にじさんじ×ポケットモンスター   作:Mr.ソロ

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第84話「親子対決!葛葉vsドーラ!」

 

「驕り…だと…?」

 

 

ドーラの罵声に思わず後退りしてしまうほどの恐れを抱いていた葛葉は"驕り"という言葉を聞いた瞬間、眉を吊り上げ鋭く睨み返した

 

 

「事実、俺は四天王と渡り合える実力を付けた…!なのに母さんに勝てないって…?そんなはずねぇだろ…!」

 

「ならどうして、アンタは追い込まれているの?私に勝てると言うなら、もっと優位に立ち回ってみなさい!」

 

「これからやってやるよぉっ!いけぇっ!ルガルガンっ!」

 

 

声を荒げる葛葉はボールを投げ、3体目のポケモンに"オオカミポケモン":ルガルガンを繰り出す

 

 

「真昼の姿のルガルガンか」

 

「真昼の姿…?」

 

「ルガルガンはイワンコというポケモンの進化形なんだが、進化する時間帯によってその姿が変わるんだ」

 

「そうなんだ〜!あ、でもイワンコってたしか岩タイプのポケモンでしたよね?その進化になるルガルガンも当然岩タイプだから、水タイプのギャラドスに相性は悪いんじゃ…?」

 

「いや、ギャラドスが水タイプと併せ持っている飛行タイプには岩タイプの技が効果抜群。相性の有利は五分だ」

 

 

疑問を投げ掛けるメリッサとフレンにイブラヒムが答えるなか、不安そうな顔で葛葉を見つめる凛月は両手をギュッと握り合わせる

 

 

「葛葉さん…」

 

「凛月さん、大丈夫ですか…?」

 

「うん…。ただ、葛葉さんが心配で…」

 

「凛月ちゃんは優しいな〜。でも実際、アイツ舐めた態度取ってたし自業自得やろ」

 

「フンッ!」

 

「アイダァッ!?」

 

「……」

 

 

空気を読まない発言を口にする笹木の頭にリゼが無言で拳骨を入れるなか、その前の席で前屈みの姿勢で両膝に両肘を突き、口元に両手を組んで思案気な表情を浮かべる叶も無言で葛葉のことを見つめていた

 

 

「それでは、バトル始め!」

 

「ギャラドス!"アクアテール"!」

 

 

社の試合開始の宣言と共に先手を仕掛けたドーラはルガルガンに効果抜群の大ダメージを与えられる"アクアテール"を指示し、赤いギャラドスは素早く地面を這い迫り出す

 

 

「ルガルガン!"アクセルロック"!」

 

「ルガァッ!」

 

 

だが、葛葉の指示でルガルガンは自身が得意とする岩タイプの先制技"アクセルロック"を繰り出すと、爆発的に上がったスピードで赤いギャラドスが振るった"アクアテール"を躱し、そのまま懐に飛び込んで攻撃を炸裂させる

 

 

「ギャオォォ…ッ!?」

 

 

効果は抜群…その一撃に赤いギャラドスは大きく体を仰け反らし、そのまま地面へと倒れ込んだ

 

 

「ギャラドス、戦闘不能!ルガルガンの勝ち!」

 

「メリー…!今の見た…!?」

 

「うん、凄いスピードだった…!ルガルガンを出した狙いこれだったんだね…!」

 

「ギャラドスが如何に素早さを上げているとは言え、瞬間的に超スピードを出せる"アクセルロック"には敵わないからな」

 

 

そう簡単には倒せないと思われたギャラドスを一瞬で仕留めたルガルガンに目を見張るフレンとメリッサに対し、イブラヒムはこの結果を予想出来ていたと言わんばかりに落ち着いた様子で勝利の要因を述べる

 

 

「とは言え、これでまだ1体目。先に2体戦闘不能になってるのはかなり痛いな」

 

「でも、ルガルガンが無傷で勝てたのはギャラドスとクロバットが相手の体力を削ってくれていたおかげだと思う。決して無駄ではないですよ」

 

「そうやんな…!勝負はまだまだここからやもん…!」

 

 

予断は許されないが、一先ず強敵だった赤いギャラドスを倒せたことに一同は胸を撫で下ろす

 

 

「ご苦労だった、ギャラドス。ゆっくり休んで」

 

 

ドーラは労いの言葉と共に赤いギャラドスをボールへと戻し、次のボールを手に取る

 

 

「いけ!バクガメス!」

 

 

ドーラが2体目に繰り出したポケモンは幾つもの鋭利な棘が生えている赤く大きな甲羅を持つ"ばくはつがめポケモン"のバクガメスだった

 

 

「ドーラさんの2体目はバクガメスか」

 

「…でも、おかしくないか?」

 

「何がです?」

 

 

そのバクガメスの登場に怪訝な表情を浮かべた笹木にフレンが声を掛ける

 

 

「バクガメスはドラゴンタイプに炎タイプを併せ持つポケモンだからな。岩タイプの技は効果抜群になる」

 

「じゃあ、ドーラさんは敢えて相性が不利なポケモンを出してきたってことですか…?どうして…?」

 

「相手はジムリーダー…。きっと何か考えがあるんだろうけど…」

 

 

笹木が不自然に感じた理由をイブラヒムが代わりに答え、それには何か意図があるのだとリゼが予測するなか、葛葉は更に目付きを鋭くさせる

 

 

「岩タイプのルガルガンに炎タイプを持つバクガメスだと…?驕ってんのはどっちだよ…!」

 

「そう思うならさっさと倒してみなさい」

 

「言われなくてもすぐに終わらせてやる…っ!ルガルガンっ!"アクセルロック"っ!」

 

 

ドーラの挑発的な言葉を受けて怒りを爆発させた葛葉の指示でバトルは再開され、ルガルガンは"アクセルロック"を繰り出し超スピードでバクガメスへと突っ込む

 

 

「バクガメス!"てっぺき"!」

 

 

対するバクガメスは突っ込んで来るルガルガンに甲羅のある背中を向けると"てっぺき"を発動させて自身の防御力を高める

 

直後、ルガルガンの"アクセルロック"がバクガメスの甲羅に直撃する

 

 

「ルガァァ…ッ!ガァ…ッ!?」

 

 

だが、"アクセルロック"を決めたルガルガンはバクガメスを押し飛ばすことはおろか一歩も後退させることすら叶わずに弾かれてしまう

 

 

「ガメェッ!」

 

「ちっ…!」

 

 

"どうした?こんものか?"と、ドーラに代わってそう挑発するような顔を振り向かせてくるバクガメスに葛葉は舌を打つ

 

 

「全然効いてないみたい…!」

 

「バクガメスは防御力に秀でたポケモンだからな。あの硬い甲羅での防御に"てっぺき"の防御力強化が加われば、大抵の物理攻撃は効果抜群であろうとほとんど効かなくなる」

 

「…これはかなりマズいね」

 

「どういうことですか?叶さん」

 

 

バクガメスの脅威的な防御力に驚くフレン達にイブラヒムがその訳を説明するなか、不穏な呟きを落とした叶にリゼが尋ねる

 

 

「葛葉のポケモン達が覚えてる技のほとんどは物理攻撃…。あのバクガメスに"てっぺき"で防御力を限界まで高められたら、倒すのは相当難しくなる…」

 

(せめて、特殊技の"ハイドロポンプ"を覚えてるギャラドスか防御力に関係なくダメージを与え続けられる毒状態を狙えるクロバットが残っていれば…)

 

 

そう不安を吐露しながら、内心で先にギャラドスとクロバットが戦闘不能になってしまっていることの間の悪さに叶は表情を険しくさせる

 

 

「ルガルガンっ!"かみくだく"だっ!」

 

 

そんななか、葛葉は相手が"てっぺき"で守りを固めてくるならばと、直撃時に防御力を下げる追加効果が見込める技"かみくだく"を指示し、ルガルガンは鋭い牙を光らせ、バクガメスへと飛び掛かる

 

 

「"かみくだく"…!たしか、相手の防御力を下げる追加効果がある技だよね…!」

 

「これならなんとかなるかも…!」

 

 

葛葉の狙いに気付いてリゼ達は声を弾ませる

 

 

「いや、それはマズい…!」

 

 

しかし、彼女達とは対照的に表情を歪ませたイブラヒムがそう呟いた直後だった

 

 

「バクガメス!"トラップシェル"!」

 

 

ドーラの指示が飛び、バクガメスが再びルガルガンへ背中の甲羅を向ける

 

そして、ルガルガンの"かみくだく"がバクガメスの甲羅に直撃した次の瞬間だった

 

 

ドカァァァァァンッッ!!!

 

「ルガァァァァ…ッ!?」

 

「ルガルガン…っ!?」

 

 

バクガメスの甲羅が大爆発を引き起こし、その直撃を受けたルガルガンは大きく吹き飛ばされた

 

 

「バクガメスの甲羅が爆発した…!?」

 

「しかも凄い威力だよ…!?」

 

「あの技は"トラップシェル"…!炎タイプ最強の技"ブラストバーン"にも匹敵する威力を誇る、バクガメス固有の技だ…!」

 

 

驚くリゼ達にイブラヒムがそう説明する

 

バクガメスの背中の甲羅は爆薬の成分で出来ており、その表面に生えている棘は物理的攻撃による衝撃を受けることで火花を散らし、それが引火して大爆発を引き起こすのだ

 

 

「ル…ガゥゥ…ッ!」

 

「炎タイプの技は岩タイプに効果がいまひとつのはずなのに、かなりのダメージになってる…!」

 

「"ブラストバーン"に並ぶ威力ってのは間違いじゃないみたいやな…!でも、そんな高威力技や…!何かしらのデメリットはあるやろ…!」

 

「あの技の発動条件はバクガメスの甲羅に衝撃が加えられることだ…!そして、爆発の範囲は加えられた衝撃が大きければ大きいほど広くなる…!つまり、物理技以外で射程のある攻撃なら"トラップシェル"の脅威に晒されることはない…!」

 

「物理技以外…!でも、葛葉のポケモン達は…!」

 

 

たったの一撃でかなりのダメージを被ったことが苦しそうなルガルガンの様子から窺え、一同が"トラップシェル"の威力の凄まじさを実感するなか、笹木に問われたイブラヒムがその欠点を口にする

 

だが、それを聞いた一同は更に表情を青ざめさせた

 

葛葉が残すルガルガン、ガブリアス、リザードンの3体が覚えている技はほとんどが物理技であるため、"トラップシェル"の脅威から逃れることはまず不可能だった

 

 

「…要はその甲羅に攻撃しなけりゃいいんだろっ!ルガルガンっ!"アクセルロック"っ!」

 

 

しかし、この状況をどう打破すればいいのかと慌て戸惑うリゼ達に比べて葛葉の停滞は短く、ルガルガンは"アクセルロック"を繰り出し、バクガメスへと迫る

 

 

「自棄になったか?バクガメス!"トラップシェル"!」

 

 

当然、バクガメスは背中の甲羅を向けて"トラップシェル"での反撃体勢を取る

 

そして、ルガルガンとバクガメスの距離が残り2m程を切ろうとした時だった

 

 

「ルガルガンっ!回り込めっ!」

 

「ルガゥッ!」

 

「ガメェ…ッ!?」

 

 

葛葉の指示が飛び、ルガルガンは"アクセルロック"を維持したまま右へと逸れると、一瞬でバクガメスの正面へと回り込み、その懐へ飛び込んで攻撃を炸裂させる

 

 

「「「おお〜っ!!」」」

 

「攻撃が決まった…!"トラップシェル"も発動してないよ…!」

 

「そっか…!たしかに、よくよく考えたら"トラップシェル"は背中の甲羅に攻撃さえせんかったら発動はしない!なら、バクガメスの正面に攻撃を決めればいいんじゃん!」

 

「まあ、そうさせないためにバクガメスは常に相手へ背中を向け立ち回ってくるが、今の"アクセルロック"みたく超スピードでなら反応はし切れない。なるほど、考えたな」

 

「それになんだか今の攻撃、バクガメスに効いてるみたいだったけど…!」

 

「おそらく、背中の甲羅がとても頑丈な分、正面の防御力は低いんだと思う…!」

 

「"てっぺき"で防御力を高めていてあの様子なら、あそこが弱点と見て良さそうですね…!」

 

「…有効な戦略を練られる程度には冷静みたいね。バクガメス!"りゅうのはどう"!」

 

 

バクガメス攻略の糸口が見つかってリゼ達が声を高鳴らせるなか、バクガメスが"りゅうのはどう"を繰り出し反撃を仕掛ける

 

 

「"アクセルロック"っ!」

 

 

ルガルガンは再び"アクセルロック"を繰り出すと、その超スピードで"りゅうのはどう"を躱し、複雑に動き回ってバクガメスを撹乱する

 

 

「ルガルガンっ!もう一度叩き込めっ!」

 

 

そして、葛葉の合図と共にルガルガンはバクガメスの正面へと回り込み、その懐へと飛び込む

 

 

「バクガメス!"ジャイロボール"!」

 

 

その時、ドーラの指示が飛んでバクガメスはその場で瞬時に殻の中へ籠もると高速で回転し、"ジャイロボール"を繰り出す

 

 

「ルガゥゥゥ…ッ!?」

 

「なっ…!?」

 

 

次の瞬間、ルガルガンは自ら"ジャイロボール"へと突っ込む形となり、"アクセルロック"は簡単に弾かれ、勢いも相まって大きく吹き飛ばされてしまう

 

 

「ルガァ…」

 

 

そして、地面を派手に転がったルガルガンは弱々しい鳴き声を上げて倒れ伏した

 

 

「ルガルガン、戦闘不能!バクガメスの勝ち!」

 

「そんな…!」

 

「足の遅いバクガメスだと、素早い相手に防御の薄い正面へ回り込まれた時に体の向き直しが間に合わない。その弱点を補えるのが全方位への攻撃と防御を同時に行える"ジャイロボール"ってわけか」

 

「くっ…!戻れ…!ルガルガン…!」

 

 

バクガメスを倒せるかと見出した勝機があっさりと叩き潰されてしまい、リゼ達の表情が沈むなか、葛葉は歯を軋ませながらルガルガンをボールへと戻す

 

 

「"トラップシェル"を見てすぐにバクガメスの弱点を探り、突き止めたことは褒めてあげる。だけど、こっちがその弱点の対策を立てているとは微塵も警戒していないのは感心しないわね」

 

「だったら最初からそうしろよ…!舐めやがって…!」

 

 

自身の判断について評価を述べるドーラに葛葉は苛立ち混じりにそう言い返すと、彼女は大きな溜息を吐く

 

 

「何を言うかと思えば…。ジムリーダーは挑戦者に対してただバトルすればいいわけじゃない。その力量を測り、ポケモントレーナーとしてより強くなるため成長を促し、導くことを義務付けられてる。最初から全力でバトルしたりはしないわ」

 

 

呆れた様子でドーラがそう告げると、葛葉は血管が浮き出るほどの力で拳を握り締め、わなわなと震わせる

 

 

「全力じゃない…?だったら尚更…っ!俺が負けるわけねぇだろぉっ!いけぇっ!ガブリアスゥっ!」

 

 

葛葉は怒りを爆発させ、乱暴に投げたボールから再びガブリアスを繰り出す

 

 

「ガブリアスっ!"すなあらし"だっ!」

 

 

ガブリアスが両腕を力強く薙ぐと強烈な"すなあらし"が繰り出され、フィールド全体があっという間に大規模な砂嵐に呑み込まれる

 

それと同時に、ガブリアスの姿が砂嵐と一体化するように見えなくなる

 

 

「ガブリアスの姿が見えなくなった…!?」

 

「ガブリアスの特性"すながくれ"だな。砂嵐に溶け込むことで姿を見え辛くさせているんだ」

 

「これなら、ガブリアスが何処から攻撃してくるか分からなくなるからバクガメスの防御は間に合わない。でも…」

 

「バクガメスには"ジャイロボール"を駆使した全方位への防御手段があるからな…!」

 

「攻撃と防御を兼ね備えるアレをどうにかしないと、ガブリアスの体力が更に削られるどころか最悪戦闘不能に追い込まれる可能性も…!」

 

 

数的不利な状況において、バクガメスを除いたドーラがまだ残している3体のポケモンを相手取るためにもガブリアス達の体力は出来る限り温存したい

 

だが、防御と同時に反撃してくるバクガメスを相手にそれは困難を極めると、いち早く気付いたリゼやイブラヒム、叶、笹木の4人は予断を許さない状況に顔を顰める

 

 

「バクガメス!攻撃の気配を感じたらすぐに"ジャイロボール"よ!」

 

「ガメッ!」

 

 

吹き荒れる"すなあらし"の微弱なダメージを耐えながら、バクガメスはガブリアスが攻撃を仕掛けてくる瞬間を見逃さないよう、意識を集中させて待ち構える

 

そして、しばらく待ってると地面が"ゴゴゴゴゴ…!"と小さく震動し始め、次第に大きくなっていく

 

 

「この地鳴り…!気を付けて!バクガメス!下からよ!」

 

 

その地鳴りが地中からの攻撃の予兆であると気付いたドーラは叫び、バクガメスに危険を報せる

 

 

「遅ぇよっ!やれぇっ!!ガブリアスっ!!」

 

 

葛葉がそう叫んだ直後、バクガメスの真下の地面を突き破って渦巻く砂塵を纏ったガブリアスが飛び出し、バクガメスを撥ね飛ばした

 

 

「ガメェェェ…ッ!?」

 

「地中からの攻撃…!"あなをほる"か…!」

 

「でも、少し違う…!"すなあらし"を纏ってるよ…!」

 

「うん…!まるでリゼ様のエンペルトが使う"うずしお"と"ドリルくちばし"の合体技みたい…!」

 

「そうなんよ!アレは前にリゼちゃんと四天王の黛さんがバトルした時に見た"うずしお"と"ドリルくちばし"の合体技を参考に編み出した技やねん!」

 

 

以前、ガブリアスがまだ進化前のガバイトだった頃にオウマシティへ向かう途中に出逢った剣持とのバトルの際に即興で編み出した大技"砂塵纏うあなをほる"

 

それに驚くイブラヒム達にひまわりは声を弾ませ答えた

 

 

「バクガメス…!大丈夫…!?」

 

「ガメェ…!」

 

「よし!"りゅうのはどう"!」

 

 

ドーラは地面に激突したバクガメスに声を掛けてその無事を確認すると"りゅうのはどう"を繰り出させる

 

 

「もう一度"あなをほる"だっ!」

 

 

ガブリアスは勢いよく回転することで"すなあらし"に舞う砂塵を渦のように纏うと、"あなをほる"で地中へと潜り込み"りゅうのはどう"の直撃を避ける

 

 

「ガメェ…!」

 

「慌てないで、バクガメス!」

 

 

ドーラがそう呼び掛けると、余裕の無い様子で警戒していたバクガメスは瞬時にその言葉を信じ、表情から焦りが消えて落ち着きを取り戻す

 

そして、しばらく静かに待っていると先程と同じように小さな地鳴りが始まり、その規模がだんだんと大きくなっていく

 

 

「今よ!バクガメス!背中を地面に向けて"トラップシェル"!」

 

 

地鳴りがかなり大きくなってきたところでドーラはそう指示を飛ばし、バクガメスはその場で仰向けに寝転がる

 

 

「ガバァァァッ!!」

 

 

その直後、地中から飛び出したガブリアスは"砂塵纏うあなをほる"を寝転んだバクガメスの甲羅に直撃させる

 

ドカァァァァァンッ!!!

 

と、その瞬間にバクガメスの"トラップシェル"も発動して大爆発が引き起こされ、凄まじい衝撃と爆風が大部屋を駆け抜ける

 

 

「「「「「うぅぅぅぅ…っ!?」」」」」

 

「結果は…!」

 

「どうなったの…!?」

 

 

襲いくる衝撃と爆風に耐えながらリゼ達が勝負の結果を気にするなか、立ち昇った爆煙の中から何かが飛び出し、地面へと激突した

 

 

「ガ、ガメェ…」

 

「バクガメス、戦闘不能!ガブリアスの勝ち!」

 

 

その正体はバクガメス…目をグルグルと回し倒れ伏し、社が戦闘不能の判定を告げた

 

 

「ガバァ…ッ!」

 

 

ややあって、爆煙が晴れたフィールドに立っていたガブリアスが勝鬨の雄叫びを上げるが、その呼吸は乱れており、疲労が蓄積していることが見て取れた

 

 

「これでようやく2体目か…」

 

「なんとかバクガメスを倒せたけど、ガブリアス少し苦しそう…」

 

「最後の"トラップシェル"が効いてるみたいだな」

 

 

バクガメスが置き土産に繰り出した"トラップシェル"の威力に一同は改めて目を見張り、辛そうな表情のガブリアスを心配するなか、ドーラは倒れたバクガメスをボールへと戻す

 

 

「よくやったわ、バクガメス。ゆっくり休んで。次はお前よ!いけ!ジジーロン!」

 

 

ドーラが続く3体目のポケモンに繰り出したのはここまでのギャラドスやバクガメスと違って、年老いてるような外見からあまり強そうには見えない"ゆうゆうポケモン"のジジーロンだった

 

 

「なに…!?あのポケモン…!」

 

「お爺ちゃんみたいな見た目だね…!」

 

「あのポケモンはね、ジジーロンって言うんだよ〜」

 

「ドラゴンタイプに加えて、ノーマルタイプも併せ持つポケモンだな」

 

「じゃあ、ガブリアスからの攻撃に別段有利なタイプを持ってるわけじゃないんですね…」

 

「さっきのバクガメスは見た目から防御力が高そうなポケモンだってなんとなく察しは付いてたけど、ジジーロンはその当たりの見当がまるで付かんな…」

 

「少なくとも物理的な防御力が高いってことは無さそうだけど、ドーラさんがガブリアス相手に出してきたってことは何か理由があるはず…」

 

「どんなバトルになるんだろう…」

 

 

まだ安心は出来ない状況に一同が固唾を飲むなか、葛葉の先制で試合が再開される

 

 

「ガブリアスっ!"ドラゴンクロー"だっ!」

 

「ガァバッ!」

 

 

ガブリアスは両腕の鋭い爪にドラゴンタイプのエネルギーを込め強化させると地を蹴り、ジジーロンへと飛び掛かる

 

 

「ジジーロン!"みがわり"!」

 

「ジジロォ〜ッ!」

 

 

攻撃が決まる直前にドーラの指示が飛ぶと、ジジーロンは突然自身の体を白く光らせる

 

 

「…ッ!ガバァァッ!!」

 

 

ジジーロンの行動にガブリアスは一瞬警戒を高めるが怯まず突っ込み、"ドラゴンクロー"を振り下ろし直撃させる

 

 

「ジジィィ…ッ!?」

 

「ガバァッ!」

 

 

ジジーロンに大ダメージを与えた手応えを感じてガブリアスは薄く笑みを浮かべる

 

 

「ジジロォ〜!」

 

「ガバ…ッ!?」

 

 

だが次の瞬間、地面に倒れ伏せているジジーロンが突然"ポンッ!"と煙になったかと思えば、その中から効果抜群のダメージを受けた直後とは思えない元気な勢いでジジーロンが飛び出してきた

 

 

「えぇぇ…っ!?」

 

「ジジーロン、全然元気なんだけど…!?」

 

「どういうこと…!?」

 

「今の技は"みがわり"…!体力を削ることで技を出したポケモン本体と全く見分けの付かない実体のある分身を作り出し、それを身に纏って相手の攻撃をやり過ごす技なんだ…!」

 

 

驚くひまわり達に叶がそう説明するなか、ジジーロンがガブリアスから離れた後方に無事着地するとドーラが反撃の指示を飛ばす

 

 

「ジジーロン!"りゅうのいぶき"!」

 

「ガブリアスっ!躱して砂嵐の中に身を隠せっ!」

 

 

ジジーロンが繰り出す"りゅうのいぶき"をガブリアスは体を逸らし攻撃を躱すと、砂嵐の中へ姿を消そうと後方へ飛び退く

 

 

「…っ!?」

 

「あれ…!?」

 

 

だが、ここで異変が起こった

 

砂嵐に溶け込むはずのガブリアスの姿が誰の視界からも一向に消えなかったのだ

 

 

「ガブリアスの姿が消えない…!?」

 

「なんで…!?」

 

「砂嵐の天候はまだ続いてる…!となると、"すながくれ"の特性が機能していない…!?」

 

「でも、どうして…!」

 

「ジジーロンの特性が関係してるんだろう…!おそらく、天候の影響を無くす"ノーてんき"だ…!」

 

 

思わぬ事態に騒然となるなか、状況から分析した末に思い当たったイブラヒムがその原因を口にする

 

特性"ノーてんき"…この特性を持つポケモンが場にいると付近の天気の影響が無くなる上、その範囲内に天候が関係する特性を持つポケモンや技はその効果を発揮出来なくなるのだ

 

 

「ジジーロン!もう一度"りゅうのいぶき"!」

 

 

砂嵐に溶け込めていないガブリアスをはっきりと捉え、ジジーロンが再び"りゅうのいぶき"を繰り出す

 

 

「ガバァァ…ッ!?」

 

 

自身の視点からでは周囲の視界から姿が消せていないと気付いていなかったガブリアスはジジーロンが正確に攻撃を繰り出してきたことに驚いて動きが鈍ってしまい、回避が間に合わず"りゅうのいぶき"の直撃を受けてしまう

 

 

「怯むなっ!ガブリアスっ!もう一度砂嵐を纏って"あなをほる"だっ!」

 

「ガ…バァ…ッ!?」

 

「動けない…っ!?くそっ…!麻痺したか…っ!」

 

 

反撃の指示を出した葛葉だったが、ガブリアスは体の自由が突然効かなくなったように動きを止めてしまい、それがたった今受けた"りゅうのいぶき"の追加効果によって生じた麻痺状態によるものだとすぐに気付き、苛立ちを吐き捨てる

 

 

「今よ!ジジーロン!"ハイパーボイス"!」

 

「ジジロォォォォォッ!!!」

 

 

隙が生まれたガブリアスにジジーロンが繰り出す"ハイパーボイス"が襲い掛かる

 

 

「ガ…バァァァ…ッ!?」

 

 

麻痺で体の自由が効かないところに"ハイパーボイス"の凄まじい爆音と衝撃波に襲われたガブリアスはこれまでに負ったダメージもあって体力が限界に迫り、片膝を地面を突かせる

 

 

「…っ!負けんなぁっ!ガブリアスゥっ!"ドラゴンクロー"っ!」

 

 

その時、葛葉から叱咤の声を張り上げられたガブリアスは崩れそうな双眼を奮い立たせ、自由が効かず悲鳴を上げる己の体に在らん限りの力を込めて立ち上がる

 

 

「ガ…バァァァァァッ!!」

 

 

そして、咆哮を轟かせると共に"ドラゴンクロー"を発動させて地を蹴り、"ハイパーボイス"に逆らいジジーロンへと突き進む

 

 

「…その気迫は流石だけど、それだけに残念ね。ジジーロン!"じんつうりき"!」

 

「ジジロォッ!」

 

「ガバ…ッ!?」

 

 

ドーラは惜しむようにそう呟くと共に指示を飛ばし、ジジーロンは"ハイパーボイス"から切り替えて"じんつうりき"を発動し、放った桃紫色のオーラでガブリアスを捉え動きを封じるとそのまま数mの高さまで持ち上げ、その後勢いよく地上へと叩き落とした

 

 

「ガブリアス…っ!?」

 

 

叩き落とされた衝撃によって舞い上がった土煙に葛葉が叫ぶ

 

 

「ガブリアスが…!」

 

「そんな…!」

 

「"りゅうのいぶき"の追加効果で麻痺状態にされたのが命運を分けたな」

 

「あれだけの攻撃を食らった上に、直前のバクガメスから受けた"トラップシェル"のダメージもある…。ガブリアスはもう…」

 

 

"ここまでだ…"と、誰もがガブリアスの戦闘不能を覚悟した

 

 

「ガバァァァッ!!!」

 

「ジジィ…ッ!?」

 

「「…っ!?」」

 

「「「「「ガブリアス…!!」」」」」

 

 

だが、その直後に土煙の中から咆哮を上げてガブリアスが飛び出し、虚を突かれ怯んだジジーロンに渾身の"ドラゴンクロー"を炸裂させる

 

 

「ジジロォォォ…ッ!?」

 

 

"ドラゴンクロー"の直撃を受けたジジーロンは痛烈な悲鳴を上げて吹き飛び、ぐったりと倒れ伏した

 

 

「ジジーロン、戦闘不能!」

 

「や、やった…!ガブリアスが勝った…!」

 

「ヒ、ヒヤヒヤした〜…!」

 

「まさか、あれだけのダメージを受けてまだ動けるなんてな…!」

 

 

ガブリアスの逆転勝利にリゼ達は歓喜と安堵、驚愕の声を上げるなか、満身創痍な様子のガブリアスは勝ち鬨の雄叫びも上げず、葛葉の方へと横顔を振り向かせる

 

 

「ガバ…」

 

「…ガブリアス?」

 

 

その時、ガブリアスと目が合った葛葉は戸惑いと共に名を呟いた

 

見つめてくるガブリアスの眼差しと表情が何処か自身を心配しているように見えたから

 

"なんだよ、その眼は…?"と、ガブリアスの真意が分からず困惑のあまりに声が出ない葛葉が心の内でそう問いた

 

その直後だった

 

 

「ガ…バ…」

 

「「「「「ああ…っ!?」」」」」

 

「…っ!ガブリアス…!?」

 

 

突然ガブリアスは体をふらつかせ、力が抜けるように膝から崩れ落ち、その場に倒れ込んだ

 

 

「…ガブリアス、戦闘不能!」

 

 

相打ち…遅れてやってきたその結末を社は粛々と告げ、直前にガブリアスとのやり取りがあった葛葉は勿論、先程まで歓喜していたリゼ達も一瞬時が止まったように呆然となった

 

 

「…戻れ、ガブリアス」

 

「戻って、ジジーロン。よくやってくれたわ」

 

 

しばらくして、葛葉は何処か浮かない顔のままガブリアスをボールへと戻し、ドーラも労いの言葉と共にジジーロンをボールへと戻した

 

 

「ガブリアス…」

 

「…やっぱり、体力は限界だったみたいだな」

 

「…でも、ガブリアスはよく頑張ったと思います。最後の一撃だって"葛葉さんの想いに応えたい"、"負けたくない"って強い気持ちがあれだけの力を振り絞らせたんだと感じました」

 

「たしかに、あの時のガブリアスの気迫は凄かったもんな」

 

「そうですよね…!相打ちだったとは言え、バクガメスとジジーロンを倒せたんですから…!」

 

 

ガブリアスが戦闘不能になってしまったことを惜しむ一同だったが、バクガメスとジジーロンの2体を倒したことは十分過ぎる活躍だったと前向きに捉え、改めてその奮闘を褒め称えた

 

 

「……」

 

 

そんな雰囲気に観戦席が包まれるなか、叶唯一人だけが険しい表情でジッと葛葉に双眸を向けていた

 

 

「…負けるわけにはいかねぇ。負けるはずがねぇ…!俺達は母さんを超える…!そのために今日まで鍛えてきたんだ…!そうだろっ!リザードンっ!」

 

 

劣勢に追い込まれている自身の情けなさに怒りを沸き上がらせる葛葉は幼い頃に誓った決意を想起させると共に、それを誓い合った相棒リザードンへその想いが自身と同じく今も激しく燃え盛っていることを確かめるように呼び掛けながら、ボールを力強く投げた

 

 

「ウオォォォォォンッ!!!」

 

 

ボールから飛び出した黒いリザードンは葛葉の言葉に"勿論だ!"とその意志があることを示すように大咆哮を轟かせた

 

 

「…良い眼をしている。だけど、勝たせてあげる気は毛頭ない!いけ!リザードン!」

 

 

葛葉の黒いリザードンと目が合ったドーラはそう言葉を溢すと共にリザードンを繰り出した

 

 

「ドーラさんもリザードン…!?」

 

「ここで出してくるのか…!」

 

「どういうことですか…?」

 

 

葛葉と同じくドーラもリザードンを繰り出したことに一同が驚くなか、叶が溢した意味深な言葉の意味をリゼが尋ねる

 

 

「あのリザードンはドーラさんの最高にして最強のパートナー…!謂わば切札なんだよ…!」

 

「それと葛葉のリザードンのお母さんでもあるねん…!」

 

「切札かつ生みの親…!そのポケモンを4体目で出してきたってことは…!」

 

「ここで勝負を付ける気みたいだな…!」

 

 

残る5体目を出すまでもなくバトルを終わらせんとするドーラにリゼ達は固唾を呑む

 

 

「それでは、バトル始め!」

 

「リザードンっ!!最初から全力でいくぞぉっ!!」

 

 

社からバトル再開の合図が出されるや否や、黒いリザードンに向けて葛葉はそう叫ぶと左腕を天高く突き上げる

 

次の瞬間、葛葉の左袖の中から現れたバングルに埋め込まれたキーストーンが光り輝き出し、共鳴した黒いリザードンの持つメガストーン:リザードナイトXが放つ光と互いに伸び合って結び付く

 

そして、虹色の光に包み込まれた黒いリザードンはその姿を変化させ、メガリザードンXへとメガシンカを遂げる

 

 

「ウオォォォォォンッ!!!」

 

「メガシンカ…。まあ、当然手に入れているわよね」

 

 

メガシンカして更に闘志を昂らせるメガリザードンXが咆哮を轟かせるなか、そう呟いたドーラは徐に指輪を取り出した

 

 

「…っ!あの指輪に付いてる宝石…!もしかして…!」

 

「キーストーンや…!」

 

 

その指輪に装飾された虹色の宝石がキーストーンだと気付いたリゼ達が驚くなか、ドーラはそれを右手の人差し指に嵌め込む

 

 

「リザードン!メガシンカ!」

 

 

直後、ドーラの掛け声と共にキーストーンが光り輝き出し、同時にリザードンが持っていたメガストーンも眩い光を放つ

 

そして、包み込まれた虹色の光の中でリザードンに変化が起こり、両翼は更に大きく、頭には3つ目の大きな角、両の手首には小さな翼が生えた…メガリザードンXとは違う姿のメガシンカを遂げた

 

 

「葛葉さんのリザードンがメガシンカした姿が違う…!?」

 

「どういうこと…!?」

 

「リザードンはメガシンカが可能なポケモン達の中でも特別で複数のメガシンカが出来るんだ…!アレはそのもう1つのメガシンカ…!メガリザードンYだよ…!」

 

「ザァァァドッ!」

 

 

メガリザードンXとは異なるリザードンがメガシンカ出来るもう1つの姿であるメガリザードンYを目の当たりにしたリゼ達が驚愕の声を上げるなか、メガリザードンYが咆哮を上げると共にジムの天井に擬似太陽が発生する

 

 

「眩しい…!?」

 

「室内なのに陽射しが…!?もしかして、晴れ状態…!」

 

「技を使わずに天候を変えられるってことは、メガリザードンYの特性は"ひでり"だな」

 

「ベルさんのバンギラスが持ってた"すなおこし"と似た特性じゃん…!」

 

「そういうことだね…!天候が晴れ状態の時は炎タイプの技の威力が増す…!」

 

「でも、葛葉も同じリザードンやからドーラさん側が一方的に有利ってわけじゃないやよ」

 

「問題はどれだけ体力を温存してドーラさんのリザードンを突破出来るかですね…!」

 

「……」

 

 

勝敗を大きく左右する、もしくは決するかもしれない一戦を前に場が緊迫した雰囲気に包まれるなか、ドーラの指示を以ってそのバトルの火蓋が切って落とされる

 

 

「始めるぞ!リザードン!"だいもんじ"!」

 

 

晴れ状態の恩恵を受けて力を漲らせるメガリザードンYは尻尾の炎を激しく燃え上がらせ、口端から灼熱の炎を噴き溢れさせると、超高威力の"だいもんじ"を繰り出した

 

 

「熱ぅっ…!?」

 

「ああ…!流石に晴れ状態で威力が増してるだけのことはある…!」

 

「あんなの食らったらひとたまりもないよ…!?」

 

「上等だ…っ!リザードンっ!"フレアドライブ"で突っ込めっ!」

 

 

一瞬で大部屋全体に広がる"だいもんじ"の凄まじい熱気に当てられ、その威力が桁違いなものであると感じて一同が戦慄するなか、葛葉は少しも恐れをなさず真っ向勝負での突破を指示した

 

 

「「「えぇ…っ!?」」」

 

「葛葉さん…!?」

 

「血迷ったんか…!?」

 

「ウオォォォンッ!!」

 

 

自滅とも言えるその指示に一同は驚愕するが、雄叫びを上げたメガリザードンXは一切の躊躇い無く飛び立つと、迫る"だいもんじ"の炎にも劣らない荒ぶる蒼い炎を纏った"フレアドライブ"を繰り出して突っ込んだ

 

そして、激突…凄まじい熱気と共に衝撃を走らせた"フレアドライブ"と"だいもんじ"の鬩ぎ合いは数瞬の拮抗を見せた後、両者の途轍もないパワーによって大爆発を引き起こした

 

 

「「「うわあああああ…っ!?」」」

 

「凄い衝撃…っ!」

 

「メガシンカ同士な上に晴れ状態で格段に威力が増した大技の衝突だからな…!」

 

「葛葉さんのリザードンは…っ!?」

 

「あんな爆発に呑まれたんや…っ!無事に済んでるわけ…っ!」

 

 

襲い来る強烈な爆風と衝撃に吹き飛ばされないよう全身に力を入れて耐えながら、一同が大爆発に呑み込まれたメガリザードンXの安否を気に掛ける

 

 

「ウオォォォォォンッ!!」

 

「「「「「…っ!!?」」」」」

 

 

その最中、咆哮と共に爆煙の中からメガリザードンXが"フレアドライブ"と共に勢い良く飛び出してきた

 

 

「リザードン!受け止めろ!」

 

 

回避は間に合わないと判断したドーラはそう指示を飛ばし、メガリザードンYは突き出した両腕でメガリザードンXの"フレアドライブ"を正面から受け止める

 

 

「ウオォォォォォォンッ!!!」

 

「ザァァド…ッ!」

 

 

炎タイプのポケモンに炎タイプの技は効果が今一つだが、"だいもんじ"と同じく晴れ状態の影響でパワーアップされている"フレアドライブ"の威力は凄まじく、メガリザードンYは耐え切れず吹き飛ばされてしまう

 

 

「リザードン、大丈夫か!?」

 

「ザァドッ!」

 

「…効果今一つとは言え、晴れ状態下での"だいもんじ"のダメージは少なくないはず。だと言うのに、それを受けた直後でこれほどの威力を維持出来るなんてね…。本当によく育てられているわ」

 

 

メガリザードンYの状態を確認したドーラは予想以上のパワーに感嘆の声を呟くと共に視線を向けると、"フレアドライブ"の反動ダメージが全身を駆け抜けている最中のメガリザードンXは"これくらいなんて事ない"と強がるような笑みを見せていた

 

 

「まさか、"だいもんじ"とのぶつかり合いに勝つなんてな」

 

「パワーで勝ってるなら、このバトルいけるんじゃない…!?」

 

「問題は体力が保つかどうかやな…!"だいもんじ"に加えて反動のダメージ…!葛葉のリザードンも今ので相当体力を削られてるはず…!」

 

 

メガリザードンYを上回るメガリザードンXのパワーに一喜一憂する各々が期待や懸念を口にする

 

 

「その調子だ、リザードン!続けて"ドラゴンクロー"!」

 

 

メガリザードンYの攻撃に優ったことで更なる勢いを付ける葛葉は意気盛んに攻勢を仕掛け、メガリザードンXは"ドラゴンクロー"を繰り出してメガリザードンYへと迫る

 

 

「リザードン!上昇するんじゃ!」

 

 

ドーラから飛ばされた指示を受けたメガリザードンYは素早く飛翔し、メガリザードンXが振るう"ドラゴンクロー"の直撃を回避する

 

 

「逃すなぁっ!」

 

 

だが、直後に飛んできた葛葉の指示にメガリザードンXは即座に反応し、飛び立って再びメガリザードンYへと迫る

 

 

「"げんしのちから"!」

 

 

追い迫って来るメガリザードンXを迎え撃とうとメガリザードンYは岩石の形状を模したエネルギーの塊を放つ技"げんしのちから"をメガリザードンXへと繰り出す

 

 

「突破しろぉっ!」

 

「ウオォォォンッ!!」

 

 

岩タイプの技である"げんしのちから"は炎タイプのメガリザードンXにとって弱点となり、直撃すれば大ダメージを被るため、普通であれば安全を第一に回避を判断するだろう

 

だが、複数放たれた"げんしのちから"を避けることに専念すれば、その分メガリザードンYとの距離を縮めるまでの時間を更に要することになる

 

ここまで距離を取りながら射程のある特殊攻撃を仕掛けてくるメガリザードンYに対して、物理攻撃をメインとするメガリザードンXは相手に接近しなければダメージを与えられないため、あまり時間を掛けたくはなかった

 

なにより、ドーラとメガリザードンYに自分達の力の見せつけてやろうと激しい対抗心を燃やしている葛葉にとって回避の判断を安易に取るのは弱腰だと感じていたことから、多少の無茶は承知の上で強行突破することを選んだのだ

 

そして、葛葉と想いを同じくするメガリザードンXは当然の様にその指示に応え、繰り出した"ドラゴンクロー"を振るって"げんしのちから"の悉くを切り裂き、メガリザードンYとの距離を詰めていく

 

 

「ウオォォォォンッ!!」

 

「ザァド…ッ!」

 

 

そして、繰り出された"げんしのちから"の全てを打ち砕き突破したメガリザードンXは両腕の"ドラゴンクロー"を力一杯に振り下ろし、メガリザードンYは両腕を斜め十字に組んだ防御でそれを受け止めるも、その凄まじいパワーに耐え切れず吹き飛ばされてしまう

 

 

「リザードン!"きあいだま"!」

 

「躱せぇっ!」

 

 

吹き飛ばされながらもなんとか体勢を立て直したメガリザードンYが"きあいだま"を繰り出すが、メガリザードンXはそれを難なく躱して再び攻撃を仕掛けようと急接近する

 

 

「接近戦に持ち込めればこっちのもんだっ!リザードンっ!"かみなりパンチ"っ!」

 

 

順調にメガリザードンYを追い込めている葛葉は嘲笑とも見て取れる余裕の笑みを浮かべながらメガリザードンXに追撃の指示を飛ばし、効果抜群となる電気タイプの技"かみなりパンチ"を繰り出させる

 

 

「リザードン!"ワイドブレイカー"!」

 

 

だが、その時だった

 

ドーラの指示が飛び、パワーを集中させた尻尾を赤紫に光らせたメガリザードンYはその場で勢い良く後ろ向きに宙を返る

 

その次の瞬間、下から振り抜かれた尻尾の一撃"ワイドブレイカー"が目前まで迫っていたメガリザードンXの顎に直撃する

 

 

「ウオォォ…ッ!?」

 

「なっ…!?」

 

 

顎への直撃によって大ダメージを受けると共に激しく脳を揺らされたメガリザードンXは大きく体勢を崩し、飛行も維持出来なくなり地上へと落下し始める

 

 

「"きあいだま"!」

 

 

そこへ追い討ちをかけるようにドーラが指示を飛ばし、メガリザードンYが繰り出した"きあいだま"が落下中のメガリザードンXに直撃し、一気に地上へと墜落させられ激突する

 

 

「ウォ…ウオォォン…」

 

「リザードン…っ!しっかりしろっ!まだ終わりじゃねぇっ!」

 

 

まだ意識を朦朧とさせていると窺えるふらつき様で苦しそうな呻き声と共に立ち上がるメガリザードンXに葛葉が叱咤を飛ばすなか、ドーラは畳み掛けるように次の指示を出した

 

 

「リザードン!"だいもんじ"!」

 

 

メガリザードンYが繰り出す晴れ状態によってパワーアップされた"だいもんじ"が回避も迎撃も取れないメガリザードンXに直撃する

 

 

「ウオォォォン…ッ!?」

 

「リザードンが…っ!」

 

「あの様子…!相当なダメージになってるぞ…!」

 

「でも、メガシンカでドラゴンタイプを得たリザードンに炎タイプの技は効き目が凄く薄いはずだよね…!?"ワイドブレイカー"のダメージを引き摺っているとしても、あんなに苦しむほどのダメージなんて…!」

 

「おそらく、直前に受けた"きあいだま"の追加効果の影響だ…!あの技は相手の特防を下げることがある…!だから"だいもんじ"のダメージが大きくなっているんだろう…!」

 

 

先の"フレアドライブ"で"だいもんじ"と衝突した時には見られなかったリザードンの苦しむ姿を目の当たりにして、一同はその表情をより険しく不安にさせる

 

 

「"げんしのちから"!」

 

「…っ!"ドラゴンクロー"で防御しろ…っ!」

 

 

メガリザードンYが更なる追撃に"げんしのちから"を繰り出してくるなか、ようやく意識が回復したメガリザードンXは直撃を防ぐため、"ドラゴンクロー"での防御を行う

 

 

「ウオォッ!ウオォンッ!ウオォォ…ッ!ウオォォォン…ッ!?」

 

「なっ…!?」

 

 

だが、空中戦の時とは異なり、メガリザードンXは"げんしのちから"の全てを防ぎ切れず、数発の直撃を受けてしまう

 

 

「リザードン…っ!」

 

「明らかに動きが鈍くなってる…」

 

「怒涛の攻撃によるダメージで一気に体力を消耗したせいですね…」

 

「それだけじゃない。最初に食らった"ワイドブレイカー"の追加効果でリザードンの攻撃力が落ちているのも、攻撃を防ぎ切れなかった要因になってる」

 

「これはもう、勝負が見えたな。仮にジムリーダーのリザードンを倒せても、5体目を倒すだけの体力は残らんやろ」

 

「……」

 

 

"ワイドブレイカー"による反撃から一気に窮地へと追い込まれ、ボロボロの体で倒れているメガリザードンXの姿にリゼ達は葛葉の敗北を悟り始めるなか、天井に浮く擬似太陽が消えて晴れ状態の終わりを告げる

 

 

「…っ!立て…っ!リザードン…っ!こんなところで負けるわけにはいかねぇだろ…っ!」

 

「ウォ…ウオォン…ッ!」

 

 

"まだ倒れることは許さない"…そう言わんばかりの喝にも聞き取れる葛葉からの呼び掛けに、メガリザードンXは悲鳴を上げているボロボロの体を起き上がらせる

 

 

「…あれだけの攻撃を食らってまだ立ち上がれるなんてね。でも、リザードンはもう瀕死寸前。ここからどう足掻いてもアンタに勝ち目はないわ。潔く負けを認めなさい、葛葉」

 

 

ドーラは立ち上がったメガリザードンXのタフさと未だ向けてくる強い戦意に称賛の呟きを落とすも、5体目のポケモンも控えている自分に万が一にも勝てることはないと、葛葉に勝敗は喫したことを告げる

 

 

「負けを認めろだと…?認めるわけねぇだろっ!俺の実力は四天王に引けを取ってねぇんだっ!その俺がポケモンリーグ出場の通過点でしかないジムリーダーに…っ!本気も出してねぇ母さんなんかに…っ!負けるわけにはいかねぇんだよっ!!」

 

 

だが、それを認められない葛葉は在らん限りの激情を込めて吠え返す

 

 

「俺達は母さんの劣化品でも模造品でもねぇっ!俺は強いっ!強くならないといけねぇんだっ!誰も馬鹿に出来ねぇくらい…っ!他と比べるなんて馬鹿らしいくらい…っ!圧倒的な強者にならなきゃいけねぇんだよっ!!!」

 

「ウオォォォォォンッ!!!」

 

 

体が張り裂けんばかりの勢いで葛葉が怒号と共に胸の内を吐き出すと、その想いに応えるように尻尾と口から溢れる蒼い炎を激しく燃え上がらせてメガリザードンXが大咆哮を轟かせる

 

 

「「「「「…っ!!?」」」」」

 

「まだあれだけの力を出せるのか…!」

 

 

葛葉とメガリザードンXが放つ恐ろしさすら感じる凄まじい気迫に圧倒されるリゼ達は思わず息を呑む

 

 

「葛葉さん…」

 

 

そんななか、凛月はリゼ達と違って激情に駆られ荒々しい葛葉の姿を目にした瞬間、酷く心配そうな顔を浮かべた

 

 

「……」

 

「……」

 

 

ドーラは変わらず毅然とした態度で葛葉とメガリザードンXを鋭い眼差しで見据え、審判台から2人とポケモン達を視界に収める社は少し悲しそうな表情を浮かべていた

 

 

「……」

 

「兄やん…」

 

 

そして、何か思うところがあるような顰めっ面を浮かべ沈黙する叶が険しい眼差しで葛葉を見つめるなか、ひまわりが縋るように彼の袖を掴む

 

その不安そうな顔からひまわりが葛葉のことを酷く心配していることを叶はすぐに察するも、このバトルの結末がどうなるかを既に悟ってしまっていたことから、気休めだろうと安心させられるような言葉を掛けてあげることが出来ず、沈黙を貫いた

 

 

(ごめんね、ひまちゃん…。今の葛葉じゃ、おそらくドーラさんには…)

 

 

叶の心がひまわりへの罪悪感と葛葉への心配、そして自身の不甲斐無さで溢れるなか、葛葉とメガリザードンXが仕掛けに動き出す

 

 

「やるぞっ!リザードンっ!!"かみなりパンチ"ィっ!!」

 

「ウオォォォンッ!!」

 

 

メガリザードンXは両拳を力強く突き合わせ"かみなりパンチ"を繰り出す

 

だが、その次の瞬間にメガリザードンXは自身の胸元へ"かみなりパンチ"を打ち付けた

 

 

「ウォ…ッ!?ウオォォォン…ッ!!」

 

 

纏わるように全身を襲う"かみなりパンチ"の電撃にメガリザードンXはその表情を苦痛に一瞬だけ歪ませるも、すぐ平気そうに強がってみせた

 

 

「えぇぇぇ…っ!!?」

 

「どうして自分に攻撃を…!?」

 

「自棄になって自滅でもする気か…!?」

 

「いや、まさかアイツ等…っ!」

 

 

葛葉の指示とメガリザードンXの行動に一同が声を上げて驚く

 

その中でイブラヒムが何か思い当たったような呟きを落とした直後、葛葉が更なる指示を飛ばした

 

 

「そのまま"フレアドライブ"っ!!!」

 

 

全身に未だ電撃が纏わるなか、メガリザードンXが"フレアドライブ"を繰り出すと蒼い炎は電気と混じり合い、雷電を帯びる炎へと化した

 

 

「"かみなりパンチ"の電気と"フレアドライブ"の炎が合体した…っ!?」

 

「"かみなりパンチ"のみだとドーラさんのリザードンが繰り出す攻撃に劣る可能性がある…!対して、"フレアドライブ"のみだと直撃してもタイプ相性上ダメージが弱まって決め手に欠ける…!」

 

「だから、効果抜群になる"かみなりパンチ"の電気を"フレアドライブ"に纏わせたんだ…!」

 

「ウオォォォォォンッ!!!」

 

 

リスクを覚悟した上で打って出た葛葉達の作戦にリゼ達が声を上げるなか、雄叫びを上げたメガリザードンXは両翼を力強く広げ、勢い良く地を蹴り、メガリザードンYへと突貫した

 

 

「さっきのガブリアスと言い、その発想は面白いわね。リザードン!"ワイドブレイカー"!からの"だいもんじ"!」

 

 

異なる技を合体させてより強力な一撃を生み出す戦法にドーラが感心の呟きを落とすと共に指示を飛ばすと、メガリザードンYは繰り出した"ワイドブレイカー"の尻尾に"だいもんじ"をぶつけた

 

すると、"ワイドブレイカー"は"だいもんじ"の炎を纏って大きさを増し、互いのパワーが混ざり合って炎が赤紫色へと変化する

 

 

「ドーラさん達も合体技を…!?」

 

「流石は最強のジムリーダーとそのエースポケモンだな…!」

 

 

当然のように合体技を指示し、それを実行してみせたドーラとメガリザードンYにまたしてもリゼ達が驚くなか、メガリザードンXとメガリザードンYの両者が激突する

 

瞬間、"ドオォォォォォンッ!!!"と骨の髄にまで響く衝突音と共に、バリバリバリと稲妻を発生させ、空間を震わせるほどの凄まじい衝撃が室内を走り抜ける

 

 

「ザァァァァァド…ッ!!」

 

「ウオォォォォォン…ッ!!!」

 

 

咆哮を上げるメガリザードンXとメガリザードンYの激突が互いに一歩も譲らず鬩ぎ合い続けられるなか、両者の凄まじいパワーによって遂に大爆発が引き起こされる

 

 

「くっ…!」

 

「……」

 

「「「「「きゃああああああ…っ!?」」」」」

 

「威力は互角…っ!?」

 

「痛み分けか…っ!あるいはこれで決着が付いたか…っ!」

 

 

大爆発の衝撃に耐えながら各々が勝負の行方を案じるなか、しばらくして爆発の煙が晴れたバトルフィールドには、ボロボロな姿のメガリザードンXとメガリザードンYが向かい立ち合っていた

 

 

「ウォ…!ウオォォン…!」

 

「ザァ…!ザァド…!」

 

 

息も絶え絶えな両者は戦闘不能間近と窺えるほど消耗していたが、相手を見据える眼は鋭く、少しの油断も隙も見せはしないと気を張り詰め合っていた

 

そんな両者の静かな睨み合いが数十秒ほど経ったその時だった

 

 

「ザァ…!ザァド…ッ!?」

 

 

ダメージに耐え兼ねたのか、辛そうに片目をグッと瞑ったメガリザードンYが体勢を崩して片膝を地に突かせた

 

 

「勝負あったなぁっ!リザードンっ!"ドラゴンクロー"でトドメだぁっ!」

 

 

メガリザードンYが隙を見せたその瞬間に葛葉は勝ち誇った笑みを浮かべると共に、メガリザードンXに攻撃の指示を飛ばした

 

 

「……」

 

 

だが、その指示にメガリザードンXはピクリとも反応せず、ただ立ち尽くすだけだった

 

 

「おい…っ!何やってんだ、リザードンっ!早く攻撃を…っ!」

 

 

今ならば反撃の心配無くメガリザードンYを確実に倒せると、このチャンスを逃したくない葛葉が苛立ち混じりに催促するその最中だった

 

 

「ウォ…ウォォン…」

 

「「「「「…っ!!?」」」」」

 

「なっ…!!?」

 

 

ぐらりと体を傾かせたメガリザードンXはメガシンカが解けて元の姿へと戻ってしまい、前のめりに力無く地へと倒れ伏せた

 





リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、グレイシア、バタフリー
   サイドン、ルカリオ、ソウブレイズ

葛葉
手持ち:リザードン、クロバット、ギャラドス
   ガブリアス、ルガルガン(真昼)

ドーラ
手持ち:リザードン、ギャラドス、バクガメス
   ジジーロン
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