にじさんじ×ポケットモンスター   作:Mr.ソロ

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第72話「リゼvsアンジュ!それぞれの想いを乗せて!」

 

「アンジュさんにバトルを申し込む…!?」

 

 

アンジュの家に訪れる数時間前…フレン達を連れて戌亥が働く喫茶店に足を運んだリゼは夜通しして考えたアンジュを助ける方法を全員に告げる

 

アンジュとのバトル…その方法に驚くフレン達が正気を疑うかのような表情を見せるなか、リゼは戌亥に話し掛ける

 

 

「とこちゃん、言ってたよね?普段のアンジュなら特訓で私を巻き込んじゃうようなミスはしなかった。私を大怪我させちゃった時のアンジュは兄上とのバトルに負けて、悔しくて焦って周りが見えなくなってたからって」

 

「…そう言ったね」

 

「つまり、普段のアンジュ…。勝ち負けなんて気にしない、相手と全力でぶつかることを楽しむバトルをしてたアンジュなら間違いは起こさないはず…!だから、そのバトルで過ちが起きないことを証明させれば…!」

 

「トラウマを克服させることが出来るってわけか…!」

 

「だけど…」

 

 

イブラヒム達はその意図を理解するも、アンジュが素直にバトルに応じてくれるかどうか不安げな表情を見せる

 

だが、そんな雰囲気にリゼは心を揺らがせず、真剣な眼差しを戌亥に向ける

 

 

「…試してみる価値はあると思う。でも、どうやってアンジュはんを説得するん?」

 

「嘘偽りの無い私の想いを伝えるつもり。あとはバトルの条件次第で、アンジュは受けてくれると思う」

 

 

 

 

「私とバトル…?」

 

 

そして現在…リゼから突然のバトルの申し込みにアンジュは"どうして…?"と言いたげな困惑の表情を浮かべていた

 

 

「…昔、テレビの中継で見たアンジュのバトルに憧れてからずっと、兄上のように立派で、アンジュみたいなバトルが出来るトレーナーになりたいって夢見てた」

 

 

そんなアンジュに、リゼは自身の想いを告げる

 

 

「そして、いつか必ずアンジュや兄上とバトルしてみたいって思ってた。だから、その願いを叶えさせてほしいの」

 

「…リゼ。悪いけど、今の私はリゼが望むようなバトルをしてあげることは出来ないよ」

 

「何もあの頃のアンジュみたいなバトルをしてほしい、とまでは言わないよ。今のアンジュに出来る全力でバトルをしてくれれば、それでいいから」

 

 

リゼが言葉を尽くすも、決心が付けられないアンジュは"でも…"と渋らせる

 

 

「アンジュはん」

 

 

そんな彼女の様子を見兼ね、戌亥が声を掛ける

 

 

「気持ちは分かるけど、このバトルだけは受けてあげた方がいい。じゃないと、お互いに悔いを残すことになると思うから」

 

「戌亥…」

 

 

戌亥の言葉を受け、アンジュはしばし黙考する

 

 

「…分かった。その代わり、この件についてはこれっきり触れないで忘れてほしい」

 

「うん。それでいいよ」

 

 

互いの了承を得て、一同はバトルの舞台となるヘルエスタ城の庭に設けられているバトルコートへと移動する

 

 

 

 

「審判は私がするね。お互いの使用ポケモンは3体。どちらか全てのポケモンが戦闘不能になった時点で試合を終了とする」

 

 

ヘルエスタ城:庭のバトルコート…その審判台に上がった戌亥がコートの両端それぞれに立つリゼとアンジュにルールを説明する

 

 

「なんとかバトルまでは漕ぎ着けたね」

 

「でも、本番はここから…。どうなるかは結局アンジュさん次第だな」

 

「リゼ様…アンジュさん…!頑張って…!」

 

 

コートの傍に設けられているベンチにはイブラヒム達が腰掛け、これから始まる2人のバトルを固唾を呑んで見守る

 

 

「それじゃあ、2人共1体目のポケモンを」

 

「お願い!サイドン!」

 

「いけ!ウインディ!」

 

 

戌亥の指示に沿って、リゼはサイドンを、アンジュはウインディを1体目のポケモンに繰り出す

 

 

「サイドンとウインディ…!」

 

「この前、アンジュさんのゴルーグに止められて消化不良に終わった2体のバトルになったか」

 

「タイプ相性だと、岩・地面タイプのサイドンが圧倒的に有利だね」

 

 

その組み合わせにイブラヒム達が所感を口にし合うなか、いよいよリゼとアンジュのバトルが始まる

 

 

「それでは、バトル始め!」

 

「サイドン!"すてみタックル"!」

 

 

先手を取ったリゼの指示が飛び、サイドンは"すてみタックル"を繰り出し突進する

 

 

「ウインディ!"しんそく"!」

 

 

それに対し、ウインディは"でんこうせっか"のスピードを遥かに上回る攻撃技"しんそく"を発動させ、サイドンの"すてみタックル"を難なく躱して反撃の一撃を叩き込んだ

 

 

「"しんそく"か…。ウインディと言えばってくらい覚えてて当然の技だが、これはキツいな」

 

「サイドンは足の遅いポケモンだから、スピード勝負だと技を当てるのにも一苦労だね…!」

 

「サイドン!大丈夫!?」

 

「サァイッ!」

 

「よし!それなら、今度は"いわなだれ"!」

 

 

イブラヒム達が渋い顔を浮かべて見守るなか、サイドンが"いわなだれ"を繰り出す

 

 

「ウインディ!もう一度"しんそく"!」

 

 

再び"しんそく"を繰り出したウインディは迫る"いわなだれ"に飛び込むと、その上を飛び移りながら駆け抜けていく

 

 

「ガウッ!」

 

「ウインディ!"フレアドライブ"!」

 

「サイドン!"アームハンマー"!」

 

 

"いわなだれ"を駆け抜け切り飛び上がったウインディはアンジュの指示で"フレアドライブ"を繰り出し、対するサイドンは"アームハンマー"で迎え撃ち、両者の技が衝突する

 

 

「ガウゥゥ…ッ!」

 

「サイィィ…ッ!」

 

 

威力は互角…相手を押し切れなかった両者は衝突の余波で起きた爆発と共に後退する

 

 

「ウインディ!"ほのおのうず"!」

 

 

両者の距離が開いたところで、アンジュの指示を受けたウインディは"ほのおのうず"を繰り出し、サイドンに直撃させる

 

 

「サイィ…ッ!」

 

「岩タイプを持つサイドンに炎タイプの技は効果が今一つ…だけど…!」

 

「ああ。"ほのおのうず"はその勢いが収まるまで中に捕らえたポケモンにダメージを与え続ける。地味だが厄介な技だ」

 

 

タイプ相性によるダメージこそ少ないが、呑み込まれている間もじわじわと体力を削ってくる"ほのおのうず"の厄介さにイブラヒム達が顔を渋くするなか、リゼは何か閃いたかのように目を見開くと反撃の指示を飛ばす

 

 

「サイドン!"ドリルライナー"!」

 

 

"ドリルライナー"を繰り出したサイドンはその回転を利用して纏わりつく"ほのおのうず"を取り込み、ウインディへと突っ込む

 

 

「アレって…!?」

 

「ああ…!うづコウとの試合でリゼさんのエンペルトが使った"うずしお"と"ドリルくちばし"の合体技と同じやつだ…!」

 

「相手の技を利用するなんて、流石はリゼ様!」

 

「ウインディ!躱せ!」

 

 

リゼの機転にイブラヒム達から声が上がるが、その攻撃をウインディはギリギリで回避する

 

 

「まだだよ!サイドン!」

 

 

しかし、一度躱されてもサイドンの"炎纏うドリルライナー"は止まらず、旋回して再びウインディへと突っ込んでいく

 

 

「ウインディ!絶対に直撃するなよ!」

 

 

アンジュの指示を受けたウインディも負けじと回避を続け、サイドンの"炎纏うドリルライナー"を時折掠りこそすれど直撃だけは避け続けた

 

 

「…っ!」

 

「イブラヒム…?どうかしたの…?」

 

「いや、ちょっとな…」

 

(どうしてアンジュさんはウインディに"しんそく"を使わせて技を回避させないんだ…?"ドリルライナー"は食らえば効果は抜群…。万が一を考慮して"しんそく"を利用した方が確実だろうに…)

 

 

アンジュの指示にイブラヒムが違和感を感じるなか、サイドンに纏わりついていた"ほのおのうず"が掻き消え、それに伴って"ドリルライナー"を止めた

 

 

(直前の"アームハンマー"の追加効果で素早さを落としちゃったせいで決められなかった…!でも、これでサイドンが"ほのおのうず"からは解放された!次はどうやって…!)

 

 

相手の技を利用して大技に繋げれこそしたものの、直撃させ大ダメージを与えられなかったことを反省しつつ、ウインディをどう攻略するかリゼが考えようとしていた…その時だった

 

 

「ガァァァァァウッ!!!」

 

「「「「…っ!?」」」」

 

 

突然、雄叫びを上げるウインディから激しく炎が噴き上がった

 

 

「熱っ…!なに…!?ウインディ、どうしちゃったの…!?」

 

「もしかして、ウインディの特性…!?」

 

「ああ、"もらいび"だ…!炎技を受けてもダメージにならず、逆に自分の炎技の威力が上がる特性…!そうか…!これを狙ってたから"しんそく"での回避をしなかったのか…!」

 

 

ウインディが発動させた特性"もらいび"…それを目にしたイブラヒムは先程の違和感の正体に辿り着く

 

"ほのおのうず"を利用したサイドンの"炎纏うドリルライナー"は威力も範囲も通常より規模が大きくなっており、ウインディはその直撃こそ躱していたが、纏われていた"ほのおのうず"が何度か掠めており、その炎が"もらいび"の発動に繋がってしまったのだ

 

 

「ウインディ…!"フレアドライブ"…!」

 

 

"もらいび"の効果によって更に威力が高まった"フレアドライブ"を繰り出し、ウインディはサイドンへと突進する

 

 

(やられた…!でも、タダじゃ終わらせない…!)

 

「サイドン!"ドリルライナー"!」

 

 

ウインディの"もらいび"を発動させたアンジュの戦略にリゼはしてやられたと歯噛みするも、ウインディを少しでも消耗させようとサイドンに"ドリルライナー"での迎撃を指示する

 

 

「ガァァァァァウッ!!」

 

「サァァァァァイッ!!」

 

 

勢いよくぶつかり合った2体は激しく押し合うも、"もらいび"によって先程よりも"フレアドライブ"の威力が上がったウインディが徐々にサイドンを押し返し始める

 

 

「サイドン…!頑張って…!」

 

「サ…イィィィ…ッ!」

 

 

2体の衝突によって生じる衝撃に耐えながらリゼが檄を飛ばし、サイドンはそれに応えようとするもウインディのパワーを上回れず、今にも押し切られそうになるその時だった

 

 

「…っ!ウインディ…っ!!」

 

「ガウ…ッ!?」

 

「「「「…っ!?」」」」

 

 

アンジュから悲痛な声が上がり、それを耳にして驚いたウインディは"フレアドライブ"の勢いを弱めてしまう

 

その瞬間、力の優劣が逆転し、押し返したサイドンの"ドリルライナー"がウインディに炸裂する

 

 

「ガウゥゥ…ッ!?」

 

「…っ!」

 

 

吹き飛ばされたウインディは地面に激突し、そのまま起き上がることはなかった

 

 

「…ウインディ、戦闘不能!サイドンの勝ち!」

 

 

少し間があって、ウインディの戦闘不能を認めた戌亥が勝敗の判定を告げる

 

普通ならここで場が盛り上がりもするところだが、ベンチで見守っていたイブラヒム達もコートに立つリゼもその1勝に喜ぶことはなく、複雑な面持ちを浮かべる

 

 

「ねぇ、さっきのアンジュさん…」

 

「うん…。あれって、サイドンが押し負けるのを恐れて…?」

 

「…だろうな。あれだけ激しいぶつかり合いだ。もし、吹き飛ばされたサイドンがリゼさんを巻き込んだら…って想像しちまったんだろうな」

 

 

アンジュの悲痛な叫び…その意味を理解したイブラヒム達は表情を曇らせる

 

 

「ごめん、ウインディ…。ゆっくり休んで…」

 

 

ボールに戻したウインディに一言謝罪したアンジュは2体目のポケモンが入ったボールを手に取るが、すぐに繰り出さず、辛そうにボールを見つめて立ち尽くす

 

 

「どうしたの、アンジュ?」

 

「…リゼ。さっきの私を見て、まだやるつもりなの?」

 

「…当然だよ。まだバトルは終わってない」

 

「…っ!」

 

 

醜態を晒した自分を見限る様子もなくバトルの続行を望むリゼに、アンジュは辛そうに表情を歪ませながらボールを放り投げ、2体目のポケモンとなるゴルーグを繰り出す

 

 

「ゴルゥ!」

 

「ゴルーグ…!"すてみタックル"も"アームハンマー"も効果が無いし、"いわなだれ"も地面タイプには効果が薄い…!ここは一度戻って、サイドン!お願い!グレイシア!」

 

 

実質的に有効打が"ドリルライナー"しかないサイドンでは不利と判断したリゼは交代を選択し、2体目のポケモンにグレイシアを繰り出す

 

 

「リゼさんの2体目はグレイシアか」

 

「氷タイプのグレイシアなら、地面タイプを持つゴルーグに有利だよね」

 

「タイプ相性上はそうだが、ゴルーグが覚えられる技には氷タイプの弱点が突ける格闘や鋼、岩タイプも豊富にある。大幅に有利とまでは言えねぇが…」

 

「進化して初めて一緒にするバトル、頑張ろうね!グレイシア!」

 

「グレイ!」

 

 

イブラヒム達が神妙な面持ちで見守るなか、リゼとグレイシアが気合いを入れたところで、戌亥の合図によってバトルが再開される

 

 

「それじゃあ、バトル始め!」

 

「グレイシア!"フリーズドライ"!」

 

 

開始から容赦なく、リゼは地面タイプのゴルーグに効果抜群な氷タイプの技"フリーズドライ"をグレイシアに繰り出させる

 

 

「ゴルーグ…!"ジャイロボール"…!」

 

 

それに対し、ゴルーグは"ジャイロボール"繰り出すとその高速回転で"フリーズドライ"を弾き、受けるダメージを大幅に抑えながらグレイシアへと突っ込む

 

 

「弾かれた…!グレイシア!"アイアンテール"!」

 

 

"フリーズドライ"では止められないと瞬時に悟ったリゼの指示を受け、ゴルーグへと飛び込んだグレイシアは"アイアンテール"をぶつける

 

ガギギギギ…ッ!と、火花を散らしながら互角に押し合う2体は最後まで相手を押し切るには至れず、弾かれ合って互いに後ろへ退く

 

 

「…!」

 

「…なんとか凌いだな」

 

「直撃してたら効果抜群だったもんね…!」

 

「流石はリゼ様のグレイシア!進化したことで前よりもパワーアップしてる!」

 

 

グレイシアがゴルーグの"ジャイロボール"を防ぎ切り、フレン達が安堵と興奮の声を漏らすなか、戌亥とイブラヒムはアンジュとゴルーグに訝しげな眼を向ける

 

 

「グレイシア!"シャドーボール"!」

 

 

グレイシアとゴルーグの距離が開くと、リゼはすかさず"シャドーボール"での追撃を指示する

 

 

「…っ!ゴルーグ…!"シャドーボール"は無視だ…!"シャドーパンチ"…!」

 

 

アンジュの指示を受けたゴルーグは両拳を振るって2つの"シャドーパンチ"を放つ

 

だが、それらは迫る"シャドーボール"を横切り、直接グレイシアへと向かい、防御を取れなかったゴルーグはまともに"シャドーボール"の直撃を食らう

 

 

「ゴルゥ…ッ!?」

 

「…っ!?グレイシア…!"フリーズドライ"…!」

 

 

これには予想外だったリゼは動揺を見せるもすぐさまグレイシアに"フリーズドライ"を繰り出させ、"シャドーパンチ"を撃ち落とそうと試みる

 

しかし、迫る2つの"シャドーパンチ"はそれぞれ別の方向へと軌道を変え、グレイシアはその内の1つを"フリーズドライ"で追い狙い、凍らせて無力化させるが、その間にもう一方の"シャドーパンチ"が急接近し、その直撃を受ける

 

 

「グレイ…ッ!?」

 

「ぼ、防御を捨てて…!なんて強引な…!」

 

「技同士をぶつけても、相殺に終わったら一向にダメージを与えられない…。だから、リスクを取ってでも攻めに動いた…ってことなのかな…?」

 

「…まあ、そんなところだろうな」

 

「……」

 

 

アンジュの戦法にフレン達が驚くなか、先程まで彼女を訝しんでいた戌亥とイブラヒムは何かに気付いたようにその眼を細めた

 

 

「グレイシア、大丈夫?」

 

「…グレイッ!」

 

「ゴルーグ、やっぱり強い…!もう一度攻撃を受ける前に、こっちが先に大きなダメージを与えないと…!グレイシア!地面に向けて"フリーズドライ"!」

 

 

"シャドーパンチ"1発でかなりのダメージを与えてきたゴルーグの強さを改めて認めつつ、リゼはグレイシアに繰り出させた"フリーズドライ"でコート一面を氷結させる

 

 

「"こおりのキバ"!」

 

 

その後すぐに、グレイシアは進化したことで以前覚えていた"かみつく"から派生した技"こおりのキバ"を発動させ、氷上を軽快に滑走しながらゴルーグへと突っ込む

 

 

「ゴルーグ…!"シャドーパンチ"…!」

 

 

グレイシアを迎え撃つべく、ゴルーグは2つの"シャドーパンチ"を打ち放つ

 

 

「グレイシア!躱して!」

 

 

リゼが呼び掛けた直後、グレイシアは両側面から迫る"シャドーパンチ"を跳躍して回避する

 

2つの"シャドーパンチ"は即座に軌道を変えて追従しようとするが、氷上を滑走するグレイシアの動きは通常よりも速く、そのスピードに追い付けなかった

 

"シャドーパンチ"を振り切ったグレイシアはそのまま滑走して一気に迫り、ゴルーグが咄嗟に受け止めようと構えた右腕に"こおりのキバ"を炸裂させる

 

 

「ゴルゥゥ…ッ!?」

 

「よし!決まった!」

 

「…っ!ゴルーグ…!"ばくれつパンチ"…!」

 

 

"こおりのキバ"の直撃にリゼが声を上げるも束の間、アンジュの指示を受けたゴルーグはダメージを堪え、グレイシアがまだ噛み付いている右腕を振り上げると、そのまま地面に向けて"ばくれつパンチ"を振り下ろす

 

 

「グレイシア!離れて!」

 

 

リゼの咄嗟の指示で、グレイシアは"ばくれつパンチ"が叩き込まれる寸前で右腕から牙を離し飛び退く

 

 

「グレイ…ッ!」

 

 

だが、氷上のコートに"ばくれつパンチ"が叩き込まれた瞬間、凄まじい爆発が起こると共に、その衝撃で砕けた氷やコートの破片の雨がグレイシアを襲う

 

 

「…っ!?グレイシア…っ!後ろ…っ!」

 

 

更にその直後、リゼの叫び声が上がってグレイシアが後ろへ視線を向けると、先程躱した2つの"シャドーパンチ"が背後から迫り、回避が出来ず直撃してしまう

 

 

「グレェェイ…ッ!?」

 

「グレイシア…!」

 

「ゴルーグの"シャドーパンチ"、本当に凄い威力だね…!」

 

「グレイシアがもうあんなにボロボロだなんて…!」

 

「あれだけの威力になってるのは、アンジュさんのゴルーグの特性が"てつのこぶし"だからだな。"てつのこぶし"を持つポケモンは使用するパンチ系の技の威力が通常よりも底上げされる」

 

 

グレイシアを追い込むゴルーグの強力な"シャドーパンチ"の秘密をイブラヒムがフレン達に解説するなか、アンジュが仕掛ける

 

 

「終わらせるよ…!ゴルーグ…!"シャドーパンチ"!」

 

「また"シャドーパンチ"…!?」

 

「今度食らったら、流石にグレイシアも…!」

 

 

ゴルーグの両拳から繰り出される必中の"シャドーパンチ"にフレン達は表情を青ざめる

 

 

「グレイシア!真上に向かって"フリーズドライ"!」

 

「「…っ!?」」

 

「なっ…!?」

 

「「えぇ…っ!?」」

 

 

その時、迫る"シャドーパンチ"を前にリゼは回避はおろか迎撃しようとせずにあらぬ方向へ向けて技を出すよう指示を出し、全員が驚愕する

 

だが、グレイシアだけはその指示を疑わず、自身の真上に向けて"フリーズドライ"を繰り出した

 

すると、真上に繰り出された"フリーズドライ"はグレイシアをドーム状に包み込むように降り注ぐと、周囲の空気を凍らせて氷の防御壁を形成する

 

直後、"シャドーパンチ"が氷の防御壁に直撃し、その衝撃によって発生した煙が辺りに充満する

 

 

「…っ!?」

 

 

しばらくして煙が晴れると、そこには氷の防御壁のおかげで"シャドーパンチ"の直撃を防ぎ無事でいたグレイシアが"シャドーボール"を放つ準備を整えていた

 

 

「今だよ、グレイシア!"シャドーボール"!」

 

 

そして、リゼの指示と共にグレイシアは"シャドーボール"を放ち、予想外のことに動揺したゴルーグは防御が間に合わず、その直撃を受けた巨体が仰向けに倒れる

 

 

「ゴ…ルゥ…」

 

「…っ!」

 

「…ゴルーグ、戦闘不能!グレイシアの勝ち!」

 

 

ゴルーグは無念そうな呻き声を残しながら瞳の光を消し、その姿を目にしたアンジュは酷く辛そうに、申し訳なさそうに表情を歪める

 

その様子を見つめていた戌亥は少し間があってゴルーグの戦闘不能の判定を告げた

 

 

「ふぅ…!上手くいって良かった…!よく頑張ったね、グレイシア!」

 

「グレイ!」

 

「さあ、アンジュ!次がそっちの最後のポケモンだよ!でも、ここまで来たからには私は完全勝利を狙わせて…!」

 

「もう辞めようよ…!!リゼっ…!!」

 

 

奮闘したグレイシアを褒めたリゼが次のバトルに意気込む最中、その言葉を遮って突然アンジュが悲痛な声を上げる

 

 

「こんなバトルでリゼが満足出来るわけないだろ…!全力を出せない拍子抜けしてる私とのバトルなんて何の意味もない…!勝ったところで残るのは虚しさだけだろ…!!」

 

 

アンジュは苦しそうにぶち撒ける。このバトルの先に待つ残酷な結果を

 

 

「私はバトルするのが怖い…!誰かを傷付けてしまうかもしれない…!そんな風になる自分自身が怖いんだよ…!!バトルに勝ちたい、勝たなくちゃいけない…!そんな感情が湧いてくると私は周りが見えなくなる…!その結果、とんでもない過ちを犯してしまう…!」

 

 

アンジュは涙ながらに吐き出す。バトルを恐れる最大の要因となった自身の内に潜む勝利への執着とそれに呑み込まれてしまうかもしれない己の弱さを

 

 

「だから私にはもう出来ない…!勝つために全力を尽くすバトルなんて…!」

 

 

これ以上互いに現実を突きつけ傷つき合わず、早くこの苦しみから解放され楽になりたいと、膝から崩れ落ちたアンジュは涙が零れる顔を手で覆い項垂れる

 

 

「違うよっ!!」

 

「…!」

 

 

だが、リゼの一喝にアンジュは顔を上げる

 

 

「私がアンジュに求める全力のバトルはそんなんじゃない!小さい頃、私はアンジュや兄上のバトルを見て憧れた!それは強いからじゃない!心の底から楽しそうにバトルしてたからだよ!」

 

「…っ!」

 

「ポケモンバトルをする以上、誰だって勝ちたい気持ちはある…!負けられない、負けたくないバトルもあると思う…!」

 

 

"でも…"と、リゼは瞳に涙を浮かべ言葉を続ける

 

 

「それだけに囚われないでよ…!勝つか負けるかがポケモンバトルの全てじゃない…!ポケモン達と積み上げてきた力の全部を相手にぶつけて、心の底から胸が熱くなる楽しいもの…!私はアンジュがあの日に魅せてくれた、そんなバトルがしたいの…!!」

 

「リゼ…」

 

 

リゼは涙を流し、内に秘めた想いを伝える

 

その時、そんな彼女に同調するかのようにアンジュの腰にぶら下がるボールから1匹のポケモンが飛び出す

 

 

「ビパッ!ビパビィッ!」

 

「ビッパ…」

 

 

飛び出てきたのはビッパ…ゴルーグ達と違い、アンジュの過去を実際には目の当たりにしていない彼は、垣間見た彼女の様子からその苦しみを理解こそすれど、これまでの旅で何度もそうしてきたようにアンジュの力になり助けたい一心で、瞳に涙を溜めながら懸命に彼女を鼓舞しようと鳴き声を上げる

 

 

「…アンジュはん」

 

 

そこへ更に、戌亥がアンジュに声を掛ける

 

 

「アンジュはん、貴女は自分のポケモン達が信頼出来ない?」

 

「それは…っ!」

 

「信頼したいけど、怖いんでしょ?チャイカはんとのバトル…貴女は劣勢に追い込まれるに連れて敗北への焦りと恐怖に呑まれた。その気持ちが伝わったポケモン達もアンジュはんの想いに応えようと必死なって…それが原因で完敗を喫した」

 

 

あの日、木陰から眺めていたアンジュとチャイカのバトル。その時に感じ取ったことを戌亥は告げる

 

ポケモンバトルは人とポケモンが心を1つにして挑むもの。故に、トレーナーの気持ち次第でポケモン達のコンディションも大きく左右する

 

トレーナーが不安になれば、焦れば、恐れれば、その気持ちはポケモン達にも伝播し、追い詰められて本来の力を出せなくなる

 

 

「そして、リゼはんを巻き込んでしまった事件でアンジュはんのポケモン達への信頼は失ってしまったんとちゃう?」

 

「…っ!」

 

 

自身ですら気付いていなかった事実を戌亥に気付かされ、アンジュは言葉を失ってしまう

 

 

「…ポケモンは容易に人を傷付けられる力を秘めている。トレーナーがどれだけ気を付けても、ふとした時に間違いを犯してしまうかもしれない」

 

 

"だけど…"と、戌亥は言葉を続ける

 

 

「トレーナーと信頼を寄せ合うポケモンは絶対にその想いに応えてくれる。そして、アンジュはんのポケモン達はあの日に信頼を失われてなお、貴女のことを想ってる。だから一度だけでいい、チャンスを与えてあげてちょうだい。貴女に応えたいと想っているポケモン達を信頼してあげて」

 

「ビパァ…」

 

 

リゼ、戌亥、ビッパ…三者の想いを受け止めたアンジュは顔を深く俯かせる

 

 

(どんなに言葉を重ねられたって、克服するために足りなかったものが分かったからと言って、あの日に刻まれた恐怖は消えたりしない…。だけど…!リゼの…戌亥の…ゴルーグ達の想いをこれ以上裏切りたくない…!)

 

 

"だから…!"と、心の中で叫ぶアンジュはビッパと目を合わせる

 

 

「ビッパ…。私はもう一度お前達を信頼する勇気が欲しい…。だから、この旅で何度も私を助けてくれたお前に頼みたいんだ…。私の気持ちに、応えてくれないか?」

 

「ビパァ…!ビパァッ!!」

 

 

その言葉に、ビッパは嬉しそうに目を輝かせるとすぐに気持ちを切り替え、"任せて!"と言わんばかりに頼もしく鳴いた

 

 

「…ありがとう、ビッパ。お前の気持ちに、私も応えるよ」

 

 

アンジュはビッパにそう告げると、涙を拭い、立ち上がり、キリッとした表情を浮かべリゼに向かい合う

 

 

「アンジュ…!グレイシア、一度ゆっくり休んで!お願い!エンペルト!」

 

 

立ち上がったアンジュの姿に嬉しそうな声を漏らすリゼも涙を拭うと、グレイシアをボールへと戻し、代わる3体目のポケモンにエンペルトを繰り出す

 

 

「ノーマルタイプのビッパに鋼タイプを持つエンペルトをぶつけてくるなんて、容赦ないね」

 

「念を入れるに越したことはないからね!私はまだアンジュの底を見てないんだから!」

 

「買い被り過ぎ…って言いたいけど、これまでの汚名を返上するには、それを越えないといけないよな!」

 

 

そう意気込むリゼとアンジュは互いにニッと笑みを浮かべ合う

 

 

「ねぇ、イブラヒム…!これって…!」

 

「ああ…!どうやら、ここからが本当のバトルらしい!」

 

「リゼ様〜!アンジュさ〜ん!どっちも頑張れ〜!」

 

 

これから2人が見せてくれるであろうバトルにイブラヒム達も期待を高めるなか、改めて審判台に上がった戌亥は嬉しそうに笑みを溢し、バトル再開の合図を告げる

 

 

「それじゃあ、バトル始め!」

 

「エンペルト!"ドリルくちばし"!」

 

 

先手を取ったリゼの指示が飛び、エンペルトは"ドリルくちばし"を繰り出してビッパへと突っ込む

 

 

「ビッパ!"あなをほる"!」

 

 

対するビッパは"あなをほる"で素早く地中へと潜り込み、エンペルトの"ドリルくちばし"を回避する

 

 

「ビパァッ!」

 

「エンペ…ッ!?」

 

 

そして、エンペルトが"ドリルくちばし"の体勢を解いた瞬間にビッパは地中から飛び出し、"あなをほる"を炸裂させる

 

 

「エンペルト!"はがねのつばさ"!」

 

「ビッパ!"ひっさつまえば"!」

 

 

エンペルトは効果抜群の"あなをほる"のダメージに表情を苦痛に歪ませるも気迫の込もったリゼの指示を耳にすると根性で気を保ち直し、ビッパへ"はがねのつばさ"を振り下ろす

 

それをビッパは自慢の出っ歯を大きく鋭くさせた"ひっさつまえば"で迎え撃つ

 

 

「ちょっと、ビッパ凄くない…!?リゼ様のエンペルトと互角に渡り合ってる…!」

 

「強靭な歯を持つビッパだからこそ、"ひっさつまえば"の真価を発揮している…というのは当然だが…」

 

「アンジュさんと心が一つになってるから、よりパワーが増してる…!そういうことだよね…!」

 

「ビッパ!"かみつく"攻撃!」

 

 

フレン達がアンジュとビッパの予想外な強さに目を見張るなか、"はがねのつばさ"と打ち合い続けていたビッパは隙を見てその攻撃を躱すと、素早くエンペルトの足下へ滑り込み、その右足に"かみつく"を炸裂させる

 

 

「エンペ…ッ!?」

 

「エンペルト…っ!"ドリルくちばし"で振り払って…!」

 

 

右足に噛み付いたビッパを振り払おうとリゼは"ドリルくちばし"を指示するが、エンペルトは"かみつく"の追加効果によって怯んでしまい、攻撃に転ずることが出来なかった

 

 

「チャンスだ、ビッパ!"ばかぢから"!」

 

 

それを好機に、ビッパは鋼タイプに効果抜群となる格闘タイプの技"ばかぢから"を炸裂させ、大きく吹き飛ばす

 

 

「エンペェェェ…ッ!?」

 

「エンペルト…っ!」

 

「畳み掛けるよ!もう一度"ばかぢから"!」

 

 

大ダメージを受けて瀕死寸前のエンペルトに容赦なく、ビッパは再び"ばかぢから"を発動させ突っ込んでいく

 

 

「負けないで、エンペルト…!"うずしお"!」

 

 

絶体絶命のピンチでも諦めない姿勢を貫くリゼに応えようと、エンペルトはボロボロの身体を起こし、自身の特性"げきりゅう"によってパワーを増した"うずしお"をビッパへと放つ

 

 

「それはマズい…!ビッパ…!避けろ…!」

 

 

エンペルトの強力な反撃に危険を感じたアンジュの慌てた声に従ってビッパは咄嗟に飛び退き、外れた"うずしお"は地面に衝突して弾け散る

 

 

「今だよ、エンペルト!"れいとうビーム"!」

 

 

その時、リゼの指示を受けてエンペルトが"れいとうビーム"を放つと、弾け散った"うずしお"の大量の水が一瞬で凍りつき、それに呑まれたビッパは氷に囚われ身動きが取れなくなってしまう

 

 

「なに…っ!?」

 

「へぇ〜!」

 

「避けられた"うずしお"を利用だと…!?」

 

「エンペルト!"はがねのつばさ"!」

 

 

まさかの作戦にアンジュだけでなくイブラヒム達のからも驚きの声が上がるなか、無防備となったビッパにエンペルトが"はがねのつばさ"を叩き込む

 

 

「ビパァ…ッ!?」

 

「ビッパ…!くっ…!"ばかぢから"の影響でダメージが大きい…!」

 

 

氷の拘束から解放されるも、エンペルトの"はがねのつばさ"を食らったビッパはこれまでに使用した"ばかぢから"の追加効果で防御力を下げてしまったことが災いし、その手痛いダメージに一気にピンチに追い込まれてしまった

 

 

「エンペルト!よく応えてくれたよ!」

 

「エン…ペェ…!」

 

「…っ!エンペルトももう体力は限界…!次に出す攻撃が最後になりそう…!だったら…!」

 

 

リゼは肩で息をするエンペルトの様子からそう判断すると、左腕に装着したZリングを構える

 

 

「いくよ!エンペルトっ!」

 

「エンペ…ッ!」

 

「Z技…!なら、私達もいくよ!ビッパっ!」

 

「ビパァ…ッ!」

 

 

Z技で勝負に出るリゼにアンジュとビッパも意気込んで応じ、ポケットから取り出したZリングを左腕に装着する

 

 

「アンジュさんもZリング…!?」

 

「最後はZ技同士のぶつかり合いか…!」

 

 

Z技を仕掛け合う2人にイブラヒム達が声を上げるなか、リゼは揺蕩う水の流れを思わせる"水タイプのゼンリョクポーズ"を、アンジュはくるりと一回転すると右手を地面につけ左手を空へ向けて伸ばす"地面タイプのゼンリョクポーズ"を決め、直後に2人から溢れ出すZパワーを受け取ったエンペルトとビッパが力を漲らせる

 

 

「エンペェェェッ!!!」

 

「ビパァァァッ!!!」

 

 

エンペルトは発生させた激流を身に纏い、ビッパは割った地面から溢れ出た大地のエネルギーを身に纏って、互いに相手へ向かって突っ込む

 

ドォォォォォォォォンッ!!!

 

と、2体が繰り出すZ技のぶつかり合いは凄まじい衝撃を生み、互角押し合い空気を激しく震わせる

 

 

「エンペルト…っ!」

 

「ビッパ…っ!」

 

「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」」

 

 

重なり合うリゼとアンジュの咆哮…それに込められた2人の想いに応えるように、エンペルトとビッパも咆哮を上げ、更にZ技の威力を上げる

 

 

「エンペェェェェェッ!!!」

 

「ビパァァァァァッ!!!」

 

 

それでも互いに全く譲らず、最後は激しいぶつかり合いによって極限まで達した両者のエネルギーが暴発…2体を中心に大爆発が起こる

 

 

「「…っ!!」」

 

「きゃあ…っ!?」

「うお…っ!」

「うぅ…っ!」

 

「…っ!」

 

 

大爆発の衝撃に全員が耐えるなか、大量の黒煙が周囲に広がる

 

しばらくして衝撃も収まり、黒煙も風に流されてゆっくりと晴れていく

 

 

「エン…ペェ…」

 

「ビ…パァ…」

 

 

黒煙が十分に晴れ切った視線の先にはエンペルトとビッパが向かい合って立っていたが、直後にお互い同時に力尽き、その場にパタリと倒れた

 

 

「エンペルト、ビッパ、共に戦闘不能!よって勝者、リゼはん!」

 

 

2体の戦闘不能により、戌亥がバトルの決着を告げる

 

だが、バトルに勝った喜びも負けた悔しさを滲ませる声も歓声も上がらず、余韻に浸るような静寂が漂い、しばらくしてその結末を静かに受け止めたリゼとアンジュは奮闘した自身のポケモンの下へ歩み寄る

 

 

「お疲れ様、エンペルト。最高のバトルだったよ」

 

「エンペェ…」

 

「ご苦労様、ビッパ。思えば、お前には何度も励まされて助けてもらってたな…。本当にありがとう…」

 

「ビパァ…」

 

 

力を出し切り疲れ果てたエンペルトとビッパに労いと賞賛、感謝の言葉を伝えると、リゼとアンジュは互いに顔を合わせる

 

 

「最後は引き分けちゃったか。勝つつもりでいたのになぁ」

 

「悔しそうにしてるところ悪いんだけど、私の方がもっと悔しいんだからね。もし、アンジュが最初から全力だったらって思うと勝った気になれないよ」

 

「勝ち負けは気にしないんじゃなかったっけ?」

 

「まだまだアンジュには届かないな、って思い知らされて少し凹んでるだけだよ」

 

 

そんな軽口を言い合いながら、リゼとアンジュは互いに笑みを溢した

 

 

「お疲れ様。リゼはん、アンジュはん。良いバトルやったね」

 

「はい!2人共凄かったです!」

 

「見てる僕達もドキドキハラハラで、ずっと胸が熱かったよ!」

 

「ああ。改めて学ぶことも多いバトルだった」

 

「みんな、ありがとう…!」

 

 

戌亥とイブラヒム達から贈られたバトルの賞賛にリゼは感謝を伝えると、改まった様子でアンジュに向き合う

 

 

「ねぇ、アンジュ。今の気分はどう?」

 

「…お陰様で。凄く晴々しい良い気分だよ。ありがとう、リゼ」

 

 

恐怖から忘れてしまった大切なことを思い出し、無事にトラウマを克服したアンジュの満面の笑みにリゼは心底安心したように微笑み返す

 

 

「…アンジュ。私との旅、最後まで付き合ってよ。ポケモンリーグの挑戦を終える、その時まで」

 

 

そして、リゼは改めて自身の旅にアンジュを誘った

 

 

「…ごめん、リゼ。それは出来ない」

 

「…!?どうして…!」

 

 

だが、アンジュはそれを断り、その返答を予想だにしていなかったリゼは動揺を露わにし、理由を問う

 

 

「だって、また地方を一周するんだよ?流石に付き合わせられないよ」

 

「地方を一周…?どういうこと…?」

 

 

意味が理解出来ず問い返すリゼに、アンジュはコホンと咳払いを挟むと改めて答え直す

 

 

「私、もう一度ポケモンリーグに挑戦するためにジムを巡るよ。今度こそ私の全力を、ポケモンリーグの大舞台でリゼとぶつけ合いたいからさ」

 

「アンジュ…!」

 

 

その理由を聞いたリゼは嬉しさから涙を込み上がらせ、勢いよくアンジュに抱き着いた

 

 

「じゃあ、しょうがないね…!私、残りのジムバッジを手に入れて先に待ってるから…!アンジュも必ず、後から追い付いて来てよね…!約束だよ…!」

 

「うん、約束する…。リゼが憧れてくれた私に成って、必ず帰ってくるよ」

 

 

嬉し涙を流すリゼを強く抱きしめ返し、アンジュは固い意志を込めた声音で約束を交わした

 

 

「うぅ…!リゼ様…本当に良かった…!」

 

「うん…!アンジュさんも立ち直れて、本当に…!」

 

「…まったく、手強いライバルを増やしてくれたぜ」

 

 

そんな2人にフレンとメリッサは感動で涙ぐみ、イブラヒムは言葉とは裏腹な笑みを浮かべた

 

 

「…ありがとう、リゼはん。お帰り、アンジュはん」

 

 

そして、戌亥は柔らかい笑みを溢しながら、誰にも聞こえない小さな声でそう呟いた

 





リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、グレイシア、バタフリー
   サイドン、ルカリオ、ソウブレイズ

アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ、ウインディ
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