【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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いざ、アゼルリシア山脈へ。

(という前フリ)


竜の巣食う山脈へ 前編

 

リおんとフォーサイトは城の一室で、ドワーフ王国の調査についてミーティングを行っていた。

 

 

この日まで一週間ほど、フォーサイトはリおんと共にカッツェ平野で本格的なパワーレベリングを行ってきた。

 

もちろんエンカウント率を上げるため、アイテムボックスの(こや)しとなっていた例の『呪われた呼び鈴』を使って。

 

 

(以前のデスナイト遭遇(そうぐう)も当然(うたが)われたが、リおんは目を()らし誤魔化(ごまか)した)

 

 

歌の効果で『取得経験値1.5倍』にした結果、フォーサイトの実力はアダマンタイト級相当まで強化された。

 

 

本来の計画であれば、リおんが付くのは前回の『試験』で終わりのはずであった。

 

それ以降はゆっくり経験を積み、装備を手に入れ……などと考えていたのだ。

 

 

しかし、想定外に『危機』の可能性を発見したため、実力・装備の両面で早急な強化が必要となってしまった。

 

そのため強化訓練(パワーレベリング)を受けたフォーサイトではあったが霜の竜(フロスト・ドラゴン)が生息するらしいアゼルリシア山脈を調査するには『前衛武器の決定力』の面から()だ不安であり、リおんの補佐(ほさ)が必要だろうという判断だ。

 

 

これまではアルシェの家庭事情から経験のなかった『長期遠征』が予想される。

 

良質な装備を求めて行った先で不測の事態に遭っ(ドラゴンに喰われ)ては、元も子もない。

 

 

それでもイミーナやアルシェの装備、各人の防具についてはリおんの手持ちがあった。

 

デザインは地味で見た目の変化は(とぼ)しいながら、軽戦士用、レンジャー用の防具、弓、(サーコートは別として)ロバーデイクの(よろい)などは遺産級(レガシー)となっている。

 

 

最も印象が変わったのはアルシェだろう。

 

上はパールホワイトのブラウスとサルビアブルーのチェック柄ベストに、パンジーパープルのインバネスコート。

ケープ部やコートの(すそ)にレースの(ふち)(かざ)りが付いている。

 

下はグレーのレギンスに一体型の黒い革のショートパンツ、同色のロングブーツ。

 

いずれにも『詠唱時間短縮』や『消費MP軽減』など効果が付与された魔化(エンチャント)装備であり、見た目に反して強度もオリハルコン並みにはある (能力補正に特化した二級品ながら) 聖遺物級(レリック)だ。

 

首元の赤いリボンタイが良いアクセントとなっていた。

 

これで戦闘時にはボストンバッグから人形が飛び出して戦うのだから、こちらの世界では魔法詠唱者(マジックキャスター)と判別できない者も多いかも知れない。

 

後述(こうじゅつ)する『ブレインの装備』の件で開き直ったリおんによる胴装備重複(ちょうふく)コーディネートだ。

 

 

パワーレベリングにはレイナースも参加した。

 

(うしな)われたカースドナイトのレベルを(おぎな)う、聖騎士レベル取得のためである。

 

今では(単独勝利は不可能なものの)四騎士で一番のデスナイト専門家と言えよう。

 

 

結局のところ、レイナースは四騎士に残る事を選択。

 

『陛下への恩義(おんぎ)』と表向き言っていたが、視線から(さっ)するにリおんに対し思うところがあるのだろう。

 

サエルアンナは「一人追加ね〜」などと勝手な事を(つぶや)いていた。

 

 

蛇足だが、レイナース蘇生の依頼を果たした蒼の薔薇二人は、あれから歌う林檎亭に来てリおんの公演を楽しんだ。

 

『ド派手な応援うちわ』や『永続光(コンティニュアル・ライト)が付与されたペン型ライト』を両手に持って

「買わされてた!? この私が!?」

驚愕(きょうがく)したラキュースが『全5曲が記録された携帯用プレーヤー(ベスト版)』までも購入していた事を自覚するのは宿に戻って着替えてからだった。

 

 

さらに蛇足だが、ティナが購入したのは『おはようからおやすみまでリおんの声が聴けるボイスプレーヤー(プレミアムエディション)』である。

 

彼女らは完全に『リおん沼』に(はま)ってから王国への帰路(きろ)に着いた。

 

 

 

 

「そういうわけで、今回も僕らが一緒に行きますので、よろしくお願いします!」

 

 

霜の竜(フロスト・ドラゴン)かぁ……出くわさなきゃいいなぁ……」

 

 

「そう気負う必要はありませんよヘッケラン。いつも通りを心がけましょう」

 

 

「ドラゴンって感覚(するど)いんでしょ? 鱗は(とお)せなくても気を散らすくらいは矢でも効くわ。何なら目ン玉射貫(いぬ)いてやるわよ」

 

 

「魔法の一斉射なら目(くら)ましにはなる」

 

 

「おいおい、下手に手負いにしたら逆にこえーって」

 

 

わざと笑い話にして緊張を解きほぐす。

 

こういう面に、チームとしての質の高さが垣間(かいま)見える。

 

 

そんなフォーサイトを見て、リおんは初めてのレイドボス戦を思い出していた。

 

(みんな頼もしかったなぁ……)

 

しかし、そんな尊敬(そんけい)も性格や人となりを知るにつれ「変態だ……」「この人、頭おかしい!!」と台無しになるのもアインズ・ウール・ゴウンの『ご愛嬌(あいきょう)』である。

 

(かがや)かしいものを思い起こす表情から徐々(じょじょ)に『死んだ目』になっていくリおん。

何を思い出したのか……

 

 

(かぶり)()って気を取り直すと、

 

「そうそう、今回は長期の遠征になるかも知れないので、予備の武器も用意しました。双剣、弓、メイス……ただ、質は『そこそこ』なので、一応補助の武器としてコレも」

 

そう言って取り出したのは黒い棒状の革製品。

 

「最近、帝都内の警備兵に支給するようになったレザーバトンです。中に砂が()めてあって、(なぐ)った時に威力が増すよう作られてる、暴徒鎮圧(ぼうとちんあつ)用の武器です」

 

 

()れない武器に、イミーナが心配するように(たず)ねた。

 

「暴徒鎮圧用って……そんなので大丈夫なの?」

 

 

「まぁ、どちらかと言えば『()えが()く』というのが大きいですね。4本は使える状態にしてますが、あとは砂を()いた状態で持って行けば重くないし、砂なら現地調達できますから」

 

 

「なるほど……長期任務じゃ仕方ないか……」

 

イミーナのみならずヘッケランも不承(ふしょう)不承といった様子で受け取った。

 

 

リおんは取り(つくろ)うように言う。

 

「あ、そ、それに、威力も意外とあるんですよ? 現場には好評で、バジウッドさんなんかも『これなら剣と違って殺さずに捕まえるのも苦労しないし、(はがね)の鎧くらいなら(へこ)ませる事だってできらぁ』って」

 

 

それを聞いてヘッケランは、

 

「そりゃ旦那(だんな)の剛腕なら、本気でやりゃあオリハルコンだって壊せるだろうが!」

 

不安要素を笑い飛ばすためか、明らかに言い過ぎだが皆は爆笑した。

 

もっとも本人がいたら、逆に巫山戯(ふざけ)て力こぶを見せてニヤリと笑うところだろう。

 

 

そんな話をしていると、ノックも無しにドアが開く音。

 

仮にも皇帝専属の楽士(がくし)であるリおんが使用中の部屋だ。

(ことわ)りなしの入室となると相手は限られる。

 

ジルクニフか『(うわさ)をすれば影』バジウッドかと思っていると、

 

「よぅ」

 

「ブレインさん。何かありましたか?」

 

すっかり着流し姿が板に付いたブレイン・アングラウスであった。

 

 

この姿、もちろんリおんが(帝国の財という事にして)与えたものであり、レアリティは低いものの全てユグドラシル産アイテムなのだが、見た目の通り防御力は(プレイヤー的には)紙装甲だ。

 

 

しかし指摘(してき)されたブレインは

 

「動きを制約されるのが嫌でな。だいたい、『その前』に斬っちまやぁ良いだけだろ?」

 

と不敵に笑った。

 

(さと)りを開いたように見えても、剣狂(けんぐる)いは剣狂いのままであった。

 

 

ところでこの装備、ユグドラシルでは絶対あり得ないコーディネートであった。

 

まず一つ目は『盆踊り達人の浴衣』

 

名前は浴衣とあるが、見た目としては着物だ。

 

その辺りは作成者である運営が適当だったのか、わざとか、何にせよ深く考える必要もないだろう。

 

このアイテムは『超高速盆踊り大会inヴァナヘイム』というイベントの優勝賞品だった(リおんが参加したわけではなく、投げ銭である)

 

強度は精々ミスリル程度、胴・腰・足一括(いっかつ)装備の上、効果も『素早さ20%アップ』しか付いていないため、優勝者は当時「ゴミじゃねーか!!」と(さけ)んだらしい。

 

……が、このアイテムは問題ではない。

 

 

二つ目は『ワラジ・オブ・イダテン』

 

次に紹介する三つ目のアイテムと共に『チキチキ!飛脚(ひきゃく)グランプリ』というレースイベント(これも不参加である)の参加条件装備だったものである。

 

強度はオリハルコン程度、効果は『移動速度25%アップ』のみ。

 

やはり性能はゴミだが、組み合わせに問題はない。

 

 

問題は三つ目。

 

『 ド 根 性 ふ ん ど し 』である。

 

効果は『いかなるダメージでも一度だけ死を回避する』という、つまり死の騎士(デスナイト)のようなスキルを得られるという装備。

 

先述(せんじゅつ)のレースイベント、内容は『参加条件装備を付け、千両ボックスを(かつ)ぎ、レベル80〜90のモンスターが闊歩(かっぽ)する特設コースを走り抜けろ』というもの。

 

(ちなみに「どうせなら男(くさ)いイベントにしよう」という運営の意図から男性アバター限定イベントであった)

 

そして問題なのは、この(ふんどし)は大会への不正参加を防ぐため『靴を除いた 全 身 装 備』の設定がされているという事。

 

 

つまり、草鞋と褌しか装備を(ゆる)されない、はずなのだ。

 

(この事からイベントは死屍累々(ししるいるい)、にも(かかわ)らず参加人数が多かったのは優勝賞品がドロップ率0.000000001%の超レアなデータクリスタルだったためだ)

 

だというのに、ブレインの姿である。

 

 

当然、プレイヤーでない事から制限を受けないからなのだが、リおんが「この中から自分に合うのを選んでおいてよ」と『お花()み』に

 

(伝統的価値観のアイドルであるリおんに排泄などという言葉はない)

 

行って、戻ってきてみれば『ユグドラシル産アイテムはユグドラシルの通り制限を受ける』と勘違(かんちが)いしていたリおんに衝撃を(あた)える結果となっていた。

 

 

制限を受けるのは、プレイヤーなのだ。

 

 

その事実に気が付いたリおんは「理不尽(りふじん)だー!!」とスキル付きで叫んだところ、研究で集中していたフールーダが転移(テレポーテーション)まで使って乗り込んで来て「うるさいわー!!!!」と薬品(びん)を投げつけ、物理ダメージは受けなかったものの(するど)嗅覚(きゅうかく)により精神的ダメージを食らうはめになった。

 

 

閑話休題。

 

 

リおんに用件を問われたブレインは、飄々(ひょうひょう)とした様子で答えた。

 

「陛下から聞いたが、ドワーフ王国へ行くらしいな。俺も同行させてもらえるよう申し出た」

 

 

「ブレインさんも?」

 

 

ブレインは朝東風丸を()でながら言う。

 

「あちこち鍛冶屋(かじや)を回ったが、我こそはという奴がいなくてな……一目見ただけで皆『(およ)び腰』さ。下手に(さわ)ったら駄目(だめ)にしちまうんじゃないか、なんてな。だからドワーフなら、と期待したわけよ」

 

 

さらに言えば、ジルクニフが許可した理由は『朝東風丸で職人が()れるのではないか』という目論見(もくろみ)である。

 

 

「なるほど、そうでしたか」

 

 

「で、ドワーフの連中に会うんだろ? 釣り(えさ)の酒は準備したのか?」

 

 

「あ! そうでした、危ない危ない」

 

 

「荷物の半分は酒で良いんじゃないか? 魔法のカバンってのは便利なもんだ」

 

 

「それでも限度はありますからね!?」

 

 

そう軽口に付き合うリおんだが、実は一つだけ不安があった。

 

 

(ドラゴン、レベルいくつかな……)

 

 

もし70レベル以上が出た場合、

 

 

(本気装備に切り替えるしかないか……)

 

 

そう、いつもの装備は『お忍び装備』だ。

 

しかし、本気装備を使うとなれば、

 

 

(……あの見た目、こっちの感覚で見たら『王族』だと思われちゃうだろうなぁ……)

 

 

今の立場や関係性を(こわ)したくないリおんは憂慮(ゆうりょ)していた。

 

 

(けど、まぁ、その時は仕方ない、か……)

 

仲間の命には()えられないと、悲壮(ひそう)覚悟(かくご)を固めるリおんであった。

 

 

霜の竜の王(フロスト・ドラゴン・ロード)オラサーダルク=ヘイリリアルはレベル46である。

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