【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
フォーサイト、英雄への道。
「……んむぅ?」
パチンという
「お、気がついたみたいだぞオッサン」
ヘッケランが他に知らせると、
「誰がオッサンじゃあ!」
一行は地下から脱出後、キャンプ地を
今は完全に日は
「というかお前さん方は一体」
ドワーフの質問に代表してヘッケランは答えた。
「俺達は帝国の依頼でドワーフ王国の調査に来たワーカーだ」
そう、あくまで『まだ』ワーカーだ。
まだ『冒険者認定制度』は水面下。
また、リザードマン相手なら冒険者と名乗っても問題なかったが、国交あるドワーフ相手ではプレートがないのに冒険者と名乗るわけにもいかない。
『
「調査?」
ドワーフは
ヘッケランは答えてやった。
「
「原因ならハッキリしとる。クアゴアじゃ」
「クアゴア?」
聞き
「鉱石を食う亜人でな。金属糸のような体毛のせいで金属製の武器はすぐボロボロにされる」
「さっきの奴らか!」
アレの事か、と
ヘッケランは特に
「いたのか!?」
ドワーフは警戒の色を
「あぁ、大丈夫だ。返り
「……そういえば、
「クアゴアの
目を泳がせつつリおんが言った。
「そ、それよりドワーフ王国はどういう状況なの!? クアゴアのせいで都市を放棄したの!?」
必死に質問を
「そ、そうじゃ。奴らが来たせいで交易する
まんまと質問攻勢で押し切られたドワーフ、自身の境遇を思い出してか、最後は
イミーナが気になった事を
「そういえばオッサン、何であんな
「だからオッサンではないと……儂はルーン技術の開発者じゃ」
リおんが「ルーン?」と訊ねつつ
『もしかしてファンタジーに良く使われるアレか?』
と内心で当たりを付ける。
「通常の
「すごいじゃないですか!?」
通常以上という部分に期待を高めるリおん。
「じゃが
「え、じゃあ今は」
「いや、それは解決した。だいぶ前に旅の
と、ドワーフは
そう、どれほど技術力があったとしても、健全な経済という土台がなければ意味はない。
その辺りフォーサイト(アルシェは元・貴族なので別だが)やブレイン、エルフ達は、いまいちピンとこないのか『クアゴアの
ドワーフは、その
だから『クアゴアの
対してエルフは『文学的な種族』と言えるだろう。
もっとも、魔法の
高位の
だが、エルフ王は手っ取り早く兵隊を
まぁ、ドワーフが
現に今、クアゴア相手に追い詰められているのだから。
その辺りまでを含めた
その表情は、どこか『残念な生徒を見る教師のよう』である。
リアルで支配者層の一角を株式買収しようとしたのは
ただのネットアイドルではないのだ。
(油断してたのもあるんだろうけど、金貨経済……金
確かに、もしドワーフ王国が
金本位制は金の保有量が『国の信用』となる。
安定的で
紙幣経済……管理通貨制の場合、生産能力が『国の信用』となる。
生産能力に
(つまり
必要な金額をいくらでも国内に流す事が可能であるので、
加速度的な経済成長が
基本的に『カネとは政府の借金』という形態をとるため、その経済
いつぞやリおんが「銀行の金券版で
自前で金を
クアゴア侵攻の前に
戦いとは、始まる前に終わっているのだから。
軍事力とは『保険』である。
以前にも
つまり『
もちろん
それだけに『どの
ちなみに戦争とは国家間における武力
よって『戦争ができるか
軍事力は持っていても法によって
『戦えるが戦争
という事になる。
『決闘』と『正当防衛』は違うのだ。
法は必ず言葉の
言葉の定義を
ヒトの世は、言葉によって作られる。
そして法とは国家間の条約でない限り
「超法規的
などと言って
にも
「マイルールを変えなくては戦えない」
などと言う
法など国家運営を
そんなものを
王政であれ民主主義であれ、政治のレベルは国民のレベルで決まる。
他国から
閑話休題。
ドワーフ王国との交易途絶が『戦争によるもの』と聞き、フォーサイトは表情を
今は確かに『まだワーカー』だ。
しかし、同時に『冒険者認定制度の広告塔』でもある。
冒険者は政治に対して
つまり、今回の仕事はワーカーとして
しかし、リおんは違う事を考えていた。
先程も述べた通り、戦争とは『決闘』である。
クアゴアとは合意をしたのか、ルールに基づいているのか……
リおんは、こう考えた。
(これ戦争じゃなくて、害獣
戦争ではなくモンスター退治であるなら『冒険者としての活躍』にできる、と。
その辺りの
どのみち帝国としての取引を
「何にせよ書状もあるし、役人さん達がいる場所までは行かなきゃ。
「(なんでワーウルフが皇帝の代理なんぞしとるんじゃ……)儂の名はゴンドという。どのみち帰らねばいかんし、護衛を
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坑道内のルートはクアゴアに
移動中、
これには一同首を傾げたが、ドワーフ独特の感性ではあるものの、人間やエルフにも似たような感覚を覚える場面はある。
言ってみれば高所恐怖症や海洋恐怖症に近い。
船で沖に出た時に、底の見えない海を
ちなみに人間にも『空恐怖症』というものはあるが、この場合、災害や信仰、太陽光の強烈さなど、原因は様々である。
「そんな下ばっか見てて大丈夫かよ……」
と、流石に不安を感じたヘッケランは声をかけるが
「方角は分かっとる。というより方角しか分からん。目指しとるフェオ・ジュラは建設当時、人間との本格的な交易を考えておったらしくてな、地表部に目立つ
それから数日、登山の時と同様『ピクニック』を続けた後、ようやく現在の首都フェオ・ジュラに到着した。
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ゴンドの
「長旅の上、
総司令官からの謝意。
「皇帝陛下からの
言い
「知っての通り、現在、我が国はクアゴアとの戦いに手を焼いておる。帝国からの商隊を受け入れるのは可能じゃが、こちらから送り出す程の余裕は……」
つまりそういう事だ。
戦況としては『ジリジリと後退を
ゴンドから状況を聞いていたリおんとしても、それほど期待はしていなかっただけに
それに帝国から人をやれば取引自体には応じてくれるのだから、ずれ込むもののドワーフ製の武具は入手できる。
それで
さらに、
「ルーン工匠のスカウト?」
鍛冶工房長は訝る。
「帝国は文化や技術の保護に関心がありまして。今の貴国の状況では、失礼ながら彼らの存続は
などと、ありもしない文化財保護事業を名目に(ブレインのための鍛冶師確保も兼ねて)リおんはヘッドハンティングを申し入れた。
「(そんなカネにもならなそうな事をする程、帝国は景気が良いのか……)
なるほどのぅ。まぁ、実際その通りじゃろ。今ではルーンなど斜陽産業じゃ。本人達の意思次第じゃが、声をかける分には好きにしてくれて構わん。
(
と、二つ返事の鍛冶工房長。
その腹の
これ程スムーズに話が進むのは、やはりバハルス帝国という『人間種の国』が相手だからというのが大きいだろう。
……どこかの世界線で
「あ、ちなみにクアゴアからは宣戦布告とかはあったんですか?」
「宣戦布告? 人間種の国じゃあるまいし、んなもんないわい」
(よし! いざ戦闘になっても害獣駆除だ)
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「ほいよ。注文通りか確かめてくれ。じゃが良いのか? 属性付与もできるぞい?」
「属性武器なんて相手次第だろ。同じ『魔法武器』なら霊体にだって少しは効くし、急所に当てられた方がいい」
「ホッホッ、
摂政会との会談後、リおんは帝国産の貴腐ワインやらウォッカやらウィスキーやらを
結果から言えば入れ喰いである。
ドワーフ王国の不況…も、あるが、特に『新しい火酒』と感激されたウォッカやウィスキーが効いていた。
(ウィスキーは製法としては熟成酒なので、知っている者から見たら『新しい』という表現も違和感はあるが…)
せっかくなのでフォーサイトにはルーン武器を
ヘッケランの双剣に与えられたルーン効果は筋力強化とクリティカル補正らしい。
とはいえ対クアゴア戦になった場合、それらも出番はない。
ドワーフ軍も、予備に持ち込んだレザーバトンを購入。
彼らもクアゴア対策には木製の
元々、中身の砂を抜いた状態で大量に所持していたため、まとまった数を一度に確保できたと喜ばれた。
ちなみに人間の鍛冶師が尻込みしたブレインの武器『朝東風丸』の手入れだが、ドワーフ鍛冶師は逆にチャレンジ精神を刺激されたらしく問題は解決されそうである。
ヘッケランが新しい武器を確かめていると、何やら外が
鍛冶師と共に訝しく思っていると、ドワーフが一人ドアを破らんばかりの
「おい! 早く避難所に集まるんじゃ!」
「どうしたんじゃ、そんなに」
「クアゴアが大量に攻めて来おった! まだ今は吊り橋の向こうじゃが、どうなるか分からんらしい! 念の為に避難しとけという事じゃ!」
全て聞き終える前に、ヘッケランは走り出していた。
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「リオン!」
「あぁヘッケラン、ちょうど良かった!」
摂政会から
「どうする?」
ヘッケランが問うとリおんは、
「理由は分からないけど、かなりの数が来てるみたい。僕の見立てじゃドワーフ軍だけだと無理だと思う。恩を売るには
「なら決まりだな。……まぁ、害獣駆除って
この2週間の間に意見の
『
すぐさま戦闘の準備をし、全員で大裂け目へと向かった一行。
到着してみると、もう
リおんが指示を出す。
「マズイね……僕が
言うが早いか歌い始めるリおん。
一気に加速し、
エルフ三人娘は素直に
「……すげ」
「俺ら必要か?」
「それは言わない約束ですよヘッケラン」
「あはは……」
「……だけど、かっこいい」
などと言いながら追いかける。
目を白黒させているドワーフ兵をすり抜け、リおんによって勢いを殺されたクアゴアの群れへと
金属以外の武器での打撃に弱いとわかっていれば、実戦経験豊富な一行が苦戦する相手ではない。
クアゴア達が状況を理解するより先に防御陣形を整え、アルシェは魔法の準備を始める。
ようやくクアゴア達は「
そして……
「
左右に飛んだ人形が、クアゴア達の
放射状に広がる電撃をまともに食らって感電死する者、気絶したり麻痺する者……なまじ電気の
「うぉー! 行けー!」
「やれる、やれるぞぃ!」
ドワーフ兵の士気が上がり押し返し始める。
全員が勝利を確信した、その時……
「父に言われてヘジンマールを探しに出てみれば、
……クアゴア達の向こう、一番大きな坑道から
「ちょうど腹が減っていたところだ。ついでに
(クアゴアの
リおんはトランジェリットの言葉の意味を
「コールアンドレスポンス!」
リおんが短くギターを鳴らすと、トランジェリットは
「Yeaaaaah!!」
と
このスキルは
フレーバーテキストでは「相手の声から力量を測る」となっている。
……ちなみに
実際、今トランジェリットも首を
そして、その結果は……
(……あれ? 弱い?)
アダマンタイト級相当まで成長したフォーサイトがレベル20台後半、ブレインは35レベルを超えようかというところ。
トランジェリットは30
(イヤイヤ歌のバフがあるとはいえ、まだ武器を新調したばっかだよ!
そんな事をリおんが考えているとヘッケランが、
「……しゃーねぇな、ドラゴン退治といきますか」
リおんは
「んなっ、ヘッケラン
「何言ってんだ、こういう時のために訓練してきたんだろうが。
「確かに『少し格上』くらいではあるけど……」
「その格上に
そう言って
しかし強がりの部分もあるのだろう。
目は真剣だ。
そして、そんなヘッケランの言葉に他のメンバーを見れば、皆同じような表情を浮かべていた。
『挑む者』の表情を。
(……僕は、過保護だったのかな)
リおんは、
「……もう、仕方ないなぁ。登竜門こじ開けてきなよ。背中は押してあげるからさ!」
言うと、ギターを構え直す。
「
フォーサイトは駆け出した。
リおんはエルフ達とブレインに指示を出す。
「クアゴア達の邪魔が入らないように
「
「俺も
エルフ達の矢と魔法が、ブレインの打撃が、フォーサイトの進路を開く。
歌が響く中、
「この俺様に挑むか、虫ケラ共」
歌のデバフで体の重さを自覚しながら、それを物ともせずトランジェリットがブレスの予備動作をみせる。
気付いたロバーデイクが対処する。
「
クアゴアさえ無視したブレスが放たれ、辺りを冷気が包み込むも、フォーサイトに凍死した者はいない。
「お礼にコレでも食らいなよ!」
ブレス後の硬直が
もちろんドラゴンの鱗を
「えぇい
それを目で追った先にはロバーデイクが、
「
本来はアンデッドを
だが、竜は
それが
「ガァ!?」
焼け付くような光に痛みすら
「おのれムシけらぁぁ! 見えぬくらいで何だと言うのだ!!」
確かに見えないとはいえ、ある程度どこにいるかは判別できよう。
だが、もちろん
散開した二人には
そして、ここまでは『時間稼ぎ』だ。
オリジナルで魔法を生み出せる『この世界』、杖を使う
それはシステムの都合上、ユグドラシルプレイヤーのドールマスターにも不可能な、言わば『バグ技』であった。
その準備が
「
思考を並列化し、異なる呪文を
そして、それによって放たれた魔法は……
「
火球が
そう、
確かに
確かに地下という場所では、周囲に可燃物が少なく、副次的な地形効果は発生しない。
しかし、それは見かけ以上の
まだ視力が戻らないトランジェリットも、その異常な熱量は
「何だこれは!?」
彼には見えていなかったのだ、火災旋風の意外な移動速度が。
彼は知らなかったのだ、火災旋風が周囲に放つ
それが酸素を求めて動くという事を。
トランジェリットがブレスを吐くより先に、彼が吸い込む空気に合わせ、炎の蛇は彼の首に巻き付いた。
「ア゛ァァァァァァァ!?」
流石に冷気を纏う巨体だけあり、全身
青白く
その下の
そして最も大きなダメージはブレスを用意していた
アルシェの魔法は、見事にドラゴンから『恐るべき吐息』を
強大な竜を相手に立ち向かう勇気ある者達、
その光景に、クアゴア達は信じられないものを見たと恐れ
「ぅおおお!」「すごい、すごいぞ!!」
「英雄じゃ! あいつらは我らが勇者じゃ!!」
のたうち回り炎から逃れようとするフロスト・ドラゴンに、少しでも痛手を与えようと魔力を投入するアルシェ。
だが、連戦とあって流石に魔力切れが来てしまう。
ふらつきながら、何とか動けるうちにと後退した。
巨大なドラゴン相手では人形など物理的に
である以上、魔力の供給が断たれた炎の蛇は少しずつ力をなくし、やがて消えていった。
炎が消えた後には、散々
熱で視覚も嗅覚も潰されたが、その目には明確な怒りと
もはや
アルシェの奥の手さえ『時間稼ぎ』だったのだ。
既にヘッケランは間合いの中である。
タイミングを見計らい、ブレインの『
「……
死角から一気に飛び込み、鱗の
バンッと弾ける音と共に、トランジェリットは転倒する。
ヘッケランの技は『一定時間、強化された腕力と加速力で舞い踊るように連続斬撃を繰り出す』もの。
まず危険な足と尾を無力化し、
続け
目にも
ただでさえ負担の大きな『限界突破』に『流水加速』を組み込んだ技である。
格上の相手を、ドラゴンの
それ故、今のレベルで攻撃可能な時間は限られていた。
そして一度開始してしまえば、二度目を実行する余裕は無い。
しかし……
(舐めるなよ虫ケラぁぁ!!)
先端を顔の近くまで無理矢理に引き
アダマンタイトすら
「ヘッケラン!」
イミーナが警告を、悲鳴を上げた。
ドワーフ達も同様に。
……そして、振り抜かれた場所からヘッケランの姿が消し飛んだ。
「あぁ、やられた!」「我らの英雄が!」
だが、リおんやブレイン、歌の効果で動体視力が向上していたイミーナには見えていた。
直撃する瞬間、
振り払われた尾の勢いそのままに、ヘッケランは
唯一無事だった左の前足で起き上がるトランジェリット。
ヘッケランは、その頭上にいた。
歌は、まだ止んでいない。
武技は、まだ終わっていない。
「ぉぉぉぁらぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
右手の剣を、その首根に振り下ろし……
上体を起こした竜を背にして着地したヘッケラン。
周りを包む冷気との温度差に、限界を超え
振り抜いた形で
その背後で、竜の顔が
動いた顔は……そのまま
首から先を失った体が、やや
「……ぅおおおおおおおおおお!!!」
腹の底から
「やりおった、あヤツやりおったぞ!」
「
ドワーフが
その視線の先には、互いを支え合う英雄達の姿が