【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
酒とカネと、呪いと強さ。
※蛇足かも知れませんが前話の補足
合成魔法というと疑似ほにょぺにょこ様の「漆黒の英雄モモン様は王国の英雄なんです!」を連想する方もいるかと思われますが、お見受けした限り、あちらはmixedのニュアンスで下位魔法の上位派生、こちらはsyntheticのニュアンスで上位魔法の下位互換ですので、ほぼ別物と認識して頂ければ幸いです。
単純に好みの問題で、アトリエシリーズや錬金術系の話が好きな私としては「混ぜ合わせて別の物に昇華」みたいなのが好きなんです。
「どうだ? バジウッド」
「いけませんねぇ、こいつぁ」
ジルクニフの問いにバジウッドが答えると、リおんは『ショボーン』と耳と尻尾を
しかし、バジウッドの真意は続く言葉にあったようで、ニヤリと笑ってこう言った。
「こんなんじゃ酒が進んで、騎士連中が
つまり悪くない、と。
それを聞いてリおんは
『パァア』
と顔を輝かせて耳を起こした。
「この酸っぺぇのは単体じゃキツイが、腸詰め肉と合わせりゃマジでうめぇ」
「ふむ、煮込みにすれば酸味は
行われているのはザワークラウトの試食だ。
「お酒が欲しくなるのは皆さんの気力で頑張ってもらうとして、軍用糧食には最適です。気を付けて作れば
「壊血病とは?」
リおんの言葉にジルクニフが質問する。
四騎士も『知らない』という表情だ。
「ほう、壊血病を防げるのかね」
「爺、知っているのか」
「海の遠い帝国では縁がない話でしょうな。長期間、沖に出た船乗りが
フールーダの説明にリおん以外は
「神官でも治せないのは仕方ないでしょうね。正確には病気ではないので」
「ほ?」「な、何?」
今度はフールーダも含めて不思議がる。
「リオン、そのような
「神官が治す『病気』というと
「なるほどのぅ、対処法を
それを聞いてジルクニフは
「……もしやこの情報、沿岸国に使えるか?」
「船乗りと仲良くなるんですか? 望遠鏡や
わかっているのか、いないのか。リおんから追加の提案が出される。
「羅針盤?」とジルクニフ。
「はい。磁石というのが…」リおんが説明する、が、
「
するとジルクニフはニヤリと笑い、
「……爺、あの『魔法
「ふむ……沿岸を切り
「帝国にとって
「ホッホッ、陛下もお人が悪い」
などと、ジルクニフが『カリスマ皇帝ムーヴ』をかまし、リおんが尻尾振りながら
『カッケー……』
などと、頭の中が
ちなみにリおんの『これ』はアバターの影響ではなく、ユグドラシル時代から変わっていない。
モモンガ相手にも『さすが非公式魔王パネェ』などと思っていた。
『カッコいいは正義』のようだ。
ウルベルトにもそうだったのだが、本人から
その反動か、ファンとの語らいで時々『ウルベルト・アレイン・オードルが
ファンの受けが悪くないと思って話していたようだが、そのファンらは何も『ウルベルトのカッコよさ』にキャーキャー言っていたわけではない。
そいつらは
『ヤギさんにオオカミくんが…』などという
何、茶釜?……知らないなぁ。
だからこれからも、顔に出さなくとも自分の尻尾が意外と動いていて、それがどんな風に見られているかとか、
ジルクニフと行動を共にする事が増えてからの帝国貴族令嬢の
(リアルで
閑話休題。
ジルクニフは様子の違いに、すぐ気付いた。
「何かあったか」
「南部の
カッツェ平野が霧に
帝国は内陸国で
「……そうか。
ジルクニフが
「フールーダさん、
「何をしようというんじゃ?」
「カビた葡萄でも乾燥できればワインになるかも知れません。その畑は白葡萄でしょうか」
ジルクニフも
「リオン、本気か。カビだぞ? カビ」
「
……先程の話とは関係ない、はずだ。
貴腐ワイン
「やはり、一定数いるか」
「
ある程度の技術が必要なため、まだ蒸留酒は一般的ではない。
そのため酒税の対象でなく、
技術が
「税金……陛下、銀行ってありましたよね」
リおんが
「あぁ、大口の取引では金貨や白金貨は重いからな。移送のリスクがなくなる」
「銀行はお金を貸したりとかも?」
「まぁな。それがどうかしたか」
「ぁー……いえ、『今』は関係ない話でしたね。失礼しました。……闇業者という事でしたが、いっそ認可制にしては?」
「? ……認可か。まぁ『酔えれば良い』という程度の
「ワイン
「ほう?(王国貴族を酒
などという具合で、王国はカモに、聖王国は『こちら寄りの中立』に、あわよくば帝国版の火酒でドワーフ王国から武具を買えないか、と本人達の知らないところで扱いが決められていく。
「陛下、聖王国と仲良くするなら、いつか公演とかできますか?」
ワクワクしながらリおんが聞くと、横からバジウッドがニヤニヤしながらこう言った。
「おうリオン、言っとくが聖王国ってのはガチガチの『光の神』信仰で、亜人とは、ずぅっと戦争し続けてる国だ。お前みたいなナザリック教徒のワーウルフのガキが行ったら、あっという間に丸焼きにされて食われちまうぞ?」
それを聞いてリおんは「ひぃぃぃぃ」と顔を青くした。
「おいバジウッド、あまり
そう言われてリおんはガッカリした。
気を取り直し地図を見ながらリおんは、
「陛下、地図を見て思ったんですが、竜王国と都市国家連合も『隣国』ですよね? どういう国なんですか?」
「竜王国は
「
今やリおんの存在は重要だ。
帝国に魅力がないなどとは言わないが、
外国での公演実現は、遠いらしい。
話が終わり退室したリおんは
「……金券板だけで帝国経済が回ればウハウハなんだけどなぁ……けど『急げば事を
そんな、廊下を歩くリおんに忍び寄る
「リオン君」
「レイナースさん。何かご用で?」
(レイナースさんって、ちょっと苦手なんだよなぁ……何となく目のハイライト消えてる感じ。前にPKしてきたファンに似てる気が……)
好意を示してきた相手が、いきなり殺しにかかってきた事で軽くトラウマになっているらしい。
レイナースが口を開く。
「少し相談したい事が……今よろしいかしら」
「えぇ、大丈夫ですよ」
「ここでは、ちょっと……」というレイナースに連れられ、談話室に。
リおんは
「それで、お話というのは?」
(なるべく手短に済ませたいな……)
「……あなたが
「何についてですか?」
「……
「呪い!? い、いえ……」
デリケートな話題のため、誰もリおんには
レイナースは「そう……」と、呪いを受けた
「あの……レイナースさん。確認したいんですけど、呪いを受けたのはモンスターの死に際だったんですね?」
「そうですわ」
(『
実際には違うのだが、レイナースが倒したモンスターを高レベルだと
そして、
(『そんな事』一対一で話せるわけないじゃん!殺されるぅ!)
内容が内容だけに、ジルクニフも交えて話をしたいと、リおんはレイナースを連れて執務室へ戻る事に。
「どうしたリオン。何かあったか」
「陛下、レイナースさんに相談を受けて、呪いの事で、ちょっと……」
ジルクニフは『とうとう来たか』と思った。
リおんが知識豊かな事を知って、レイナースが動かないはずはないと前々から考えていた。
「……わざわざ私に聞かせるという事は、何か知っているんだな?」
ここにはバジウッドら他の騎士もいる。いざとなれば止めてくれるだろう、とリおんは
知らないと
「……本人が『その方法』を受け入れるかは別として、はい、解呪方法は知っています」
「ほ、本当ですの!? どんな方法でも
「お お お 落ち着いて下さい!?」
両肩を
「レイナース! 落ち着け。話してくれると言っているだろう」
ジルクニフに諫められ、レイナースは手を放す。
「してリオン、その方法とは?」
ジルクニフに
「……陛下、蘇生魔法を使える方を紹介して下さい」
「……蘇生魔法?」
「その方法は……『死んで生き返る事』です」
「な!?」
「『死に際の呪い』は、呪いの中で最も強力で、それくらいしか方法がないんです」
それを聞いたレイナースは、
「……死……死ねば……ふふ……それだけで、呪いが……うふふふふ」
するとレイナース、手にぶら下げていた槍を、くるりと
「いかん! 止めろ!!」
ジルクニフの
「いやぁ! 離して! 呪いが、呪いが解け」
「やめて下さいレイナース! 早まった
「……!……!」
───こういう時くらい何か言ったらどうなのかナザミ……
「レイナース落ち着けや! 生き返らねぇと意味ねぇだろうが! 今死んでも腐るぞ!」
バジウッドの
「バジウッドの言う通りだレイナース。お前との契約上、解呪の邪魔はせんが、せめて準備を整えてからにしろ。蘇生の成功率が下がるぞ」
それを受けて『
ちなみにリおんは『レイナースさんメッチャ強いらしいから止めに入ったら死なないかな』と
今はペタン座りで放心状態である。
ジルクニフは
「……
「蒼の薔薇とは何ですか陛下」
「王国の冒険者チームだ。冒険者は政治に
「という事は『そう簡単な話ではない』んですね?」
「……チームリーダーが王国貴族の娘だ」
「あらら。あまり知られたくないし、そもそも受けてもらえるか、と?」
「名義はどうとでもなる。問題はレイナースが弱体化したという情報だ」
「あ……陛下、『弱体化』で、もう一つ
と、リおんは追加情報を出した。
「何だ」
「レイナースさん、たぶん『カースドナイト』です」
「カースドナイト?」
「騎士が呪われると、呪いから力を得るカースドナイトになるんです。相手の武具を破壊したり、代わりに、低品質の武具を装備できなくなったり」
「……間違いなさそうだな」
ジルクニフはレイナースの様子を見て判断した。
彼女は話を聞いてハッとした後、自身の手を見てワナワナと震えていた。
「……呪いを、力に?……
知らず呪いの力を借りていた事が
「……と、なれば普通に蘇生した場合以上に弱体化するわけか」
レイナースは解呪のためなら迷いなく
戦力に穴が開く事にジルクニフは頭を痛める。
リおんはレイナースに質問した。
「レイナースさんは、槍の他に技能は?」
「信仰系魔法を少々。何故ですの?」
「……方向性は違うけど、強さを取り戻すのは簡単かも?」
「! リオン、どういう事だ」
ジルクニフが
「たぶん、レイナースさんならアンデッドを倒しまくれば聖騎士になれます。攻撃力は下がりますけど、防御力は上がります」
「……聖騎士とは、そんな簡単になれるものなのか? 聖王国では育成している割に、全員がなれるわけではないらしいが」
「聖王国ってアンデッド出ますか?」
「いや、信仰が信仰だからな。
「……それが原因かと。僕にとって聖騎士はアンデッドを倒すものと思ってます。たぶん救済っていうか何ていうか『
「……
ちなみに竜王国の聖堂騎士団は『聖堂』の騎士団であって、聖騎士は
リおんの話を聞いたジルクニフは『逆に
「レイナース、お前の意思としてはどうなのだ。呪いを解いた上で力を取り戻すのも
「それは……」レイナースは言い
「まぁ、良い。返事はすぐとは言わん。だが、残る気があるなら私は復帰を待とう。考えておけ」
「……はっ」
「とりあえず、蒼の薔薇への依頼は手配してやろう。向こうの判断はわからんがな」
「レイナースさん」
話が
リおんはレイナースに話しかける。
「呪いを解いて、自分に冷たく当たってきた人たちを見返すって言ってましたよね」
「えぇ、ようやく
「……レイナースさん、これだけは覚えていてほしいんですが、呪いは解けても、思ったような反応は返って来ないと思います」
「……どういう事でしょう」
「その人達は、レイナースさんが呪いを受けたから
「……え?」
「都合のいい理由が欲しかっただけで、呪いを解いても『呪われたレイナース』が『呪われていたレイナース』に変わるだけかも知れません」
「……」
絶句しつつも、そうかも知れないとレイナースは思った。
「そんな人達は早く忘れてしまった方がいいと思います。呪いを受けても態度を変えなかった人がいるなら、その人達の事だけ大切にしてあげて下さいね」
《歌う林檎亭にて》
アルシェは一人、酒場スペースで仲間を待っていた。
アルシェが来た時点で誰もおらず、恐らく買い出しや情報収集にでも出ているのだろう。
これまでも、そういう事はよくあった。
誰かが入って来て意識を向けたが、見知らぬ男だった。
剣士の力量は見
受付でのやり取りが聞こえてきた。
「リオン・ガヴリールに伝言を頼みたい」
思わぬ名前が出た事に、会話の内容に注意を向けたアルシェ。
男は名前を告げると、口元だけに笑みを浮かべ言った。
「俺が会いたがっていると伝えてくれ……『あの時は
その
(まさか……リオン君が殺されちゃう!?)
『仲間達に相談しなければ。それより先に彼が来て見つかったりしませんように』と祈りつつ、アルシェは顔を青くしながら仲間達の帰りを待つのであった。
…まぁ未遂ってか結局は解呪のために死ぬわけだけど()