【完結】おおかみ☆せんせーしょん(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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酒とカネと、呪いと強さ。

※蛇足かも知れませんが前話の補足

合成魔法というと疑似ほにょぺにょこ様の「漆黒の英雄モモン様は王国の英雄なんです!」を連想する方もいるかと思われますが、お見受けした限り、あちらはmixedのニュアンスで下位魔法の上位派生、こちらはsyntheticのニュアンスで上位魔法の下位互換ですので、ほぼ別物と認識して頂ければ幸いです。

単純に好みの問題で、アトリエシリーズや錬金術系の話が好きな私としては「混ぜ合わせて別の物に昇華」みたいなのが好きなんです。


レイナース自殺未遂事件

 

「どうだ? バジウッド」

 

 

「いけませんねぇ、こいつぁ」

 

 

ジルクニフの問いにバジウッドが答えると、リおんは『ショボーン』と耳と尻尾を()らした。

 

しかし、バジウッドの真意は続く言葉にあったようで、ニヤリと笑ってこう言った。

 

 

「こんなんじゃ酒が進んで、騎士連中が呑兵衛(のんべぇ)になっちまいますぜ」

 

 

つまり悪くない、と。

 

それを聞いてリおんは

パァア

と顔を輝かせて耳を起こした。

 

 

「この酸っぺぇのは単体じゃキツイが、腸詰め肉と合わせりゃマジでうめぇ」

 

 

「ふむ、煮込みにすれば酸味は(やわ)らぐらしいからな。採用だ」

 

 

行われているのはザワークラウトの試食だ。

 

 

「お酒が欲しくなるのは皆さんの気力で頑張ってもらうとして、軍用糧食には最適です。気を付けて作れば保存(プリザベイション)なしでも数ヶ月は持ちますし、壊血病(かいけつびょう)も防げますからね」

 

 

「壊血病とは?」

 

 

リおんの言葉にジルクニフが質問する。

 

四騎士も『知らない』という表情だ。

 

 

「ほう、壊血病を防げるのかね」

 

 

「爺、知っているのか」

 

 

「海の遠い帝国では縁がない話でしょうな。長期間、沖に出た船乗りが(わずら)(やまい)でして、歯茎(はぐき)や毛穴、鼻などから血が出て、傷の治りが悪くなったり古傷が開いたり、骨折跡も(もろ)くなり、衰弱(すいじゃく)して最後には死にますじゃ。神官でも治せないとか」

 

 

フールーダの説明にリおん以外は(ふる)え上がる。

 

 

「神官でも治せないのは仕方ないでしょうね。正確には病気ではないので」

 

 

「ほ?」「な、何?」

 

 

今度はフールーダも含めて不思議がる。

 

 

「リオン、そのような(おそ)ろしい症状で病気ではないとは、どういう事だ」

 

 

「神官が治す『病気』というと疫病(えきびょう)のように『体の外から来るもの』です。壊血病は、どちらかと言えば『疲労』に当たります。野菜不足なんですよ。船の上では腸詰め肉とかの保存食ばかりですから」

 

 

納得(なっとく)したのかフールーダは(ひたい)を『ペチリ』と叩いた。

 

 

「なるほどのぅ、対処法を(あやま)っとったのか」

 

 

それを聞いてジルクニフは悪巧(わるだく)みを考えた。

 

 

「……もしやこの情報、沿岸国に使えるか?」

 

 

「船乗りと仲良くなるんですか? 望遠鏡や羅針盤(らしんばん)も喜ばれますね」

 

 

わかっているのか、いないのか。リおんから追加の提案が出される。

 

 

「羅針盤?」とジルクニフ。

 

「はい。磁石というのが…」リおんが説明する、が、

 

方位探知(コンパス)という魔法があるぞい」とフールーダが指摘した。

 

 

するとジルクニフはニヤリと笑い、

 

 

「……爺、あの『魔法音痴(おんち)』の王国であればどうだ」

 

「ふむ……沿岸を切り(くず)し『外堀(そとぼり)()める』と?」

 

「帝国にとって(のぞ)ましいタイミングで物流が止まれば、王国は愉快(ゆかい)な事になるだろうな」

 

「ホッホッ、陛下もお人が悪い」

 

 

などと、ジルクニフが『カリスマ皇帝ムーヴ』をかまし、リおんが尻尾振りながら

カッケー……』

などと、頭の中が吟遊詩人(バード)と思えぬほど語彙力(ごいりょく)が死ぬ、いつもの雰囲気(ふんいき)である。

 

 

ちなみにリおんの『これ』はアバターの影響ではなく、ユグドラシル時代から変わっていない。

 

モモンガ相手にも『さすが非公式魔王パネェ』などと思っていた。

 

『カッコいいは正義』のようだ。

 

ウルベルトにもそうだったのだが、本人から(きら)われており遠巻きに見ているだけであった。

 

 

その反動か、ファンとの語らいで時々『ウルベルト・アレイン・オードルが如何(いか)にカッコいいか』を語る事があった。

 

ファンの受けが悪くないと思って話していたようだが、そのファンらは何も『ウルベルトのカッコよさ』にキャーキャー言っていたわけではない。

 

そいつらは(くさ)っていた。

 

『ヤギさんにオオカミくんが…』などという妄想(もうそう)で黄色い声を上げていただけである。

 

 

何、茶釜?……知らないなぁ。

 

 

()(かく)、その齟齬(そご)に本人は気付いていなかった。

 

だからこれからも、顔に出さなくとも自分の尻尾が意外と動いていて、それがどんな風に見られているかとか、

ジルクニフと行動を共にする事が増えてからの帝国貴族令嬢の(みょう)な視線とか、

(リアルで蔓延(はびこ)っていたものと比べたら(つつ)ましやかとはいえ)皇帝陛下との『友情』について書かれた本などが密かに出回ったとしても、きっと気付かないのだろう。

 

 

閑話休題。

 

 

(なご)やかに(?)陰謀を張り(めぐ)らせる相談をしていたらロウネが早足気味にやって来た。

 

 

ジルクニフは様子の違いに、すぐ気付いた。

 

 

「何かあったか」

 

 

「南部の葡萄(ぶどう)は全滅かも知れません。長雨の影響でカビが蔓延(まんえん)しております」

 

 

カッツェ平野が霧に(おお)われ日が(さえぎ)られている影響か、南部は南風が吹く季節になったり長雨が降ると湿度が上がる。

 

帝国は内陸国で寒暖差(かんだんさ)(はげ)しく、葡萄は甘くなりやすいが、そこに湿度(しつど)が入るとカビも繁殖(はんしょく)しやすい。

 

 

「……そうか。収穫(しゅうかく)が近いと聞いていたんだが、残念だ。そうなると焼くしかないか」

 

 

ジルクニフが嘆息(たんそく)しているとリおんが

 

「フールーダさん、雲操作(コントロール・クラウド)でも水破壊(ディストラクション・ウォーター)でもいいですけど畑を乾燥とかできます? それか天気予報とか」

 

 

「何をしようというんじゃ?」

 

 

「カビた葡萄でも乾燥できればワインになるかも知れません。その畑は白葡萄でしょうか」

 

 

ジルクニフも流石(さすが)に気持ち悪そうに聞く。

 

 

「リオン、本気か。カビだぞ? カビ」

 

貴腐(きふ)ワインといいまして……」

 

 

……先程の話とは関係ない、はずだ。

 

 

 

 

 

貴腐ワイン云々(うんぬん)はフールーダらに任せる事として送り出し、ジルクニフはロウネと『酒税逃れ』について話していた。

 

 

「やはり、一定数いるか」

 

 

摘発(てきはつ)はしているんですが……」

 

 

ある程度の技術が必要なため、まだ蒸留酒は一般的ではない。

 

そのため酒税の対象でなく、薬師崩(くすしくず)れや、ドワーフの『火酒(かしゅ)』を真似(まね)る闇業者が、酒税から逃れようと密造酒を作っている。

 

技術が未熟(みじゅく)な分、事故も多い。

 

 

「税金……陛下、銀行ってありましたよね」

 

リおんが(たず)ねる。

 

 

「あぁ、大口の取引では金貨や白金貨は重いからな。移送のリスクがなくなる」

 

 

「銀行はお金を貸したりとかも?」

 

 

「まぁな。それがどうかしたか」

 

 

「ぁー……いえ、『今』は関係ない話でしたね。失礼しました。……闇業者という事でしたが、いっそ認可制にしては?」

 

 

「? ……認可か。まぁ『酔えれば良い』という程度の代物(しろもの)でも、売れていれば税は取れるか。事故も減る。頻繁(ひんぱん)に火事など起こされては(かな)わんからな」

 

 

「ワイン(だる)やシェリー酒樽で熟成すると味も香りも良くなりますよ? 調香師のようにブレンダーを資格にしたら高品質な酒も作れます。貴族にだって売れますよ」

 

 

「ほう?(王国貴族を酒(びた)りに……)」

 

 

などという具合で、王国はカモに、聖王国は『こちら寄りの中立』に、あわよくば帝国版の火酒でドワーフ王国から武具を買えないか、と本人達の知らないところで扱いが決められていく。

 

 

「陛下、聖王国と仲良くするなら、いつか公演とかできますか?」

 

 

ワクワクしながらリおんが聞くと、横からバジウッドがニヤニヤしながらこう言った。

 

 

「おうリオン、言っとくが聖王国ってのはガチガチの『光の神』信仰で、亜人とは、ずぅっと戦争し続けてる国だ。お前みたいなナザリック教徒のワーウルフのガキが行ったら、あっという間に丸焼きにされて食われちまうぞ?」

 

 

それを聞いてリおんは「ひぃぃぃぃ」と顔を青くした。

 

 

苦笑(くしょう)しながらジルクニフがバジウッドを(いさ)める。

 

 

「おいバジウッド、あまり(おど)かしてやるな。外交だの何だのという形で入れば、流石に問答無用で殺されたりはせん。とはいえ、歓迎されないだろうというのは事実だな」

 

 

そう言われてリおんはガッカリした。

 

 

気を取り直し地図を見ながらリおんは、

 

「陛下、地図を見て思ったんですが、竜王国と都市国家連合も『隣国』ですよね? どういう国なんですか?」

 

 

「竜王国は(かか)わりたくないな。年がら年中ビーストマンに()()まれている。下手(へた)(さわ)ると『支援を寄越(よこ)せ』と言われてしまう。都市国家連合は構造的にも種族的にも(まとま)りがない。そこそこ活気(かっき)はあるが、あまり気にする必要はないな」

 

 

脅威(きょうい)にも利益にもなりにくいって事ですか」

 

 

(うそ)ではないが、ジルクニフは意図的(いとてき)に情報を少なく教えた。

 

今やリおんの存在は重要だ。

 

(ひるがえ)って、竜王国は聖堂騎士団の存在もあり『半ナザリック教国』といっても良く、都市国家連合は亜人や獣人の国。

 

帝国に魅力がないなどとは言わないが、敬虔(けいけん)なナザリック教徒 (とジルクニフは思っている) でワーウルフのリおんには、あまり興味を持たれたくないのが本音である。

 

外国での公演実現は、遠いらしい。

 

 

話が終わり退室したリおんは(ひと)()ちる。

 

 

「……金券板だけで帝国経済が回ればウハウハなんだけどなぁ……けど『急げば事を仕損(しそん)じる』とも言うし、国民の頭が追い付かなくて恐慌(きょうこう)なんて笑えない……他国にも銀行ができてからの話かな……まぁいいや」

 

 

そんな、廊下を歩くリおんに忍び寄る(あや)しい影……

 

 

「リオン君」

 

「レイナースさん。何かご用で?」

 

(レイナースさんって、ちょっと苦手なんだよなぁ……何となく目のハイライト消えてる感じ。前にPKしてきたファンに似てる気が……)

 

 

好意を示してきた相手が、いきなり殺しにかかってきた事で軽くトラウマになっているらしい。

 

 

レイナースが口を開く。

 

「少し相談したい事が……今よろしいかしら」

 

 

「えぇ、大丈夫ですよ」

 

 

「ここでは、ちょっと……」というレイナースに連れられ、談話室に。

 

リおんは警戒(けいかい)心から変な汗が出ていた。

 

 

「それで、お話というのは?」

(なるべく手短に済ませたいな……)

 

 

「……あなたが博識(はくしき)なので、もしかしたら何か知っているかと思いましたの」

 

()し目がちに切り出すレイナース。

 

 

「何についてですか?」

 

 

「……(わたくし)の顔の呪いについては、誰かにお聞きかしら」

 

 

「呪い!? い、いえ……」

 

 

デリケートな話題のため、誰もリおんには()げていなかった。

 

レイナースは「そう……」と、呪いを受けた経緯(けいい)について話した。

 

 

 

「あの……レイナースさん。確認したいんですけど、呪いを受けたのはモンスターの死に際だったんですね?」

 

 

「そうですわ」

 

 

(『()(ぎわ)の呪い』かよぉ……レイナースさん、そんなモンスター倒せるくらい強いんだ……)

 

 

実際には違うのだが、レイナースが倒したモンスターを高レベルだと勘違(かんちが)いしたリおんは『下手な事を言って逆上されたら殺される』と、悲惨(ひさん)末路(まつろ)(むか)えた自分の姿を想像した。

 

 

そして、流れ星の指輪(シューティングスター)を使えば解除できるとは思ったものの、強力なアイテムを使う事に抵抗を感じ、『もう一つの方法を選ぶべきか、しかし……』と悩んでいた。

 

 

(『そんな事』一対一で話せるわけないじゃん!殺されるぅ!)

 

 

内容が内容だけに、ジルクニフも交えて話をしたいと、リおんはレイナースを連れて執務室へ戻る事に。

 

 

「どうしたリオン。何かあったか」

 

 

「陛下、レイナースさんに相談を受けて、呪いの事で、ちょっと……」

 

 

ジルクニフは『とうとう来たか』と思った。

 

リおんが知識豊かな事を知って、レイナースが動かないはずはないと前々から考えていた。

 

 

「……わざわざ私に聞かせるという事は、何か知っているんだな?」

 

 

ここにはバジウッドら他の騎士もいる。いざとなれば止めてくれるだろう、とリおんは覚悟(かくご)を決めた。

 

知らないと誤魔化(ごまか)選択肢(せんたくし)は最初からなかった。

(なや)んでいるくらいなのだから、呪いは()いてやりたい、と。

 

 

「……本人が『その方法』を受け入れるかは別として、はい、解呪方法は知っています」

 

 

「ほ、本当ですの!? どんな方法でも(かま)いませんわ! 教えて下さいまし!!」

 

 

お お お 落ち着いて下さい!?

 

 

両肩を(つか)まれ、ハイライトの消えた目で(せま)られてトラウマを刺激されるリおん。涙目である。

 

 

「レイナース! 落ち着け。話してくれると言っているだろう」

 

 

ジルクニフに諫められ、レイナースは手を放す。

 

 

「してリオン、その方法とは?」

 

 

ジルクニフに(うなが)され、意を決する。

 

 

「……陛下、蘇生魔法を使える方を紹介して下さい」

 

 

「……蘇生魔法?」

 

 

「その方法は……『死んで生き返る事』です」

 

 

「な!?」

 

 

「『死に際の呪い』は、呪いの中で最も強力で、それくらいしか方法がないんです」

 

 

それを聞いたレイナースは、怖気(おぞけ)が走るような笑みを浮かべ、譫言(うわごと)のように(つぶや)いた。

 

……死……死ねば……ふふ……それだけで、呪いが……うふふふふ

 

 

するとレイナース、手にぶら下げていた槍を、くるりと

 

 

「いかん! 止めろ!!」

 

 

ジルクニフの(さけ)びにすぐ騎士三人は取り押さえにかかる。

 

 

いやぁ! 離して! 呪いが、呪いが解け」

 

「やめて下さいレイナース! 早まった真似(まね)は!」

 

「……!……!」

 

───こういう時くらい何か言ったらどうなのかナザミ……

 

「レイナース落ち着けや! 生き返らねぇと意味ねぇだろうが! 今死んでも腐るぞ!」

 

 

バジウッドの指摘(してき)に糸口を見付けたジルクニフは説得に入った。

 

 

「バジウッドの言う通りだレイナース。お前との契約上、解呪の邪魔はせんが、せめて準備を整えてからにしろ。蘇生の成功率が下がるぞ」

 

 

それを受けて『渋々(しぶしぶ)』といった様子ながら抵抗をやめ「見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんわ陛下」と、ダウナーな感じに戻るレイナース。

 

 

ちなみにリおんは『レイナースさんメッチャ強いらしいから止めに入ったら死なないかな』と躊躇(ちゅうちょ)してしまい、ただオロオロして終わった。

 

今はペタン座りで放心状態である。

 

 

ジルクニフは安堵(あんど)とも(あき)れともつかない息を深く()いた。

 

 

「……()(かく)、蘇生魔法か。国としての依頼はしたくないな。弱みを見せるわけにいかん。と、なれば『蒼の薔薇』か……」

 

 

「蒼の薔薇とは何ですか陛下」

 

(かろ)うじて精神を取り戻したリおんが質問する。

 

 

「王国の冒険者チームだ。冒険者は政治に関与(かんよ)しない。依頼であれば帝国だろうと関係ない……建前(たてまえ)としてはな」

 

 

「という事は『そう簡単な話ではない』んですね?」

 

 

「……チームリーダーが王国貴族の娘だ」

 

 

「あらら。あまり知られたくないし、そもそも受けてもらえるか、と?」

 

 

「名義はどうとでもなる。問題はレイナースが弱体化したという情報だ」

 

 

「あ……陛下、『弱体化』で、もう一つ懸念(けねん)が」

 

と、リおんは追加情報を出した。

 

 

「何だ」

 

 

「レイナースさん、たぶん『カースドナイト』です」

 

 

「カースドナイト?」

 

 

「騎士が呪われると、呪いから力を得るカースドナイトになるんです。相手の武具を破壊したり、代わりに、低品質の武具を装備できなくなったり」

 

 

「……間違いなさそうだな」

 

 

ジルクニフはレイナースの様子を見て判断した。

 

彼女は話を聞いてハッとした後、自身の手を見てワナワナと震えていた。

 

 

「……呪いを、力に?……忌々(いまいま)しい!!

 

知らず呪いの力を借りていた事が(くや)しかったのだろう。

 

 

「……と、なれば普通に蘇生した場合以上に弱体化するわけか」

 

 

レイナースは解呪のためなら迷いなく()するだろう。

 

戦力に穴が開く事にジルクニフは頭を痛める。

 

 

リおんはレイナースに質問した。

 

「レイナースさんは、槍の他に技能は?」

 

 

「信仰系魔法を少々。何故ですの?」

 

 

「……方向性は違うけど、強さを取り戻すのは簡単かも?」

 

 

「! リオン、どういう事だ」

ジルクニフが(つぶや)きを(ひろ)った。

 

 

「たぶん、レイナースさんならアンデッドを倒しまくれば聖騎士になれます。攻撃力は下がりますけど、防御力は上がります」

 

 

「……聖騎士とは、そんな簡単になれるものなのか? 聖王国では育成している割に、全員がなれるわけではないらしいが」

 

 

「聖王国ってアンデッド出ますか?」

 

 

「いや、信仰が信仰だからな。墓地(ぼち)やらは念入りに(きよ)め、戦場ですらアンデッドの発生率は低いとか」

 

 

「……それが原因かと。僕にとって聖騎士はアンデッドを倒すものと思ってます。たぶん救済っていうか何ていうか『(むく)われぬ魂を神の御元(みもと)へ』って事じゃないでしょうか」

 

 

「……宰相(さいしょう)性悪(しょうわる)女に聞かせてみたいな。どんな顔をする事やら」

 

 

意地悪(いじわる)い顔でジルクニフが呟く。実際にはそんな『親切』な事をするつもりはないのだろうが。

 

 

ちなみに竜王国の聖堂騎士団は『聖堂』の騎士団であって、聖騎士は(ほとん)どいない。

 

 

リおんの話を聞いたジルクニフは『逆に欺瞞(ぎまん)情報として使える』と判断し、

 

「レイナース、お前の意思としてはどうなのだ。呪いを解いた上で力を取り戻すのも困難(こんなん)ではないならば、四騎士に残る気はあるのか」

 

 

「それは……」レイナースは言い(よど)む。

 

 

「まぁ、良い。返事はすぐとは言わん。だが、残る気があるなら私は復帰を待とう。考えておけ」

 

 

「……はっ」

 

 

「とりあえず、蒼の薔薇への依頼は手配してやろう。向こうの判断はわからんがな」

 

 

 

 

 

「レイナースさん」

 

 

話が(まとま)り廊下に出た二人。

 

リおんはレイナースに話しかける。

 

 

「呪いを解いて、自分に冷たく当たってきた人たちを見返すって言ってましたよね」

 

 

「えぇ、ようやく(かな)いそうで嬉しく思いますわ」

 

 

「……レイナースさん、これだけは覚えていてほしいんですが、呪いは解けても、思ったような反応は返って来ないと思います」

 

 

「……どういう事でしょう」

 

 

「その人達は、レイナースさんが呪いを受けたから(てのひら)を返したわけじゃないかも知れないって事です」

 

 

「……え?」

 

 

「都合のいい理由が欲しかっただけで、呪いを解いても『呪われたレイナース』が『呪われていたレイナース』に変わるだけかも知れません」

 

 

「……」

絶句しつつも、そうかも知れないとレイナースは思った。

 

 

「そんな人達は早く忘れてしまった方がいいと思います。呪いを受けても態度を変えなかった人がいるなら、その人達の事だけ大切にしてあげて下さいね」

 

 

気遣(きづか)わしげにそれだけ告げると「それじゃ」と去っていくリおんの後ろ姿を、レイナースはしばらく見つめていた。

 

 

 

 

 

《歌う林檎亭にて》

 

 

アルシェは一人、酒場スペースで仲間を待っていた。

 

アルシェが来た時点で誰もおらず、恐らく買い出しや情報収集にでも出ているのだろう。

 

これまでも、そういう事はよくあった。

 

 

誰かが入って来て意識を向けたが、見知らぬ男だった。

 

風貌(ふうぼう)から(さっ)するに、新顔のワーカーか何かだろうと判断した。

 

剣士の力量は見()けないが、何となく強そうに感じる。

 

 

受付でのやり取りが聞こえてきた。

 

 

「リオン・ガヴリールに伝言を頼みたい」

 

 

思わぬ名前が出た事に、会話の内容に注意を向けたアルシェ。

 

 

男は名前を告げると、口元だけに笑みを浮かべ言った。

 

 

「俺が会いたがっていると伝えてくれ……あの時は世話(・・)になったとな」

 

 

その剣呑(けんのん)な雰囲気に、アルシェは戦慄(せんりつ)する。

 

 

(まさか……リオン君が殺されちゃう!?)

 

 

『仲間達に相談しなければ。それより先に彼が来て見つかったりしませんように』と祈りつつ、アルシェは顔を青くしながら仲間達の帰りを待つのであった。





…まぁ未遂ってか結局は解呪のために死ぬわけだけど()
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