覇王、自由気ままに旅をする。   作:イチゴ俺

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頂上戦争もあと少し!


第31話"再会と約束"

 大気が震える。

 数多の自然系(ロギア)による環境の変化も、分厚い雷雲も、嵐も何もかもが巨大過ぎる覇気により消滅した。

 

 陽気なドラムの音が鳴り響く度に覇王色の黒き雷鳴が迸り、悍ましい程の威圧感に空間が軋み出す。

 

 「アハハハハハ!!! 楽しくなってきた!! 力が湧き上がってくる!!!」

 

 大地をまるでトランポリンのように背で跳ねながら、極大の覇気の主が愉快そうに笑う。

 髪も服も白く染め上げ、羽衣を纏ったその男。

 

 「良くわかんねェけど、これならまだ戦えそうだ。おれのやりたかった事全部できる……!」

 

 先まで致命傷を負っていたその男。

 今世界で最も注目されるその男。

 

 "麦わらのルフィ"が帰ってきた!!!

 

「ルフィ! そなたよくぞ無事で!!」

「ん? ハンコック! お前も無事で良かった!」

「はぁん……! こんなにも真っ直ぐな言葉……! わらわ、幸せ……♡」

 

 ルフィの真っ直ぐな言葉と輝くような笑顔に腰砕けになったハンコックは、「これが夫婦……!」と頬を赤く染め上げる。

 

「ルフィ君、無事で良かった! 体は大丈夫か? その姿は一体なんじゃ……?」

「ジンベエ! おれもよく分かんねェけど、今までで一番調子いいんだ!」

「そうか。ダイナーさん、ルフィ君に一体何をしたんじゃ?」

「"覇王"ならもういなくなったよい。おれらが呆けている間にな……」

 

 そこでジンベエ及びハンコックもまたダイナーが姿を消した事に気がつく。

 唐突に現れ、嘘のような治療を行った最強の男は、姿を消す時もまた唐突であった。

 治療を間近で見ていたマルコはその様子を思い出して、冷や汗を浮かべる。

 

 腹に空いた孔を一瞬で塞ぎ、失った内臓もあらゆる傷をも治癒させたその力。

 まるで神だ。

 覇王と呼ばれ畏れられる男の力に改めて畏怖を覚えるマルコ。

 

「ダイナー? どっかで聞いたような……?」

「死にかけのお前を救ってくれた男の名前だよい、エースの弟。いつか会う事があれば礼をいっておけ」

「分かった。そうする!」

 

 屈託のないルフィの笑顔にマルコは呆れながらも笑みをこぼす。

 

「それよりも、この戦場にゃもう用はねェんだ。早いとこずらかるよい」

「あぁ、分かってる! エースはどこに行ったんだ?」

「エースの奴なら、おれの仲間に連れられて船に向かってるところだよい」

「そうか、良かった……! なら、おれは皆んなが逃げやすいように暴れてくる──って、えええーー!!! シャンクスー!!!!?」

 

 戦場を掻き乱すべく覇気を高めたルフィは、ここにいるはずのない憧れの海賊の姿を視界に入れた瞬間、目玉と舌を物理的に飛び出し驚愕した。

 憤怒の表情を浮かべる赤犬と向かい合う、気まずげな表情の憧れの男、"赤髪のシャンクス"がルフィを見ていた。

 

「は、ははは……。本格的に約束を破っちまったなルフィ」

「なんでシャンクスがいるんだ!!!!?」

「ちょっと野暮用でな。まぁ、元気そうでなによりだ……」

 

 十数年振りに会うシャンクスを相手に、愕然としたルフィは口を大きく開きすぎて顎が地面へと落ちる。

 そんなルフィに苦笑するシャンクスと静寂に包まれるマリンフォード。

 遥か遠方から先程まで暴れ狂っていた"海軍の英雄"の「ルフィーー!!!」という声が聞こえ、更に遠方からもまた、此度の戦争の引き金たる男の「ルフィーー!!!」という声が聞こえてくる。

 

 そんな家族達の声が全く頭に届いていないルフィは、シャンクスと交わした"約束"を思い出してあわあわと混乱する。

 

「お、おれ、立派な海賊になったら帽子を返しに行くって約束だったのに、破っちまった……!」

「あー……、まァ……。ここまでやれたら立派っちゃ立派ってところも……いや、うーん……。ノーカンだ。ノーカン! これはナシ!!」

「よし、そうだな!」

 

『いや、それでいいんかい!!!』

 

 約束を破ってしまったことへの罪悪感と悲壮感を覚えるルフィに対して、悩み唸った末に今回出会ってしまった事はナシにしようというシャンクスと即座に頷くルフィへ、約束の内容を知る"赤髪海賊団"の面々は一斉に突っ込む。

 

「それでいいのかお頭!! ナシも何もしっかり会っちまったぞ!」

「ナシだ、ナシ! こんな再開の仕方なんてナシだ!!!」

「だが、どうするお頭。道理がなけりゃ、格好がつかねェぞ」

「うるせェ、ベック!! こんなに広い戦場だ。おれ達はここにはいたが、ルフィにゃァ、会ってない! なァ、ルフィ」

「うん」

「話してんじゃねェよ!!」

 

 海賊として、男としての筋を通そうとする肉を手に持つ大男、ラッキー・ルゥと、ライフル銃を携えた男、ベン・ベックマンに対して駄々をこねるシャンクス。

 そんな"赤髪海賊団"の面々に懐かしさを感じるルフィは、ゆっくりと彼らに背を向ける。

 

「シャンクス、皆……。おれは誰にも会ってねェ……! 約束も破ってねェ! だから、本当におれが立派な海賊になった時におれの方から会いに行く!!!」

 

 そんなルフィの力ある言葉にシャンクスとベックマン達は笑顔を浮かべた。

 

「あぁ、おれ達は会ってねェ。約束も破っちゃいねェ。だから、楽しみに待っている!」

 

 その言葉を聞いたルフィは満足げに笑い、心臓のドラムを大きく鳴らす。

 ルフィの楽しげな気持ちに呼応するかのように力あるリズムは強く、陽気に、自由に轟き鳴り響いた。

 

 呼応する覇気。

 

 バリバリと黒き稲妻が迸り、大地が空が海が鳴動する。

 

「あっひゃっひゃっひゃ!!! 最高の気分だ!! 海賊王におれはなる!!!」

 

 高らかに世界に宣言したルフィは、その勢いのままに戦場へと躍り出た。

 行く先々で歴戦の海兵達を打ち倒し、荒れに荒れていた戦場を引っ掻き回していく。

 

 そんなルフィを眺めるシャンクスは幼少のルフィを思い出してフッと笑った。

 

「お前は変わらないな、ルフィ」

 

 優しげな笑みを浮かべたシャンクスは、しかしその表情を真剣なそれに変えて赤犬へと視線を向ける。

 

「さて、赤犬。おれはこの場を去ることにする。男と男の約束があるんだ」

「行かせると思うか、"赤髪"ィ!!」

「続けるというならそれで構わない。だが、ここから先はお前のその命──落とす覚悟をしてもらおう!!!」

「ぬぅ……ッ!」

 

 向けられる尋常ならざる覇気に気圧される赤犬。

 "白ひげ"から受けたダメージと"赤髪"から受けたダメージが赤犬の膝を折る。

 

「……次会う時は覚悟しちょれ、"赤髪"ィ……!」

「ふっ、楽しみにしている。野郎共、新世界へ帰るぞ! この場におれ達の出番はもうない!!!」

 

 "赤髪海賊団"、怒りのままに海軍戦力に甚大な被害を齎した。

 旧友との予期せぬ再開、しかして男と男の約束は反故に非ず。

 友の確かな成長を確かめ、"四皇""赤髪"、頂上戦争を離脱する!

 

 

□■□■□■□■□■□■

 

 

「──あそこにもいたガネ!」

「ほい、きた! ギャハハハ、手慣れてきたぜ……って、なんでおれ様がこんな事しなけりゃなんねェんだ!!!」

「つべこべ言うんじゃなァいわよーーう!!! 麦ちゃんが皆揃ってここを脱出するって言ったんだから、そうするのよーーう!!」

「うるせェ、Mr.2!! そのナリでデケェ声出すんじゃねェよ!!!」

「あら、それはスワンスワン」

 

 ガハハハと大笑いするのは巨大過ぎる巨人の姿をしたボンクレー。

 ボンクレーのマネマネの実の能力で"巨大戦艦"サンファン・ウルフの肉体を再現し、それを更に巨大な頭の上に立つ大男、バーンディ・ワールドのモアモアの実の能力により100倍の大きさになった規格外の超大型巨人なった姿である。

 

 そんな彼らはその巨体を活かし、戦場で倒れた仲間達を回収すべくマリンフォードを動いていた。

 

 Mr.3がボンクレーの背に蝋の巨大な籠を作り出し、発見した仲間達をバギーの切り離した腕で回収して籠に回収する。

 その大きな脚による移動速度もあり、この広い戦場の内既に大多数の仲間達を回収した。

 

 覇王色の覇気により敵も味方も気絶している故のこの効率。

 

「バロロロロ! このおれが他の奴の手助けなんざ分からねェもんだ」

「ガハハハ! ここまで早く助けられるのも、アンタのおかげよぅ! 怖い顔してるけど、良いとこあるじゃなァい!!」

「バロロロ! 怖い顔は余計だ。それよりも、早いとこ回収しちまってずらかるぞ」

「そうだぜ! こんな所、さっさと脱出すんぞ!!」

「同感だガネ。ここは命がいくつあっても足りないガネ……」

 

 嘘偽りのないボンクレーの褒め言葉に口の端を上げて笑うワールドと早く脱出したいと叫ぶバギーとMr.3。

 

 そう言ってる間にも仲間を見つけては回収していく。

 もはや驚異的なチームワークだった。

 

「それにしても麦わらの奴ァ、どうなっちまったんだ……? シャンクスの野郎も暴れるだけ暴れて帰りやがったしよ」

「死にかけだったのにいきなり元気になったガネ」

「麦ちゃん、とっても楽しそうにしてるわねェーい。とにかく無事でよかったわねィ」

「凄ェ覇気だしやがる。さっきまで覇気初心者だったとは思えねェな」

 

 皆がそれぞれ口を開き、次の倒れる仲間を回収しようとしたその時、突如としてボンクレーの頭上に立つワールドへと気配が迫る。

 

「おい、決着はついてねェぞワールド!!」

「しつこい奴だ、モリア」

「キシシシシ! 若い肉体と覇気、この能力の練度! 楽しくて仕方がねェ! 見ろ、この肉体! 影1,000体を入れても力に振り回されねェ!!!」

「あの若造がここまでになるたァ驚きだが、まだ足りねェ。覇気の練度が足りねェぞォ!!!」

 

 投げ放った石飛礫の速度と大きさを100倍にする。

 それを迎え撃つのは鬼神の如き肉体の男、ゲッコー・モリア。

 自身の能力である他者から切り取った"影"を1,000人分入れた事による比類なき強靭な肉体。

 迫り来る巨大な石飛礫を拳の一振りで破壊したモリアは大きく、愉快に笑う。

 

「キシシシシ! 最高だ!!! お前をぶっ倒した後は、あの憎きカイド──グォぇェッ!!?」

「あ、悪ィ! 轢いちまった!」

「……もう意識ねェぞ、麦わら小僧」

「あ、ワールドのおっさん! 悪ィ、戦いに手出しちまった!」

「いや、気にするな。もはや大して興味もねェ奴だ」

 

 申し訳なさそうにするルフィと気にするなと手を振るワールド。

 そんな二人を他所に、明らかに己よりも強いモリアを一撃で倒したルフィに震え上がるバギーとMr.3。

 そしてルフィを見て目を輝かせるウルフの姿のボンクレー。

 

「麦ちゃん! 元気そうで良かったわよーう! 七武海を一撃だなんて、とっても強くなったんじゃないのよーう!!」

「お前ボンちゃんか! それにバギーと3!! お前らエースをありがとうなァ!! デカい借りが出来ちまった!! 本当にありがとう!!!」

「き、ききき気にするな! おれとお前の仲じゃねェか!」

「そ、そそそそうだガネ! 共に地獄を乗り越えた仲間。助け合うのは当然だガネ!」

「兄貴助かって良かったわねィ! 兄貴ならもうバレットの船に着いたわよぅ!!」

「皆、本当にありがとう! この恩は必ず返す!!! おれはもう少し暴れてくる! 他の皆を頼む!」

 

 そう言うなり走り去ったルフィにワールドとボンクレーは大笑いし、バギーとMr.3はため息を吐く。

 

「凄ェ男だ、あの小僧」

「なんか、ロジャー船長を思い出しちまったぜ……」

「さァて、残りの奴らも回収しちゃうわよーう!」

 

 世界最悪の頂上戦争。

 海軍、海賊、看守達の血で血を洗う地獄の場。

 しかしてそこに咲く友情の花。

 短い付き合い、異なる思想。

 だが、そこには信頼と友情が芽生え出し。

 

 頂上戦争、決着まであと僅か!

 

 

 

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