出来についての保証は致しかねますが
それでも宜しければ、どうぞ
カズからもやっとハルとの仲を取り戻したと聞いた
それを聞いて安心した
となれば、俺もいい加減決着つけないといけないよな
4限目の授業を受けながら、俺はぼんやりとそう考えていた
4限目が終わるなり、俺はハルに一通のメールを送った
その後、ののかと柚ノ木さんに声をかけてから、一旦家に戻る
今だけは誰とも会いたくなかったから
新見遙佳は驚いていた
漸く昔の関係に戻る事の出来た前田一也の親友?それとも悪友である彼からメールが届いたからだ
前田一也ことカズくんと疎遠になってからも、彼は自分とカズくんの事を気にかけていた
カズくんに一歩でも歩み寄れば良かったのに、拒否される事を恐れたからその一歩がいつまでも踏み出せなかった
そんな臆病な自分を励ましてくれたのが彼である
小学校が同じであった為に余程の事情がない限りは二人と同じ中学になるだろう
でも、当時の私はカズくんが転校する可能性がほんの少しでもあった、いや私には分からなかったからこそあの時期かなり心を乱していた
そんな私を見かねて、彼はカズくんからではなく妹の果音ちゃんからそれとなく引越しの有無を確認してくれたのだ
結果として、私の心配は杞憂である事は分かったものの、やはりカズくんとの別れが私にとって受け入れ難いものである事を改めて痛感した形となった
何せカズくんが転校するかどうか分からないだけで私の精神的バランスはかなり崩れてしまったのだから
そこまでカズくんの事を想っているのに、何一つ自分からカズくんにしていない
全部彼がしてくれたから
でもそんな彼が一度もした事がないことがある
私への彼からのメールだ
返信はする
でも私から何らかの緊急の用事がなければ電話か口頭で済ませていた
メールを彼は決して私としようとしなかった
そんな彼が初めて自分から私にメールを送っている
どんな用件か想像出来ないが、それでも真摯に応えよう
私はそう思い、恐る恐るメールフォルダを開いた
件名:無題
内容:今日の放課後少し時間を貰いたい
時間についてはハルに任せるから、決まったら連絡宜しく
バイトについては心配しなくても良い
なんとも素気ないメールの内容に私は思わず脱力した
確かに彼は表情筋が死んでる。だの
こいつの面の皮の厚さはバリケード並み
などと呼ばれている
でも、私やカズくんや果音ちゃんにののかちゃんは知っている
意外と、いやこう言ったら彼は不機嫌そうになるが本当に意外な事に彼はかなりデリケートなのだ
内面と外見のギャップに苦しんでいる事を知っている遙佳としては、こういった素気ない部分を治すべきだといつも彼に言っていたりする
が、彼は頑なにそれを受け入れてくれないのが遙佳の彼についての数少ない悩みだったりする
新見、さんどうしたの?
カズくんが私を心配して声をかけてくる
嬉しいのだが、以前の様にハルと呼んで欲しいのが本音である
もう
別にあなたと私の仲でしょ?
そんな他人行儀な呼び方は悲しいよ
あ、いやそのさ
ハルだと被るかなって
ふふっ、なにそれ
意外である
オンリーワンに拘るなど以前の彼からは到底考えつかない
だがある意味では嬉しくもある
あるのだが
でもあなただけの考えじゃないのよね?
うっ、いやまぁその
私は目の前の彼の事を5年以上も想い続けてきた
鉄面皮の人と違って感情が表情に出やすい彼の内心を察するなと朝飯前だ
カズくんとの間を取り持とうしてくれた彼曰く
なぁ、ハル
流石に此処までお膳立てしてるのに何もしないってのは、ちょっと
と若干白い目で見られていながらも、何とか心を折ることなく今日という日を迎えられた私からすれば、カズくんの表情を読むなどなんの事はないのだ
想いが重いなぁ
などと常日頃から言われたり、果音ちゃんからも
ハルにゃんそれはちょっと
と言われても私は決して挫けなかったから!
放課後、私はテニス部に行くのを少しずらして校舎裏で彼を待っていた
多分だけど人目を憚る用事だと思えたから
ハルはやっぱりと言うか校舎裏にいた
まぁ、俺が校内でハルと大っぴらに話をするのを最近避けていたからな
そりゃ分かるか
それなりに長い付き合いになってる訳だしな
俺は内心苦笑してしまう
5年以上もまぁ良く黒子に徹したもんだ
我ながら驚くほかない
俺はカズの幼馴染であり、悪友でもある
俺はハルの小学校からの友人であり、〇〇〇なのだ
だからこそ、二人が悲しみ苦しむのを見るのが辛かった
それこそ、自分の想いに蓋をしてまでも
カズとハルはこのままうまくいくだろうという確信が今の俺にはある
そうであるからこそ、俺は今こそこの想いを伝えよう
だが、もう1人の役者がまだ来ていない以上はもう少し待つべきだろう
前田一也は校内を走り回っていた
それこそ、九堂部長や中川、東に内田にまで頼んで探してもらっている。会長や紅林先輩に実原が注意していたのも知っているが、そんな事は今どうでも良かった
プルルルル
携帯が鳴った
もしもしっ!
九堂だ。彼と新見遙佳は校舎裏の方へとそれぞれ向かったそうだ
校舎裏!?
予想外の場所に驚くも
ありがとうございます、九堂部長!
この礼は必ず
構わないさ
君も私にとって大切な後輩だ
あとウチの部員は引き上げさせるからしっかりとな?
はいっ!
俺は急いで下駄箱に向かった
彼は私を見つめたまま何も喋らない
いつもなら手短に用件だけを伝えたら、すぐに離れるのに
でも珍しい事だけど彼はいつもの仏頂面でも貼り付けた様な表情でもない
私とカズくんと彼が遊んでいた頃の様な柔らかい顔
それでいて、何処か遠くを見ている様な
そんな不思議な
はるかっ!
そこにカズくんが来た
え?今私の事
はるかっ!
ようやく来たもう1人の役者の登場に顔を緩ませる自分を認識してしまう
やはりこの2人は2人は揃っている方が落ち着くなぁ
ホント、敵わねえよなぁ
思わず愚痴が溢れた
さて、ハルとカズを呼び出したのは他でもない
俺は2人に言わなきゃならないことがあるんでな
・・何をだよ
いきなり呼び出して言いたい事って、普通に教室で
カズくん
多分それは出来なかったんじゃないかな?
だな
さて、とりあえずおめでとうさんと言わせてもらおうか
付き合う事に決めたんだろ?
ああ、そうだよ
うん
だが、一つ俺から二人に言わなきゃならない事があってな
悪いとは思ったんだが、時間を貰った訳さ
いや、俺はフォト部なんて言ってるけど殆ど自由行動だから良い
はるかも多分部活には言っているだろうから良いさ
お前は良いのか?
バイトには同僚にヘルプ頼んでるから平気さ
何せアイツは俺に借りが山程あるから、たまにはな
んで、本題だ
俺は新見遙佳さんが好きだ
俺は新見遙佳さんが好きだ
ああ、やっぱりだったのか
真剣な顔ではるかに告白するアイツを見て、俺は今更ながらにどれだけアイツに酷い事をしていたのか漸く理解した
なるほどな
ののかや果音が俺に文句を言う筈だよ
自分が好意を抱いている相手が自分にどうやってその娘と仲良くしようできるか?なんて普通は聞かないからな
だからか
今まではるかの事をアイツは一言も好きと言っていなかったのは
目の前の悪友がどんな気持ちではるかに告白したのかは分からない
だが、決してふざけている訳でも揶揄っている訳でもない事くらいは俺にも分かった
俺は新見遙佳さんが好きだ
目の前の彼の言った事が一瞬理解出来なかった
だってそうでしょ?
カズくんの、私の好きな人を知っていてそれを応援してくれた彼がいきなり私に告白するなんて、そんなの分からない
でも、私はこの告白から逃げる訳にはいかないだろう
彼は5年以上私の想いに付き合ってくれていた
多分凄く辛かったと思う。それはカズくんとの距離を今まで取り戻す事が出来なかった私の辛さとはまた別の辛さだろう
でも
ごめんなさい
私は前田一也君の事が好きなの
だからあなたの思いには応えられない
ごめんなさい
私は前田一也君の事が好きなの
だからあなたの思いには応えられない
ハルは瞳に涙を浮かべながらもはっきりと俺に言ってくれた
嗚呼、やっぱりか
頭では理解していた
俺ではカズに敵わない事くらい
どれだけハルとカズがお互いの事を想っていたのか、それを他ならぬ俺がよく知っていたから
だが、それでも
そっか
いやまぁ分かってはいたんだが、ケジメとしてな
悪かったな2人とも
また今度埋め合わせするから、またな
俺は2人の返事を待たぬまま走ってその場を後にした
2人が背後で声をかけているのも分かっている
でも、この時ばかりはそれに構う余裕などありはしない
何故なら
この流れる涙だけはどうしようもなかったのだから
光河学園の調理室からは校舎裏はあまり見えない
だが、校舎裏から出てくる人の方向によっては見えてしまう
その時も柚ノ木梨奈はいつもの様に家庭科室で少しだけぼんやりとしていた
普段から1人きりの料理研究会
間咲ののかやののかの友人の男子は偶に顔を出してくれる
どちらかが居れば梨奈もしっかり料理を作るのだが、独りぼっちではどうしても虚しさが時に梨奈を襲う
そんな梨奈は気分転換に窓の側で学園の景色をぼうっと見ていた
だからそれは本当に偶然だった
えっ!?
梨奈にはその光景が現実のものだと思えなかった
それだけその光景は現実味がないと梨奈は本気で思っていたのである
でもこれは現実なのだ。と自分に言い聞かせると梨奈は階下へと降りていった
俺は校内の敷地の端の草むらの影で蹲っていた
やっぱり、
今の顔で校内を彷徨くのは躊躇われるし、かと言って教室に行くのもなぁ
誰も見てなきゃ、一直線に家へと帰って今すぐ
この結果は予想できていたので、態々シフトを代わってもらった訳である
流石にこんな状態でバイトは出来ないし、したくもないからなぁ
とはいえ、このまま校内の敷地の隅っこで隠れているのもどうかと思わなくもない
ま、小学生の頃はこうやって何がいるのかも分からない草むらに躊躇いなく突っ込んでいったなぁ
んで、大抵がハルの提案だったのだが、いつもカズと俺ばかりおこられてたっけ
嗚呼ダメだ
いやあの2人のことを考えると逆効果、だな
あの2人はこれから上手くいく
俺の初恋も終わり、明日からはきちんとした俺でいられる
でも、今日この時だけは泣き虫だった俺に戻るとしよう
ハルの断りの言葉を聞いた時思ったのが
やっぱりかぁ
という諦めと納得の同居した不思議な感情だった
元より勝ち目云々ではなく、
幸い明日は土曜日
部活のある2人とフルタイムのアルバイトがある俺では会うこともないだろう
俺のバイト先は物流倉庫
小売店の様にお客と直接関わらないという理由で選んだ午後のアルバイトだが、その選択はやはり間違えではなかったようだ
初恋は実らぬ者
とはよく言ったものだ
そう自分を慰めながら、この流れ続ける涙が止まるのを待つ事にしよう
ご一読ありがとうございました
内容は無いようですが、書きたい事は山ほどあると言うこの不具合っぷり
まぁ、今更ですね
実はサブタイトルには意味があったりなかったり
では次の最終話にも宜しければお付き合いくださいませ