「ん〜…っ!いい天気…!」
コーヴァスジムジムリーダー:ベルモンドとのジム戦に勝利し、無事に6つ目のジムバッジとなるコーヴァスバッジを手に入れたリゼ
その翌日の朝…イブラヒムの屋敷で一晩過ごし、眠りから覚めた彼女は陽の光を浴びながら体を伸ばす
「リゼ、もう起きてる?」
コンコン…と、扉のノックと一緒にリゼの起床を確認しに来たアンジュに声を掛けられる
「ちゃんと起きてるよ、アンジュ。おはよう」
「おはよう。朝食もう出来てるみたいだから、冷める前に下りて来てね」
「うん、分かった!」
アンジュを見送り、リゼは窓の外に広がる景色に目を向ける
「色々あったけど、ここまであっという間の旅だったなぁ」
コーヴァスシティの次はリゼが何度も訪れたことのあるヘルエスタシティの隣街…シーズシティ
つまり、このニジサンジ地方を一周したということなる
その感慨深さからリゼはこれまでの旅を思い出を振り返った
*
「リゼ様、お口に合いますか?」
「うん。今日も美味しいよ、フレン」
「そ、そんな…!私の料理を毎日食べたいだなんて…!」
「そこまでは言ってないかな…?」
「フレンさんは相変わらず想像力豊かですね」
「頭が花畑なだけっすよ」
「前向きなのは良いことじゃない?」
しばらくして身支度を整えたリゼは屋敷のダイニングルームでアンジュ達と共にフレンが用意した朝食に舌鼓を打っていた
「全員、もうそろそろ朝食終わりそうだから今日の予定を改めて確認しますよ。徒歩でエニカラ雪山を安全かつ最速で越える方法は麓の脇道を通ること」
「超えた先、エニカラ雪山とシーズシティの間にある峡谷の橋を渡り切ったところで野宿。明日の朝にそこを発てば、昼にはシーズシティに着く…でしたよね?」
「そうです。ただ、雪山を超えてから渓谷までの道では野生のポケモンが通行人を襲うことも珍しくないんで、街を出る前に十分な買い出しをした方がいい。なんで、出発は今から大体1時間後くらい。それまでに出発の準備を済ませといてください」
シーズシティへの出発に向けてイブラヒムが予定の確認を軽く済ませたところで、リゼが"そうだ…!"と不意に声を上げ、発言の許可を求めるように手を上げる
「私、コーヴァスシティを出る前に寄りたいところがあるんですけど、いいかな?」
「それって時間掛かり…」
「勿論大丈夫です!リゼ様がお望みなら何処へだって何時間だって付き合います!」
「リゼ、一応聞くけど何処に行きたいの?」
イブラヒムの言葉を遮ってフレンが全力で肯定するなか、リゼはアンジュにその詳細を尋ねられる
「実はイーブイのために進化の石が欲しくて。コーヴァスシティは鉱石関係の品揃いが良いことで評判だから、買い出しのついでに寄らせてもらえたらなって」
「イーブイの進化…!」
「たしかに、イーブイ進化は進化の石によるものが多いからね」
「まあ、そういうことならいいっすよ」
「ありがとうございます!」
「でも、どうしてジム戦の前じゃなく今なんですか?」
イーブイを進化させていればジム戦がもっと楽になっていたのでは?…と、ふと疑問に思ったメリッサがリゼに尋ねる
「実は私、イーブイをグレイシアに進化させようと思ってるんです。でも、グレイシアは氷タイプのポケモンだから、ジム戦前に進化させちゃうとタイプ相性で不利になっちゃうから…」
"あ〜"と、メリッサの問いに対するリゼの回答を聞いたアンジュ達が納得の声を上げたところで一同は朝食を終え、出発の準備を整えてイブラヒムの屋敷を出ると買い出しとリゼの目的を達成するため街の宝石店へと向かった
*
「えぇ…っ!?"こおりのいし"無いんですか…!?」
コーヴァスシティで随一の宝石店へ訪れたリゼ達だったが、目当ての"こおりのいし"は運悪く品切れており、リゼは残念そうな声を上げる
「"こおりのいし"はエニカラ雪山の中腹辺りで採れるんだが、生憎と今は山に登るのが困難でね」
「たしか、昨日から雪山の天候が荒れてるんだっけ?」
「ああ、近年稀に見る猛吹雪みたいでな…。それに聞いた話じゃ山の様子が少し変らしい」
「と言うと…?」
店主の意味深な発言にイブラヒムが尋ねる
「なんでも、雪山の中腹辺りで確認されてる野生のポケモン達が山の麓近くまで下りて来てるそうなんだ」
「それの何が変なの…?」
「エニカラ雪山に生息しているほとんどは寒さに耐性のあるポケモンだ。吹雪は当然、猛吹雪の中でも生きていける」
「そのポケモン達が猛吹雪が発生したと同時に本来の生息域から下りて来ている…。つまり、猛吹雪以外の何かが原因で下りざるを得なくなったということですね」
フレンの疑問に答えるように、イブラヒムとアンジュが店主から聞いた情報を基にそう推測を述べる
「そういうこった。まあ、早急に"こおりのいし"が欲しいならシーズシティやヘルエスタシティの店にも行ってみるといい。幸い、雪崩も起きてないから、今ならこの街からシーズシティへ続く道が通れる」
「分かりました。ご親切にありがとうございます」
店主の助言を聞き、リゼ達は次なる街:シーズシティへ向けてコーヴァスシティ南側から続く道路へ向かう
*
「わぁ…!あのおじさんが言ってた通り、山の上の天気は酷そうだね…!」
コーヴァスシティの南出口を出た先…シーズシティ手前の平原に通じるエニカラ雪山の麓に沿った道路を歩くなか、雪山を見上げたメリッサが言葉を溢す
「イーブイの進化はしばらくお預けかなぁ…。あの山の中腹辺りにあるのになぁ…」
「リゼ…?頼むから、エニカラ雪山へ"こおりのいし"を探しに行くなんて言い出さないでよ…?」
「そうですよ、リゼ様!もしものことがあったら大変です!どうしてもと言うなら、イブちゃんに取って来させますから!」
「いや、なんで俺が行くんだよ。つーか、そこはお前が行くんじゃねぇのかよ。いや、危ねぇから行かせねぇけどな?」
「わ、分かってるって…!流石に私もそんなことしないよ…!」
心配するアンジュとフレンにリゼが少し決まりが悪そうに苦笑いを浮かべるなか、あるものを目にしたメリッサが声を上げる
「あっ…!見て、あそこ…!」
「あれは…!イノムーにモスノウ、バイバニラもいる…!」
「この辺りじゃ見ないポケモン達だな…。こいつらが、あの店主が言ってた雪山の上から降りて来たポケモン達か…!」
メリッサが指を差す先には、少し怯えた様子で木の陰に隠れながらこちらを覗く雪山に生息している多くのポケモン達の姿があった
「なんだか怯えてる…。どうしたんだろう…?」
「やっぱり俺とアンジュさんの予想通り、雪山の上で何かあったんだろうな」
怯える様子のポケモン達から、やはり雪山の上で何かが不穏なことが起きていると一同も不安に思い始める
「ベアァッ!」「マニュッ!」
「オコォッ!」「リキィッ!」
その時、進む先からポケモンの荒れ狂うような鳴き声が聞こえて一同が目を向けると、そこには数匹のツンベアーとマニューラ達が数匹のオコリザルとゴーリキー達と睨み合っていた
「なんだか、一触即発って雰囲気じゃない…?」
「おそらく、麓近くを縄張りにしてるオコリザル達が雪山の上から降りて来たツンベアー達に侵されたと思って怒ってるみたいだな…!」
「ベアッ!」
「オコォッ!」
イブラヒムが状況を分析するなか、それぞれの先頭に立つツンベアーとオコリザルが互いに攻撃を仕掛けたのをきっかけに、両陣営によるバトルが勃発する
「イノォ…!?」「バニィ〜…ッ!?」
ツンベアーとオコリザル達の激しい争いは周囲にも被害をもたらし、イノムーやバニバニラ達は怯えてその場から逃げ惑う
「大変…!このままだと周りのポケモン達にも危険が…!」
「強引にでも、早く止めないとですね!」
「ったく、早速厄介ごとかよ…!」
「僕も手伝うよ!」
「なら、私は周りのポケモン達の安全確保を…!」
「ギャーオ…」
「「「「「…っ!?」」」」」
ツンベアー達の争いを止めるため、リゼ達がそれぞれに動こうとしたその時だった
雪山の方から微かに、しかし無視出来ない存在感のあるポケモンの鳴き声が聞こえ、一同は思わず振り返る
ポンッ!
と、更に直後でリゼのモンスターボールの1つが勝手に開き、そこからソウブレイズが飛び出す
「ブレイ…!」
「「「「…っ!?」」」」
「ソウブレイズ…!?」
突然出て来たことに一同が驚くなか、ソウブレイズはリゼを一瞥すると雪山に向かって駆け出した
「ちょっ…!?ソウブレイズ…!勝手に離れちゃ…!」
「ブレイッ!!」
「…っ!?」
呼び止めようとするも、ソウブレイズに荒々しい声を上げられリゼは押し黙ってしまう
「ソウブレイズ…?」
「……」
リゼの心配する声にソウブレイズは何も応えずに目を逸らし、再び雪山へ向かって駆け出して行った
「え…!?なに…!?どういうこと…!?」
「分からない…!でも、放ってはおけない…!私、追い掛ける…!」
「待って、リゼ…!1人は危険だよ…!」
ソウブレイズの行動に一同が困惑するなか、リゼは迷わずソウブレイズを追い掛け、アンジュもリゼの身を案じて後に続く
「イブちゃん、メリー…!どうしよう…!リゼ様とアンジュさんが雪山に…!私達も追わないと…!」
「でも、ここのポケモン達はどうするの…!?」
「見過ごすことは出来ないだろ…!だからフレン、メリッサ…!ここを速攻で片付けて、俺達も後を追うぞ…!」
「「分かった…!」」
一先ず、目の前で争っているツンベアー達を収めるため、イブラヒム達はそれぞれのポケモンを繰り出してバトルを開始する
*
「ソウブレイズ…!急にどうしたの…!?」
エニカラ雪山の麓と中腹の間…木々が密集する地帯を抜け、雪が降る一面の銀世界でリゼは必死に呼び掛けながらソウブレイズを追う
だが、ソウブレイズはその声に一切の反応を示さず、リゼは進む程に少しずつ深さを増していく積雪に足を取られ、その距離を離されていく
「オニィッ!」「ノォッ!」
「…ッ!」
そんななか、ぐんぐんと雪山の上へと向かって走るソウブレイズの目の前にオニゴーリとユキノオーの群れが現れる
酷く怒っている様子のオニゴーリとユキノオー達はソウブレイズを目にした途端、一斉に"れいとうビーム"を繰り出し襲い掛かる
「ブレイ…!」
ソウブレイズはその攻撃を"むねんのつるぎ"を発動させた両腕の剣で受け止め、ダメージを最小限に抑えて凌ぎ切る
「ブレイ…ッ!」
「オニィィッ!」「ノォォッ!」
再び繰り出されるオニゴーリ達の攻撃をソウブレイズは躱し、弾きながら突き進み、"むねんのつるぎ"で攻撃を仕掛ける
「ソウブレイズ…!待って…!」
オニゴーリ達とのバトルに足を止めたソウブレイズに追い付こうと、リゼは懸命に足を前に進める
「オニィッ!」
「…っ!?」
その最中、リゼの存在に気付いた数体のオニゴーリ達が迫り、"れいとうビーム"を繰り出し襲い掛かってくる
「リゼ…!危ない…!」
オニゴーリ達の攻撃が直撃する寸前、後を追って来たアンジュがリゼに飛び付き、前のめりに倒れたことで"れいとうビーム"が逸れて直撃を免れる
「アンジュ…!」
「リゼ…!ここはニジサンジ地方で最もレベルの高いポケモン達が生息する場所だよ…!ソウブレイズを心配する気持ちは分かるけど、少しは自分の身の危険も考えてから動いて…!」
「ご、ごめん…アンジュ…」
「…本当に反省してる?」
「ぜ、善処しようとは思ってるんだよ…?思ってるんだけど…」
(考えるよりも先に体が勝手に動いちゃう…なんだよね。その性分には本当に困ったものだけど、悪いことじゃない…。ポケモンのことが好きで大切にするトレーナーの多くがそうなんだから…。だけど、その無茶をリゼにして欲しくないのはそもそも私が…)
「オニィ…ッ!」
「…っ!説教はこの辺にしないとね…!まずはこのオニゴーリ達をなんとかしないと…!」
「そ、そうだね…!お願い!エンペルト!ルカリオ!」
オニゴーリ達が唸りながら近づいて来てることに気付いたアンジュは意識を切り替え、促されたリゼはエンペルトとルカリオを繰り出し、自分達を囲む数体のオニゴーリとユキノオー達とのバトルに臨む
「エンペルト!"うずしお"!ルカリオ!"はどうだん"!」
リゼの指示が飛び、エンペルトは繰り出した"うずしお"で周囲のオニゴーリ達を捕らえ、動きを封じたところへルカリオが連続で"はどうだん"を繰り出し炸裂させる
「いいよ!エンペルト!ルカリオ!」
「エンペ!」「ルオッ!」
「リゼ…!まだだよ…!」
エンペルトとルカリオの連携攻撃が決まるも、アンジュが警告した直後に"うずしと"と"はどうだん"を受けたオニゴーリ達は"れいとうビーム"を繰り出し反撃してくる
「…っ!エンペルトは"はがねのつばさ"!ルカリオは"メタルクロー"で防御して!」
エンペルトとルカリオはそれぞれリゼに指示された技を発動して防御の構えを取り、オニゴーリ達の"れいとうビーム"を受け止め切る
「効果抜群の攻撃を受けたのにまだ動けるなんて…!」
「気を付けて、リゼ…!ここはニジサンジ地方の中でもレベルの高いポケモン達が多く生息する場所なんだから…!」
「わ、分かった…!」
アンジュに忠告されてリゼとエンペルト達は気を引き締め直し、改めてオニゴーリ達とのバトルに臨もうと身構える
「ギャーーーオッ!!!」
「「…っ!?」」
「…ッ!」
その時、上空から先程までと同じ謎の鳴き声が響き渡ると共に、降っていた雪が一瞬にして吹雪へと変わり、リゼとアンジュは勿論、ソウブレイズとオニゴーリ達も争いの手を止め、声のした方へ顔を上げる
「あ、あのポケモンは…っ!?」
「そんな…っ!?なんでこんなところに…っ!」
吹雪の中、上空に現れた謎の鳴き声の正体…それを目にしたリゼとアンジュは身を震わせる
「カントー地方を中心に多くの伝承が残されている伝説のポケモン…!"れいとうポケモン":フリーザー…!」
彼女達の前に現れたのはファイヤー、サンダーと名を連ねる伝説の三鳥の1体であるフリーザーだった
「ギャーオッ!」
「「…っ!」」
フリーザーの鋭い睨みと威圧感に気圧され、リゼ達とその場のポケモン達は恐怖から体が動けなくなる
「ブレェイ…ッ!」
だが、その中でソウブレイズだけは唯一臆さず、"ゴーストダイブ"を発動させて異空間を通り、フリーザーの真上にワープして攻撃を仕掛ける
「…ッ!?」
だが、フリーザーは攻撃をひらりと躱すと、"エアカッター"を繰り出してソウブレイズに炸裂させる
「ソウブレイズ…ッ!」
"エアカッター"が直撃したソウブレイズは地表に叩き付けられ、それを目の当たりにしたリゼは思わず駆け出し、エンペルトとルカリオも後に続く
「リゼ…!」
「「「オニィィッ!!」」」
「「「ノオォォッ!!」」」
「…っ!」
アンジュが心配するなか、オニゴーリとユキノオー達がフリーザーに向けて一斉に"れいとうビーム"を繰り出す
だが、フリーザーは軽やかな飛行でその攻撃を躱し切っていく
「オニゴーリ達がフリーザーを攻撃してる…!もしかして、雪山のポケモン達の様子が変だった理由はフリーザーが現れたから…!?」
雪山のポケモン達が本来の生息域から下り、怒りを露わにしている理由が突然現れたフリーザーに縄張りを追われてしまったからではないか…と、目の前の光景からアンジュは推測する
「ブレェイ…ッ!」
「ソウブレイズ…っ!怪我はない…!?」
駆け寄ったリゼはその身を案じて声を掛けるが、ソウブレイズは返事は疎か目を合わせようともせず、激情が込もった瞳でフリーザーを睨み続けていた
「ソウブレイズ…。あなた、もしかしてフリーザーとバトルしたいの…?」
「……」
問いに対し、ソウブレイズは一瞥だけ返す
その反応が核心を突かれてのものだとリゼは感じ取り、引き止めようと呼び掛ける
「ソウブレイズ…!あなたがそうしなきゃいけない程の何かがあるのは私も理解してる…!でも、伝説のポケモン相手に1人で挑むなんて無茶だよ…!」
「エンペッ!エペエペッ!」
「ルオッ!ルルォッ!」
エンペルトとルカリオもリゼ一緒にソウブレイズに呼び掛ける
「…ブレイ」
「エンペ…ッ!?」
「ルオ…ッ!?」
リゼ達の呼び掛けにソウブレイズは短く声を発する
すると、その言葉を理解出来るエンペルトとルカリオは思わず言葉を失ってしまう程の衝撃を受けた様子を見せる
「ギャーオッ!」
「「「オニィィ…ッ!?」」」
「「「ノォォ…ッ!?」」」
「ブレイ…ッ!」
「ソウブレイズ…!?待って…!」
遠くからフリーザーの鳴き声とオニゴーリ達の悲鳴が聞こえるなか、ソウブレイズはリゼの制止を気に留めず、再びフリーザーへと駆け出して行く
何度呼び掛けてもソウブレイズを止めらなかったことにリゼは自身の無力さを痛感するなか、少し遅れてアンジュが追い着く
「リゼ…!その様子だと、ソウブレイズは止まる気が無いみたいだね…!」
「うん…」
「…リゼ、ここに長く留まるのは危険だ。ソウブレイズが聞き入れてくれない以上、穏便な解決策は取れない。手荒になるけど、ソウブレイズを戦闘不能にさせるしか…」
「何言ってるの!アンジュ!私達がソウブレイズを傷付けるなんて…!そんなこと冗談でも許さないよ…!」
「でも、それ以外にソウブレイズを回収する方法は…!」
「方法なら他にもある…!ソウブレイズには悪いけど、私達も一緒にフリーザーとバトルする…!」
リゼが出した提案に、アンジュは血相を変える
「それは無謀だよ、リゼ…!相手は伝説のポケモン…!ウツロイドやメイフ砂漠で遭遇したウルトラビースト以上に危険なんだよ…!」
「分かってる…!でも、私にはソウブレイズを傷付けることなんて出来ない…!まだ完全に信頼されてはいないけど、あの子はもう私達の仲間なんだから…!」
「ソウブレイズは異常なまでにフリーザーとのバトルに固執してる…!その邪魔をすれば、攻撃してくるかもしれない…!」
「…そうだね。でも、覚悟は出来てる…!ソウブレイズの願いに添ってあげられなかった私の力不足だと思って受け入れるよ…!」
「…っ!」
自身の想いを言い切ったリゼの表情には少なからず不安は見えるが迷いは無く、その意思の固さと気迫を前にアンジュはそれ以上反対の声を上げることが出来なかった
「エンペルト、ルカリオ!力を貸して!」
「エンペッ!」
「ルオッ!」
エンペルトとルカリオの承諾を得たリゼは彼等と共にフリーザーとソウブレイズの下へ駆け出して行った
(願いに添ってあげられない…か。たしかに、そうだ…。危ういところはあるけど、リゼの想いは何も間違っちゃいない…。だけど、そうして欲しくないと思ってしまうのは私がリゼの助けになれないからだ…。自分の奥底にある感情と…ポケモンが秘める底力が怖くて足が竦んでしまうからだ…)
リゼの言葉を思い返しながら、アンジュは過去の悲劇を思い出す
激情に身を任せ、ポケモンに限界を超えた力を引き出させ、その末に大切な人を傷付けてしまった過去を
「はぁ…っ!はぁ…っ!」
呼吸が荒くなり、アンジュは苦しそうな表情で服の胸元を強く握り締める
(きっとリゼはこれからも誰かとポケモンのために無茶なことをする…。そして、それは常に上手くいくとは限らない…。その身だけじゃ済まない、心も傷付く結果が訪れる時があるかもしれない…。だから私が…リゼの助けになって、守ってあげなくちゃいけないんだ…!)
それでも、リゼのために変わらなければならないとアンジュは自分に言い聞かせた
*
「ギャーオッ!」
「「「オニィ〜…ッ!」」」
「「「ノォ〜…ッ!」」」
フリーザーにバトルを挑んでいた野生のオニゴーリ達はあまりの強さに打ちのめされて戦意を喪失してしまい、悔しい表情を浮かべてその場から逃げるように去って行った
「…ッ!」
「ブレェイッ!」
フリーザーが逃げ出したオニゴーリ達を空から見下ろすなか、"ゴーストダイブ"で背後に現れたソウブレイズが攻撃を仕掛ける
だが、その敵意に気付いていたフリーザーはひらりと攻撃を躱すと自身の長い尻尾を振るい、ソウブレイズに叩き付ける
「ブレイ…ッ!」
吹き飛ばされたソウブレイズは地面に腕の刃を突き刺して持ち堪え、フリーザーを睨み付ける
「ギャーオッ!」
フリーザーが轟かせた咆哮を合図に、2体は同時に相手へ向かって突っ込んでいく
「エンペッ!」
「「…ッ!」」
だがその時、ソウブレイズとフリーザーの間にエンペルトが飛び出し、自身を中心に"うずしお"を繰り出して両者を隔てる
"うずしお"に自ら衝突しないようソウブレイズとフリーザーが急停止するなか、その瞬間を狙ってフリーザーの側面に回ってきたルカリオが"はどうだん"を繰り出し炸裂させる
「ブレェイ…ッ!」
「ソウブレイズ…!」
横槍を入れられたことが気に食わず、エンペルト達に唸り声を上げるソウブレイズ
その背後から追い着いたリゼが呼び掛ける
「ごめんなさい…!やっぱり、無茶するあなたを放っておくことなんて出来ない…!フリーザーとのバトルを諦めてくれないなら、あなたが無事に済むよう私達もフリーザーとバトルさせてもらうから…!ルカリオ!"はどうだん"!」
リゼは自身の意志をソウブレイズに伝え終えると指示を出し、ルカリオは再び"はどうだん"をフリーザーへと繰り出す
「ギャーオッ!」
「ルオ…ッ!?」
フリーザーは繰り出した"エアカッター"で"はどうだん"を打ち破り、そのままルカリオへ攻撃を炸裂させる
「撃ち合いになると部が悪い…!なら、エンペルト!"れいとうビーム"で"うずしお"を凍らせて!」
"はどうだん"と"エアカッター"の衝突から距離を保った技の撃ち合いは不利とリゼは判断し、エンペルトに先程繰り出した"うずしお"を"れいとうビーム"で凍らせるよう指示する
"うずしお"の中心からエンペルトが"れいとうビーム"を繰り出したことで、"うずしお"は忽ちに凍り付き、巨大な氷のオブジェクトと化した
「ルカリオ!凍った"うずしお"を足場に跳んで!」
続くリゼの指示に従い、ルカリオは凍った"うずしお"を駆け上って空中を漂うフリーザーへ迫る
「ブレイッ!」
その時、そうはさせまいとソウブレイズは"むねんのつるぎ"を構えて凍った"うずしお"に向かって動き出す
「エンペルト!"はがねのつばさ"!ソウブレイズを押さえて!」
凍った"うずしお"を破壊してルカリオの攻撃を阻止しようとするのがソウブレイズの狙いだと悟ったリゼはエンペルトに足止めをお願いする
エンペルトは凍った"うずしお"の中から打ち破って飛び出すと、繰り出した"はがねのつばさ"をソウブレイズの"むねんのつるぎ"と衝突させる
「ブレェイ…ッ!」
「エンペ…ッ!」
ソウブレイズの"むねんのつるぎ"をエンペルトが"はがねのつばさ"で受け止め続けるなか、凍った"うずしお"の天辺まで駆け上がったルカリオはそこからフリーザーへと跳びかかる
「ギャーオッ!」
「ルカリオ!"メタルクロー"!」
"れいとうビーム"で撃ち落とそうとしてくるフリーザーに対し、リゼは"メタルクロー"を指示する
ルカリオは両手の"メタルクロー"を盾にしてフリーザーが繰り出した"れいとうビーム"を受け止めると、そのまま押し切って懐に飛び込み、攻撃を炸裂させる
「よし!効果は抜群…っ!?」
"メタルクロー"の直撃にリゼは手応えを感じるが、フリーザーが両翼を大きく広げたのを目にして言葉を詰まらせる
「ギャーオッ!」
次の瞬間、フリーザーは両翼を勢いよく羽ばたかせて強力な"ふぶき"を繰り出した
「…ッ!」
「エンペ…ッ!?」
「ルオ…ッ!?」
"ふぶき"の直撃にソウブレイズは地面に刃を突き立てて踏ん張り、エンペルトとルカリオは耐え切れずに吹き飛ばされてしまう
「エンペルト…!ルカリオ…!大丈夫…!?」
吹き飛ばされたエンペルト達を心配してリゼが声を掛けると、2体とも氷タイプに強い鋼タイプであったことが幸いしたか、受けたダメージはそれほど大きくなく済んだようで"大丈夫!"と表情で示し立ち上がる
(フリーザー…!伝説のポケモンだから当然だけど、凄く手強い…!ソウブレイズからの攻撃も意識しないといけないとなると、エンペルトとルカリオだけじゃ手が足りない…!広範囲を攻撃出来る"ふぶき"が怖いけど、イーブイ達にも協力して貰った方が…!)
フリーザーとソウブレイズを同時に相手するのはエンペルトとルカリオの2体だけでは厳しいと感じたリゼは思考を巡らせる
「ゴルーグ!"シャドーパンチ"!」
「…っ!?」
その時、突然背後からアンジュの指示が聞こえ、直後にゴルーグの"シャドーパンチ"がフリーザーに向かって放たれる
「ギャーオッ!」
フリーザーは"エアカッター"で迎え撃つが、ゴルーグの"シャドーパンチ"はそれを押し返してフリーザーに直撃する
「リゼ…!フリーザーは私が相手をする…!その間、ソウブレイズを押さえておいて…!」
「アンジュ…!」
「…言っとくけど、勝てる保証はないからな。でも、後でリゼに任せても勝てるように私とゴルーグで出来る限りフリーザーの体力を削るから」
「…うん、分かった!ありがとう、アンジュ…!」
リゼは感謝を告げるとアンジュに言われた通りソウブレイズを押さえるためエンペルト達を連れて離れる
「ゴル…」
「…心配する必要はないよ、ゴルーグ。立ち向かわなきゃいけない時が来た、それだけだから。私のことは気にしないで、本気を出してよ?」
心配そうに顔を向けてくるゴルーグにそう告げると、険しい表情を浮かべるアンジュはフリーザーとのバトルに挑む
「ギャーオッ!」
「ゴルーグ!"ジャイロボール"!」
咆哮を上げたフリーザーが繰り出す"れいとうビーム"に、ゴルーグは"ジャイロボール"で突っ込む
体を高速回転させる"ジャイロボール"で"れいとうビーム"を弾くことでダメージを抑えるゴルーグはそのまま押し切って攻撃を直撃させる
「ギャーオッ!」
「ゴルーグ!"10まんばりき"で地面を抉って!」
"ジャイロボール"を食らって怒りを増すフリーザーが"ふぶき"を繰り出すのに対し、ゴルーグは発動させた"10まんばりき"のパワーを利用して地面を抉り上げ、それを壁にして"ふぶき"の直撃を防ぐ
「"ばくれつパンチ"!」
"ふぶき"が収まってすぐに出されたアンジュの指示を受け、ゴルーグは抉った地面の壁に"ばくれつパンチ"を振るう
地面の壁は"ばくれつパンチ"で破壊され無数の岩塊となって弾丸の如く勢いで放たれ、フリーザーはそれを繰り出した"げんしのちから"で迎え撃つ
「ギャーオ…ッ!?」
だが、フリーザーが無数の岩塊を"げんしのちから"で全て撃ち落とした直後、その最中に繰り出していたゴルーグの"シャドーパンチ"が死角から迫り直撃する
「畳み掛けるよ!"ジャイロボール"!」
"シャドーパンチ"が決まってフリーザーの体勢が崩れたのをチャンスと見たアンジュはゴルーグに"ジャイロボール"での追撃を指示する
「…ッ!ギャーオッ!」
だが、フリーザーは早くも体勢を立て直すと"れいとうビーム"を繰り出して迎撃し、更には"ジャイロボール"で突っ込んだゴルーグが先程と違って"れいとうビーム"を押し切れず、技の勢いが失くなる前に飛び退いてしまった
「技の威力が上がってる…!さっきの"げんしのちから"で能力が高まったのか…!」
原因を即座に理解すると共に形勢が変わったことでアンジュの表情がより険しさを増すなか、フリーザーは自身の内側へ両翼を折るとその中で"エアカッター"を発動・凝縮させて巨大な風の刃を作り出す
(本来無数に放つ"エアカッター"を1つに凝縮することで一撃の大きい技に昇華させた…!?)
その行動にアンジュが驚くなか、フリーザーは更に"ふぶき"を繰り出そうと両翼を広げ構える
「まさか、"ふぶき"の勢いを上乗せして…!?」
アンジュがその狙いを察した直後、フリーザーは巨大な"エアカッター"を"ふぶき"の勢いに乗せて放った
「避け切れない…!ゴルーグ!"ばくれつパンチ"!」
"ふぶき"と共に勢いよく放たれた巨大な"エアカッター"を回避するのは不可能と判断したアンジュは"ばくれつパンチ"での迎撃を指示し、ゴルーグは両拳を駆使して繰り出した
ギャリリリリリリリリリ…ッ!!!
「ゴルゥ…ッ!?」
巨大な"エアカッター"は激しい火花散らし、鋭く荒々しい金属音を響かせ、"ばくれつパンチ"をぶつけるゴルーグを押し返す
更に強烈な"ふぶき"もゴルーグを襲い、効果抜群の大ダメージを与えていた
("エアカッター"を受け止めるので精一杯…!いや、どの道このままじゃ押し切られる…!私達に出来るのはここまで…!あとはリゼに…!)
防ぐ余裕もない"ふぶき"に晒され続ければゴルーグの体力はどんどん削れ、いずれは限界を迎えて"エアカッター"に押し切られると悟ったアンジュは後の事はリゼに任せるしかないと諦念する
(…いや、駄目だ!まだこれだけの力が出せるフリーザーをリゼに相手させるのは危険過ぎる!変わろうって、乗り越えようって決めたんだ…!だからまだ、終わるわけにはいかない…!)
だが、リゼの願いに添い、彼女を守らなければならないと強く想い、このバトルに臨んだことを思い出したアンジュは自らを奮い立たせる
「ゴルーグ!お前の力はこんなものじゃないはずだろ!全力を出してくれ!」
「ゴ…ゴルゥ…ッ!?」
「躊躇わなくていい!私達がやらないとリゼが危ないんだ!リゼを守るために、私達がなんとかしなくちゃいけないんだよ!!」
アンジュは声を荒げてゴルーグに呼び掛ける
だだ、その表情は"リゼを守るため必死になっている"というより、"リゼを守らなければならない使命感に追い立てられている"ような形相だった
「ゴ…ルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」
そんなアンジュに何を想うのか、ゴルーグは辛そうに表情を歪めるも彼女の頼みを聞き入れて咆哮と共に自身が出せる力の全てを"ばくれつパンチ"に込めて巨大な"エアカッター"を押し返し、弾き飛ばした
「よし…!これで…!」
"フリーザーの攻撃を凌げ、反撃に出られる"…と、アンジュはそう思った
ボゴォォォォォォォンッ!!!
だが、弾き返した"エアカッター"がエニカラ雪山の上辺りに直撃する
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…ッ!!!
「…っ!?」
その直後、雪山全体に地鳴りが起こり始め、アンジュは恐怖に血相を変えた
「この地鳴り…!も、もしかして…!?」
嫌な予感がしたアンジュが雪山の上へ目を向けると、全てを呑み込まんと凄まじい勢いで迫り来る大規模な雪雪崩が視界に映った
「な、雪崩…!今弾き返した"エアカッター"の衝撃で…!ゴ、ゴルーグ…っ!今すぐリゼを抱えて上空に…っ!」
「ゴ…ルゥ…」
「ゴルーグ…!?」
アンジュはすぐさまゴルーグにリゼを最優先に連れて飛び立ち避難するよう叫ぶが、力を使い果たして体力も限界だったゴルーグは無念にもその場に倒れ伏してしまった
「そんな…。"エアカッター"を押し返そうとしたあの時点で、もう体力は限界だったの…?」
(なら…いっそ抵抗せずに攻撃を受け入れて、戦闘不能になっていればこんなことには…。また、私は間違えた…)
自身の選択が最悪の展開を引き起こしてしまったと感じ、また二度目の過ちを犯してしまったことに絶望して、アンジュは膝から崩れ落ちてその場にへたり込んでしまう
「アンジュ…!?」
エンペルトとルカリオと共にソウブレイズを押さえていたリゼは、突然の地鳴りで雪雪崩が起こったことを知ると同時に、振り返った先でアンジュが膝を突いたのを目にして急いで駆け出す
「エンペッ!」
「ルオッ!」
「……」
エンペルトとルカリオもリゼの後を追うなか、ソウブレイズは背を見せるエンペルト達に攻撃しようとはせず、しばらくリゼ達の後ろ姿を見つめた後、雪雪崩に備えて"むねんのつるぎ"を構えた
「アンジュ…!へたり込んでる場合じゃないよ…!早くゴルーグを戻さないと…!」
「私のせいだ…。また私は…」
「ア、アンジュ…?」
アンジュの下へ駆け寄ったリゼは声を掛けるが、自責の念に苛まれているアンジュはぶつぶつと呟くだけで返答することはなかった
「…っ!ゴルーグ、戻って…!エンペルト、ルカリオ…!お願い…!」
アンジュを心配する気持ちはあったが、今はそれどころではないと切り替えたリゼは彼女に代わって倒れたゴルーグをボールへと戻すと、エンペルト達と共に身を寄せ合う
「…っ!」
「…ッ!」
直後、勢いよく迫った雪雪崩にリゼ達とソウブレイズは一瞬にして呑み込まれていった
*
「ボーマンダ!"ドラゴンクロー"!」
「バシャーモ!"ブレイズキック"!」
「エモンガ!"ほうでん"!」
エニカラ雪山麓の道路…目の前で争いを始めたツンベアー達とオコリザル達を止めるため、バトルに臨んだイブラヒム達はそれぞれのポケモン達にトドメの攻撃を繰り出させる
「「「ベアァァ…ッ!?」」」「「「マニュゥゥ…ッ!?」」」
「「「オコォォ…ッ!?」」」「「「リキィィ…ッ!?」」」
ボーマンダ達の攻撃が炸裂し、ツンベアー達は力尽きてその場に倒れ伏した
「ようやく大人しくなったね…」
「ああ…。思ったより手間取った…」
「とりあえず、これでしばらくは周りのポケモン達も大丈夫だよね…!早くリゼ様とアンジュさんを追いかけないと…!」
「うん、そうだね…!」
ツンベアー達とのバトルが終わるも、リゼ達を心配するフレンに同調し、イブラヒム達はすぐに後を追おうと動き出す
ゴゴゴゴゴゴ…!
「「「…っ!?」」」
その時、雪山の方から地鳴りが聞こえ、同時に周りのポケモン達が慌ただしく逃げ惑い始める
「な、なに…!?」
「…っ!?2人共…!あれ…!」
「おいおい…!嘘だろ…!?」
メリッサの声にイブラヒム達が雪山に目を向けると、大規模な雪雪崩が凄い勢いで自分達のいる麓の道路へ迫って来ていた
「フレン…!メリッサ…!今すぐボーマンダの背中に乗れ…!」
イブラヒムはそう叫ぶと、ボーマンダの背中にフレンとメリッサと共に乗って飛び立たせる
その直後、先程までイブラヒム達がいた道路は雪雪崩が呑み込まれていった
「危ねぇ…!サンキューな、ボーマンダ…!」
「ボーマ!」
「それにしても、凄く大きな雪崩だね…。雪山の上で何かあったのかな…?」
「リゼ様とアンジュさんが心配だよ…!イブちゃん…!早く探しに行かないと…!」
「分かってる…!もう少ししたら雪崩も完全に収まる…!そしたらフレン、お前のパルスワンの鼻を頼りに捜索だ…!」
「分かった…!」
この後の方針を決めたイブラヒム達は雪雪崩が収まるまでのもうしばらくの間、ボーマンダの背中に乗ったまま空を漂い続けた
*
「エン…ペルゥゥッ!!」
雪雪崩が起きてからしばらく、深く積もった雪の中から"ドリルくちばし"で穴を空けたエンペルトが飛び出し、その後に続いて穴からリゼが顔を出す
「けほっ…!けほっ…!ありがとう、エンペルト…!」
「エンペ!」
助けられたリゼがお礼を言うと、エンペルトは"どういたしまして"と言いたげに微笑み返す
そんななか、エンペルトが空けた穴から更にルカリオが顔を出し、その肩には気を失ったアンジュが担がれていた
「ルカリオ、ありがとう…!」
「ルオッ!」
リゼはルカリオにお礼を言うと、アンジュを受け取って近くの樹まで運び、それにもたれかからせるようにそっと下ろす
「アンジュ…!大丈夫…!?」
「うっ…!リゼ…?よかった…無事みたいで…」
「自分より私の心配なんて…アンジュも人のこと言えないね」
心身共に疲弊してはいたが、アンジュに大きな怪我が無かったことを確認したリゼはホッと胸を撫で下ろし、少し間を置いて真剣な面持ちで話し掛ける
「アンジュ…少しここで待っててくれる?私、ソウブレイズを探しに行ってくるから」
「リゼ…?ダ、ダメだよ…。ここは一度、イブラヒムさん達と合流して…」
「…ごめんね、アンジュ。こればっかりは譲れない。イブラヒムさん達といつ合流出来るか分からないし、その間にソウブレイズに何かあったら私はきっと後悔する」
"それに…"と、リゼは言葉を続ける
「兄上やアンジュなら、私の立場でも同じことするでしょ?だから、私にもそうさせて」
リゼは微笑みながらそう言い残し、エンペルト達と共に雪山を駆け上がって行った
「あっ…!待って…リゼ…!」
弱々しい声で引き止めようとするアンジュだったが、リゼはその声に振り返らず雪山の奥へと消えて行った
(あぁ…。郡道先生の言ってた通りだ…。今の私じゃ、リゼを守り切れない…助け切れない…。なにより、私はこれで二度目の間違いを犯した…。やっぱり私はバトルをしちゃいけない…ポケモンを戦わせちゃいけないんだ…。これ以上、私のせいで誰かに…ポケモン達に傷付いてほしくない…。だからもう、私はリゼの傍には…)
リゼが消えて行った方向を朧気に見つめるアンジュは心身の疲労から徐々にその意識が薄れていき、しばらくして完全に途絶えてしまった
リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、イーブイ、バタフリー
サイドン、ルカリオ、ソウブレイズ
アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ
イブラヒム
手持ち:マンムー、ボーマンダ、グソクムシャ
サンダース、ドラピオン、コータス
フレン・E・ルスタリオ
手持ち:バシャーモ、パルスワン、ラッキー
フライゴン、ニューラ、パッチラゴン
メリッサ・キンレンカ
手持ち:エモンガ、スピアー、イワパレス