覇王、自由気ままに旅をする。   作:イチゴ俺

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くまさん……(泣)
ワンピース、色々な謎が分かってきて面白いです!
勧善懲悪は見ていて気持ちがいいですね!


第33話"男二人、交わす想い"

「──ぜハハハハ!! 凄ェ強さだ! これがニカ……、これが"太陽"か……!!」

 

 黒い髭を蓄えた大柄な男、"黒ひげ"マーシャル・D・ティーチは、強大な覇気を放つ漆黒の大仏と激しく、自由に戦う白き戦士を見て興奮気味に笑う。

 

 腹に巨大な孔を空けた瀕死の状態からの突然の回復と覚醒。

 髪も服も白く染め上げ、楽しげな心臓の音と共に吹き荒れる覇気は怪物の如く。

 まるで絵物語のように空想のままに、自由自在に戦う様は、言い伝えられるニカの姿そのもの。

 

「まさか、あの小僧がニカとはなァ! 情報を操作された悪魔の実があるとは思っちゃいたが、"ゴムゴムの実"がそうだとは思わなかったぜ!!」

 

 眼前で繰り広げられる白き神と黒き大仏の激しい戦い。

 拳と拳が激突する度に激しい轟音と衝撃、覇王色の衝突が発生し、大地と天を揺さぶる。

 

 黒き仏の異次元のタフネスと歴戦の戦略により神を攻略せんとする。

 白き神の規格外のパワーと自由自在な戦闘により仏を翻弄する。

 

 まるで神話だ。

 神話の中で語られる神の闘争を見ているかのようだ。

 

「凄ェなおい!!! これが本物の太陽か!!! これが歴史の闇に葬られた"ニカ"の力ッ!!!! こんな絵物語みてェな光景見たことがねェ!!!!! そう思わねェか親父ィ!!!!」

「そいつには同意するが、お前はもうおれの息子じゃねェ。おれを親父と呼ぶんじゃねェよ、ティーチ」

「ぜハハハ!! 寂しいこと言うんじゃねェよ! 久々の親子の再会だ! もう一度息子と呼んでくれよ、親父ィ!!!」

「グララララ!!! ふざけたこと抜かすんじゃねェよ、ティーチ!!!」

 

 莫大な振動エネルギーが白ひげの裏拳より放たれ、愉快に笑う黒ひげの横面に激突する。

 咄嗟に闇を纏い防御に徹したが、振動を放つ拳は闇を霧散させ、大気を破壊し、空間をも崩壊させた。

 強烈な一撃を受けた黒ひげは地面へと叩きつけられ、あまりのダメージに血反吐を吐く。

 

「ゴワァァァ!!!!? 痛ェ!!!!!」

「家族殺しの大罪、おれがお前をここで殺してサッチへの手向けにしてやる」

「ぜ、ぜハハハハ……!! 計画は狂っちまったが、おれの目的は最初から一つだぜ、白ひげェ!!!!」

 

 白ひげと黒ひげの因縁。

 黒ひげが犯した船員を息子と呼び家族と愛する白ひげへの最大の裏切り。

 

 仲間殺しの大罪を裁くべく、病魔に蝕まれ体力も限界寸前の白ひげが力を溜める。

 

 際限なき欲望と曇りなき狂気による長年の計画のため、覇気を高める黒ひげ。

 

 しかし、突如として巨大な黒き拳が黒ひげへと激突した。

 

「ゥグボァァァ!!!!!?」

「あ、悪ィ!!」

 

 突如として黒ひげへと飛来した巨拳。

 尋常ならざる覇気により黒く硬くそして膨れ上がった神の拳は、黒ひげを一瞬で遥か彼方へと吹き飛ばした。

 遠ざかる野太い悲鳴。

 肉眼で捉えられなくなる程に遠ざかっていき、次第に声も聞こえなくなる。

 

「…………」

「あちゃ〜! 誰かぶっ飛ばしちまった!」

「……エースの弟か」

 

 巨拳を納め、遠ざかる黒ひげを見て頭を抱えるルフィを視界に入れた白ひげは、突如として討つべき敵を薙ぎ倒されてしまった事で言葉を失ってしまう。

 その背後では油断なくルフィを睨み付けるセンゴクの姿。

 

 大方、ルフィの放った特大の一撃をセンゴクが避けた事で、不幸にも黒ひげへと直撃してしまったのだろう。

 

 直近を穿った一撃は、"四皇"である白ひげをもってしても一定の脅威を感じる程だった。

 

「あ、エースが慕ってるでけェおっさんか! もしかして、今のぶっ飛ばしちまった奴、おっさんの相手だったのか!!? いや〜、ごめん!」

「……グララララ!! ジジイにそっくりだな、"麦わらのルフィ"!」

「そりゃ、おれはじいちゃんの孫だからな!」

「その適当なところもそっくりだ」

 

 先の強烈な拳打に加え、とぼけた顔で謝るルフィの姿がガープと重なって見えた白ひげ。

 

「──今お前がぶっ飛ばした奴ァ、おれの獲物だ。お前にゃ分からねェだろうが、海賊の掟を破ったあいつを裁くのはおれがやらねェといけねェ。そいつをお前が横から掻っ攫っていきやがった。どう落とし前つけてくれる、麦わら小僧……!!」

 

 手に持つ薙刀を地面へと叩き付け、能力と覇王色を解放してルフィを睨み付ける白ひげ。

 

「……本当にごめん! これは、おれが悪ィ。おれはやっちゃならねェことをした!!」

「一丁前な口ききやがる。なら、覚悟はできてんだろうなァ……!」

「あァ、思いっきりやってくれ」

 

 海賊の世界は面子と掟が重要だ。

 面子にも掟にも一切縛られないルフィと異なり、"四皇"とまで呼ばれ長い間この海に君臨してきた海賊である"白ひげ"はそうもいかない。

 何より、"黒ひげ"は家族を殺した。

 

 白ひげが何よりも大切にする家族を殺した黒ひげを裁く機会、それを横取りしたルフィへと覇気を高め、薙刀を握る手に力を溜め、そしてそれを霧散させた。

 

「──お前はおれの家族を救ってくれた。これで貸し借りはねェ」

「おっさん……。ありがとう!!!」

「グララララ! 真っ直ぐな男だ。どっかの誰かを思い出しちまう」

 

 ルフィの曇りなき笑顔につられ笑みを浮かべる白ひげ。

 かつて鎬を削ったライバルであり友でもあった男の顔を思い出し、ふと一つの質問を投げかけた。

 

「おい、"麦わらのルフィ"。お前は"海賊王"になりてェみてェだが、お前にとって、"海賊王"ってのは何だ?」

「ししし! そんなの決まってる。"海賊王"ってのはこの海で一番自由な奴のことだ!!」

「──グララララララ!!!! その言葉をまた聞くことになるとはな!!! お前にそれが出来るか、"麦わらのルフィ"!! この海で自由やるにゃァ簡単なことじゃねェ。世界にはまだまだ化け物がたくさんいやがる。その中で頂点に立てるか!!」

「出来なければ死ぬだけだ! それに、おれには頼りになる仲間達がいる! おれは、"海賊王"になる男だ!!!!」

「グララララ!!! いい覚悟だ。ならばその生き様を見せてみろ……!」

「あァ、"海賊王"になるのはおっさんでも、"四皇"の奴らでも、エースでもねェ! おれだ!!」

 

 高らかに宣言したルフィにニヤリと笑う白ひげと、それを憎々しげに見るセンゴク。

 映像電々虫により世界に放送されたルフィの言葉は記者達により、更に広められ世界中の強者達へと伝わり世界に、時代に大きな唸りを作り出す。

 

 そして、続く白ひげの言葉に更なる時代の唸りが発生する。

 

「"新時代"はすぐそこに来ている。それを作るのはお前ら若ェ奴らだ。古い奴らはもう必要ねェ」

 

 一拍置いて宣言する。

 

「──海賊"白ひげ"はここらで引退する!!!」

 

 マリンフォード中が静まり返った。

 激しく剣を打ち合っていた者も、強烈な覇王色をぶつけ合っていた者も、暴力的に環境を侵し合っていた者も、皆が白ひげの言葉に耳を疑い、次の瞬間に驚愕の声がそこらで上がった。

 

『えええ〜〜〜〜!!!!!?』

 

 "四皇""白ひげ"の突然の引退宣言。

 世界中を混乱させるにはあまりあるそのニュースに、マリンフォード全土は勿論、映像を見た世界中の者達からも驚愕の声が上がり、そして一足先にバレット謹製巨大戦艦に乗り込むエースもまた驚愕していた。

 

「おっさん、海賊辞めんのか? エースはおっさんを"海賊王"にするって言ってたぞ」

「エースにも息子達にも悪いが、おれも一人の人間。歳にゃ勝てねェ。この戦争の中で死ぬつもりだったが、見てェものが出来ちまった。そいつを見てからでも地獄に行くには遅くねェ」

「ししし、そうか! エースにはおれも一緒に謝ってやるよ!!」

「グララララ! それは頼もしいなァ……!」

 

 二人で笑い合う二人の姿は、年も背丈も異なれど、まるで友のよう。

 在りし日に友と酒を飲み交わしたあの情景。

 そんな輝く記憶を思い出し、白ひげは笑う。

 

 既に時代は進み出した。

 

 ここから先、"白ひげ"()が君臨する必要はなく、待っていた男は現れた。

 

 まるで重い荷物を下ろしたかのように清々しい顔を浮かべる白ひげは、いずれ来る未来に思いを寄せる。

 

 世界がひっくり返る時は近い!

 

 

 

 

 

 

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