【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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汝、泥ノ中ニ華ヲ見ム

 

「陛下、ガゼフ・ストロノーフが面会を求めております」

 

貴賓館の居室にて、ロウネがジルクニフに取り次いだ。

 

 

ガゼフの名に、ブレインもピクリと反応した。

 

 

ジルクニフが問い返す。

 

「何、ガゼフが?」

 

勝手に駐留を決めた事への抗議だろうか、と、四騎士も含め張り詰めた空気になる。

 

 

ジルクニフは許可を出した。

 

「……良かろう、通せ」

 

 

五宝物を(まと)い入室してきたガゼフの覇気に、緊張感が高まる。

 

 

ブレイン、ガゼフから目を離さず(つぶや)く。

 

「……ガゼフ……」

 

ブレインの存在に、ガゼフは目で『……済まんが、今は決意を果す事が優先だ』と告げ、ジルクニフに視線を戻した。

 

 

『まさか、ここでやる(・・)気か』と一同が額に汗を(にじ)ませていると、ガゼフは

 

「お目通り頂き、感謝いたします」

 

理性的な言葉に、ジルクニフも(こた)える。

 

「良い。話があるのだろう? 聞こう」

 

 

「……私の独断として、討伐軍に参加いたします」

 

 

思わぬ言葉に驚くジルクニフ。

 

「な……嬉しい限りではあるが、良いのか」

 

 

「……私が賊の討伐に出撃していた事は、ご存知でしょうか。その出撃前に陛下より書を(たまわ)りまして、内容は、遺書でありました」

 

 

「……ランポッサ……」

 

最後の最後に(かん)()えを見せたランポッサ三世に、ジルクニフは少し評価を改めた。

 

『凡王だったかも知れないが、愚王ではなかった』と。

 

 

ガゼフは続ける。

 

「その中の、王国のための最善を()せ、という最後の御命令に従いたく存じます。次王の意に反するものであったなら、戦いの後、如何(いか)(よう)にも処罰を受けましょう」

 

 

「……見上げた男だ。戦後に望むなら亡命を認めるところだが、どうせ望まぬのだろう?」

 

 

「は。お気持ちは有り難く。しかし、例え首を落とされるとも筋を通したく思います」

 

 

ジルクニフは、()瀬無(せな)さげに「……つくづく王国には勿体(もったい)ない男だ」と呟いた。

 

 

帝国側の全員が、本題は終わったものと思っていた。

 

だがガゼフは張り詰めた雰囲気を崩さず、次なる話を切り出した。

 

「それと、皇帝陛下にお聞き頂きたい事が」

 

 

「ん、何だ」

 

 

「私が討伐に向かった『賊』の件です」

 

 

そこから始まった『カルネ村報告』は、帝国側に驚愕(きょうがく)激憤(げきふん)(もたら)した。

 

 

(いわ)く、村々を襲っていたのは帝国兵に偽装された法国兵であった。

 

曰く、カルネ村住民の奮闘により引っ張り出された本隊は自分(ガゼフ)を暗殺するための特殊部隊・陽光聖典だった。

 

曰く、自分に先んじて村を救った旅の魔法詠唱者(マジックキャスター)に魔樹の件を話したところ「法国は魔樹を手中に収めようとしているのでは」と疑義を(てい)した。

 

 

……ジルクニフから、表情が消えた。

 

四騎士ら、特にバジウッドが『発火するのではないか』という怒りの表情であるのに対し、血の気の引く『絶対零度』の顔である。

 

尚、リおんは悲憤(ひふん)慷慨(こうがい)の様子で項垂(うなだ)れていた。

 

床に落ちる涙を見て、ジルクニフは体温を感じさせない声で

 

「……ロウネ」

 

 

「はっ」

 

リおんの手前、ジルクニフはロウネに手早く書いたメモを、指を強張(こわば)らせながら渡した。

 

法国への避難民は現在の人数より少なく申告し、実際の人数は倍に増やせ』と。

 

 

(法国に秘密手段があろうとなかろうと、帝国の作戦が失敗した時、法国には想定以上の避難民が雪崩(なだれ)()む事になる。

 

魔樹のターゲットにされるなり、自国を人類の守護者と信じる国民の前で『難民を切り捨てる姿』を(さら)すなりしたら良い。

 

そして帝国民にはナザリック教徒も多い。

宗教紛争で『人間が生み出す地獄』を思い知れ。

 

それら全て、法国の闇として難民の子孫が語り()いでくれるだろう。

 

 

 

……帝国の『死に際の呪い』を受けるが良い!!!)

 

 

内心では怒髪(どはつ)衝天(しょうてん)、しかし忍気(にんき)呑声(どんせい)でジルクニフが(こら)えていると

 

「陛下! 失礼します!」

 

取り次いでもらう時間も()しいというように、帝国騎士が一人駆け込んで来た。

 

 

「どうした」

 

ジルクニフは動じずに問うた。

 

 

「フールーダ殿がお戻りでございます」

 

内容だけ聞けば大した事はない。

 

だが、その表情は恐怖と興奮が()()ぜになった様子だった。

 

 

「……何かあったか」

 

雰囲気から『悪いもの』ではなさそうだとジルクニフは感じた。

 

だが騎士は、

 

「私などが飾り気もなく言葉にするより、ご覧頂く方が(よろ)しいかと」

 

騎士は、釣り上がりそうになる口角を(おさ)えているらしい。

 

 

「……ふむ、良かろう」

 

今の気分が少しは払拭(ふっしょく)できるかも知れないと、ジルクニフはフールーダを出迎えに向かう。

 

 

「……こ、これは」

 

貴賓館の入口まで来たジルクニフは、フールーダが率いて『行軍』して来たであろう一団に言葉を失う。

 

 

「遅れて申し訳ございません、陛下」

 

肩に(かつ)がれていたフールーダが降り、()べる。

 

「地下にいたもの含め、死の騎士(デス・ナイト)10体を文字通りの『死兵』として連れて参りました」

 

 

フールーダは魔法省地下の死の騎士(デス・ナイト)を死の宝珠で支配すると、そのままカッツェ平野へと(おもむ)き負のエネルギーを(たくわ)えさせ、リおんから(ゆず)り受けた『呪われた呼び鈴』をいくつも消費、新たな死の騎士(デス・ナイト)を支配しては蓄積(チャージ)、支配しては蓄積(チャージ)を繰り返し、指輪の力で不眠不休、合計10体もの死の騎士(デス・ナイト)を支配下に置いて帰還したのだ。

 

ガゼフ相当の『死兵』を10体……人間国家の部隊としては前代未聞の兵力である。

 

陛下、魔樹に死をくれてやりましょうぞ

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

《聖王国 聖騎士団本部・団長室》

 

 

「ダメだって言ってるじゃないですか!!」

 

 

「……いや……しかしなぁ……」

 

 

レメディオス・カストディオは妹のケラルトに猛反発されていた。

 

魔樹討伐の件だ。

 

 

「聖騎士団の団長なんですよ姉様は! 軽々しく『他国に遠征』などと考えないで下さい!!」

 

 

腕は強いが頭は弱いレメディオス。

 

頭の良い妹に理詰めで来られると何も言えない。

 

言ってやりたいが、何を言ったら良いのか分からない。

 

 

懇々(こんこん)(さと)すケラルト。

 

だが、姉を止めたい本当の理由は……

 

 

レメディオスが説教を受けていると、窓の鎧戸(よろいど)越しに外を上へと走る影。

 

ハッとして駆け寄りレメディオス、勢いよく窓と鎧戸を開いて叫ぶ。

 

「ネイア・バラハ! 騎乗も離陸も許可していないぞ!!」

 

 

見上げる先で空中に静止した、青白く、すらりとした竜の背に乗るネイアは叫び返す。

 

「すみません団長! でも行かせてください!」

 

 

「お前が行ってどうなる! 難度300の化け物だぞ!」

 

 

「わかってます! 私が行っても役に立たないかも知れません! けど、ヘジンマールのブレスなら少しは効くはずです!」

 

ネイアは決意に満ちた表情で訴える。

 

戦いたいんです! 守りたいんです! お父さんやお母さん……この国の人たち……立ち向かう人たちの力になりたい! 帝国や王国だけの問題じゃありません! 他の国の人だろうと、助け合うのは当たり前じゃないですか!!

 

 

「ネイア・バラハ!」

 

レメディオスの声にも、ネイアの瞳は揺るがない。

それを見て、

 

「…………フッ……私も乗せて行け!!

 

 

「え、姉さ」

 

 

ケラルトの制止も間に合わず、窓枠に足をかけ高く跳んだレメディオスは、軽やかにヘジンマールの背に乗った。

 

 

「ケラルト! 確かに、私に難しい事は分からん! だがな、私にも分かる事がある!」

 

 

「な、何を言って」

 

 

「化け物を帝国任せにして、倒せなかったら聖王国は、お前やカルカ様はどうなる!? きっと私は後悔する! それに……」

 

レメディオスは、ケラルトに信頼を込めた眼差しで笑って言った。

 

「……お前とカルカ様がいれば、聖王国は大丈夫だ!!

 

 

見上げるケラルトは、パクパクとして言葉を探すが、やがて観念したように本心で叫ぶ。

 

「…………必ず……必ず生きて帰って! 姉様!!

 

 

「フン! 私を誰だと思ってる! 今年の冬は安泰(あんたい)だぞ! 大量の『(まき)』を持って来てやる!! ネイア、飛ばせ!」

 

 

「はい! お願い、ヘジンマール!!」

 

 

「おう!!」

 

二人を乗せたヘジンマールは、魔法詠唱者(マジックキャスター)飛行(フライ)では不可能な疾風の(ごと)き速さで飛び去った。

 

 

 

後ろへと過ぎ去る景色と風の中、レメディオスは言った。

 

「……真の行動は迷いもためらい(・・・・)もどうでも良いという放棄(ほうき)の中にしかない、か。時には勢いとヤケクソも大事だな

 

 

「……誰の言葉です?」

 

 

「さて、な。忘れた。それより、良い(つら)をするようになったではないかネイア。お前のおかげか? タジンマール」

 

 

「わかんないけど、ネイアのためになれたなら嬉しいかな。持ちつ持たれつ補い合うのが『相棒』ってもんだし。……ところで俺『ヘジンマール』だから。団長さん」

 

 

「ん? おぉ、そうだったな。スマンスマン」

 

 

「……団長、絶対覚える気ないですよね」

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

《ナザリック第9階層 廊下》

 

 

「あらデミウルゴス、その書類の束は?」

 

 

「やぁアルベド。これかい? ほら例の、恐怖公の」

 

 

アルベドの笑顔が『自然な微笑み』から『貼り付けた人工物めいた笑顔』に変わった。

 

静電気か、髪の毛が少し乱れたし、腰の翼の羽毛が『ぶわっ』となった。

 

 

そ、そう。例の件、ね。ところでデミウルゴス、はい

 

アルベドは、どこから取り出したかウェットティッシュを一枚、デミウルゴスに差し出す。

 

左手に持っているパッケージには

完全除菌!!

と赤い字でデカデカと書いてある。

 

 

「……ぁー、ありがとうアルベド。でも」

 

 

「    」

 

 

アルベドの圧に負けて、デミウルゴスは受け取った。

 

 

(確かに見た目はアレだが、君が思うほど恐怖公自身は汚くはないよ? アルベド)

 

 

とは思ったものの、デミウルゴスは紳士であるため、やや半泣きの淑女(アルベド)にわざわざ言ったりはしなかった。

 

 

何故こうなっているかと言えば、やや時を(さかのぼ)りモモンガの「皆で遊ぼう」

 

(意訳としては『一緒に遊ぼう!』守護者の解釈としては『この世界を(もてあそ)んでやろう!』)

 

宣言の際、デミウルゴスが『影の悪魔(シャドウ・デーモン)より費用対効果が優れた方法』として『恐怖公の眷属(けんぞく)を使った情報収集』を提案した結果だ。

 

その時も、やはりアルベドは『ぶわっ』となった。

 

 

さて、それはそうとデミウルゴスは、これまでに分かった事を()(つま)んで話した。

 

「聖王国は判断が少し遅れたものの、一番の実力者である聖騎士団長を送り出したようで、まぁ及第点(きゅうだいてん)だろう。王国は(ひど)いね。一応、第二王子は生きてるようだけど、状況を把握(はあく)できてないし国家としては麻痺状態。体制を立て直せた頃には『魔樹』騒動も全部終わってるんじゃないかな。……一番どう言い表して良いのか分からないのは竜王国かな」

 

 

資料をペラリ、ペラリとする(たび)、アルベドは少し『ビクッ』となり、たまに『ぞわわぁ』となっているが、竜王国のところで

 

「あら、ナザリック教の国なのだから、一番まともな国ではないの?」

 

アルベドは『キョトン』とした。

 

 

「……うん、てっきりそう思っていたのだけどね。確かにナザリック教徒は多いんだが聖堂騎士団というのは国の騎士団ではないらしい。貧しい国庫から寄進という形で涙ぐましい支援はしているようだけど、あくまで有志の団体のようでね。国の兵力は『残念』の一言で、魔樹の討伐には参加できないそうだ」

 

 

それを聞いてアルベドは(あき)れるやら腹立たしいやらという様子で

 

「……竜王国民の目は節穴なのかしら。それとも『歌の神』のために自己犠牲できないほど信仰心が弱いのかしら」

 

 

「まぁまぁアルベド。リおん様が本気で正体を隠しているなら仕方ない面もあるよ。それに、重要なのは『それも含めてリおん様の遊び(・・)』という事じゃないか」

 

 

「それは……確かにそうね」

 

そう言いつつ、まだ不服そうではある。

 

 

「さて、あとはリおん様の活動拠点たる帝国だが、どうやらリおん様は帝国の発展をお望みらしい。皇帝を通して様々な革新をお与えになられたようだよ」

 

 

「まぁ、なんて恵まれた連中かしら。帝国民は全てが全てナザリック教徒ではないのでしょう? それほどの幸福を享受(きょうじゅ)しているなら今すぐ改宗するべきだわ」

 

面白くなさそうなアルベドの意見に、しかしデミウルゴスは楽しそうである。

 

「アルベド、そこも実は『遊んで』いらっしゃるみたいなんだ。帝国には、そこそこ大きな闘技場があって……まぁ今や、ほぼリおん様のコンサート会場だけど」

 

 

「待って。信徒でもないのにリおん様の歌を聞けるの? 贅沢(ぜいたく)すぎるわ!」

 

 

「いやいや、ご本人が楽しまれている事だし、そこで行われるライブは『布教ゲーム』の一環らしい」

 

 

「! まさか!?」

 

 

「調べてみると面白い事が分かってね。帝国内のリおん様ファンは国民の6割、うち約半数が信徒で、実に国民の3割がナザリック信仰している。1年半前は0.1%程度のマイナー宗派だったのに、今も増加し続けている」

 

 

「……至高の存在たる証明ね。下僕(しもべ)を動員するまでもなく魅力のみで国一つを掌握(しょうあく)しつつあるなんて」

 

 

「それでも、ご本人が身分を隠しておられるため、皇帝直属の楽士なんて、ちっぽけな地位のままでいらっしゃるがね」

 

 

「……皇帝は見る目がないのかしら。バカなのかしら」

 

 

リおんとジルクニフの『あの日の会話』は二人だけの秘密であり、誰の口にも上る事はないため、ナザリックの調査結果としては『皇帝はリおんの正体を何も気付かず雇っている』という事になってしまった。

 

 

「うん、鈍感だとは思うけど、低い地位に甘んじておられるのもリおん様の策に見える。リおん様は様々な技術や知識をお与えになられたけど、求心力の低下を懸念(けねん)して名を()せるよう皇帝に言っておられる、と『もっぱらの噂』らしい」

 

 

「……伏せてないじゃない」

 

 

「鈍感ながら皇帝もリおん様に心を奪われてはいるんだとは思うよ。褒賞も多額には受け取ってもらえないと悩んでいるくらいだから、良心の呵責(かしゃく)で口が軽くなっているんだろう」

 

 

「……秘密を守る事もできない無能って話ではないのよね? 『策』というくらいだから」

 

 

「恐らく『仕向けて』おられるのだろう。結果、求心力を分散する事なく、ご自身の立場を強化なさり、周囲には『そのような信頼関係で帝国は成り立っているのだ』と士気向上まで……まさに神機妙算」

 

 

「なるほどね。その方法からも帝国の発展をお望みなのが読み取れるわ」

 

 

「うん。ただ吸い尽くすだけなら、もっと効率的なやり方もあるからね」

 

 

ここまでの話で、何か思うところがあったのか。

 

アルベドは、

 

「……デミウルゴス。モモンガ様への報告後、作戦会議をしない?」

 

 

「……モモンガ様は静観なさるという方針では?」

 

 

「えぇ。だけど『皆で遊ぼう』と(おっしゃ)って下さったわ。何よりモモンガ様は私達の成長をお望みよ……今のままで良いのかしら」

 

 

「それは……」

 

 

「それに、機を見て接触とは仰られたものの、あれ以来、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を見てばかり」

 

 

「……我々が自ら動く事をお望みである、と?」

 

 

いや、常にリおんの近くに誰かがいるため、接触できないだけである。

 

あの骸骨は、深くは何も考えていない。

 

 

「リおん様がナザリック教という概念で世界を掌握しようと考えていらっしゃるのは間違えようもない事。その上で私達にできる事は何かしら」

 

 

いや、あの犬っころも何も考えていない。

 

確かに帝国の発展は望んでいるが、頭の中身は『みんなでハッピーハッピー』程度である。

 

 

「デミウルゴス。『舞台演出』なんてどうかしら」

 

 

「ふむ、なるほど。それならばリおん様の邪魔になる事もありませんね」

 

 

「モモンガ様へのサプライズイベントにもなるわ」

 

 

「流石はアルベド。モモンガ様にも楽しんで頂くのですね」

 

 

などと相談していると、カツン! と(かかと)を鳴らす音。

 

 

ンゥンン!……その話、私にも一枚噛ませて頂けますかな

 

 

「……やぁ、パンドラズ・アクター」

 

デミウルゴスは内心『ぅわあ』と思った。

 

自身の創造主も関わっていた事から来る『共感性羞恥(しゅうち)』であった。

 

 

だが横目でアルベドを見ると、

 

(……アルベド、まさかアレを格好良いとは言わないよね?)

 

真剣な表情で目を輝かせ、メモを取るアルベドの姿があった。

 

 

読者諸君も勘違いしているかも知れない。

 

確かにパンドラはダサい。

 

しかし、そのダサさは言わば『豪華食材をてんこ盛りしたクドさ』である。

 

一つ一つの『要素』は、確かに格好良いのである。

 

 

そして『守護者統括とはアイドルのような存在であるべき』と考えるアルベドの目には、一つ一つの『要素』が見えていた。

 

それらを自分のものとして活かそうというだけの話であり、別に『パンドラのようになろう』としているわけではないので、どうか安心してほしい。

 

 

《魔樹討伐戦当日 竜王国・女王執務室》

 

 

「……(よろ)しかったのですか?」

 

 

「何がじゃ」

 

 

「魔樹ですよ、魔樹。滅びるそうですよ? 世界」

 

 

「……明日、世界が滅びようとも、ビーストマン共は待ってくれん」

 

 

「名言っぽく言ってますけど、全然『良い話』じゃないですよね」

 

 

「じゃあ何か!? ビーストマンに協力でも求めんのか! ぁあ!?」

 

 

「ま、確かに。信じて送り出した使者がオヤツになるだけでしょうな」

 

 

「そうじゃろ。なら仕方ない」

 

 

「……いえ、ね? 討伐、成功しちゃったら帝国が怖いなぁ、とか、失敗したらビーストマン抑えても後ろから潰されるなぁ、とか、思いまして。何か良い考えなどな」

 

 

「……」

 

 

「なに酒瓶取り出してんですか!? 仕事中はダメだって言ってるでしょう!!」

 

 

「うるさい飲まずにやってられるか!! 大体なぁ! クレマンティーヌ殿がんばってるんじゃぞ!? 今以上の話して(さじ)投げられたらどうするんじゃ!!」

 

 

「……思ったんですが、陛下クレマンティーヌ殿に(こだわ)りますよね。寄進とか色々。もしかしてソッチの趣味ですか?」

 

 

「殴るぞ。……考えてもみろ……この国で命かけて戦ってくれるやつでロリコンじゃないの聖堂騎士団だけではないか!」

 

 

「そうですな。カネもなく、領地はビーストマンに襲撃されてばかり、陛下の『その形態』で釣るより他ありませんからねぇ」

 

 

「形態いうな。というか、誰のせいだと思っとるんじゃ! お前がやれと言ったんじゃろがー!」(三段蹴り)

 

 

「ぐは! な、何を……当然の選択ではありませんか!」(コブラツイスト)

 

 

「ぅぐぎぎ、ほ、他の方法を考えるのが、お前の」

 

 

「他に、方法が、あると思うんですか!?」ギリギリギリ

 

 

「ぉごごご、ぎぶ、ぎぶぎぶ」

 

 

「ふん!」(勝者のポーズ)

 

 

「がふっ……ぜーはーぜーはー」

 

 

 

「お取り込み中、失礼致します」

 

 

「えっ、誰!? 執事!?」

 

 

「まぁ! 素敵なオジサマ!!」(ハート目)

 





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