【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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ほぼpixivの更新に追いつかれてますねぇ…


幕間 恐らく、それは世界の敵

 

《イビルアイが王都でアルスと会う数日前》

 

 

sideピニスン

 

 

「今日はいい天気だなぁ」

 

 

こんな日はいい事ありそうだなぁと、気分よく過ごしていた。

 

……たとえば封印されてる魔樹が勝手に()れてくれたりとか……は、無理か。

 

 

今のところ平穏無事だけど、魔樹の周りは枯れたままだし、いつかはまた目を覚ましちゃうんだろうな。

 

 

その時はきっと、またあの人たちが来てくれるはず。

 

でも、やっつけてくれるのが一番なんだけどなぁ……

 

無理なんだろうなぁ……誰かに倒せるとは思えないし。

 

 

平和だけど、ダークエルフは帰って来ないし、トレントも寄って来ないし、栄養状態が悪いせいか、新しく同族が生まれる気配もないから、正直さびしい……

 

せめて、わたしの寿命が終わるまで復活しないでいてくれたらなぁ……

 

 

そんな事を思いながら日光浴していると、

 

「あれ?」

 

少し離れたところに肌が黒い人が見える。

 

こっちには気づかないで歩いてる。

 

 

もしかしてダークエルフが帰って来た!?

 

 

ワクワクしながら近付いて声をかけた。

 

「ねぇキミ! こんにちは! もしかしてダークエルフ!?」

 

 

「……おっと」

 

 

「おっと?」

 

 

「あぁいや、失礼。こんにちは。残念ながらダークエルフではないよ」

 

黒いフードをめくって耳を見せてくれた。

 

 

なんだ……違うのか……

 

また昔みたいにおしゃべりしたいなぁ……

 

 

とりあえず、せっかく会ったんだから警告してあげなきゃ。

 

「ねぇキミ人間? どうしてこんなところに? これ以上奥に行くと危ないよ。怖い魔樹がいるから」

 

 

「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよピニスン。私は、その魔樹に用があるんだ」

 

 

「あれ、なんでわたしの名前……」

 

 

「あぁ、済まない。一方的に知ってるだけさ。まぁ、誰に対してもそうだけどね。さて、勝手に忘れるのを待っていたら彼らが来てしまう。悪いけど……記憶を消させてもらうよ

 

 

「え」

 

 

記憶操作(コントロール・アムネジア)。カクカクシカジカ、今日、君は誰にも会わなかった」

 

 

……マルマル……ウマウマー……

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

《エ・ランテル アンデッド事件の一週間前》

 

 

sideカジット

 

 

「やぁ、カジット」

 

 

「……おぅ、お前か。アルス」

 

 

やつの名はアルス・マグナス。

 

わしと同じズーラーノーン十二高弟の一人。

 

 

とはいえ、やつについて知る事は少ない。

 

ただでさえズーラーノーンは秘密主義者の寄り合い所帯。

 

その中でも、やつは輪をかけて手の内を見せぬ。

 

 

自らに呪いをかけてまで相手の記憶から消えようとするなど……大したやつよ。

 

実際、今こやつの顔を見るまで名前も思い出せなかったわ。

 

 

そして、やつの研究テーマすら『状況魔術』というキーワードくらいしか知らぬ。

 

 

だが、そんな事はどうでもよい。

 

わしの重要な取引き相手なのだから。

 

 

「それで? 今日はどんな依頼だ」

 

 

こやつの依頼を受ける事で、わしは『足の付かない死体の入手経路』といった情報や儀式に必要なマジックアイテムなど、多くのものを得てきた。

 

 

依頼の内容自体は不可解なものばかりで、指定の日時と場所(主に雑踏)で『この小銭袋を落として来い』だの『〜と(つぶや)いて立ち去れ』だの、それで何がどうなるか皆目見当(かいもくけんとう)も付かない。

 

 

「話が早くて助かるよ。でも今回は少し難しいよ?」

 

 

「ほぅ? 面白い。聞こうじゃないか」

 

 

「君の儀式で、私が指定するアンデッドを創造してほしい」

 

 

「……ふむ、なるほど。だが珍しく、随分(ずいぶん)と先の話をするのぅ」

 

 

「いや『先』でもないよ。今回は報酬を前払いするからね」

 

そういうと、やつは(ふところ)から

 

「これ、なーんだ」

 

取り出した『ソレ』を人差し指でクルクルと……

 

 

「そ、それは叡者(えいじゃ)額冠(がっかん)!? 何故ソレを!」

 

 

驚くわしに、やつは機嫌良さそうに語る。

 

「つい最近、法国で『破滅の竜王が復活する』という予言が出てね、それを帝国のワーカーチームが先に見付けたらしく、その情報を元に巫女を使った遠隔視を行ったわけだけど……運悪く(・・・)妨害魔法に引っ掛かって神殿ごとボンっ! たまたま(・・・・)そこに居合わせたんで、ありがたく頂戴(ちょうだい)してきたのさ」

 

 

「……運悪く(・・・)たまたま(・・・・)、のぅ……それはまた幸運(・・)な事もあったものじゃな」

 

 

そんなわけあるまいよ。

 

……もしや、やつの研究テーマを応用すれば、そんな事態を予測するのも可能という事か。

 

はたまた、その状況自体が……まぁ良い。それより、

 

 

「おかげで計画を前倒しできる。感謝するぞぃ」

 

 

この街には『あらゆるマジックアイテムを使える』という生まれながらの異能(タレント)持ちがいる。

 

そやつを(さら)ってきて使えば……

 

 

 

「あぁ、本当に急いだ方が良いよ(・・・・・・・・・・・)。すぐ動けなくなる(・・・・・・)だろうから」

 

 

 

「……どういう意味じゃ」

 

 

「その『破滅の竜王』、『滅びの魔樹』というんだけどね? 危機感を抱いた帝国が各国と合同での討伐を呼びかけてるんだけど、その関係で王国と会談を行う事になってる。……ここ、エ・ランテルでね」

 

 

「な……」

 

 

「しかも、その魔樹がいるのはトブの大森林。間違いなくエ・ランテルは最前線基地になるだろうね。そしたら、常に屈強な各国の兵士が街に(ひしめ)く事になる」

 

 

そんな事になったら、わしの計画が!?

 

 

 

だからさ、カジット……会談、潰しちゃおうよ

 

 

 

そう言って、やつはどこから取り出したか作業机の上に紙を広げた。

 

……これは、街の見取り図?

 

役人や軍人が使うような詳細なものではないか。

 

 

依頼内容を伝える。骨のハゲワシ(ボーン・ヴァルチャー)3体、疫病爆撃種(プレイグ・ボンバー)1体を使い、一週間後、指定の場所を爆撃してほしい

 

 

やつは笑みを深めると図面の一点を指差し、

 

 

 

「……標的は、貴賓館・談話室

 

 

 

わしらは二人で笑みを交わした。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

《カルネ村襲撃前日の夜 トブの大森林》

 

 

side漆黒聖典第一席次

 

 

「……おかしいな。もうすぐ着くはずなんだが」

 

 

我々は帝国が見付けた『破滅の竜王』を目指し、鬱蒼(うっそう)としたトブの大森林を進んでいた。

 

 

メンバーは第九、八、七席次、第五席次、第三席次と第二席次、カイレ様、そして私だ。

 

 

『冒険者認定制度』を含めた帝国の『飛躍』は、法国にとって喜ばしい限りではある。

 

だが法国が(つか)んでいる情報を考えれば、今回ばかりは相手が悪い。

 

 

巫女による探知の失敗と神殿の大爆発……あまりに未知数な敵の力を思えば、せっかく成長を()げつつある帝国の戦力を無駄に犠牲にしかねない。

 

そしてケイ・セケ・コゥクでの支配に成功すれば、我が国は強大な戦力を手に入れる事ができる。

 

かねてより計画されていた王国戦士長の暗殺を実行すれば、帝国は王国の併合(へいごう)に一歩前進できるのだから、たとえ(だま)すような形になっても、いずれは理解してくれるであろうというのが神官長達の判断であった。

 

 

全ては、人類のために……

 

 

それはそうと、探知に失敗したとはいえ位置に関しては把握(はあく)しているのだから、発見できないわけはないはずなのだが、目的地の『枯れ木の森』は見えてこない。

 

何故だ……

 

 

先程から第五席次、クアイエッセにクリムゾンオウルで調査させているが、曰く『方角は合っているし進んでいるが進んでいない(・・・・・・)』らしく、第三席次の探知にも怪しい痕跡(こんせき)は見つからず、原因は分からない。

 

 

それに第二席次が目眩(めまい)と吐き気に襲われ、戦力として期待できない。

 

こちらも謎だ。

 

 

「……やはり帰るべきだと思うが? 一人師団から魔獣を借りれば……」

 

 

「……大丈夫、だ……ぅ……逆に、ここまで来た、ら、行くも、帰るも、キツいのは、同じ、だ……邪魔は、しない……」

 

 

不測の事態ばかりだ。

 

万が一にも支配が失敗したなら、漆黒聖典隊長に()く者が貸与(たいよ)される不壊の神器……真の力を解放すれば一度だけ、使用者の命と引き換えに如何(いか)なる者さえ必ず殺すと伝えられる槍、本来なら亡国の危機にのみ使うべきロゥギィ・ヌゥスの使用すら覚悟している。

 

失敗は許されない。

 

そんな、(いま)だかつてない緊張感を抱きつつ、静寂(せいじゃく)たる森の中を進む我らに、突然

 

 

 

こんばんは。良い夜だな

 

 

 

「誰だ!?」

 

即座に全員が警戒態勢。

 

 

声が聞こえた方に目を向けると、そこに

 

「……魔法詠唱者(マジックキャスター)?」

 

十数歩も離れてはいないだろう先、(しげ)みをかきわければ音で気づくはずなのに、いつからいたのか……

 

黒いローブのフードから(のぞ)く顔は、黒い肌をしている。

 

ちらりと見える瞳が、金色に妖しく光る。

 

首にかけている聖印は、ナザリック教のものだった。

 

 

その男は、こちらの誰何(すいか)にも応えず、訳の分からない話をし始める。

 

「……世界というのは、どんなものだと思っている? 縦横奥行きの三次元空間が時間軸に沿って移ろい行くイメージか? それともパラパラ漫画のように時間平面ごと断続するものだと思うか? ……そのどれもが正解で、そのどれもが一面的な捉え方だ。世界とは水面のようなものだ。水面に石を投げ込むと波紋が広がるだろ? 世界を見るというのは、その波紋を逆再生して一点に収束させるようなものだ。つまり、その収束点を任意に調整できる存在は

 

 

「何を言っている! 質問に応えろ!!」

 

私が怒鳴り付けると、ヤツが口を開くより先に第二席次が

 

ごえぇぇ!?!!

 

激しく嘔吐(おうと)して倒れ込んだ。

 

「……きひひ、まわる、まわる、まっくら、ぐーるぐる……ひひひ、おわりだ、おしまいだ……」

 

 

「おい! どうした、しっかりしろ!!」

 

 

済まないね。私の話が退屈だったかな。……私が何者か、と()いていたな。ふむ、良いだろう。教えてやる

 

そう言ったヤツに目を向けると、ローブの端から消え始め

 

私は何者だろうか。危険な物品を回収し、世界の安寧を願う、放浪の魔法詠唱者(マジックキャスター)

 

 

何故か、これ以上ヤツに喋らせてはいけないような気がして

 

「神領縛鎖!」

 

ニヤニヤした顔で、胸から上だけが浮いている辺りに第九席次が鎖を放つ。

 

あれが幻術であるなら、もうすぐ胴体に触れるかというところで、突如(とつじょ)、先から鎖が砕け散り始めた。

 

「な! 俺の鎖が!?」

 

破壊の連鎖は(またた)()に手元まで届き……第九席次の両腕をも粉々に吹き飛ばした。

 

があぁぁぁっ!?

 

 

「対象を魔神級と断定! 使え!!」

 

ケイ・セケ・コゥクの使用を指示した。

 

 

魔樹の支配より先に使うのは躊躇(ためら)われたが、全滅しては元も子もない。

 

支配した上で自害でもさせれば良い。

 

 

即座にカイレ様は光の龍を放つ、が

 

 

それともズーラーノーン十二高弟の一人? どちらも事実だが、私の一側面に過ぎない

 

 

かき消されるように霧散した。

 

「どうなっとる!? 一体何が」

 

カイレ様の言葉が終わる前に

 

 

ナザリック教の布教者にして、語られざる一柱

 

 

ぼちゅ!

 

カイレ様の首から上が弾け飛んだ。

 

 

「対象の攻撃は不可視! セドラン、防御態勢! 第三席は援護、他はカイレ様を回収しろ!! 撤退だ!!!」

 

 

しかし皆が動くより先に、崩れ落ちたカイレ様の死体が消え始め……

 

 

占星千里が叫ぶ。

 

撤退って、どこに!?

 

 

周囲の草木も消え始める。

 

あとに残るのは、闇。

 

もはや夜空と闇の境い目さえ分からなくなり始める。

 

 

歌の神に全てを押し付けた張本人にして、忘れられし大逆者

 

 

セドランの盾と腕が、第二席次の(あご)から上が、クアイエッセが呼び出したギガント・バジリスクの四肢(しし)が弾け飛ぶ。

 

暴れたバジリスクから猛毒の血液が()()らされ、陣形もへったくれ(・・・・・)もなく混乱する。

 

 

消える。消える。景色も、死んだ仲間も、全て……

 

 

もはやこれまで、と、槍での突撃を敢行(かんこう)した。

 

 

もう周りには、ヤツの顔しか残っていない(・・・・・・・・・)

 

だが……

 

 

陰から世界を書き換える『脚本家』、何ものにも縛られ得ぬ、自由を司る者

 

 

言葉は止まらない。

 

何かに(はば)まれるように、槍の穂先は中空で止まった。

 

突こうが引こうが振り回そうが、動かない。

 

 

ヤツは顔さえ消え、ニヤニヤ笑いだけ(・・・・・・・・)が残った。

 

 

ふと、激痛を感じ視線を下げると……腹が『空っぽ』になっていた。

 

がふっ

 

口から血が噴き出る。

 

意識、が……くら い……あぁ 神よ…………

 

 

それが私だ。なので申し訳ないが、あと少しだけ私の物語にお付き合い頂こうか。

 

 

 

……諸君(・・)

 

 




 
 
 
 
 
 
 


「……そして、後には何事もなかったかのような森の静寂と、傷一つない彼らの遺体だけが残った。

……ふむ、占星千里……占いによる未来予知、か。
コレと傾城傾国、ロンギヌスだけ持ち帰るとしよう。

心配性の彼なら、喉から手が出るほど欲しがるのだろうが、パンドラの箱の底には希望が残っていなければ、ね。

ワールドアイテムを渡すのだから勘弁してもらおう」
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