゆる気やオーラと呼ばれるもの

 

"はどうポケモン"であるルカリオはそれを感じ取り、操る力に秀でており、地中に潜って目視することが出来ないフェローチェをそれが持つ波導を感じ取ることでその動きを捉える

 

 

「…ッ!」

 

「フェロッ!」

 

 

波導の力でその動きを見切ったルカリオは地中から飛び出してきたフェローチェの"ドリルライナー"を完璧に躱す

 

 

「ルオッ!」

 

 

そして、ルカリオは更に新たに覚えた技"ボーンラッシュ"で接近戦に臨み、フェローチェも"じごくづき"で応じて激しい攻防を繰り広げる

 

 

「いいよ、ルカリオ!互角に渡り合えてる!」

 

「進化してパワーアップしたのもあるけど…!見て、あのポケモンの右脚…!さっき、ソウブレイズが放った飛ぶ炎の斬撃で火傷を負ってる…!あれで最初ほどスピードが出せていないんだ…!」

 

 

ルカリオがフェローチェと互角に勝負していることがソウブレイズのおかげであることをアンジュは分析し、リゼは勝利への希望を見出す

 

 

「ルォ…ッ!ルォ…ッ!」

 

「…っ!ルカリオ、苦しそう…!」

 

「無理もないよ…!ルカリオにはあのポケモンから受けたダメージが残ってる…!体力的にもルカリオの方がキツいはずだ…!」

 

 

だが、進化する前に受けたダメージが残るルカリオは息を切らしており、このままではフェローチェより先に限界が来るのは明白だった

 

 

(何か…何かあともう一押しあれば…!)

 

「リゼ〜!アンジュ〜!」

 

「時間がかかってすまない!こっちは片付いたぞ!」

 

 

あと僅かな差を埋め、フェローチェを倒すための決定打となり得るものはまだないかとリゼが模索しようとしたその時、野生ポケモン達を倒し切ったベルモンドとりりむが駆け付ける

 

 

「りりむちゃん…!ベルモンドさん…!あの…!2人はまだ戦えるポケモンが残ってますか…!?」

 

「え…?ど、どういうこと…?」

 

「まさか、あのポケモンを倒すつもりかい…!?」

 

 

リゼの急な質問にりりむは困惑するが、ベルモンドはその意図をすぐに理解した

 

 

「たしかに、最初に比べて弱っているみたいだが、それでもまだ十分に危険だ…!それに今は君達全員の安全が最優先…!ここは一度…!」

 

「でも、今ここであのポケモンを倒さないなら、誰かが足止めに残らないといけない…!そうですよね…!?」

 

「その役目なら俺が引き受ける!だから、君達は俺のダイノーズを連れてイブラヒム達と合流し、先に街へ戻ってくれ!あのポケモンの討伐なら、プティちゃんにこのことを伝えた後で腕利きのトレーナー達と共に…!」

 

「ベルモンドさんだけを置いて行くなんて出来ません!それに、あのポケモンを野放しにしたらメイフ砂漠のポケモン達が危険に晒されます!自分のために他の誰かやポケモン達を犠牲にするなんて私は嫌です!」

 

「…っ!」

 

 

逃げることを頑なに拒むリゼの姿とその理由を聞いて、ベルモンドはふと20年程前に知り合ったあるトレーナーのことを思い出す

 

 

 

 

「おい、聞いたか?これで30人目だとよ…」

 

「ああ。やっぱり伝説のポケモンってのは噂通りの化け物じみた強さだな…」

 

「…伝説のポケモン:ファイヤーか。腕利きトレーナー達が束になっても勝てないなんてな…」

 

 

今から約20年程前のコーヴァスシティ…当時、メイフ砂漠にある厄介なポケモンが渡って来ていた

 

その名は"かえんポケモン":ファイヤー…古くから火の鳥伝説として知られている伝説と称されるポケモン

 

一般の野生ポケモンとは比べるまでもない圧倒的な強さを誇り、その力を手に入れようと何人ものトレーナーが挑んでは全く歯が立たずに敗北し、終いには徒党を組んで臨んだものの、それでも返り討ちに遭っていた

 

街のレストランでの食事中、周りの客のほとんどがその話題を口にしているのを耳にしたベルモンドは眉間に皺を寄せていた

 

 

「今のところはメイフ砂漠に居座り続けてるみたいだが、最悪の場合…鉱山やこの街に被害をもたらすかもしれない…」

 

 

他のトレーナー達と違ってベルモンドはファイヤーのゲットに興味はなかったが、街の人々やディアンシー達のいる鉱山に被害が出る可能性を危惧していた

 

だが、何人ものトレーナー達が徒党を組んでも倒せない程の強さを有するファイヤーに、信頼出来る仲間もいない自分が1人挑んでも同じ末路を辿るだけだと悟っていたことから動けないでいた

 

"どうすれば…"と思い悩んでいるなか、ベルモンドの隣の席に4人の男達が腰掛ける

 

 

「それにしても、なんだか街の様子が変ですよね?ソワソワしているというか、緊迫しているというか…」

 

「それなんだけど、どうやらこの街の東に広がってるメイフ砂漠にファイヤーが現れたらしいんだよ」

 

「ファイヤー…!あの伝説のポケモンの…!?」

 

 

ベルモンドの隣に腰掛けた彼等は初めてコーヴァスシティを訪れた旅のトレーナーらしく、他の客同様に早速ファイヤーの話題を口にし出す

 

 

「既に何人もトレーナーがゲットしに挑んだらしいけど、全員見事に返り討ちにされたんだって。砂漠のポケモン達も襲われてて、今ポケモンセンターには傷付いたポケモン達が多く運ばれて大変な状況みたい」

 

「マジか…!こりゃ宿を取るのも難しいだろうな…」

 

「なら、今日は早めに野宿する場所を探しましょう。社さんと夢追さんは買い出しをお願いします。チャイカさんは私と一緒に…」

 

 

ファイヤーの影響でポケモンセンターが逼迫していることから、今夜の野宿に向けて話が進もうとする

 

その時、彼等4人の中でも特に容姿が特徴的な大柄の青年が突然"ガタリッ!"と音を立てて立ち上がった

 

 

「チャイカさん…?急に立ち上がってどうされたんですか…?」

 

「…悪いな、加賀美。俺は夜まで別行動をさせてもらうわ」

 

「別行動って…!お前、まさかとは思うがファイヤーにバトルを挑む気じゃないよな…?」

 

「そのための情報収集に行くつもり。挑むのは明日」

 

 

"チャイカ"と呼ばれたその青年がファイヤーに挑むための準備に動くと告げ、他の3人は嫌な顔をしたり、驚いたりとそれぞれ反応を見せる

 

 

「その口振りだと1人で挑むつもりだな…?」

 

「なっ…!?待って下さい、チャイカさん…!それは流石に危険です…!」

 

「そうだよ…!僕達と同じようにポケモンリーグ挑戦を目指してここまで来た実力のあるトレーナー達が10人束になっても勝てない程の相手だよ…!?」

 

「それがどうした?」

 

 

焦り心配する仲間の2人に止められるが、チャイカは平然とした様子でそう言い返した

 

 

「おい、チャイカ。流石に今回は相手が悪い。伝説のポケモンはそこらの野生ポケモンの主やポケモンハンターみたいな腕利きの極悪トレーナー達とは訳が違うことくらい、お前も分かってるだろ。下手すりゃ命を落とし兼ねないないぞ」

 

「もう一度言うけど、それがどうしたの?俺は勝ち目の薄い相手だからという理由で傷付くポケモン達を見捨てられるほど諦めが良くはないし、我が身が可愛いとは思ってない」

 

 

他の2人と違って大人びた様子で冷静に話を聞いていた青年に忠告されても、チャイカは少しも揺らがず確固たる意志を示して先に店を後にしようと歩き出す

 

 

「…ったく、ポケモンのこととなるとすぐこれだ」

 

「まあ、そこがチャイカさんの美点ですから」

 

「こうなったら、腹を括るしかないね」

 

 

取り残された社、加賀美、夢追は"やれやれ…"と困っていると同時に何処か納得した様子で話を終えると、席を立ってチャイカの後に続いて店を出て行く

 

 

(見ず知らずのポケモン達を助けるために命を懸けることも厭わないだって…?虚勢や冗談なんかじゃない…。どうしてそんな平然に…)

 

 

その一部始終見聞きしていたベルモンドは彼等…特にファイヤーを倒すと言い出したチャイカが他のトレーナー達とは違うと確信すると、思わず後を追うために駆け出した

 

 

「そ、そこのお前達…!待ってくれ…!」

 

「ん…?」

 

 

ベルモンドに呼び止められ、チャイカ達は立ち止まる

 

 

「あんた、誰?」

 

「俺はベルモンド・バンデラス…。お前はたしか、チャイカって呼ばれてたよな…?そんなつもりはなかったんだが、お前達の話を盗み聞いてしまってな…。ゲットするためじゃなく、他のポケモン達を助けるためにファイヤーに挑むと言っていただろ…?」

 

「ああ、そう言ったね」

 

「聞かせてくれ…。何がお前をそうさせるんだ…?命を懸けてまで、見ず知らずのポケモン達を助けるために万が一にも勝てる可能性が無い程の強大な相手に挑めるんだ…?」

 

 

真剣な面持ちのベルモンドの問いに、チャイカは変わらず平然とした様子で答える

 

 

「大した理由じゃないよ。どうしようもなくポケモンのことが好きで、後悔したくないから諦めが悪い。ただそれだけ」

 

 

その言葉を聞いたベルモンドは目を見開き、しばらく呆気に取られた後に軽い笑みを浮かべた

 

 

「…そうか。もし、邪魔でなければファイヤーに挑むお前達に俺も協力させてくれないか?俺にも、助けてやりたい存在がいるんだ」

 

「…フッ、そうか」

 

 

彼等なら信頼でき、共に脅威にも打ち勝てるだろうと覚悟を決めたベルモンドの申し出に、チャイカは笑みを浮かべ、加賀美達は顔を見合わせて頷き合う

 

 

「俺からも頼む、ベルモンド・バンデラス。この地に生まれ育ったポケモン達のために、是非力を貸してくれ」

 

「ああ、そのつもりだ!」

 

 

チャイカから差し伸べられた手をベルモンドは力強く握り締めた

 

 

 

 

そして、現在…

 

 

(リゼちゃんはチャイカに少し似ているな…。ポケモンのことが好きで、優しい心を持っているが故に後悔の無い選択を頑なに取り続けたがる諦めの悪さがある)

 

 

ベルモンドはリゼの姿をかつて共にファイヤーとのバトルに挑んだチャイカを重ねる

 

 

(だからこそ、こういうトレーナーにポケモンは限界を超えた力を出して応えてくれる。奇跡を起こしてくれる。あの時みたいに)

 

 

そして、チャイカの、加賀美達の、自身のポケモン達が応え見せてくれた底力…絶望だと思われた状況を打破し得た絆の力を思い出した

 

 

「君になら、安心して託せる」

 

 

小さくそう呟いたベルモンドは懐に手を入れ、ある物を取り出す

 

 

「リゼちゃん、これを使ってくれ」

 

「え…?」

 

「それって…!」

 

「キーストーンとメガストーン…!」

 

 

ベルモンドがリゼに手渡したのはメガシンカに必要な道具であるキーストーンとメガストーン"ルカリオナイト"だった

 

 

「どうしてベルモンドさんがこれを…!?」

 

「俺はコーヴァスジムのジムリーダーであると同時に、キーストーンとメガストーンを挑戦しに来たトレーナーに託すかどうか見極める役目をポケモンリーグ委員会から任されている」

 

「でも、私はまだジム戦に挑戦して…」

 

「今が非常時だからというのもあるが、メガシンカはトレーナーとポケモンが強い絆で結ばれていなければ成功しない力。本来ならジム戦を通してそれを見極めるところだが、リゼちゃんの強い想いを聞いて託しても問題ないと判断した」

 

 

"リゼちゃん…!"と、ベルモンドは改まった様子で言葉を続ける

 

 

「勝手ながら、君と君のポケモン達に全てを託す…!頼まれてくれるかい?」

 

「…勿論です!ルカリオ!受け取って!」

 

 

ベルモンドの想いを受け取ったリゼはキーストーンを左手首に嵌め、ルカリオにルカリオナイトを投げ渡す

 

ルカリオはフェローチェとの攻防を止めて飛び退き、ルカリオナイトを掴んで着地する

 

 

「ルカリオ!私達の絆の力でみんなを絶対助けよう!いくよ、メガシンカ!」

 

 

ルカリオへそう呼び掛けたリゼはキーストーンへと指を添える

 

すると、キーストーンとルカリオナイトから眩く光る線状のエネルギーが溢れ出して繋がり合う

 

そして、七色の光に包まれたルカリオはその姿形を変化させてメガルカリオへとメガシンカする

 

 

「これがメガシンカ…!ルカリオからも凄いエネルギーを感じる…!」

 

「ルォッ!」

 

「…うん!やるよ、ルカリオ!"はどうだん"!」

 

 

初めてのメガシンカに思わず感動するリゼはメガルカリオに呼び掛けられると意識を切り替え、メガルカリオに"はどうだん"を繰り出させる

 

 

「フェロッ!フェ…ロォ…ッ!?」

 

 

フェローチェは"じごくづき"で迎え撃つが、ルカリオの時よりも威力が格段に上がっている"はどうだん"に押し返されて直撃を受ける

 

 

「技の威力で上回った…!これなら…!」

 

「うん!ルカリオ、続けて"ボーンラッシュ"!」

 

 

リゼの続く指示でメガルカリオは"ボーンラッシュ"を発動させ、フェローチェへと突っ込む

 

フェローチェは先程同様に"じごくづき"で応戦しようとするが、"ボーンラッシュ"もまたメガシンカによる攻撃力の大幅なパワーアップにより威力を増しており、打ち合っても弾かれるばかりで一方的にダメージを与えられる展開となった

 

 

「凄い凄い…!メガルカリオが優勢だよ…!」

 

「ああ…!技の相性こそ今一つだが、あのポケモンは攻撃と素早さに秀でている分、耐久力は脆いはずだ…!このまま一気に…!」

 

 

メガルカリオがフェローチェを押している展開にりりむとベルモンドが声を上げる

 

だが、窮地に追い込まれたフェローチェは誰もが予想だにしなかった行動に出た

 

 

「…ッ!フェ…ロォッ!!」

 

「ルォ…ッ!?」

 

「"ボーンラッシュ"が…!」

 

「あのポケモン…!火傷を負っている右脚を犠牲に…!」

 

 

"ボーンラッシュ"の猛打に苦しむなか、フェローチェは火傷を負っている右脚を犠牲にした蹴りを放ってメガルカリオの"ボーンラッシュ"を無理矢理弾き飛ばした

 

これにより、フェローチェの右脚は完全に使い物にならなくなったが、代わりにメガルカリオの攻撃を止めると共に大きな隙を生むことに成功する

 

 

「フェロッ!」

 

 

直後、フェローチェは左脚のみで跳躍し、メガルカリオの上から"とびひざげり"を繰り出す

 

 

「ブレイ…ッ!」

 

「フェロ…ッ!?」

 

「…っ!?ソウブレイズ…!」

 

 

だが、メガルカリオに"とびひざげり"が炸裂すると思われたその時、意識を取り戻したソウブレイズが"ゴーストダイブ"で姿を消し、フェローチェの背後に現れると技が決まる前にその体を掴み、思い切り遠くへと投げ飛ばした

 

 

「ブレェェイ…ッ!!」

 

「…ありがとう、ソウブレイズ!決めるよ、ルカリオ!"ラスターカノン"!」

 

 

リゼは最後の最後にまで手を貸してくれたソウブレイズに御礼を伝えると共に指示を出し、メガルカリオは渾身の力を込めた"ラスターカノン"をフェローチェへと放つ

 

 

「フェ…ロォォォォォ…ッ!!?」

 

 

"ラスターカノン"の直撃を受けたフェローチェは甲高い叫び声を上げて吹き飛ばされる

 

 

「フェロォ…」

 

「や、やったの…?」

 

「ああ、どうやらそのようだ…!」

 

 

弱々しい声を上げ倒れ伏すフェローチェの姿を見てベルモンドはリゼの勝利を告げる

 

 

「やった…!なんとか勝て…」

 

「…っ!?リゼ…っ!」

 

 

リゼは勝利を喜ぼうとするが急に膝から崩れ落ち、それを心配してアンジュが駆け寄る

 

 

「大丈夫…!?」

 

「ありがとう、アンジュ…。緊張が解けたからか力が抜けちゃったみたい…」

 

「全く、また無茶を通して…。私の方こそ、心臓に悪過ぎて倒れそうだってのに…」

 

「あはは…それはごめんね…?」

 

 

アンジュからの手痛い一言にリゼは苦笑いで謝罪すると、力を振り絞って立ち上がり、奮闘したルカリオとソウブレイズの下へ歩み寄る

 

 

「ルカリオ、本当によく頑張ったね!ありがとう!ソウブレイズも最後助けてくれてありがとうね!」

 

「ルオッ!」

 

「……」

 

 

リゼの感謝にルカリオは笑顔で返し、ソウブレイズはチラリと一瞬だけ一瞥すると何処か不満が残る表情を浮かべて倒れたフェローチェを見つめていた

 

 

(返事はしてもらえないかぁ〜…。でも、最後はルカリオが勝つために手助けしてくれたし、少しはソウブレイズとの絆も深まったのかな?)

 

 

一朝一夕とはいかないが、ソウブレイズの心に一歩近付けたと感じ取ったリゼはそれだけでも満足だと微笑みをこぼした

 

 

「お〜い!みんな無事か〜!?」

 

「あっ…!コウ君達だ…!」

 

 

腰を落ち着かせて一安心するなか、ベルモンドのダイノーズの一部であるユニット:チビノーズに導かれたイブラヒム達がリゼ達の下へ合流する

 

 

「フレンとメリッサも一緒みたいだな、よかった。にじレジ団のことは気になるが、一先ずコーヴァスシティへ戻ろう」

 

「そうですね」

 

 

ベルモンドの提案に同意し、イブラヒム達と合流したリゼはメイフ砂漠を後にし、全員と無事にコーヴァスシティへと帰還した

 





リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、イーブイ、バタフリー
   サイドン、ルカリオ、ソウブレイズ

アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ

卯月コウ
手持ち:エースバーン、サーナイト、ラプラス

魔界ノりりむ
手持ち:ジュペッタ

イブラヒム
手持ち:マンムー、ボーマンダ、グソクムシャ
   サンダース、ドラピオン、コータス

フレン・E・ルスタリオ
手持ち:バシャーモ、パルスワン、ラッキー
   フライゴン、ニューラ、パッチラゴン

メリッサ・キンレンカ
手持ち:エモンガ、スピアー、イワパレス

ベルモンド・バンデラス
手持ち:バンギラス、ダイノーズ、トロッゴン
   アーケオス、イシヘンジン
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