よろしくお願いします。
魔王に支配された世界。
女神は魔王から世界を取り戻すべく、4人の少女に力を与えた。
故郷を魔王に焼かれ天涯孤独の身となった少女には、『勇者』の力を。
幼い頃に教会に保護された身寄りのない子には、『聖女』の力を。
魔王に両親を殺害され、1人生きのび山奥で復讐を誓った少女には、『賢者』の力を。
国を守るために命を懸けた両親の生き様に憧れ、王国を守る戦士となった少女には『騎士』の力を。
4人が力を合わせ戦えば、魔王にだって勝てるはず。
女神は自分が地上に行けば魔王が気づくことを理解しているため、力を与えることしか出来ない自身の不甲斐なさを嘆きながらも、人類が魔王の魔の手から救われんことを祈り続ける。
ああどうか、人類の未来に幸あらんことをー
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彼女、ノエルは勇者である。
女神により勇者の力を与えられ、その証拠として右手の甲に勇者の刻印を刻まれた彼女は、現在とぼとぼと王都をさまよっていた。
先程までノエルは、王城にて国王に謁見していた。
国王からは人類がどれだけ危険な立ち位置にいるのか、魔王がどれほど強大なのかを長々と語られ、ひのきのぼうと100ゴールドのみを渡され『さあ、行くのだ勇者よ!』と王城から追い出されたのである。
ちなみに今ノエルのそばにある屋台の串焼きが1本5ゴールド。
たかだか串焼き20本分の金額では鎧はおろか盾すら買えやしない。
武器もひのきのぼう1本きりだなんて、心許無いにも程がある。
せめて鉄の剣の1本でも欲しかった。
「はぁ…」
思わずため息をつく。
ノエルは完全に途方に暮れていた。
いきなり勇者にさせられ、わけがわからないままはした金と木の棒を王から渡され魔王討伐の旅に出させられる。
誰かに頼ろうにも、国王が自分のことを勇者だと広めてしまったため、助けを求めても『勇者だろ?』で流されてしまう。
挙句の果てには初の王都で道に迷い、路地裏から出られなくなってしまった。
泣きたくなってきた。
ノエルは膝を抱え、その場にしゃがみ込んだ。
「……これからどうしよう」
「あー、お前。大丈夫か?」
ぶつぶつと呟いていると、上から声をかけられた。
ふと顔を上げると、全身を頑丈そうな鎧で覆い頭部をバケツのような兜で包んだ、2メートルを超える巨体が立っていた。
巨体は片手に中身が詰まった手提げ袋を提げながら、ノエルを困ったように眺めている。
「嬢ちゃん、困ってるみたいだが大丈夫か?」
「え、あっ、はい。……えっと、あー、いや、大丈夫です」
バケツ男の声は優しく、本当に自分を気遣ってくれていることがわかった。
ノエルはそれが嬉しかったが、初対面の人にいきなり愚痴を聞かせるのはダメだろうと思い足早に去ろうとする。
しかしバケツ男はその巨体で道を塞ぐと、手提げ袋からジュースを取り出した。
「まあ、遠慮しないで飲め。安心しろ、買ってきたばかりだ」
「あ、ありがとうございます?」
ノエルは受け取ると、飲んでもいいものかとしばらく困っていたが喉もかわいていたため、意を決すと蓋を開けて一息に飲んだ。
果実の芳醇な香りと甘みが喉を潤し、ささくれだった心を癒す。
「落ち着いたか?」
「は、はい。ありがとうございます」
「そいつは良かった。ーっと、まだ自己紹介してなかったな。俺はローウェン。この街の警備兵をしていてな。迷子の案内から落し物探しまで、なんでもやっている」
「ぼ、ボクはノエルです。ノエル・ホワイト。えっと、なんか勇者らしいです」
「おー!あんたが噂の勇者さまか!1度会ってみたかったんだ!しっかし、こんな小さな子が勇者ねぇ…」
ローウェンはノエルをしげしげと眺めた。
ノエルは152センチメートルと女性の中でも小柄で、ローウェンからは勇者には見えなかった。
しかし右手の甲に勇者の紋章もあるし、何よりもこの子が自身を勇者と呼ぶのなら、勇者なのだろう。
ローウェンは1人納得すると、そんな勇者であるノエルが何故こんな人気のない路地裏で蹲っていたのかを尋ねた。
「んで、なんで勇者さまはこんなところで蹲ってたんだ?体調が優れないとか?」
「い、いや、そういう訳じゃないんですけど…」
ノエルは息を着くと、王城の出来事を語った。
ローウェンはそれを腕組みしながら聴いていたが、次第にカタカタと震え出した。
「ーと、まあそんなわけで魔王討伐に行けと追い出されました…」
「そうか…。大変だったな」
ローウェンはノエルを撫でると、拳を握りこみー感情のままに空へ放った。
拳の勢いは天を貫き、空を覆っていた厚い雲を消し飛ばす。
「…は?えーえぇぇぇぇええ!?」
ノエルは目の前で起きたことが理解出来ず、パニックになる。
ローウェンは拳を下ろすと、跪いてノエルと目を合わせた。
「勇者さまよ。俺は特別な力こそないが…魔王の配下である魔物の知識や、装備の鑑定、道具の作成なんかにはちょっと自信がある。役に立てるかもしれん。だから、魔王討伐の旅に連れてってくれないか?」
「ええぇえ…い、良いんですか?」
「ああ。俺も魔王には散々恨みがあるしーなによりも、あんたが心配でたまらん。国の支援も最低限未満のないよりマシ程度だ。そんな状態であんたが戦いに行くのを、黙って見捨てる訳にはいかん」
「で、でも警備兵の仕事はー」
「安心しろ。俺の他にも警備兵はいるから、問題は無い。まあ、一言残せば大丈夫だ」
ノエルはローウェンの目を見る。
バケツ型ヘルメットのスリットから覗く、翡翠色の瞳。
その目に曇りはなく、義憤とノエルへの心配が感じ取れた。
ああ、この人は、多分すごくお人好しなんだろう。
ノエルはそう感じた。
この人なら信用出来る気がする。
ノエルはローウェンの手をとると、微笑んだ。
「ボクはまだ未熟で、勇者の名も大袈裟で、何もお返しできないですけど…ボクと、一緒に来てくれませんか?」
「ああ。喜んで」
満月が照らす夜道。
勇者は、仲間を手に入れた。
ご覧頂き、ありがとうございました。
よろしければ感想、ご意見等気軽にお書きください。
作品の路線を見失ったため、書き直してもよろしいでしょうか。
-
いいよ!(ほのぼの系に書き直し)
-
ダメです(R-15のまま続行)
-
えぐめマシマシで(R-18Gへ路線変更)
-
別作品としてほのぼのを書けば?
-
別作品としてR-18Gを書いて♡