【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
帝国への帰路。
そして、新たなる調査は……
黄金の輝き亭ロビーで、リおん達の前に正座させられているティナを見下ろしながら、ラキュースが問う。
「何か
ティナが答える。
「
……読者諸君は知っているだろうか。
雪だるまというのは、日本では2段重ねが一般的だが、欧米では3段重ねがポピュラーだ。
今ティナの頭にあるのは日本式だ。あと『一発』で欧米式になる。
「ウチのメンバーが本っっっ当にごめんなさい!!」
「い、いえ、大丈夫です。ちょっとビックリしましたけど、何ともないです」
目の前にいただけで平然と『据え膳』
実際には、まだ心拍数が戻っていないが。
フォーサイトの時と同様、いとも簡単に誘拐されかけたリおんだが、ティナの手口は見かけほど単純なものではなかった。
逃げられないよう、お子様脳には強すぎるくらいの口説き文句・誘い文句をウィスパーボイスで耳元に
「四十八ある忍法の一つ」
そんな忍術はない。ユグドラシルなら即BANだ。
「
「何を一人で
「
「へぇ……とんでもない事を仕出かしてくれた上に、ずいぶんデカい口を叩くのね?」
「すみませんごめんなさい」
流石の忍者も頭にあるソレを『欧米式』にランクアップされるのは困るらしい。
結局、かなり全力で逃げ回ったティナであったが、
「おどりゃあ何さらしとんねんドタマかち割ったるぞコラァぁぁ!!」
と、すら
「改めてごめんなさいリオン君。この子、バカなの」
「いえ、本当に大丈夫ですから。それより、お話が途中だったじゃないですか。改めてお
あんまりな
「ほんまえぇ子や……」
と
「それでは改めて……実は私達、これから依頼で帝国へ向かう事になっているの。あなたの上演が
「なるほど、そうだったんですか。明日、迎えが来てくれる事になっていて、朝には出発する予定なんです」
「そうなの?
思わぬ幸運に
最初から
「どこの酒場で、とかは決まってるのかしら」
「それなら歌う林檎亭によく行きます」
「覚えておくわ。きっと行くから!」
こうして情報交換を終えた両者は解散したのだが、意外にも早い再会に蒼の薔薇二人は
翌朝、ラキュース達は早めに宿を出た。
大型の馬車と連絡を受けていたので、待機場所であろう広場を目指す。
到着して、それらしい馬車を見つけ
「おぉ、蒼の薔薇の方々でございますな。ささ、荷物はこちらへ。それと、申し訳ない。旦那様の指示で、もう一組お乗り
言われ、ラキュース達は馬車に乗り込み待つ事とした。
ややあって外から御者が会話する声が聞こえてきた。
「お待ちしておりました。旦那様があなた方の大ファンでして、馬車の都合が合ったのは幸運でございました。ささ、どうぞ」
相乗りする相手について、帝国の商人が『ファン』? と、二人は顔を見合わせた。
まさか、と思いながら入ってきた姿を見てラキュースは驚く。
「リオン君!?」
「あれ、ラキュースさん! この馬車だったんですね」
さも『今になって知りました』という態度を見せるリおん。
これがジルクニフの策であった。
間者を使い『たまたま同時期に公演目的で来ただけである』と広める事で『リオン・ガブリールは一般の帝国民』と思わせ、さらにフォーサイトの動きを(つまり冒険者認定制度の動きを)
一方で、皇帝と
一歩間違うと逆に干渉が増えそうな手だが、その
《入国初日》
「この街に三日ほど滞在します。(
「(犯罪者対策が)
「はい、(
《移動中》
「塔から出てる棒は何?」
「(遠くの塔への)連絡用です」
(連絡?……市内の兵が見るのかしら)
《街道、野営》
「知り合い(魔法省)が試作した携帯食糧です」
(フリーズドライ、戦闘糧食としては高級将官用になっちゃったんだよなぁ……コスト……要研究……ハァ)
「お湯を注ぐだけで!?」
(これが帝国の一般的な技術力なの!?)
……と、多くの勘違いを与えたらしい。
情報量の多さでラキュースの頭の中の『帝国』像は、もはや
その場にジルクニフがいたら、笑いを
もっとも、リおんも大変だったようだが。
主にティナのせいで。
《最初の街で》
「リオン君、背中流してあげる」
「ぅへあ!? ティナさん!?」
「ティナぁぁぁぁ!!」
ゴ ツ ン ! !
《道中で》
「リオン君、お姉さんと一緒に寝よ?」
「いいいいいですって!!」
「こらぁぁぁ!!」
ス パ ァ ン ! !(※ドラまたスリッパ使用)
そんな珍道中も、ついに……
《帝都・アーウィンタール、到着》
「……やっと着きましたね。お疲れ様です、ラキュースさん……」
「……えぇ、ありがとう、リオン君……」
結局、二人
止まった馬車の窓から力無く外を
「さすが鬼リーダーずるい。私が先に目を付けたのに何か仲良い感じ。鬼リーダーずるい」
一名、何やら勝手な
「
「また一人でブツブツ言って……ほら、降りるわよ? ティナ」
停車した場所は、蒼の薔薇二人が
二人を降ろした後は、リおん達を城まで運ぶ事になっている、が、それを蒼の薔薇二人にまで教える必要もない。
「それじゃリオン君、またね! 歌う林檎亭、必ず行くから!」
「はい! ぜひ聴きに来て下さい! お仕事がんばって!」
「鬼リーダー私はリオン君と一緒に」
ティナを無視して馬車は出発した。
《皇城・皇帝執務室》
「ただいま帰りました、陛下」
「おぉ、待っていたぞ、リオン」
初めての遠出であったため、いつも通りの
ただ……
「陛下、レイナースさんは」
「……蒼の薔薇が到着したとバレてな……」
「……あ ぁ……」
待ちきれず
いつまでも
「さて、フォーサイトの実地試験はどうであった?」
「はい、
「リザードマン?」
「森の奥に湖がございまして、その
「ふむ、
「いいえ。彼らは
「そうか。……小さいとはいえ、試験の段階で成果を出したか。
リおんの報告に、ジルクニフは満足げだ。
リザードマンとの
「ある一つの部族と友好的な
「なるほど、将来的な
「何かございましたか?」
「トブの大森林は王国、帝国が
「実質、帝国が実効支配しているという印象を?」
「平時であれば何の有効性もないだろうが、使いどころを考えてやれば面白いカードになる」
思わぬ
しかし、
「それであれば、彼らの生存には
「何だ?」
「彼らから聞いた話です。気象的な理由なく
リおんの発言に、サッと顔色を変えるジルクニフ。
「……確かか?」
「まだ変調を感じ始めている程度で、何とも……動物たちの移動が森の深部である北側からという事で、規模としては森全体に
リおんの言葉に、ロウネが文官としての危機感を
「森全体となると、木材に影響が……」
「そうだな……」
ジルクニフが
さらにリおんは、調査自体の問題点を
「調査する時間的
「装備、か。城の財に何かあれば良いが」
それに対し、リおんは意外な提案をした。
「そこで、先にドワーフ王国の調査をさせては
「ん? ドワーフ?」
「この前オスクさんから聞いたんですが、ドワーフ王国との交流が
「ふむ……そうだな。どのみち何かあれば軍も動かざるを得ん。良い武具の確保は重要か……
よし、次の派遣先はドワーフ王国とする」
森の奥に漂う不穏な空気。
そしてドワーフ王国の現状とは。