覇王、自由気ままに旅をする。   作:イチゴ俺

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いよいよワンピースアニメもワノ国編がクライマックス!
作画が映画並みに美麗で凄すぎです!!
漫画も熱い展開ですし、最高です!!!


第29話"三人目の四皇"

 後の世で『マリンフォード頂上戦争』と呼ばれる事になるこの大戦争。

 世界屈指の化け物達が血で血を洗う地獄絵図。

 

 二人の"四皇"と伝説の海兵二人が繰り広げる四つ巴の闘争。

 

 絶対零度の環境下で繰り広げられる氷の海兵と見聞色の頂きの闘争。

 

 世界から消された大犯罪者二人と世界最強の剣士の激しい戦い。

 

 無数の人間兵器と地獄から戻ってきた男達の苛烈な戦い。

 

 文字通り光の速度の男と頂きを目指す求道の王の目にも止まらぬ戦い。

 

 どこを見ても最悪級の恐ろしさ。

 至る所で覇王色が衝突し、自然系能力者により環境が塗り替えられては一瞬で消え去り、また破壊の力が吹き荒れる。

 

 最早、弱者は意識を保つ事すら出来ず、覇王色が吹き荒れる度に覚醒しては気絶していく。

 

 それは、近い将来師と同様に"英雄"と呼ばれる事になるコビーも例外ではなかった。

 

「グッ……、ンがッ!!? また、意識が……!!」

 

 絶え間無く襲い来る理解不能、正体不明の攻撃により何度気を失い、そして何度それで覚醒しただろうか。

 隣を見れば、友人でありライバルでもあるヘルメッポもまた正体不明の攻撃で意識を飛ばしているようだった。

 

「これは一体……」

 

 気絶と覚醒を何度も繰り返した事による頭痛を堪えながら呟くコビーの頭の中に突如声が流れてくる。

 それどころか、今まで漠然と音、風等で感じていた人の気配が不気味な程に強く感じられられる。

 

 未来の英雄、コビーの見聞色の覇気の発現の瞬間である。しかし、またしても覇王色の覇気がコビーを襲った。

 

 一瞬それに抗ったコビーだが、やはり意識を飛ばしてしまう。

 

「……ンごッ!!? ま、またかよ!! 何だよコレェ!!!?」

 

 コビーの気絶と同時に覚醒した後の英雄の相棒ヘルメッポ。

 彼もまた不可避の未知の攻撃に戸惑い、ズキズキと痛む頭を押さえながら恐怖に怯える。

 何度気絶と覚醒を繰り返しただろうか。

 周囲では壮絶な戦いの轟音が聞こえ、化け物達の衝突による衝撃がここまで届いてくる。

 

「こ、コビー、起きろ。起きろって! なんか、分からねェけど、ヤベェぞ!!」

 

 恐怖と友への心配から白目を剥くコビーを揺らすヘルメッポ。

 

「おい、起きろって! 麦わらのやつもヤベェ事になってるし、こうなったら……!」

 

 起きないコビーに痺れを切らしたヘルメッポは力一杯彼の頭に拳骨を落とす。

 

「ンばッ!!? また、謎の攻撃!!!? ん〜〜ッ、あ、頭が痛い……!」

「よし、コビー、起きたか!」

「ヘルメッポさん、ご無事でしたか!!」

「あぁ、おれもお前もよく分からねェ攻撃で気絶と覚醒を繰り返してやがる。こんなんじゃ、何にも出来ねェ」

 

 コビーは先程までの頭痛と異なる頭の痛みに首を傾げながらも、ヘルメッポの無事に喜び、彼の言葉に同意する。

 

「新兵達も似たような状態だし、将校の人達の戦況も芳しくねェ。これからおれ達どうする?」

「……分かりません。ぼくにはこの戦争において何が正しくて、何が正しくないのか。ぼくはこの戦争で何をすればいいのか……。誰よりも強いと思っていたルフィさんが……! ぼくが海兵としてここまで来るきっかけをくれた恩人であるルフィさんが、あんな事に……!!」

「コビー……」

 

 偶然見てしまった恩人であるルフィの致命傷を負った瞬間。

 海兵と海賊という決して交わらない敵同士だが、それを超えて余りあるルフィへの恩。

 そんな恩人の瀕死の現状に、コビーは海兵としての心に揺らぎが生じていた。

 

「海兵として正義を取るか、恩人の窮地に駆けつけるべきか、ぼくには分からない!!」

 

 『徹底的な正義』を掲げる赤犬の耳に入れば即処刑されるであろうコビーの言葉にヘルメッポは顔を歪める。

 ヘルメッポもコビーの言葉に少なからず同じ思いを抱いていた。

 

 かつて海軍支部司令官の父の権力を傘に好き勝手をしていた己を真っ当な道に間接的に進めてくれた恩人。

 そんなルフィの惨状に心を痛めていたのはヘルメッポも同じ。

 そして、この戦争に正義はあるのかと疑問を抱いていたのもまた同じである。

 

 しかしヘルメッポは歯を食いしばり、目の端に涙を浮かべながらも親友へと言葉を投げかける。

 

「……おれ達は海兵だ。こんなおれ達を鍛えてくれたガープ中将のためにも、おれ達はおれ達のやるべき事をやらねェと……! それに、あの"麦わら"だ! こんなところで死ぬような男じゃねェだろ!!!」

「ヘルメッポさん……」

 

 コビーはヘルメッポの強がりに気がついていた。

 それでも尚、鼓舞してくれる友の声にコビーは己の心を奮い立たせる。

 

「そうですね……! あのルフィさんがこんなところで死ぬような人じゃありません! 海賊王になると言ったあの人が! ぼく達は海兵としての責務を果たしましょう……!!」

「そうだ、とにかくおれ達も戦い──」

 

 コビーの力ある言葉に笑みを浮かべ、己もまた戦意を高めようとした瞬間、この戦争が始まって以来最強の威圧感が襲いかかり、一瞬にしてコビー諸共意識を手放した。

 

 コビーは意識を手放すその瞬間、特大の威圧感と共に凄まじい程の怒りを感じた。

 

 コビー及びヘルメッポ、頂上戦争ここにて退場!

 

 

□■□■□■□■□■□■

 

 

 灼熱の溶岩が触れる全てを溶かし尽くし、石化の呪いが有機物、無機物全てを石へと変え、流れる海が全ての能力を薙ぎ払う。

 

 海軍本部最高戦力、海軍本部大将"赤犬"。

 元王下七武海、"海賊女帝"ボア・ハンコック。

 元王下七武海、"海侠のジンベエ"。

 

 一人対二人の戦いは激しさを増していた。

 

「貴様ら二人、揃いも揃って死人の為に死ぬとは、呆れて言葉が出んのォ!」

 

 腕を溶岩へと変化させてハンコックとジンベエへと放出する赤犬。

 

「言葉を慎まぬか、下郎ッ!!!」

「ルフィ君はこんなところで死なん! わしは彼に未来を見た!!!」

 

 迫るマグマの拳を石化の蹴りで叩き起こすハンコックと、海水を纏った拳で迎撃するジンベエ。

 赤犬の言葉に怒りの覇気を纏ったハンコックは、マグマの拳を迎撃した体勢そのままに一息で赤犬へと肉薄し、強烈な蹴りを叩き込んだ。

 

「"海賊女帝"、厄介じゃのォ……! 七武海の権力を捨ててまで、何故あの小僧に力を貸すんじゃァ……!」

「ルフィはわらわの、お……お、夫だからじゃ……!」

「……なに?」

「じゃから! わらわは、ルフィの妻だからじゃ!!!」

 

 辺り一体の空気が石化した。

 いや、そう錯覚してしまう程に空気が静止した。

 

『えぇぇ〜〜〜〜!!!!!??』

 

 海賊、海兵問わずハンコックのその言葉を聞いた者達は驚愕の声を上げた。

 

「なんと! ルフィ君とお前さんは夫婦じゃったか!」

「そ、そうじゃ! わらわとルフィは夫婦、相思相愛の間柄なのじゃ!!」

 

 顔を真っ赤に染め上げるハンコックとその言葉に一切の疑いを持たず驚くジンベエ。

 遠くから聞いていたデボンはニヤニヤと笑い、ショットは絶望の涙を流す。

 

 海兵達はハンコックの爆弾発言に驚愕し、"麦わらのルフィ"への危険度を繰り上げた。

 

「……そうか。一体いつの間にそんな関係になってたかは知らんが、ならば直ぐにでも貴様もあの世に送り届けてやるけぇのォ」

「ルフィは死なぬ。わらわも勿論死なぬ。そなたの首をルフィへの土産にしてやろう!!」

 

 戦意は最高潮、怒りも最高潮、漲る覇気も最高潮。

 再び三者が激突しようかという瞬間、突如としてマリンフォード全土に特大の覇王色の覇気が吹き荒れた。

 

 大地が軋む程の覇気。

 化け物達が跋扈するこの戦場においても間違いなく最強と言える覇王色。

 

 マリンフォードに存在する全生命体は戦いの手を止め、その覇気の発生源に目を向ける。

 つい一瞬前まで激しい戦いが繰り広げられていた場所。

 海軍大将"赤犬"と元七武海の二人、白ひげ海賊団、そして"麦わらのルフィ"が瀕死となった場所。

 

 視線を向けた皆が一様に思った。

 

 ここにいる筈がない。

 何故ここにいる。

 ありえない。

 

 黒き稲妻が迸り、大地が恐怖しているかの如く振動する。

 

 力なく横たわるルフィを見下ろし俯くその赤髪(・・)の男──

 

「あ、"赤髪のシャンクス"〜〜!!!!?」

 

 ──"四皇""赤髪のシャンクス"が憤怒に顔を染め上げ、戦場へと降り立った。

 

「……随分とおれの友達に乱暴してくれたようだ」

「おどれェ……、ここに一体何の用じゃ、赤髪ィ!!」

「……赤犬。おれは今、とても気が立っている。そう殺気を向けてくれるな。今のおれは何をするか分からない……!!」

「ぬゥ……!!?」

 

 こめかみに青筋を立てたシャンクスの怒りの覇気に赤犬は気圧される。

 そんな様子を見ていたマリンフォードの強者達はシャンクスの言葉と様子に驚く。

 

 "四皇"の中では温厚だと知られるあのシャンクスがあそこまで怒り、その原因が此度の戦争において比類なき活躍を見せた超新星"麦わらのルフィ"の瀕死に起因しているという。

 

 彼が幼い頃から知る白ひげですら、シャンクスがあそこまで激しい怒りに包まれているのは見た事がなかった。

 

「……マルコ、ルフィの容体はどうだ?」

「……ッ、なんとか頑張っちゃァいるが、かなり厳しい……! 内蔵の殆どがイカレちまって、治療をやめた瞬間、死んじまうだろうよい……」

 

 シャンクスは静かに目を瞑り、己を落ち着かせる為に一呼吸する。

 しかし、酸素を肺に取り込もうともその怒りが収まることもなく、漏れ出す覇王色と共に強い怒気が溢れ出る。

 

「……約束破っちまったなぁ、ルフィ。一足先に会っちまった」

 

 かつてルフィと交わした約束を思い出し、その約束を破ってしまった事へ苦笑し、改めて眼下で横たわるルフィを悲痛な顔で見る。

 

 シャンクスから見てもルフィの傷が手の施しようのないものだと分かってしまう。

 

 マグマにより溶かし貫かれた腹部。

 感じる覇気も風前の灯。

 未だに命があるのはルフィの規格外の生命力と、マルコによる不死鳥の治療があってのもの。

 

 もはや、ルフィの命は時間の問題だった。

 

 それが分かるからこそ、数多の修羅場と、幾多の悲しみを乗り越えてきたシャンクスでも感情が強く揺れ動いていた。

 

 戦争を止めにきただけだった。

 

 エースの処刑を止めにきた訳ではない。

 

 海賊として海軍を滅ぼしにきた訳でもない。

 

 ただ、時代を進めるためにこの戦争を止めにきただけだった。

 

 だが、怒りが抑えきれない。

 ルフィも海賊。自己責任という海賊として当たり前の事ですら、憤怒の炎に焼かれ消えてしまった。

 

「……本当はこの戦争を止めにきた。だが、やめだ……。どうやら、おれの怒りは収まりそうにないらしい」

 

 集まる"赤髪海賊団"の面々も同様に憤怒の表情を浮かべる。

 

「野郎共、全面戦争だ……!!!!」

 

 

 マリンフォード頂上戦争、最終局面の更に最終局面にて、"四皇""赤髪のシャンクス"率いる赤髪海賊団が鬼神の如き憤怒を携え、乱入した。

 

 本来の目的を忘却し、怒りの四皇、戦火に加わる!

 

 

 

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