「それじゃあ、にじレジ団の撃退及びウルトラビーストに打ち勝った俺達の活躍を祝して…乾杯!」
「「「「「「かんぱ〜〜〜い!!」」」」」」
「みんなも昨日はお疲れだったね!今夜はイブちゃんが超高級ポケモンフーズを用意してくれたから、遠慮なく沢山食べてね!」
「ルオ!」
「バシャ!」
「スピ〜!」
「ボーマ!」
にじレジ団によるコーヴァスシティと鉱山への襲撃、メイフ砂漠でウルトラビースト:フェローチェとのバトルに勝利して無事街へと帰って来たリゼ達はその翌日にイブラヒムの屋敷の庭で盛大な晩餐会を行うこととなった
「この料理美味しい〜!」
「俺の家の専属シェフにも負けない美味さだな!」
「コーヴァスシティで1番の腕を持つシェフに作ってもらったからな。貴族様と御曹司のお前ら2人の口に合ったようで良かったよ」
「ポケモン達もみんな喜んでるみたいだし、奮発した甲斐があったね」
「…まあ、1匹を除いてな」
自分達と同じく食事を楽しんでいるポケモン達を見てメリッサがそう言うなか、イブラヒムは庭の端の塀に背を置いて独り腰掛けているソウブレイズに目をやる
「き、気にしないで、イブラヒムさん…!ソウブレイズはその…まだ心を開いてないだけだから…!」
「ちょっと、イブちゃん!リゼ様に気を使わせるなんて最低だよ!」
「いや、イブラヒムさんは悪くないよ、フレン…!むしろ、さっきのはソウブレイズのことを気に掛けてのことだったんですよね?」
「…少し様子が気になって、つい声に出ただけですよ」
「なら、そういうことにしておきます。でも、大丈夫です!メイフ砂漠でウルトラビーストとバトルした時、最後にルカリオを手助けしてくれたから、少しずつかもしれないですけど心の距離は縮まっていると思います!」
「…そうっすか。とりあえず、変な空気にして申し訳ねぇ。気を取り直して、料理食べてください」
「はい。ありがとうございます、イブラヒムさん」
「…だから礼なんていいっすよ」
「イブちゃんだけズルい!というか、リゼ様からの感謝を断るなら私に譲ってよ!」
「いや、どう譲れってんだよ…」
ソウブレイズを気に掛けたイブラヒムにリゼがお礼を申すなか、それを羨ましがるフレンのイブラヒムに対する理不尽な扱いに一同は苦笑いを浮かべる
そうして、晩餐会の楽しい時間はあっという間に過ぎ、一同の空腹が十分に満たされたところで、ふとあることが何気なく気になったメリッサがリゼに尋ねる
「そういえば、ベルさんがジムを再開するまでの間、リゼさんはどうするの?」
にじレジ団とウルトラビーストの一件後、ベルモンドは街の警察と共に事件の後始末と今後の対策や方針等についてジムリーダーとして参加するため、しばらくジムを休業することとなった
そのため、まだジムへの挑戦を終えていないリゼは再開まで滞在を余儀なくされていた
「ジム戦に向けて、ポケモン達の特訓をするつもりです。出来ればトレーナーを相手にしたいところなんですけど、そう都合良く見つかるか分からないし、何人にも声を掛けるのはちょっと…。だから、メイフ砂漠の野生ポケモンを相手にしようかなって考えてます」
「そういうことでしたら、私達がリゼ様の特訓相手としてお付き合いしますよ!」
と、リゼのジム戦までの特訓相手としてフレンが進んで協力を申し出る
「い、いやいや…!気持ちはありがたいんだけど、それだとイブラヒムさんやメリッサさんにも迷惑が…」
「僕は全然大丈夫だよ。というか、今回の一件でトレーナーとして強くなりたいと思ってたところだから、リゼさんの特訓に付き合う形で色々勉強させてもらいたいです」
「俺も構わないっすよ。別に先を急いでるってわけでもないし、リゼさんとベルさんのジム戦も少し興味がありますしね」
「そうなんですか…?じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
「はい!遠慮なくどんどん甘えてください、リゼ様!」
役に立てることが嬉しいのか、積極的に好意を示してくるフレンにリゼが少し困った様子になるなか、イブラヒムがコウに尋ねる
「うづコウ達はどうする?リゼさんのジム戦まで一緒に残るか?」
「いや、俺は明日の午後には次の街へ出発しようと思ってる」
イブラヒムの問いに対し、さらっと唐突な出立を告げたコウにリゼ達は目を丸くする
「え…!?もう街を出るの…!?」
「りりむちゃんは知ってたの…?」
「うん!リゼがジム戦に挑む前に出発したいって!」
「もう少しゆっくりしていけばいいのに…。というか、なんでリゼ様がジム戦に挑戦する前…?」
「大した理由じゃないよ。同じ日に旅立ったリゼと笹木よりも一歩先に進んでおきたいってだけ」
「あ〜、そういうことね」
「え…?どういうこと…?」
「ライバルに対する競争心みたいなものですよ」
コウの出立理由に疑問符を浮かべていたフレンはアンジュに説明されて"あ〜!"と納得を示す
「でも、その前にせっかくの機会だからな。リゼ…俺とバトルしようぜ!」
「えぇ…っ!?い、いいけど…急にどうして…?」
「今を逃すと、俺とリゼがバトル出来る機会はポケモンリーグで当たった時になるだろうと思ってな。それに現時点で俺とリゼ、どっちが強いか確かめてみたいんだ。タッグバトル大会でバトルしたとは言え、1対1の勝負じゃなかったからな」
コウからバトルを申し込まれ、リゼは驚くもすぐ嬉しそうに笑みを浮かべる
「そういうことなら、喜んで受けて立つよ!私も今のコウさんとバトルしてみたい!」
「じゃあ、決まりだな!時間は明日の朝、ルールは3体のポケモンを1回ずつバトルさせて、その勝敗数を競う3回勝負!場所は…イブラヒム、お前の庭のバトルコートを借りてもいいか?」
「別にいいぞ」
「なら、そういうことで!言っとくけど、手加減はしないからな、リゼ!」
「私だって!コウさんには負けないよ!」
コウからのバトルの申し込みをリゼが快く承諾し、互いに意気込みを伝え合ったところで晩餐会はお開きとなった
*
翌日の朝…朝食を終え、ウォーミングアップを済ませたリゼとコウはイブラヒムの屋敷に設けられているバトルコートに向かい立つ
「リゼ様〜!頑張って〜!」
「コウく〜ん!ファイト〜!」
フレン達が声援を送るなか、審判を務めるイブラヒムが進行を始める
「それじゃあ、ルールは昨日決めた通り1対1の3回勝負だ。まずは1戦目、お互いにポケモンを出してくれ」
「お願い!サイドン!」
「いけ!ニドキング!」
イブラヒムの進行に従い、リゼとコウは1体目のポケモンにそれぞれサイドンと"ドリルポケモン":ニドキングを繰り出す
「ニドキング…!タッグバトル大会の時のニドリーノを進化させてたんだ…!」
「ああ。コーヴァスシティは進化の石を専門に取り扱ってる店もあってな。そこで買った"つきのいし"で進化させたんだ。ジム戦には相性が悪くて出せてやれなかったから、その分ここで存分に暴れさせてやらねぇと!」
「ニドォォッ!」
「やる気は十分みたいだね…!私達も全力でいくよ!サイドン!」
「サァイッ!」
両者ポケモンと共に気合いを入れたところで、1戦目の勝負が始まる
「それじゃあ、始め!」
「サイドン!"ドリルライナー"!」
先手を取ったのはリゼ…毒タイプのニドキングに効果抜群となる地面タイプの技"ドリルライナー"をサイドンに繰り出させる
「ニドキング!"メガホーン"!」
対するコウの指示でニドキングは"メガホーン"を繰り出し、突っ込んで来るサイドンに真っ向から挑む
「サァイッ!」
「ニドォッ!」
2体は力強くぶつかり合い、それによって激しい衝撃が発生し、空気を震わせる
「どっちも凄い威力…!」
「パワーは互角みたいだね…!」
「やるなぁ、リゼ!ニドキング、"どくづき"!」
「サイドン!こっちは"アームハンマー"!」
サイドンとニドキングのパワーにアンジュ達が目を見張るなか、リゼとコウは互いに相手を押し切れないと判断して次の攻撃の指示を出す
サイドンは"アームハンマー"、ニドキングは"どくづき"を繰り出し、互いの顔面へと叩き込む
「サイィ…ッ!」
「ニドォ…ッ!」
「パワーも相当なものだったけど、ニドキングに負けずとも劣らない根性持ってるな…!なら、今度は"にどげり"だ!」
顔面に技が炸裂しても怯まず、互いを睨み合うサイドンとニドキングを称賛するコウは続けてニドキングに"にどげり"を指示する
「ニドォッ!」
「サァイ…ッ!?」
ニドキングはサイドンの左足へまず一撃目を繰り出し、怯んで隙が出来たところへ二撃目を腹へ叩き込んで押し飛ばす
「サイドン!大丈夫…!?」
「サァイ…ッ!」
「よし!今度はこっちが仕掛けるよ!"いわなだれ"!」
リゼの指示でサイドンは"いわなだれ"を繰り出し、無数の大岩がニドキングへと雪崩れ込む
「ニドキング!"メガホーン"で突っ込め!」
迫る"いわなだれ"を正面から突破しようとコウの指示でニドキングは"メガホーン"を繰り出し突っ込んで行く
雪崩れ込む大岩を軽々と粉砕しながらニドキングは突き進み、それを抜けた先にいるであろうサイドンへの攻撃を狙う
「ニド…ッ!?」
「なっ…!?」
だが、"いわなだれ"を抜けた先にサイドンの姿はなかった
「今だよ、サイドン!"ドリルライナー"!」
その時、リゼの指示が飛んでニドキングの右後ろから現れたサイドンが"ドリルライナー"を炸裂させる
「ニドォ…ッ!?」
「ニドキング…っ!?"いわなだれ"の陰に隠れて背後を取ったのか…!」
コウはサイドンがニドキングの背後から現れた理由をすぐに理解する
サイドンは"いわなだれ"を繰り出した後、それを隠れ蓑にして前進することで"メガホーン"を駆使して突破して来たニドキングをやり過ごし、その背後を取ったのだ
「決めるよ、サイドン!"すてみタックル"!」
効果抜群の大ダメージを受けて吹き飛んだニドキングを畳み掛けようと、リゼの指示でサイドンは"すてみタックル"を繰り出し突っ込む
「頑張れ、ニドキング…!"だいちのちから"!」
絶体絶命のピンチでもコウは諦めず指示を出し、その声に鼓舞されたニドキングは傷付いた体を根性で動かし、"だいちのちから"を繰り出す
「サイィ…ッ!?」
「サイドン…っ!?」
「今だ、ニドキング!"にどげり"!」
地面から噴き出すエネルギーが襲い掛かる"だいちのちから"が直撃して大ダメージを受けたサイドンは大きく体勢を崩し、そこへ更にニドキングの"にどげり"が炸裂する
「サ…イィ…」
「サイドン、戦闘不能!ニドキングの勝ち!」
サイドンは力が抜け落ちるような声を最後に倒れ、イブラヒムは戦闘不能の判定を告げる
「よっし!よくやったぞ、ニドキング!」
「ニドォ〜!」
「…戻って、サイドン。負けちゃったけど、良いバトルだったよ。ゆっくり休んでね」
まずは1戦目…勝利したコウも敗北したリゼも互いに奮闘した自分のポケモン達を褒め労う
「まずはコウ君が1勝だね!」
「どっちが勝ってもおかしくない、良い勝負だった」
「流石はコウさん、凄く強くなってるね…!」
「リゼもな。ここまでジムバッジを手に入れて来ただけはある」
1戦目を経て、リゼとコウがヤオウシティでのタッグバトル大会以来からのお互いの成長を感じ合うなか、イブラヒムが続く2戦目に向けて進行を行う
「それじゃあ、2戦目を始めるぞ!お互い、次のポケモンを!」
「俺の2体目はこいつだ!いけ、リングマ!」
イブラヒムに促され、コウは2体目のポケモンに"とうみんポケモン":リングマを繰り出す
「リングマ…!初めて見る子だ…!」
「オウマシティの北にあるマナナツの森でゲットしたんだ!言っとくけど、こいつは強いぞ!そっちは相性の良いルカリオで来るか?」
「…いや、私はこの子でいくよ!お願い!バタフリー!」
コウの予想とは裏腹に、リゼは2体目のポケモンにバタフリーを繰り出す
「バタフリー…?覚えそうな技的にも、リングマに相性が良いとは言えないと思うんだけど?」
「セオリー通りに行くならたしかにルカリオなんだけど、コウさんのことだから何か対策を用意してるんじゃないかと思って」
「おっと、バレてたか…」
「流石に誘導しようとしてるのが見え見えだよ。それにタイプ相性だけがバトルの有利不利を決めるわけでもないよ!」
「そっちもそっちでちゃんと狙いがあるってことか?いいぜ、やってやるよ!」
互いの思惑が交錯するなか、2戦目のバトル開始が宣言される
「それじゃあ、バトル始め!」
「リングマ!"きりさく"攻撃!」
バトル開始と同時、コウの指示でリングマが"きりさく"を構えて突っ込んで行く
「バタフリー!上昇して"ぎんいろのかぜ"!」
リゼの指示が飛び、バタフリーは空高く飛んでリングマの"きりさく"を躱し、反撃に"ぎんいろのかぜ"を繰り出す
「グマ…ッ!」
「いいよ、バタフリー!その高さを維持しながら"エアスラッシュ"!」
"ぎんいろのかぜ"の直撃を受けているリングマに、リゼは更にバタフリーに"エアスラッシュ"を繰り出させる
「そういうことか…!リングマ!"シャドークロー"で防御だ!」
コウはリゼの狙いを察すると同時に、リングマの足の速さでは攻撃を避けられないと判断して"シャドークロー"を駆使した防御を指示し、リングマは"シャドークロー"を発動させた両腕を突き出して"エアスラッシュ"を受け止める
「バタフリー!連続で"エアスラッシュ"!」
守りに入ったリングマを見たリゼの指示で、バタフリーは"エアスラッシュ"を繰り出し続ける
「グゥ…マァ…ッ!?」
リングマは必死に"エアスラッシュ"を受け止め続けるが、その絶え間ない攻撃に耐え切れず、防御が崩れて技の直撃を受けてしまう
「おお…っ!リゼ様のバタフリーが一方的に攻めてる!」
「逆に卯月さんの方は攻めあぐねてるみたいだね」
「リングマは自慢の爪と強靭な肉体を活かした戦い方が得意なポケモンだから、もしかしたら覚えてる技に射程のある技が無いのかもしれないね」
コウの苦しそうな表情から劣勢であることを指摘するメリッサに、アンジュはそう推測を述べる
「もしかして、リゼ様がバタフリーを選出したのはそれを狙って…?」
「そういう意図はあったと思うよ」
「リゼって意外と容赦ないんだね…」
「リゼはバトルのこととなると本気だし、手加減はしないよ。それに、たとえ完封試合になろうと相手に全力を尽くさないと返って失礼だからね」
りりむ達が意外に感じたリゼのバトルに対する姿勢についてアンジュが話すなか、コウは険しい顔つきでバトルに集中していた
(あの技を決めれば勝機はある…!けど、外した時のリスクがデカい…!仕掛けるタイミングをちゃんと見極めねぇと…!)
「打つ手がないなら、このまま決めちゃうよ!バタフリー!"サイケこうせん"!」
勝利を掴むための絶好の機会が訪れる瞬間をコウが待つなか、リングマには打つ手が無いと見たリゼは畳み掛けようとバタフリーに"サイケこうせん"を繰り出させる
「ここだ…!リングマ!"はかいこうせん"!」
その時、ここがそのタイミングと見たコウの指示でリングマは"はかいこうせん"を繰り出し、バタフリーの"サイケこうせん"にぶつける
「フ…フリィィィ…ッ!?」
「バタフリー…っ!?」
技のぶつかり合いは"はかいこうせん"に軍配が上がり、"サイケこうせん"を押し切られたバタフリーはそのまま直撃を受けて地上へと落下していった
「あのリングマ…!"はかいこうせん"を覚えてるのか…!」
「というか、ちゃんと飛んでる相手に通用する技あるんじゃん…!なんでもっと早く使わなかったの…!?」
「いや、"はかいこうせん"には使った後にその反動で動けなくなる欠点がある…!だから迂闊には使えなかったんだと思う…!」
リングマが"はかいこうせん"を覚えていることに驚くと共に、何故このタイミングで使ったのか疑問に思うフレン達にアンジュが推測を述べるなか、リゼがバタフリーに呼び掛ける
「バタフリー…!大丈夫…!?」
「フ…フリィ…!」
リゼの呼び掛けにバタフリーはなんとか立ち上がるが、"はかいこうせん"のダメージは凄まじく、すぐには飛び立てないほど疲弊していた
「リングマ!反動が切れたら一気に勝負を決めるぞ!」
「グマァ…!」
「バタフリー…!頑張って…!」
「フリィ…!」
疲労困憊のバタフリーと反動で動けないリングマ…どちらが先に動けるか一同は固唾を呑んで見守る
「グマァ…ッ!」
「よし…!リングマ!"きりさく"攻撃だ!」
先に動いたのはリングマ…コウの指示を受けて"きりさく"を構え、バタフリーへと突っ込む
「マズいよ…!このままだとバタフリーが…!」
「反撃を…!いや、それでも"きりさく"を駆使して強引に突破される…!」
「バタフリー…っ!」
アンジュ達は息を呑み、リゼは祈り信じることしか出来ないなか、リングマの"きりさく"がバタフリーに振り下ろされる
「フ…リィィィッ!!」
「「「「「「「…っ!?」」」」」」」
だが、誰もがバタフリーの敗北が決まったと思ったその時、バタフリーが雄叫びを上げたと同時にリングマの動きが止まった
「グ…マァ…ッ!?」
「リングマの動きを止められた…!?この技はまさか…!」
「"サイコキネシス"…!バタフリー…!あなた、"サイコキネシス"を覚えたのね…!」
絶体絶命の土壇場でバタフリーが"サイコキネシス"を習得し、コウ達は驚き、リゼは歓喜の声を上げる
「フ〜リィィッ!」
そして、バタフリーは力を振り絞り"サイコキネシス"で捕らえたリングマを吹き飛ばす
「グマァ…ッ!?」
「リングマ…っ!」
「今だよ、バタフリー!最大パワーで"エアスラッシュ"!」
「フリィィィッ!!」
このチャンスを逃すまいと、リゼの想いに応えてバタフリーは渾身の"エアスラッシュ"を繰り出し、リングマに炸裂させる
「グマァァァ…ッ!?」
リングマは"エアスラッシュ"の直撃と共に発生した爆発によって吹き飛ばされ、そのまま仰向けに地面へと倒れ伏した
「リングマ、戦闘不能!バタフリーの勝ち!」
「やった!やったね、バタフリー!凄かったよ!」
「フリィ〜!」
イブラヒムから勝利が判定され、リゼはバタフリーに抱き着いてその奮闘を目一杯に褒め称える
「よくやったな、リングマ。今回は上手く活躍させてやれなくて悪い。次のジム戦で挽回させてくれ」
コウもリングマをボールへ戻し、奮闘を労うと共に反省と次の目標への意気込みを告げる
「バタフリーもリングマもよく頑張った〜!」
「そうだね。でも、まさかあんなタイミングで新しい技を覚えるなんて…」
「ポケモンバトルでは最後まで何が起こるか分からない。そのことを改めて実感させられる良い勝負だったね」
アンジュ達が勝負の感想を口にするなか、リゼとコウの準備が整ったのを確認してイブラヒムが進行を再開する
「それじゃあ、次で最後だ。お互いにポケモンを!」
「お願い!エンペルト!」
「いけ!サーナイト!」
勝敗を決する3戦目のポケモンに、リゼとコウはそれぞれエンペルトとサーナイトを繰り出す
「エンペルトとサーナイトなら、フェアリータイプに相性が良い鋼タイプを持つエンペルトが有利ですね!」
「でも、コウ君のサーナイトにはメガシンカがあるよ!」
「そうだね。相性で有利を取っていても油断は出来ない」
アンジュ達も見守るなか、いよいよ最後のバトルが始まる
「それじゃあ、バトル始め!」
「エンペルト!"うずしお"!」
「サーナイト!"マジカルシャイン"!」
リゼとコウはバトル開始と同時に指示を飛ばし、エンペルトとサーナイトは繰り出した"うずしお"と"マジカルシャイン"をぶつけ合う
ぶつかり合った2つの技は威力が互角で押し切れず、最後には相殺されて弾け飛んだ
「サーナイト!"シャドーボール"!」
「エンペルト!"はがねのつばさ"!」
続けて、サーナイトは"シャドーボール"で攻撃するが、エンペルトは繰り出した"はがねのつばさ"でそれを一刀両断して突破し、そのままサーナイトへ突っ込む
「よし!このまま…!」
「甘いぜ!サーナイト!"あやしいひかり"!」
"はがねのつばさ"を決められるかに思えたリゼだったが、コウの指示でサーナイトが"あやしいひかり"を繰り出し、エンペルトは至近距離で直視してしまう
「エンペ〜…?」
「エンペルト…!?しっかりして…!」
エンペルトは"あやしいひかり"の影響を受けて混乱状態になり、正気に戻そうとリゼが呼び掛ける
「サーナイト!"サイコキネシス"!」
混乱状態で隙だらけのエンペルトをサーナイトは"サイコキネシス"で捕え、そのまま勢いよく吹き飛ばす
「エンペ…ッ!?」
「よし!続けて"シャドーボール"!」
吹き飛ばしたエンペルトに、サーナイトは立て続けに"シャドーボール"で攻撃する
「…ッ!?エンペ…ッ!」
エンペルトは"シャドーボール"の直撃を受けるが、その衝撃で混乱状態が解けて正気を取り戻す
「よし、混乱が解けた!エンペルト、反撃するよ!"渦纏うドリルくちばし"!」
混乱が解けたエンペルトは繰り出した"うずしお"に"ドリルくちばし"で突っ込み、それを纏わせて攻撃する合体技"渦纏うドリルくちばし"でサーナイトへ反撃する
「えぇ…っ!?何あの技…!」
「出た!リゼのエンペルト自慢の合体技!」
「面白いこと考えるな…!威力も相当なものだろうから、まともに食らうと流石にマズいな…!サーナイト!"サイコキネシス"で食い止めろ!」
初めて見るフレン達が驚きの声を上げるなか、それを面白いと感じると同時に脅威と捉えたコウはサーナイトに"サイコキネシス"を指示する
"サイコキネシス"を繰り出してすぐにとはいかなかったが、サーナイトはなんとか踏ん張って直撃前に"渦纏うドリルくちばし"を食い止めた
「う、嘘…!?」
「あんなに凄い技を止めちゃった…!?」
「よし…!そのまま軌道を逸らして…!」
"渦纏うドリルくちばし"そのものに続き、それをギリギリとは言え止め切ったサーナイトの強力な"サイコキネシス"にフレン達の驚愕が止まらないなか、コウは押し戻すにはパワーが足りないと見て、軌道を少し逸らすことで技を外させるようサーナイトに指示を出そうとする
「エンペルト!"ドリルくちばし"で突っ切って!」
だが、その前にリゼの指示が飛び、直後にエンペルトが"ドリルくちばし"で止められた"うずしお"を突き破り、そのままサーナイトに炸裂させる
「サナァ…ッ!?」
「サーナイト…!"うずしお"の中のエンペルトまでは止め切れてなかったか…!」
"渦纏うドリルくちばし"の勢いこそ止められたものの、その中にいたエンペルトにまで"サイコキネシス"の力が届かなかったことを知り、コウは判断の誤りを悔いる
「流石はコウさんのサーナイト…!あの技が止められるなんて思ってなかったからビックリしちゃった…!」
「驚いたのはこっちだよ…!ダイマックスやメガシンカも無しにあれだけの威力が出せる方法を編み出してるなんたな…!でも、もうここから先は今みたいにはいかないぜ!俺もサーナイトも全力でいくからな!」
互いに称賛の言葉を贈るなか、コウは左腕に装着したメガリングに収まっているキーストーンに指を触れる
瞬間、輝き出したキーストーンからエネルギーが溢れ出し、それに呼応してサーナイトの持つメガストーンからも同様のエネルギーが溢れ出し、それらが繋ぎ合って生まれた光に包まれたサーナイトはメガシンカし、メガサーナイトへと姿を変える
「使ってきたね、メガシンカ…!エンペルト!油断しないで!」
「エンペッ!」
リゼとエンペルトは気を引き締め、改めてコウとメガサーナイトとのバトルに臨む
「サーナイト!"シャドーボール"!」
「エンペルト!"はがねのつばさ"!」
バトルが再開し、最初と同じシチュエーション…メガサーナイトが"シャドーボール"を繰り出し、それをエンペルトが"はがねのつばさ"で突破しようとする
だが、メガシンカによる特殊攻撃力の大幅な強化で威力を増したメガサーナイトの"シャドーボール"は強力で、エンペルトは先程のように"はがねのつばさ"で両断し突破するには至れず、ダメージは抑えられたものの、拮抗した技のぶつかり合いによる小爆発に呑まれるに終わった
「分かってはいたけど、威力がさっきまでより数段増してる…!なら、エンペルト!"れいとうビーム"!」
メガサーナイトの強さを改めて実感すると共に、リゼはエンペルトに"れいとうビーム"を繰り出させる
「無駄だぜ!サーナイト!"サイコキネシス"!」
それに対し、コウの指示でサーナイトは"サイコキネシス"を発動し、エンペルトの"れいとうビーム"を瞬時に掌握して跳ね返す
「"サイコキネシス"が強力な技とは言え、あんなにあっさりと…!」
「それに"サイコキネシス"の勢いが乗って威力も増してるよ…!」
「リゼ様…!エンペルトに回避の指示を…!」
一瞬の抵抗も許さず相手の技を掌握してみせたメガサーナイトの強力な"サイコキネシス"にアンジュ達が驚くなか、"れいとうビーム"を跳ね返されて窮地に立たされているはずのリゼはそれを予期していたかのような笑みを浮かべた
「そう来るよね…!エンペルト!"はがねのつばさ"!」
リゼの指示を受け、エンペルトは"はがねのつばさ"を発動させた両腕を盾のように構えつつ、跳ね返された"れいとうビーム"に突っ込む
「自分から突っ込んで行った…!?」
「も、もしかしてご乱心に…!?」
「いや、よく見てフレン…!」
リゼがヤケになったのかと心配するフレン達にメリッサが指を指したそこには、"れいとうビーム"を受け止めているにも関わらず、凍りついているのは"はがねのつばさ"を発動させている腕のみに留まり、前進するエンペルトの姿があった
「えぇ…っ!?やられてない…!?」
「どうして平気なの…!?」
「平気ってわけじゃないと思うけど、"はがねのつばさ"は鋼タイプの技だから、それを防御に使うことで相性が今一つの"れいとうビーム"と"サイコキネシス"の威力に加えて、凍りつかせる力も抑えてる…!」
「それにエンペルトは水・鋼タイプだから、ダメージもそれほど大きくなっていない…。それを計算に入れての強行突破を狙ったってことですか?」
「いや、ただの強行突破ってわけでもなさそうだね…!」
メリッサの指摘にアンジュが意味深に答えるなか、エンペルトが"サイコキネシス"で跳ね返された"れいとうビーム"を突破する
そして、両腕に発動させる"はがねのつばさ"は"れいとうビーム"による分厚い氷がコーティングされて氷の刃と化していた
「何あれ…!?」
「相手の攻撃を利用して技を強化させたんだ…!」
「エンペルト!いっけぇぇぇ!!」
アンジュ達が驚くなか、リゼの熱い叫び声を背中に受けてエンペルトは氷の刃と化した"はがねのつばさ"をメガサーナイトに炸裂させる
「サナァァ…ッ!?」
「…っ!踏ん張れ、サーナイト!"サイコキネシス"!」
コウはアンジュ達と同じくリゼの戦法に驚かされ、メガサーナイトが大ダメージを受けて歯を食いしばるが、リゼに負けたくない強い気持ちが込み上がり、無理を承知でメガサーナイトに指示を飛ばす
そして、その気持ちを受け取ったメガサーナイトはなんとしても応えようと、吹き飛ばされながらも負けじと"サイコキネシス"を繰り出し、エンペルトを勢いよく吹き飛ばす
「エンペ…ッ!?」
「エンペルト…っ!」
「サナァ…!」
「サーナイト…!立てるか…!?」
リゼとコウに呼び掛けられ、エンペルトとメガサーナイトは肩で息をしながら傷付いた体を起き上がらせる
(エンペルトも体力がもう限界…!攻撃も次が最後になる…!なら…!)
「エンペルト!この一撃で決めるよ!」
エンペルトの限界を察したリゼは左腕に装着したZリングを露わにする
「あれは…!?」
「Zリング…!ということは、まさか…!?」
フレン達とコウが驚愕の声を上げるなか、リゼは左から右へと水が流れていく様子を彷彿させる"みずタイプのゼンリョクポーズ"を取り、直後に溢れ出したZパワーがエンペルトへと流れてその体に纏われる
「エンペルト!"スーパーアクアトルネード"!」
リゼが技を叫ぶと、エンペルトはフィールド一帯を膨大な水で溢れ返させ、その中にメガサーナイトを呑み込む
そして、水流を身に纏って突撃し、巨大な渦潮を引き起こすZ技:"スーパーアクアトルネード"をメガサーナイトに炸裂させる
「サ…ナァ…ッ!?」
「サーナイト…っ!"マジカルシャイン"で反撃するんだ…!」
"スーパーアクアトルネード"の巨大な渦潮の激流にメガサーナイトはコウの指示を受け、苦しみながらも"マジカルシャイン"を繰り出し反撃を試みる
だが、メガサーナイトの"マジカルシャイン"は"スーパーアクアトルネード"の巨大な渦潮を打ち破ることはおろか、互角に押し返すことすら叶わず、それに阻まれてエンペルトに攻撃が届くこともなかった
(くっ…!流石にメガシンカでも、バトル中に一度切りだけ放てる超強力なZ技にはレベルに大きな差がないか、絶大な威力を誇る大技でもない限り対抗出来ないか…!ここまでか…!)
Z技をまともに食らい、それに抗う術が無い以上はエンペルトを倒すことは出来ず、まずメガサーナイトの戦闘不能は避けられないとコウは悔しながらも自身の敗北を悟った
「サ…ナァ…ッ!」
だが、巨大な渦潮の激流の中でコウの諦めた姿を目をしたサーナイトは最後の力を振り絞る
(…っ!今、空間が歪んだような…?)
目を張っていたリゼがそう違和感を感じるなか、しばらくして"スーパーアクアトルネード"の攻撃が収まり、膨大な水が引いたフィールドには息を切らしながらも立つエンペルトとメガシンカが切れて倒れたサーナイトの姿があった
「サ…ナ…」
「ジムリーダーの加賀美さんや長尾さんとのバトルでも目にしたけど、Z技の威力は凄いね…」
「うん…。メガシンカしたポケモンのパワーを上回っちゃうんだもん…」
メガシンカの力を以ってしても対抗出来なかったZ技の凄まじい力にフレン達が唖然とするなか、意識こそあれど立ち上がることが出来ないサーナイトを見て、イブラヒムが判定を下す
「サーナイト!戦闘ふ…っ!?」
だが、その時だった
エンペルトの頭上の空間が歪み出し、そこに複数の穴のようなものが展開される
「え…っ!?」
「これは…まさか…!?」
「まだ終わってない…っ!エンペルト…っ!避けて…っ!」
突然のことにフレン達が驚き、それが攻撃の兆候だとアンジュやイブラヒムが気付くなか、リゼはエンペルトに回避するよう叫ぶ
だが、既に体力が限界だったエンペルトはまともに動くことが叶わず、直後に歪みの穴から降り注ぐエネルギーの塊の雨の直撃を受ける
「エンペルト…っ!?」
心配してリゼが声を上げるが、攻撃が止み、巻き上がった土煙が晴れた先でエンペルトはぐったりと倒れ伏していた
「…エンペルト、サーナイト、共に戦闘不能。よってこの勝負、引き分け」
まさかの結末に全員が呆気に取られるなか、いち早く状況を飲み込んだイブラヒムは静かに勝敗の判定を告げる
「さ、さっきは何が起きたの…?」
「さっきのは"みらいよち"…。未来に攻撃を飛ばして、時間差で相手を襲うエスパータイプの技…」
「未来に攻撃を飛ばす…?もしかして、エンペルトのZ技を受けてる時に…?」
「"スーパーアクアトルネード"の中からじゃ"マジカルシャイン"は通用してなかった…。多分、他の技も通用はしなかったと思う…。だから、あの状況からでも反撃するために、あの時に新しく…」
「リゼのバタフリーがコウ君のリングマとバトルした時に"サイコキネシス"を覚えたみたいに、サーナイトもコウ君に応えようと覚えたんだね…!」
しばらくして、呆然とした意識から戻ってきたフレンの疑問にアンジュが分析し答えるなかで、一同は先程の出来事がコウのためにサーナイトが意地を見せた結果によるものだと理解する
「…ポケモンバトルは最後まで何が起こるか分からない。最後はサーナイトにしてやられちゃったな。お疲れ様、エンペルト。よく頑張ったね」
リゼはコウとサーナイトが絆を育んでいたからこそもたらしたこの結果を清々しい気分で受け入れ、奮闘したエンペルトに労いの言葉を掛けてボールに戻す
「ありがとう、サーナイト…。お前のおかげでなんとか引き分けに持ち込めた…。ごめんな…」
コウはサーナイトの下へ歩み寄ってその体を抱き起こし、感謝と共に謝罪を口にする
「俺、Z技に太刀打ち出来ないって理解した瞬間に勝負を諦めてた…。お前は最後まで勝とうとしてたってのにな…。その上、リゼには本気でバトルする、なんて言っておきながら勝ち筋が見えなくなった途端、最後まで全力を尽くさないなんて…。旅を通して精神的に成長した分、初心を忘れかけてたみたいだ」
最後まで勝つことを諦めない…トレーナーとしてバトルに臨む上でその気持ちを失いかけていた自身をコウは鼻で笑う
「でも、もう大丈夫だ。俺はこれからの、どんなバトルでも最後まで諦めずに戦う。俺に応えようとしてくれるお前達に恥じないバトルをするよ」
「サナ…!」
コウは固い決意と共にそう宣言し、それを聞き届けたサーナイトは嬉しそうな表情を浮かべて深く頷いた
「コウさん、今日はありがとう。ジム戦前に良いバトルが出来たよ」
「それは何よりだな。俺は最後のバトルが不甲斐なかったって猛省してるところだ。個人的に良いバトルをしたとは言えないけど、初心を思い出せた価値のあるバトルだった」
心残りはあれど、互いに得るものがあったバトルで終わり、リゼとコウは相手への感謝と称賛の意を込めた握手を交わす
「リゼ、今回は引き分けに終わったけど、俺は正直お前に負けたと思ってる。だから、次にバトルする時は必ず勝つ!」
「うん!私も次はコウさん達に勝ってみせる!そのためにも、まずはコーヴァスジムでベルモンドさんに勝つよ!」
「ああ、頑張れよ!」
コウとの再戦を誓い、次こそ勝利する意気を伝え合ったリゼは6つ目のジム戦となるコーヴァスジムに向けて闘志を燃やす
リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、イーブイ、バタフリー
サイドン、ルカリオ、ソウブレイズ
アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ
卯月コウ
手持ち:エースバーン、サーナイト、ラプラス
ニドキング、リングマ
魔界ノりりむ
手持ち:ジュペッタ
イブラヒム
手持ち:マンムー、ボーマンダ、グソクムシャ
サンダース、ドラピオン、コータス
フレン・E・ルスタリオ
手持ち:バシャーモ、パルスワン、ラッキー
フライゴン、ニューラ、パッチラゴン
メリッサ・キンレンカ
手持ち:エモンガ、スピアー、イワパレス