【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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【悲報】ラキュースさん世界の真実とニアピンしてしまう


幕間 ラキュースの思い出

 

sideラキュース

 

 

「ハァ……」

 

蘇生依頼を果たし、宿に戻った私は何度目かの()め息を()いた。

 

 

もしかしたら()められたのではないか。

 

胡散臭(うさんくさ)いとは思っていたけど、フタを開けてみれば『重爆レイナースの蘇生』とは……

 

 

聞いた限りだと、前々から思い詰めていた呪いの事で限界を迎えたから、という話だったけど……

 

 

確かに死んで蘇生したら力は落ちる。

けど(きた)え直す事はできるし、何より、あの(よろこ)びよう……

 

 

どうやら死んだら解ける(逆を言えば死ななきゃ解けない……なんて悪質な!)呪いだったらしく、抱き着いて感謝された。

 

女として気持ちはわかるけど、敵国貴族、しかも四騎士の一人に、というのは……気まずいというか、何て言うか……

 

 

なので、普段は(誰にも秘密だけど)悪の神を(おが)んでるクセに、今日ばかりは「私は正しい事をしたんですよね?」と聖印を(にぎ)りしめて正義の神を拝んでいた。

ちょっと情けない……

 

 

そんな私を見て、気を(まぎ)らせようとしてくれたのか、ティナが聞いてきた。

 

「鬼リーダー、まだ『隠れナザリック教徒』なの?」

 

 

「仕方ないじゃない。貴族としての立場もあるんだし」

 

帝国貴族ならいざ知らず、王国の貴族や神官なんかの『立場ある人達』に言わせたら、一歩間違うと邪教(あつか)いだもの。

 

 

さらにティナが(たず)ねる。

 

「姫さまの(さそ)いだっけ」

 

 

「誘いってわけじゃないけど……」

 

まぁ、当たらずとも遠からずって気はするけどね。

 

 

こっそり信仰してたラナーが『誰かと神学問答してみたいと思ってたの』って……気がついたら私も改宗してたのよね。

 

前に信仰してた水の神を悪く言うつもりはないけど、今まで教えられてた内容が稚拙(ちせつ)に感じるようになってしまったから。

 

それだけナザリック教は奥深い。

 

 

……それはそうと、隠してた教典を私が見つけてしまった時の、ラナーの(あわ)てっぷりは今でも思い出しちゃうわ。

 

 

「確かにきっかけはラナーだったけど、改宗を決めた理由としては子供の頃の出来事もあるかしら」

 

 

「子供の頃?」

 

 

私は当時の事を話した。

 

 

まだ10歳にも満たなかった頃だったかしら。

 

あの頃から私は(すで)に冒険への(あこが)れがあって、親の目を(ぬす)んで家を()け出し、近くの森に行ってしまった事があったの。

 

 

今にしてみたら本当に無謀(むぼう)だった。

 

 

(あん)(じょう)、たまたまいたゴブリン一匹に見つかってしまい追いかけられ、投げつけられた棍棒に背中を打たれて倒れ込むはめに……

 

追い付かれて、もうダメかと思った時、ゴブリンの頭が弾け飛んだ。

 

 

何かの魔法だったらしい。

 

 

倒れたまま視線をそちらへ向けると、そこには一人の魔法詠唱者(マジックキャスター)

 

黒いローブ。

目深(まぶか)(かぶ)ったフードの奥に見える、その端正(たんせい)な顔は見()れない黒い肌。

 

歳の頃は20代かしら。金色に(かがや)(ひとみ)が印象的だった。

 

首には金色のナザリック教の聖印。

 

その人は「もう大丈夫だ。さぁ、これを飲みなさい」と、私にポーションを

 

 

「初耳」

 

やや目を丸くしてティナが言った。

 

 

「だって言ってないもの。イビルアイの前じゃ話しにくいし」

 

 

「何故?」

 

 

「ほら、あの子って負けず嫌いな所あるじゃない? あんまり『その時の魔法詠唱者(マジックキャスター)様に憧れて〜』なんて言ったら……」

 

 

「あー、鼻を鳴らして『自分の方がすごい』とか言い始めて、その魔法詠唱者(マジックキャスター)をこき下ろすような事を言って鬼リーダーと取っ組み合いになるとこまで想像できた」

 

 

「取っ組み合いって……まぁいいわ。それでね」

 

ポーションを飲むとすぐに怪我(けが)が治ったの。

 

 

ゴブリンを魔法で一撃、子供の怪我とはいえ立ち所に治してしまえるポーションを簡単に与えてくれたぐらいだから、お礼を言った私は「もしかして、すごい冒険者の方?」って聞いたわ。

 

 

そしたら「しがない旅の魔法詠唱者(マジックキャスター)さ」って。

 

 

私は、そんな凄腕(すごうで)の方が旅をする理由が気になって「どうして旅を?」って訊ねたの。

 

その人は笑って答えてくれた。

 

 

……大人になった今なら分かるわ。

あれは『子供をからかう時の、大人の笑み』よ。

 

 

「この世界に散らばった、大いなる力を秘めたアイテムを集めるためさ。心無い誰かが手に入れたら世界が(ほろ)んでしまう」って言ったの。

 

 

いかにも子供が喜びそうな話よね。

 

 

だけど、その時の私は無邪気に信じて目を輝かせた。

 

 

「すごい使命を背負ってるんですね! 一緒に旅する方はいないんですか?」

 

私が聞くと、その人は

 

「生憎、私の腕前に見合う戦士も神官もいなくてね。一人で旅をしている」と。

 

だから私は言ったの。

 

「じゃあ、私が冒険者になって、一緒に行きます!」ってね。

 

 

すると、

 

「それは頼もしいね。では、こうしよう。君が一人前の冒険者になって、私を見つける事ができたら、その時は仲間として認めよう。私は、いつまでも旅をしているはずだから。私の名は───」

 

 

 

 

 

「……? 鬼リーダー。ラキュース」

 

 

「え?」

 

 

「どうした? ボーっとして」

 

 

気が付けば、ティナが私の顔を(のぞ)き込んでいた。

 

 

「……あぁ……いつも、あの時の事を思い起こそうとしても、思い出せないのよね。あの時、確かに名前を聞いたはずなんだけど」

 

 

「子供の時の事じゃ仕方ない」

 

ティナは事もなげに言う。

 

 

「それは……そうなんだろうけど……命の恩人の名前を思い出せないなんて、嫌じゃない?」

 

 

「けど仕方ない」

 

 

「まぁ、ね」

 

 

どこかボンヤリしてしまう私に、ティナが訊ねる。

 

「探すの? その人」

 

 

「……ううん。だって、名前も思い出せないし」

 

 

本音を言えば、それは『言い訳』だ。

 

だって、年の頃を考えれば今は30代か、もしかしたら40代になっているかも知れない。

 

憧れだった人物が、太ったオッサンになっていたり、アズス叔父(おじ)さんのように酒池肉林で鼻の下を伸ばしてたらショックで寝込んじゃうわ。

 

 

これが『大人としての諦め』か『子供のような弱さ』かは知らないけど、私は、名前を思い出せない事を言い訳にして『黒の御方(おかた)』を探すつもりはなかった。

 

 

「昔の話よ。だから、この話はおしまい。ね?」

 

 

「ん」

 

 

「ハァ……依頼の事も気分転換したいし……そうだ。歌う林檎亭にでも「リオンきゅん! 行く! さぁ鬼リーダーすぐ準備! ハリーハリー!」はいはい」

 

もう、ティナったら。

 

 

 

 

 

それにしても……

 

 

ううん、きっと思い違いよね。

 

 

子供の頃の記憶だもの、多少おかしな所があっても不思議じゃないわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポーションが赤いわけないじゃない。

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