【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
sideモモンガ
「……これは……どういう事なのだ」
目の前の状況が理解できず、つい
アルベドが反応する。
「! 申し訳ございませんモモンガ様! 客席数や警戒網の都合上、どうしても
「ぁ……いや違うのだアルベド。頭を上げよ。私が言いたかったのは……ぁー……そう! よくぞここまで集めてくれたものだと思ってな。調整が難しかったろう」
貴賓席から見渡す限り、
『みんな』でなく『守護者らで』観戦しようと言うべきだった……
なんですぐ規模をデカく考えるんだ……
自分としては主要メンバーでキャッキャしながら小ぢんまりと観戦できれば良かったのになぁ。
「ただ、まぁ…… (全シモベで企画したなら)仲間外れになる者が出るのは
「モモンガ様……なんとお優しい! ご安心下さいませ。来る事ができなかった者も
……パブリックビューイングですか……
ワールドカップかよ……
「ぅ 、うむ。良くやったアルベド。ところで……守護者らは
ここにはアルベド、デミウルゴス、アウラ、マーレ、プレアデスの面々……
いないのはセバス、コキュートス、シャルティア……防衛ラインの引き継ぎとかだろうか……
と、思っていたら
「遅れて申し訳ございません」
「失礼
「ただいま戻りんした」
良かった、間に合ったようだ。
「うむ、これで揃ったな」
ガルガンチュアはゴーレムだし、呼ぶ必要はない。
え? 恐怖公?
……まぁ、彼は仕方ないだろう。女性陣が泣く。
まず自分が座り、皆が続く。
メイド達が飲み物など給仕を始める。
我々『
……ん、そう言えばアウラがここにいるなら、司会は誰
「ンンン
長らぁく!
お待たせ致しましっっっ
たぁぁぁ!!」
こいつだったぁぁぁぁぁ!!
目の前で色んなポージングをしながら「世界中の皆っさぁんっ!」などと無駄に規模のデカい自己紹介をするパンドラズ・アクターに、
恋かな(ブチギレ)
あと
「我が!
偉大なる創! 造! 主!
死の神の
kkkkこのような機会を」
って何だよ……ナザリック内でまで神扱い定着させようってのか……
ただでさえ
おかげで全然話が入ってこない。
「それでは!
んんんんご覧!!
下っっさぁい!!!」
あ、もう何か始まる感じになってた。
中央に巨大な
恐怖公の
魔樹の
……
そして足元からのパーンアップでリおんが映された瞬間、熱狂する客席。
そうだよ、アイドルなんだから少しくらい視線を受け持ってくれよ、くくく……
まぁ、始まってしまえば
(なるほどなるほど、リおんのバフあれば触手くらいは相手にできるんだな、中々接戦で面白い)
(おー、チームワークの勝利。若手パーティーの
(地下戦力かぁ。最初期の頃は結構いたけど、上位暗殺職が一般的になったら潜れるやつ減ったんだよな。地下攻撃メリットのある敵なんてあんまりいないし、暗殺職みたいな一撃必殺ないし。なつかし)
アウラ、マーレやシャルティアなど、あと一般シモベはリおんが歌を変えたり
セバスやユリは
コキュートスはブレインとかガゼフ、だったかな……とかの剣士に注目している。
アルベドとデミウルゴスは……なんか真剣にメモとってる。うん、わからん。
ナーベラルとソリュシャンは
変わった反応としてはシズだろうか。
目付きの悪いドラゴンライダーを観て「……味がある」とか呟いてる。タイプは違えど同じ射撃系だからだろうか。ツボがわからん。
……ルプスレギナ、よだれ
(いやぁ、結構面白いな。それに
画面の
周りが
気になってしまえば景色としては浮いているのに、何故かシモベ達は気付いていない。
(何なんだアイツ。待機してる作戦要員か?……って、え? こっちを見た?!)
フードから
ニグレドを
気付けるなんて『現地レベル』ではあり得ない。
警戒心が
……が、
(ん? 人差し指を口元に……『シーッ』……はっ! まさか!?)
雷に打たれたような衝撃が走る。
あの仕草で思い出したんだ。
あれは忘れもしない、通称『クソミミックダンジョン』での出来事……
そのダンジョン、内容自体は
各階層にある宝箱から鍵を見つけなければ先に進めない、というもの。
ただし、その宝箱の数がやたら多く、しかも、その6割以上がミミックで、当たり宝箱以外はゴミアイテム。
その上、各階層は自動ランダム生成で構造も配置も変わる。
おまけにミミックが特別製で、
HPが微妙に多く、防御力が高めで、開幕ブッパで多種多様なステータス異常をばら
ミミック以外にもモンスターは出るし、そもそも最終階層のボスが目当てなのだから、できる限り温存したい。
たとえクソダンジョンだろうと、そのボスしか出さないデータクリスタルがあるとなれば行くしかない。
なので、可能な限り念入りにミミックを
「当たりっぽいの、これで最後だったのに何でハズレだよ!」
「数から見ても、他は多分ミミックですよね」
見落としたか、とか、バグ? とか色々と話し合い、もしかして最後だけミミックが持ってるんじゃ、という説が出て、手近にある『たぶんミミック』の宝箱を前にして開けるか開けないかで皆がウンウン
(……え、アルスさん? 何やってるんですか?)
皆と一緒に唸ってるたっちさんの背後からソロリソロリと近付くアルスさん。
こちらを振り返り『シーッ』と人差し指を口元に……
(???)
たっちさんの背中を思いっきり蹴りつけた。
(何やってんだアンタぁぁぁ!?)
「ぅおあぁぁぁわーるどぶれいくぅぅぅ!!!」
思わずという感じで斬り付けるたっちさん。
ブッパする間もなく倒されるミミック。
……鍵が出た。
「……アルスさん、ちょっとお話が……って、あれ、アルスさんは」
「あ、たっちさん、アルスさんなら『すみません門限なんで落ちます』って」
「アンタ社会人だろう何が門限だぁぁ!!!」
と、珍しくウルベルトさん以外に声を
(思い出したぞ! あの姿はアルスさんの人間形態じゃないか!! アンタそんなとこで何を)
「アr」思わず立ち上がろうとした時、
魔樹の一角が
ざわめく現場。
いやそれより!
見た所、
つまり『ギリギリ、バーサクモードを発動させる程度』のダメージでしかなく……
『種』の砲弾が
(あーあ、これじゃ無理だリおん。かっこいい勝利もへったくれもない。さっさとスクロー………………
お前はお前で何やってるんだよぉぉぉ!?
客席も
〈リオン君! 私に構わずスクロールを〉
〈……もう無理だよアルシェ、スクロール一本だけじゃ立て直しようがない〉
…………………………は ? 一本?
ふと、最終日のやり取りを思い出した。
「てか、まだ時間あるだろ! 最後くらい頑張れよオイ! 玉座の間でビシッと
〈無理ぃぃぃぃぃ! この人! なかなか! 振り切れない!!〉
……そう言えば、あの時、通信の背後で、ドンパチバリバリ魔法のエフェクト音が聞こえてたような……
「……お前達!!」
俺は立ち上がり
「待たせたな……
……お前達の支配者モモンガ様は最初から全てお見通しだったんだ! いやマジで! 気付いてなかったとかないから!! 信じて!!!
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
《枯れ木の森・外縁部 地下》
息を切らして坑道の壁に寄りかかるクアゴア達。
ぺ・リユロが部下に問う。
「……何匹、生き残った」
「我ら5匹のみです」
部下の返答に落胆を隠せないリユロ。
「……そうか……この数では大した事もできん。来た道も
壁に
「……地上は、どうなっているのだ……」
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「……動けるか?」
イビルアイがメンバーに確認する。
ラキュースとティナは意識が戻っていない。
「何とか、ってとこだが……」
ポーション
「この足じゃ戦闘は無理かねぇ。とはいえ、助かったぜティア」
「ん。おかげでこっちも左腕がダメ」
二人それぞれ二本目のポーションを足に、左腕にかけて瓶を捨てる。
歌が
バーサクモードによる触手の大量発生には範囲があるのか、蒼の薔薇は今、
「……お前らはラキュース達を
イビルアイが避難を指示するとガガーランが
「オメーはどうすんだい」
「
「……刺し違える?」
「バカ言え。私が捨て身になったとて倒せる相手ではない」
まともにやり合う気はないとイビルアイは答えた。
(……とはいえ、ヤツの気配を感じた以上、逃げるわけにも)
「(同じナザリックの “ぷれいやー” なら邪魔などしないと思っていたのに……お前は一体何を考えてる、アルス……まさか本当に世界を……)……ん? アレは」
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
「
「終われるかよ! 終わらせられるかよぉ!! オラァァ!!!」
ロロロが
各所で英雄達は絶望的な抵抗を続けていた。
敵は多く、バフの効果は切れ始めていた。
「
「やめろ! 俺はまだ戦える! 放せ!!」
ヘクトワイゼスは負傷したヴィジャーを避難させるべく部下に命じた。
ヴィジャー直属の部下も言葉にはしないものの賛成らしく、何も言わず手近の触手を
だがヴィジャーにしてみれば将たる自分が下がっては部隊が後背を突かれ
現に、新たに自分達を目指して伸びて来る触手が見える。
「……ヴィジャー様、ご立派になられた。たとえ
「……な、何を言って」
「良き方と戦えて、このヘクトワイゼス、幸せでございました」
「!? 待て! 止めよ!!」
真意に気付き止めるも、
「ヴィジャー様、おさらばでございます!!」
ヘクトワイゼスは晴れ渡った青空のような
「能力向上! 必中、
「戻れヘクトワイゼス! ヘクトワイゼェェェス!!!」
雨の
一歩進む
隊に向かおうと進む触手の先端を槍先に
そのまま着弾による土煙の中へと消えて行く彼の雄姿を、担ぎ出されるヴィジャーは見ている事しかできなかった。
……後年、この時の事をヴィジャーは配下らに良く語った。
「我ら
ヴィジャーは、ヘクトワイゼスが期待したような立派な族長となり、
『神の加護が消えて
彼を含む戦没者の健闘を讃える石碑が枯れ木の森の跡地、後のフィオーラ双王国『大戦争記念公園』に設置されてからは、種族を問わず献花に訪れる者が後を絶えない。
一度、安全圏の上空に退避したネイアとヘジンマールは、眼下の状況に言葉を
「……もう無理だよネイア。逃げよう?」
『種』の砲弾の炸裂音が続いている。
「……わかってる。でもまだ戦ってる人達がいる。団長も、まだ……だからごめん、ヘジンマール。
行こう」
ネイアの中に『逃げる』という選択肢はなかった。
「…………あーあ、ホントはメチャクチャ怖いんだけど、ネイアが言うんじゃ仕方ないな」
「……ありがと」
ネイアは万感の思いを込めて礼を言った。
「ハァ……帰ったら牛一頭丸ごとだよ? 年寄りじゃないやつ……それじゃ、
花火の中に突っ込むよ! 相棒!!」
「……まだ生きてっか? お前ら」
バジウッドが確認すると、他三人は疲労
バジウッドがリおんを目で探すと、
「……あーあ、そうなるんじゃないかと思ってたぜ」
遠くで、アルシェを
周りでは
フレーバーテキストが完全に『裏目に出た』リおんは決断する事ができない。
レイナースが槍を構える。
それを見る、までもなく
「……しゃあねぇ。行くとしますかねぇ」
「ここで動かなければ陛下に処断されてしまいますからね」
「おぉ、怖えぇ」
バジウッドとニンブルが軽口を交わす。
「来るぞ」
ナザミが警告を発する。
視線の先には砲弾3発。
触手も来る。
「こうなりゃ出し惜しみは無しだ! ナザミ、
盾を構え前に出るナザミ。
砲弾を
「戦気梱封! 獅子戦吼!!」
獣の咆哮を
精神力を使い
「ニンブル!!」
指示を聞くまでもなく『委細承知』と触手へ駆け出すニンブル。
「能力向上! 飛燕連脚!!」
相手の刺突を迎撃するが如く空中に飛び上がり、回し蹴り三連撃、落下分も乗せた突きを繰り出し触手の先端を地面に
「バジウッドぉぉぉ!!」
「応よ! 戦気梱封、空斬! 即応反射!!」
すると、飛ばした斬撃の周りには
技の硬直を即応反射でキャンセルし、剣を振り上げ、跳躍。
「食らえやぁ! 襲爪、雷斬!!」
落雷とは『巨大な静電気』だ。
そのメカニズムを応用した大技である。
四騎士の男連中は揃ってリおんが語る
雷を
「突っ切れぇぇぇ!!!」
着地後、そのまま崩れ落ちるバジウッドの視線の先、レイナースが
狙いはリおんを叩く触手への一撃。
後の事など考えない捨て身の攻撃でも、打開できれば御の字と。
しかし、辿り着く前に二本目が生えて来た。
汝、天空を見上げるべからず。
すれば恐怖の果てに死に
……
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
sideリおん
何が何だか分からない。
いきなり魔樹の一部が爆発してバーサクモードが発動。
……もう少しだったのに!!
けど……
皆を戦列に戻すには回復に重点を置いた歌を……
でもそれをすれば後のラストスパートに必要なバフが、魔力が……
だからって自分一人じゃ……それに魔樹の回復は、もう始まってる。
そして、悩んでる時間さえなかった……
逃げ遅れたアルシェが砲撃で飛ばされた岩に足を
魔力も
フォーサイトの他三人やサエルアンナ達も遠かったり倒れていたり……
周りに触手も伸びて来てる。
……今、自分がする行動で、後の全てが決まる。
蘇生アイテムならある。
アルシェを放置して回復の歌を使えば、皆を逃がすくらいは……
………………できるわけないだろ!! 見殺しなんて!!!
気が付けば大狼形態でアルシェの盾になっていた。
「リオン君! 私に構わずスクロールを」
「……もう無理だよアルシェ、スクロール一本だけじゃ立て直しようがない」
叩き付けて来る触手に応戦……と言ってもタイミングが合えば
……クッソ、80レベルのクセに一撃が重い。
紙装甲の後衛だからなぁ、僕は……
アイテムボックスに鼻先を突っ込んでスクロールを取り出し、自分の下にいるアルシェに放る。
「使って。
「そんな事! リオン君はどうするの?!」
「僕は大丈夫さ! あんなヤツ、パパッと片付けて追いかけるよ。先に帰ってて?」
いや、無理だ。
もうすぐ『黄色ゲージ』になりそう。
体中めっちゃ痛い。
移動しなかったからか、相手も二本目を伸ばして来た。
自分の回復ならポーションはある、けど、今からバフかけて
……刺し違えるなら休眠状態まで持って行けるかな……
なんて、顔に出したつもりはないんだけどバレたらしい。
「……無理だよ……そんな事できないよ!!」
「アルシェ……」
「ぅおおおらぁぁぁ!!!」
アルシェを説得しきれずにいた僕が、タコ殴りされないよう加勢してくれるガゼフさん。
「ガゼフさんも逃げて下さい。もう無理です」
「無理は承知の上! なればこそ、リオン殿には生き延びてもらう!」
何故かガゼフさんの
「俺は王国戦士長! この国を愛し、守護する者!! 王国を
いくつも武技を発動して立ち向かうガゼフさん。
それじゃ精神力を使い果たしてしまう。
あぁ、この人、まさか死ぬ気で……
「……人々を、お頼み申す……
閃光、烈斬!!!」
僕の動体視力で、ものすごい連撃を繰り出しているのが見えるそれは、普通の人には切っ先の乱反射で『剣から光を叩き付けてる』みたいに見えるだろう。
あっという間に触手を斬り飛ばしたガゼフさん。
けど、そんな技を使ったら限界が来るのは当然で……
迫る二本目
「遅く、なったなぁ!!」
ブレインさんが蹴り飛ばした。
「ブレインさん! にげ」
「悪いなリオン。オメーだけは逃がせって陛下から言われてんだ。それによ……」
……ブレインさんまで、後を考えない武技の同時発動を……
「ガゼフ、テメェにそんなもん見せられちゃ、
ブレインさんの姿が一瞬ブレた気がした。
驚く事に、僕でも何をしたか見えなかった。
振り抜いたまま崩れ落ち、
「……秘剣……燕返し……へへ、どうだぃ、ガゼ、フ……」
同時に、綺麗に断ち切られた触手が地に落ちた。
……でも、折角稼いでくれた時間も無駄だったらしい。
こっちに砲弾が3発。直撃コースだ。
アルシェを無理矢理引っ張り出して跳ぶ……に、しても間に合わない距離だった。
……自分だけなら、まだ……いやだよ……そんなの……
けど、思い知る事になった。
何がカンストプレイヤーだよ。
何かを選ぶ事ができないだけで、こんなにも僕は弱っちい存在になってしまうなんて……
諦めるしかないのかと、景色が
ボヤケた景色の中に、黒い人影。
砲弾を弾き返した。
……え?
「……お待たせして申し訳ございません。我が
「……アルベド!?」
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
それに最初に気が付いたのは誰であろうか。
魔樹を見上げた先、中空にポツンと黒点が浮かぶ。
「勇者達よ、その魂の輝き、
闇、いや、黒き極光を放ち、
「ならば、礼をしなくては…………
……我が忠実なる守護者達よ!!
ナザリックが威を示せ!!!」
その場にいる全ての者が、その一言で『誰が降臨したのか』を
「我コソハ、コキュートス。
一番槍
周りを凍て付かせるような覇気を纏った蟲の武人が名乗りを挙げる。
ザイトルクワエは片側が一刀の元にザックリ
武人の背後に恐るべき何かが
だが、周囲に
「リおん様にケガさせるとか信じらんない! あんなヤツに回復なんてさせんな!!
神話や伝説にしか見ないような大魔獣が触手を
たまたま助けられたレイナース、恐ろしさの余りヘタり込んでいた。
「アンタもブチかましなさいマーレ!!」
「……うん、そうだよねお姉ちゃん。悪い雑草は根から殺さなきゃ」
……普段の
大地が地響きと共に割れると、魔樹は根を引き千切られながら下半分まで落下。
掲げていた杖を振り下ろすと、今度は逆に
メキメキと
それでも『この世界』に来て『本物の生物』になったためか、ダメにされた下半分を
しかし、
「おやおや、我らが主より
「……その苦痛を甘受なさい」
それこそ蛙のように胸を膨らませると、
焼け
硫黄の
「さて、君の番かな? くれぐれも足を引っ張らないでくれ
場違いとしか見えない老執事の横に降り立った悪魔が嫌味を言うと、
「私はナザリックの
と言い返す。
「では失礼して……変 身……とぅ!」
跳躍して空中で一回転。
着地した姿は、分厚い胸板を
白いネクタイは真紅のマフラーに変わり、ベルトのバックルが赤く輝く。
「ふっ!」
と、常人の目では捉えられぬ加速力で疾風と化す。
魔樹の目前まで到達すると、
「はぁぁぁっ!!」
まるで砲弾のように地面から飛び立つと、枝を拳で狙い撃ち、貫通。
一撃で
そのまま上空へ飛んで行き、
流星を彷彿とさせる蹴りを叩き込み、最後の枝も圧し折った。
もはや魔樹は『単なる丸太』のような姿である。
「……やっと
絶対者の風格でザイトルクワエを
「さて、リおん様と言えば、我が愛しの君の『白磁の
覚悟できてんだろうな駄木がよぉ!!」
表情は怒りに染まり、優雅さをかなぐり捨てて
離れて見ていた者達すら熱さを感じる灼熱が魔樹を
生命の危機に断末魔を上げるザイトルクワエ。
そこまでを見守っていた『死の神』が拍手を贈る。
「素晴らしいぞ、我がシモベ達。
では魔樹よ、私からもプレゼントを贈ろう。
……
文字通り世界を切り裂く大魔法で、試し切りの
恐れ
「……遅れてすみません」
「……ほんと、遅いよ」
グッタリと倒れ込み、『従属神』守護者らに支えられる形で脱力しながら見上げ、応える。
死の神が
「死の神様! お願いします、リオン君を助けて!! 私の命ならどうなっても」
「ぉ 落ち着きなさい。我が友は死んだりしない。安心しなさい。ただ治療のために連れ帰るだけだ」
死の神はアルシェを
「……大丈夫だよアルシェ。また、会いに行くから……」
本音を言えばアルシェは『付いていく、連れて行ってほしい』と伝えたかった。
しかしリおんから言外に『来るべきではない』と言われて理解できないアルシェではなかった。
神々の聖域に人間の
だから、
「………………約束……約束、だよ?」
神々に抱き抱えられ、闇の門を潜る『歌の神』
それを見送る英雄達。
神秘的な空気と無力感に包まれながら『大戦争』の物語は幕を閉じる。
怪我人や戦死者を集め、応急処置を
「……最後は『神様のおかげ』か。情けねぇ」
自慢の健脚を活かして戦ったものの勝利には
バザーが応じた。
「あれだけの化け物だ、やむを得まい……とはいえ、
『お前はどうする?』と、バビエカに話を向けた。
「……元々アタシは傭兵みてーなもんだ。なら、井の中の
これは余談であるが、帰還した討伐隊は『ある理由』により予想以上の歓待を受ける事になる。
そのせいもあって、実際に使ったもの含め『ドワーフのルーン武具』を気に入ったバザーはアベリオン丘陵に一度戻った後、部族を引き連れアゼルリシア山脈に拠点を移した。
帝国入りしたバビエカは強者との戦いを求め
『なら帝国で何かの大会に出場したらいいんじゃねーか?』
と考え、ある大会に出場申請した、のだが、色々と良く分かっていなかった彼女が通行人から聞き出しテキトーに申し込んだのは『競馬』の大会であった。
通行人は彼女の足を見て『……走るのかな?』と勘違いしたらしい。
この世界における競馬とは、単なる娯楽ではない。
大会内容が『戦闘』でないと聞き、最初は『は?』と思ったバビエカだが、自分から申し込んでおきながら取り止めるのは『たかが徒競走から逃げた』ように感じ、本当に出場する事を決めた。
実際、走るのも好きである。
そして、いざ走ってみると意外にも強敵揃いである事に驚くバビエカ。
当然といえば当然だが、次世代の軍馬……『コンセプトモデル』達との戦いであるから遅いわけがない。
思わず本気で勝ちに行ったバビエカは……観客達の目を
これに目を付けた興行主は『
……ちなみに、フールーダはバジウッドの「その爺さまを自由にしたらマズい! 取り押さえろ!」という言葉に従ったキーリストランに捕まり
モモンガ達が
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
リおんが帰還したナザリックは上へ下への大騒ぎだった。
具体的には(戦力的な理由と精神的な理由で)居残りを命じられたルプスレギナが号泣しながら回復魔法を乱発し、魔力切れで卒倒、
友が戻った安堵を感じる
それらが
治療は終わったはずなのに、何故かグッタリしたままのリおん。
未だに大狼形態のままだ。
尚、部屋の中はファンからの贈り物であるユグドラシルアイテムやら自分のぬいぐるみ等で埋まっている、ファンシーと硬派ファンタジーがゴチャ混ぜな雰囲気である。
グッタリしたままなのが
「……あの、大丈夫ですか? まだどこか具合が?」
ブチギレ状態なら素が出るとはいえ、平常時は丁寧口調だ。
すると、リおんは
「…………………………ぅああああああ!!
「……は ?」
「だって狼モードとか、
実質『 全 裸 』じゃんんん!!!
しんどい! しんどいよぉぉぉ!!」
意味の分からない事を言い始めた。
「仕方なかったとはいえ体格的に角度的にドコ見られてるかわかんないじゃん! 絶対アルシェにナニか見られた!
無理!
ムリムリムリムリ!! 死ぬ!! 死んじゃう!!
ただでさえ狭い部屋の中をゴロゴロ転がる狼。
グッタリしていたのはHPとか関係なく『安心した所で急に変な事が気になり始めたから』であるらしい。
モモンガは思った。
(……例えば、例えばだ、目の前を散歩する犬のケツ穴を見たとして、それに対して何か思うヤツがいたら、その方がよっぽど変態だと思うんだが……)
童貞のまま骸骨になったモモンガには、思春期
なんか色々めんどくさくなったモモンガはリおんに沈静化の魔法をブチ込んだ。
すると……
「………………お騒がせしてすみませんでした……」
大狼形態を解除して、いつもの人間形態(犬耳)に戻ったリおん。
落ち着いたものの完全に目が死んでいた。
その自殺志願者のようなドヨドヨとした目付きにモモンガは『うわぁ……』と思った。
モモンガは使う魔法を間違えたのだ。
今更だが。
ちなみにモモンガは『ユグドラシル同様、人化した時は装備も戻るんだな』と勘違いしているが、ポーチ(人間形態では腰に、大狼形態では首に)の機能で呼吸するようにショートカットしただけで、本来なら『この世界』では全裸になる。
完全無欠なアイドルのリおんに放送事故などないのである。
「……落ち着いたなら、ほら、いつまでもそんな顔してないで。アイドルなんでしょう? 顔見せっていうか『ただいま発表』しに行きましょう? ケガして帰って来たから、みんな心配してるんですから」
「……みんな……今更ですけどモモンガさん、NPCが生きてる感じですか?」
すっかり病み系アイドルにクラスチェンジしてしまっているが、受け答えはできるようになったらしい。
「えぇ、そうなんですよ。私も最初『え!? AI?! バグ?!』ってビックリしました」
「……あはは……AIですか……確かにヘロヘロさんなら作れそうですね……」
「いややめましょ? ヘロヘロさん過労死しちゃう」
リおん、自分でバフれば良いのではないだろうか。
「……過労死……モモンガさんは、どう思ってるんです? この世界ってか、あっちに残した自分どうなってるか、とか」
「ぁー……まぁ、そうですよね。たぶん死んじゃってますよね……リおんさん、戻りたいです?」
「……んー……あっちのファンには申し訳ないですけど、こっちで出会った大切な人達もいるし……僕、この世界って天国みたいなもんだと思ってるんです」
「異世界じゃなくて、天国ですか」
「……わかんないですけど、転移というより転生っていう感じじゃないのかなって。自然とか、あっちで失われたものもありますし。NPCは付喪神かな」
「なるほど。自然……ブループラネットさんに見せたいですね」
病みテンションからか、生死やら天国や転生やらの話をするリおん。
「……だから、そんな天国を守りたくて一生懸命やってたのに……モモンガさん、いつから見てたんですか。知ってたんなら早く助けてくれたって良いじゃないですか!」
一転、元気になるのと引き換えにモモンガに文句を言い始めるリおん。
勘違いの事やら実際見て楽しんでた事もあり「ぅ」と言葉に詰まるモモンガだったが、
「そ、それは申し訳ないですけど勘違いに気付くのが遅れただけで悪意があったわけではモゴモゴ……だ、大体、それを言うならリおんさんのほうが『この世界』先輩じゃないですか。何ですかアレ。ナザリック教とか……勝手に神様にされててビビりましたよ」
「……え? 何言ってるんですか? アレってモモンガさんの
「え」
「え」
やっと
「……我々ナザリックこっち来てから、まだ3ヶ月くらいですけど」
「はぁ!? じゃあアレ広めたの誰!?」
「いや、こっちこそ聞きた……」
「……アイツかあああ!?」
「ぅわあ、何!? 誰です!?」
「アルスさんですよ! 魔樹の現場にもいたんです! 見ました!!」
「……誰?」
「………………え? いやいやアルスさんですよ。アルス・マグナスさん。ギルメンなんだから知ってるでしょ」
「………………え、いやホントに誰? 知らないです。そんな人いました?」
「……えぇ?」
本当に知らないという様子のリおんに『いくら最後の加入メンバーだからと言って、知らないわけはないだろう』とショックを受けるモモンガ。
『会った事くらいあるはずだ』と思い返してみると……
(……あれ? そう言えば一緒にいる場面が思い浮かばないな……あ! そうか!!)
モモンガは、それらしい理由に気が付いた。
「……よく考えたら、リおんさんが知らないのも無理ないかも知れませんね。
アルスさんは本当に自由人で、空気読まない神出鬼没で、仲が良かったのはウルベルトさん、タブラさん、るし★ふぁー辺りで、茶釜さんには何故か嫌われてたんです。
で、リおんさんが良く一緒に行動してたのは茶釜さんで、ウルベルトさんには嫌われてましたよね」
「グサッ………………き、嫌われてねーし……嫌われ……ぐすっ」
「あ、すみません……ともかく、そのせいで面識なかったんじゃないですかね。41人もいたら、そんな事もあるのかも」
リおんは袖口でグシグシ涙を
「……なるほど、そうなんですね。で、その人が下手人ですか。どんな人なんです?」
「頭キレッキレだけど
「最高にヤバいヤツじゃないですか」
モモンガはフォローした。
「いやまぁ、彼のおかげで助かった場面も、なくは、ない……かなぁ……」
「……それ、フォローしてるんです?」
「……何にせよ、彼が犯人じゃ仕方ないですね。アルスさんですから」
「アッハイ」
とりあえず話がまとまり(?)シモベ達に元気な姿を見せて安心させてほしいと、ないはずの胃に穴が開きそうになった分、割と切実に、モモンガはリおんにお願いして、場を用意するべくアルベドを呼んだ。
「よく来たアルベド。リおんさんも調子を取り戻したので、皆を再び集めてもらいたい」
「畏まりました。『例の件』でございますね」
目の前にリおんがいるのに『例の件』と表現するアルベドを疑問に思い、訊ねるモモンガ。
「……『例の件』とは?」
「まぁモモンガ様ったら。あれ程まで鮮やかに私達のサプライズを逆利用なさったのに、
モモンガは『アルベドは何を言ってるんでしょうか』とリおんを見て、リおんは『モモンガさん何したんですか』とモモンガを見た。
リおんがアルベドに訊ねる。
「どういう事?」
「私達守護者らでモモンガ様とリおん様にお喜び頂くためのサプライズを計画したのですが、リおん様がピンチに
リおんは『どういう事ですか』とモモンガを見て、モモンガは『違うんです誤解ですアルベドが何か勘違いしてるんです』とリおんを見た。
再びリおんが問う。
「サプライズって?」
「対ザイトルクワエ戦の全世界生中継でございます!!」
その言葉を聞いた瞬間、リおんの脳裏を様々なイメージが駆け
『トップアイドル・リおん、森で全裸(狼形態)の運動会』
『リおん・がぶりールに女性の影! 熱愛スキャンダルか!?』
「…………………………がふっ」
リおんは卒倒した。
次回で『大団円』的な意味では最終回ですかね。
オマケ的な後日談などなど、ユルめな感じのは続きますけど。