【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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本編とは直接の関係はない小話です。


小話・義援金

 

皇帝執務室にてジルクニフ、四騎士、フールーダ、リおんがいつものやり取りをしていると、ロウネが『それ』を持って来た。

 

 

「陛下、聖王国の聖王カルカ・ベサーレスからの書状が(とど)いております」

 

 

「……見せてみろ」

 

 

ジルクニフは内容を確かめるなり『うげぇ』と()わんばかりな、ゲテモノでも口に入れたような表情をしてロウネに()き返した。

 

 

却下(きゃっか)だ! ……適当な返事をしておけば良かろう」

 

 

その様子に、リおんは書状の内容が気になった。

 

 

「陛下、何が書いてあったんですか?」

 

 

ジルクニフは一瞬だけ(まよ)った。

 

何かと慈悲(じひ)深さを見せるリおんでは、カルカからの『提案』に乗せられやしないか、と。

 

だが最近では、帝国への帰属(きぞく)意識を持っている事も明らかだ、とも思っており、どう反応するか見てみるのも悪くはないかと考え、話す事にした。

 

 

「……最近、竜王国で戦闘が激化しているのでな。『共同で義援金を出しませんか?』などと言ってきた」

 

 

リおんの様子を(うかが)っていたジルクニフだが、意外と(うす)い反応だった。

 

 

「陛下、聖王国と竜王国って何か関係があるのですか? 聖王国が裕福(ゆうふく)とは聞いていませんが」

 

 

「いや、裕福ではないし亜人種との戦争を抱えている以外には何も関係はない。むしろ聖王国からすれば竜王国は『竜王と異教徒の国』だ」

 

さらにジルクニフは、『裏の意図(いと)』への疑念(ぎねん)も語る。

 

大方(おおかた)底意地(そこいじ)の悪い宰相(さいしょう)による入れ知恵だろう。最近では帝国から聖王国への影響力も増しているからな、『共同』などと言って我が国にカネを出させて経済力を()ごうとしているのやも……もっとも、ややお花畑(・・・)なカルカは本心なのかも知れんがな」

 

 

それを聞いてリおんは『やれやれ』といった様子で、

 

「なら却下ですね。だいたい、他国の話ですし、自国の経済が優先でしょう」

 

 

一見、辛辣(しんらつ)にも聞こえるが、リおんとしては聖王国のためでもある話だ。『自国が大変なら他国の心配などするな』と。

 

 

が、その返事を聞いて『わかっているじゃないか』と機嫌(きげん)良くしたジルクニフは、さらに別の論点(ろんてん)を聞かせた。

 

 

「それに、竜王国には聖堂騎士団がいる。今はビーストマンを相手しているが、平和になったら帝国を向かないとも限らん。隣国(りんごく)の危険組織を支援など御免(ごめん)(こうむ)る」

 

 

国同士の関係など利害(りがい)が全てだ。

 

同盟国だろうと敵国だろうと、利害が一致(いっち)するか衝突(しょうとつ)するかの差でしかなく、他国とは基本『外交上の仮想敵国』でしかない。

 

そして戦争の発生とは『構造』の問題である。

 

地政学(ちせいがく)上の要件(ようけん)を政治でカバーできなければ、戦争の理由など後から生まれる(・・・・・・・)ものだ。

 

 

「聖堂騎士団って、そんなに危険なんですか?義侠心(ぎきょうしん)信仰心(しんこうしん)(あふ)れるイメージでしたが」

 

 

「……ナザリック教徒のお前に言うのも何だが、アレは戦闘狂の狂信者集団としか思えん。騎士団を発足(ほっそく)させたクレマンティーヌは元々は国外から来たという。わざわざ戦争中の竜王国に、だ」

 

 

そう、竜王国民は英雄視している聖堂騎士団だが、他国から見れば辻褄(つじつま)が合わない部分は多い。

 

 

聖遺物(せいいぶつ)を守っていると言うが、どうだか……守るなら何故あんな場所に? その存在自体を誰も確認できない聖遺物など、都市伝説か、戦闘を正当化するためのプロパガンダではないかと見ている」

 

 

騎士団が守る聖遺物。

 

聖堂内部はフールーダの魔法も(とど)かず、法国ですら、聖遺物を守護している事実それ自体は確認したものの、肝心(かんじん)の『聖遺物が何か』までは把握(はあく)できずにいた。

 

 

ジルクニフは続ける。

 

「正直なところ、ビーストマンには聖堂騎士団を永久に釘付(くぎづ)けていてもらいたいほどだ。連中、規模(きぼ)は連隊程度(ていど)らしいが、まともにやり合えばズルズル長期戦に引きずり込まれ、我が騎士団8個軍のうち2個軍ほどは()かされる事になるだろう」

 

 

「連隊規模で2個軍溶かすとか無茶苦茶じゃないですか!?」

 

 

流石(さすが)のリおんもツッコミ気味だ。

 

 

「だが正しい推測(すいそく)だ。全滅……軍事用語でいうそれではなく、文字通りの全滅さえ(いと)わぬ連中の戦い方を考えれば、な」

 

 

それだけではない。

 

ビーストマンの死体を解体してトラップに利用したり、キャンプ地まで入り込み、ビーストマンの子でも()ようものなら(さら)ってきて人質や見せしめに……

 

戦いに汚ぇもクソもあるか』が、彼女の戦闘教義(ドクトリン)であった。

 

 

話を聞いて若干(じゃっかん)引き気味なリおんは、ダメ元で(たず)ねる。

 

「……陛下、聖堂騎士団って、味方にできたりとかは」

 

 

「戦うために戦っていそうな連中だぞ? 新しい戦争に引っ張り出されるだけだろう。……ふむ、『魔除け』として、いっそ帝国をナザリック教国にするか。リオンも人気だしな」

 

 

サラッと重大責任を負わされそうで、変な汗をかくリおん。

 

自分はアイドルであって教祖じゃない、と思っているだろうが、実のところ教典に登場する歌の神と類似性(るいじせい)を一部のファンに見出され、ユルい感じの信仰対象になりつつある。

 

まぁ、ジルクニフは半分くらい(・・・・・)冗談(じょうだん)のつもりだろうが。

 

 

何となく話を変えたくなったリおんは、

 

、法国! 法国にお金出させましょう!」

 

 

「ん?」

 

 

「ガチガチの宗教国家から『王国の場合』みたいに商売でお金を取るのは(むずか)しいですが、義援金なら!」

 

 

それを聞き、ジルクニフは(ひたい)に手を当て自嘲(じちょう)気味に小さく笑った。

 

『どうやら自分は綺麗事(きれいごと)(きら)うあまりに正攻法(せいこうほう)ばかり考えていたようだ』と。

 

なるほど手段としては悪くない、坊主にカネを出させたければ(ほどこ)しを(うった)えれば良い、目的のためなら嫌いな『お花畑』のフリさえしよう、と考え直すジルクニフ。

 

とはいえ、確か法国は竜王国からの『布施(ふせ)』によって軍事支援をしていたはず。

 

ならばカネでなくモノを出すだろう。

それも多分、食糧や医薬品、衣類などの『消え物』だけ。

 

法国から見て、脱走兵が立ち上げた異教徒の騎士団など間違いなく『敵』だろう。

ビーストマンとの共倒(ともだお)れを望んでいるに違いない。

 

そんな相手に武具は出すまい。

 

だが、それならそれでも良い。

一時的にでも法国の生産能力に負荷(ふか)をかけられたなら意味はある。

 

どのみち今は王国が優先。

 

いつか法国と対峙(たいじ)した場合に備え『この方法で相手がどう来るか』見ておくのは悪くない。

 

 

と、そのように思っているとリおんが

 

「何なら僕が法国()ての手紙を出しましょうか。慈善(じぜん)活動といえばアイドルですし、帝国からだと勘繰(かんぐ)られるかも知れませんし」

 

 

しかしジルクニフは、その場合の展開やリおんが考えそうな事を予想して、

 

「却下だ」

 

 

「え?」

 

 

「私は、お前を『()(えさ)』になど使う気はない」

 

 

「陛下……」

 

その言葉の裏にある思いを読み取り、リおんは「……えへへ」と破顔(はがん)し、それをこそばゆく感じたジルクニフは目を()らす。

 

 

「……ロウネ、先程(さきほど)の聖王国への返答は法国へのアプローチを()まえた内容にしろ。『お仲間』が増えればカルカが(よろこ)ぶだろう」

 

つまり、法国がNOと言い(づら)くなる『圧』を、聖王国にかけさせようと。

 

ジルクニフは人が悪そうに笑った。





何故こんな小話を書いたかは…気にしないで下さい()

その当時の世相(2022/03/17)とか気分とかのアレです←アレって何だ
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