にじさんじ×ポケットモンスター   作:Mr.ソロ

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本作品をご愛読されている皆様、長らく投稿が滞ってしまい申し訳ありません。お知らせ等は活動報告にて行いますので、よろしければそちらもご確認ください。それでは、本編をどうぞ。


第87話「想いを炎に!ソウブレイズvsメガガブリアス!」

 

最後のバッジを懸け、シーズジムのジムリーダー:ドーラとのジム戦に臨むリゼはグレイシア、サイドンの活躍によって1体目のギャラドス、2体目のバクガメスを倒す

 

そして、ドーラの3体目、ヌメルゴンとのバトルでグレイシアとサイドンが続けて戦闘不能に陥るも、ルカリオの奮闘によってこれを突破し、続く4体目のオンバーンもエンペルトで見事に突破した

 

そして、最後のポケモンとなるドーラの5体目は葛葉とのバトルでその強さを見せつけた彼女のパートナーであるリザードン

 

…と、誰もがそう思っていたが、実際にドーラが繰り出したのは"マッハポケモン":ガブリアスだった

 

予期せぬドーラの切り札を相手に、果たしてリゼは勝利することが出来るのだろうか…

 

 

 

 

「まさか、ドーラさんの切り札がガブリアスだなんて…!」

 

「…予想外だが、冷静に考えれば何もおかしな話じゃない。俺達全員が勝手にそう思い込んでいただけだ」

 

 

驚きのあまり呆然とする観戦席の一同

 

その中でいち早く落ち着きを取り戻したイブラヒムがそう呟きを落とす

 

全ては自分達の思い込み…先の葛葉とのバトルで見せつけられた強さが強く印象に残っていたこと、最大のパートナーであると本人も認めていたことから、ドーラはまず間違いなく切札としてリザードンを出してくるだろうと皆が思っていた

 

 

「私の切札がリザードンじゃないことが余程衝撃だったみたいね。でも、これまでのバトルもそうだったでしょ?初めて見る相手に、異なる戦術。最後のジムだもの、それくらいじゃないと歯応えがないと思わない?まあ、アナタはそれを見事に乗り越えてみせたわけだけど。流石は叶君や他の子達から注目されてるトレーナーだわ」

 

 

そう改めてリゼを称賛したドーラは快活な笑みを浮かべる

 

 

「一応言っておくけど、リザードンじゃないからって私のガブリアスを甘く見ないことよ。この子との付き合いはリザードンと同じくらい長い。強さも引けは取らないわ」

 

「ガァァァブッ!」

 

(たしかに、あのリザードンにも負けないくらい凄いプレッシャー…!こっちの思い込みとは言え意表を突かれたけど、ポケモンバトルに絶対はない…!予想外のことだって起こり得る…!)

 

 

ガブリアスの威圧感に当てられ我に返ったリゼは動揺した精神を落ち着かせようと心中で自身にそう言い聞かせる

 

 

(作戦は変えない…!あとはポケモン達を信じて、全力で勝ちにいく!)

 

 

リゼが改めてバトルに臨む気持ちを整え、気合いを入れ直したところで社が試合再開の合図を告げる

 

 

「それでは、バトル始め!」

 

「エンペルト…っ!いくy…!?」

 

 

最初から出し惜しみせず、速攻でZ技を叩き込もうとリゼがエンペルトに呼び掛けたその時、視界の先にあるものを捉えて思わず言葉を詰まらせる

 

視線の先奥にいるドーラが葛葉とのジム戦で見せたキーストーンが装飾された指輪を取り出したからだ

 

 

「ガブリアス!メガシンカ!!!」

 

 

その掛け声と同時に、ドーラの持つキーストーンとガブリアスが持つメガストーンが共鳴し、双方から溢れ出した光が繋がってガブリアスを七色の光で包み込む

 

 

「ガァァァァァブッ!!!」

 

 

体は一回り大きく、随所にあった棘は更に増え、両腕の爪と羽が一体となって鎌状の大きな刃へと変化し、弾けた七色の光の中から咆哮と共に姿を現したガブリアスはメガガブリアスへとメガシンカを遂げた

 

 

「アレがメガガブリアス…っ!」

 

「格好いい〜…!」

 

「たしかに凄いけど、見惚れてる場合じゃないよ…!こころちゃん…!」

 

「それにしても、いきなりメガシンカなんて…!」

 

「メガリザードンYの特性は時間制限のある天候を晴れ状態にする"ひでり"やから、相手によってはタイミングを考える必要もあるってさっき話したけど、メガガブリアスはそういうわけじゃないんやろな…!」

 

「なんにしても、メガシンカしたことでガブリアスの耐久力は上がっているはずだ。Z技をぶつけようとしたリゼさんにとっては少し嫌な展開だな」

 

 

観戦席ではメガシンカを果たしたメガガブリアスにイブラヒム達が各々の反応を示し、言葉を交えるなか、エンペルトと共に相対するリゼはゴクリと固唾を呑み込む

 

 

「メガガブリアス…!相手に取って不足はない…!エンペルト!私達の全力をぶつけるよ!」

 

「エンペッ!」

 

 

メガガブリアスを前に武者震いしながらも、確かな戦意を持ってバトルに臨む姿勢を見せたリゼは水のZ技を繰り出すゼンリョクポーズを取り、直後にZリングから溢れる強大なエネルギーがエンペルトに注がれる

 

 

「Z技…!なるほど、通りでエンペルトを大事に残しておこうとしていたわけだわ!ガブリアス!」

 

「ガァブッ!」

 

 

リザードンを相手に想定してリゼが狙っていた秘策の正体を知り、納得の声を呟いたドーラはメガガブリアスを呼号する

 

すると、メガガブリアスは両腕を顔の前で斜めに組んで防御の体勢を取った

 

 

「まさか…!Z技を正面から受け止めるつもり…!?」

 

「そんな無茶な…!」

 

(いや、相手はニジサンジ地方で最強のジムリーダー…!成す術無く、ただ受け止めるなんて有り得ねぇ…!)

 

(一体、何を狙ってるんや…!?)

 

 

ドーラとガブリアスの行動にフレン達が驚愕し、何か裏があるのではとイブラヒムや笹木が訝しむなか、リゼとエンペルトはZ技を繰り出す

 

 

「いくよっ!エンペルトっ!"スーパーアクアトルネード"っ!!」

 

 

叫ばれたリゼの指示と共に、エンペルトは漲らせたZエネルギーによって大規模な激流を発生させると、それを身に纏ってメガガブリアスへと突っ込む

 

 

「エンペェェェッ!!!」

 

「ガッ…!」

 

 

エンペルトは激流を纏った強烈な突撃を炸裂させると、勢いそのままにメガガブリアスを中心にその周囲で螺旋を描くように旋回し続け、激流逆巻く巨大な渦潮を作り出す

 

 

「ガッ…ブゥゥゥゥゥ…ッ!」

 

「ちょ、直撃しました…!」

 

「何かするのかと思ってたけど…!」

 

「本当にただ耐え切るつもりなんか…!?」

 

 

何の迎撃も無く、すんなりと水のZ技が決まったことが素直に受け止められない笹木達がそう動揺の声を漏らす

 

 

(おいおい…!このまま最後まで食らい切るつもりじゃねぇだろうなぁ…!?)

 

(メガシンカして能力が大幅に上がっているとは言え、1発限り故の超威力を誇るZ技に下手な迎撃は無意味と悟った。だから少しでもダメージを抑えるために防御に徹する…ってことなのか…?)

 

「……」

 

 

葛葉が現状に焦り苛立ち、イブラヒムが推測に思考を巡らせ、リゼが気を抜かず熟視するなか、"スーパーアクアトルネード"の巨大渦潮の勢いがピークに達しようとしたその時だった

 

 

「そろそろね…!ガブリアス!"ドラゴンダイブ"!」

 

「ガッ…アァァァァァブッ!!!」

 

 

ドーラが指示を飛ばし、激しい渦潮に揉まれる中でメガガブリアスは咆哮を轟かせると共に"ドラゴンダイブ"を発動させ、勢いよく飛び上がる

 

 

「えっ…!?」

 

「「なっ…!?」」

 

「「…っ!?」」

 

「「「「「えぇぇぇぇぇ…!!?」」」」」

 

 

そして、次の瞬間に起こったある事でリゼ達は大きく目を見開かせた

 

メガガブリアスを呑み込んでいる"スーパーアクアトルネード"の巨大な渦潮も"ドラゴンダイブ"と共に上昇を始めたのだ

 

 

「ガァァァァァァァブッ!!!」

 

「エンペェェェ…ッ!?」

 

 

そして、巨大渦潮の大半を奪われたエンペルトはその後に急降下してきたメガガブリアスの激流を纏う"ドラゴンダイブ"の直撃を受け、大きく吹き飛ばされる

 

 

「エンペルト…っ!?」

 

「い、今のなんなん…!?」

 

「ガブリアスの繰り出した"ドラゴンダイブ"が"スーパーアクアトルネード"の渦潮を纏ったんや…!」

 

「リゼさんのエンペルトの"うずしお"と"ドリルくちばし"、葛葉のガブリアスの"すなあらし"と"あなをほる"を1つの技に合体させた方法と同じだ…!敢えて攻撃を受け止めたのはこれを狙っていたからか…!」

 

 

あまりの出来事に狼狽えるひまわり達にイブラヒムがそう告げた

 

通常、超強力な威力を誇るZ技の直撃をまともに受ければ、余程のレベル差でも無い限りそこから反撃することはまず出来ない

 

だが、ドーラはメガガブリアスに防御を指示し、"スーパーアクアトルネード"のダメージを少しでも抑えさせたことでその後の反撃を可能にした

 

そして、"スーパーアクアトルネード"の締めとなる巨大渦潮の中に囚われたメガガブリアスはその激流の流れに逆らわず、同じ向きに回転をし続けた

 

これによって得た凄まじい回転力を以って繰り出した"ドラゴンダイブ"で、メガガブリアスは自身を襲う強力な巨大渦潮を纏わせ、合体技へと昇華させたのだ

 

 

「ガァブ…ッ!」

 

「流石はZ技…強力ね。よく耐えたわ、ガブリアス」

 

「エンペルト…!大丈夫…!?」

 

「エン…ペェ…!」

 

 

反撃に成功したもののダメージは小さくなく、少し息を上がらせるメガガブリアスをドーラが褒めるなか、心配するリゼに呼び掛けられたエンペルトは呻き声を溢しながらも立ち上がろうと体を起こす

 

 

「持ち堪えたみたいね。まあ、強力な合体技ではあったけど組み合わせはドラゴンと水タイプ。どちらもエンペルトには相性不利だから当然か。ガブリアス!"ストーンエッジ"!」

 

 

エンペルトにまだ戦闘の意志があることを確認したドーラはトドメの攻撃に"ストーンエッジ"を指示し、メガガブリアスは自身の周囲に無数の鋭利な岩の礫を生み出すと、それらを一斉に撃ち放った

 

 

「エンペルト…!"れいとうビーム"…!」

 

 

対するリゼは迎撃、あわよくば直撃すればメガガブリアスにとって超効果抜群となる"れいとうビーム"を指示する

 

 

「エン…ペェ…」

 

「エンペルト…!?もしかして、アナタ…!」

 

 

だが、エンペルトは技を繰り出そうとしなかった

 

否、繰り出せなかった

 

その理由が直前に受けた"ドラゴンダイブ"の追加効果によって怯んでしまったからだと、リゼは微かに聞き取れたエンペルトの怯え震える声から悟った

 

 

「エンペェェェ…ッ!?」

 

 

直後、"ストーンエッジ"の弾幕が直撃し、エンペルトは痛烈な叫び声と共に吹き飛び、仰向けに地面へ倒れ込んだ

 

 

「エンペェ…」

 

「エンペルト、戦闘不能!ガブリアスの勝ち!」

 

「ガァァァブッ!!」

 

 

社が勝敗の判定を告げ、メガガブリアスが勝鬨の咆哮を上げるなか、リゼは倒れたエンペルトをボールへと戻す

 

 

「ありがとう、エンペルト。後は任せて。…お願い!ルカリオ!」

 

 

奮闘したエンペルトにそう労いの言葉を掛けたリゼは代わってルカリオを繰り出す

 

 

「ルオォォッ!」

 

「まずはルカリオから…」

 

「鋼タイプを持ってるルカリオなら、"ストーンエッジ"と"ドラゴンダイブ"のダメージを抑えられるからね!」

 

「だが、ルカリオはヌメルゴン戦で相当なダメージを負ってる。そう長くは持ち堪えられないと思うぞ」

 

「最後に残るソウブレイズに繋ぐためにも、どれだけガブリアスの体力を削れるかが重要になりそうやな」

 

 

状況の整理と同時にバトルの展開について笹木達が言葉を交わすなか、リゼはメガガブリアスを相手にルカリオとどうバトルに臨むかを思案する

 

 

(次に"波導纏い"を使おうとすれば、ドーラさんは必ず阻止しに来るはず…!ルカリオで勝負を決めるつもりで臨むけど、下手に仕掛ければ大きな一撃を貰いかねない…!だからまずはソウブレイズに後を託すことになった時のためにも慎重に立ち回って、少しでも体力を削ることを優先する…!"波導纏い"は確実なチャンスがあった時に…!)

 

 

そう方針を固めたリゼは気を引き締め直し、バトルを再開させる

 

 

「ルカリオ!"かげぶんしん"!」

 

 

まずはルカリオ本体がガブリアスからの攻撃を食らいにくくするため、繰り出させた"かげぶんしん"で十数体の分身を作り出す

 

 

「続けて"はどうだん"!」

 

「「「「「ルオォォッ!!」」」」」

 

 

そして、ルカリオは分身達と共に"はどうだん"を繰り出し、それを一斉にメガガブリアスへと撃ち放つ

 

 

「ガブリアス!"すなあらし"!」

 

「ガァァァブッ!!」

 

 

対するメガガブリアスはドーラの指示で"すなあらし"を繰り出し、強烈な砂嵐を巻き起こすと同時にそれを以って"はどうだん"を押し止め、爆散させる

 

 

「"ストーンエッジ"!」

 

「ガァァァァァ…ッ!」

 

「…っ!?ルカリオ…!"ボーンラッシュ"で防御…!」

 

 

ドーラは立て続けに"ストーンエッジ"を指示すると、メガガブリアスは咆哮を上げると共に両腕を勢いよく振り上げる

 

その瞬間、リゼは妙な違和感を覚えるがそれについて思考する暇等無く、放たれる"ストーンエッジ"から身を守らせるため"ボーンラッシュ"を指示し、ルカリオと分身達は生み出した骨の棍棒を手に身構える

 

 

「ブゥゥゥゥゥッ!!!」

 

「…っ!?」

 

「「「「「…っ!!?」」」」」

 

 

その直後、メガガブリアスが繰り出す"ストーンエッジ"にリゼ達は目を見開かせる

 

メガガブリアスがエンペルトにトドメを刺した際に繰り出した"ストーンエッジ"は自身の周囲に生み出した無数の岩の礫を弾幕状に撃ち放つものだったが、今度はそうではなかった

 

メガガブリアスは振り上げた両腕を地面へと勢いよく叩き付けると、ルカリオ目掛けて扇状に地中から鋭利な巨岩を次々と突出させる"ストーンエッジ"を繰り出してきたのだ

 

先程とは異なる攻撃方法…それに驚かされたのは当然だが、より一層リゼ達を驚愕させたのはその"ストーンエッジ"が通常見ることのない凄まじいスピードで迫ってきたことだった

 

 

「…っ!ルカリオ…っ!避けて…っ!」

 

「「「「「ルオ…ッ!」」」」」

 

 

焦りを見せるリゼの回避の指示に、ルカリオと分身達は迫る"ストーンエッジ"を迎撃し受け止めようと手にする"ボーンラッシュ"を構える

 

 

「「「ル…ルオォォォ…ッ!?」」」

 

「「「「「ルオ…ッ!?」」」」」

 

 

だが、最前にいた数体の分身達が振り下ろした"ボーンラッシュ"と"ストーンエッジ"の激突は一瞬だけ力の拮抗を見せるも、立て続けて突出した2,3撃目に"ボーンラッシュ"の棍棒は耐え切れず粉々に砕け散り、分身達はその直撃を受け消えてしまう

 

その場面を目の当たりにしたルカリオ本体と分身達は動揺を露わにするも、その進行を少しでも食い止めようと前へ出た数体の分身達による迎撃のおかげで、本体を含む後方にいた3体だけが跳躍による回避が間に合い、"ストーンエッジ"の直撃を回避した

 

 

「かなり数が絞れたわね。本体は…その子かしら?ガブリアス!"ドラゴンダイブ"!」

 

「ガァブッ!!」

 

 

その直後、メガガブリアスは続けて"ドラゴンダイブ"を繰り出し、跳躍した3体の内の1番最後方にいたルカリオ目掛けて突撃する

 

 

「ルオォォォォォ…ッ!?」

 

「ルカリオ…っ!?」

 

 

その直撃を受けたのは分身ではなくルカリオ本体…その強烈な一撃に痛苦の悲鳴を上げ、吹き飛ばされて地上に叩き付けられる

 

 

「ルカリオが…っ!」

 

「"ドラゴンダイブ"を諸に食らってもうたな…!効果今一つとは言え、相当なダメージになってるやよ…!」

 

「というか、さっきの"ストーンエッジ"はなに…!?めちゃくちゃ速くなかった…!?」

 

「おそらくはそう調整して繰り出したんだろう。でなきゃメガシンカとは言え、あれほどのスピードにはならない」

 

 

ルカリオを心配して天宮が思わず声を上げ、笹木が呟きを落とすなか、メガガブリアスが繰り出した"ストーンエッジ"の速さに驚愕の表情で言及するフレンにイブラヒムが淡々と言葉を返す

 

 

「そんなこと出来んの…!?」

 

「技によってはな。だが、スピードに比重を置く分、威力は落ちる。欠点が無いわけじゃない」

 

「威力が落ちる…?でも、ルカリオの"ボーンラッシュ"は"ストーンエッジ"を耐えらませんでしたよ…?」

 

「うん…。エンペルトに繰り出した時と比べて技の威力は同等…いや、それ以上あるようにも見えた気がする…」

 

「問題はそこなんだよな…」

 

 

攻撃速度を特化させた"ストーンエッジ"について話すなか、矛盾の生じる疑問にイブラヒムは思考を巡らせる

 

 

(スピードを重視させたにも関わらず、"ストーンエッジ"の威力はエンペルト戦の1度目と同等以上…。技の威力が上がっていることはまず間違いないが、"ストーンエッジ"にも"ドラゴンダイブ"にも攻撃力を上げる追加効果は無い…。だとすれば、メガガブリアスの特性がギャラドスの持つ"じしんかじょう"のような自身の能力を高めるものなのか…)

 

 

"いや…"と、イブラヒムは更に思考を続ける

 

 

(エンペルト戦でも繰り出した"ドラゴンダイブ"の威力は渦潮による回転でパワーアップさせたことを差し引けば、たった今繰り出した2度目の威力と大して変わらねぇ程度だった…)

 

 

1度目と比べて"ストーンエッジ"の威力は上がっているが、"ドラゴンダイブ"の威力は上がっていない

 

その点から、イブラヒムはメガガブリアスが特性等によって自身の攻撃力を上げているわけではないと推測する

 

 

(おそらく、特定の技の威力がメガガブリアスの持つ特性によってパワーアップしていると考えられる…。2つの技が繰り出された1度目と2度目の間で変わったことはエンペルトが戦闘不能になったことと天候が砂嵐になったこと…。天候…?そうか…!そういうことか…!)

 

 

その思考の末に、イブラヒムはある解答に辿り着いた

 

 

「分かったぞ…!メガガブリアスの特性はおそらく天候が砂嵐の時に岩、地面、鋼タイプの技の威力が上がる"すなのちから"…!だから技の性能をスピード重視にさせても1度目と同等以上の威力を出せたんだ…!」

 

「ふふ、その通りよ。メガガブリアスの特性は"すなのちから"。天候が砂嵐の状態である限り、繰り出す岩と地面、鋼タイプの技の威力がより強力なものになるわ」

 

「…っ!」

 

 

判明されたメガガブリアスの特性"すなのちから"にリゼは表情を歪ませる

 

たしかに特性"すなのちから"は強力だが、天候が砂嵐状態でなければ何の効力も発揮することは出来ないため、天候を書き換えることが出来れば対処は容易に可能だった

 

だが、その術を持つポケモンは既にリゼには残されていなかった

 

そして、天候が時間経過と共に自然と元に戻るが、メガガブリアスは"すなあらし"を覚えているため、何度でも天候を砂嵐状態にすることが出来る

 

つまり、このバトル中、メガガブリアスは常に天候を砂嵐にし、"すなのちから"の特性を発揮させることが出来るのだ

 

 

「砂嵐の天候が続く限り、3つのタイプの技の威力が上がるなんて…!」

 

「グレイシアが残っていれば、"あられ"で天候を変えて無効化することが出来たんやけど…!」

 

「…無いモノを惜しんでも仕方ねぇ。残るルカリオとソウブレイズでどう攻略するか。リゼさんに残された手札はそれだけだ」

 

「ル…オォ…!」

 

 

グレイシアの脱落を惜しむ笹木にイブラヒムがそう告げるなか、苦しい様子ながらもその眼にまだ闘志を宿し立ち上がるルカリオにリゼは声を掛ける

 

 

「ルカリオ…!まだやれるよね…!」

 

「ルオォ…ッ!!」

 

 

聞くまでも無いことではあったが、ルカリオの戦う意志を確認したリゼはその呼応に頷き返し、指示を飛ばす

 

 

「ルカリオは"はどうだん"!ギリギリまでパワーを溜めて!残った分身達はそのサポート!」

 

 

整うまでの時間や持続力でリスクのある"波導纏い"より、いつでも繰り出せる"はどうだん"に出来る限りの力を注ぎ、その一撃に賭けた方が良い

 

そう判断したリゼの指示を受けたルカリオは繰り出した"はどうだん"へ更に波導を注ぎ込み、残された2体の分身達は本体を守ろうと前へ進み出る

 

 

「ガブリアス!"はがねのつばさ"!」

 

「来るよ!"はどうだん"で迎え撃って!」

 

「「ルオッ!」」

 

 

"はがねのつばさ"を繰り出し突っ込んで来るメガガブリアスを迎撃すべく、リゼから指示を飛ばされた分身達は"はどうだん"を撃ち出す

 

 

「ガァァァァッ!!」

 

 

だが、メガガブリアスは振るった"はがねのつばさ"で"はどうだん"を容易く両断、爆散させ、猛進を続ける

 

 

「"はどうだん"じゃ止められない…!なら、"ボーンラッシュ"で迎え撃って!」

 

 

"はどうだん"では一瞬も足止め出来ないと悟ったリゼは接近戦に切り替え、分身達は"ボーンラッシュ"を繰り出し、メガガブリアスへと突っ込む

 

 

「「ルオォォッ!!」」

 

「…ッ!」

 

 

2体の分身達がありったけの力を込めて同時に振るった"ボーンラッシュ"をメガガブリアスは"はがねのつばさ"を発動させている両腕を斜め十字に組み受け止める

 

 

「「ルゥゥゥゥゥ…ッ!」」

 

「…ッ!ガァァァァァブッ!!!」

 

「「ルオォォォ…ッ!?」」

 

 

分身達は押し返そうと更に力を込めるが、メガガブリアスはそれを上回るパワーを発揮して弾き返し、吹き飛ばされた分身達はその衝撃に肉体を保てず掻き消されてしまった

 

 

「最後の"かげぶんしん"も無くなっちゃった…!」

 

「ルカリオは…!?」

 

 

足止め役の分身がいなくなり、あと数秒と待たずにメガガブリアスの攻撃が届くという状況となるなか、心配するフレン達が視線を向けた先にいるルカリオは練り上げた"はどうだん"を通常の2倍ほどの大きさまで膨れ上がらせていた

 

 

「…っ!かなりの大きさだけど、アレじゃあまだ…!」

 

「ああ。特性を発動させているメガガブリアスと張り合うには足りねぇだろうな」

 

 

だが、メリッサとイブラヒムが見抜いた通り、その"はどうだん"はメガガブリアスのパワーを上回るには威力が不足しており、今繰り出しても容易に捌かれるのは目に見えていた

 

 

「ガァァァブッ!」

 

「ルオ…ッ!」

 

「まだだよっ!ルカリオっ!」

 

「…ッ!ルオォ…ッ!」

 

 

地を蹴り再び迫り出すメガガブリアス…その圧にルカリオは思わず"はどうだん"を繰り出しそうになるが、リゼの呼び掛けに踏み止まり、更に"はどうだん"へ力を注ぐ

 

 

今更退くことが出来ない以上、足りないのならメガガブリアスの攻撃が届くその寸前まで威力を高める

 

この一撃に賭けると決めた瞬間からリゼはその意志を堅く持ち、それを理解したルカリオはより一層意識を集中させる

 

それから僅か3秒足らず、目前まで迫ってきたメガガブリアスが"はがねのつばさ"を振るう体勢に入る

 

 

「ルカリオっ!今だよっ!!」

 

「ルオォォッ!!」

 

 

その時、リゼの合図が飛んだと同時にルカリオは直径約1mにまで膨れ上がった大玉の"はどうだん"を投げ付けるように撃ち出す

 

直後、"ドォォォンッ!!!"と空気を震わせる凄まじい衝撃を伴わせ、ルカリオの"はどうだん"とメガガブリアスの"はがねのつばさ"が衝突した

 

 

「ガァァァァァァァァッ!!」

 

「ルオォォォォォォォォッ!!」

 

 

"バチバチバチッ!"と激しいスパークを散らせ、咆哮を上げる両者は互角の鬩ぎ合いを見せる

 

 

「…ッ!ガァァァァァァァァァァブッ!!!」

 

「ルオ…ッ!?」

 

 

だが、改めて凄まじい咆哮を轟かせたメガガブリアスが更なる力を引き出してきたことによって、その拮抗は崩れる

 

 

「ルオォォォォォォォ…ッ!!?」

 

「ルカリオ…っ!?」

 

 

ルカリオは"はどうだん"諸共に"はがねのつばさ"で斬り裂かれ、更にメガガブリアスが通り過ぎてから数瞬後に起こった"はどうだん"の大爆発に呑み込まれてしまう

 

 

「「「ルカリオ…っ!?」」」

 

「悪くない威力だったが、あと少し足りなかったか…!」

 

「しかも"はどうだん"の爆発に巻き込まれるなんて…!ここまでのダメージを考えたら、これはもう…!」

 

 

"ルカリオは戦闘不能"…そうなってもおかしくない結果を予感し、笹木達は表情を陰らせる

 

 

「ルオォ…ッ!!」

 

「ガァ…ッ!?」

 

「「「「「…っ!!?」」」」」

 

 

だがその時、黒煙の中から"ボーンラッシュ"を手にしたルカリオが凄まじい気迫と共に勢いよく飛び出し、その渾身の一振りをメガガブリアスの右脚に叩き込んだ

 

 

「ガァァァァァァァ…ッ!?」

 

「…っ!?」

 

「ル…オ…」

 

 

その一撃にメガガブリアスは痛烈な呻き声を上げ、最後の力を振り絞り切ったルカリオは糸が切れたように体勢を崩し、地面を転がり倒れ伏した

 

 

「ルカリオ…っ!」

 

「…っ!ル、ルカリオ…!戦闘不能…!ガブリアスの勝ち!」

 

 

その場の全員が呆気に取られるなか、ルカリオの身を案じてリゼが駆け出し、それをきっかけにハッと我に返った社が動揺を残す声音でその戦闘不能を告げた

 

 

「ルカリオ…っ!大丈夫…っ!?」

 

「ル…オォ…!」

 

 

酷く不安そうな顔を覗かせるリゼを心配させまいと、ルカリオはぎこちない笑みを浮かべ強がってみせる

 

 

「ブレイ…!」

 

「ソウブレイズ…!」

 

 

その最中、"ポンッ!"とリゼのモンスターボールの1つが勝手に開いてソウブレイズが飛び出し、リゼ同様にルカリオを心配して声を掛ける

 

 

「ブレイ!ブレレイ!」

 

「ルゥ…!ルオォ…!」

 

「…ッ!」

 

 

短い会話だったが、ルカリオは真剣な表情で何かを伝えると最後に笑みを浮かべ、それを聞き届けたソウブレイズは目を見開かせる

 

 

「…ブレイ!」

 

 

一拍あって、ルカリオに深く頷き返したソウブレイズはその表情を引き締まらせると、リゼ達を横切って前へと脚を踏み出し、メガガブリアスに向かい立った

 

 

(ソウブレイズ…!ルカリオと何を話したのかは分からないけど、絶対に負けられないって熱い気持ちを感じる…!)

 

 

その勇ましい佇まいと横切られた際に見えた表情から、ソウブレイズがバクガメス戦の時以上にバトルに対する意気込み、その気持ちが強くなっていることをリゼは感じ取る

 

 

「…ソウブレイズを鼓舞してくれたんだよね?ありがとう、ルカリオ。最後のバトル、ソウブレイズと一緒に必ず勝つから!」

 

 

労いと誓いの言葉を掛けたリゼはルカリオをボールに戻すとトレーナーの立ち位置であるコートの端へと戻り、ソウブレイズと共にドーラとメガガブリアスに向かい合う

 

 

「いよいよ最後のバトルだね…!」

 

「この一戦で勝負が決まっちゃうと思うと、これまで以上に凄く緊張してきちゃった…」

 

「う、うん…!」

 

「りっちゃん…。リゼちゃん、ママに勝てるかな…?」

 

「どうだろう…。タイプの相性だと炎タイプのソウブレイズはドラゴンタイプのガブリアスに不利だし、向こうには"すなのちから"の特性もあるから…」

 

「有利な点を挙げるなら体力の消耗度合いやな。ガブリアスにはエンペルトの水のZ技とルカリオが最後に決めた一撃のダメージがある」

 

「比べてソウブレイズはバクガメス戦で受けた"ドラゴンテール"のダメージのみ。動きのキレに影響はない範疇の消耗だろう」

 

 

不安と緊張が高まるなか、凛月へ投げられたひまわりの問いからイブラヒム達がそう意見を交わしていると、それを聞いた葛葉が"ハッ!"と小さく鼻を鳴らす

 

 

「たしかにガブリアスは疲弊し始めちゃいるが、体力にはまだ余裕がある。あの程度なら何の問題もねぇ」

 

(…それはどうだろうね)

 

 

メガガブリアスの方が優勢だと確信を持つ葛葉の発言に叶が内心でそう呟くなか、いよいよ最後のバトルの火蓋が切って落とされる

 

 

「それでは、バトル始め!」

 

「ソウブレイズ!"ドラゴンクロー"!」

 

 

先手を打ったのはリゼ…指示を受けたソウブレイズは両腕の剣に"ドラゴンクロー"を発動させると共に地を蹴り、メガガブリアスへと疾駆する

 

 

「ガブリアス!"ストーンエッジ"!」

 

 

対するドーラは迎撃に"ストーンエッジ"を指示し、メガガブリアスは自身の周囲に生成した無数の鋭利な岩の礫を前方広範囲へ一斉に射出する

 

 

「今度は弾幕型の"ストーンエッジ"…!」

 

「あの岩の礫1つ1つの威力はそう大きくないが、岩タイプ技の"ストーンエッジ"は炎タイプのソウブレイズに効果抜群。1発でも当たればそれだけでかなりのダメージになる上、数が当たれば一気に戦闘不能まで持っていけるからな」

 

 

メガガブリアスが再び"ストーンエッジ"の攻撃方法を変えたことに驚くメリッサにイブラヒムがその理由を述べる

 

ルカリオの時に繰り出した"ストーンエッジ"の地面から次々と突出させていく方法と違い、無数の礫による弾幕攻撃は避け辛い

 

その分礫礫1つの威力は突出する巨岩に比べて小さいが、効果抜群となるソウブレイズにはそれ1つでも大きなダメージとなり、更に数が被弾すれば戦闘不能も狙えるのだ

 

 

「技の指示だけで自分から有効な攻撃方法に切り替え繰り出すなんて…!トレーナーの考えを完全に理解してる証拠やよ…!」

 

 

長い間ドーラと共に培ったバトルの経験から技の指示だけでその意図を瞬時に察したガブリアスの実力を笹木が改めて認識するなか、リゼがソウブレイズへ指示を飛ばす

 

 

「ソウブレイズ!"ゴーストダイブ"で躱して!」

 

 

"ストーンエッジ"と激突する直前で、ソウブレイズは前方に"ゴーストダイブ"による異空間への穴を作り出すと、その中へ飛び込んで直撃を回避する

 

 

「そっか…!"ゴーストダイブ"…!」

 

「あの技で入れる異空間なら、どんな攻撃も届かないもんね!」

 

 

"ゴーストダイブ"を利用した回避にフレン達がポンと手を叩くなか、メガガブリアスの背後に開いた異空間の穴からソウブレイズが飛び出す

 

 

「ブレイッ!」

 

「…ッ!ガァブッ!」

 

 

ソウブレイズは両腕の"ドラゴンクロー"を振るうが、その気配にすぐ気付いたメガガブリアスは振り返り様に繰り出した"はがねのつばさ"でその攻撃を受け止める

 

 

「受け止められた…!?」

 

「"ゴーストダイブ"はたしかに強力な技だけど、攻撃の直前には必ず異空間への穴が開く。その時に生じる空間の歪みを感じ取れば対応も間に合うわ」

 

「言ってることはその通りやけど、どんなポケモンでも当たり前に出来ることじゃないやよ…!」

 

「ああ。それにここまでのバトルで少なくないダメージを受けてるはずなのに、あの反応速度…。改めて末恐ろしい相手だな」

 

 

これまでのバトルで受けたダメージを感じさせないメガガブリアスの動きにイブラヒム達が畏怖にも似た驚愕を覚えるなか、鬩ぎ合い続けるソウブレイズとメガガブリアスとの間にある異変が生じる

 

 

「ブレェェェイッ!!」

 

「ガァァァァァ…ッ!ブァ…ッ!?」

 

「「「「「…っ!?」」」」」

 

 

鬩ぎ合いの最中、突然メガガブリアスが苦痛に顔を歪ませ、僅かに右脚を折らせた

 

 

「ブレェェェェェイッ!!!」

 

「ガッ…!ブァァァァァ…ッ!?」

 

 

直後、それを機にソウブレイズは咆哮と共に更に"ドラゴンクロー"へ力を込め、"はがねのつばさ"を押し切ってメガガブリアスを吹き飛ばした

 

 

「ガブリアスが崩れた…!?」

 

「でも、どうして…!?」

 

「脚だ…!ルカリオから最後に受けた足への"ボーンラッシュ"の一撃…!そのダメージを引き摺って踏ん張ることが出来なかったんだ…!」

 

 

メガガブリアスが急に体勢を崩した原因にいち早く気付いたイブラヒムがそう声を上げる

 

ルカリオから受けた攻撃のダメージが残る右脚が鬩ぎ合いで込められた力に耐え切れなかったのだ

 

 

「ルカリオの頑張りが繋がってる…!」

 

「これなら接近戦でも有利に戦えるね!」

 

(チッ…!いや、大丈夫だ…!その程度で崩せるほど母さん達は甘くねぇ…!)

 

 

リゼの勝利に凛月達が希望を見出し、葛葉がそれを内心否定するなか、室内を吹き荒れていた砂嵐がその勢いを弱め消えていく

 

 

「砂嵐も晴れたね…!」

 

「でも、ガブリアスは"すなあらし"で何度でも天候を変えられる…!」

 

「それに"すなあらし"は他の天候を変化させる技と違って繰り出す際の隙がほぼ無い…!重量級のポケモンでも無い限り、その隙を突こうにも近付くことが出来ひんよ…!」

 

 

止んだ砂嵐にフレン達は喜ぶも、メリッサや笹木の指摘にすぐまた表情を渋くする

 

"すなあらし"を覚えているメガガブリアスなら何度でも天候を変えられる上、繰り出されると強烈な突風が起こるため、体重の重いポケモンでなければ踏ん張らないと吹き飛ばされてしまうことから近付くことも出来ないのだ

 

 

「まあ、ソウブレイズには関係ない話だがな」

 

 

だが、イブラヒムがその否定を呟いた直後、その答え合わせをするかのようにリゼが指示を飛ばした

 

 

「ソウブレイズ!"ゴーストダイブ"!」

 

 

ソウブレイズは"ゴーストダイブ"を繰り出すと、その場に開けた異空間への穴へと潜り消えていった

 

 

「そうだった…!"ゴーストダイブ"なら問題無く近付ける…!」

 

「ほんまに便利な技やな〜!」

 

 

"すなあらし"を繰り出されることになったとしても、異空間へ逃れられる"ゴーストダイブ"であれば突風に阻まれる事無く接近出来る

 

その有用性に気付いてメリッサ達が声を上げるなか、この展開を予測出来ていた叶とイブラヒムは黙々と思考を巡らせる

 

 

(あの右脚のダメージがある今のメガガブリアスじゃ、"すなのちから"が発動していない状態でソウブレイズに技の打ち合いへ持ち込まれたらパワー負けすることは確実…)

 

(だが、今"すなあらし"を繰り出そうとすれば隙を生むことになる。ダメージ覚悟で"すなあらし"を繰り出すか、チャンスが生まれるまで守りに徹するか…)

 

 

この展開にどう動いてくるのか、イブラヒム達が注目を寄せるなか、ドーラがメガガブリアスへ指示が飛ばす

 

 

「ガブリアス!"ストーンエッジ"!」

 

 

メガガブリアスは"ストーンエッジ"を無数の礫として繰り出すと、自身の身を守るようにそれらを高速で周囲に飛び回らせ、その場でジッと身構える

 

 

「上手いな。"ゴーストダイブ"に対する良いカウンターだ」

 

「どういうこと…?」

 

「"ゴーストダイブ"を使ったポケモンが異空間から出る時、その出口の穴を十分に開けられ、尚且つそのポケモンが介入出来る十分なスペースが必要になる。空洞の無い物体や地面の中は当然、出入り口の穴が開き切れない閉塞な場所には異空間の出入り口を開けることは出来ない」

 

「つまり、ガブリアスとその周囲を飛び回ってる"ストーンエッジ"との間隔が狭いから、あの間にソウブレイズは"ゴーストダイブ"の穴を開けない…!」

 

「じゃあ、ソウブレイズはあの"ストーンエッジ"を無視してガブリアスに直接攻撃することが出来ないの…!?」

 

(ほらな。母さん達にとって、この程度の不利は対応可能なんだよ)

 

 

ゴーストタイプならではと言える何処からともなく現れ攻撃を仕掛けられる"ゴーストダイブ"の欠点を聞かされたフレン達は驚倒し、そんな彼女達を見下すように葛葉は薄らと笑みを浮かべた

 

 

(さあ、リゼさん。アナタはこの状況、どう対応する?)

 

 

相手の出方を窺うドーラが内心でそう問い掛けるなか、リゼは特に動揺も焦りも見せず返しの指示を飛ばした

 

 

「ソウブレイズ!"サイコカッター"!」

 

(来る…!何処から…!)

 

 

リゼがソウブレイズに向けて指示を出した"サイコカッター"はサイコエネルギーを刃の形にして放ち飛ばすことが出来る技

 

"ゴーストダイブ"での直接攻撃が不可能な現状、まずは距離を取った位置から"ストーンエッジ"の守りを剥がし、その後すぐに距離を詰め攻撃を仕掛ける

 

それがリゼの作戦であると睨んだドーラは相手からの攻撃が来る前に迎撃に出ようとフィールドに視線を向ける

 

 

(地上には見えない…!ということは…!)

 

 

だが、フィールドの端から端まで見渡してもソウブレイズの姿はおろか、"ゴーストダイブ"の異空間の穴ですら見当たらず、ドーラはまだ目を向けていないある場所に予感する

 

 

「ブレイッ!」

 

「やっぱりそこね…っ!ガブリアスっ!」

 

「ガァァブッ!」

 

 

その直後、上から聞こえた声にドーラが顔を上げると、ジムの天井に"ゴーストダイブ"の出入り口を繋げ姿を現したソウブレイズが落下しながら直下のメガガブリアス目掛けて渾身の力を込めた"サイコカッター"を繰り出す

 

直後に飛ばされたドーラの呼声を受け、メガガブリアスは自身の周囲を飛び回らせていた"ストーンエッジ"を一斉に"サイコカッター"へと放ち、迎え撃つ

 

空中で衝突した両者の技は互いに相手を押し切れず、程なくして引き起こされた爆発によって相殺に終わる

 

 

「来るわよ、ガブリアス!」

 

「ガァブッ!」

 

 

立ち込める爆煙に阻害されて見えないソウブレイズが次に起こす行動に警戒するようドーラに呼び掛けられ、メガガブリアスは爆煙を見上げながら身構える

 

 

「ブレイッ!」

 

「ガブァ…ッ!?」

 

 

その最中、メガガブリアスの真下の地面に突如"ゴーストダイブ"の穴が開き、そこから勢いよく飛び出たソウブレイズが右腕の剣による強烈な突きを顎に直撃させる

 

 

「"ゴーストダイブ"…!」

 

「技の衝突で生じた爆発の煙を目眩しに…!本命の狙いはこっちだったわけか…!」

 

 

天井からの"サイコカッター"は奇襲ではなく、メガガブリアスを囲う"ストーンエッジ"を使わせ、その注意を一方向へ誘導し、次手の"ゴーストダイブ"が決まりやすくするための布石だったのだ

 

 

「ソウブレイズ!"ドラゴンクロー"!」

 

 

痛烈な一撃を受けて体を仰け反りらせるメガガブリアスへ追撃しようと、飛ばされたリゼの指示を受けてソウブレイズは"ドラゴンクロー"を繰り出す

 

 

「ガブリアス!"すなあらし"!」

 

「…ッ!ガァァァァァブッ!!!」

 

「ブ…レイ…ッ!?」

 

 

だが、ドーラの指示が飛んだ瞬間、メガガブリアスは飛びそうになる意識を強引に取り戻し、仰け反る体を一歩退いた左脚に力を込め踏み止まらせると、直後に渾身の力を以って勢いよく前のめりに起き上がると共に"すなあらし"を繰り出し、その強烈な突風でソウブレイズを吹き飛ばす

 

 

「…っ!」

 

「「「「うぅぅぅぅぅぅぅ〜…っ!!?」」」」

 

「"ゴーストダイブ"の直撃を諸に食らったのに倒れんとか…っ!マジか…っ!?」

 

「しかもこの"すなあらし"…!1度目の時以上に強力だぞ…!タフなのも大概だが、これまでのダメージがあって、まだこれだけの力を出せるのかよ…!」

 

「それだけ、ガブリアスも負けられない気持ちが強いってことなんでしょうか…っ!」

 

(当然だ…!母さんのリザードンに並ぶあのガブリアスが本気を出して、この程度で負けるわけがねぇ…!)

 

「ガブリアス!"ストーンエッジ"!」

 

 

巻き起こる"すなあらし"の突風をリゼやフレン達は必死に耐え、これまでのダメージがありながらソウブレイズからの重い一撃を耐え切って反撃してみせたメガガブリアスにイブラヒムと笹木、凛月が各々の所感を溢す

 

そして、何処か安心するような、それでいて嬉しそうな笑みを葛葉が浮かべるなか、ドーラが攻撃の指示を飛ばし、"ストーンエッジ"を繰り出したメガガブリアスは生み出した無数の岩の礫を一斉にソウブレイズへ向けて放つ

 

 

「…っ!ソウブレイズ…っ!"ゴーストダイブ"っ!」

 

「ブ…レイ…ッ!」

 

 

焦るリゼの声を耳にしたソウブレイズは繰り出した"ゴーストダイブ"で自身が吹き飛ばされる先に異空間への穴を開くとそのまま投げ込まれるように中へと入り、直後すぐに閉じて目前まで迫っていた"ストーンエッジ"の直撃を回避する

 

 

「…っ!」

 

「ブレイッ!」

 

 

外れた"ストーンエッジ"がリゼから十数m先の地面に直撃して大きな粉塵を巻き上げるなか、異空間を通ってメガガブリアスの背後に飛び出したソウブレイズはその背中へ"ゴーストダイブ"の一撃を叩き込む

 

 

「ガァ…ッ!?」

 

「また決まった!」

 

「この調子でいけば…!」

 

「…っ!?ソウブレイズ…っ!そこから離れて…っ!!」

 

「…ッ!?」

 

 

順調にメガガブリアスへダメージを与えている展開にフレン達が歓喜の声を上げたその時、何かに気付いたリゼが危険を報せようとソウブレイズに叫んだ直後だった

 

"ドドドドドドッ!"と、突然ソウブレイズの頭上から"ストーンエッジ"の岩の礫が雨の如く降り注いできたのだ

 

 

「ブレェェェイ…ッ!?」

 

「ソウブレイズ…っ!!」

 

 

"ストーンエッジ"の直撃を受けたソウブレイズから痛烈な叫び声を上がり、リゼが血相を変えるなか、観覧席で見守るフレン達も激しい動揺を見せる

 

 

「ど、どういうこと…っ!?」

 

「なんで"ストーンエッジ"が上から…っ!?」

 

「というか、いつの間に技を繰り出してたん…っ!?」

 

「もしかして、"ゴーストダイブ"で躱された後に…っ!?」

 

「ううん…っ!あの短い間にガブリアスが技を繰り出した素振りは見えなかったよ…っ!」

 

「それも当然やよ…!だって、あの"ストーンエッジ"はさっき外れたヤツなんやから…!」

 

「「「「「えぇ…っ!!?」」」」」

 

 

疑問と推測を飛び交わしていた最中に投じられた笹木の言葉にフレン達は驚愕の声を重ねる

 

 

「俺も失念してたが、ポケモンの技には繰り出した時に攻撃の軌道を操作出来るものがあるんだよ…!しかも、敢えて一部の軌道を変えずそのまま地面にぶつけて操作は行っていないよう見せただけじゃなく、上がらせた土煙を目隠しにして認識を遅らせるなんてな…!」

 

 

その表情に僅かに悔しさを滲み出させるイブラヒムは理解が追いつかないフレン達にそう解説を述べた

 

"ストーンエッジ"や"マジカルリーフ"、"でんげきは"等の一部の技はその軌道をある程度操作することが出来る

 

メガガブリアスはソウブレイズが"ゴーストダイブ"で"ストーンエッジ"を躱した後、操作を手放した分をわざと地面に衝突させて土煙を上がらせ、それを目隠しに認識を阻害し、軌道を上方へと操作した残りによる攻撃を成功させたのだ

 

 

(数度に行なわれた"ストーンエッジ"に対する"ゴーストダイブ"での回避…。その成功がリゼさんの行動を安易にさせ、攻撃を躱し、それが地面に直撃したという事実が油断を誘ったみたいだね)

 

「ハッ…!ジムリーダーだから多少の手解きが必要とは言え、回りくどい真似しやがって…!」

 

 

この結果に至る更に細かな要因を叶が心内で分析するその隣で葛葉が何処か安心したような笑みを浮かべるなか、ドーラがメガガブリアスに追撃の指示を飛ばす

 

 

「ガブリアス!"ドラゴンダイブ"!」

 

 

地を蹴ったメガガブリアスは十分な高さまで飛び上がるとそこから急降下を始め、地に伏せるソウブレイズ目掛けて"ドラゴンダイブ"を繰り出す

 

 

「ブ…レェイ…ッ!」

 

「…っ!間に合わない…!ソウブレイズ!"むねんのつるぎ"!」

 

 

ソウブレイズは"ストーンエッジ"の直撃を受けてボロボロになった体を起き上がらせるも、すぐに立ち上がるまでは苦しく、その姿を見たリゼは回避は間に合わないと悟り、せめてもの抵抗にと"むねんのつるぎ"を指示する

 

 

「ガアァァァァァブッ!!」

 

「ブッ…レェェェェェ…ッ!!」

 

 

直後、繰り出した"むねんのつるぎ"でメガガブリアスの"ドラゴンダイブ"と激突したソウブレイズは相手を押し返そうと咆哮を上げ力を込める

 

 

「ガアァァァァァァァッ!!!」

 

「ブ…ッ!?レェェェェェ…ッ!!」

 

 

だが、"ストーンエッジ"による大ダメージに悲鳴を上げる体はソウブレイズに思うような力を引き出させてはくれず、徐々に押され始めては数秒と保たず、"ドラゴンダイブ"の直撃が決まってしまう

 

 

「ブレェェェェェイ…ッ!?」

 

「ソウブレイズ…っ!!」

 

 

"ドラゴンダイブ"の直撃を受けたソウブレイズは吹き飛ばされ、リゼの目の前に墜落した

 

 

「ソ、ソウブレイズ…」

 

「'ストーンエッジ"に続いて、"ドラゴンダイブ"まで…」

 

「これほどのダメージ…。戦闘不能でもおかしくはないだろう…」

 

「そ、そんな…!」

 

「…まあ、当然の結果だな。この勝負、母さんの…」

 

 

ぐったりと倒れ伏したソウブレイズの姿にひまわり達の表情が曇るなか、冷めた態度を取る葛葉がドーラの勝ちを口にしようとした…その時だった

 

 

「ブ…レェイ…!」

 

「「「…っ!?」」」

 

「「「「「ソウブレイズ…っ!?」」」」」

 

 

"グギギギ…!"と、錆び付いた人形の体を無理矢理動かすようにソウブレイズは自らのボロボロな体に鞭を打たせ起き上がると、ふらふらとよろめきながらも立ち上がった

 

 

「あの体でまだ立ち上がれるんか…!?」

 

「"むねんのつるぎ"はダメージを与えると同時に相手の体力を奪い、回復する技…。そのおかげでなんとか耐えられたみたいだな…」

 

「でも、あんな状態じゃこれまでと同じように動くことは…!」

 

「仮に動けたとしても、そう長くは保たないですよ…!」

 

 

だが、それでも戦闘不能寸前の大ダメージを負った今のソウブレイズではメガガブリアスに勝つのは絶望的だと、そう誰もが思うなか、冷や汗を流しながらも表情に不安や心配は出すまいと真剣な面持ちでそれらを押し殺すリゼは一呼吸挟んでソウブレイズに声を掛ける

 

 

「ソウブレイズ、まだやれるんだね…?」

 

「ブレイ…!」

 

 

ソウブレイズの体は酷く傷付いてこそいるが、メガガブリアスを見据える鋭い双眸には燃え滾るような強い闘志が宿っており、その想いと覚悟を感じ取ったリゼはバトルの続行を決意し、思考を巡らせる

 

 

(ソウブレイズの限界は近い…!勝つには短期決戦しかないけど、ドーラさんもそれは想定してるはず…!"ゴーストダイブ"も迂闊には使えない…!それに砂嵐が舞うこの状況でメガガブリアスと正面から打ち合ったらまず勝ち目はない…!)

 

 

ソウブレイズがメガガブリアスに勝つには、あまり時間を掛けず、相手からの攻撃はこれ以上受けないことが重要となるが、それは困難を極めるとリゼは理解していた

 

ソウブレイズがメガガブリアスに対して最も大きなダメージを与えられる技は"ドラゴンクロー"…だが、それを易々とドーラが許してくれるはずはない

 

正面からの接近はほぼ不可能…確実に距離を詰められる"ゴーストダイブ"でも、まだ体力に余裕のあるメガガブリアスならば防御なり反撃なり対応してくるだろう

 

特に反撃の一撃を食らえば、ソウブレイズが戦闘不能になる可能性が十分にある…よって、"ゴーストダイブ"による接近という選択を迂闊に取ることは出来ない

 

そして、天候が砂嵐状態となっている今、接近後に"すなのちから"が発動しているメガガブリアスと技の打ち合いにでもなれば、体力が大きく削られているソウブレイズのパワーでは競り負けることは容易に予測出来た

 

ここから勝利することは誰がどう見ても絶望的だったが、それでもリゼは思考を巡らせ続けた

 

 

(なにか…!なにか方法は…!)

 

「…ブレイ」

 

「…っ!?」

 

 

必死に思考を巡らせていたその時、横顔を振り向かせ呼び掛けてきたソウブレイズの声にリゼはハッと顔を上げる

 

 

「ソウブレイズ…?」

 

「ブレイ、ブレレイ…!」

 

 

"大丈夫、心配しないでくれ…!"…その自信ある逞しい、それでいて優しい声音からそう言っているように聞こえたとリゼが感じるなか、ソウブレイズは右手に"むねんのつるぎ"を発動させる

 

 

「一体何を…?」

 

 

リゼがその意図を未だ掴めないなか、ソウブレイズは繰り出した"むねんのつるぎ"の威力をどんどんと高めていく

 

まさか、ただ単に威力を最大まで高めた"むねんのつるぎ"で攻撃を仕掛けるつもりなのか?

 

誰かがそんな思考を過ぎらせ始めたその時、ソウブレイズは誰もが予想だにしなかった行動に出る

 

 

「ブレイ…ッ!」

 

「「「「「…っ!!?」」」」」

 

 

なんと、ソウブレイズは限界まで威力を高めた右手の"むねんのつるぎ"を自身の胸へと叩き付けたのだ

 

 

「えぇ…っ!?えぇぇぇぇぇ…っ!!?」

 

「じ、自分に攻撃…っ!?」

 

「ど、どうしてそんなことを…っ!?」

 

「…っ!いや、違う…!"むねんのつるぎ"の炎をよく見てみろ…!」

 

「炎を…?あっ…!」

 

 

側から見れば自傷行為としか捉えられないそれにひまわり達が激しく狼狽えるなか、何かに気付いたイブラヒムが声を上げる

 

その指摘に従い、注意深く目を凝らした一同はそこでようやくあることに気付いた

 

ソウブレイズが自身の胸に叩き付けた"むねんのつるぎ"…その膨大な炎が胸の方へ向かってまるで吸い込まれていくように小さくなっていっていたのだ

 

 

「"むねんのつるき"の炎を…っ!」

 

「体内に吸収してるんか…!?」

 

 

メリッサ達から改めて驚愕の声が上がるなか、ソウブレイズは"むねんのつるぎ"の炎を全て吸収し切る

 

 

「…ブレイッ!!」

 

 

直後、ソウブレイズがカッと目を見開かせた瞬間、頭の炎が業火の如く激しく燃え上がり、更に両肩からはまるでマントを模すように炎のようなオーラが噴き出ていた

 

 

「「「「「…っ!!!?」」」」」

 

「"もらいび"…!?いえ、違うわね…!これは…!」

 

「威力を高めた"むねんのつるぎ"から取り込んだ炎のエネルギーをパワーに変えた…!凄い…!凄いよっ!ソウブレイズっ!」

 

「ブレイ!」

 

 

イブラヒム達だけでなく、葛葉と叶、社、ドーラまでもが目の前で起こった現象に驚愕するなか、先程までの不安が無くなった興奮するリゼの姿に横顔を振り向かせたソウブレイズは眼を綻ばせる

 

 

「"むねんのつるぎ"の炎を吸収してパワーアップって…!」

 

「そ、そんなのアリなんだ…!?」

 

「有り得ない話じゃない…!ポケモンの中には相手の技を食らうことでパワーアップする奴もいる…!アレはそれに近いものだ…!だが、そのパワーアップはそう長く続かないだろう…!」

 

「えぇ…っ!?そうなの…!?」

 

「"もらいび"や"ひらいしん"のような特性や特殊な器官を体内に持つポケモンは技のエネルギーを余すことなく効率良く、負担無く自身のパワーに変換出来る…!だが、そういったものを持たないポケモンが技の膨大なエネルギーを体内に吸収しても、その全てをパワーに変えられるわけじゃない…!その証拠がアレだ…!」

 

 

と、イブラヒムはソウブレイズの背中から溢れ出ているオーラを指差す

 

 

「あのオーラは体内に吸収したものの留められず、漏れ出ているエネルギーだろう…!」

 

「そうなん…っ!?」

 

「漏れ出てる分、エネルギーの消費も大きい…!だから長時間は保たないってことですか…!」

 

「ソウブレイズ自身体力も少ないやろからな…!なんにしても時間との勝負ってことやな…!」

 

「リゼ様〜っ!ソウブレイズ〜っ!頑張って〜っ!!」

 

 

イブラヒム達の緊張も高まるなか、ドーラは嬉しそうな笑みを溢す

 

 

「トレーナーすら考え付かなかったパワーアップ方法をポケモン自身が導き出すなんて…!これもトレーナーの想いに応えようとしたからこそ…!あなた達、本当に素晴らしいわ!ガブリアスっ!最後まで私達も全力で彼女達に応えるわよっ!」

 

「ガァァァブッ!!!」

 

「いくよ!ソウブレイズ!」

 

「ブレイッ!」

 

 

ここまでのバトルで何度も目にしてきたリゼとポケモン達の強い絆に改めて敬意を表するドーラはメガガブリアスと気を引き締め直し、リゼもソウブレイズと気持ちを一つに最後のバトルへと臨む

 

 

「"むねんのつるぎ"!」

 

 

リゼの指示を受けて、ソウブレイズは再び右腕に"むねんのつるぎ"を繰り出すが、その炎はパワーアップする前のより何倍もの火力を引き出していた

 

 

「力を溜めることなく、最初からあんな威力を…!?」

 

「あれなら、"すなのちから"を発動させているメガガブリアスにも…!」

 

「ガブリアス!"ストーンエッジ"!」

 

 

パワーアップした"むねんのつるぎ"の威力が想像以上のものだったことを目の当たりにしたメリッサ達が大いに期待を膨らませるなか、ドーラは迎撃と牽制を兼ねて"ストーンエッジ"を指示する

 

"ストーンエッジ"を発動させたメガガブリアスは無数の鋭利な岩の礫を生み出すと、それを一斉にソウブレイズへと射出する

 

 

「また"ストーンエッジ"…!」

 

「いくら"むねんのつるぎ"の威力が格段に上がってると言っても、アレを全部防ぎ切るのは…!」

 

「だったら、ここは一度"ゴーストダイブ"で回避を…!」

 

「でも、またさっきみたいに反撃されたら…!」

 

 

繰り出された"ストーンエッジ"に血相を変えるフレン達が狼狽えるなか、リゼは落ち着いて更なる指示を飛ばした

 

 

「ソウブレイズ!"サイコカッター"!」

 

 

右手に"むねんのつるぎ"を構えるソウブレイズは空いている左手で"サイコカッター"を発動させると、両腕を胸の前でクロスさせる

 

 

「ブレイッ!!」

 

 

次の瞬間、ソウブレイズがクロスさせた両腕を思い切り斬り払うと、"むねんのつるぎ"の炎と"サイコカッター"の刃が融合し、巨大な"炎のサイコカッター"となって撃ち放たれる

 

そして、丁度両者の中間地点で"炎のサイコカッター"と"ストーンエッジ"は衝突…互角に鬩ぎ合い、程なくして爆発した

 

 

「「「〜〜〜〜〜っ…!!」」」

 

「す、凄い威力…っ!」

 

「"すなのちから"でパワーアップしている"ストーンエッジ"と互角だなんて…っ!」

 

(たしかに凄いが、互角程度なら母さんとガブリアスにとっちゃなんてことはねぇ…!今度は向こうが攻撃を繰り出す前に仕掛けりゃ…!)

 

 

爆発の余波に耐えながら、パワーアップした"むねんのつるぎ"と"サイコカッター"の合体技に凛月達は驚愕するも、葛葉はそれを脅威にはなり得ないと踏んだ

 

 

「凄まじい威力ね…!ガブリアス!もう一度"ストーン…"っ!?」

 

 

そして、葛葉の考えと同じく、ドーラはソウブレイズに攻撃の隙を与えさせまいと先んじて仕掛けようとメガガブリアスに再び"ストーンエッジ"を指示しようとしたが、その時だった

 

 

「ブレイッ!!」

 

「ガブァ…ッ!?」

 

「なっ…!?」

 

 

爆煙の中から凄まじい勢いでソウブレイズが飛び出してき、メガガブリアスの懐へと肉薄したのだ

 

 

「ソウブレイズ!"むねんのつるぎ"!」

 

「…っ!ガブリアス…っ!"はがねのつばさ"…っ!」

 

 

そして、ソウブレイズは"むねんのつるぎ"を、メガガブリアスは"はがねのつばさ"を両腕に繰り出し、真っ向からの斬り合いに臨み出す

 

 

「ブレイッ!ブレイブレイ!ブレイィッ!!」

 

「ガァ…ッ!ガァブ…ッ!ガァァァ…ッ!?」

 

 

激しい斬り合いを優勢に進めるのはソウブレイズ…メガガブリアス以上の速さによる連続攻撃によって相手を防御に追い込ませていた

 

 

「は、速い…っ!?」

 

「技の威力だけじゃなく、ソウブレイズ自身の能力まで底上げされてるのか…っ!?」

 

「デメリットもあるけど、思ってた以上に凄いパワーアップだったんだね…!」

 

「これならいける…!いけるやよ…!」

 

 

パワーだけでなく、スピードも向上したことでメガガブリアスを圧倒する姿を見せるソウブレイズに、リゼの勝利はもう目前だと笹木達の期待が大きく高まる

 

 

(おいおい…!このままやられちまうなんてことはねぇだろうなぁ…!?そんなの許さねぇぞ…!)

 

 

その傍らで苛立ちと不安が混濁する表情を浮かべる葛葉…その彼が両眼で睨む先にいるドーラは額から汗を伝わせながらも慌てることなく思考を巡らせていた

 

 

(まさか、スピードまで上がるなんて想定外だったわ…!このまま打ち合ってもガブリアスの体力が一方的に削られるだけ…!だけど、ガブリアスならまだ耐えられる…!反撃するなら、体力のある今の内…!)

 

 

想定を超えるパワーアップしたソウブレイズに驚嘆しながらも冷静に状況を分析したドーラはメガガブリアスを信じ、捨て身による逆転の一手を投じる

 

 

「ガブリアスっ!勝負に出るわよっ!"ストーンエッジ"っ!!」

 

「…ッ!ガァァァァァァァブッ!!!」

 

 

その指示を受けて"はがねのつばさ"を解除したメガガブリアスはソウブレイズの猛攻を無防備に受けながらも、天を裂かんばかりの咆哮を轟かせると共に両腕を振り上げ、そして地面へと叩き付けた

 

 

「ブレェ…ッ!!?」

 

 

直後、ソウブレイズの真下から瞬く間に複数の鋭い大岩が連なって突出した"ストーンエッジ"がその懐へ直撃する

 

 

「「「「「ああ…っ!!?」」」」」

 

「防御を捨てて、ダメージ覚悟の反撃…っ!」

 

「ハハッ…!今度こそ勝負ありだ…!あの攻撃をまともに食らって…っ!?」

 

 

"耐えられるわけがない"…メガガブリアス渾身かつ効果抜群の"ストーンエッジ"が諸に直撃したのだ

 

その瞬間に誰もがソウブレイズの戦闘不能を想像し、葛葉はそうなると思っていた

 

だが、葛葉は発しようとしたその言葉を詰まらせた

 

 

「ブ…レイィ…ッ!!」

 

「…っ!?」

 

「ガブァ…ッ!?」

 

 

戦闘不能必至と思われたソウブレイズの眼がまだ燃え尽きてはいなかったから

 

 

「「「「「ソウブレイズ…っ!!」」」」」

 

「バ、バカな…っ!?なんで…っ!?」

 

 

フレン達が歓喜し、葛葉から驚愕の声が上がるなか、リゼは勝負を決める一撃をあらん限りの声で叫ぶ

 

 

「決めるよっ!ソウブレイズっ!!"ドラゴンクロー"っ!!"むねんのつるぎ"ぃっ!!!」

 

「ブレイッ!!」

 

 

気迫を込めた呼応と共にソウブレイズは右手に"むねんのつるぎ"、左手に"ドラゴンクロー"を発動させるとそれらを振り上げて頭上で重ね合わせ、燃え盛る紫炎と荒ぶるエメラルドのオーラが混じり合った…名付けて"紫炎のドラゴンクロー"へ昇華させる

 

 

「ブレェェェェェイッ!!!」

 

「…っ!ガブリアス…っ!最後にもう一度だけ意地を見せてちょうだい…っ!"ドラゴンダイブ"っ!!」

 

「ガァァァァァブッ!!!」

 

 

ソウブレイズが咆哮と共に"紫炎のドラゴンクロー"を振り下ろそうとした瞬間、何の抵抗もせず受け入れはしないとドーラは指示を飛ばし、気持ちを同じくするメガガブリアスは張り上げた咆哮で限界寸前の体に活を入れ、繰り出した"ドラゴンダイブ"で迎え撃ち、"ドンッッッ!!!!!"と重い衝突音と共に衝撃がジム内を駆け抜ける

 

 

「「…っ!!」」

 

 

互いに一歩も譲るまいと残る力全てを出して鬩ぎ合うソウブレイズとメガガブリアスを見守るリゼとドーラは"頑張れ…っ!!"と強く想うなか、その想いに応えようとメガガブリアスは咆哮を上げ限界を超えて力を引き出す

 

 

「ガアァァァァァァァ…ッ!!!」

 

「ブゥゥゥゥゥ…ッ!!レェェェェェェェイッ!!!!!」

 

 

だが、それはソウブレイズも同じだった

 

メガガブリアス以上の咆哮と共に"紫炎のドラゴンクロー"の威力を更に上げたソウブレイズは遂にその均衡を破り、メガガブリアスを一刀した

 

 

「ガァァァァァァァ…ッ!!?」

 

 

直後、直撃した"紫炎のドラゴンクロー"によって引き起こされた大爆発がメガガブリアスを呑み込んだ

 

 

「ソウブレイズの攻撃が決まった…っ!」

 

「この威力、流石のガブリアスも…!」

 

「…っ!」

 

「レィ…!レィ…!…ッ!」

 

 

未だ爆煙に包まれるメガガブリアスがどうなったのか、皆が固唾を呑んで見守るなか、頭の炎の勢いが急激に弱まり、背中から噴き出ていたオーラも途絶えたソウブレイズは息も絶え絶えな状態で地に片膝を突かせた

 

 

「ガァブ…!」

 

「…ッ!」

 

「「「「「…っ!!?」」」」」

 

 

その時、振り絞られた低い声が静まり返った空間に響くや否や、晴れた爆煙の中から仁王立つメガガブリアスが姿を現す

 

 

「ガ、ガブリアス…っ!?」

 

「あの攻撃を受けて、まだ立ってるなんて…!」

 

(当然だ…!母さんとガブリアスがこの程度で負けるわけがねぇ…!負けていいはずがねぇんだ…!)

 

ソウブレイズの全身全霊の一撃を受けてまだ倒れないメガガブリアスにフレン達は驚愕は当然、戦慄すら覚え、冷や汗を流していた葛葉が握り締める両手を力ませるなか、ソウブレイズとメガガブリアスは鋭い目付きで相手を見据え合った

 

 

「…。ガ…ブァ…」

 

 

心臓の音が嫌に大きく聞こえてしまうくらい静かな睨み合いが数秒ほど経ったその時、その強さを認め、相手へ敬意を表するようにニッと笑みを浮かべたメガガブリアスは直後にガクリと膝から崩れ落ち、解けてゆくメガシンカと共にゆっくりと前のめりに地面へと倒れ込んだ

 

 

「「「「「…っ!!!」」」」」

 

「なっ…!?」

 

 

その光景にフレン達は目を輝かせ、イブラヒムと笹木、叶は静かに笑みを浮かべ、葛葉がその表情を信じ難いと言わんばかりの驚愕に染めるなか、勝負は決したと見定めた社は深い頷きを置いてから声を張り上げた

 

 

「ガブリアス、戦闘不能!ソウブレイズの勝ち!よって勝者、リゼ・ヘルエスタっ!」

 

 

社からリゼの勝利が宣言された瞬間、"やった〜〜〜〜〜っ!!!"とフレン達の大歓声が室内に響き渡った

 

 

「ブ…レィ…」

 

 

その自分達を祝福する声で勝利を実感し、安堵したソウブレイズはそれまで張り詰めていた力が一気に抜け、ぐらりと揺れた体を後ろへ倒れ込ませる

 

 

「…!」

 

 

だが、ソウブレイズの体が地面に転がることはなかった

 

ソウブレイズの下へ駆け付けたリゼが後ろからその身を受け止めたからだ

 

 

「ありがとう、ソウブレイズ。私達が勝てたのはアナタの強さと助けがあったからだよ。本当によく頑張ってくれたわ」

 

「…ッ!」

 

 

座り込んだリゼの膝に頭を乗せてもらい、ゆっくりと地面に寝かされたソウブレイズは掛けられた労いの言葉に眼を潤ませる

 

 

「エンペェ〜!」「ルオォ〜!」「グレ〜イ!」

「サァ〜イ!」「フリィ〜!」

 

「ブ、ブレイ…!?」

 

「わわっ…!みんな…!」

 

 

その時、リゼのボールからエンペルト達全員が飛び出し、リゼとソウブレイズを押し潰しかねない勢いで抱き着いてきた

 

 

「もう〜…!みんな、重いってば〜…!」

 

「……」

 

 

最後のジム制覇に喜びと興奮が抑えられないエンペルト達にリゼも表情を綻ばせるなか、普通なら騒がしく聞こえるであろうエンペルト達の重なり合った声…そのそれぞれをソウブレイズははっきりと聞き取った

 

"ありがとう!ソウブレイズ!"

"俺達の想いを繋いで、よく戦ってくれた!"

"お前の熱い想い、しっかりと俺達にも伝わったぞ!"

"君は本当に凄いポケモンだよ!"

"ソウブレイズもみんなもお疲れ様!おめでとう!"

 

 

エンペルト達からも飛び交わされる労いの言葉にしばらく呆然となるソウブレイズはその最中にふと瞳を閉じた

 

真っ暗となった視界に思い浮かぶのは、かつての主人である亡き少女の姿

 

"今の自分を見たら、彼女は何と言うだろう?"

 

この先も永遠に知ることはないそんな疑問をソウブレイズは軽く笑みを浮かべ振り払い、瞳を開こうとした…その時だった

 

 

"ありがとう、ソウブレイズ。本当によく頑張ったね"

 

「…っ!」

 

 

きっと幻聴なのだろう、何故なら当の本人はもうこの世にいないのだから

 

それでも、ソウブレイズはたしかにその言葉を告げる亡き少女の声が聞こえた気がしたのだ

 

憎悪を糧に手に入れた力を、もう戻らないもののために振るってきた力を、大切な誰かのために振るい、そして報われたことを祝福し、最後の感謝を伝えるために奇跡を届けてくれたのだろうと

 

 

「…ブレイ!」

 

 

ソウブレイズの瞳から涙が流れるが、その表情はこの上ない幸福に満たされていた

 





リゼ・ヘルエスタ
手持ち:エンペルト、グレイシア、バタフリー
   サイドン、ルカリオ、ソウブレイズ

ドーラ
手持ち:リザードン、ギャラドス、バクガメス
   ヌメルゴン、オンバーン、ガブリアス
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