「う〜〜〜ん…!長閑だね〜!」
ヘルエスタシティ建国記念で開かれたポケモンコンテスト:ヘルエスタシティ特別大会を終えたリゼはイブラヒム達と共に8つ目のジムがあるシーズシティへと向かっていた
「ジムへの挑戦予約だが、順番はどうする?」
「私は最初でも最後でも、何処でも大丈夫ですよ」
「私は最初じゃない方がいいかな〜…。いや、別に自信が無いわけじゃないんですけどね…?」
「目ぇ逸らしながら言っても全然信用ねぇよ。大方、相手がどんなポケモンで来るか分からないと対策も出来なくて不安なんだろ」
「そ、そんなことないもん…!リゼ様を差し置いてトップバッターでバトルすることに緊張するだけなんだから…!」
「はいはい。そういうことにしておいてやるよ」
「なら、最初は私かイブラヒムさん、どちらが先に挑むかじゃんけんで決めませんか?」
「いいっすよ」
ジム戦の話題を交えながらシーズシティへと続く道路を歩くなか、最初にジム戦を行う者をじゃんけんで決めようと、リゼとイブラヒムは拳を構える
「「最初はグー!じゃんけん…!」」
と、真剣な表情で引いた拳を軽く振り上げた2人が"ポンッ!"の掛け声で振り下ろそうとしたその時だった
「…っ!?ねぇ…!あそこで炎が上がってるよ…!」
突然メリッサが声を上げ、反射的にリゼ達は視点を彼女と同じ方へ向けると、少し遠く離れた道路外れの草原から激しく噴き荒れる炎が見えた
「あれは"かえんほうしゃ"か…!それもかなりの威力だな…!」
「でも、この辺りであんなに強力な"かえんほうしゃ"を覚えるポケモンなんて今まで見たことも聞いたこともないですよ…!」
「ということは、誰かのポケモンがバトルしてるってことなのかな…?」
「その可能性は高いが、別の住処からやってきた強い野生ポケモンって可能性も無くはないだろう」
「気になりますね…!行ってみましょう!」
話し合いの結果、強力な"かえんほうしゃ"を繰り出したポケモンの正体を突き止めようと、リゼ達はじゃんけんを中断して走り出す
*
「ウオォォォンッ!!」
「ゴリィィィッ!!」
ヘルエスタシティとシーズシティ…2つの街の間に舗装された道路から外れたある地点の草原では2人のポケモントレーナーがバトルしていた
「リザードン!"かえんほうしゃ"!」
1人はシーズシティ出身の葛葉…パートナーである色違いの黒いリザードンに指示を飛ばし、得意の"かえんほうしゃ"を繰り出させる
「ゴリランダー!"アクロバット"!」
その葛葉の相手となっているのは同じくシーズシティ出身の笹木咲…パートナーのゴリランダーは繰り出した"アクロバット"で軽快に跳び回り"かえんほうしゃ"を避けながら、リザードンとの距離を詰める
「"ドラゴンクロー"で迎え撃て!」
複雑に跳び回るゴリランダーに"かえんほうしゃ"は当たらないと判断した葛葉は接近戦に切り替え、リザードンは繰り出した"ドラゴンクロー"でゴリランダーの"アクロバット"に打ち合う
「リザードン頑張れ〜!」
「ゴリランダーの"アクロバット"…!凄い機動力ですね…!」
「地上戦だとゴリランダーの方に分がありそうだね。あの"アクロバット"を前では反撃は出来ても、迂闊に攻めれば大きな隙を作りかねない」
「逆に言えば、リザードンの得意な空中戦に持ち込めれば勝機は十分にあるってことだよね!」
そのバトルを少し離れたところで見守るのは葛葉の旅の仲間である叶、本間ひまわり、桜凛月、天宮こころの4人
リザードンを応援しつつ、ポケモン達とバトルの分析と予測を口にし合う
「ウオォォォンッ!」
"アクロバット"で攻め続けてくるゴリランダーと激しい攻防を行うリザードンは、跳び回るゴリランダーが自身の背後へと回った瞬間に大きく右腕を振り上げたのを視界の端で捉えると、素早く振り返って大振りの"ドラゴンクロー"を突き出す
「ゴリィィッ!」
「ウオォォ…ッ!?」
しかし、次の瞬間に地を蹴ったゴリランダーはリザードンへ攻撃を仕掛けようと真っ直ぐ突っ込んでは来ず、その機敏な動きで再び背後へと回った
「釣られたか…!」
攻撃するかに思われた振り上げられた右腕はリザードンの反撃を狙ったブラフだったことに気付いた葛葉は憎らしそうに言葉を吐いた
「今やゴリランダー!"かいりき"!」
直後に笹木の指示が飛んで、ゴリランダーは発動させた"かいりき"による一時的な超パワーでリザードンの尻尾を両手で掴むと、自分と同じくらいあるその巨体をブンブンと振り回し、何度も地面へと叩き付ける
「リザードンがあんなに軽々と…!?」
「元々素のパワーが高いゴリランダーが"かいりき"で更に力を増してるからね」
「リザードン!負けるな〜!」
「根性見せろ!リザードン!"かえんほうしゃ"!」
ひまわりの声援も飛ぶなか、葛葉の声にリザードンは自らを奮い立たせ、再び地面へ叩き付けようとゴリランダーが自身を持ち上げ振り回そうとした瞬間、その勢いを利用して自らぐるりと身を回し、ゴリランダーに衝突して転倒させると共にその身体をガッチリとホールドする
「ウオォォォンッ!!」
「ゴリィ…ッ!?」
そして、その状態からリザードンは至近距離の"かえんほうしゃ"を炸裂させ、ゴリランダーを大きく吹き飛ばす
「ゴリランダー…っ!?」
「いいぞ、リザードン!"フレアドライブ"!」
効果抜群の大ダメージを負ったゴリランダーを心配して笹木が鋭い声を上げるなか、葛葉は容赦無く追撃を指示し、リザードンは"フレアドライブ"を繰り出し突っ込んでいく
「負けるな、ゴリランダー!"がんせきふうじ"!」
負けじと指示を飛ばす笹木の声にゴリランダーもまた応えようと気力を振り絞り、身体を起き上がらせると繰り出した"がんせきふうじ"を突っ込んで来るリザードンへと投擲する
「ウゥゥ…ッ!ウオォォォン…ッ!?」
真っ向から突っ込んだリザードンだったが、投擲された幾つもの"がんせきふうじ"の大岩の直撃に勢いを殺され、"フレアドライブ"の持続力が保たずゴリランダーへの直撃一歩手前で返り討ちとなってしまう
「やるなぁ…!」
「タイプ相性が良いからって舐めんなよ!」
「ウオォォォンッ!」
「ゴリィィィッ!」
一筋縄ではいかない相手に葛葉と笹木、リザードンとゴリランダーは更に闘志を燃やす
「あのリザードン…!やっぱり葛葉さんだったんだ…!バトルの相手は…笹木さん…!?」
「あぁ〜っ!リゼちゃんやん!」
「わあ〜!久しぶり〜!」
「一緒にいるのは…たしか、イブラヒムさん達でしたっけ…?ヤオウシティのタッグバトル大会で葛葉さん達がバトルした…」
「みたいだね。あれ…?アンジュさんの姿が見えないけど…」
その時、遠方からリザードンの"かえんほうしゃ"を目撃して駆け寄って来たリゼ達に気付いて叶達が声を上げる
「リゼやって…!?」
「おいおい!バトル中に余所見してんじゃねぇぞ!リザードン!"かえんほうしゃ"!」
思わぬ再会に笹木も声を上げるが、葛葉はお構いなしに指示を飛ばし、リザードンが渾身の"かえんほうしゃ"を繰り出す
「なっ…!?ゴリランダー…っ!"かいりき"で地面をひっくり返して…!」
リゼとの再会を喜ぶ暇を微塵も与えない葛葉の容赦無さに驚く笹木の咄嗟の指示を受け、ゴリランダーは"かいりき"のパワーで抉り返した地面の大破片を盾にリザードンの"かえんほうしゃ"を受け止める
「ゴ…リィ…ッ!?」
しかし、"かえんほうしゃ"の凄まじいパワーに地面の大破片は弾かれ大きく吹き飛び、ゴリランダーは直撃こそしなかったものの、その衝撃で後方に吹き飛ばされてしまう
「ゴリランダー…!大丈夫か…!?」
「ゴ…リィ…!」
「悪ぃけど、俺はバトルで手加減なんてしねぇ!恨むなら気を抜いた自分を恨めよ!リザードン!"ドラゴンクロー"!」
葛葉が笹木にそう言い放つと、リザードンは"ドラゴンクロー"を発動させ、吹き飛ばされた痛みに苛まれながらも起き上がろうとしているゴリランダーに突っ込んでいく
「ゴォォォ…ッ!?」
「「「「「…っ!!?」」」」」
その時、丁度先ほど吹き飛んだ地面の破片が落下し、その辺りからポケモンのものと思われる大きな悲鳴が上がった
「い、今のって…!」
「あそこです…!行きましょう…!」
嫌な予感を感じた一同はポケモンの悲鳴が上がった方へ慌てて走り寄る
そこには、落下してきた地面の破片が直撃して大怪我を負ったゴーゴートが倒れていた
「大変…!酷い怪我だよ…!」
「早くキズぐすりを…!」
「いや、それだけじゃ足りねぇ…!この怪我、かなり当たり所が悪い…!他にもっと強力な…特殊な回復効果を持つものじゃねぇと…!」
「それなら私に任せて!出てきて!ラッキー!」
ゴーゴートの怪我の具合からキズぐすりによる応急処置では不足だと慌てる凛月達にイブラヒムが告げるなか、良い考えがあると言い出したフレンがラッキーを繰り出す
「ラッキー!お腹のタマゴをゴーゴートに食べさせてあげて!」
「ラッキ!」
フレンからのお願いにラッキーは迷い無く頷き、ゴーゴートへ近寄るとお腹の袋に入れてある大きなタマゴを取り出し割り、その中の蕩ける黄身を優しくゆっくりと飲ませる
「なるほど…!ラッキーのタマゴには豊富な栄養が詰まってる…!これなら、キズぐすりでの応急処置よりも高い回復の効果が見込める…!」
「凄いよ、フレン!」
「えへへ…!それほどでもありませんよ、リゼ様〜…!」
「ああ、フレンにしては的確で素早い判断だ…」
「それ褒めてないよねぇ!?」
叶とリゼに褒められるも、意外と驚くイブラヒムにフレンが憤慨するなか、ラッキーから貰ったタマゴの黄身を飲み干したゴーゴートの苦しかった表情が少しずつ和らいでいった
「かなり良くなったみたい…!」
「でも、まだ動けるほどじゃないよ…。フレンさん…でしたよね?アナタのラッキー、"タマゴうみ"や"いやしのはどう"を使えたりしませんか…?」
「すみません、今は覚えてなくて…」
「となると、怪我そのものを治すにはポケモンセンターに連れていくしかないね…。誰かがゲットしてボールに入れるか、ポケモンに運んでもらうか…」
「ゲットならお前やな。リザードンの"かえんほうしゃ"が強過ぎたせいやし」
「はあ?お前とゴリランダーが気ぃ抜いてなきゃ、もっとマシに対応出来たんじゃねぇのかよ!」
「なんやとぉ…!」
「2人共!言い合いなら後で…!」
ラッキーのおかげでゴーゴートは激しい痛みこそ引いたものの怪我そのものは酷く、現状のリゼ達では不可能なより高度の治療を受けさせるため、どうやってポケモンセンターに連れて行こうかと思案するなか、その責任を押し付け合い始める葛葉と笹木をひまわりが止めようとする、その最中だった
「ポニ!ポニィ〜ッ!」
「「「「「…っ!?」」」」」
「このポケモンは…!」
「ポニー…タ…?の割には、何と言うか凄く夢カワな感じというか…?」
パカラパカラと蹄の音を立てながらリゼ達の下へ駆け走って来たのは、特徴的な立髪や尻尾が炎ではなく、雲のようにフワフワモフモフしてそうな不思議な色合いの毛が生えたポニータに良く似たポケモンだった
「ポニッ!ポニィ〜…ッ!」
リゼ達が戸惑うなか、ポニータらしきポケモンは倒れているゴーゴートへ心配そうに近寄ると、頭に生えてある小さな角を軽くゴーゴートの額に当て、直後に桃色の淡い光の波紋を放ち出し、ゴーゴートを包み込む
「この技は…!」
「"いやしのはどう"…!」
先程、凛月がフレンのラッキーが覚えていないかと尋ねた他のポケモンを回復させることが出来る技"いやしのはどう"
ポニータらしきポケモンからそれを浴びせられたゴーゴートはその大怪我をみるみると治していく
「ポ…ポニィ〜…」
「だ、大丈夫…!?」
「いた…!ポニータ〜!」
ゴーゴートの怪我が十分に治ったところで"いやしのはどう"を駆使して疲れ切った様子のポニータらしきポケモンはその場にへたり込み、リゼ達が心配するなか、遠くから修道着に身を包んだ1人の女性が駆け寄って来る
「また私を置いて行って…。一緒にいないと疲れて動けなくなった時に大変だって言ったでしょう…?」
「あ、あなたはもしかして…!?」
「四天王のシスター・クレアさん…!?」
「「「「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇっ…!!?」」」」
「「四天王ぉっ…!?」」
「この人が…!」
「どうしてこんなところに…!?」
ここまで走って来て疲れたのか、息を切らしながらポニータにお説教の言葉を口にする女性にリゼ達は大声を上げて驚く
彼女の名はシスター・クレア…竜胆尊や黛灰、ましろに並ぶニジサンジ地方が誇る四天王の1人だった
*
「それじゃあ、改めて自己紹介しますね。私はシスター・クレア。この教会でシスターを務めながら、ポケモンリーグの四天王も任されてもらっています。どうぞ、よろしくお願いしますね」
クレアとの邂逅を果たした後、リゼ達は彼女がシスターとして務め住まうシーズシティ離れの教会に招かれ、そこの談話室でお茶を頂いていた
「こちらこそ、よろしくお願いします!こんなところで四天王のクレアさんに逢えるなんて光栄です!」
「それと先程はありがとうございました。アナタのポニータのおかげでゴーゴートも無事に済みました」
「ほら、葛葉と咲ちゃんも御礼言って」
「「本当にありがとうございました…」」
「気にしないでください。あの子、怪我をしたり弱ってるポケモンの気配を感じ取る能力が敏感で、気付くと一目散に助けに行っちゃうから。でも、次からは気を付けてくださいね」
ひまわりに促され心底反省した様子で謝意を述べる葛葉と笹木にクレアはクスリと笑い、2人を気遣いながらも軽くお叱りの言葉を告げる
あの後、怪我が大分癒えたゴーゴートは安静のためにと教会で管理しているポケモン達の小屋に運ばれ、今は付き添っているポニータと共にぐっすりと眠っていた
「そういえば、あのポニータは姿が普通とは違いますけど、もしかして特殊な環境で変化を遂げたリージョンフォームですか?」
「はい。あの子はガラル地方にあるルミナスメイズの森という場所で発見されたポニータなんです。タイプも通常の炎タイプからエスパータイプに変わってるの」
「へぇ〜、エスパータイプなんだ〜!」
「いいな〜!私もあのポニータゲットした〜い!」
「ところで、みんなはポケモンリーグへの挑戦を目指しているトレーナーさん?」
「はい。俺達は8つ目のジム戦になるシーズジムへ挑戦しに行くところでした」
「僕達は7つ目になりますが、同じく次はシーズジムに挑戦するつもりです」
「ウチもそうです」
「そうなんですね!ジムリーダーのドーラちゃんは手強いから、しっかり準備して挑んでくださいね!」
「ドーラ"ちゃん"…?ママと知り合いなんですか?」
「…っ!」
談笑の最中、クレアがシーズシティのジムリーダー:ドーラを"ちゃん"付けして呼んだことに疑問を抱いてひまわりがそう尋ね、葛葉も眉をピクリと動かす
「ママ…?」
「葛葉さんとひまわりちゃんは、シーズシティのジムリーダー:ドーラさんが母親なんだって」
「あ〜…!そういえば、前にイブラヒムと葛葉さんがバトルした時、そんなことを言ってたような…!」
「うん。ドーラちゃんとは、まだお互いにポケモンリーグに挑戦するトレーナーだった頃からの友達なの。それでいて、今はチャンピオンリーグのライバルでもあるかな」
「へぇ〜!そうなんだ〜!」
自分の母親が四天王の1人と友人であることを知ってひまわりが目を輝かせるなか、ガタリと音を立てて葛葉が無言で椅子から立ち上がる
「うわっ…!?なんやいきなり…!」
「葛葉さん…?」
笹木が驚き、凛月が小首を傾げるなか、葛葉は真っ直ぐにクレアと相対する
「クレアさん。いきなりで悪いんですけど、俺とバトルしてくれませんか?」
「「「「「えぇぇぇ…っ!?」」」」」
「いいですよ」
「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ…っ!!!?」」」」」
急にバトルを申し込んだ葛葉とそれに迷いなく快諾したクレアに一同は二度驚きの声を上げ、叶唯一人だけは"やれやれ…"と言った様子で呆れていた
「俺は今年のポケモンリーグで優勝してチャンピオンリーグに進み、舞元さんを倒す。その過程で、アンタともバトルするかもしれない。だから、今の自分が何処まで通用するのか一度確かめてみたいんすよ」
「素晴らしい心掛けだと思います。それじゃあ、ここの裏手にバトルコートがあるので移動しましょうか」
*
「審判は僕が務めるよ。ルールの方は?」
「3対3…どちらかのポケモン全てが戦闘不能になったら決着で」
「分かりました」
一同はクレアに案内されて教会の裏手に設けられたバトルコートへ移動し、観戦するリゼ達は側に備え付けられているベンチに腰掛け、審判を引き受けた叶がその立ち位置に着く
「まさか、葛葉さんが四天王に勝負を挑むなんて…」
「いや、リゼちゃんもスメシシティで黛さんとバトルしてたやん」
「あの時は色々と事情があったからで…」
「まあ、普通なら恐れ多くてバトルしようって気にはならないですよね…。でも、葛葉さんも悪戯に勝負を挑んでるわけじゃないんです。四天王との実力差を把握することは勿論、バトルを通じて自分とポケモン達をより高めようとしてる」
「はい。それはさっき、クレアさんにバトルを申し込んだ時の雰囲気から感じ取れました」
強さを求める葛葉の並々ならぬ想いを語る凛月にリゼも頷く
「なら、しっかり応援しないとだね!」
「そうだね〜。前にましろさんとバトルした時は最後の1体まで追い詰めれたけど、負けちゃったからな〜」
「ましろさんともバトルしたんですか…!?」
「ゴーストポケモン使いのか…。その時のバトルで相手が全力だったかどうかは定かじゃないが、四天王に届き得るかもしれないその実力…あれからどれだけ腕を上げたのか、見せてもらおうじゃねぇか」
RRRビーチで竜胆に挑んだばかりか、ましろにも挑み、これからクレアとのバトルに臨む葛葉の貪欲さにリゼが驚嘆し、イブラヒムがヤオウシティでバトルしたことを思い返しながら見守るなか、葛葉がボールを手に取る
「俺の1体目はこいつだ!いけ!ギャラドス!」
「キシャアァァァァッ!!」
葛葉が繰り出したのはギャラドス…力強い咆哮から、気合いは十分なことが見て取れる
「ギャラドスかぁ〜!なら、私はこの子!出ておいで!マホイップ!」
対するクレアは"クリームポケモン":マホイップを繰り出す
「マホッ!」
「「「可愛い〜っ!」」」
対して、クレアが繰り出したのは苺の飾りが特徴的な"クリームポケモン"のマホイップ…その可愛らしい見た目と仕草に魅了されたフレンや天宮達が黄色い声を上げる
「キシャァァァァァッ!」
「マホ…ッ!?」
互いのポケモンが場に出揃った途端、ギャラドスは威圧的な咆哮を上げる特性の"いかく"を発動し、驚いたマホイップは"ビクリッ!"と体を震わせる
「ギャラドスの"いかく"が発動しましたね。これでマホイップの攻撃力は下がったけど…」
「マホイップの攻撃手段は特殊技がメインだから、ほぼ無意味だな」
リゼの呟きにイブラヒムがそう返すなか、いよいよ葛葉とクレアのバトルの火蓋が切られる
「それでは、バトル始め!」
「ギャラドス!"アクアテール"!」
試合開始の宣言と同時に動いた葛葉はギャラドスに"アクアテール"での速攻を仕掛けさせる
「マホイップ!"とける"!」
突っ込んで来るギャラドスに対し、"とける"を繰り出したマホイップはその身体をゲル状に変化させ、直後に振り下ろした"アクアテール"を受け止める
「マホッ!」
「全然効いてなくない…!?」
「"とける"は身体をスライムのように柔らかくすることで攻撃の衝撃を吸収し受け流す技だ。だとしても、たしかに効いて無さ過ぎだな」
「物理攻撃は効果が薄いか…!なら、ギャラドス!"ハイドロポンプ"!」
"アクアテール"を受けて平気な様子のマホイップに驚くフレンにイブラヒムがそう解説するなか、葛葉は攻め方を変えてギャラドスに今度は"ハイドロポンプ"を繰り出させる
「マホイップ!"めいそう"!」
"アクアテール"の時と同様…迫る"ハイドロポンプ"を前にマホイップは回避しようとはせず、繰り出した"めいそう"で精神を集中させ、その直撃を受け止める
「マホッ!」
「"ハイドロポンプ"も効いてない…!?」
「"めいそう"で特攻と一緒に特防も強化したからだな。とは言え、二度も攻撃を受けてあんなに平気なんてな…」
「あのマホイップ、相当防御に厚く育てられてるな…!」
またしてもギャラドスの攻撃を受けて平気な様子のマホイップにひまわり達は驚きの声を上げ、イブラヒムと笹木は冷静にクレアのマホイップを分析し、そう呟きを落とした
「このまま積み続けられると厄介だな…!運ゲーには頼りたくねぇけど、こうなったら仕方ねぇ…!ギャラドス!"こおりのキバ"!」
攻撃は悉く通用せず、このまま更に"とける"と"めいそう"を積み重ねられればマホイップを倒すことは困難を極めると悟った葛葉は追加効果の凍り状態か怯みを狙って、ギャラドスに"こおりのキバ"を繰り出させる
「マホイップ!"マジカルシャイン"!」
その時、クレアの指示でマホイップは攻撃に転じ、"マジカルシャイン"を繰り出す
「キ…シャァァァ…ッ!?」
正面から突っ込んだギャラドスは"マジカルシャン"の眩い光に"こおりのキバ"を衝突させ力任せに突破しようとするが、押し切れずに弾き返されてしまう
「葛葉のギャラドスがパワー負けした…!?」
「"めいそう"による特攻の強化が効いてるな」
「攻撃は物理も特殊も効果が薄く、凍りや怯みを狙える"こおりのキバ"も"マジカルシャイン"に阻まれて届かない…。これはかなり苦しい状況になりましたね…」
「…これ以上やっても無駄っぽいな。戻れ、ギャラドス」
ギャラドスではマホイップに勝つのは厳しいとリゼ達が悟るなか、葛葉もそれを理解したのかギャラドスをボールへと戻す
「交代か。まあ、妥当な判断だな」
「でも、あのギャラドスが苦戦するくらい防御力が高くなったマホイップを攻略出来るポケモンが他にいるのかな…?」
イブラヒムの呟きにメリッサがそう疑問を呈するなか、葛葉は次なるポケモンが収まっているボールを手に取る
「いけ!クロバット!」
葛葉がギャラドスに代わって繰り出したのは毒・飛行タイプのクロバットだった
「クロバット…!ゴルバットが進化したんですね…!」
「毒タイプを持つクロバットなら、フェアリータイプのマホイップに相性が良い!パワーで押せないなら、タイプの弱点を突こうってわけやな!」
「だが、防御を高めたあのマホイップは弱点を突いたところで容易に倒せる相手じゃなくなってるぞ」
マホイップにタイプの相性が良いクロバットの登場にリゼ達が沸く隣でイブラヒムが難色を示すなか、2人のバトルが再開される
「クロバット!限界高度まで飛び上がれ!」
動き出しは葛葉から…しかし、今度は速攻を仕掛けた先程とは違い、クロバットを天高くへ飛び上がらせる
「あんな高さから何をするつもりなんだろう…?」
「"エアカッター"や"ヘドロばくだん"で遠距離からちまちま削る…ってわけでも無さそうだが…」
イブラヒム達が行動の意図を読もうとするなか、クロバットが最高高度に達したところで葛葉が仕掛ける
「よし!そこから"ブレイブバード"だ!」
葛葉の指示受けたクロバットは到達した遥か上空から急降下を始めると同時に飛行タイプの物理技の中で相当な威力を誇る"ブレイブバード"を繰り出す
「"ブレイブバード"…!?そんな強力な技を覚えてたなんて…!」
「あの高さから勢いを付けて威力が格段に増した"ブレイブバード"なら、マホイップの"マジカルシャイン"の光を突破出来るかもしれんな…!」
「マホイップ!"マジカルシャイン"!」
葛葉の作戦に一同が唸るなか、ギャラドスの時と同じくクレアはマホイップに"マジカルシャイン"を繰り出させ、クロバットの攻撃を迎え撃つ
「クロ…バァァァァァッ!!」
"マジカルシャイン"に激突したクロバットは力比べに臨み、数秒に及ぶ押し合いの末に突き破った
「"マジカルシャイン"を突破した…!」
「これなら…!」
「やりますね…!でも、甘いですよ!マホイップ!"とける"!」
だが、"マジカルシャイン"を突破したのも束の間、マホイップは"とける"を発動させて防御の態勢に入る
「また"とける"…!?」
「これじゃあ、結局ダメージが入らないよ…!」
クロバットの攻撃が無駄に終わってしまうと皆が青ざめるなか、葛葉がニヤリと笑みを浮かべる
「今だ、クロバット!"くろいきり"!」
"とける"の発動でゲル状になっているマホイップと衝突する寸前で、急ブレーキを掛けて"ブレイブバード"を中止したクロバットは口を開き、"くろいきり"を吐き出した
「マホ…ッ!?」
「"くろいきり"…!良い技を持ってますね…!」
マホイップが"くろいきり"に呑み込まれるなか、クレアは楽しそうにそう呟く
「イブちゃん、あの技は…?」
「"くろいきり"…アレに呑み込まれたポケモンはそれまでに技や特性で高めた能力を元に戻されるんだ」
「じゃあ、これでマホイップが"とける"や"めいそう"で高めた防御力は無くなった…!」
「攻撃するなら今がチャンスだね!」
「いっけぇっ!葛葉ぁっ!」
「クロバット!"クロスポイズン"!」
ひまわり達の声援が飛ぶなか、葛葉の指示を受けてクロバットは持ち前の高い素早さでマホイップとの距離を一瞬で詰めると効果抜群の"クロスポイズン"を炸裂させる
「マホォ…ッ!?」
「まだまだ…!マホイップ!"マジカルフレイム"!」
だが、効果抜群の一撃を受けたマホイップはまだ倒れず、吹き飛ばされながらも体勢を立て直すと繰り出した"マジカルフレイム"をクロバットに直撃させる
「クロバァ…ッ!?」
「「「あぁ…っ!?」」」
「負けるな、クロバット!"クロスポイズン"!」
"マジカルフレイム"の直撃にひまわり達が不安の声を上がるが、葛葉の呼び掛けにクロバットは気迫を取り戻すと自身を包む炎を乗せた"クロスポイズン"の斬撃を飛ばす
「マホォォォ…ッ!?」
「マホイップ…っ!?」
マホイップは"炎のクロスポイズン"の直撃とその爆発に呑み込まれ、爆煙が晴れるとその場に仰向けで倒れていた
「マホイップ、戦闘不能!クロバットの勝ち!」
「よっしゃあっ!よくやったぞ、クロバット!」
「クロバッ!」
叶がマホイップの戦闘不能を告げ、葛葉はクロバットを褒めると共に拳をグッと握り締める
「わぁお〜っ!」
「いいぞ〜!葛葉〜!クロバット〜!」
「葛葉さん、凄い…!」
「四天王相手に先に1本取っちゃったぞ…!」
「下手にギャラドスで攻め続けず、冷静に"くろいきり"が使えるクロバットに交代した結果だな」
先に四天王のポケモンを下した葛葉にひまわり達が歓声を上げ、リゼと笹木は驚倒し、イブラヒムは冷静にその勝因を分析する
「お疲れ様、マホイップ。ゆっくり休んでね。流石はチャンピオンを目指すだけあって、高い実力を兼ね備えていますね、葛葉さん」
「どうもっす。でも、勝負はまだまだこれから…そうっすよね?」
「勿論です。身に余る光栄だけど、ニジサンジ地方の四天王…その一角を担う者として、簡単に勝ちを許すつもりはありません」
先手を取られてもその気迫に一切の揺らぎが見受けられないクレアの姿に、彼女が四天王である前に1人のトレーナーとして確固たる実力を有していると感じ取った葛葉はニヤリと悪童のような笑みを浮かべた
リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、グレイシア、バタフリー
サイドン、ルカリオ、ソウブレイズ
笹木咲
手持ち:ゴリランダー、オオスバメ、ガラガラ(アローラ)
葛葉
手持ち:リザードン、クロバット、ギャラドス
ガバイト、ルガルガン(真昼)
シスター・クレア
手持ち:マホイップ