【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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※カメオ出演あり

『あの二人』は『あっち』でVRMMOプレイ中のところを連れて来ました←
エキストラが欲しかったので。

『あっち』完結して、もうすぐ1年かぁ…


英雄達の凱旋

 

ドワーフ王国は祝賀ムード一色であった。

 

 

クアゴアとの終戦、

霜の竜(フロスト・ドラゴン)危機の回避、

旧王都の奪還(だっかん)

霜の巨人(フロスト・ジャイアント)との不可侵締結(ていけつ)……

 

 

これで(かつ)ての活気が戻って来ると、一般庶民は喜びに()いていた。

 

 

一方で摂政会は(国民を不安にさせないため無理矢理に笑顔を浮かべているが)顔色は悪かった。

 

帝国の存在感が圧倒的すぎたのだ。

 

今後ドワーフ王国は未来永劫(えいごう)、帝国に頭が上がらないだろう、と。

 

 

だが、そんな中でも鍛冶工房長と商人会議長は開き直り気味ではあるものの前向きな姿勢を見せる。

 

二人は考える。

 

ルーン工匠は軒並(のきな)みスカウトされてしまったが、より均一で安価な通常の魔化(エンチャント)技術は変わらず帝国軍に需要(じゅよう)がある。

 

何より、トランジェリットの首を落としたのは『自分達(ドワーフ)の作品』だ。

 

自分たちの鍛冶技術こそがドワーフ王国の生命線だ、と。

 

 

そして、この姿勢をリおんも歓迎(かんげい)していた。

 

商売相手として、足元を見られるのは問題だが、かと言ってイエスマンではダメなのだ。

 

長期的に見れば、こちらに気を使ってばかりの相手では自国の消費者を(かえり)みない取引が増え、ドワーフ王国から帝国への反感(ヘイト)が発生したり、ドワーフ王国が衰退(すいたい)してしまったりするからだ。

 

 

商売は両者の利益にならなければいけない。

 

そのためにはドワーフ王国の良好な経済・消費意欲が、つまり適正な通貨量の維持が必要だ。

 

それを思えば自国へのプライドや、自国民の生活や人生を守ろうという意志は重要である。

 

 

……ちなみに、今のリおんの(つまり帝国の)発言力を考えれば、例え紙幣経済への切り替えを提案しても受け入れられただろう。

 

だがリおんにはドワーフ王国を実験台にする考えはなかった。

 

 

確かに、もし長きに(わた)り安定した時代が続けば、いずれは紙幣経済への切り替えが必要にはなるだろう。

 

人口が増え、取引が増えれば、金銀の信用で(まかな)える通貨の量では不足する。

 

人は幸福を求め、新しい価値や財を生み出し続ける以上、望むと望まざるとに(かかわ)らず国家は成長してしまうのだ。

 

 

である以上、生産能力の向上に合わせて実質『無限』の信用『政府の借金』である紙幣による経済は重要となる。

 

人や企業が存在する限り、政府の返済能力は死なないのだから。

 

 

ただし、それは帝国も同じである。

 

それならドワーフ王国を実験台にするより、帝国が強大な影響力で自ら牽引(けんいん)してやれば良い。

 

 

……(なお)、王の視点では人口抑制として屡々(しばしば)戦争を肯定(こうてい)しがちだ。

 

手っ取り早い方法であり、戦争は技術を進歩させる側面もある。

 

 

しかし(さら)に広い視野、(すなわ)ち『神の視点』で見るなら、戦争は後々に修復困難な禍根(かこん)を残す場合が多く、最終的な人口抑制効果としては『より長期間平和で娯楽(ごらく)に満ちていた場合』と大して差は無い事に気付くだろう。

 

 

人間は娯楽や趣味といった関心事が多い場合、結果的に自己の負担が増える繁殖(はんしょく)という行為の優先順位は下がるものだ。

 

 

さらに言えば技術の進歩についても、戦争以外に経済という『必要』があれば、必然的に技術革新は求められるものである。

 

 

……では人は(ゆる)やかにでも増え続けるか、と言えば、必ずしもそうとはならない。

 

やがては『苦痛なく死ぬ権利』を求め始めるからだ。

 

全ての人生が(むく)われるなど、現実的にあり得ないのだから。

 

最終的に『死は救済』である。

 

 

そして、そんな時代にもなれば、人は何らかの手段によって肉体を捨て精神的な存在『次の局面』を目指し始めるかも知れず、そうなれば……

 

 

何れにせよ、適正(てきせい)に運営し維持し続けていけば自然の流れとして『行き着くべき先へ行き着く』のだ。

 

 

もちろん、適正に運営し続ける事自体が(・・・)通常は困難(こんなん)の連続ではある。

 

それでも、魔法もプレイヤーも存在する『この世界』ならば、それも可能なのかも知れない。

 

 

閑話休題。

 

 

そんな、未来への期待と不安で浮ついているドワーフ王国にあって、浮かない顔の者もいた。

 

祝賀(しゅくが)ムードの立役者であるブレイン・アングラウスだ。

 

 

理由は、特注で作られた巨大な安眠の屍衣(シュラウド・オブ・スリープ)

 

そこに包まれた霜の竜王(フロスト・ドラゴン・ロード)オラサーダルク=ヘイリリアルの遺骸(いがい)である。

 

 

「すみませんね、最重要軍事機密なんですよ」

 

申し訳なさそうにリおんは言う。

 

 

今やブレインの剣技は『それほどの扱い』である。

 

必然、その技で死んだ遺骸も分析される事を警戒しなければならない。

 

 

「……わかっちゃいるんだがな。国に仕えるってのは、そういう事だ」

 

ブレインの本音としては、ガゼフ・ストロノーフに見せつけてやりたかった。

 

いくら『月を()す指』と悟りを開いたとはいえ、人生最初のライバルという存在は忘れ(がた)い。

 

 

だが、国家としては対抗策を見つけられては困る上、対抗策を見つける可能性が(もっと)も高いのも、やはりガゼフであった。

 

 

(すで)にドワーフ王国とは安全保障条約(帝国は軍事力を、ドワーフ王国は武具や資源を出す)の締結が水面下の予定として決まっており、それに付随(ふずい)する守秘義務も、ブレインや『オラサーダルクの遺骸』については前倒しで適応されている。

 

 

フォーサイトが倒したトランジェリットの遺骸は大々的に持ち帰るが、それで予想される熱狂(ねっきょう)(かく)れる形で、オラサーダルクの遺骸は秘密裏に運び入れられる。

 

 

それ自体に不満はないものの、『挑戦状』を叩きつけてやれない事は残念に思っていた。

 

 

リおんはブレインを気遣(きづか)って言った。

 

「大丈夫ですよ。陛下は理解してくれています。エ・ランテルに王手をかける戦いでは、必ず機会を与えてくれるでしょう」

 

 

「……ま、それもそうだな」

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

度々(たびたび)保存(プリザベイション)をかけ直しつつ、行く先々の街でトランジェリットの遺骸を見せつけるようにフォーサイトは凱旋(がいせん)する。

 

それとなく『帝国が求める冒険者のあり方』を喧伝(けんでん)しながら。

 

 

『冒険者認定制度』の情報解禁である。

 

 

(あらかじ)め皇帝執務室に直送の伝言の羊皮紙(スクロール・オブ・レポート)で報告を行っていたため、帝国側の受け入れ態勢(たいせい)万全(ばんぜん)だった。

 

 

報告を受けたジルクニフは

「アイツら、やりおったぞ!!」

と、成果の大きさに大(よろこ)びで準備を指示。

 

輸送のために部隊を派遣。

 

戦果を聞き、四騎士も『負けていられぬ』とばかり訓練に熱が入っていた。

 

 

ちなみに、フォーサイトが華々(はなばな)しい凱旋(がいせん)をする裏で移動しているのはブレインを含む『機密保持チーム』だけではない。

 

リおん達は先回りする形で帝都入りしていた。

 

何故かと言えば……

 

 

《フォーサイト帝都到着当日》

 

 

みんなー! 今日は来てくれて、ありがとー!!

 

リおんは闘技場で単独ライブを行っていた。

 

 

久しぶりという事もあって当然ながら満員御礼(まんいんおんれい)

 

今はラストの挨拶(あいさつ)をする場面、だが……

 

 

「今日のライブには皇帝陛下もいらしてるけど、最後にサプライズ発表があるんだって! よーく聞くように!!」

 

客席に笑顔を()りまきながらリおんは舞台端の目立たない場所へ移動。

 

 

そう、急な開催は『お披露目(ひろめ)』のサプライズ効果を最大化するためだった。

 

 

ジルクニフが貴賓席(きひんせき)にて立ち上がり、演説が始まる。

 

(かたわ)らのフールーダによって拡声魔法が発動された。

 

 

「いつもながら素晴らしい公演であった。まずは心からの称賛(しょうさん)を! そして観客達よ、時間を()き耳を(かたむ)けてくれる事、(うれ)しく思う」

 

リおんに(なら)ってか、ジルクニフが女性客向けの気品あるスマイルを浮かべると、客席から吐息(といき)()れる気配。

 

 

「さて、皆に聞いてもらいたい事とは、我が国が新たに始める制度と、ある者達の(かがや)かしい成果についてだ。

 

皆は、ドワーフ王国を知っているだろうか。

 

知っての通り、我が国は優秀な軍を有している。

 

だからこそ、常に(すぐ)れた武具を求めてきた。

 

そんな帝国にとって、武具の生産に(ひい)でたドワーフ王国は、重要な同盟国である。

 

だが、ここ一年ほどだろうか、何故か()の国との交流が途絶(とだ)えてしまったのだ。

 

初めはドワーフの都合による一時的なものと思っていたが、あまりに長すぎた。

 

そこで、我が国は調査隊の派遣を決めたのだ」

 

 

ここまでは、ほぼ事実だ。

 

身振り手振りで視線を集め、()えて声に強弱をつけ、聴衆が『聞こう』とする心理を(たく)みに利用するジルクニフ。

 

 

「しかしアゼルリシア山脈にはドラゴンも巣食うという。

 

名乗りを上げてくれたワーカーチームは優秀ながら、そのまま送り出すのは不安に思えた。

 

そこで、我が国の知識や経験を生かした訓練を(ほどこ)してから、出発してもらった」

 

 

徐々に『カバーストーリー』を含む内容へ。

 

最後のインパクトで、それを既成(きせい)事実化するのだ。

 

 

「行く先で彼らは何を見たと思う?

 

なんとドワーフ王国は亜人の軍勢と戦争状態だったのだ。

 

しかも、それをドラゴンが牛耳(ぎゅうじ)っていたという。

 

戦いに巻き込まれた彼らは、生きて情報を持ち帰るためにも懸命(けんめい)に戦った」

 

 

ジルクニフの身振りを合図に、一番大きな扉が開き、4頭の小さな、それでも牛などよりずっと大きい霜の竜(フロスト・ドラゴン)()かれる大型の荷車が入場してくる。

 

上には布で(おお)い隠された『大きな何か』と、それを(かこ)む形で乗ったフォーサイト。

 

観客の多くが初めて間近で見る竜の姿に(おどろ)いた。

 

 

「見よ! その成果を、彼らの勇姿を!!」

 

 

リーダーであるヘッケランと、アルシェが展開した人形達によって布が派手に(めく)り上げられ(ひるがえ)った。

 

 

そこに現れるのは、激戦の(あと)生々(なまなま)しい、首を落とされた霜の竜(フロスト・ドラゴン)トランジェリットの遺骸。

 

客席から、息を()んだ沈黙(ちんもく)の後、どよめくような感嘆(かんたん)の声。

 

 

「改めて紹介しよう! 我が国が(ほこ)竜殺し(ドラゴン・スレイヤー)、フォーサイトだ!!」

 

 

ヘッケランとイミーナの二人がかりで竜の首を(かか)げて見せると、歓声が爆発した。

 

 

(すす)けたワーカーチームだったフォーサイトが、(つい)に帝国史へ名を(きざ)んだ瞬間だった。

 

 

その姿は、多くの者に影響を与えた。

 

ここからは客席の様子を少しご(らん)(いただ)こう。

 

 

「ヘッケラン……お前、やりやがったな!!」

 

普段の時代がかった(しゃべ)り方も忘れ『ヘビーマッシャー』グリンガムは、ヘッケランの快挙(かいきょ)を我が事のように喜びつつ、闘争心を刺激された。

 

 

「……時代しゃのぅ……」

 

『竜狩り』緑葉(グリーンリーフ)の異名を持つパルパトラはヘッケランに、かつての自身を重ね合わせ、しかし、それより難度の高そうな竜の遺骸に『到頭(とうとう)、自分も後進の背を見送る側になってしまったか』と、感慨(かんがい)(ふけ)っていた。

 

 

影響されたのは現役ばかりではない。

 

ワーカーになろうか考えていた者や新人冒険者らの視線も釘付けにした。

 

 

仲間らと共に見ていた、年若い南方風の女性剣士が

「あたし達、あんなふうになれるかな?」

と、期待や不安から吐露(とろ)していたり、

 

神官(クレリック)風の女性が

「……ぅわあ、最近のってすごいわね。私こういうの苦手なんだけど大丈夫かしら」

と不安がっているのを、目の覚めるような真紅の鎧を着た騎士風の少女が

「心配ご無用! マヤ姉は絶対に守ってみせるわ! この 天 才 美少女剣士アs

おっと噂を聞きつけたらしく『漆黒の剣』も王国から来ていたようだ見てみよう。

 

 

ペテルは言葉を発する事さえ忘れ、食い入るように竜の遺骸を、竜の首を掲げるヘッケランを見つめていた。

 

ビラ仕事とはいえ、一度は仕事を共にした、自分と同格か少し上くらいの双剣士。

 

『彼にできて、自分にできないなどとは、言いたくないし認めたくない』と、闘志が体から立ち(のぼ)るかのようであった。

 

 

(……今のままの自分達では、可能とはいえ危険そうですね。何よりアルシェさん、随分(ずいぶん)と急成長したようだ)

 

普段の(やわ)らかい印象はなく、ニニャは魔法詠唱者(マジックキャスター)として冷静な分析をしていた。

 

(これは、本当に移籍(いせき)を考えた方が良さそうですね。姉さんも連れて。……先生どこにいるんですか。エ・ランテルに言伝(ことずて)残して移動しちゃいますよ!)

 

 

「我々も精進(しょうじん)せねば。(たと)え階級が上がっても『ニニャに(たよ)りきり』と言われてしまうのである」

 

そう言うダインの表情は、言葉とは裏腹に、自信に満ちている。

 

「なぁに、俺らなら『すぐ』さ」

 

気障(きざ)ったらしく髪をかき上げ答えるルクルットの眼は、クールな口ぶりに反し燃えていた。

 

 

わざと(・・・)ゆっくり凱旋した甲斐(かい)あって、優秀な冒険者チームを引き入れられそうである。

 

 

演説は続く。

 

歓声を(さえぎ)るようにジルクニフが声を(ひび)かせると、観客達は再び静まり返る。

 

 

「彼らの活躍で! ……我が国はドワーフ王国の窮状(きゅうじょう)を知る事ができた。

 

我らは帝国が誇る最強の剣士、剣術指南役ブレイン・アングラウスを送り込み、遂に!

 

敵の首魁(しゅかい)である霜の竜王(フロスト・ドラゴン・ロード)オラサーダルク=ヘイリリアルを()ち取る事に成功したのだ!!

 

その巨体は、今見てもらっている物より(さら)に大きく……ここに運び入れる事が困難であり、見せてやれないのが残念だ」

 

 

と、いうのは『言い訳』であり、国家機密なのだから見せるわけにはいかない。

 

それでも観客達は『これよりも!?』と驚き、それを討ち取ったというブレインに、帝国の軍事力に畏敬(いけい)の念を抱いた。

 

 

「我が国は重要な同盟国を失わずに済んだ。

 

しかし! 同時に思い知らされた。

 

我々の目が届かない所から、未知なる脅威(きょうい)(せま)る事もあるのだと!

 

そして、それらを見つけるには彼らだけでは足りぬ……

 

よって帝国は、冒険者からの情報買取制度を開始する!

 

未踏(みとう)の地へ(おもむ)き、新たな発見や未知なる脅威、それらの情報を生きて持ち帰ってほしい!!

 

……もちろん、そのような偉業(いぎょう)()()げるには多くの危険や困難が(ともな)い、それを乗り()える実力が必要であろう。

 

 

ならば帝国が『力』を与えよう!!

 

 

知っている者もいるだろう。彼らフォーサイトは、かつてミスリル級と言われていた。

 

それが今ではアダマンタイト級と呼ぶに相応(ふさわ)しい実力を有している。

 

 

(こころざし)ある者を新たなる舞台へ押し上げる力が、帝国にはある!

 

そのための『冒険者教習所』を開設した!

 

次なる英雄を目指す者、

未知に立ち向かう意志ある者よ、

 

 

……扉を叩け!!

 

 

ジルクニフが拳を振り上げ叫ぶと、(あらかじ)め各所に待機していた係員が、一斉にビラを()いた。

 

さながら紙吹雪が舞うかのような景色の中、客席からの様々な声に闘技場が(ふる)える。

 

 

国の未来のため、果断(かだん)にも新たな事業を決定した皇帝ジルクニフへの歓声。

 

「皇帝陛下万歳!」

「帝国の未来に栄光あれ!」

 

 

(くすぶ)っていた挑戦心に火が付いた冒険者やワーカー達。

 

「やってやる、やってやるぞ!」

「オレだ! 次の英雄はこのオレだ!」

 

 

発表は大成功。

 

その日のうちからビラを頼りに受講希望者が列を成したのだった。

 

 

 

帝国の動きに各国は静観、上辺(うわべ)だけの祝福を書簡として送った。

 

その中で、諸手(もろて)を挙げて歓迎、思いつく限りの称賛と祝福の声を送ったのが法国であった。

 

『ようやく自分達の負担も少しは軽くなるかも知れない』と。

 

 

……ちなみに法国は知らない事だが、プレイヤーの血筋という強みでは法国が上であるものの、存命中のプレイヤー本人が在籍(ざいせき)する以上、『情報』の面に()いては帝国が上かも知れない。

 

法国は失伝や歪曲(わいきょく)した情報も多い。

 

 

帝国は法国からの祝福に対し、特に思う所(・・・)もないので形式通りに返答を送り、やり取りは終了した。

 

 

双方、『未来の両国関係』を予想だにせぬまま……

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「みんな、お疲れ様! それと『正式なアダマンタイト昇格』おめでとう!!」

 

 

冒険者組合への根回しも完璧であったため、フォーサイトはプロパガンダの意味も()ねた『式典』という形の特例で(・・・)アダマンタイト級の認定を受け、正式な冒険者となっていた。

 

 

今は闘技場内の一室を借りて話している。

 

 

……当然、この後は歌う林檎亭に戻り(アダマンタイトに昇格したため、最後の利用となるかも知れないが)打ち上げをする予定ではある。

 

とはいえ、もはやフォーサイトは『ヒーロー』である。

 

宿に戻れば、静かに話しなどしていられない可能性もあった。

 

 

「ありがとよ。まぁ、お前さんのおかげってのがデカイと思うがな」

 

「感謝していますよ」

 

 

『実際その通り』という部分はあるのだろうが、フォーサイトの面々は謙虚(けんきょ)であった。

 

 

リおんは今後の事を(たず)ねた。

 

「予想外に大金星を()げちゃって、結果的に制度の発表も前倒しになりましたけど……大森林の調査、続けてくれます?」

 

この展開は考えていなかったリおんは、少し困り顔だ。

 

 

発表はジルクニフの決定で前倒しになったのだ。

 

元々の予定では大森林調査が恐らくは一番の大事(おおごと)になるだろうと考えていたため、その結果を受けての発表となるはずだった。

 

 

だが、ジルクニフも考えたように

『ドラゴン退治は見栄(みば)えが良い』

 

 

派手に宣伝できるかさえ不透明な大森林調査の結果に期待するより『安全』であろうと……まぁ、戦略的に考えれば当然の判断だった。

 

 

だが、そうなると『フォーサイトは仕事を()たした』とも言えてしまう。

 

そもそもの契約内容は『広告塔』だったのだから。

 

 

しかし、

 

「やりかけの仕事が残ってるのも気分(わり)ぃだろ。これまでの情報とかノウハウは俺らが持ってるんだから、他に任せたら二度手間になるかも知れねーし。『まだ完了してない』って事で、やるさ」

 

ヘッケランの言葉に皆、(うなず)く。

 

それがフォーサイトの総意だった。

 

 

「ありがとうございます!……じゃあ少しの休暇を(はさ)んで、次の調査でフォーサイトは解散って事になるんですね……ロバーさんは孤児院、アルシェは魔法省……お二人は、どうするんです?……僕としては教習所の教官とかお願いしたいんですけど」

 

途中しんみり(・・・・)しかけて、それを誤魔化(ごまか)すように提案するリおん。

 

 

二人は『教官』などと言われて、たじろいだ。

 

「……いやあ、そんな、カッチリした仕事ってぇのも……」

 

「……ガラじゃないっていうか……ねぇ?」

 

 

「カッチリって言っても『冒険者の』教官ですよ? 今までのお二人でいいと思いますけど……」

 

と、逃げ道を(ふさ)ぎにかかるリおん。

 

 

「ま、まあ、そう、だなぁ……」

「い、一応、考えとくわ……」

 

 

そんな、ある意味で息がピッタリの二人に、どこか生温かい微笑みでロバーデイクが、

 

「……転職の事より先に、まずは『二人』の事ですよね? 調査が終わったら、すぐに()を? 私であれば喜んで仲立ちしますよ」

 

 

「「ロバー!」」顔を真っ赤にして怒る二人。

 

 

「……へ? 式?」

 

キョトンとするアルシェ。

 

 

「あれ、アルシェ気付いてなかったの?」

 

と、さも当然の様子なリおん。

 

 

やっと意味を理解し

 

「……ぇえ!?」

 

とアルシェは驚いた。

 

 

顔色一つ変えずに『最初から知ってますよ』という表情のリおんに、イミーナが、

 

「ちょ、アンタ何で知ってんのよ!?」

 

 

リおんは少し悪戯(いたずら)っぽい顔をして、

 

「……いやあ、だって、それなりの期間一緒に活動してましたし……僕、耳いいですから

 

と、舌を出して逃げる態勢。

 

 

「こ、コラー!!」追うイミーナ。

 

 

エルフ達は「あらあら」「うふふ」と微笑ましそうに見ている。

 

 

そんな光景を、アルシェは、

 

(……もうすぐ、フォーサイトの活動も終わり。だけど、こういう雰囲気だけは、形を変えても続いてほしい)

 

そう思いながら見つめるのであった。

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