第10話です。
楽しんで頂けたら幸いです。
ノエルとローウェンが誓いを立てた翌朝。
あの後落ち着いて眠ることが出来たノエルは、まだ寝ているユイを起こしてテントから出た。
ローウェンは既に朝食の準備をしており、昨日と同じくマーダーラビットの串焼きと昨日余ったタックルボアの肉をユイに魔法で加工して作ってもらったベーコンを使ったスープを作っていた。
「よう、2人とも。よく眠れたみたいだな」
「おはようございます、ローウェンさん」
「おはよ、ローウェン」
「ああ、おはよう。朝食はもうすぐできるから、今日行くルートを先に話しておくな」
ローウェンは2人に地図を見せた。
1枚しかない地図をノエルとユイは2人で眺めながら、ローウェンの話を聞く。
「今日は目の前のこの山、ピット山を越えて、山向こうにあるバーク村を目指す」
「ローウェン、なんでバーク村に行くの?」
「それはな、この村に『賢者』の紋章を持つ方がいるからだ」
「賢者がいるの?」
「らしい。なんでも、村の奥にある森で1人で住んでいて、たまに村へ来るそうだ」
「一人、ですか?」
「寂しそう」
「随分と寡黙で難しい方らしくてな。名前はもちろん、年齢性別、声すら分からないらしい。背丈も分からないなんて凄いよな」
「どういうことですか?村に来てるなら顔とか、少なくとも声は聞いてるはずじゃ…」
「フードを目深に被っていて顔は分からず、声も聞けば分かるが姿を消すと途端に分からなくなるらしい。まあおそらく、魔法だろうな」
「声を変えるの、私もできる」
「ユイもできるのか、すごいな」
「…魔法を使ってまで隠れている人が、『賢者』なんですか?」
「ああ。おそらくだが、まあそんな自由に魔法を使えるなら、魔物じゃなければ賢者様くらいだろう。紋章もあるらしいしな」
「ノエル、大丈夫。勇者だって言えば、着いてくるはず」
「だといいんだけど…」
「『賢者』も『勇者』と同じく、魔王を討ち世界を救うために女神様が下さった力だ。ノエルが昨日誓ったようにノエルらしくあれば、賢者様さまも仲間になってくれるだろうよ」
「誓い?」
「ローウェンさん、恥ずかしいので昨日のは内密に…」
「あー、うん。なんでもないぞー」
「怪しい」
「怪しくない怪しくない。ほら、もうできるから待ってな」
ローウェンはそう言うと火にかけていたスープの味見をし、塩を少し加え軽くかき混ぜた。
串焼きも良い感じに焼けているため、ローウェンは説明を止めて出来上がった朝食を2人へ提供した。
「ほいよ、おまたせ。熱いから気をつけてな」
「はーい」
「わーい、お腹すいてたんです」
喜んで串焼きを頬張る2人。
嬉しそうな2人を眺めながら、ローウェンはスープを啜った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
食事を終え、3人は山を昇っていた。
先頭はノエル、後ろにユイが続き、殿はローウェンである。
時折ニードルツリーから棘が飛んでくるが、ローウェンが片手にニードルツリーだった丸太を振り回して弾くため、ノエルとユイに怪我はなかった。
「疲れてないか?」
「後ろから丸太がとんで来る恐怖はありますけど、大丈夫です」 「丸太が耳を掠めそうになること以外は大丈夫」
「それはすまん。俺も丸太じゃなくて盾に加工すりゃ良かったと思ってる」
ニードルツリーの刺針を丸太で受けながら謝る。
ユイの胴体程もある丸太を片手で振り回すローウェンに突っ込む者はいなかった。
「全弾弾くのはすごいと思うんですけど、丸太振ってて疲れないんですか?」
「いや全然。斧よりよっぽど軽いし」
「え、どう見てもこの丸太100kgはありますよ?」
「生木だからな。まあ、太いから持ちやすいし、俺の斧はキロじゃすまないからな」
まさかのローウェンの斧1トン以上ある説。
ノエルは震えた。
「ローウェン、人間?」
「もちろん。このハンサムな顔を見ればわかるだろ?」
「ヘルムで見えないです」
「見えない」
「そういや被ってたな。慣れすぎて忘れてた」
「頭に金属の塊乗っけて忘れられるのローウェンさんくらいですよ…」
「そうかぁ?」
「そうですよ」
「そうかぁ」
丸太でニードルツリーの棘針を防ぐ。
丸太は棘針が刺さりまくって、原型が分からなくなっていた。
「並のニードルツリーより棘あるぞこれ」
「あんなに防いだらそうなりますよ」
「トゲトゲ」
「こんだけ刺さると耐久性が不安だが…元が魔物だしな。後十数発くらいなら耐えるだろ」
飛んできた針を防ぐ。
ノエル達は下りに差し掛かっていた。
相変わらず山道の周囲はニードルツリーがひしめいており、ローウェンが抱える丸太も無数の棘でボロボロだ。
「あー、でもいざ壊れたって時が面倒だな。よし、2本目取ってくるか」
「はい?」
「ユイ、ちょっとここで待っててな。ノエル、ユイを挟んで盾を体の真正面に構えて、盾に体が隠れるように構えてな背中の方はこれ置いてくから大丈夫だ」
「ローウェンさん、何を―」
ローウェンはユイを肩から下ろすと、ノエルに守るよう指示し、ノエルの背後にニードルツリーだった棘まみれの丸太を突き立てると、近くで棘を飛ばしてきたニードルツリーに高速で接近し、手のひらで触れる。
そのまま、指を幹へ食い込ませた。
メキメキと音を立てて、ローウェンの指がニードルツリーにめり込んでいく。
木型であるため足が遅く動きも鈍いニードルツリーは、逃げることも叶わずローウェンのなすままになった。
「―むん!」
ローウェンは片手で、ニードルツリーを引っこ抜いた。
周囲の木々の根に絡んでいたであろう根っこに擬態したニードルツリーの足が、ブチブチと音を立てて引きちぎられる。
ニードルツリーはトゲを逆立て威嚇し無数の針を射出したが、全身余すとこなく鎧に包んだローウェンは涼しい顔だ。
ローウェンはそのまま担ぎあげると、側にいた別のニードルツリーへ手にしていたニードルツリーを叩きつけた。
がんがんと何度も叩きつけ、棘を削る。
あまりに無造作に引っこ抜いて叩きつけるため、ノエルとユイは何が起きているか分からず目を見開いていた。
「ふう。まあ、こんなもんだろ」
そう言って叩きつけるのをやめる頃には、ローウェンが手にしていたニードルツリーはボロボロだった。
棘は何度も叩きつけられて折れたり削れたりしてなくなり、枝も折れて無くなり、太い枝を数本残して幹だけになっている。
ちなみに叩きつけられていたニードルツリーも同じくボロボロで、棘を飛ばす力も底をついて真っ白になって佇んでいる。
周りのニードルツリーはそんな二本の仲間を見て、我先にと逃げていた。
「よし!じゃあ行くぞー」
「……もしかしてローウェンさんってヤバい人なんじゃ…」
「今更?」
「……確かに」
「なんか言ったかー?」
「ヴぃえ!?何も!」
「知らない」
「そうか。じゃあ改めて、行くぞー」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
バーク村の向こうにある森、『アートルムの大森林』にて。
ピット山を越えてこちらへ進むノエル達3人を眺める者がいた。
木漏れ日に煌めくブロンドの髪に、透き通るような白い肌。
燃えるような赤い瞳をした少女は、左手の甲に刻まれた『賢者』の紋章を眺めながら右手に持った杖を振る。
「あれが今代の勇者ねぇ。噂だと女の子って話だから、あのデカイ鎧はどう見ても男だから違うでしょ。デカいのに肩車されてるチビも防具は愚か武器すらないし、何より紋章も見えないから違うでしょうね。となると、あの白髪が勇者か…。弱そうだけど、大丈夫なのかしら?」
少女は遠見の魔法を使って、ノエル達を観察していた。
自分が力を貸すに値するか、見極めていたのである。
『賢者』として、魔王を倒すのは使命だから構わない。
しかし、彼女は自分より弱い者に力を貸すのは嫌だった。
対等な関係ならいいのだが、弱者のお世話なんて死んでも嫌だった。
そのため観察していたのだが、見た限りバケツ頭のデカい鎧に守られてばかりで、ニコニコとぬるい顔をしている。
どれだけ甘やかされたらあんなにふやけた顔になるのだろうか。
「んー、ひょっとしたら強いのかしら?弱いフリしてるとか?…でも力は感じないわねぇ。デカバケツの方からはこっちに気づいてるっぽいけど、あいつは気づいてないみたいだし……。わかんないわね」
彼女はもう一度杖を振るう。
パキパキと音を立てて空気中の水分が凍り、あっという間に4mはありそうな巨大な氷の槍が作られた。
「試してみようかしら。―それッ!」
魔力で氷の槍を飛ばす。
音速を超えて加速する氷の槍は、ノエル―の横にいたローウェンを狙って放たれた。
「さあ、お仲間がピンチだけど……どう動くのかしら? 」
少女は愉しそうに顔を歪めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
同刻、ローウェンは何者かに敵意が向けられいることに気づいていた。
魔法が放たれたことでノエルも微弱な魔力の流れからローウェンが狙われていることに気づく。
ユイも強力な魔力がこちらに近づいてくることに気づいた。
「ローウェンさん!」
「ノエルは俺の背に、ユイは少し離れてな。敵の狙いは『勇者』であるノエルだろう」
「いいえ、ローウェンさんが狙われてます!」
「私たちじゃない。ローウェン、上」
「上?―こっちに飛んできてる、あれか?」
「うん。大きな魔力。氷?」
「ローウェンさん目掛けてまっすぐ飛んできます。どんどん早くなってて、あと3秒くらいでぶつかります」
「思ったより早いな!?どうすっかな…」
「来ます!」
「迷うのも面倒くさい!よっと―ぬぅん!」
氷の槍がローウェンに降ってくる。
槍と呼ぶより氷塊の方が表現的に正しそうなそれを、ローウェンは手にしていたニードルツリーで殴りつけ一瞬槍を止めると―そのまま掴んで反転させ、投げ返した。
「投げ返した!?」
「ローウェン、すごい」
「―っと。なんだったんだあの氷。めちゃくちゃ硬いし、重かったんだけど。後めっちゃ冷たい。並の氷じゃないな」
「魔力で作られた氷」
「ユイちゃんの言う通りだと思います。あの氷から強い魔力を感じましたし」
「魔力で作った氷かぁ。そんなの作れるんだな」
「ボクは無理です」
「私、多分できる。―ほら」
「お、本当だ。ちっちゃいけどあの氷だ。すごいな」
「ふふん」
胸を張るユイの頭を撫でながら、ローウェンは誰が投げたのかを考えていた。
まあおそらく、さっきからこちらに敵意を向けている者だろう。
真っ直ぐ飛んできたルートをなぞって投げ返したが、あれだけの氷塊を作る程の魔力があるのならかき消すのも容易いはずだ。
飛んできたのがバーク村の方からということも加味すると、あの氷の槍を放ったのは十中八九賢者だろう。
なぜ、賢者が攻撃してきたのだろう。
ローウェンは首を傾げながらも、警戒をとかないようにしノエルとユイを連れてバーク村へ向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今代賢者は驚愕していた。
腕試しだったため大した魔法ではなかったが、それでも一般人相手なら簡単に殺せるほどの威力だった。
そんな槍を、投げ返してきた。
しかも槍が飛んできたルートを読み取って、全く同じルートを辿って投げてきた。
意味がわからなさすぎて笑えてくる。
あいつ本当に一般人か?
「勇者の力を測るつもりだったんだけど…あのバケツ頭、面白いじゃない」
飛んでくる氷の槍を、同サイズの炎の槍でかき消す。
賢者はローブを纏い目深くフードを被ると、杖をくるりと回し自分に認識阻害の魔法をかけた。
「うん、これでよし。せっかくだから、村で待っていてあげましょう。槍を斥けたご褒美ね」
賢者はニヤリと笑うと、杖を片手に村へ降りた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
あの後、槍が放っていた冷気により周囲の木々が凍りついていたことに気づいた一行。
並の生物よりもはるかに固く強靭な魔物でさえも凍りついていたのに自分たちは一切どうにもなっていないことに首を傾げながら、ノエル達は山を降りてバーク村へ向かった。
ちなみに凍りつかなかったのは、ノエルは『勇者』の紋章により魔法に対する強い耐性を持ち、ユイは黒龍の子が故に無意識に魔法を無効化しており、ローウェンは凍るより早く体を動かしていたため、凍らなかっただけである。
お前のどこが一般人だと指を刺されること間違いなしのローウェンは、凍りついていたニードルツリーだった丸太(二代目)を森に放り、3人は氷が溶けてニードルツリーが動き出さないうちに急いで山を駆け下りた。
途中凍りつかずにすんだニードルツリーが棘を飛ばすが、ローウェンが腕で弾く。
「急いで降りるぞ!」
「はい!」
「いけいけー」
後半急いだおかげか、昼過ぎには山を抜けることが出来た。
ローウェンとユイはノエルの息が整うのを待ち、出発する。
「……はぁ…はぁ…はぁ………」
「ノエル、大丈夫か?」
「大丈夫?」
「なんっで、ローウェ、ンさん、は、疲れ、てな、いん、ですか?」
「息荒いのに無理に喋るな。ほら水」
「あ、ありが、とう、ございます」
「疲れてない理由は…まあ、ほら。疲れるほど走ってないし」
「ローウェンは変。普通ノエルみたいになる」
「下り道5kmは疲れますよ…」
「お、落ち着いたみたいだな」
「水飲んだら何とか…」
「じゃあ行くか」
「……ノエル、ローウェンはアンジェの魔法より早く走る」
「そういえばそうでしたね…。この人本当に人間なんですかね?」
「少なくとも魔力が見えないから魔物じゃない」
「身体能力は化け物ですけどね」
「なんか言ったか?」
「いいえ、なんでもー」
「なんでもない」
「ちなみにノエルが化け物だの人間じゃないだの言ってたのは聞こえてるからな」
「すみませんでした」
3人はのんびり歩く。
結局、山を越えてからは特筆することはなく、日暮れ前に3人はバーク村へ着いたのだった。
ご覧頂き、ありがとうございます。
アンケートは今のところ、5000文字程度がいいとのご意見が多かったため、そのくらい書いていこうと思います。
まだアンケートはとってますので、答えていただけてない方は御手数ですがよろしくお願いします。
感想、ご意見等ございましたら、お気軽にお書きください。
作品の路線を見失ったため、書き直してもよろしいでしょうか。
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いいよ!(ほのぼの系に書き直し)
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ダメです(R-15のまま続行)
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えぐめマシマシで(R-18Gへ路線変更)
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別作品としてほのぼのを書けば?
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別作品としてR-18Gを書いて♡