覇王、自由気ままに旅をする。   作:イチゴ俺

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大変遅くなりました!
ここまで来たらこっちもちょうど二年後とも思いましたが、流石に……。
最近のワンピースは伏線が色々と回収されたり、カッコよかったり、楽しいです!!
ワンピース! ワンピース!


第39話"2年後"

「──"火の神(アータル)"」

「今更こんなもの通用しねェ!」

 

 褐色肌の大男"覇王"ダイナーの指先から漆黒の極光が迸り、金色の髪の男"黒足のサンジ"がその光を蹴り飛ばした。

 あらぬ方向へ飛び去ったその光は海へと着弾し、あまりの熱量故に直線上に海を蒸発させる。

 

「ほォ、なら数を増やすぜェ」

 

 再び指先から漆黒の極光が放たれ、しかし先とは異なりその光が幾千にも枝分かれた。

 その一つ一つが先の"火の神"と同等の死の一撃。

 

「限度ってもんを考えろよ!!」

「おいおい、この程度で音ェ上げんのかァ!!?」

「ンのやろ! 舐めんじゃねェ!」

 

 軽口を叩きながら手を地面につき、体ごと足を回転させることで弓形に降り掛かる光を弾き飛ばした。

 

 "武装色の覇気"を濃密に脚に纏わせ、海をも蒸発させる一撃を難なく防ぐ脚力も、油断なく相手の動きを読む"見聞色の覇気"も二年前とは何もかもが

違う。

 

「よしよし、いいぞ。そうだ、この程度はやってもらわねェと鍛えた甲斐がねェ。そら、一段力上げるぞ」

「望むところだ」

 

 ダイナーの拳が漆黒に染まり、バチバチと"覇王色の覇気"が迸る。

 周囲の景色が歪む程の濃密な覇気は物理的な圧力を生じさせ、サンジは冷や汗を流す。

 

「この二年間で散々見たんだ。今更怖くねェな……!」

「ハハハ! 冷や汗をかきながら言われてもな。だが、その心意気はよし! 男見せろやァ!!」

「煩ェ! 言われなくてもおれは"真の男"だ!!」

 

 そう言うなり、サンジは足を軸にコマのように回る。

 高速で回転することによる摩擦熱と情熱で脚が赤熱し、外骨格と濃密な武装色が炎を青色に染め上げた。

 

 ──しかしそれに止まらない。

 

 覇王に鍛造された強化人間は"魔王"へ至る。

 

「"魔王風脚(ダイナージャンブ)"!!!」

 

 漆黒の炎と青黒の覇王色の炎雷を脚に纏うサンジが不敵に笑った。

 

「何度聞いてもその技名には笑うぜ! 俺の名前入れるたァ、俺のこと大好きじゃねェか!!」

「き、気持ち悪ィこと言うなよ!」

「ハハハハハハ!! サンジちゃんはダイナー様がだいちゅきなんでちゅね〜」

「──オロす」

 

 爆笑するダイナーを見てこめかみに青筋を立てたサンジは一息に肉薄する。

 

「"焼却(カルシネ)"!!」

 

 音を超えた速度で動いた事による摩擦熱で更に火力を増した脚を一気にダイナーへと叩き付ける。

 

「"グリル=ショット"!!!」

「中々に重い一撃だ! だが、まだまだイケるだろォ!!?」

 

 衝撃波で地面に大穴を穿つ程の蹴りを胸で受け止めて笑うダイナー。

 そんな煽る言葉を無視したサンジは目にも止まらぬ速度で駆ける。

 大地を、天を自由自在に駆け回り、音速を超えた故のソニックブームがあちらこちらで発生し、ダイナーの周囲を衝撃の檻のように囲む。

 

「以前、こんな言葉を聞いた」

 

 自分、そして仲間達にとって最悪の過去であり、絶望すら覚えた相手の言葉。

 

「──速度は"重さ"……! "粗砕《コンカッセ》"!!!」

 

 強化人間としての類稀なる脚力と連続した加速により、音速を超え、光速に迫る。

 強烈な摩擦により"魔王風脚"は更に燃え盛り、速度が頂点に達した瞬間、ダイナーのがら空きの頭部へと踵を叩き付けた。

 

 覇王色の衝突。

 

 耳を劈くような激しい雷鳴が響き渡り、黒き雷が迸り、その衝撃で大地が崩壊し、天が割れた。

 

 そんな様子に離れた場所で二人の闘いを見物していたオカマ、カマバッカ王国の女王にして革命軍のグランドライン軍軍隊長、"奇跡の人"エンポリオ•イワンコフは大口を開けて驚愕していた。

 

「信じられなッタブル……! とんでもない成長力……! 二年前から大きな成長、いえここまで来たら進化ッ」

 

 今のサンジは新世界で蔓延る海賊達の中でもトップクラスの強者。

 ダイナーの拳も耐えるタフネスと山河を砕く脚力、三色の覇気の練度も相当な領域。

 

 世界でも上から数えた方が早いと自負する己の実力でも、今のサンジ相手には為す術もないだろう。

 

「……麦わらボーイといい、驚いてばかりタブル。これからの海は荒れるわねェ」

 

 サンジの強さに戦慄しながらもかつて共に戦った同じく成長力の怪物を思い出し、笑うイワンコフ。

 そんなイワンコフの視線の先でダイナーとサンジは次の展開に移っていた。

 

「ハハハハハ!!! よくここまで鍛えたなサンジ!! 弱い男は男じゃねェ」

 

 瞬間、ダイナーから漆黒の覇気がエネルギーと化して溢れ出す。

 武装色のエネルギーと覇王色のエネルギーが際限なく溢れ出し、質量を持ち、実体を持ったそれらは五つの形を象った。

 

 四本の牙の巨大な猪。

 たてがみを靡かす巨大な白骨化した馬。

 鬼のような角の生えた巨大な蜘蛛。

 大きく口を開ける巨大な蚯蚓。

 蛇のような尾の巨大な怪鳥。

 

 「"怪々覇装(オーバーロード)"。最後の試練だ、乗り越えて見せろ、サンジ!」

 

 五体の怪物を背に肉体を漆黒に染め上げ、拳を鳴らし笑うダイナー。

 

「……やってやろうじゃねェか!」

 

 膝を着きたくなる程の威圧感を前に笑って見せるサンジ。

 情熱を燃やし、仲間を想い、男の夢(娼館の約束)"を糧に炎の熱量を上げた。

 

 二年間の修行の成果がここに実を結ぶ。

 

 "黒足のサンジ"、最強を前に華を見せる!

 

 

□■□■□■□■

 

 

 全世界を震撼させた大事件、「マリンフォード頂上戦争」。

 "白ひげ海賊団""2番隊隊長"である"火拳のエース"の公開処刑決定を発端とした史上類を見ない程の戦争。

 

 "四皇"の一角、"白ひげ"が率いる"白ひげ海賊団"対"海軍"、"王下七武海"という世紀の大戦争の最期は誰もが予想すらしていなかったもの。

 

 予想外の戦力、数多の乱入、悪夢のような覚醒による海軍の大敗。

 

 三人の"四皇"が一つの戦場で暴れ、世界最高の監獄から囚人達を引き連れた一人のルーキーが海軍を討ち倒し、全世界を恐怖のどん底に追いやったあの戦争から二年(・・)

 

 数多の偉業、悪行、島諸共海軍を打ち砕いた驚天動地の戦闘力から新たな"皇"の席に座した男、"麦わらのルフィ"はしかしこの二年間表舞台に姿を一切表さず、共に戦った者達もまた姿を消していた。

 

 新たなる"四皇"の誕生に、その首を獲り名を上げようと野心を燃やす海賊達も、憎き怨敵を討ち倒すべく燃える再起した海軍も、"主"の敵を始末するべく動く世界政府の五人の翁も、誰もがその同行を捕捉出来ないでいた。

 

 その現状に歯噛みする者がここにも一人。

 

「──"麦わら"は一体どこにいやがんだァ!!?」

 

 書類を放り投げ喚くのはシルクハットを被った巨大な人形の鳥。

 大手新聞会社「世界経済新聞社」の社長、モルガンズは顔を真っ赤にして暴れていた。

 

「頂上戦争での大活躍から"四皇"への大躍進、元"王下七武海""海賊女帝"ボア・ハンコックとの結婚! ビッグ・ニュースからのビッグ・ニュースに次も期待してたってのに、あいつらはどこ行きやがったんだァ!!!!?」

「し、社長、落ち着いて下さい……!」

「これが、落ち着いてられるか!! もう二年だ!! おれはもうこれ以上待てねェ!!!!」

 

 "新聞王(ビッグ・ニュース)"と呼ばれる程の大物であるモルガンズだが、彼もまた頂上戦争での"麦わらのルフィ"の活躍に胸を躍らせ、これまでの人生においてもトップクラスのビッグニュースに大笑いをきめ、感謝すらしていた。

 

『"海軍""王下七武海"完敗! 勝者は"麦わらのルフィ"!』

 

『新たなる海の皇帝誕生、"四皇""麦わらのルフィ"!』

 

『あの世界一の美女"海賊女帝"と結婚!? "麦わらのルフィ"!』

 

 今や"麦わらのルフィ"は金のなる木だ。

 彼の動向全てがビッグニュース。記事にすれば空前の大ヒット。

 近年稀に見る程の部数の稼ぎようにモルガンズは笑いが止まらなかった。

 

 それが今はどうだ。

 ボア・ハンコックとの結婚を記事にして以来、何の記事も世に出せていない。

 "海賊女帝"が統治する男子禁制の国、"アマゾン・リリー"がある"女ヶ島"が忽然と姿を消したという情報は入っている。

 "女ヶ島"諸共移動しているのではないかと推測するモルガンズだったが、ビッグニュースというには少し推測と脚色が過ぎると考えていた。

 

 面白くするためには、嘘も脚色も全く躊躇わないモルガンズだが、これまでの奇想天外、驚天動地のビッグニュースの数々にハードルが著しく上がってしまっていた。

 

「"世界政府"の老人共も動向が掴めていねェってことは、このまま待っていても情報は入ってこないか……。ましてや、島一つ人目につかないようにする能力者が相手……」

 

 ぶつぶつと考え込むモルガンズ。

 "新聞王"としての誇りと好奇心から、必ずや"麦わらのルフィ"を見つけ出すと深い知謀を巡らせていたその時。

 

「大変です、社長!!!」

「なんだ!!! おれは今機嫌が悪ィんだ!! 後にしろ!!!」

「そ、それが、ビッグニュースです!! "シャボンディ諸島"に"麦わらの一味"の"海賊狩りのゾロ"の姿を確認しました!!!」

「──なにィィィィ!!!!?」

 

 バタバタと慌てたように駆け寄ってきた部下からの報告を聞いたモルガンズは、全身の羽を逆立たせて絶叫した。

 

「本物か!!!? また偽物なんじゃないだろうなァ!!!?」

「確認済です!!」

 

 部下のその確信した顔と声にモルガンズは興奮し、震え上がった。

 

「"海賊狩りのゾロ"だけか!!? 他の仲間は!!? 理由は!!? 現れたのはいつだ!!? どうやって!!?」

「お、落ち着いてください!」

「これが落ち着いてられるか!!! クワハハハハ!!!! ようやく……、ようやくだ! "海賊狩りのゾロ"が現れたということは必ず他の一味も集まる! 当然、"麦わらのルフィ"もなァ!!! クワ、クワハハハハ!!! ようやく始まる、ビッグ・ニュースの嵐が!!!!」

 

 狂ったように笑うモルガンズ。

 二年間待った"麦わらのルフィ"による愉快痛快な伝説がまた始まるのだ。

 笑いが止まらない。

 

 今度はどんな馬鹿げたことをしてくれる?

 どんな絵を見せてくれる?

 

「楽しみだなァ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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