【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
新たな冒険、新たな出会い。
しかし、その先には不穏な気配も……
《王国 王都近郊の街道》
蒼の薔薇、ラキュースとティナは馬車に
「鬼リーダー、本当に依頼受けて良かったの?」
「仕方ないじゃない。色々はっきりしない以上、理由もなく
貴族だからといって無駄な出費はしない、というラキュースの考えもあり
何故、帝国直行でないかと言えば、依頼主からの
「入国規制……どういう理由なのかしらね」
「たぶん犯罪組織対策だと思う。帝国内で八本指の幹部が逮捕されたという話を聞いた」
それもなくはない、が、実際には
例の「
邪教団関係者も下位の信者は懲役だが、表社会である程度以上の地位にいる者は自宅に帰る事を許された。
社会的な混乱を
ただし、帰ったところで自分以外は誰も
今後は『帝国にとって
さらに余談だが、アルシェの両親も違法な人身売買に
アルシェにもリおんから知らされたが
「……そう……」
と返しただけであった。
それでも、いずれは気持ちの整理がつくのだろう。
さて、話を
「ウソ!? 昨日は言わなかったじゃない……」
「情報の確度が
チーム分けの理由は、やはり八本指だ。
最近は (連中が帝国での
「捕まったのは誰?」
「情報が本当なら、奴隷部門のコッコドールと警備部門のサキュロント」
「二人も!?……そう」
だが王国の貴族として、その成果を王国自身の手によって
話題を変えるべくラキュースが
「帝国は? 最近は目立った情報が入って来ないから、何か知ってたら教えてほしいんだけど」
「情報
「……まさか何か
「この前のカッツェ平野以降、軍に目立った動きはない。
「……不思議ね。いつもの鮮血帝なら帝国の力を
「目立たないようにしてる風にも見える。けど経済が好調というアピールはしてる」
「……わからないわね」
霧の中を歩くような気分になる二人を乗せ、それでも馬車は進んで行く。
《トブの大森林》
フォーサイトは
彼らの目的はトブの大森林の調査……という名目の『試験』である。
「ここらで
ちなみに今『森の賢王』は王国側を
腰を落ち着けたところでイミーナが口を開く。
「……けど、これならアンタ達まで一緒に来る意味なかったんじゃない?」
『念のため』などと言っていたが、本音は『面白そうだったから』でしかない。
「いやいや! これから大仕事を
と、ジルクニフを説得した時の
ただしジルクニフにはバレていた。面白そうだから見
そんなリおんの耳に、何か水音。
「……なんだろ、魚が
「どうかされましたか? リオン様」
レンジャーのリウリンドが気にして訊ねる。
「なんか水音が聞こえた気がしたんだ。池か何かあるのかな」
するとイミーナが、
「あー、やっぱり? 気のせいじゃなかったのね。てか耳いいわね」
やはり水場があるらしい。
「調べてみよう!」とリおん。
アルシェが人形を使えば偵察もできるのだが、魔力を温存させたいというヘッケランの判断でイミーナが。
そう、アルシェは『ドールマスター』の
だが取得してみると、
言わば瞬間火力タイプの
クラス取得に
かつての「
リおんが、もう二度目になろうかという提案をした。
「アルシェ、やっぱり
「ダメ。人形で精一杯」
と、この調子である。
だが、アルシェの言い分もわかる。
ドールマスターにとって人形は杖であり盾であり剣だ。
良い人形を、と考えればモンスター素材や希少金属 (と言っても、この世界の基準なのでミスリルやオリハルコン程度だが) を使わざるを得ず、金額的には戦士職の武器以上になってしまう。
しかも全てハンドメイド。
この世界には、妹達に買い
レア職は肩身が
魔力の燃費についても、クラスレベルが上がって『生き人形作成』のスキルを得れば改善するのだが、道のりは遠い。
リおんが『人形
通常の人形は魔力を消費しコマンドで動くアーティファクト扱いだが、
100レベルのプレイヤーなら、実に90レベル相当のNPC作成スキルという事になる。
とはいえ、良い話ばかりでないのがユグドラシル。
そもそも
運営の「やってみせろよ」というゲームバランスを本当にやってみせた『人形遣いの魔女』が例外的に強かっただけである。
しかし、それはユグドラシルでの話。
この世界でドールマスターが如何なる評価を受ける事になるかは、アルシェの成長次第といったところだ。
もっとも、節制
魔法省の準職員になっていなければ、もし他の展開でドールマスターになっても大成する可能性はなかったかも知れない。
そんなアルシェにリおんは、
(これはやっぱり僕が何か
何故、女性型装備が? といえば茶釜や一部ファン達のせいである。
本人の趣味ではない。
あと、そういった
そんなペロロンを見て変な笑い声を小さく
……近いうち、帝国貴族の風習で『男が女に衣類を贈る意味』を知らないリおんがアルシェを赤面させる事になるわけだが……まぁ、それは別にいいか。
ちなみに
エルフ国では教育部隊のリーダーだったサエルアンナは、教え子であり部下だった二人には、王に子を産まされ奴隷としても痛め付けられた自分とは違い、せっかく幸運にも『女としての何もかも』を
しかし当の二人は
たまに鼻息が
各人の
そこにあったのは池のような場所。
だがイミーナは気付く。
「これ、自然にできたものじゃないわ」
そう、誰かが
「こんな場所に、誰が」
アルシェも疑問を
リおんが、ある可能性を口にした、
「もしかして、亜人か何かの……!?」
その時、
そこにいたのは
一瞬にして
いつ、何が起きても、どうとでも動けるように、誰も声を発さず
「……お前達、何者だ? 何をしに来た」
即、戦闘とはならず内心で
だが、まだ油断は禁物だ。
事前ミーティングで『問答無用なモンスター以外とは戦闘を
平和主義というわけではない。
目的は調査なのだから
リザードマンに対し、弁の立つロバーデイクが説明する。
「我々はバハルス帝国から森の調査に来た冒険者チームです」
冒険者と言った方が伝わりやすいだろうという考えだ。
異種族ではワーカーとの違いなど理解しづらい。
「……調査? 何のためだ」
「我々は森の内情に無知です。誰が友好的か敵対的か、以前に、誰がいるのかさえ知らない。知っていれば争いを避ける事もできます」
あえて『戦いに備える』という部分は語らない。
嘘はついていないし、余計な
「……ふむ、戦いに来たのではないのだな。ならば警告しておこう。ここから先には進まない方が良い。この先には我々の集落があるのでな。我々は
『この先』と手で示しながらリザードマンが説明する。
戦いは回避された。
と、ここで
「あの、」
リおんが声をかける。
フォーサイトの対応能力は確認した。
『試験』の後は帝国にとっての『実利』だ。
「はじめまして、リおん・がぶりールといいます。彼らの
リザードマンは (人間には彼らの感情表現が伝わりにくいが) 意外そうにした。
ワーウルフが人間の国の代理人である事、他種族に対し (人間の作法は知らないが) 礼をもって
ワーウルフという事で
「
「族長の弟さんですか! それはそれは、お会いできて光栄です」
リおんの様子に
相手の
肩をすくめるような雰囲気(人間にはそのように見える)で
「
「旅人、というのは?」
「あぁ、そちらにはない風習だったな。我々は基本、集落で一生を過ごす。
ザリュースは焼印を見せながら説明した。
「なるほど、外の世界に行って帰ってきた勇者みたいな立場という事でしょうか」
「はは、勇者とまで言われると
ザリュースは『池』を見ながら言う。
その様子から、リおんは『池』をザリュースの考えによるものと
「この『
気を使って『堀』と表現したが、悪く言えば
「単に確保するためではない。魚を増やすためだ」
「
「何?」
その言葉にザリュースはピクリと反応した。
「すみません! 悪く言うつもりは」
「いや、そうではない。……
食いつきを見せるザリュースに、リおんは
「いえ、詳しいと言えるほどかは……多少の事なら知っていますが」
「もし良ければ教えてくれないか」
「教えても良いのですが、我々も調査を進めないと……」
ブラフだ。調査に期限はない。
リザードマンについて情報収集するため
「むむむ……ならば、この周辺の情報と交換ならどうだ。時間の短縮にはなるだろう」
「おお、それはありがたい。いいでしょう、お教えします」
ひとまずこれで距離を
欲している情報を提供してやれば、さらに態度が
デメリットもない。
この辺のズル
それでもカルマ値がカルマ値なので、
どこかの骸骨魔王ほどのギャップは心配いらないようだ。
リおんから
『水の
『水草や貝、
『魚ごとに違う生育環境』
『肉食、草食の違いと陸上で得られる
などの知識を伝えられ、ザリュースは
「あと日光も重要なんですけど、当て過ぎると水温管理が大変になったり、上から鳥に狙われやすくなるので、部分的に日が当たる場所をつくってやるなどバランスが大事ですね」
「リオン殿! これほど多くの知恵を与えて
まだ夕刻には遠いが、確かに、今から引き返すとしても森を抜けきるのは難しい。
『試験』として危険な森での野営も悪くはないが、せっかくなので甘える事にした一行。
リザードマンの集落へと移動した。
「話は弟から聞いている。私が族長を
「こちらこそ、周辺情報とキャンプ地には助かりました。ありがとうございます」
リおんとエルフ達が代表して部族長・シャースーリュー・シャシャに
フォーサイトはキャンプ地に待機している。
ザリュースが言う。
「養殖が成功したら戦争を回避できるかも知れない。本当に感謝している。仕方ない事としても、やはりリザードマン同士で殺し合うのは気分が悪いからな」
「戦争ですか?」
シャースーリューが
「我らリザードマンは湖の南側、大湿地でしか生活が成り立たない。だから湖で
ザリュースが続く。
「実際、以前にも戦争をするしかなくなり、かつては7部族あったのが現在は5部族に
「そうなんですか。……また不漁の
リおんが訊ねると、シャースーリューが答えた。
「いや、今年は問題ない。……ただ、気がかりがあってな」
「というと?」
「うむ、部族のシャーマンが言うには天候に問題はないはずなのだが、
ザリュースも別の視点を
「レンジャーも動物たちの動きが気になると言っていたな。確か、やたら北から流れて来る、だったか」
「北……何かあるんですか?」
リおんが聞くとザリュースが答えた。
「我々は基本、集落から遠く離れた場所には
リアルでの経験から、まるで
『
「わかりました。今後の調査で参考にさせてもらいましょう。ところで、湖ではどんな魚が
リおんは話を変える事にした。
シャースーリューが答える。
「我々が主食にしているイーラの他は、
細かい特徴なども聞き出してみると、どうやら『マス』と『ナマズ』のようだ。
「たぶん知ってる魚と同じだと思うので、泥臭さはキレイな
「そうなのか!?」
「むぅ……試して、食えるようなら食糧の幅が広がるなザリュース」
喜ぶ二人に追加で質問するリおん。
「ちなみに、食べ方は生だけですか? 焼いたり
シャースーリューは首を
「火を使うのは
その返事で『道理で戦争が必要になるわけだ』と理解した。
保存食がない。
これだと養殖が成功しただけでは戦争回避には足りないかも知れない。
リおんは、リザードマンの集落との関係を維持しておけば冒険者の
なので、
「祭祀というのは丸一日くらいするものですか? あと、お
シャースーリューが答えた。
「そうだな、そのくらい
「お供えは、儀式の後どうしてますか?」
「薬草はシャーマンが使い、魚は皆に振る舞っている」
「そうですか。僕の故郷の風習では祭祀の時、魚は内臓を抜いて
そういう事にしておいた。
つまりは
「むぅ……そうなのか。……もしや祖霊の加護か……シャーマンに伝えてみよう」
リザードマン集落における『魚の燻製』始まりの瞬間である。
その後、帝国から冒険者が来る時に塩や冬用の衣服 (リザードマン向けに作れるよう
帝国からの冒険者は活動しやすくなるだろう。
行く行くは
翌日の早朝、一行はリザードマンの集落を後にし、予定通り王国側へと森を抜ける。
開拓村を経由してエ・ランテルへ。
結局『森の賢王』には出会わず
「カルネ村のエンリさんは本当に
エ・ランテルに着いてからも、ロバーデイクは感心しきりであった。
『周りに何かキラキラしたものが見えるほど』な様子のロバーデイクに
「この後は一泊してすぐ帝国に帰る予定だったけど、それで良いかリオン」
「それなんですけど、せっかくだし少し歌ってから帰ろうかと。別行動ですかね」
ヘッケランは、また苦笑い。
ただ、リおんは単に歌いたいだけという事ではない。
いつか帝国が獲得する予定のエ・ランテルに、帝国文化への
……歌いたいというのも事実だろうが。
「それなら宣伝だけでも手伝ってから帰るか?」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
そんな会話をしつつ宿へ向かっていると、
羊皮紙を買わないか、と持ちかけてくる。
見せてきた羊皮紙には『近々、蒼の薔薇2名がエ・ランテルに到着予定』である事、『迎えとして
帝国からの間者だ。
リおんは「いい羊皮紙ですね」と代金を払い受け取った。
内容としては、つまり『蒼の薔薇と同行するように』という意味だろう、とリおんは理解した。
『細かい事を書かなくともリオンなら読み取るだろう』とジルクニフが考えているのだろう、と考える。
そのくらいには信頼されていると思っている。
尻尾が振れる。
モラノールが
細かい
であれば、と頭を切り替えるリおん。
そう、考えるべき事は他にも多くあ
(まずは初の国外公演inエ・ランテルだ!!)
違 う 、 そ う じ ゃ な い 。
少しは同行させる目的やら蒼の薔薇と何を話すかくらい考