【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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世界の監視者ツァインドルクス=ヴァイシオン。

その知られざる舞台裏を紹介しよう。


幕間 ツァインドルクス=ヴァイシオンの憂鬱

 

《ナザリック転移の1ヶ月前》

 

 

sideツアー

 

 

「……つまり、モグモグ、そのために、ズスス……ハァ……ザイトルクワエを、モッキュモッキュ、使うって事かい?」

 

 

「そうだ」

 

 

……相変わらずというか何というか、とんでもない事を言うものだね我が友人(・・・・)は。

 

僕と対極な、この『真っ黒黒助』とは100年近く友人関係だけど、(いま)だに()れないよ。

 

 

黒いローブに黒い肌の、旅する魔法詠唱者(マジックキャスター)……表向きは。

 

 

まぁ、多少は悪いと思ってくれてるのか、毎回こうして美味しいお菓子とお茶を持参して来るから、その事だけは楽しみにしてるけどさ。

 

 

「──ゴキュ。けど良いのかい? それ、後でバレたら怒られるんじゃないかな。もう半分くらい()(おく)れなんだろうけど」

 

 

「はっはっはっ、私は元々『自分勝手で傍迷惑(はためいわく)な自由人』という評価を受けているからな。今更(いまさら)だ」

 

 

なるほど、今まさに僕が彼に対して持っている認識は『彼の昔の友人達』と共通のものだったようだ。

 

……苦労したんだろうな。

会った事ないのに親近感が()いてしまうよ。

 

 

「むしろ感謝してほしいくらいだがね。前にも話した通り、我々プレイヤーはアバターの特性に精神が引っ張られる。彼が彼でなくならないよう(・・・・・・・・)にレールを()いてやろうというのだから」

 

 

「まぁ、言いたい事はわかるし、僕だって仲良くやれるに()した事はないんだけどね……」

 

 

そのために『世界を(ほろ)ぼせる魔樹』を便利に使い(つぶ)そうっていうんだから、発想がブッ飛んでるんだよ。

 

 

……毎度の事だけど、君の考えはいつも胃に悪かったり心臓に悪かったりするんだから勘弁(かんべん)してくれないかなぁ……

 

よく竜の心臓(ドラゴン・ハート)とかいうけど、別に(うろこ)が生えてるとかじゃないんだから世界規模(きぼ)な話とかされたら普通にビックリしたりドキドキするんだよ?

 

……そんな事を言ったところで『トードマンの面に小便』なんだろうから、今更、言う気もないけどさ……

 

 

「でも、それなら彼らはどうするのさ。魔樹を起こしたら間違いなく法国も動くよ? 漆黒聖典が来て何か(こじ)れるような事があったら、下手すれば全面戦争だ」

 

それが対ナザリックの『宗教戦争』か、評議国(ウチ)との『国家戦争』かは知らないけどさ。

 

 

「その点も心配ご無用さ。何なら私が消す(・・)だけだ」

 

 

……うわぁ、やる気だコイツ。

 

終わったな漆黒聖典。ご愁傷(しゅうしょう)(さま)

 

 

「確かに君が負けるなんて思えないけどね。君が死んだりしたら君が持ってるアイテムの散逸(さんいつ)(こわ)いし。『クヌムの轆轤(ろくろ)』とか『世界毒(ハーラーハラ)』なんて、冗談じゃない」

 

 

「私としても必要なのは『アンタイオスの足』だけだから破壊したいのは山々なんだが、知っての通り世界級(ワールド)アイテムは破壊できんのだ」

 

 

やるとなったらホント容赦(ようしゃ)ないからなぁ……

何時(いつ)ぞやのミノタウロス国も『何言ってんの?』とか思ったよ。

そこまで問題の規模を大きく考えるとは思わなかったし、その解決方法がなぁ……

 

 

今も彼らはビーストマンの守旧派(しゅきゅうは)圧迫(あっぱく)してはいるけど、それは単に『今までに造られた銃で(かろ)うじて維持(いじ)してるだけ』だ。

 

何とか整備まではできてるみたいだけど、まともな銃を(・・・・・・)新しく製造する事はできなくなった。

 

何処(どこ)かの誰かさんに『政策として増やしてきた技術奴隷たる人間』も『資料』も全て()かれたからね。

 

必死になって奴隷を買い集めて再教育してるみたいだけど、無理だろうね。

 

(まった)くのゼロからでは、口だけ賢者みたいのが再び現れない限り500年以上はかかるんじゃないかなぁ。

 

そうしてる間に『昔のミノタウロス国』に戻るだけだ。

銃という技術は世界に蔓延(まんえん)する前に歴史の闇へ消える、と。

そのために生殺し放置(・・・・・)だなんてエグい事考えるもんだよ。

 

 

それまでの間に、竜王国の抵抗力もあってビーストマンの守旧派は衰退(すいたい)する。

 

弱体化したミノタウロス国は守りに入って、他国へ()()む事はしないだろう。

 

竜王国も国力の回復に専念(せんねん)するはず。

 

大陸中央の各国も『(みょう)疫病(えきびょう)』に見舞(みま)われたミノタウロス国を気味悪がって近付かないだろうね。

 

……結果、間違いなく100年は(くず)れる事のない『平和』が(おとず)れるわけだ。

 

全く()て効率的でえげつない(・・・・・)

 

 

それからも文化交流や相互理解を(うなが)すような暗躍(あんやく)を続けるんだろうな。

 

 

いや、それは後から来るっていう彼の旧友がするのかな。

 

 

聖王国でやらかしたアレ(・・)はテストケースってとこなんだろう。

 

今では彼の手を(はな)れて定着したようだね。

 

最初の大会ではノリノリで司会役をやってて()き出しそうになったよ。

(よろい)だけど。

 

……この前、一緒に観に行った時は妙にコソコソしてたけど何だったんだろう。

 

会いたくない相手でもいたのかな。

……まぁ良いか。

 

 

「それじゃあ用件は伝えたし、今後の仕込みもあるから失礼しよう」

 

 

「……もう行くのかい? アルス」

 

 

「これでも(いそが)しい身でね」

 

 

なんだよ……もう少しくらい世間話とか、この前くれたボードゲームで相手してくれても良いじゃないか。

 

 

ちょっとムカついた僕は(めずら)しく嫌味(いやみ)でも言ってやろうと思った。

 

「……そんなに急いでまで気を(つか)ってもらえるなんて、君の友人達(・・・・・)は幸せ者だね」

 

僕も(・・)友達なのにね!

 

 

そしたら「やれやれ」という風に(そう言いたいのは僕の方だよ!)肩を(すく)めて、

 

「何を言ってるのか分からんが、気を遣ってやってるのはお前の方だぞ? ツアー」

 

 

「……へ?」

 

 

「まぁ、彼らを友人と思ってるのは間違いないが、義理を果たしてやろうというだけの話だ。レールを敷いてやるだけなら、こんな面倒で回りくどい方法を選ぶ必要なんてないさ。ナザリックと正面衝突なんて事になったら、お前さんエラい目に()うだろうが」

 

 

「……」

 

 

「私を友と呼んだのはそっちじゃないか、ツアー」

 

そう言うと彼は(あらた)めて背を向け、ぶっきらぼうに

 

「じゃ、またな」

 

 

「あぁ、うん……」

 

 

いつも通り『そこに最初から誰もいなかったように』()き消えた。

 

 

……嫌いになれないのはつまりそういうとこだよ大体なんだよいつもいつもなんでもない風に厄種(やくねた)なんて持ってきたり事後(じご)承諾(しょうだく)だったり振り回すくせに僕がヘソ曲げた時に限ってそうやってグビリッ

 

いつの間にか口から(こぼ)れてた『心の声』にブレスが混ざりそうだったから、腹立ち(まぎ)れに残ってたお茶を飲み()した。

 

 

「……はぁ」

 

お茶が美味しかったからか、どうなのか、()め息を()いて彼がいた場所を(にら)んだ。

 

 

竜は嘘を見抜(みぬ)く。

 

だから当然、『嘘を吐いていない事も』見抜く。

 

……それを厄介(やっかい)だと思う日が来るとはね。

 

 

感情に(まか)せて、さっき飲み込んだ言葉の続きをブチ()けたくもあったけど、なんて言ったっけ、コトダマ? ともかく、言葉にしたら負けな気がして

 

……ばーか

 

と、一言だけ(つぶや)き視線を切った。

 

 

そりゃ、わかるよ?

 

そういう遠慮(えんりょ)のなさっていうか、前にリグリットから「本当の意味で対等な友人なんてアイツくらいだ」って言われたし、その得難(えがた)さに(うれ)しくは思ってる。

 

……だからこそムカついたりもするわけで!邪神め!

 

 

はぁ……

 

さ! あんなヤツの事は忘れて、お菓子を咀嚼(そしゃく)してお茶を飲む作業に戻るのだツアーよ。

 

 

前脚(まえあし)の爪で『キュース』とかいうティーポットを()まみ、二杯目のお茶をカップに(そそ)ぐ。

 

お菓子を口に(ほう)り込む。うまぁ。

この『アンコ』とかいうのホント美味し。

 

そして、お茶で洗い流す……至福(しふく)

 

 

それにしても、どこで買って来るんだよ。

 

『フーゲツドー』の『ドラ焼き』とか言ってたかな……全然、聞いた事ないよ……

 

 

この前のは『ショーエイドー』の『カルカン』とか言ってたっけ。

 

 

店の場所さえ教えてくれたら自分で(鎧で)買いに行くのに……

 

 

……おっと、残りは(かく)しておかなきゃ。

 

リグリットに見つかったら食べられちゃう。

 

『ホーバ巻きの悲劇』を()り返すわけにはいかない!





ツ「どうせだったらもう少しかまってくれたっていいじゃないか!」

٩(*`^´*)۶
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