【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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いやぁ、執筆速度は日常生活とかバイオリズムに影響されますね←言い訳

あと、都市伝説を信じるか信じないかは個々人の自由ですよね?



勇往邁進? 先の見えない明日へ進め!

 

《法国》

 

 

「……無事復帰できたのね。コテンパンにされたらしいじゃない」

 

「………………お恥ずかしい、限りです……」

 

 

蘇生後に低下した戦闘能力を取り戻すための訓練を終え廊下を歩いていた第一席次は、前方から来た番外席次に声をかけられ、忸怩(じくじ)たる思いを顔に(にじ)ませて応えた。

 

 

「真なる神器を二つとも奪われ、カイレも死に、占星千里の死体は見つかっていない……惨敗ね。結局、相手は誰だったの?」

 

「……申し訳ないのですが、一応、箝口令が」

 

第一席次の言葉を遮り番外席次が言った。

 

「あんなもの上空に映し出されて機密も何もないじゃない。異教の神いずれかに殲滅された、違う?」

 

返答に(きゅう)した第一席次は、沈黙で返した。

 

「……あっそ。まぁ、神器は分かる。占星千里の死体も、予言を防ぐためでしょうね。けど、あなた達を放置したのは……」

 

番外席次は、何とはなしに窓から差す光に目をやった。

 

「……これから、どうなるのかしらね? 法国。見せしめに『精々足掻(あが)け』って事かしら」

 

「……今、神官長達が話し合っております」

 

「フン、それでどうなるとも思えないけどね」

 

作戦失敗の件だけではない。

 

神官長らは内部の混乱を避けるために情報規制をしているが、国外から法国への視線は厳しいものだった。

 

 

魔樹との戦いで、各国において種族間の感情は少し刺々しさが減り、一方、竜王国のような『国内事情』があったわけでなく参戦しなかった国々は評判を落とし、(亜人種の国であるため純・人間種の国とは最初から付き合いの薄い評議国や都市国家連合は軽く見られる程度で済んだが) 法国は特に冷ややかな目を向けられていた。

 

……背景には当然ながら帝国の情報省が絡んでいた。

 

本来なら極秘扱いであるカルネ村の件を『都市伝説』として流布しているのだ。

 

エルフ奴隷その他諸々、関税などで譲歩してみせても帝国の態度は変化がなく、『戦争間近』というほどでないにせよ継続的な情報戦を展開されてしまっている。

 

 

番外席次は、諦め半分に鼻で笑いつつ言った。

 

「……せめて冥土の土産に、神様の実力ってやつを体験してみたいものね」

 

現に体験した第一席次は『冗談じゃない』と、思い出して身震いした。

 

 

法国の明日は、まだ見えない。

 

 

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《皇城・皇帝執務室》

 

 

皇帝ジルクニフが書類に目を通す、いつも通りの執務室の風景……ただ、その服装には変化が見られた。

 

かつてのような、力強さを印象付ける赤を基調とした服装から、清廉(せいれん)さを感じさせる白が基調の服装に変わっている。

 

これというのも、例の戦いにおける彼の『立ち位置』が影響していた。

 

 

ナザリックによる『全国生中継』でリおんが神だと公表され、『即ち皇帝ジルクニフは、神から人々の安寧(あんねい)を直々に託された存在という事では』と人々が言い始めたのだ。

 

ならばその声に応えるべきであろう、との周囲の意見は強く、まるで『ナザリック教の聖王』のように思われている。

 

今や彼を『鮮血帝』と呼ぶ者はなく、皆が『聖約帝』と密やかに呼んでいた。

 

 

「ふむ、八本指残党の追跡と排除は順調のようだな」

「はい。王国が突如として体制崩壊。慌てて他国に逃れる者、半ば強引に勢力を拡大しようとした者、捕捉するには苦労しなかったようですな」

「ま、所詮(しょせん)は烏合の衆という事か」

 

ロウネからの報告を受け、治世が順調である事に安堵するジルクニフ。

 

 

対・魔樹戦後のゴタゴタも収束、エ・ランテル周辺の管理も何とか形になり……とはいえ、やはり不足がちな人材はすぐ追い付いてくれるわけではないため、実は慢心する余裕まではない、というのが実情であった。

 

 

「ところで、爺はどこに」

 

魔法省からの定例報告がまだにも(かかわ)らず姿が見えないフールーダ。

 

ロウネが応える。

 

「おそらく今日も研究部の声楽魔法科では」

「またか」

 

神々の力を目の当たりにしてから、それまでは大して興味がなかった分野にも注目し始めたフールーダは、ジルクニフら周囲から『魔法狂いが悪化した』という評価を受けていた。

 

 

……と、噂をすれば

 

へいかぁぁぁッ!!

 

唐突に転移(テレポーテーション)で現れるフールーダ。

 

 

例の戦いでレベルが上がったのか最近は気軽に転移魔法を行使するので、ジルクニフは眉間のコリを(ほぐ)す回数が増えた。

 

 

「……今度は何を発見したのだ?」

 

どうせそれを話し終えるまで定例報告は始まるまい、と、諦め半分に訊ねるジルクニフ。

 

 

「はい陛下! 神や精霊、悪魔から力を借りる例も一部にはありますが、呪歌とは昔から基本的には精神魔法に分類さ」

 

長ったらしいので割愛すると、吟遊詩人(バード)の『看破』やら『探知』やら精神系魔法の延長として『予知・予言』という分野への可能性を見出した、という事らしい。

 

本人以外は皆、胡散臭(うさんくさ)そうな視線を送った。

 

 

とはいえ、事実『歌』の原点はシャーマンや巫女による『神託』であるとする説は強い。

 

超自然的なトランス状態による脳内の神経スパークが生み出した、原始的な動物の鳴き声すら彷彿(ほうふつ)とさせる言葉の(いん)やリズムが歌の原型であろう、という考えだ。

 

それを思えば、未だ科学では解明しきれぬ脳や精神、魂といったものが、歌を通じて『何か』を表現するとしても不思議ではない。

 

 

例えば、ビートルズの『Help!』の歌詞の内容は知っているだろうか。

 

その曲が発表された一年と一ヶ月後に起きたのが『テキサスタワー乱射事件』だ。

 

『Help!』と言ったのは被害者達か、はたまた『自分は何かオカシイ、死後に自分を解剖して欲しい』と遺書を(のこ)した犯人か。

 

似たような例は日本にもある。

 

米津玄師の『死神』が出た一年一ヶ月後に起きた銃撃事件は、流石に誰でも知っているだろう。

 

あの歌詞は落語が元ネタだが、タイトルは別として歌詞の中には『死神に類する超常的・ファンタジー的な存在・内容』は描かれていない。

 

そして『上下で切る』ポイントも、元ネタ通りでないとするなら……

 

それを踏まえ『現代劇』として読み直すと、とても良く符合するのだ。

 

 

色々な意味で『所在が無い』男が、適当な事を()かしつつ汚いカネを抱えて自分を今の境遇に追い込んだ相手に、ドス黒い怨念を……という内容に読めてしまう。

 

警備態勢の不備は警告されていただろうに、それでも演説を強行した本人か、それともビッグネームの手前、下らない見栄を張った地元警察か『雑念? そりゃ都合が良い』『誰と誰を()れば良い? 苦しむ顔をこの目で見られる奴が良い』『生かしておいたところで、人を死に追い遣るという意味では自分と大して違うまい』と凶行に及んだ風にも見て取れる。

 

個人的には『調子こいた坊やが好き勝手やらかし上の連中がblah-blah-blah(どうたらこうたら、どうでも良い下らない事を言っていると揶揄(やゆ)する意味で英語、仏語などに見られるスラング)』の辺りは、彼の鈍感力に振り回され与野党共に狂ってしまった当時の政界を思い浮かべてニヤリとさせられるし、『お終いの香り』と来れば現場に漂ったであろう粗悪な硝煙が脳裏に(にお)って(おもむき)深い。

 

何より、元ネタの落語で死神が『呪文なんて何でも良いのさ』と鼻で笑って(うそぶ)いた『アジャラカモクレンテケレッツノパー』というのも、如何(いか)にも例のカルト教団で『中身の無い御言葉を有り難がって拝む信者達の姿』を連想させてピッタリだろう?

 

 

しかし、だ。

 

予言というのは基本どれも極めて抽象的で、内容自体『どんな情報を受け取っても予言者の世界観、価値観、その日の気分次第』で出力されるものであり、本人にも自覚はなく、そもそも普通の歌でさえ、歌詞というもの自体『解釈は自由』なのが当たり前だ。

 

わざわざ『ノストラダムスの大予言』を例に挙げるまでもなかろう。

 

あの大ベストセラー予言書一つで、一体いくつの『解釈』があると思う?

 

それほどまでに『予言』とは『それが起きて初めて答えが分かる』という、どうしようもないジレンマを抱えているものなのだ。

 

誰にも正確に読み解けない予言書に、恐らく意味など無い。

 

 

そんな事にまで思い(いた)ったのか、それとも他の事についてか、ともかくジルクニフは『やれやれ、爺は魔法の事となると “ それ以外 ” が目に入らなくなるな……』と肩を(すく)めた。

 

 

そうそう、ところで予言といえば……

 

 

《同時刻のオラリオ、アルス・ファミリアのホームにて》

 

 

「あ、アルス様! おかえりなさいませ!」

 

「うむ。……やぁ、カサンドラにダフネ。また来てたのかね」

 

「お邪魔しております! 神アルス」

「お、お邪魔してます……」

 

ヘファイストス・ファミリアでの進捗(しんちょく)を確認し、ホームに帰って見れば『ウチの飼い犬』がアポロン・ファミリアの二人と談笑していた。

 

気を利かせたのか仕事中か、団長たるラナーはいない。

 

 

「いや、気にしないでくれ(たま)え。我々はコンサルタント業を生業(なりわい)としてるのだから、他所の団員だからと邪険にはしないし、ウチの団員と仲良くしてくれているのだろう? 有り難い事だ。それはそうと……」

 

私は団員である占星千里……ツァキーナ・ワヤン・ディキプスに向き直る。

 

「ツァキーナ、一つ忠告しておこう」

 

「ぇ、忠告、ですか?」

 

「君らが『予言』について意見を交わすのは自由だが、それら知識や技術を書物などに残すのは止めておきなさい」

 

「ぇ……何故ですか? きっと人類に役立つと思うのですが……」

 

 

「……どう思おうと勝手だが、他ならぬ私が言うのだ。

 

『その力が人の世に破滅を(もたら)しても知らんぞ』

 

とな」

 

「ヒェッ」

 

「……楽しいお(しゃべ)りの邪魔をしてしまったな。引き続き、ゆっくりして行ってくれ給え。失礼するよ」

 

 

廊下を歩きつつ思う。

 

全く、せっかく蘇生してやったというのに……知性を売りにするコンサルタント系ファミリアの団員で、しかも眼鏡キャラなのだから、私やラナーほどとまでは言わないが、もう少し思慮(しりょ)深くあってもらいたいものだ。

 

 

読者諸君なら分かるだろう。

 

SNSで情報は共有され、好き勝手に解釈され、氾濫(はんらん)した。

 

環境に優しいと歓迎された風力発電や太陽光発電は、あっという間に利権に絡め取られ、設置のための森林伐採などで環境を破壊。

 

原発もAIも危険性が喧伝(けんでん)され、安全策など本質的な問題は(たな)上げされたままに排斥、現実社会は余計に混乱した。

 

生産性だ効率化だ付加価値だと、経済や通貨の本質を無視した盲目的な信仰が、自らを不況に追い込んだ。

 

単なる情報共有だけでも『その有り様』なのだ。

 

未来予知など乱発すれば『アレもダメだ、コレもダメだ』と、社会という脆弱な『バベルの塔』は(またた)く間に崩壊するだろう。

 

ヒトが未来に首を突っ込もうと、手に入れられるのは自身が歪めた答えでしかない。

 

だからこそ未来予知という災厄(きぼう)は、パンドラの箱の底に残しておくべきなのだ。

 

 

それに、何でも分かってしまったら面白くないだろう?

 

 

自分の持つ予言という力の大きさも自覚できないようでは、彼女の眼鏡は『知性の象徴』ではなく『真面目さの記号』でしかないな。

 

まぁ所詮は『愛玩犬』なので別に良いがね。

 

余程の馬鹿をやらかしたなら殺処分だが、飼いきれなくなったなどとクソのような事を言う気は無い。

 

ペットの面倒は飼い主の責任だ。

 

そうそう、念の為に言っておくが彼女の本名は『この世界線での名前』なので、あまり気にしないでくれ給え。

 

 

……ん?

 

『それなら何故わざわざ飼ってるのか』『眼鏡キャラが良いならラナーに眼鏡を掛けさせれば良いだろ』だと?

 

ハァ……何も分かってないな。これだからニワカ(・・・)は。

 

良いかね? 眼鏡は視力矯正器具だ。(すなわ)ち眼鏡の素晴らしさとは機能美なのだよ。それを何か? 度無しの伊達眼鏡をラナーに? 馬鹿も休み休み言い給えよ。大体な

 

 

上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)……ふむ……ふむ……」

 

「あら先生、おかえりなさいませ」

 

「あぁラナー、ただいま」

 

如何(いかが)でしたか? ヘファイストス・ファミリア」

 

「順調だよ。ヴェルフ・クロッゾが面目躍如(めんもくやくじょ)だ。やはり魔石を吸収させる事で問題なくルーンは機能した。まぁ『変性』たるルーン文字と『不変』の不壊属性(デュランダル)は相性が悪いようだね。互いに打ち消し合ってしまったよ。それでも、いずれは新たな特殊武具(スペリオルズ)として定着するだろう。安定的なロイヤリティが期待できるな」

 

「それは何よりですね!」

 

「うん。それと興味深い事も分かってね。ルーン一文字(ごと)に魔石一つを消費するんだが、どうやら単語になると一語毎に、より大きな魔石一つの消費となるらしい。恐らく文章となると一小節毎に、さらに大きな魔石一つを消費する事になるんじゃないかな。

 

あとユグドラシルのルールが適用されてないからか、鍛冶師の腕前は『正しく均一に刻む事ができるか』だけが問題で、あちらのように『レベルアップしなければ高位文字を刻めない』という制約は無いらしい。彼等にはガンガン彫り刻んでもらいたいね。我がファミリアの利益のために」

 

 

『利益』という話で思い出した私は、別件についても話しておく事にした。

 

 

「そうそう、ミアハ・ファミリアも順調のようだ。取引で入手したマジックポーションのレシピもナザリックに送っておいたし、彼等なら10年ほどで『あちらのレシピ』を確立してくれるだろう。

 

ただ『腕の治療』は断られてしまったよ。本人から『義手は絆の証』などと言われてはね。仕方ないから『欠損部位の治療法』はディアンケヒト・ファミリアから債権を買い取るのに使うとしよう」

 

「……ユグドラシル・ポーションが普及すればミアハ・ファミリアが不良債権化する事もなく『資産』として手に入り、欠損治癒も(すた)れる技術でしかない、という事ですか? 先生ったら、ディアンケヒト様が顔を真っ赤にして怒りそうです」

 

「自己判断で売却するなら知った事じゃないね」

 

「もう……あら? 先生それ、眼鏡ですか? 先生がお掛けに……という事ではありませんわね。女性向けのデザインですし」

 

「ぁ……あー、その、これはだね………………良かったら、掛けてみてはもらえないだろうか

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「陸が見えたぞー! 進路そのままヨーソロー!」

 

そう言って、水兵服の美少年は巨大かつ独特なホルンで『ペフー!』っと、どこか間の抜けた音を響かせた。

 

「こらこらリーオ坊っちゃん、船長の邪魔しちゃダメですよ?」

 

両刃の大剣を一本担いだ、鈍色(にびいろ)で無骨な全身鎧の大男が、その姿に似合わぬ丁寧な口調で(たしな)める。

 

「えへへ、ごめんなさーい」

「やれやれ、全く……」

 

 

……まぁ、読者諸君に思わせぶりな言い方をする必要もあるまい。

 

正体はリおん、モモンガの二人である。

 

お供のルプスレギナ、もとい髪色をリーオに合わせて黒く染めたルプーは黙ってニコニコしている。

 

一方ナーベラル、いやナーベは『御方々が好きなようになさるのは当然では……』と首を傾げている。

 

ルプスレギナはリおん付き、ナーベラルがモモンガ付きである。

 

 

その役目はプレアデスで争奪戦になりかけたが、ソリュシャンは色々と有用、エントマは見た目が問題、シズは機密の問題と『最初は船旅なので()びないだろうか……』という理由から外され、ルプスレギナが譲らずユリにカルネ村を押し付けた結果こうなった。

 

なおネムに懐かれてユリは満更(まんざら)でもない。

エンリは『色々と』ホッとしていた。

 

……そうそう、一応と思ってリおんが(たず)ねたところ、リップヴァーンは船旅と聞いた時点で「……船旅……アドラー……うっ頭が」と辞退した。

 

今は『教育』と称してシズやエントマからモミクチャにされている。

 

曰く『あの御方(かわいいおとうと)とイチャイチャしたければ私を倒してから行け』らしい。

 

そうは言っても遊んでいるようにしか見えないが。

 

 

 

聖王国から北西方向の海を挟んだ対岸に位置する、亜人種が多数派の港町ポト・ダ・フォツナ出身の海洋(シー)リザードマン船長が笑って言う。

 

「ハッハッハ、大丈夫ですよ坊っちゃん。ちょうど今、号令をかけようと思っていたところです。さすがですな」

 

実際にはそんな事もないのだが、自分達に誇らしい仕事を任せてくれた偉大な船主の御曹司に気を遣っているのだ。

 

 

ポト・ダ・フォツナは元々、名前すらない小さな漁村……というより海洋(シー)リザードマンの部落に過ぎなかったのだが、今では様々な種族が行き交う一大都市となっており、また彼らが任された『夜明けの星』号は、未だにビランダーやキャラベルといった小型の帆船が各国の主力である時代にあって、大型かつ高速なクリッパーという他に類を見ない最新船舶だ。

 

ある日突然、世界を滅ぼすとされた恐ろしい魔樹を倒した『偉大なるナザリックの神々』が降り立ち『この地の繁栄を許そう。一週間後に逃げて来る人間が富を齎すであろう』と予言し、予言の通り現れた人物が海運事業を始めた結果……

 

言うまでもないだろう。全てナザリックの『仕込み』である。

 

リおん一人の『社会復帰訓練』のためだけに街を興したり国を多種族社会にイジくったりするのは守護者らにとっては当たり前の事だ。

 

 

蛇足だが創業者役は、ジョークアイテムで一時的にナイスミドルとなったリおんをコピーしたドッペルゲンガーだ。

 

蛇足の蛇足として、その時ルプスレギナがどうなったかは御察しの通りである。

 

卒倒(そっとう)して痙攣(けいれん)する姿を見たモモンガは『卑猥(ひわい)すぎてアウラやマーレの教育に良くない』と、プレアデス談話室に隔離するよう(何となくリおんの両目を覆い隠しながら)命じた。

 

もっともマーレに関しては、つい最近シャルティアが「小説とか読むのでありんしょう? コレがオススメでありんす。文字ばかりで(わらわ)には少ぅし忍耐が必要でありんすが、ペロロンチーノ様が残した高尚な書物でありんすえ」などと(そそのか)されて何か読んでいたようなので手遅れな気がしないでもない。

 

二人が知らないだけで『コウノトリ』やら『キャベツ畑』やらで誤魔化せるのはアウラだけになっているかも知れなかった。

 

 

 

さて、そんなわけで『夜明けの星』号は聖王国へと到着した。

 

 

見た事もない立派な商船に、港は大騒ぎである。

 

地元貴族やら聖王家はテンヤワンヤになるだろうが、悲惨な戦争や虐殺が起きるわけでなし、その辺の話は気にせず四人の行動に注目しよう。

 

 

「ここが聖王国かぁ! やっぱり微妙に建物とか服装の雰囲気が違うんだなぁ……」

 

目をキラキラさせて辺りをキョロキョロするリーオ。

 

先に降り立ったモモンは言った。

 

「分かっているとは思いますが、あまりウロチョロしてはいけませんよ?」

 

言いつつ『まぁ流石に社会人ギルドのメンバーなんだから大丈夫だろう』と、半分は冗談のつもりだ。

 

 

……返事がない。

 

 

振り返ると、

 

「……もういねぇ!? あンの犬っころがぁ!!

 

モモンは頭を抱えた。

 

「ナーベ! ルプー嬢! 坊っちゃんが消えた! 手分けして探すぞ!」

 

「ハッ!」

 

「捕まえたらココへ! ただし怪我人や人死には……」

 

 

……返事が一人分、足りない。

 

 

辺りを見回すと、

 

ルプーもいねぇ!? あンの駄犬姉弟がぁ!!!

 

 

 

「あら可愛らしい坊や♡ どこから来たの?」

 

「こんにちは! 海の向こうのポト・ダ・フォツナから来ました! お姉さん、だぁれ?」

 

「ふふふ♡ お姉さんはね? 王国から船の護衛で来た冒険者なの。リリネットお姉ちゃんって呼んでくれたら嬉しいわ?」

 

(ヤッベ、可愛すぎかよ! 王国めちゃくちゃになった時は焦ったけどホーム変えて良かったわー。守備範囲で言えばギリだけど全然アリよな。何が福に転じるか分かんねーもんだわ!)

 

「聖王国に来たの初めて? お姉さんが案内(・・)してあげよっか♡」

 

「ホント!?」

 

 

見事にヤベェ奴とエンカウントしたリおん。

 

しかし、リおんの側にもヤベェ奴はいるわけで……

 

 

私の(・・)弟に何の用かしら」

 

「あ、ルプーお姉ちゃん」

 

リリネットは一線級冒険者としての勘で悟った。

 

( ヤ ベ ェ () () () 強 ぇ 殺 さ れ る )

 

 





果たしてリリネット姉さんの運命や如何に()
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