【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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帝国への帰路。

そして、新たなる調査は……


リおんの帰還 蒼の薔薇の珍道中

 

黄金の輝き亭ロビーで、リおん達の前に正座させられているティナを見下ろしながら、ラキュースが問う。

 

「何か(もう)し開きはあるかしら」

 

 

ティナが答える。

 

()(ぜん)食わぬは(しのび)(はじ)。目の前に私の王子様がいたのだから仕方な『 ゴ ツ ン !!

 

 

……読者諸君は知っているだろうか。

 

雪だるまというのは、日本では2段重ねが一般的だが、欧米では3段重ねがポピュラーだ。

 

今ティナの頭にあるのは日本式だ。あと『一発』で欧米式になる。

 

 

「ウチのメンバーが本っっっ当にごめんなさい!!」

 

 

「い、いえ、大丈夫です。ちょっとビックリしましたけど、何ともないです」

 

 

目の前にいただけで平然と『据え膳』(あつか)いする厚顔(こうがん)無恥(むち)なティナに代わって平謝(ひらあやま)りするラキュースに対し、リおんは無事をアピールして許す。

実際には、まだ心拍数が戻っていないが。

 

 

フォーサイトの時と同様、いとも簡単に誘拐されかけたリおんだが、ティナの手口は見かけほど単純なものではなかった。

 

逃げられないよう、お子様脳には強すぎるくらいの口説き文句・誘い文句をウィスパーボイスで耳元に(ささ)やきながら、あんな所やそんな所をフェザータッチで刺激しつつ逃げ回ったのだ。

 

「四十八ある忍法の一つ」

 

そんな忍術はない。ユグドラシルなら即BANだ。

 

()せぬ」

 

「何を一人で(つぶや)いてるのよ……」

 

 

鬼リーダー(処女)にはわからない大人の会話」

 

 

へぇ……とんでもない事を仕出かしてくれた上に、ずいぶんデカい口を叩くのね?

 

蟀谷(こめかみ)に青筋を立てたラキュースが再度、(こぶし)(にぎ)りしめた。

 

 

「すみませんごめんなさい」

 

流石の忍者も頭にあるソレを『欧米式』にランクアップされるのは困るらしい。

 

 

結局、かなり全力で逃げ回ったティナであったが、

 

おどりゃあ何さらしとんねんドタマかち割ったるぞコラァぁぁ!!

 

と、すら()えたリウリンド (※こちらが素の性格である) の捜索(そうさく)(つか)まり、現在に(いた)る。

 

 

「改めてごめんなさいリオン君。この子、バカなの」

 

 

「いえ、本当に大丈夫ですから。それより、お話が途中だったじゃないですか。改めてお(うかが)いしましょう」

 

 

あんまりな狼藉(ろうぜき)を受けたにも(かかわ)らず、(こころよ)く仕切り直しを申し出るリおんに

ほんまえぇ子や……

感銘(かんめい)を覚えるラキュース。

 

 

「それでは改めて……実は私達、これから依頼で帝国へ向かう事になっているの。あなたの上演が素晴(すば)らしかったから、もし日程(にってい)が合えば続きを()けるんじゃないかと思って、今後の予定を(たず)ねたかったのよ」

 

 

「なるほど、そうだったんですか。明日、迎えが来てくれる事になっていて、朝には出発する予定なんです」

 

 

「そうなの? 奇遇(きぐう)ね! 私達も明日の朝に出る予定よ」

 

 

思わぬ幸運に(よろこ)ぶラキュース。

最初から(はか)られているとも知らずに。

 

 

「どこの酒場で、とかは決まってるのかしら」

 

 

「それなら歌う林檎亭によく行きます」

 

 

「覚えておくわ。きっと行くから!」

 

 

こうして情報交換を終えた両者は解散したのだが、意外にも早い再会に蒼の薔薇二人は(おどろ)く事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、ラキュース達は早めに宿を出た。

 

 

大型の馬車と連絡を受けていたので、待機場所であろう広場を目指す。

 

 

到着して、それらしい馬車を見つけ御者(ぎょしゃ)に話しかけると、

 

「おぉ、蒼の薔薇の方々でございますな。ささ、荷物はこちらへ。それと、申し訳ない。旦那様の指示で、もう一組お乗り(いただ)く事になっておりますので、今しばらくお待ち下さいませ」

 

言われ、ラキュース達は馬車に乗り込み待つ事とした。

 

 

ややあって外から御者が会話する声が聞こえてきた。

 

 

「お待ちしておりました。旦那様があなた方の大ファンでして、馬車の都合が合ったのは幸運でございました。ささ、どうぞ」

 

 

相乗りする相手について、帝国の商人が『ファン』? と、二人は顔を見合わせた。

 

まさか、と思いながら入ってきた姿を見てラキュースは驚く。

 

「リオン君!?」

 

「あれ、ラキュースさん! この馬車だったんですね」

 

さも『今になって知りました』という態度を見せるリおん。

 

これがジルクニフの策であった。

 

 

間者を使い『たまたま同時期に公演目的で来ただけである』と広める事で『リオン・ガブリールは一般の帝国民』と思わせ、さらにフォーサイトの動きを(つまり冒険者認定制度の動きを)誤魔化(ごまか)す。

 

一方で、皇帝と(つな)がりがあると見られている商人が(または皇帝が)優遇(ゆうぐう)して見せ『帝国内で一定の影響力がある』と(にお)わせ、その情報をラキュースに持ち帰らせる事で、余計(よけい)干渉(かんしょう)をできないよう誘導(ゆうどう)するつもりなのだ。

 

 

一歩間違うと逆に干渉が増えそうな手だが、その絶妙(ぜつみょう)匙加減(さじかげん)ができるとジルクニフが確信する(あた)り、外の仕事でも情報省が機能しているという証左(しょうさ)と言えよう。

 

()くしてリおんはアドリブスキルを発揮しつつ、何も知らないラキュース達と共に帝国へと出発した。

 

 

 

 

 

《入国初日》

 

 

「この街に三日ほど滞在します。(防疫(ぼうえき)のため)検査や手続きがあるので」

 

「(犯罪者対策が)厳重(げんじゅう)なのね」

 

「はい、(疫病(えきびょう)から)国民を守るためですから」

 

 

《移動中》

 

 

「塔から出てる棒は何?」

 

「(遠くの塔への)連絡用です」

 

(連絡?……市内の兵が見るのかしら)

 

 

《街道、野営》

 

 

「知り合い(魔法省)が試作した携帯食糧です」

(フリーズドライ、戦闘糧食としては高級将官用になっちゃったんだよなぁ……コスト……要研究……ハァ)

 

「お湯を注ぐだけで!?」

(これが帝国の一般的な技術力なの!?)

 

 

……と、多くの勘違いを与えたらしい。

 

情報量の多さでラキュースの頭の中の『帝国』像は、もはや(わけ)が分からないものに変貌(へんぼう)していた。

 

その場にジルクニフがいたら、笑いを(こら)えるのが大変だったろう。

 

 

もっとも、リおんも大変だったようだが。

主にティナのせいで。

 

 

《最初の街で》

 

リオン君、背中流してあげる

 

「ぅへあ!? ティナさん!?」

 

ティナぁぁぁぁ!!

 

 ゴ ツ ン ! !

 

 

《道中で》

 

リオン君、お姉さんと一緒に寝よ?

 

いいいいいですって!!

 

こらぁぁぁ!!

 

 ス パ ァ ン ! !(※ドラまたスリッパ使用)

 

 

 

そんな珍道中も、ついに……

 

 

 

 

《帝都・アーウィンタール、到着》

 

 

……やっと着きましたね。お疲れ様です、ラキュースさん……

 

 

……えぇ、ありがとう、リオン君……

 

 

結局、二人(そろ)って疲れきっていた。

 

止まった馬車の窓から力無く外を(なが)める。

 

 

「さすが鬼リーダーずるい。私が先に目を付けたのに何か仲良い感じ。鬼リーダーずるい」

 

一名、何やら勝手な解釈(かいしゃく)をしているようだが、自業自得(じごうじとく)だろう。

 

異議(いぎ)あり。あれはスキンシップ」

 

 

「また一人でブツブツ言って……ほら、降りるわよ? ティナ」

 

 

停車した場所は、蒼の薔薇二人が滞在(たいざい)する高級宿の前である。

 

二人を降ろした後は、リおん達を城まで運ぶ事になっている、が、それを蒼の薔薇二人にまで教える必要もない。

 

 

「それじゃリオン君、またね! 歌う林檎亭、必ず行くから!」

 

 

「はい! ぜひ聴きに来て下さい! お仕事がんばって!」

 

 

「鬼リーダー私はリオン君と一緒に」

ティナを無視して馬車は出発した。

 

 

 

 

 

 

 

《皇城・皇帝執務室》

 

 

「ただいま帰りました、陛下」

 

 

「おぉ、待っていたぞ、リオン」

 

 

初めての遠出であったため、いつも通りの顔触(かおぶ)れに、我が家へ帰ったような安心感を覚えるリおん。

 

ただ……

 

 

「陛下、レイナースさんは」

 

 

「……蒼の薔薇が到着したとバレてな……」

 

 

「……あ ぁ……」

 

 

待ちきれず自害(じがい)したらしい。

 

 

いつまでも(みょう)な空気ではいけないと、ジルクニフは咳払(せきばら)いを一つ。

 

 

「さて、フォーサイトの実地試験はどうであった?」

 

 

「はい、中々(なかなか)だと思います。歌の助けも借りず森を進み、リザードマンの集落を見つけ無事帰還したほどですから」

 

 

「リザードマン?」

 

 

「森の奥に湖がございまして、その(ほとり)に一部族あたり500ほど、合わせて5部族が、それぞれ集落を(きず)いておりました」

 

 

「ふむ、脅威(きょうい)にはなりそうか?」

 

 

「いいえ。彼らは水辺(みずべ)の種族らしく、閉鎖的(へいさてき)な事もあって集落を離れませんし、攻め込まれない限り自ら打って出ようとはしません。湿地に()れている分、完全な陸上での活動も苦手のようですし、手先も不器用なので高度な文明の利器(りき)は持っていませんから」

 

 

「そうか。……小さいとはいえ、試験の段階で成果を出したか。首尾(しゅび)上々(じょうじょう)だな」

 

 

リおんの報告に、ジルクニフは満足げだ。

 

 

リザードマンとの約定(やくじょう)についても説明を続けた。

 

 

「ある一つの部族と友好的な接触(せっしょく)()たしまして、彼らは冬の寒さに弱いらしいので、彼ら用の防寒着を作って、冒険者が持って行けば薬草や食糧、キャンプ地の融通(ゆうづう)をつけてもらえる事になりました。あと、塩も取れない土地だそうで、利用法と合わせて持ち込めば歓迎(かんげい)されるでしょう」

 

 

「なるほど、将来的な交易(こうえき)の下地か。そうなると……フフッ」

 

 

「何かございましたか?」

 

悪巧(わるだく)みを思いついたらしいジルクニフに、リおんは訊ねる。

 

 

「トブの大森林は王国、帝国が領有権(りょうゆうけん)を主張しているものの、実際には管理が不可能な無主地(むしゅち)だ。しかし、そこに住む者達と交流を持ち、自治(じち)(けん)を帝国が認めてやるという話になったら、王国はどう思うだろうな」

 

 

「実質、帝国が実効支配しているという印象を?」

 

 

「平時であれば何の有効性もないだろうが、使いどころを考えてやれば面白いカードになる」

 

思わぬ(ひろ)い物に、さらに機嫌を良くするジルクニフ。

 

しかし、

 

「それであれば、彼らの生存には配慮(はいりょ)してやった方がいいですね。……陛下、一つ気になる事が」

 

 

「何だ?」

 

 

「彼らから聞いた話です。気象的な理由なく漁獲量(ぎょかくりょう)が少ないらしく、森の動物たちが奇妙な移動をしているとか。もしかしたら『(いなご)の群れ』を見つけたかも知れません」

 

 

リおんの発言に、サッと顔色を変えるジルクニフ。

 

「……確かか?」

 

 

「まだ変調を感じ始めている程度で、何とも……動物たちの移動が森の深部である北側からという事で、規模としては森全体に波及(はきゅう)する異変ではないかと」

 

 

リおんの言葉に、ロウネが文官としての危機感を()べた。

 

「森全体となると、木材に影響が……」

 

 

「そうだな……」

 

ジルクニフが危惧(きぐ)する通り、木材需要(じゅよう)は建築のみではない。燃料も木材だ。

 

 

さらにリおんは、調査自体の問題点を()げる。

 

「調査する時間的余裕(よゆう)はありそうですが、今のフォーサイトの装備では心許(こころもと)ないかと。特に前衛のヘッケランさん……さすがに僕も双剣は手持ちがなくて」

 

「装備、か。城の財に何かあれば良いが」

 

 

それに対し、リおんは意外な提案をした。

 

「そこで、先にドワーフ王国の調査をさせては如何(いかが)かと」

 

 

「ん? ドワーフ?」

 

 

「この前オスクさんから聞いたんですが、ドワーフ王国との交流が途絶(とだ)えているとか。そちらを先に調べ、ついでに良質な装備を確保してはどうでしょう」

 

 

「ふむ……そうだな。どのみち何かあれば軍も動かざるを得ん。良い武具の確保は重要か……

 

 

 

よし、次の派遣先はドワーフ王国とする





森の奥に漂う不穏な空気。

そしてドワーフ王国の現状とは。
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