ソラの心臓が止まって2日が経った。
ストレイジの医療施設の生命維持装置により辛うじて生命を維持している状態であった。
基地に保護されていたミソノが付きっきりで看病に当たっている。
そして隊長室でハルキとイズモが顔を突き合わせていた。
「隊長、それでお話とは?
私も今、冷静にあなたの話を聞ける状態じゃないんですよ。
それはあなたもわかるでしょう。」
義理とは息子が危篤な状態、そもそも民間人であるソラを怪獣との戦いに出す許可を出したのはハルキだ。
息子の今の状態を作り出した直接の原因ではないとは言え、イズモはハルキに怒りを覚えていた。
「私もそれは重々承知しています。
ご子息の現状はご存知の通りですが、少し妙なことがありまして。
専門家であるあなたの、ご意見をいただきたい。
俺も、ソラを助けたいんです。」
最後の一人称が俺に変わっているところを見る限り、言葉の本気度は高い。
そう判断したイズモは居住まいを正して話を聞くことにした。
「先ず、俺がZさんと戦っていた時の話ですが戦闘中にダメージを負うと変身を解除した後の体にもダメージの痕が残ります。
今回でいえば、ソラの体に爪が刺さったことによる外傷が本来あるはずなんです。
だけど、触診でもCTでもダメージが見られない。
そしてダメージを受けた時の様子を映像で再確認しました。
それがこちらです。」
表示された画面にはエボルに爪が突き立てられ肉体に刺さるところだった。
思わず目を背けるイズモ、しかしあることに気が付き画面を凝視する。
「お気づきになられたようですね。
爪が刺さっている部分が粒子化しているんです。
つまり、この時すでに変身が解け始めていたと考える方が自然なんです。
そうすると次に残る疑問は、なぜソラは現在の状態になっているのか。
あの状態でダメージを受けたとは考えにくい。」
「君の言いたいことはわかった。
だが別の要因があるとして、それがどうした。
私に何ができるというんだ。」
「そうです、大事なのはここからです。
これを誰かに話すのは初めてですが、俺は一度死んでいます。」
ハルキの言葉に驚くイズモ。
この短期間でこの男が嘘をつけるタイプの人間ではないということはわかっていた。
だから尚更、話す内容が荒唐無稽なもので判断に困っていた。
「ゲネガーグという怪獣と戦った時に初めてウルトラマンZがこの星を訪れて共に戦いました。
だけどZさんは瀕死に、俺は死んでしまったんです。
その時、二人で一つの命になることで、俺はまたこの世に蘇りました。
そしてその中で俺自身の命が回復して、Zさんのいない今でも生きているんです。
もし、エボルがウルトラマンかそれに近しい存在ならば同じ奇跡が起こるかもしれません。
今、エボルの珠を解析していますが以前解析した時に計測されたエネルギーが消失しています。
可能性は十分にあります。
だけどそれを判断できる材料が俺たちストレイジにはありません。
だから、エボルの力が収められていたあの遺跡に一番詳しいあなたに力を貸してほしいんです。」
「…私は、なにをすればいいんだ。」
「おそらくエボルの存在自体がアークエリスの中でも伝説か伝承の類として記録されていると思います。
それを片っ端から調べてください。
関係のないものも含めて全てです。
ソラが初めてエボルの力を手にした時に聞いた声の話を考えると、アークエリス文明は言霊を重視していたようです。
ならば、全てにヒントがあると思われます。」
かくして文明とエボルの研究が開始された。
時を同じくしてソラの精神世界。
水晶の洞窟に気づけば立っていた。
目の前には再び祭司服の男が立っていた。
「こんなにも早く、また出会うことになるとはな。
ソラ、資格を持つ者よ。」
「あなたは、あの時の…」
「まさか、奇跡の負荷で肉体が耐え切れぬとはな。」
言っている言葉が飲み込めず首をかしげるソラ。
「なに、力の制御がうまくできていないということだ。
そしてその力に君の体が耐えきれなかった、それだけのことだ。
つまり、君は今死んでいる。」
淡々と事実を述べる男に呆気に取られるソラ。
「だが、全ては始まったばかり。
君が救いたいと願ったその気持ちに敬意を表し、再び輝きを与えよう。
だがきをつけたまえ、一度消えた灯火に火をつかけることは容易ではない。
そして力を振るうに足りる肉体に今作り変わっている。
これも尋常ではない痛みを伴うだろう。
君の背負う運命はあまりにも過酷だ。
だが忘れるな、自ら選び勝ち取った先にこそ、未来はある。」
そう言って洞窟の奥へと歩き出した男が突然振り返った。
「…言い忘れたが、力はまだ不安定だ。
文明に伝わる、3柱の神の加護をそれぞれ借りるといい。
神のことは君の父君が調べてくれる。
あぁ、それと、加護には三すくみの光で覆うと安定するだろう。
君の記憶を見させてもらったが、頼りになる先人に習うと良い。
終わりの名を持つ戦士の力の記憶が導いてくれるだろう。
それでは、良き神話を。」
そういうと意識がスッと消えていく。
再び暗い深淵へと誘われていった。
そして1週間の時が流れた。
ハルキは隊長室でとある女性科学者と話していた。
「隊長、何とかご要望の品は形になりましたよ。
あのお預かりした白い銃を参考にさせていただきましたよ。
ですがまだ、あのキーに相当するものが形にはなっていますが中身が用意できておらず…」
「それについてはオイオイですね。
あとはアマカワ教授が調べてくださっている文献の結果を待つしかないでしょう。
ところでアキさん徹夜ですよね。
メンテナンスとかもお願いしないといけないんですけど、残業しすぎです。
休んでくださいよ。」
ヤザワアキ博士、新生ストレイジの化学班を統括する女傑で30代半ばで装備の開発等を一手に引き受けている。
アキが出て行くのと入れ違いにイズモが入ってくる。
「隊長さん、残念ながらエボルの謎はわからずじまいです。
ですが類似するものとして3柱の神がいるようです。
名前はわかりませんが、それぞれ太陽、月、嵐を司っているようです。
発掘されたそれぞれの神に捧げる神器の解析を進めています。
日本神話と共通するところがありますね。
ソラの容態はどうでしょう?」
実はソラの心臓は6日前から再び鼓動を刻んでいた。
しかし意識は戻っていなかった。
「依然変わらずと言ったところです。
しかし、医師の観察では経過は良好なようです。
あとは何事もなく目を覚ましてくれればいいのですが…」
その時隊長室の内線がなる。
「はい、ナツカワ。
はい、はい、はい⁈
アマカワさん、ソラ起きたみたいです。」
急いで医務室へ行くといつも通りのソラがヘラヘラ笑ってミソノと話していた。
「あ、父さん、ハルキさん。
ご心配かけました。」
「ミソノくん、ちょっと外してくれますか。
3人で大事な話があるので。」
そしてハルキとイズモと3人での話し合いが始まった。
「つまり、夢の中で出てきた男の話が正しければ、エボルの力に体が耐えきれずに死んで、そのあと仮死状態になってより強い肉体へ作り変わっていたと。
エボルの力はまだ安定していないから神と三すくみの力で保てねぇ。
終わりの名を持つ戦士、ってことはつまり…」
「あの、ハルキさん。
なんかわかったんですか?」
「おそらくですが、その戦士はZさんのことでしょう。
ということは三すくみの光は俺が変身に使っていたウルトラメダルというウルトラマンの力が込められたメダルのデータでしょうね。
あとは君のお父さんが調べてくれたアークエリスの神様たちとその神器が鍵ってことですね。
こちらでできることは全てやりますので、今は休むことを第一に考えてください。
それと合わせて、ソラ、ストレイジに入りませんか?
君が戦うにあたってこちらも全力のバックアップができる。
そしてここからはこの3人だけの話にしてほしいんですが、怪獣たちが再び動き出した背景にどうやらアークエリス文明が関わっている可能性があります。
ですので、アマカワ教授にも部外顧問か協力者としてこの戦いに参加してほしいんです。
俺たちだけでは、あまりにもわからないことが多すぎる。」
「俺は…」
言葉を遮るようにアラートが鳴り響く。
『東北地方の遺跡近辺から怪獣出現!
遺跡を破壊したのちに海上から東京へ進路を向けています!
およそ2時間で到着予定!』
「嘘だろ、こんな時に!
アマカワ先生、ソラと研究室に向かってください!
そこにエボルライザーがあります!
メモリカートリッジに力を込めないといけないんですが俺にはそれがわからない!
ウルトラメダルのデータと適合する神器を探してください!」
そして研究室へ走る。
「ソラ君とアマカワ教授ですね。
私はヤザワアキ。
早速ですが時間がないの、ハルキ隊長から聞いていると思うけどあなたの力を安定させるためにウルトラメダルを選ばないといけないんだけど私たちではわからないの!
今解析が終わっているのは太陽の神の神器だけ。
その神の言霊は、太陽の如き灼熱を持って悪を焼き払う。
大地の炎をまといし者、その資格たる勇気を示せ。
お願いソラくん、君にしかできない!
アマカワ先生、あなたにもこちらを手伝ってもらいたいです。」
そこから1時間半が経過した。
想定より早く陸に辿り着いた怪獣は恐竜のような容姿をしていた。
特徴的なのは外皮の上に骨を纏って補強されている。
ホーンデッドゴモラ。
こいつにはウインダムでは歯が立たず既に撤退を始めていた。
キングジョーが応戦するも右腕を折るので精一杯だった。
「防衛戦を突破、間も無く首都圏近郊に到着!
キングジョー戦闘はしばらく可能、現状に押しとどめるのが精一杯です!」
オペレーターの報告に歯噛みするハルキ。
自身で戦いたい気持ちがはやる。
その時だった。
アキが司令室に駆け込む。
「隊長、太陽の力が完成しました!
ソラ君は付近までヘリで向かってもらってます!」
一筋の希望が見えた瞬間だった。
5分後、首都郊外についたソラ。
ゴモラがキングジョーを押し退けているのが肉眼で見える。
「みんながここまでやってくれたんだ、ならあとは俺がやるしかないよな!」
右手に赤い拳大の機械エボルライザーを構える。
そして左手にメモリーカードを長くしたような赤い板を構えてライザーの側面の窪みに差し込む。
シャイン・バースト!
読み込み音が鳴ったことで起動を確認する。
そして正面のスイッチを左掌に押し当てる。
フュージョンスタンバイ!
レディ?
機械音がなる。
これで準備は整った。
ソラがライザーを掲げてスイッチを押す!
が、何も起こらない。
「ちょっとアキさん⁈
全然変身できないんですけど?」
そこにハルキが割り込む。
「ソラ、気合いが足りてないんですよ!
ほら、やっぱり名前叫ばないと!」
「今回は脳筋隊長の言うことに賛同ね。
言ったでしょ、アークエリス文明は言霊を重視する。
だから頭に浮かんだ言霊を解き放たないと神もウルトラマンも力を貸してくれないのよ。
そんで真実の名ってのを呼ばないと存在が証明できないんでしょ!
なら気合い入れて叫びなさい!」
おいおい、この博士以外に体育会系かよ。
ツッコミが止まらないが大体わかった。
「なんだかなぁ、でもやるしかないよな!
readyって言ってんだからライザーは準備万端だよな、ってことはあとは俺の覚悟だけか。
いくぞ!」
再び胸の前にライザーを構えて深く息を吸う。
そして
「燃え上がれ、勇気の太陽!
GO!ウルトラマン、EVOL!」
その勇気に応えて、太陽の神の力を纏うEVOLが立ち上がる。
ウルトラマンEVOL シャイン・バースト!
頭部の側面のトサカがオレンジと銀色の鎧で覆われる。
それに合わせて肩口、両腕、両足も鎧で覆われた。
体表の色も銀、赤、オレンジに変わる。
その時ゴモラがその大樹のような尾を振り回す。
が、拳で受け止めるEVOL。
圧倒的なまでに肉弾戦で打ち勝っていた。
そして炎のブレスを吐いてくるが、炎を纏った拳で弾き飛ばす。
直後にソラの頭の中に流れ込んでくる情報があった。
「なるほど、これが必殺技ってやつか!」
両拳を合わせて縦に構えそれを対極を描くように回す。
上下に至ったところで腕を交差させ極炎のエネルギーを放ち、爆散させる。
ゴモラだったものはその場で崩れ落ちた。
事後処理が終わった夕方、司令室へ歩いていくソラとイズモ
ハルキが待っていた。
「お疲れ様でした、答えは決まりましたか?」
「はい、俺たち親子ともどもお世話になります。
よろしくお願いします隊長!」
次の瞬間隠れていた他のメンバーにもみくちゃにされる。
その日は夜遅くまで歓迎会が終わらなかった。