「目が覚めたかい?」
聞きなれない声にゆっくりと瞼を開くソラ。
見慣れぬ天井は寝ていた自分をきづかってか、照明は薄暗くされていた。
声の主はベッドの横の椅子に座っていたらしい。
「あなたは、ストレイジのナツカワ隊長?」
「そうです、そして俺が君をこの部屋へ運びました。
君に、色々聞きたいことがあって。」
そういうハルキのこえは任務中の厳しさはなく、優しく快活なものだった。
これがこの人の素なのかもしれない。
「隊長さん、俺に聞きたいことって…」
「…君が、あのウルトラマンなんですよね?
一体どう言う経緯で変身を?」
ソラは状況が飲み込めず放心状態になった。
「あれ、言葉通じてる?」
「はっ!
いや、大丈夫です。
え、あの、俺ウルトラマンになってたんですか?」
そしてハルキは無言で一つの映像データを表示する。
そこには頭部の真ん中に一本、左右のこめかみから一本ずつツノが伸びている赤と銀色の巨人があの怪獣と戦っていた。
見覚えのある動き、つまり
「EVOLって、ウルトラマンだったのかよ…」
「エボル、ですか。
それがあのウルトラマンの名前なんっすね。
さて、アマカワソラ君。
君は戦う力を得てしまいました。
その力を持つ以上、君には戦う責任が生まれてしまいます。
だけど、君は戦士でもないし、戦う理由もない。
だから選んでください、力を使わずにただの人間として生きていくのか、それとも戦士として戦う道を選ぶのか。」
ハルキの突然の言葉に戸惑うソラ。
「待ってください!
流石に理解が追いつきませんよ!
なんで、ナツカワ隊長にこんなに俺は聴かれてるんですか⁈」
その時医務室のドアが開く。
イズモが厳しい顔で入ってきた。
「ソラ、目覚めてすぐで悪いがこれは決めなくちゃならないことなんだ。
そしてその辛さを、お前が悩んでいることについて一番理解できる人がナツカワ隊長だ。
なぜならこの人は、かつてウルトラマンだったから。」
ということはウルトラマンZがナツカワ隊長⁈
「そうです、俺が18年前まで、Zさんと戦っていた人間です。
デストルドスとの戦いで旧ストレイジのみんなにはそれがバレていましたが、みんな緘口令をしいてくれて外部にはバレていませんでした。
ですがその後、とある戦いで変身の瞬間を民間人に撮影されてしまってそれが公表された結果、日本政府の一部がウルトラマンの力の研究をすべく暴走し、俺は拉致され半年の間実験材料にされていました。」
そう語るハルキの顔は苦痛に歪んでおり、その実験の内容について語らずとも壮絶さを物語っていた。
「過去にウルトラマンを模した兵器を作り失敗していた過去を持っている日本政府はかなりの焦りがあったのでしょうね。
日に日に実験は苛烈さを増して、俺も途中から記憶がありません。
何度か救出を試みてくれた当時のメンバーの話では、人権を保証していないどころかモルモット以下の扱いを受けていたみたいです。
当時の俺の上官が、Zさんと最後に話をして非公表の人体実験だったので壊して構わないって話をしたみたいで、その施設を壊して俺をメンバーの元に送り届けて光の星へ帰って行きました。
全ては俺の命を守るために。」
全てを語り合えたハルキは、先ほどまでとは一転した寂しげな表情を浮かべていた。
「俺はもともと戦うべき仕事をしていて、Zさんの力を受け取ったので当然のように戦いました。
だけど君は、さっきも言ったように偶然力を手にしてしまっただけの一般人に過ぎません。
戦えば当然、その最中に命を落とすこともあります。
君にはその覚悟がありますか?」
俺は、ただみんなを守りたいだけでエボルの力に手を伸ばしただけなのに…
命をかけるなんてそんな…
自問自答するソラの両肩に手を置き正面から顔を見るハルキ。
「しっかり迷ってください!
戦って後悔することも、戦わなくて後悔することも俺はしてほしくないです。
もし君に戦う理由ができたなら、俺のところに来てください。
しばらくはお友達も含めてこの施設内に留まってもらいます。
これは現状エボルの力を表に出さないためです。
遺跡の崩落事故ということで世間には発表していますので、まだバレてはいないはずです。
ですので君も、今はゆっくり体を休めてください。
俺は仕事がありますのでこれで。」
そう言って医務室をでていくハルキ。
傍の父に問いかけるソラ。
「父さん、オレ…」
「いいんだ、何も言うな。
友を守って生きて帰ってきた、それだけで今はお前が誇らしいよ。」
オレはどうするべきなんだろう。
考え疲れて眠りについていた。
それから3週間、体の傷は癒えてあと一週間でほとぼりも冷めるから解放されるとのことだった。
しかしソラはいまだに答えを出せずにいた。
父にエボルについて尋ねてみるも遺跡の文献からそれらしい名前が出てはこなかった。
だけどあの力がウルトラマンだってんなら、なんなんだよ、真実の名って。
隊長の許可をもらって当時のウルトラマン関係の文献を漁り続ける日々が続いていた。
しかし物語のきっかけというのは常に唐突におとずれるものだ。
けたたましいアラートが基地中に鳴り響く。
『緊急指令‼︎
太平洋の海上から領海に侵入してくる物体を捕捉。
防衛軍の監視からの報告では正体不明の物体が高速で飛行しているとのこと。
ストレイジ隊員については直ちに持ち場につけ、繰り返す、持ち場につけ。』
それから30分、キングジョー、ウインダムが基地から出撃する。
新横浜港で迎撃作戦が開始された。
現れた怪獣を見てハルキが喘ぐ。
「馬鹿な、ペギラだと❕
あいつは、俺とZさんで…」
現れた怪獣はZが倒した冷凍怪獣ペギラだった。
かつてゼットランスアローに封じられ、地球温暖化の影響で永久凍土が溶けたことにより復活した怪獣だった。
しかし、今回現れたペギラは前回より大きな翼を持ち羽ばたくだけで吹雪を起こしていた。
「まさか、他に生き残りがいたとは…」
十九年前の戦いより苦戦は必死であろう…
しかし、ハルキの考えはそこになかった。
『前回は地震を封印したゼットランスアローを求めて日本まで来ていたはずだ。
だけどあれはZさんが持って帰ったはず。
このタイミングでここにくる理由が…?』
考えている間に事態は進展していた。
以前ウインダムは氷漬けにされた経験から装甲を厚くし、放熱を常に行い冷凍状態になることを防いでいたが、今回のペギラを前にしては5分ともたなかった。
キングジョーにより回収されたウインダムを基地へと持ち帰る。
その後通常種よりも巨大なため類似生物から名を取り、エンペラーぺドラと命名された。
「奴の進路予想はここにくると言うことなんだな?」
「はい、何かに惹かれるかのようにまっすぐと」
そのエンペラーぺドラはまっすぐと新生ストレイジの基地へと向かっていた。
直前の動きをモニターしたところ、北海道の遺跡で何かを探しているような動きで周囲を飛んでいたことが分かった。
憶測の域を出ないが、アークエリス遺跡の出土物に魅かれている可能性があった。
「この件については一切の口外を禁じる。
ソラ君を最優先で守るんだ。」
ハルキがメンバーにそう言い含めている時、司令室のドアがスライドした。
「隊長さん、どう言うことですか?」
「聞いていたんですね。
奴は以前自身を封印していた石器を狙って日本に来ました。
タイミングと、行動から推察するに君の、エボルの力を狙っての行動でしょう。
だが君は子どもだ。
前にも言ったが君に戦ってもらうつもりはない、大人しく友達と部屋にいたまえ。」
突きはなす様な冷たい言葉。
それはハルキの思いやりだった。
自分の思いなど知らなくても良い、ただ戦士として子どもを守る男の背中がそこにはあった。
だが…
「…違うでしょ‼︎
隊長さん、いやハルキさん‼︎
俺に言いましたよね、闘うべき理由ができたなら自分のところに来いって…
出会って一ヶ月だけど、この基地で生活している間に皆俺の知っている人になった。
その人達が命をかけて俺を守ろうとしているなら、俺も逆にみんなを守りたいって、そう思ったんだ。
だから戦います‼︎
誰かが悲しむ顔をするなら、それを守るために俺はこの命を燃やします。」
ソラの目には迷いはなかった。
ついさっきまで迷っていた、だがこのまま見過ごして誰かが泣くならきっと後悔する。
「…わかりました…
君に、託します。」
そしてハルキを含めたストレイジメンバーから拳を突き出されたソラ。
全ての拳と自分の拳を合わせて、強く誓う。
ここにいる人を守り抜くと。
そして屋上まで駆け上がり敵を見据える。
「やるぞ、お前は願いを叶えてくれる石なんだろ。
なら、あの時と同じだ。
代償なんか払わない、俺に守れる力をくれ‼︎
行くぞEVOL‼︎」
そして手の中に握る赤い球を天に掲げる。
「いや、これが新しい真実の名だ‼︎
GO‼︎ウルトラマン、EVOL‼︎」
球は真紅の光で空を包み込む。
そこには一ヶ月ぶりの赤と銀色の巨人が立っていた。
頭部には中心とこめかみ部分から側面にトサカがある。
胸の中央には台形のクリスタルが十字を描くように聳えていた。
そしてエンペラーぺドラとの肉弾戦が始まった。
氷の息吹をよけ、確実に拳でダメージを与えていく。
しかし巨大化した翼と爪のリーチは避けきれず次第にダメージが重なっていく。
そして気づけばクリスタルが青色から赤く点滅し始めた。
「なんでだ、まだ1分しか経ってないのに」
ハルキは3分の時間的誓約を身をもって知っていた。
ゆえに、ダメージのみで点灯しないことは当然知っていた。
しかし自身に闘う力はない、ただ見守ることしかできなかった。
そして、EVOLの拳が光を纏い、ペギラを爆散させた。
勝利に湧く司令部、しかし
ペギラの爪がEVOLを貫通していた。
赤い光となって膝を突きながらその場に倒れ込みそして消えたウルトラマン。
「大至急、救援に迎え‼︎」
救護部隊が現場に向かい連れ帰ってきたのは瀕死のソラだった。
集中治療室に運ばれ、3時間が経過した。
イズモの元にハルキがやってくる。
「天川教授、申し訳ございません。
私がご子息を戦いに行く許可を出しました。」
「…責任の所在なんぞ求めちゃいません…
ソラはどうなったんですか。」
恐怖を抱くほどの冷静さ。
ハルキはそこに見届けた全てを伝えなければならなかった。
「ご子息はつい先ほど、心臓の鼓動が止まりました。」