【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

14 / 47

やはり約束された運命からは逃れられぬのか。

ついに悲劇は起こる。


リおん誘拐未遂事件

 

「今回は手伝って下さり、ありがとうございました」

 

 

「いえいえ、(れっき)とした依頼ですから」

 

 

リおんが礼を()べている相手はペテル・モーク。

 

王国の冒険者チーム『漆黒の剣』のリーダーだ。

 

 

リおんとエルフ達、そして漆黒の剣は黄金の輝き亭にてエ・ランテル公演後の打ち上げをしていた。

 

 

公演は大成功。

 

戦争などの(から)みで死に別れの場面に(えん)のある土地柄(とちがら)(ゆえ)か、歌った『Lemon』が好評で、リおん本人は知る(よし)もない話だが『墓前(ぼぜん)埋葬(まいそう)の際、半分に切り分けたリモーネの実を(そな)える』という風習がエ・ランテルに定着する事となる。

 

 

フォーサイトも打ち上げに最初は参加していたが、明日の早朝に帝国へ帰還する予定であるので、念のため少し前に就寝した。

 

 

漆黒の剣を(やと)ったのはビラを書いてもらうためだった。

 

羊皮紙は行商人(間者)から購入したものがあったので問題なかったが、手書きである以上、人手がほしかったのだ。

 

 

それはそうと、リおんは気になった。

 

「けど、ビラ係なんて依頼、受けなくても良かったのでは? 金級(ゴールド)ですよね皆さん」

 

 

そう、彼らの首にかかっているプレートは金。

 

ビラ仕事など通常なら銅級(カッパー)がやるものだ。

 

 

「いや、まぁ、何と言いますか、(ひま)だったんですよ」

 

何やら歯切(はぎ)れ悪いペテル。

 

するとレンジャーのルクルット・ボルブが、

 

「そうそう、()されちゃってるからな俺ら」

 

 

意外な発言にリおんは

へ ?

と間の()けた声を出してしまう。

 

 

「おい、ルクルット」

「依頼主に余計(よけい)な事を言う必要ないのである」

 

ペテルと、ドルイドのダイン・ウッドワンダーが(たしな)めるが、ルクルットは、

 

「良いじゃねーか別に愚痴(ぐち)くらい……」

 

 

面白くなさそうな様子に、気になったリおんは(たず)ねた。

 

「何があったんですか?」

 

 

ペテルは周りを気にしつつ、

 

「あまり大きな声では言えないんですが、先回りで依頼を取られてしまうんです」

 

 

ダインが声を(ひそ)めて補足(ほそく)した。

 

「あるチームのリーダーが手を回すのである」

 

 

聞けば、ミスリル級チーム『クラルグラ』のリーダー、イグヴァルジが、快調に階級を上げてきた漆黒の剣を(ねた)んで邪魔しているのだという。

 

 

「なんですかそれ! 後輩イジメじゃないですか、みっともない!」

 

 

そうリおんが言うと、ペテルは

 

「まぁ、そうなんですけど、事を荒立(あらだ)てるわけにも……一応、組合長には相談してあるので」

 

今は実態把握(じったいはあく)している最中(さいちゅう)なのだという。

 

 

「それに、それだけが理由というわけではありませんよ。ニニャが『困っていたら助けるのが当たり前』と言ったので」

 

 

「……え? もしかして」

 

 

リおんが(さっ)すると、魔法詠唱者(マジックキャスター)のニニャが()(くさ)そうにマントをずらす。

 

そこにあったのはナザリック教の聖印だった。

 

「助け合いは大事ですから」

 

 

実際、帝国から来たワーウルフの依頼という事で、他の冒険者達は二の足を()んでいた。

 

帝国のワーカーチームであるフォーサイトが一緒にいたのもマズかったのだろう。

 

 

「ニニャさんもナザリック教徒だったんですね」

 

 

「先生の受け売りですけどね。『ナザリック教は魔法詠唱者(マジックキャスター)として得るものが多いぞ』って」

 

 

「へぇ……」

 

 

魔法詠唱者(マジックキャスター)でないリおんは、あまりピンときていない様子。

 

 

と、ルクルットがニニャに訊ねた。

 

「そういやニニャの先生って、しばらく見かけねーけど?」

 

これに対しニニャが答える。

 

「まぁ、あちこち見て回る事自体が旅の目的な人ですから……今はどこにいるやら……」

 

ダインは泰然(たいぜん)とした様子で言った。

 

「放任主義であるな。信頼している証拠(しょうこ)である」

 

ダインの言葉に、ニニャは苦笑(にがわら)気味(ぎみ)相槌(あいづち)を打つ。

 

「だと良いんですけど」

 

リおんが興味を持って訊ねる。

 

「ニニャさんの先生っていうくらいだから、すごい方なんですか?」

 

リおんは初対面の時の事を思い出す。

 

 

 

アルシェはニニャを見るなり目を丸くし顔色を青くしたかと思えば、今度は逆に顔を紅潮(こうちょう)させ興奮(こうふん)気味に

あなたのような方は帝国に来て活躍するべき!

などと早口で(まく)し立てたのだ。

 

 

え、え ?」と戸惑うニニャを余所(よそ)に、流石(さすが)にギョっとしたリおんが(なだ)めて聞くとアルシェが

この人が金級(ゴールド)なんておかしい! だってこの人は第5位か

と言いかけた(あた)りで

わーっ! わーっ!

とニニャがアルシェの口を押さえにかかり、かなり(さわ)がしい事になったのだ。

 

 

ニニャ(いわ)

「先生から『魔法詠唱者(マジックキャスター)たる者、安易(あんい)に実力をひけらかしてはならん。情報は武器であり、魔法詠唱者(マジックキャスター)の強さとは魔力量でも習得呪文の数でもなく……』

 

ニニャは頭を指()し、

 

『……ココ(・・)だ』と言われているので、秘密にしているんです」と。

 

 

階級についても、あまり詮索(せんさく)されないよう少しずつ上げる事にしているという。

 

実力の事はチームメンバーにしか教えていないので(だま)っていてほしいとリおん達は頼まれた。

 

 

これに対しリおん達は、そもそも勝手に異能(タレント)で秘密を(あば)いた自分達の側に非があると了承(りょうしょう)して無礼を()び、その場は丸く(おさ)まったのだった。

 

 

 

リおんに師の実力を聞かれ、ニニャは自慢(じまん)げに言った。

 

「ひけらかしてはいけないと言われている手前、(くわ)しくは明かせませんが、僕なんて足元にも(およ)ばない(ほど)の実力者です!」

 

 

……第6位階で逸脱者(いつだつしゃ)と呼ばれる世界で、第5位階魔法詠唱者(マジックキャスター)がその物言いでは、ほぼバラしているようなものではないか。

 

 

「それはすごい!」とリおんが(おどろ)いてみせると、ますますニニャは得意そうにするのであった。

 

他のメンバーは苦笑いだったが。

 

 

「そんなニニャさんにビラ係なんて申し訳なく思いますけど、おかげで助かりました。記念すべき初の国外公演だったので、どうしても成功させたかったんです。帝国で()らし始めて1年くらいという節目(ふしめ)でしたし」

 

 

リおんがそう言うと、ニニャが納得(なっとく)したように言う。

 

「リオンさんは移民だったんですね。道理で異国情緒(いこくじょうちょ)ある音楽なわけだ。故郷(こきょう)はどんな場所だったんですか?」

 

 

その質問に、ジルクニフやフォーサイトに語った話をしようかと一瞬考えたが、気分の良い話でもないので誤魔化(ごまか)す事にした。

 

「……大して話すような事はないですよ。あまり良い場所ではありませんから」

 

 

困ったように薄く笑って答えるリおんに何を察したか、気遣(きづか)わしげにニニャが問う。

 

「……今は、幸せですか?」

 

 

「……はい! もちろん!」

 

 

リおんの返答に、安心した笑みを浮かべる。

 

「そうですか。良かったです!」

 

 

そんな様子を見てダインが、

 

「うむうむ、きっと神か精霊の(おぼ)()しであるな」

 

 

それを聞いたニニャは思い出したようにリおんに聞いた。

 

「そういえば、リオンさんは何の神様を信仰してるんですか? やっぱり歌の神様?」

 

 

「え……あー、そう、ですね……けど、死の神とか悪の神なんかもいいかなー、なんて……あはは」

 

『自分を』信仰してるかと問われ、照れ臭くなり日和(ひよ)った回答をするリおん。すると……

 

そうなんですか! やっぱりわかります? 悪の神のカッコ良さ! 偽善(ぎぜん)嘲笑(あざわら)独善(どくぜん)に怒りを燃やす姿勢! 何よりアレです

『見よ、(おろ)かなる者達! 今こそ地上に地獄の業火(ごうか)(もたら)さん! 来たれ混沌(こんとん)! 破滅の嵐よ、全てを灰燼(かいじん)()すが良い! 大厄災(グランドカタストロフ)!!』あの場面は本当に最こ……ぅんんっ ! 

…………ち、違いますよ。ははは。別にミーハーな理由で信仰してるわけではありませんからね。

(だん)じて。断 じ て !

 

 

リおんが呆気(あっけ)にとられているとペテル、ダイン、ルクルットが

そーですね」「であるな」

はいはい、わかってるわかってる

と軽く流し、ニニャは

もー! だから! 違うって! 言っ

 

その雰囲気(ふんいき)に、リおんは(なつ)かしさを感じた。

 

もちろん今は幸せだ。だがあの頃(アインズ・ウール・ゴウン)も楽しかった、と。

 

 

(……たぶん僕は接続事故で死んだんだろうけど、それは単独の機器不良だったのかユグドラシルのシステム全体の事故だったのか……)

 

 

六大神、八欲王、十三英雄、口だけ賢者……この世界で見聞きする情報に、ちらほらと存在するプレイヤーらしき痕跡(こんせき)

 

 

(……もし、システム全体の事故だったとしたら、引退したりログインしてなかった人たちは別として、ラストライブに来てくれてたファンとかナザリックにいたはずのモモンガさんも、こっちに?……けど、なんで時間がバラバラなんだろう……それに、ナザリック教を布教した人って誰なんだろう……)

 

 

決定的に誰かと(つな)がる情報は、無い。

 

 

(……今は考えても仕方ないか。でも、また会えたらいいな……)

 

 

 

 

 

 

《翌日》

 

 

「それじゃ、先に帰って待ってるぜ」

 

「漆黒の剣の皆さん、お世話になりました」

 

「じゃあねー」

 

「ニニャさん、昨日の話は本気で考えてほしい。何なら魔法省にも伝手(つて)が」

 

 

あははと苦笑いするニニャ(ふく)め、やや眠そうな漆黒の剣とリおん達は、共にフォーサイトを見送った。

 

 

「ではリオンさん、我々も次の仕事に(そな)えて買い出しなど準備がありますので」

 

「またいつか歌いに来いよな」

 

盛栄(せいえい)(いの)っているのである」

 

そのまま今度は漆黒の剣と別れる流れだ。

 

 

「それにしてもリオンさん、ずいぶんとアルシェさんは熱心に(すす)めてきましたけど、帝国では冒険者稼業(かぎょう)(きび)しいように聞いてます。実際はそうでもないという事でしょうか?」

 

別れ(ぎわ)、ニニャが訊ねる。

 

 

『例の件』は、まだ国家機密の(あつか)いだ。

 

どう答えるべきか迷うリおんであったが、

 

「……これは、あくまで噂なんですが、帝国で冒険者のあり方が変わるらしいという話です」

 

 

「あり方?」

 

 

「単なるモンスター退治屋ではない形……実力ある方は王国で働くよりも、やりがいを感じられるようになるでしょうね。ただ、競争率が上がるので……」

 

リおんは口元で人差し指を立てた。

 

特別に教えたのだから、秘密にした方が良い、と。

 

 

理知的なニニャは理解する。

 

「……なるほど、帝国の動向は注目しておいた方が良さそうですね。ありがとうございます。それじゃ!」

 

 

そう言って離れて行くニニャに、小走りに()けてきて話しかける人物が一人。

 

「ここにいたのね。忘れ物を届けに来たの」

 

「姉さん!」

 

 

こちらへ軽く会釈(えしゃく)をして歩いて行く姿を、リおんは『投資』への期待を抱きつつ見送った。

 

 

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

sideラキュース

 

 

「何とか、あちらの馬車が来る前に着いたわね」

 

私達がエ・ランテルに到着したのは夕刻の少し前だった。

 

 

胡散臭(うさんくさ)い話とはいえ、依頼主を待たせた上に迎えの馬車まで待たせたとあっては、流石に『蒼の薔薇』の名に傷が付く。

 

予定では馬車の到着は日没頃。出発は明日の朝。

 

確認したところ、実際まだ着いていなかった。

 

そのタイミングで宿に来られて、まずは一安心ね。

 

 

宿泊場所は黄金の輝き亭。

 

こちら方面の仕事で何度か使っている宿で、王都の常宿ほどではないにせよクオリティも高いので気に入っている。

 

 

「さ、入りましょ」

 

ティナを連れて中に入ると、食堂を()ねたホールの方からか()()れない音楽が聞こえてきた。

 

 

吟遊詩人(バード)でも来てるのだろうか。

ツイてるわね。

 

退屈(たいくつ)しないで済むし、冒険譚(ぼうけんたん)か何かでも語ってくれるなら(さら)に良し。

 

 

受付を()ませようとしたら、係員が教えてくれた。

 

「運が良いですね。実は帝国で売れっ子という吟遊詩人(バード)が宿泊しておりまして。何でも公演目的だとかで、昨日は広場が(にぎ)わいましたよ」

 

 

どうやら王国民にも好評だったらしい。

 

実力の程が(うかが)える。期待、大ね。

 

 

部屋へ荷物を置いて、ホールに向かう。

 

食事には早いけど、人気を博した噂の吟遊詩人(バード)が気になるし。

 

 

そう思って来てみれば、その正体に驚いた。

 

ワーウルフの少年!

 

まさかラナーの言っていた人物に、王国で会うとは思わなかったわ。

 

しかも、あんなに愛らしい美少年とは思わなかった。

他の女性客がうっとりしてるのも(うなず)ける。

 

 

一緒にいる、あまり王国では見かける事のないエルフの女性3人もメンバーという事かしら。

 

スレイベルと木製フルート、一人はコーラスのようね。

 

 

どうやら今から物語が始まるらしい。

やや急いで適当な席に着く。

近くの給仕には飲み物を頼んで。

 

 

語られるのは呪われた島で繰り広げられる冒険譚。

 

やった!

 

異国情緒(あふ)れる演奏と共に(つむ)がれる、個性的な仲間達との冒険、美しいエルフとの恋模様(こいもよう)、そして見え隠れする『魔女』の暗躍(あんやく)……

 

心躍(こころおど)る内容と引き込むような語り口や演奏技術に、時間を忘れてのめり込んだ。

 

 

()たして、その先に待ち受ける運命とは!……と、大変盛り上がってきたところではございますが、皆さんのお食事を邪魔するわけにもいきませんので、今日はこの辺で」

 

えーっ!?

 

……違うわよ? 今の声は私じゃないんだから。

ほら周りの人達も悲鳴あげてるし!

 

 

それにしても『お(あず)け』とは痛い。

 

確かに、気が付けばそろそろ食事時だけど……

 

 

なるほど、技量も確かだけど人気になるわけだわ。

 

他では聞いた事のない物語で、こんな手を使われたら嫌でも追っかけになる人が出てくるでしょうね……

 

見た目に似合わず阿漕(あこぎ)真似(まね)を!

でも、面白いから許す!

 

 

……そうだわ。この後の予定を聞いておこう。

 

これから私達は帝国まで行くんだから、もしかしたら続きを聴けるかも!

 

私は席を立って彼の元へ。

 

 

「素晴らしい上演でした! 時間を忘れてしまったわ」

 

まずは称賛(しょうさん)を。

本心だし、いきなり無遠慮(ぶえんりょ)に予定を聞くのも気が引ける。

 

 

私が言葉をかけると、彼は満面の笑みで謝意(しゃい)を示した。

 

「ありがとうございます!……アダマンタイトのプレート!? もしかして蒼の薔薇の方ですか? はじめまして! リおん・がぶりールと申します。お聴き頂けて光栄です!」

 

 

王国の女冒険者でアダマンタイト級、という事から当たりを付けたのかしら。

 

流石(さすが)は売れっ子吟遊詩人(バード)

情報に強いみたいね。

 

 

それに『さり気なく女性より先に名乗る』くらいだから、礼儀作法(れいぎさほう)も身に付けてるのかも。

大したものね。

 

 

「ご丁寧(ていねい)にありがとうございます。ご明察(めいさつ)の通り、私は蒼の薔薇リーダーのラキュース・アルベイン・デイル・アインドラと申します。そして……?」

 

一礼して目線を戻すと、何故か彼の姿は無く……まさか!?

 

 

バっと振り返れば、今まさに紹介しようと思っていた、後ろに付いてきたはずのティナの姿も無い!

 

ホール入口を見れば、モゾモゾと動く麻袋を抱えたティナの後ろ姿!!

 

テ ィ ナ ぁ ぁ ぁ ぁ !?

 

「「「 リオン様ぁぁぁ !? 」」」

 

 

この後、めちゃくちゃ謝った。





リ「もがー!(誘拐ぃぃ!?)」←再び

テ「大丈夫大丈夫、お姉さんとイイ事しよ?」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。