にじさんじ×ポケットモンスター   作:Mr.ソロ

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第73話「ヘルエスタジム!リゼvs戌亥!前編」

 

「エンペルト!"はがねのつばさ"!ルカリオ!"ボーンラッシュ"!サイドン!"すてみタックル"!バタフリー!"サイコキネシス"!」

 

 

アンジュとのバトルを経た数日後…7つ目のジムバッジを手に入れるため、ヘルエスタジムのジムリーダー:戌亥とことのジム戦を控えるリゼはその当日の朝、城の庭に設けられたバトルコートでポケモン達の特訓に精を出していた

 

エンペルトとルカリオがそれぞれ"はがねのつばさ"と"ボーンラッシュ"を打ち合い、バタフリーとサイドンは互いのパワーを強化すべく技をぶつけ合う

 

 

(アンジュも今頃頑張ってる!とこちゃんとのジム戦…絶対に勝ってポケモンリーグの舞台で約束を果たすんだ!)

 

 

あのバトルの翌日、リゼとの再戦を約束したアンジュは各地のジムを巡るため1人旅立った

 

トラウマを乗り越え、再び歩み出した彼女を思い返したリゼは改めてジム戦に向けて気合いを入れる

 

 

「リゼ様〜!おはようございます〜!」

 

「フレン…!それにイブラヒムさんとメリッサさんも!おはよう!」

 

 

するとそこへフレン達が顔を出しに現れ、リゼは特訓を中断して彼女達の下へ駆け寄る

 

 

「こんなに朝早くから特訓なんて、相当張り切ってますね」

 

「これからジム戦だと思うと、私とポケモン達も居ても立っても居られなくって」

 

「その気持ち、凄く分かります!」

 

「今特訓してる4体がジム戦のメンバーすか?」

 

「はい。とこちゃんは悪タイプポケモン使いのジムリーダーだから、相性の良いバタフリーとルカリオ、あとは"アームハンマー"を覚えてるサイドン。最後の1体は悩んだ結果エンペルトに決めました」

 

 

そう言ってリゼが振り向くと、エンペルト達は気合いの入った雄叫びを上げる

 

 

「みんな調子もやる気も十分って感じですね!」

 

「うん。ただ、グレイシアとソウブレイズ…。2人の選出を見送ることになったのはちょっと胸が痛かったです…」

 

「「「あ〜…」」」

 

 

申し訳なさそうな表情を浮かべるリゼに、察しが着いたイブラヒム達は苦笑いを浮かべる

 

エニカラ雪山の一件で進化しパワーアップしたグレイシアとリゼに心を開き、共に歩むことを決めたソウブレイズは次のジム戦で彼女の力になろうと張り切っていた

 

だが、戌亥が使う悪タイプポケモンにゴーストタイプのソウブレイズは相性が不利であり、場合によってはZ技という切札を使えるエンペルトの方が良いと考え、2体の選出は断念されたのだった

 

そういうわけで、せっかく頑張ろうとしてくれた2体の想いに応えてあげられなかった申し訳なさにリゼは胸を痛めることとなり、加えてグレイシアとソウブレイズの聞き分けが良く、すんなりと納得してくれたことも追い討ちとなっていた

 

 

「ブレイ」

 

「グレイ!」

 

 

するとその時、リゼのボールからソウブレイズとグレイシアが飛び出し、"今は目の前のことに集中しろ(して!)"と言いたげに鳴いた

 

 

「ソウブレイズ…!グレイシア…!うん…!そうだよね!今はとこちゃんとのジム戦に集中しないと!今回は出してあげられないけど、次のジムでは絶対に2人を活躍させてあげるからね!」

 

「ブレイ!」

「グレイッ!」

 

 

気を取り戻したリゼに、ソウブレイズとグレイシアは"その意気だ!"と言いたげな表情で頷いた

 

 

「リゼさんと戌亥さんのバトル、楽しみだね!」

 

「リゼ様!良ければ、特訓のお手伝いさせてください!」

 

「ありがとう、フレン!それじゃあ…!」

 

ぐ〜〜〜…

 

「「あっ…」」

 

 

フレンの申し出を快く受け取り、特訓を再開しようとしたその時、リゼとフレンのお腹が同時に鳴り響き、2人は羞恥に顔を赤らめ黙り込み、場に気不味い静寂が訪れる

 

 

「…まあ、特訓は一旦中断して一先ず朝飯を済ませないか?」

 

「そ、そうですね…!」

 

 

静寂を破ってくれたイブラヒムの提案によって、気不味い空気から抜け出せたリゼ達は朝食を取りに城の食堂へと移動する

 

 

 

 

「頼も〜!」

 

「ふふ。調子は良さそうやね、リゼはん」

 

 

それから数時間後…ポケモン達の最終調整を終えたリゼはイブラヒム達と共にヘルエスタジムへと訪れる

 

扉を開けた先には受付のカウンター前で待っていた戌亥と喫茶店のマスターの姿があり、リゼの元気な申し込みに戌亥はクスリと微笑み返した

 

 

「おはよう、とこちゃん!それにマスターさんも!」

 

「おはよう、リゼはん。おレン達も」

 

「おはようございます!!」

 

「どうも」

 

「おはようございます。ところで、どうしてマスターさんが?」

 

 

互いに挨拶を交わしたところでメリッサがマスターがこの場に居る理由について尋ねる

 

 

「ヘルエスタジムの審判はマスターが務めてるんよ」

 

「へぇ〜!そうなんですね!」

 

「はい。ですので皆様、よろしくお願いします」

 

「それじゃあ、早速バトルコートに移動しよか」

 

 

早々に談笑を切り上げ、リゼ達は戌亥の案内の下にヘルエスタジム内のバトルコートがある大部屋へと移動する

 

 

 

 

「それではこれより、チャレンジャー:リゼ・ヘルエスタ様とジムリーダー:戌亥とこによるジム戦を始めます」

 

 

ヘルエスタジムのバトルコートがある大部屋に着いた一同…リゼと戌亥はトレーナーの立ち位置となるコートの端へ移動し、イブラヒム達は観戦席に腰掛ける

 

そして、審判を務めるマスターが両者の準備が整った頃合いを見てジム戦のルール説明に入る

 

 

「使用ポケモンは4体、どちらかのポケモン全てが戦闘不能となった時点で試合終了。なお、ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められ、メガシンカ、Z技等の使用は両者共にいずれか1つまでとします。それでは、両者1体目のポケモンを」

 

「お願い!バタフリー!」

 

「いけ!グラエナ!」

 

 

ルール説明が終わり、バトルの最初の1体目としてリゼはバタフリーを、戌亥は"かみつきポケモン":グラエナを繰り出す

 

 

「とこさんの1体目はグラエナか〜!格好良いし、強そう〜!」

 

「リゼさんの方はバタフリー。まずはセオリー通り、タイプ相性の有利を狙っていくみたいだね」

 

「だが、それだけでそう上手くはいかないのがジム戦だ。どんなバトルになるか、見ものだな」

 

 

リゼと戌亥のジム戦にイブラヒム達の期待と興奮も高まるなか、いよいよ2人のバトル開始が始まる

 

 

「先行はチャレンジャー!それでは、バトル始め!」

 

「グラァッ!」

 

「…っ!」

 

「フリィ…ッ!?」

 

 

マスターの宣言によってバトルが開始されると同時に、グラエナが特性"いかく"を発動し、その威圧感に気圧されたバタフリーは怯えて攻撃力を下げられ、リゼも思わず圧倒されて冷や汗を流す

 

 

「す、凄い威圧感…!」

 

「う、うん…。流石はジムリーダーのポケモンだね…」

 

「開始早々に攻撃力を下げられたが、リゼさんのバタフリーは特殊技がメイン。不利にはならないが、あの威圧感は相当なプレッシャーだな」

 

「…バタフリー、いける?」

 

「フ…フリィッ!」

 

 

フレン達も威嚇するグラエナに圧倒されるなか、リゼはバタフリーに呼び掛け、共に気を引き締め直す

 

 

「よし!それじゃあ、いくよ!"ぎんいろのかぜ"!」

 

 

リゼは早速、悪タイプに効果抜群となる虫タイプの技:"ぎんいろのかぜ"を指示し、バタフリーは大きく翅を後ろへ引く

 

 

「グラエナ!"ふいうち"!」

 

 

だが、バタフリーが技を放つよりも先に、素早く駆け迫ったグラエナが悪タイプの先制技"ふいうち"を炸裂させる

 

 

「フリ…ッ!?フリィ…ッ!」

 

 

"ふいうち"を食らったバタフリーは吹き飛ばされるも負けじと体勢を立て直し、繰り出した"ぎんいろのかぜ"をグラエナに炸裂させる

 

 

「へぇ…!私のグラエナの"ふいうち"を食らって怯まないなんて、リゼはんのバタフリーなかなか良い根性してはるね」

 

 

攻撃を受けても持ち直して反撃に出たバタフリーからリゼに応えようとする気持ちを強く感じ取った戌亥は楽しそうな笑みを浮かべる

 

 

「バタフリー!もっと高く飛んで!"エアスラッシュ"!」

 

 

グラエナの攻撃が届かない上空から攻めようと、リゼの指示を受けてバタフリーは更に高く飛翔し、"エアスラッシュ"を連続で繰り出していく

 

 

「グラエナ!走って!」

 

 

戌亥の指示が飛び、グラエナはフィールドを駆け回ってバタフリーが次々と繰り出す"エアスラッシュ"を躱していく

 

 

「あのグラエナ、すばしっこくて技が全然当たらないね…!」

 

「まあ、技が当たりにくいのはバタフリーがグラエナとの距離を空けちまってることも原因ではあるけどな」

 

 

メリッサの指摘にイブラヒムがそう語る

 

相手との距離が空けば、その分だけ技の直撃までに時間がかかってしまう

 

攻撃を警戒して距離を取ったことで安全を確保したは良いものの、逆にそれがグラエナにとってバタフリーの攻撃を容易に躱せることとなってしまった

 

 

「やっぱり、そう都合良くはいかないよね…!なら、攻撃が当たりやすい状況を作る!バタフリー!フィールド全体に"しびれごな"!」

 

 

このままでは埒が明かないとリゼも気付き、まずはグラエナの動きを鈍らせようとバタフリーにフィールド全体へ"しびれごな"を降り注がせる

 

 

「逃げ場のない攻撃…!良い発想やけど、甘いよリゼはん!グラエナ!"バークアウト"!」

 

 

戌亥はリゼにそう言い放つと、グラエナに真上へ向けて"バークアウト"を繰り出させる

 

 

「グラァァァァァッ!!」

 

「フ…フリィ…ッ!?」

 

「くぅ…っ!?」

 

「み、耳がぁ…っ!?」

 

「これが"バークアウト"…!?なんつー爆音だよ…!」

 

 

思わず耳を塞いでしまう程の咆哮を怒鳴り放つグラエナの"バークアウト"に降り注ぐ"しびれごな"は吹き飛ばされ霧散し、上空にいるバタフリーも苦しまされ、羽ばたく力を削がれて飛行高度を落としてしまう

 

 

「今よ、グラエナ!"ほのおのキバ"!」

 

 

バタフリーの飛行高度が十分に下がったところで戌亥が仕掛け、グラエナは虫タイプの弱点を突ける炎タイプの技"ほのおのキバ"をバタフリーに炸裂させる

 

 

「フリィィ…ッ!?」

 

「バタフリー…っ!」

 

 

効果抜群となる攻撃を受けて大ダメージを負ったバタフリーは地面へと落下し、心配するリゼが鋭い声を上げる

 

 

「"ほのおのキバ"…!虫タイプポケモンへの対策は抜かり無いってわけか…!」

 

「畳み掛けるよ、グラエナ!"かみくだく"!」

 

 

弱点への対策に抜かりがない戌亥にイブラヒムが声を漏らすなか、"かみくだく"で勝負を決めに掛かろうとグラエナがバタフリーへと駆け迫る

 

 

「頑張って!バタフリー!"しびれごな"!」

 

 

窮地でも諦めず指示を飛ばすリゼ…その気持ちに応えようとバタフリーは体を起き上がらせ、グラエナの"かみくだく"が直撃する寸前に翅を羽ばたかせ繰り出した"しびれごな"をお見舞いする

 

 

「グラァ…ッ!?」

 

「グラエナ…っ!?」

 

 

至近距離で放たれた大量の"しびれごな"を浴びてしまったグラエナは一瞬にして体が麻痺し、その動きを止めた

 

 

「今だよ、バタフリー!"ぎんいろのかぜ"!」

 

 

大きな隙が生まれたグラエナにバタフリーは渾身の"ぎんいろのかぜ"を炸裂させる

 

 

「グラァ…」

 

「グラエナ、戦闘不能!バタフリーの勝ち!」

 

 

"ぎんいろのかぜ"の直撃を受けたグラエナは力無く倒れ、マスターから戦闘不能の判定が下される

 

 

「やった!よく頑張ったね!バタフリー!」

 

「フリィ〜!」

 

「お疲れ様、グラエナ。よう頑張ったね」

 

 

勝利したリゼとバタフリーはその喜びを分かち合い、戌亥はグラエナに労いの言葉を掛けてボールへと戻す

 

 

「まさか、効果抜群の大ダメージを受けていながら立ち上がるなんてね。バタフリーからリゼはんとの強い絆をヒシヒシと感じたわ」

 

「バタフリーとは旅に出てすぐ、キャタピーの時から一緒だったからね!とこちゃんにそう思ってもらえるなんて嬉しいね、バタフリー!」

 

「フリィ〜!」

 

 

戌亥に絆の深さを褒められ、リゼはバタフリーは嬉しそうに笑い合う

 

 

「それじゃあ、私の2体目はこの子!いけ!ジヘッド!」

 

 

戌亥は続く2体目に"らんぼうポケモン":ジヘッドを繰り出す

 

 

「戌亥さんの2体目はジヘッドか」

 

「悪とドラゴンタイプを持つポケモンだよね」

 

「格好良いグラエナとは打って変わって、可愛らしいポケモンだ〜!」

 

「見た目に惑わされるなよ、フレン。ああ見えてジヘッドは粗暴なポケモンだ」

 

「え…?そうなの…?」

 

「図鑑によると2つの頭は凄く仲が悪くて、互いに傷付け合ったり、餌を奪い争ったり、どっちが多く食べるか競ったりするんだって」

 

「後半の仲悪い理由ちょっと可愛くない?でも、あのジヘッドはそんな風に見えないよ?」

 

 

ジヘッドについて話し合うなか、メリッサが読み上げた図鑑の情報とは違って、戌亥のジヘッドには仲が悪そうにしている様子が見られないことをフレンが指摘する

 

 

「そうならないように育てられてるんだろ。それだけで、戌亥さんが如何に腕の立つトレーナーかってことが良く分かる」

 

 

仲が悪くないジヘッドを前に、イブラヒムは戌亥がトレーナーとして高い実力を有していると改めて認識する

 

 

「バタフリー、まだいける?」

 

「フリィッ!」

 

「ふむ。それでは、バトル始め!」

 

「バタフリー!"しびれごな"!」

 

 

バトルを続行する元気があるか確認するリゼにバタフリーはやる気十分な様子を見せ、両者の準備が整ったと判断したマスターがバトルの再開を宣言する

 

 

「バタフリー!"しびれごな"!」

 

 

とは言え、バタフリーがグラエナから受けたダメージは大きく、そう長くは戦えないとリゼは判断すると同時に、グラエナとの一戦で戌亥の手強さを実感していた

 

よって、リゼは最初から下手に攻撃するのではなく、バタフリーが倒れた後に続くポケモン達が有利に戦えるようにと、麻痺状態を狙って"しびれごな"を繰り出させる

 

 

「ジヘッド!"のしかかり"!」

 

 

だが、戌亥の指示で"のしかかり"を繰り出したジヘッドは地面を力強く踏み込むと次の瞬間には見た目の重量感にそぐわぬ驚異的な跳躍で"しびれごな"を回避し、そのままバタフリー目掛けて落下する

 

 

「バタフリー!避けて!」

 

「フリ…ッ!?」

 

 

リゼから回避の指示が飛ぶが、ジヘッドの驚異的な跳躍力に驚いたバタフリーは動き出すのが遅れてしまい、回避が間に合わず"のしかかり"の直撃を受けて地面へと落とし潰されてしまう

 

 

「フリィ…」

 

「バタフリー、戦闘不能!ジヘッドの勝ち!」

 

 

のしかかったジヘッドが退いた下ではバタフリーが目をぐるぐる回して倒れ伏しており、マスターから戦闘不能の判定が下される

 

 

「ごめんね、バタフリー。でも、よく頑張ってくれたよ。ゆっくり休んで」

 

「バタフリー、やられちゃった…」

 

「まあ、仕方ねぇよ。グラエナからのダメージも残ってたしな」

 

 

早くも戦闘不能となったバタフリーにイブラヒム達が所感を口にし合うなか、リゼは2体目のポケモンを繰り出す

 

 

「お願い!サイドン!」

 

「サァイッ!」

 

 

リゼが投げたボールからはサイドンが飛び出し、気合い十分といった雄叫びを上げてジヘッドに向かい合う

 

 

「リゼはんの2体目はサイドンか。力自慢だし、パワー勝負になりそうやね」

 

「ジヘェッ!」

 

 

両者ともに気を引き締めるなか、マスターがバトル再開の合図を告げる

 

 

「それでは、バトル始め!」

 

「サイドン!"ドリルライナー"!」

 

「ジヘッド!"しねんのずつき"!」

 

 

リゼはサイドンに"ドリルライナー"を、戌亥は"しねんのずつき"をジヘッドに指示し、2体は正面から真っ直ぐに突っ込んで行く

 

ドゴッッッ!!

 

と、重く鈍い轟音と衝撃を走らせ、サイドンの"ドリルライナー"と2つの頭を用いたジヘッドの"しねんのずつき"が衝突する

 

 

「凄い衝撃…!威力は互角みたいだね…!」

 

「とこさんのジヘッド…!リゼ様のサイドンと張り合うなんて…!」

 

「そう不思議でもない。ジヘッドの特性は攻撃力を上げる"はりきり"だからな」

 

 

サイドンと同等のパワーを見せるジヘッドにフレンとメリッサが驚くなか、イブラヒムが冷静にその理由を説明する

 

 

「流石はとこちゃんのポケモン…!でも、サイドンには悪タイプの弱点を突ける技がある!"アームハンマー"!」

 

 

リゼはサイドンを選出した最大の理由である悪タイプに効果抜群が取れる"アームハンマー"を指示し、サイドンは振り上げた右拳を勢いよくジヘッドへ振り下ろす

 

 

「ジヘェ…ッ!?」

 

 

サイドンが振り下ろした"アームハンマー"はジヘッドの右頭に直撃し、あまりの大ダメージに意識が飛んでしまったジヘッドの右頭はぐったりと首を落とす

 

 

「よし!これで…!」

 

「甘いよ、リゼはん!ジヘッド!"かみくだく"!」

 

 

効果抜群の"アームハンマー"が決まってリゼが喜んだのも束の間、戌亥の指示が飛んで"アームハンマー"の直撃を受けていなかった左頭のジヘッドがサイドンの左腕に"かみくだく"を炸裂させる

 

 

「サイィ…ッ!?」

 

「サイドン…っ!?」

 

「ジヘッド!そのまま投げ飛ばして!」

 

 

左頭のジヘッドは"かみくだく"のダメージに悶えるサイドンの左腕を思い切り引っ張り、その巨体を投げ飛ばす

 

 

「サイドンが投げ飛ばされた…!?」

 

「"はりきり"込みとは言え、片方の頭だけだってのになんてパワーだ…!」

 

「ジヘッド!続けて"のしかかり"!」

 

 

戌亥の更なる指示が飛び、ジヘッドは投げ飛ばされ倒れ込んだサイドンに"のしかかり"を炸裂させる

 

 

「サ…サイィ…ッ!?」

 

「しまった…!"のしかかり"の追加効果で麻痺状態に…!」

 

 

ジヘッドの"のしかかり"が炸裂した直後、その追加効果によってサイドンは体が痺れ始め麻痺状態となってしまう

 

 

「一瞬の油断で一気に形勢を覆される…!流石はシーズジムのドーラさんに次ぐ強さを誇るジムリーダーと言ったところか…!」

 

 

戌亥の容赦ないバトルに、これまで冷静に観戦していたイブラヒムはその強さと厳しさに表情を硬くする

 

 

「…っ!サイドン、戻って!」

 

 

悪い流れを断つべく、リゼはサイドンをボールへ戻す

 

 

「ありがとう、サイドン。ここは一度ゆっくり休んで。お願い!エンペルト!」

 

 

サイドンに代わり、リゼは3体目のポケモンにエンペルトを繰り出し、そのタイミングで気絶していたジヘッドの右頭が意識を取り戻す

 

 

「エンペルト…。なるほど、たしかに鋼タイプを持つその子なら、私のジヘッドが覚えてるほとんどの技のダメージを抑えられるね」

 

「うん!でも、それだけじゃないよ!エンペルト!"れいとうビーム"!」

 

 

リゼの指示が飛び、エンペルトはドラゴンタイプに効果抜群となる"れいとうビーム"を繰り出す

 

 

「そうよね。でも、そう簡単にはいかせへんよ!ジヘッド!"しねんのずつき"!」

 

 

効果抜群の"れいとうビーム"に対し、戌亥は回避でも防御でもなく攻撃を指示する

 

直撃すれば大ダメージとなるが、その指示にジヘッドは迷う様子を少しも見せず、"しねんのずつき"を繰り出すと正面から"れいとうビーム"に突っ込み、強引に押し進んでいく

 

 

「上手いな…!"しねんのずつき"で頭に纏う念を利用して、"れいとうビーム"のダメージを軽減してるのか…!」

 

 

"しねんのずつき"を攻撃と同時に防御手段としても利用していることにイブラヒムが驚くなか、"れいとうビーム"を押し切ったジヘッドがエンペルトに"しねんのずつき"を炸裂させる

 

 

「エンペ…ッ!?」

 

「エンペルト…っ!」

 

「ジヘッド!続けて"かみくだく"!」

 

「…っ!来るよ、エンペルト!"うずしお"!」

 

「エ、エンペェ…」

 

「エンペルト…!?もしかして、"しねんのずつき"で怯んじゃった…!?」

 

 

追撃を仕掛けて来るジヘッドを迎え撃とうとリゼは"うずしお"を指示するが、エンペルトは"しねんのずつき"の追加効果によって怯んでしまい、技を出すことが出来ず、ジヘッドの2つの頭が繰り出す"かみくだく"が両腕に炸裂してしまう

 

 

「エンペ…ッ!?」

 

「頑張って、エンペルト!"れいとうビーム"!」

 

「そうはさせへんよ!ジヘッド!振り回して!」

 

 

リゼは"れいとうビーム"での反撃を試みるが、エンペルトが繰り出す前にジヘッドは両腕に噛み付いたままエンペルトを持ち上げるとブンブンと乱暴に振り回す

 

 

「エンペェェ…ッ!?」

 

「ジヘッド!そのまま投げ飛ばして!」

 

 

ジヘッドの振り回しにエンペルトは"れいとうビーム"を繰り出せず、最後は勢いよく投げ飛ばされフィールドの大岩に叩き付けられる

 

 

「エン…ペェ…ッ!」

 

「ジヘッド!"げきりん"!」

 

 

怒涛の攻撃によるダメージで疲弊し、よろよろと立ち上がるエンペルトに戌亥は攻撃の手を緩めず、ジヘッドはドラゴンタイプの中でも強力な技"げきりん"を繰り出し突っ込んでいく

 

 

「マズいな…!特性の"はりきり"で更に威力が上がった"げきりん"を食らえばひとたまりもねぇぞ…!」

 

「…っ!エンペルト!"はがねのつばさ"で防御して!」

 

 

この窮地にフレンとメリッサは当然、イブラヒムも狼狽するなか、リゼの出した指示でエンペルトは"はがねのつばさ"を発動させた両腕を盾のように構え、ジヘッドの"げきりん"を受け止める

 

 

「ジヘェェェッ!!」

 

 

だが、一度衝突しただけでは止まらず、ジヘッドは2つの頭を用いて反撃の隙を与えない連続の"げきりん"を繰り出す

 

 

「うぅ〜…っ!なんとか防御出来てるけど、このままじゃ防戦一方だよ…!何処かで反撃しないと…!」

 

「無理だな。"げきりん"は一度繰り出せば疲れ果てるまで攻撃を続けるドラゴンタイプが覚える物理技の中で特に強力な技。加えて、ジヘッドは特性の"はりきり"で攻撃力が上がっている状態…しかも攻撃に隙がねぇ。今反撃のために防御を解いちまったら…」

 

「その瞬間に攻撃を受けちゃって、そのまま押し切られちゃうってこと…?」

 

 

尋ねるようなメリッサの答えにイブラヒムは"そうだ"と、淡々と肯定する

 

 

「そんな…!それじゃあ、エンペルトはもうどうしようもないってこと…!?」

 

「いや、そうでもない。"げきりん"はたしかに強力な技だが、疲れ果てると混乱状態に陥るデメリットがある」

 

「そうなの…!?」

 

「なら、それまで耐えることが出来たら…!」

 

「逆転のチャンスはある。おそらく、リゼさんもそれを狙ってるだろうが…」

 

 

と、リゼが勝利するための希望をフレン達に告げたものの、イブラヒムは険しい表情を浮かべていた

 

 

「ジヘェッ!ジヘェッ!」

 

「エン…ッ!ペルゥ…ッ!?」

 

 

何故なら、ジヘッドの絶え間ない"げきりん"を受け止め続けるエンペルトはとても苦しい様子だったからだ

 

 

(防御に徹したとしても"はりきり"の恩恵を受けた強力な"げきりん"を耐え切ろうとすんのは厳しいか…!)

 

「ジ…ヘェェッ!!」

 

「エンペ…ッ!?」

 

 

ジヘッドが疲れ果て混乱するまで凌ぐのは厳しいとイブラヒムが心中で予想するなか、何度も叩き込まれる"げきりん"に耐え切れなかったエンペルトは遂に"はがねのつばさ"での防御を崩されてしまい、吹き飛ばされ尻もちをついてしまう

 

 

「エンペルト…っ!?」

 

「マズいな…!体勢を崩された…!」

 

「残念やったね、リゼはん!ジヘッド!」

 

 

大きく体勢を崩したエンペルトに、戌亥は容赦なくトドメの攻撃を仕掛けるようジヘッドに指示を出す

 

 

「…っ!」

 

 

回避も防御も反撃も間に合わない…そう理解するものの、何か手はないかと歯を食い縛りながらもリゼは思考を巡らせるが、それを見つけ出すことは叶わず、ジヘッドのトドメの一撃がエンペルトに振り下ろされる

 

 

ドゴンッ!

 

 

「えっ…?」

 

 

だが、そこで予想外の出来事が起こった

 

エンペルトにトドメを刺すはずだったジヘッドの"げきりん"はその手前の地面に振り下ろされ、直撃しなかった

 

 

「あら…!」

 

「え…!?攻撃を外した…!?」

 

「ジヘッド、もしかして目が見えてないの…?」

 

「いや、そういうわけじゃねぇ…!技を外したのは特性のせいだ…!」

 

 

フレン達も驚くなか、心当たりのあるイブラヒムがその原因を言及する

 

 

「たしか、"はりきり"だったよね?」

 

「ああ…!"はりきり"には攻撃力を上げる効果があるが、同時に物理攻撃技の命中率が下がる効果もある…!戌亥さんのジヘッドは文字通り、張り切り過ぎて攻撃を空振りさせちまったんだ…!」

 

「と、とにかく…今はチャンスなんだよね!?リゼ様〜!エンペルト〜!」

 

「…っ!エンペルト!"れいとうビーム"!」

 

 

思わぬ展開に驚き固まっていたリゼはフレンの呼び掛けで我に返ると指示を出し、エンペルトが繰り出した"れいとうビーム"がジヘッドに直撃する

 

 

「ジヘェ…ッ!?」

 

「今だよ、エンペルト!"ドリルくちばし"!」

 

 

"れいとうビーム"で氷漬けになったジヘッドにエンペルトは立て続けに"ドリルくちばし"を炸裂させる

 

 

「ジヘェ…」

 

「ジヘッド、戦闘不能!エンペルトの勝ち!」

 

 

砕かれた氷と共に吹き飛ばされたジヘッドはぐったりと倒れ伏し、それを確認したマスターが戦闘不能の判定を告げた

 

 

「ふぅ…なんとか勝った…。でも、ちょっと釈然としないかも…。ジヘッドが攻撃を外さなかったら、エンペルトは戦闘不能になってたかもしれないし…」

 

「ふふ、リゼはんは本当に真面目やね。でも、運も実力の内よ。私のジヘッドの"のしかかり"の麻痺や"しねんのずつき"の怯みもそう。バトルの結果は、そういうのも全部ひっくるめたものなんだから」

 

「…うん、そうだね。ありがとう、とこちゃん」

 

 

戌亥からの気遣いに礼を言い、リゼは運が良かったから勝てたという些か納得し切れなかった結果を受け入れ、気を引き締め直す

 

 

「これで戌亥さんの残るポケモンは2体。リゼさんはまだ3体残ってるから、数の上では有利だね」

 

「ああ。だが、リゼさんのエンペルトとサイドンは体力を消耗してる。まだ油断は出来ない状況だ」

 

「2体目のジヘッドでかなり強かったけど、とこさんは3体目にどんなポケモンを出すんだろう…」

 

 

イブラヒム達がバトルの状況を整理するなか、戌亥はジヘッドをボールへと戻して続く3体目のポケモンを繰り出す

 

 

「私の3体目はこの子!いけ!タチフサグマ!」

 

 

戌亥は3体目のポケモンに"ていしポケモン":タチフサグマを繰り出す

 

 

「タチフサグマ…!初めて見るポケモンだ…!」

 

「この子はガラル地方に生息してるガラル:マッスグマが進化した姿なのよ」

 

「リージョンフォーム…だっけ?環境が違うと姿形が変わるだけじゃなくて、更に進化までしちゃうなんてポケモンって不思議だね…!」

 

「まあ、ジグザグマ族の原種はガラルの方らしいけどな。俺達のよく知ってる方が後から生まれた生態系だ」

 

「え…っ!そうなの…!?」

 

 

タチフサグマの進化前であるガラル:ジグザグマに関する豆知識を披露するイブラヒムにフレン達が驚くなか、バトル再開の宣言が下される

 

 

「それでは、バトル始め!」

 

「エンペルト!"うずしお"!」

 

 

バトル再開と同時に、直前のジヘッドとのバトルで体力を大きく消耗したエンペルトは特性"げきりゅう"を発動させ、通常時よりも格段に威力が上がった"うずしお"をタチフサグマへと放つ

 

 

「タチフサグマ!"かたきうち"!」

 

 

その"うずしお"にタチフサグマは正面から迎え撃ち、繰り出した"かたきうち"との力比べの末に突破した

 

 

「うそ…!?」

 

「"げきりゅう"でパワーアップした"うずしお"を打ち消した…!?」

 

「"かたきうち"は直前に味方のポケモンがやられていると威力が倍になるノーマルタイプの技だ。むしろ、あの"かたきうち"を"うずしお"で止められたのは大きい」

 

「タチフサグマ!突っ込んで!」

 

 

驚くフレン達にイブラヒムが解説するなか、"うずしお"を凌いだタチフサグマはエンペルト目掛けて駆け出した

 

 

「迎え撃つよ、エンペルト!"れいとうビーム"!」

 

 

接近戦を狙っているタチフサグマを近付けさせまいと、リゼはエンペルトに"れいとうビーム"を繰り出させる

 

 

「タチフサグマ!"ダストシュート"!」

 

 

タチフサグマは"ダストシュート"の素となる強力な毒エネルギーの塊を合わせた両掌に生成すると右足で蹴り放ち、"れいとうビーム"にぶつけて爆発を伴わせ相殺させる

 

 

「"ダストシュート"…!悪タイプに弱点を突けるフェアリータイプ対策の技か…!」

 

「グマァッ!」

 

「エンペルト!"はがねのつばさ"!」

 

 

悪タイプの弱点となる虫タイプ対策の"ほのおのキバ"を覚えるグラエナ、格闘タイプ対策の"しねんのずつき"を覚えるジヘッドに続き、フェアリータイプ対策の技をタチフサグマに覚えさせている戌亥の周到さにイブラヒムが声を上げるなか、目前まで迫って来たタチフサグマをエンペルトは"はがねのつばさ"で迎え撃つ

 

だがその時、"ふふっ…"と戌亥が不敵な笑みを浮かべた

 

 

「タチフサグマ!"ブロッキング"!」

 

 

直後、タチフサグマは両腕を自身の胸の前で斜め十字に構えて守りの体勢に入る技"ブロッキング"を繰り出し、エンペルトの"はがねのつばさ"を受け止める

 

 

「グッッマァッッ!」

 

「エンペ…ッ!?」

 

 

タチフサグマは"ブロッキング"によって"はがねのつばさ"を弾き返し、その衝撃でエンペルトは大きく体勢を崩してしまう

 

 

「今よ、タチフサグマ!"つじぎり"!」

 

 

次の瞬間、タチフサグマが繰り出した"つじぎり"がエンペルトに炸裂する

 

 

「エンペェ…ッ!?」

 

「エンペルト…っ!」

 

 

リゼの鋭い声が響くなか、エンペルトはその一撃で倒れ伏し、力尽きて起き上がることはなかった

 

 

「エンペルト、戦闘不能!タチフサグマの勝ち!」

 

「よくやったね、タチフサグマ」

 

「グマァァァッ!」

 

「…お疲れ様、エンペルト。よく頑張ってくれたね。ゆっくり休んで」

 

 

エンペルトの戦闘不能が宣告され、リゼはボールへ戻したエンペルトに労いの言葉を掛ける

 

 

「さっき、エンペルトの攻撃を防いだ技…!初めて見た…!」

 

「タチフサグマが得意とする技…"ブロッキング"だな。攻撃技のみを完全に防ぐ守りの技だが、直接攻撃から身を守った時に相手の体勢を大きく崩すことで防御力を大幅に下げさせる効果がある」

 

「攻撃を防ぐだけじゃなくて、相手の防御力まで下げるの…!?」

 

「逆転も狙える技ってことだね…」

 

「もう一度お願い!サイドン!」

 

 

イブラヒム達がタチフサグマの"ブロッキング"について話し合うなか、リゼは再びサイドンを繰り出す

 

 

「サァァァ…イ…ッ!?」

 

 

だが、サイドンは威勢よく飛び出たものの、ジヘッドとのバトルで陥ってしまった麻痺状態に苦しい様子を見せる

 

 

「ここでもう一度サイドン…!格闘技の"アームハンマー"が決まれば、一発逆転出来るんじゃない…!?」

 

「でも、リゼさんのサイドンが覚えてる技って、"いわなだれ"以外は全部直接攻撃の技じゃなかったっけ…?」

 

「ああ。それらがタチフサグマの"ブロッキング"で防がれると防御力を下げられちまって、一気に攻め落とされる危険がある」

 

「そ、そんなぁ…!?」

 

「麻痺状態になってることも考慮すれば、4体目の負担を出来るだけ減らすため、先にサイドンで少しでも削ろうってことなのか…。それとも、サイドンで勝つ算段があるのか…」

 

 

タチフサグマ相手に残る4体目のポケモンではなく、サイドンを選出したリゼの判断にイブラヒム達が言葉を交わすなか、戌亥は真っ直ぐな眼差しを向けてくるリゼに笑みを浮かべる

 

 

「その眼…。何か考えがありそうやね、リゼはん」

 

「それはどうだろうね?でも、これだけは教えてあげるよ、とこちゃん!私はサイドンでタチフサグマに勝つつもりでいるから!」

 

「ふふっ、大した自信やね。でも、それで良いのよ、リゼはん!アンジュはんに憧れて今日まで磨き上げてきた貴女のバトル!もっと私に見せてちょうだい!」

 





リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、グレイシア、バタフリー
   サイドン、ルカリオ、ソウブレイズ

アンジュ・カトリーナ
手持ち:ゴルーグ、ビッパ、ウインディ

戌亥とこ
手持ち:グラエナ、ジヘッド、タチフサグマ
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