【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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《お知らせ》
突然ですが次回で『一応』完結です。

ギャグ展開しか予想できないアレコレを『本編』としてダラダラ書くのは何か違う気がしたので、ダークエルフとかアルシェちゃんとかの件は『おまけ』の扱いで今後追々書いていく事にしました。

なのでここらで一回シメます。

とはいえpixivで書き始めてる別の新シリーズもあるので、おまけ更新は極めて遅いと思います。

どうぞ、ご了承ください。

…ちなみに次回のエピローグは、とても、かなり、非常に、特殊な内容になりますので、脳ミソをヘロヘロさんくらいに柔らかくしてお読みください。

あと、人によっては『胸糞』と感じる方もいるかも知れません。

その時はスミマセン…

そんな内容なので、ここで先に感謝のご挨拶をしてしまいます。

長らくのご愛読、本当にありがとうございました!!

今後の『おまけ』と、偽ユーディーさんが主人公の別シリーズもお楽しみに!


100年越しの感謝を君に

 

sideツアー

 

 

「じゃあ何か! 何も言わなかったのも、何もしなかったのも、最初から全部知ってたからだって言うのか!?」

 

 

「そうだよ?」(ずすすっ)

 

 

僕は今、魔樹の件でキーノから詰問(きつもん)されている。

 

……緑茶うまい。

 

 

「      !? ほんと死ぬかと思ったんだぞ!?」

 

 

「でも、蘇生は約束されていたし、あれだけの戦力の中『よりによって君が死ぬ』なんて想像できないんだから、言っちゃあ何も問題ないよね?(パリッ)あ、センベイおいし」

 

 

そういう! 問題じゃ!! ないだろ!!! 何か一言くらいあっても良かったんじゃないのか!?」

 

 

「痛いよキーノ。ほっぺた引っ張らないでよ。お茶すすれないだろ?」

 

 

すすってんな!!!

 

 

「……言っては何だけど、アルスがお膳立てしてくれたおかげであれ以上には(・・・・・・)大きな混乱もなく『神々が降臨した』わけで、君が怒っているのも『大変な目にあったばかりの今だから』でしょ?

 

ずっと過去の出来事になってから振り返れば『あれはあれで良い結果だった、必要な事だった』って冷静に言えるんじゃない?」

 

 

「……それは、うぬぬ、そう、だが……」

 

 

「あと、これは彼からの受け売りだけど『敵を(あざむ)くには、まず味方から』だよ」

 

 

「んな!? そ、それじゃ何か、私が口を滑らせるとか何か失敗すると思うのか!?」

 

 

「(ずすすっ)」

 

僕は何となく目を()らしてお茶を一口……緑色のお茶なんて最初は「え?」と思ったけど、お菓子に合うし慣れたら本当に美味し

 

 

そこは何か言えよぉぉぉ!?

 

そう言うと彼女は「そんなに信用ないのか!?」とか「お前まで私を何か失敗する残念キャラだと」とか「恋愛に向いてないなんて思ってるのか!?」とか言って地団駄(じだんだ)を……いや最後のは全然わけがわからないよ。

 

 

あぁ、やめてよキーノ。そんな全力出さないでよ。

 

一応、僕が歩いても平気な床だけど、君が全力で踏み叩いたら多少は削れるんだよ?

 

床がデコボコになっちゃうよ。

 

 

「………………ハァ……わかった。納得はできんが理解はした。で? これからどうなる」

 

 

「別に? 何も」

 

 

「……何も、とは?」

 

 

「いや、本当に『何も』さ。何も起きない。『ぷれいやー』たる彼らが世界征服のためにどこかと積極的に戦争しようと動いたり、馬鹿な誰かが彼らを利用しようとしたり、彼らがどこかで大虐殺したり絶滅させたりもしない。

 

だって(すで)に『神様』なんだから。

 

もちろん宗教戦争みたいな事は起きるかも知れないし、地図の色分けが多少変わったりはするかも知れない。

 

あ、あとアルスが言うには帝国内に『エ・ランテル市国』みたいな宗教国家は発生するかも知れないけど、それだけさ。

 

宗教戦争だったら『よっぽど敵がトンデモナイ何かをしない限り』わざわざ信者たちの、下々の始めた戦争に介入したりはしないだろうし」

 

 

「………………それ、だけ? 世界がひっくり返るような何かが起きたり」

 

 

「しない。そうなるようにアルスが動いたんだから。まぁ、彼らが暇潰(ひまつぶ)しに『冒険』に出て騒ぎを起こしたりはするかも知れないけど、そこは『神様』なんだから。信者が彼らを信仰する限り、彼らも『あり方』から外れるような事はしない」

 

 

「……本当に?」

 

 

「アルスから聞いた彼らの『人となり』が事実であれば、ね? あと、彼らが神様の立場を放り出すような何かが起きない限りは……そんな大事になったら、僕が気づかないとでも?」

 

 

「そ、それは、まぁ……そうか」

 

 

「……彼が昔やった事で不満はあるのかも知れないけど、少なくともアルスは僕らのために、もちろん彼らのためにも、自らの友達を神様の(わく)に『()めた』んだよ?」

 

 

「……むむむ、しかし、うぅ、んぎぎ」

 

 

「そこまでしてくれたのに、まだ彼の事を信じられ……あぁだからやめてよ床が」

 

 

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《ナザリック 第九階層》

 

 

「いやー風呂は人化した方が気持ち良いですね」

 

 

「すごかったですねスパリゾートナザリック……まぁ、色々あったけど」

 

 

二人はメイド達を引き連れ廊下を歩いていた。

 

ちなみに「色々」と言ったのは

 

『二人の“世話”をしようとメイドが入って来てワチャワチャしていたらゴーレムが起動した事』

 

『青光りする風呂にモモンガが入り

 

“……これ、チェレンコフ光だよな……”

 

と、人化してレベルが下がっている彼の生殖機能を心配した事』

 

などである。

 

 

「さて、ダークエルフの件は時間が必要みたいですし、それまでどうしましょうか」

 

と、モモンガ。

 

 

リおんは既に考えていた事があるようで、すぐ

 

「それなら、竜王国でも見に行ってみますか」

 

 

「竜王国?……確かセバスが挨拶に行ったんだったか……どうしてですか?」

 

 

「あの国にいる聖堂騎士団は『ナザリックの聖遺物』を守ってるんだとか。気になりません?」

 

 

「あー……我々に心当たりがない以上、十中八九アルスさんですね……危険な物だと怖いし、行ってみますか。じゃあ作戦会議ですね。その前に着替えてくるんで、少し待ってて下さい」

 

 

「わかりました!」

 

と、モモンガを見送るリおんだったが、後ろからアルベドが来た事に気付く。

 

 

「やぁ! アルベド。モモンガさんに用事?」

 

 

……はい、リおん様……その……モモンガ様が人間の姿になられる事もあるとお聞きしまして……ね、念のため、ご尊顔を覚えさせて頂こうかと……

 

(もっと)もらしい事を言いながら、顔を赤らめ内股をスリスリ翼バサバサ……リおんは『……あ……』と思った。

 

 

「……アルベド」

 

 

「? はい、リおん様」

 

 

「……あんまりグイグイ行かないように。モモンガさん実はシャイだし女性慣れしてないから、むしろ誘う感じでどうぞ」

 

何か(あきら)めたような、感情を排した顔で『アドバイス』するリおん。

 

 

「!?!!……(かしこ)まりました。お言葉、有り難く存じ上げます」

 

一瞬の動揺の後、キリリと『デキる女』の顔になり颯爽(さっそう)とモモンガの私室へと去ってゆくアルベド。

 

色々と諦めて、その場を後にして私室へと帰るリおん。

 

 

……その日、モモンガとアルベドが部屋から出て来る事はなかった。

 

 

 

 

 

《翌日 モモンガ執務室》

 

 

「……あ、おはようございますモモンガさん」

 

 

「…………………………おはようございます、リおんさん」

 

 

「昨日は何か急用でした? メイド達に()いても『お取り込み中』というんで部屋に帰ったんですけど……腰、痛いんです?(すっとぼけ)」

 

 

「ぇ……あぁ! そ、そうなんですよ! 今後のナザリック運営について、アルベドと、ちょっと……」

 

 

「へー、そうなんですかー。リーダーは大変ですねー」

 

 

「……あの、リおんさんも『至高の御方』なんですからね?」

 

 

「あ、僕そういうのいいです。アイドルなんで」

 

 

いや関係ねぇだろ!?

 

 

などという会話で始まったものの、つつがなく一日遅れの作戦会議は始まった。

 

まず大まかな形を話し合うため、二人だけの会議だ。

 

 

モモンガが切り出す。

 

「さて、竜王国に聖遺物を確認しに行くわけですが、そもそも『どういう形で』見に行きます? 表から堂々と訪問するのか、こっそり確認しに行くのか……」

 

 

こっそり行きましょう

 

 

「……え? アイドルのリおんさんが、珍しい……」

 

 

「……だって……

 

……全裸を全国放送されたんですよ!?!!

 

リおんは自分を抱きしめ身悶(みもだ)えしながら言った。

 

 

モモンガは考えた。

 

(……うーん、そりゃ俺だってコッソリ行きたいけど、ここでリおんさんの意見を受け入れるとリハビリにならないし……)

 

 

「……リおんさん、全裸とは言いますけど体毛だってあるし、言ってみれば裸祭りの(ふんどし)姿を見られたようなも」

 

「充分恥ずかしいじゃないですか!!!」

 

「……もとい、水着姿を見られたようなもんでしょう。むしろファンは喜ぶのでは?」

 

 

……ぇ、水着姿……そ、それはそれで、ちょっと恥ずかしい、かな……心の準備が……

 

赤くなった(ほほ)をモミモミしながら言うリおん。

 

 

「ぇえ? そうなんです? 男なんだし水着くらい」

 

 

「べ、別にいいじゃないですか! どう思ったって!」

 

 

(……あぁ、アレかな。プライベートと撮影で心構えが違う、みたいな事か? なるほど。確かにそれなら俺でも恥ずかしいかも知れない)

 

「……じゃあ、こう考えましょう。寝起きドッキリを撮影されたようなものです。恥ずかしいかも知れませんけどファンは喜んでるんじゃないでしょうか」

 

 

「……ドッキリ……うーん……それなら、アイドル的には、アリ、なのか……?」

 

 

(よっし! この流れでまとめてしまおう!)

 

 

結局、表から堂々と『降臨』してみせるという話にしてアルベド達も呼び、正式な決定となった。

 

 

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sideクレマンティーヌ

 

 

いやー……まいった、まいった。

 

 

奇跡みたいな大勝利から一週間ほど。

 

昼の点呼してたら、いきなり何もないとこに闇が生まれて神様が出てきた件。

 

あー、あれが神様が通る門なのかー、確かに神様以外には不可能だわ、なんてポカンとしたのは2、3秒。

 

「魔樹との戦いに参加できなかったから天罰とかないのかな」って当日の不安を思い出し血の気が引いた。

 

 

二柱の他にも側仕えとして、あの戦いで(すさ)まじい斬撃を見せたコキュートス様、神々に仕え執事の従属神様(後で聞いたらセバス様というらしい……どっかで見たような気が……『でじゃ・ゔゅ』とかいうやつかな)が共にいらっしゃたから、圧で死にそうだった。

 

何人か倒れるんじゃねーかと思ったけど、何とか持ちこたえてくれたらしい。感心感心、なんて、その時は気にする余裕なかったけど。

 

力を抑えて下さってるのか、神々からは不思議なほど何も感じないのよね。

 

 

で、歌の神リオン様(映像で見た通り、不敬な言い方かもだけど『可愛らしい』わマジで……年下の趣味はないけど)が言うには聖遺物の管理状態を確認したくて来たんだとか。

 

めっちゃホッとした。マジ死んだかと思ったもん。

 

 

何でも『自分達が与り知らない“委託”なので、危険な物でないか見に来た』そうな。

 

まぁ『手紙』なのだから神々が知らないのは当然だろう。

 

 

私は神々を聖堂の最奥へと案内する。

 

 

………………本当に天罰とかないですよね? 後出しとか。

 

 

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モモンガ達が転移門(ゲート)(くぐ)った先で目にしたのは、絢爛(けんらん)ではないが荘厳(そうごん)な聖堂と、呆気(あっけ)に取られた騎士達の顔であった。

 

 

スレイン法国の聖堂は、リアル世界でいうところのゴシック様式に近く、全体的に縦に細く長く、静謐(せいひつ)な雰囲気だが、それに対して竜王国のナザリック聖牘(せいとく)聖堂はロマネスク様式に近いため、受ける印象としては重厚である。

 

外観の印象はドイツのマリア・ラーハ修道院に近いだろうか。

 

この辺りは六大神のギルド拠点がデザインの起源で強力な神人達に代々守られていた法国と、防御のため分厚く重い石材を使わざるを得ず建築技術も法国ほどではない竜王国の、歩んできた歴史の違いの表れだろう。

 

 

モモンガ達が出た先は前庭(アトリウム)である。

 

 

ここの全体像として、正門を兼ねた衛兵詰所を潜った先に広い前庭(アトリウム)があり、そこが屋外訓練場も兼ねている。

 

両脇に武器庫や食糧庫、騎士達の住居などが壁代わりに配置され、2つ目の検問である前室(ナルテクス)は三階建ての構造で、上は作戦会議室と団長室だ。

 

そこから延びる身廊・側廊の直線部分と交差する袖廊(トランセプト)両側は、それぞれの塔に繋がっており、監視塔であると同時に最重要区画を守護する精鋭部隊の詰所でもある。

 

祭壇が設置された最奥……半ドーム状の後陣(アプス)こそ、地下祭室(クリプト)に聖遺物たる『聖牘(せいとく)』を保管する、聖堂の心臓部となっている。

 

普段は一般参拝客の立ち入りを認めていない聖堂は、むしろ軍事拠点の様相であった。

 

 

……ちなみに隣接する形で一般墓地があり、その一画に『英雄の友の墓』と呼ばれ、いつも誰かが花を手向けたり掃除をしてやったりと大切にされる墓がある。

 

(さび)しい場所には置きたくないし、気軽に来れる場所がいい』と、そこを友の埋葬場所に決めたのだった。

 

 

閑話休題。

 

 

と、驚きから停止していた騎士達の中、一人だけ素早く正気を取り戻し号令をかける者がいた。

 

騎士団長クレマンティーヌだ。

 

神々の御降臨である! 各員、平伏せよ!!

 

 

突然の事で整列する余裕こそなかったものの、一糸乱れぬ動きで片膝を突き頭を下げる騎士達に、セバスは感心したように目を輝かせ、練度の高さを見て取ったコキュートスは「ホゥ……」と声を漏らす。

 

不可視化して周囲の警戒に当たる八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)なども納得した様子だった。

 

 

神々ないしは従属神からの言葉を待つべく、沈黙が辺りを支配する。

 

取次(とりつぎ)として声をかけるべくセバスが前に出ようとすると、モモンガが軽く手で制する。

 

騎士達の様子に内心『いきなり来たからビビらせちゃったかなぁ……ここは一言、直接謝っとこう』などと思ったからだ。

 

 

「騎士達よ、突然の訪問で驚かせてしまい申し訳なく思う」

 

『神』直々の気遣(きづか)いに、騎士達も守護者らも動揺する。

気を利かせてリおんが続いた。

 

「あなた方が守ってくれている聖遺物を確認しに来たんです。責任者以外の方々は通常通りの仕事に戻ってくれて構いませんので、案内をお願いできませんか?」

 

 

神々とは思えぬ謙虚(けんきょ)な申し出に、騎士団一同『え、そんな扱いで良いの?』と、戦々恐々しながらクレマンティーヌの判断に注視した。

 

 

クレマンティーヌは胃に穴が開きそうなプレッシャーを感じつつも『あ、(ちゅう)されるやつじゃなくて良かった』と胸を撫で下ろし、頭を下げたまま返答する。

 

「はっ! (しか)るべき御持(おも)()しもできなかった我らに寛大(かんだい)なる御言葉、心より感謝申し上げます! 直ちに団長である私、クレマンティーヌが『聖牘(せいとく)』まで御案内させて頂きます!」

 

 

モモンガは『聖なる手紙?……ふーん、危険物じゃなさそうだな』などと考えつつ「うむ、よろしく頼む」と返事する。

 

(とく)』などという難しい言い回しを知らないモモンガには『手紙』と意訳されていた。

 

 

クレマンティーヌは(かたわ)らに(ひざまず)()せぎすで鋭い目付きの男、副団長イェルドに小声で「周知、厳戒体制、後を頼む」と素早く引き継ぐと立ち上がり、モモンガ達を聖堂奥へと案内する。

 

彼女らは八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)に気付いていないので『そもそも警戒せずともネズミ一匹通れない』とは知らなかった。

 

だが騎士達は厳戒体制を命じられた事で『あぁそうだよな、そりゃそうだ』と、変な安心をしていた。

 

神々が来た以上、厳戒体制は『通常通りの仕事』であるため、神の言葉にも反していない。

 

……団長としての能力は間違いなくレメディオスより上であろう。

 

 

(なお)、リおんが小声で、

 

「……聖牘って何が書いてあるんでしょうね、モモンガさん」

 

 

「……ぇ、『せいとく』って何ですか?」

 

 

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クレマンティーヌの先導で検問所たる前室(ナルテクス)を素通りし、普段は全体集会などに使われる身廊も、林立する円柱を横目に中央を通過。

 

後陣(アプス)をグルリと囲む周歩廊を歩いて祭壇の裏手に回り込むと、

 

開けろ

 

祭壇の両脇で立哨している全身鎧(フルプレートメイル)の騎士二人の内一人に鍵を渡し、地下祭室(クリプト)に通じる床のタイルに偽装された隠し扉を持ち上げさせた。

 

 

どうぞこちらへ。この先に、聖牘を保管する地下祭室(クリプト)がございます

 

 

薄暗い階段を降りた先、壁に掛けられた永続光(コンティニュアル・ライト)のランタンをクレマンティーヌが持ち上げると、フックが(わず)かに動きカチリと音を立てる。

 

これが最初の解除プロセスだ。

 

この後も彼女は自身の歩数を確かめるように歩きながら壁の小さな(くぼ)みに首飾りをはめ込んだり、

 

申し訳ございませんが、私と同じタイルを踏んでお進み下さい

 

と、特定のタイルの上だけを歩いたり、目立たない形で壁に埋め込まれたダイヤルを操作したりしながら通路を進んだ。

 

 

ギミック式、魔法式を織り交ぜたトラップの数々……

 

一つでも間違えば、地下祭室(クリプト)への地下通路は逃げ場のない『あの世への一本道』に早変わりする。

 

この地下通路だけの話ではない。

 

この『ナザリック聖牘大聖堂』は彼女達の防衛戦略が形となった場所だ。

 

外周の壁は部屋を利用した二重防壁構造で、外部に対する窓もなく、突破には時間がかかる。

 

 

正面突破を計ろうにも、塔に見つかれば身廊などを内包するアーケード部分とは独立した『空中回廊』で団長室まで直通の詳細連絡が入り、

 

全員が『最低でもミスリル級』と評価される騎士達が前庭(アトリウム)雲霞(うんか)(ごと)く襲いかかり、

 

防衛陣地の前室(ナルテクス)を突破できた頃には、アーケード内は精鋭騎士達と団長『疾風走破』クレマンティーヌが待ち構えるキル・ゾーンと化している。

 

 

それら監視を()い潜り侵入したところで地下通路は『この有様』であるため、どうしても危険を(おか)して団長の持つ各種解除キーを狙わざるを得ない。

 

それどころかタイルやダイヤルなどの解除パターンは文章化されておらず、団長か副団長を洗脳するなりして同行させる他ない。

 

情報収集しようにも各トラップを担当した職人はナザリック教のシンパで、そもそも既に老衰で死んでいる。

 

(最初から老衰で死ぬような年齢の名工に依頼した。本人(いわ)く「100年200年は手入れ無しでも動くように作った」と豪語し、笑いながら息を引き取った)

 

 

この水準の防衛施設は法国、帝国を除けば『ここ』しか存在せず、例えアダマンタイト級チームを使っても聖牘を確保する事は叶わないだろう。

 

ましてや法国のように『神々が遺した知識や技術』に頼る事さえもなくここまで(・・・・)の域に到達し得たのは、ナザリック教に養われた『徹底した合理主義と多様性のバランス』そして『ヒトの執念』の成せる業と言えよう。

 

 

次々と解除を行い直進した先、遂に重厚な一枚の扉への突き当たる。

 

彼女は扉を『引いて』開けた。

 

これが最後のトラップである。

 

扉は特殊な構造で、押しても引いても開く事は(・・・・)できる。

 

しかし、その感触に(だま)されて万が一『押して』開けた場合、すぐさま地下通路は崩落し、地下祭室(クリプト)は完全に埋没する。

 

 

『最後の扉一枚になっても手を抜かず、容赦しない』

 

これこそ、周辺各国が『狂信者ども』と恐れる彼女達『ナザリック聖牘聖堂守護騎士団』の本質である。

 

 

さぁ、どうぞ中へお入り下さい

 

 

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sideモモンガ

 

 

到着して扉を潜った先は『石室』と呼ぶ他なさそうな、とてもシンプルな部屋だった。

 

分厚い壁は恐らく、地上部分をドラゴンが荒らしたとてびく(・・)ともしないのではなかろうか。

 

その中央の無骨な石の台座に、小さな宝石箱のような物が置かれていた。

 

 

「こちらが、ナザリックの神の一柱どなたかが他の神に宛てたとされる手紙……我々が『聖牘』と呼ぶ物でございます。神々でなければ解除できない魔法で守られているようです。どうぞご確認下さい」

 

クレマンティーヌにそう言われ、俺は

 

(……そう言えば、手紙の主がアルスさんだとしたら、書いてある内容、俺でも理解できるんだろうか)

 

不安になった。

 

彼は、本当に頭が良い。

 

同じ日本語で話していて、俺でも分かる単語だけで話しているはずなのに、何を言ってるのかサッパリ理解できなかった事もある。

 

 

これだけ物々しい警備の中、仰々(ぎょうぎょう)しく渡されて「ゴメン全然わかんない」とか……カッコ悪いにも程がある。

 

神としてアウトだろ。

 

 

……最悪、リおんさんに丸投げするか。

 

彼も中々頭が良いので、アルスさんの手紙でも読めるかも知れない。

 

 

……いや待て。

 

もしアルスさんが宛てた相手がタブラさんとかだったら流石にヤバいかも知れない。

 

神話とか伝説とか魔導書とかのディープすぎる知識が前提の『暗号』とか使われてたら……

 

 

その時は持ち帰って解読……いやいや、何が書いてあるか分からないのをシモベ達に見られたくないな。

 

例えば『黒歴史』とかだったら本当に嫌だ。

 

 

ん? 誰に宛てた手紙か分からない、そう考えると俺やリおんさんが勝手に読むのも大丈夫なのか?

 

宛名とか書いてあるんだろうか。

 

 

ああああどうしようどうしようど(ペカー)……ふぅ。

 

ここまで来たら仕方ない。後戻りはできない。

 

もしもの場合は「ふむ、(おおむ)ね理解した」とかテキトーな事言って誤魔化(ごまか)して『禁書』指定にしてしまおう。

 

そうだ、それがいい。

 

 

「では、拝見する」

 

小箱を手に取り鑑定魔法を行使した。

 

 

なるほど、確かに強力な封印魔法がかけられている。

 

……アルスさんだとするなら、発動したら多分、街の一区画くらいの範囲内にいる者が『老化』のバッドステータスで死んだりするんだろうなぁ。

 

『老化』で死ぬと通常の方法では蘇生できなくなる。

 

単純な火力で言えば俺以下だけど、幻術系と時空間魔法はAOG(アインズ・ウール・ゴウン)で一番だし、相手が初見でも口車に乗せて一方的にボコるのがアルスさんだ。

 

ウルベルトさんみたいな派手さはないが、えげつなさで言えば上だった。

 

 

……そんなだから、たっちさんも手玉に取られて、ウルベルトさんが爆笑して、今度は二人がケンカして……ふふっ。

 

どさくさ(まぎ)れ『るし★ふぁーのイタズラ』まで加わって、収拾つかなくなったところで茶釜さんの雷が落ちた事もあったっけ。

 

何故か俺まで正座させられて。

 

……その時には、ちゃっかり姿を消してるのがアルスさんなんだよな。

 

本当に滅茶苦茶で……本当に、楽しかった。

 

 

……おっと、今は懐かしんでる場合じゃなかった。

 

でも、おかげで少し気が楽になりましたよ。

 

ありがとう、皆さん。

 

(アルスさんは多分元凶なので除外)

 

 

覚悟を決めた俺が解除魔法を使うと、カチャっと音を立てて小箱が開いた。

 

中には洋封筒が裏……つまり開封口の面が見えている。

 

宛名は書いてあるだろうかと裏返すと、

 

 

『モモンガさんへ♡』

 

 

……良かった俺宛てだ。破り捨ててもいいだろうか。

 

 

待て待て、落ち着け。

 

後生大事に守ってきた聖遺物を目の前で神様に破り捨てられたらクレマンティーヌ達がショックを受ける。

 

……やるなら持ち帰ってからだ。

 

その時は何か代わりの、スクロールか魔導書なんかを預けてやろう。

 

まずは、内容を確かめないと。

 

 

俺は無理矢理に気持ちを切り替え、封筒から手紙を取り出し、意を決したように開いた。

 

 

親愛なる友人、モモンガさんへ

 

君がこの手紙を読んでいるのは、君がこの世界に来てから半年以内ではないかと推測し、そのつもりで書いている。

 

であるなら、この手紙を読んでいる頃、私は、もう……』

 

 

 

 

……え? え?

何言ってるんですか、アルスさ

 

 

 

 

『……新婚旅行に出ちゃってまーす!! イエーイ!!!

 

なんかさぁ、出会っちゃったんだよねぇ! 運命の人☆みたいな? いやーこれが可愛いのなんのってぇ! そんなわけで絶賛エンジョイ

 

 

テメェこの野郎ぉぉぉぉ!?!!

 

 

思わず声を荒らげてしまった。

 

 

そのせいで、

 

リお「ぅえ!? なななな何ですかモモンガさん!?(え、まさかアルベドをスルーしたのバレた!? 手紙で!?)」

 

クレ「んぴ!?(やっぱり天罰ですかぁ!?……サバ折り……うっ、頭が)」

 

二人を驚かせてしまった。

 

セバス達もビクッとはしたが動揺を見せずにいてくれている。

 

 

「ぁ、違……んんっ……驚かせて済まぬ。気の置けない古い友からの手紙で、ははは奴め、いつものように巫山戯(ふざけ)た事を言っているので、つい、な。許せ」

 

リ・ク「「は、はぁ……」」

 

 

気を取り直し、改めて読み進める。

 

……ただし一番最後の『wwww』の後ろ辺りまで飛ばして。

 

どうせ、そこまでの間に大した事は書いてないだろうからな!

 

 

『と、冗談はこの辺にしておこうか。あまり巫山戯て破り捨てられても困る。

 

ここからが本題だ。心して読んで欲しい。良いかモモンガさん』

 

 

何が『良いか』だ! 心して読んで欲しいなら最初から真面目に書けよ!!

 

 

良いかモモンガさん。もう気付いているかも知れないが、我々はアバターに精神が影響を受ける。もし放って置けば、君はモモンガではなく単なるオーバーロードと化していただろう

 

 

……その自覚はあった。

 

カルネ村に介入した時、既に人間の死に対して何も感じなくなっていたからな。

 

 

そうならないよう、私は色々と手を打った。順を追って書こうと思うが、その前に、私は君に謝らなければならない。

 

君は最初この世界に来て混乱した事だろう。原因も理由も、何も分からないで放り出されたのだから。

 

だがなモモンガさん、私も理由までは知らなかったまでも、実は原因は知っていたんだ。

ウルベルトさんから頼まれていたんだよ。

 

“最終日、サービス終了までにモモンガさんをログアウトさせてほしい”と。

 

それを私は了承して、わざと反古(ほご)にした

 

 

……え!?

 

 

誰が計画したのかは聞いていないが、人為的(じんいてき)な接続事故だったらしい。我々は死んだから、この世界に来たのだ。

 

だが、これだけは信じて欲しい。悪意からの行動ではないのだ。

 

考えてみてくれ。

 

年々厳しくなる労働条件、ユグドラシル終了に(ともな)う友との離別……その先、君は生きたいと思えたかい?

 

私は君を、そして自分を解放したかったのだ

 

 

……アルスさん。

 

 

労働条件が改善される日は来ない。決して。

 

何故なら、技術の進歩に伴って人間がするべき仕事なんて残ってはいないのに、全員が全員“働かせろ、給料を上げろ、仕事を増やせ”と古い価値観を妄信して言うのだから。

 

そう、古い価値観だ。妄想だよ。

 

企業は我々が“商品”を買う事で存在意義を得る。

そして機械の方が生産性は高い。

 

なら我々がタダでカネをもらって“優良な消費者”に(てっ)する方が、企業にとっては利益になる。

そもそもカネとは何だ。

 

カネとは我々が属するコミュニティの価値、信用に基づき発行される“未来の自分達への借金”だ。

国家などコミュニティの借金が増え、我々が“買い物”をして、企業が利益を上げ、コミュニティ全体が価値を増し、高まった信用で更に借金を借り換えしながら増やしていく……これが健全な経済だ。

 

だというのに、いつまでも化石のような道徳を信じ、社会構造の変化を求めない……

 

我らの友人たるウルベルトさんには申し訳ないが、彼の言う“富裕層による支配”さえ、我々自身が求めた社会の現状維持という土台の上に“都合の良い居場所”を与えてしまった結果に過ぎないよ。

 

勿論(もちろん)、彼の言う通り変革には“分かり(やす)い敵”が必要だとする意見も理解できる。

 

だが……変革して、何になる?

 

自身の妄想を自覚していないなら、変えたところで同じ間違いを繰り返すだけではないか。

 

そもそも、やり直せる余裕がリアル世界に残っているのか?

 

一度、終わりにしてしまうしかない所まで崩れてしまった……私は、そう思う。

 

そんな世界に、例えユグドラシルから生還したとて、一体、何になるのだ。

 

確かに、たっちさんや茶釜さんなど“自分がやるべき事”を得た人は生きられるだろう。

 

ペロロンチーノのように依存対象があれば生きられるだろう。

 

ヘロヘロさんのように、死ぬまで自身を縛り付けられる程の“思考迷路”に入り込めば疑問も抱かないかも知れない。

 

……君には、何かあったかい?

 

私には無い。

 

この際だから白状すると、私は少々非合法な手段で金銭を得て生活していた。

前述の状況を考えれば、真面目に働くなんて馬鹿らしいのは当然だろ?

 

とはいえ私は別に、犯罪行為に喜びを感じる人種ではない。

もう少し自分が馬鹿だったら、目の前の“楽に稼げる悠々自適な生活”で全て忘れられる“満足な豚”でいられたのかも知れない。

 

だが実際は、いつかバレて“後ろに手が回る”リスクを負ってまで生きる日々は、君らが“いつかクビにされるかも知れない”と不安に感じるそれと、大して変わらないものだった

 

 

……そうか、アルスさん、あなたは……

 

えぇ、そうですよ。俺には、何もなかった。

 

みんながいたから耐えられた。

 

『せっかく母が命をかけてまで与えてくれた学歴があるんだから』と働けた。

 

それが、なくなってしまった……

 

もちろん、連絡を取る事はできる。

 

でも、確かに仕事は厳しくなり続けていたし、気軽に会えるわけではない。

 

新しいゲームを始めたとしても、それは同じだ。

 

じゃあ新しい友人を?

 

大変なのは誰でも同じだし、もっと若い世代の人は……いつも俺が『学歴といっても小卒ですし』なんて半分は謙遜、半分は『母の大事な遺産』と思って言うそれさえ、冗談抜きに『小卒なんてスゴい!』という時代になってしまった。一緒にゲームをやってくれる余裕なんて……

 

そんな世界で5年、10年……とても生きられる自信はない。

 

まず死にたくなっていただろう。

 

母に対してすら『どうして俺を産んだ』とまで思うようになっていたかも知れない。

 

……これはアンデッドとしての思考かも知れないな。引っ張られないように気を付けなければ。

 

それを思えば、俺とアルスさんの違いなんて『そこまでしてやろうと思う頭があるか』の違いしかなく、母の事がなければ犯罪行為にも拒否感はなかっただろう。

 

……もっとも、実際にやって生きていられるほど能力があるか、というのは別問題だけど。

 

 

良い機会だと思ったんだ。君にとっても、私にとっても。

 

脳に対する直接の過負荷(オーバーロード)なら苦痛も少ないだろうと。

 

独善的だという自覚はある。

……私を恨んでいるだろうか。

 

だが、それさえ覚悟しての行動だ。

 

恨むというなら甘んじて受け入れよう

 

 

……恨んでなんかいませんよ。

本当に(おっしゃ)る通りですから。

 

 

だが、サービス終了を迎えてみれば思わぬ事態が起きた。

 

そう、この世界だ。

 

幸いというか何というか、私が転送されたのは君が手紙を読んでいる今から見て100年くらい前だった。

 

手を打つ時間はあった。

 

もう気付いているだろう?

ナザリック教を布教したのは私だ。

 

君も感じているはずだ。

我々の力は、この世界にとって異常だと。

 

そして困った事に“我々は強大である”という一つの事実は、必ずしも受け取り方まで一つではないという事だ。

 

必ず、利用しようと考える者、抑え込もうと考える者が現れる。

 

その時、君ならどうする?

 

 

戦う。

 

友達を、友が残した『子供達』を、思い出や誇りを守るために戦う。

 

 

戦う、と考えるんじゃないか?

 

私も同意見だ。利用されるなど冗談じゃない。

 

……しかし、そうなれば世界に“ただ我々が存在している”以上の恐怖が()き散らされる事になるだろう。

一度そうなってしまえば、状況を立て直すため、維持するために君の精神は()り減り……あとは分かるな?

 

私は君をも救うために約束を破ったのに、その結果、君を不滅の存在にして更なる不幸を背負わせては本末転倒だ。

 

 

……いや、これは言い訳だな。

あの時の私は結局、人間だったのだ。

 

(ほとん)どの人間は、いつでも正しい事はできていない。

やってしまって初めて“嗚呼、これは失敗だった”と気付くのだ。

 

自分の理解が及ぶ範囲でしか判断できない以上、誰かを救おうという思いさえ、時として地獄を生む。

 

 

人間でなくなった今こそ、かつての過ちに帳尻を合わせられる。

 

 

馬鹿らしい事態を避けるため、最初から我々を神という概念に嵌め込む必要があったのだ。

 

この世界の住人は、我々の事は理解できていないが、神ならば知っている。

 

神として定義してしまう事で、この世界のあらゆる(しがらみ)から解放されるのだ。

 

勿論、神である以上は信者や教典を無視する事はできない。

 

それが唯一の柵にはなる。

 

窮屈(きゅうくつ)と思うかも知れないが、律儀(りちぎ)な性格の君の事だ。案外、上手く(こな)してくれるだろうし、そうそう放り出したりしないだろ?

 

 

やれやれ、勝手な事を言ってくれますね。

 

でも……えぇ、やりますよ。

 

それで皆を守れるなら。

 

……まぁ、ちょっと気恥ずかしいとこは、ありますけど。

 

 

あと、ヒトとしての精神を温存するには、人化のスキルやアイテムで極力人間としての時間を過ごすしかない。

 

やまいこさんの部屋に指輪があるはずだ。妹さんと人間種の街とか行く時に使っていたやつが。

 

使うべきだろう。

必要とあらば(こころよ)く貸してくれるさ

 

 

あぁ、あなたも『賛成』だったんですね。

 

そういえば、やまいこさんとは気さくな感じで話してましたね。

……茶釜さんにブロックされるようになるまでは。

 

指輪の件は『賛成一、反対一』じゃなくて『賛成二、反対一』だったわけだ。

 

なら、ありがたく使わせてもらいましょう。

 

 

そうしたら安全なナザリックで、いくらでも人間としての時間を確保できる。

 

(うま)い食事を食べ、風呂に入り、好きなだけ眠れ。

 

リおんや守護者らと語らい、遊び、アルベドと愛を(つむ)げ。

 

そうすれば君が望む限り、いつまでも君はモモンガでいられるだろう

 

 

あはは、アルベドの『サプライズ計画』やっぱりアルスさんも知ってたんですね。

まぁイタズラ好きは、るし★ふぁーに負けてませんものね。

 

……そう、か。

みんなの公認なら、悪くはない、か。

 

 

それでも寂しく思うなら、リおんに相談して、ナザリックに未練があるヤツだけでもアバター姿で転生させたら良い。確か……使いかけも含むので使用回数までは分からないが……流れ星の指輪(シューティングスター)50個は持ってるはずだか

 

はぁぁぁぁ!?

 

リ・ク「「!?」」(びくぅっ)

 

「……リおんさん」

 

俺は訊かずにはいられないと、小声でリおんさんに確認した。

 

「マジで流れ星の指輪(シューティングスター)50個持ってるんですか?」

 

 

「何で知ってるの!?……ぇ、まさか手紙? 誰にも話してないのに!!」

 

 

「ヤベェ人だって話したでしょ?」

 

 

「……実はエスパーとか」

 

 

「いえ、本当に頭が良いだけみたいです。恐ろしい事に」

 

 

「……こっわ」

 

 

そうか……ふふっ! そうか! そうか!!

 

またみんなに……チッ、喜びの感情まて抑制するなよ! 忌々しい!

 

 

だが、これだけは忘れるな。仮にも“異形種への転生”なのだ。

 

望んでいない者には苦痛であろうし、かといって、どれだけ“素晴らしい世界”といえど脆弱(ぜいじゃく)な人間には危険な世界である事も事実だ。

 

何より、人間としての生を望む者とは、いずれ本当の意味での別れが避けられない

 

 

……そう、だよな。

 

だいたい、本来ならリスポーン場所はギルド拠点だが、指輪による例外的な復活では、どうなるか分からない。

 

最悪『レベル1で森の中』なんて事に……冗談じゃない。

 

大切な友達に、そんな怖い思いをさせるわけにはいかない。

 

 

……残念だけど、未練がある人に限定するのがベター、か。

 

願いの文言については、後でデミウルゴスとかにも考えてもらおうかな……

 

 

そうそう、申し訳ないが私は勘弁して欲しい。せっかくの新婚旅行なんでね。暫くは二人きりで過ごしたい。私も彼女も、もう人間の時間感覚ではないから、100年や200年は探さないでもらえたら嬉しい

 

 

ハァ、まったく、相変わらず自分勝手な人だ。

……ふふっ。えぇ、いいですよ。わかりました。

 

一人で大変だったろうに、これだけ手を尽くしてくれたのだから野暮(やぼ)な事は言えませんよね。

 

好きなだけイチャイチャしてて下さい。

 

でも、流石に1000年とかだと探しに行くかも知れませんよ?

 

たまには顔を見せに来て下さいね。

 

 

その時は彼女さんも紹介して下さい。

 

『もう人間の感覚ではない』という事は、元人間の異形種とかなのかな。

 

アルスさんの奥様という事なら、喜んでギルメン入りを認めますから。

 

 

……新しいギルメン、か。悪くないかも知れない。

 

 

最後に、これだけは伝えたい。

 

私は、私に居場所を与えてくれたアインズ・ウール・ゴウンに感謝している。

 

もし仲間達と再会したら彼らにも伝えてくれ。

 

本当に、ありがとう。

 

 

またな、友よ

 

 

ありがとう、アルスさん。

 

……いつか、また。

 

 

 

 

 

……ん? まだ紙があるな。

 

 

『追伸 この世界に来てできた友人を紹介し忘れた。名前はツァインドルクス=ヴァイシオン。

驚け? 評議国の永久評議員で本物の竜王(ドラゴン・ロード)だ。

 

気の良いヤツでね。私の名を出せば二つ返事で会ってくれるだろう。

本人次第だが、もしギルメン入りするなら私は推薦しよう』

 

 

評議国のお偉いさん!? それは心強い。

 

それに、竜王(ドラゴン・ロード)がギルメン入り……ふふふ、面白い!

 

そのうち会いに行ってみ

 

 

『追伸の追伸 旅費の代わりにアダマンタイトとかオリハルコン辺りの適当なインゴットを頂いて行く。

 

いつぞや、るし★ふぁーに“ゴキブリ型ゴーレムつくりたい!”とか言われて盗むの手伝ってやったスターシルバーよりマシなんだから許し』

 

 

んだとコノヤロォォォ!! しかもそんな理由とか聞いてねぇぞぉぉ!?

 

 

リ・ク「「ごめんなさぁぁい!!」」(ひしっ)

 

 

「ぁ、ぁ、違くて……ごめん、ごめんて」

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

()くして、秘された真相に辿(たど)り着いたモモンガとリおん。

 

これから先も、多くの愉快なイベントが待っているのだろう。

 

 

 

ツ「やぁ、よく来たね。彼から話は聞いているよ。アンデッドの方がモモンガだね?……なんだか、君とは仲良くやっていけそうだよ……」

 

モ「そ、そうなの、か?」

 

 

 

未来は続く。世界は、物語は終わらない。

 

 

 

リ「ぁ、ごめ」

 

絶「(この私の顔を足蹴(あしげ)に!?

 ……これが『敗北』?)」(トゥンク……)

 

 

 

思う存分、遊べモモンガ。楽しめリおん。

 

 

 

マ「お、王様なんて、や、やりたく、ないです!」

ア「アタシ、リおん様のお嫁さんになりたい!!」

 

リ「……ぇ……(ええええええ!?!?!!)」

 

 

 

巻き起こせ、面白おかしいセンセーションを」

 

 

 

ア「改めて、よろしくねリオン君。……私、頑張るから!」

 

リ「ぇ……ぅ、うん。ありがとう。これからもよろしく、アルシェ(……ごめんアルシェ。君が何を考えてるのか全然わかんないよぉ……)」

 

 

 

──To be continued...

 





「これはこれはモモンガ様!」

「パンドラ、アルスさんに会ったのか」

「……ハッ! お会い致しッましッた!!」

「何で言わねぇんだよ!?」

「ギリギリまで内緒にと頼まれましたので! ン申し訳ございまッッせん!!」

「……ハァ……もう良い、わかった。ではアルスさんが持ち出したインゴットの目録を作成し、提出せよ」

「……モモンガ様」

「何だ?」

「アルス様が置いて行かれたワールドアイテム4つについての御報告は不要でしょうか。世界壊滅クラスのも2つ含まれておりますが」

「……は?……世界壊滅……置いて……あ、アノ野郎ゥ! 『神』ってそういう事かよ!? つまり『管理者』か! クゥ、クズがぁあああああああ!?」
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