楽しんで頂けたら幸いです。
勇者一行にバケツ頭が参入したその後。
今日の寝床すらなかったノエルは宿に案内してもらったが、手持ちのお金が足りなかったためローウェンの家に泊めてもらっていた。
「俺は警備の仕事があるから朝まで戻って来れん。好きに過ごしてくれ」
「ローウェンさん!?」
そんなわけで人の家にひとりきり、最初こそ遠慮しオロオロしていたが、眠気に負けてベッドで眠った。
肉が焼ける音と良い香りで目が覚めたノエルは、ゆっくりとベッドから体を起こす。
「えっと、あれ?ここ……」
寝ぼけたままベッドから出て、見知らぬ場所に首を傾げながら音のする方へ向かう。
音の出処ーキッチンでは、バケツ頭に全身甲冑の巨体が鉄鍋を振るっていた。
キッチンに立つのに適したとは到底思えない見た目と軽やかな手つきのミスマッチさとインパクトに、ノエルの眠気も思わず吹き飛ぶ。
ローウェンも足音でノエルに気づいたのか、鉄鍋を片手に振り向いた。
「おはよう。よく眠れたか?」
「料理する時ぐらい鎧脱ぎましょう!?」
朝からノエルのツッコミが響いた。
「いやぁ、鎧って脱ぐの面倒でな」
「家の中くらいは脱ぎましょうよ…」
リビングに設置されたテーブル。
向かい合うようにして座り、2人は朝食を食べている。
少し固い黒パンに、塩漬け肉の上に卵を落とし焼いたもの。
それにサラダとスープという、豪華なものだ。
特に卵と生野菜は非常に貴重品であり、それを惜しげも無く使う辺りからローウェンの懐の豊かさが垣間見えた。
「ボク、久しぶりに卵食べました」
「まあ、俺も卵は滅多に食べんが…勇者さまの旅立ちなんだ。せっかくだからいいもの食べたいだろ」
「気持ちは嬉しいですけど…贅沢すぎませんか?」
「美味しいから大丈夫だ。ほら、もっと食え」
ローウェンは無造作に皿に盛った卵料理をノエルに差し出す。
ノエルはそれを受け取ると、嬉しそうに頬張った。
ノエルはまだ15歳。
色気より食い気なお年頃である。
ちなみにローウェンは食事中も鎧と兜を脱ぐことはなかった。
ノエルは食事しにくいだろうと最初は兜を脱ぐように言ったが、スリットから器用に食べるところを見て突っ込むのを諦めたのだった。
朝食を摂り終えると、ローウェンは食料と水、薬草と解毒薬をバックパックに詰め込むと家を出た。
ノエルは薬草と解毒薬、そして王からもらったひのきのぼうを持ちローウェンの後を追う。
「ローウェンさん、今からどこに行くんですか?」
「とりあえず嬢ちゃんの武器を揃えなきゃな。ひのきのぼうだけじゃ無理だ」
「でもボク、お金ないですよ?」
「大丈夫だ、俺が出す。世界を救ってもらうんだから、金くらいは出させて欲しい」
「結構です、返せません!もう散々面倒見てもらったのに!」
「面倒なんて言うなよ。こう見えても金はあるんだ。遠慮しなくていいぞ」
「遠慮させてください!両親の教えです!恩とお金は返さなきゃいけないんです!」
「んー、そうか。両親の教えなら守んなきゃな。よし、じゃあ別の店に行こう」
「ボク今100ゴールドしかないけど、買える店があるんですか?」
「買うのは難しいが…貸し出しているところならある」
「貸し出し…武器のですか?」
「武器だけじゃない。盾とか鎧とかの防具もだ。知り合いの店でな。魔物によって殺された方々が纏っていたものを遺族から買い取って、安くで貸し出してるんだよ」
「え゛、死んだ人の…ですか?」
「ああ。多少傷ついているが、ちゃんと使えるぞ」
「い、嫌だけど…お金が無いからしょうがない……。ああでも、呪われたらどうしよう………」
「大丈夫だって。魔王討伐のために勇者さまと一緒に戦えるんだ。誇りこそすれ呪うやつなんざこの国には1人としていないよ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
武器貸し屋 『魔女の唇』にて。
ローウェンに連れられて来たノエルは、店内のその異様さに怖気を感じた。
なんというか、空気が重い。
じっとりと粘つくような、まとわりつくような雰囲気を感じ怯えていると、ローウェンは何も感じていないようで店に入り店員に話しかけた。
「ようアンジェ。武器貸してくれ」
「やあローウェン。どんなものがいいんだい?」
「いや、今日は俺じゃなくて、この子の武器を借りに来たんだ」
「…この子は?」
「聞いて驚け、この子こそ今噂の、勇者さまだ」
「へぇ、この子がねぇ……」
「の、ノエル・ホワイトです!よろしくお願いします!」
「これはこれは、ご丁寧にどうも。私はアンジェリカ・フローレンス。アンジェと呼んでくれるかい?」
ノエルはアンジェをまじまじと見つめる。
病的な青白い肌に生気のない目、枯れ木のように細い手足。
唇だけが真っ赤で、少し怖い。
しかし目を逸らしてはいけない気がして、ノエルはずっとアンジェと目を合わせ続けた。
「嫌だね、そんなに見つめないでくれ。照れるじゃないか」
10秒ほど見つめていると、フイとアンジェは顔を背けた。
彼女の首元は真っ赤になり、顔こそ見えないが照れているのは一目瞭然である。
あれこの人可愛いぞ!?
ノエルは心の中で叫んだ。
「ううん、うん。あー、話を戻すぞ。この子に武器を貸してほしいんだが…いいのあるか?」
「どんなのがいいんだい?剣に槍、珍しいものだと大槌なんかもあるが」
「あ、斧なら父に使い方を習いました」
「木を切るのと魔物を狩るのは違うぞ」
「斧を振るう勇者さまってのは…少々外聞が良くないねぇ」
結局、ノエルは刃渡り60センチメートル程の両刃剣に小型の盾、そして急所のみを金属で覆ったライトアーマーにマントを羽織ることになった。
今までのいかにも田舎人と言わんばかりの布の服とはうってかわりThe戦闘服のため、なんだか気恥しさを覚えたノエルは大人2人に目を向けた。
ローウェンにはよく似合っていると親指を立てられ、アンジェからはマントがダサいと剥ぎ取られた。
「マントは勇者の基本装備だろう!」
「それは舞台での勇者の話だろう。こんなもの戦闘の邪魔になるだけだよ」
ローウェンは悔しそうだったがアンジェに一理あると思ったのか、それ以上引き下がることはなかった。
正直邪魔だったため、ノエルとしてもマントがないのは楽だった。
「あの、ボク剣なんて使ったことないです」
「ん?勇者さまは狩りに行かなかったのかい?」
「アンジェ、ノエルは女の子だぞ。普通は狩りなんてしない」
「私はしていたよ?」
「お前と一緒にするな。誰もがお前みたいに頭のおかしなやつじゃないんだ」
「常にフルプレートアーマーなお前が言うな。バケツみたいな頭して」
「良いだろうバケツ頭。軽くて薄くて最高だ」
「頭に鉄塊乗せて軽いと言えるのはお前くらいだよ」
「ぼ、ボクはかっこいいと思いますよ?ローウェンのフルプレートアーマー」
「ありがとな。で、何の話だっけ?」
「この子が剣を使ったことがないという話さ」
「そうだったな。なぁに、安心しろ。剣を教えるのは得意だ」
「ろ、ローウェンさんが?」
「ああ。剣は得意でな」
「剣も、だろう?謙遜するな見苦しい」
「うるさいぞアンジェ」
「勇者さまも安心したまえ。あいつはあんな格好しているが、元騎士だ。『百龍狩りのローウェン』と言えば王都では有名でな。色々あって今はあんなんだが、実力は保証する」
「ひゃ、『百龍狩り』って…」
「おーいアンジェ、この剣借りていいか?」
「お前はぶっ壊すからダメだ。タダで貸すからそこのボロいの持ってけ」
「了解。ノエル、先に行ってるからお金払ってから来いよー」
「は、はい」
ローウェンが出ていくと、店に入った時に感じたあの言いようのない怖気がノエルを襲った。
思わず手を摩ると、アンジェは面白いものを見つけたように笑った。
「勇者さま、君は感じられる子のようだね」
「感じるって何がですか?」
「…寒くないかい?」
「寒くは無いですけど…なんだか震えが止まらなくて」
「ふむ、ではこれでどうかい?」
アンジェは指を鳴らす。
フィンガースナップによって大きな音が店内に響くと、ノエルは怖気を感じなくなった。
震えも止まり、粘つくような不快感もなくなった。
ノエルが不思議そうにしていると、アンジェは微笑む。
「さっきまでキミが感じていたのは、武器たちに染み付いた強い念、いわゆる怨念と言うやつでね。大抵の武器には憑いている。まあ、悪いものでは無いんだが…」
「お、怨念…」
「安心したまえ。もういないよ」
「そ、そうですか…」
ノエルには怨念というのがイマイチ分からなかったが、怖かったため聞くのをやめてお金を払おうとした。
「剣に、盾に鎧…幾らですか?」
「そうだね、本来なら120ゴールドだが、まあ盾はおまけってことで、90ゴールドで良いだろう」
「い、良いんですか?」
「構わないとも。ただし、死なないようにしてくれよ?キミは世界を救わないといけないんだから」
「は、はい。頑張ります!」
「ああ、頑張ってくれ。まいどあり」
お金を払い、店を出る。
アンジェはノエルが店を出るまで、手を振り続けていた。
勇者は、武器と防具を手に入れた。
ご覧頂きありがとうございました。
感想、ご意見お待ちしております。
作品の路線を見失ったため、書き直してもよろしいでしょうか。
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いいよ!(ほのぼの系に書き直し)
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ダメです(R-15のまま続行)
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えぐめマシマシで(R-18Gへ路線変更)
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別作品としてほのぼのを書けば?
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別作品としてR-18Gを書いて♡