勇者一行とバケツさん   作:(`・ω・´)ノ

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第5話です。
楽しんでいただけたら幸いです。


第5話 勇者ちゃんとヤチェ村

魔物を引き連れ王都を滅ぼそうとしていた謎の少女、ユイ。

しかし彼女は、心を壊され魔物に操られていたのだった。

ノエル、ローウェン、そしてアンジェの3人は、ユイの心を破壊した非情な魔物を討ち倒し、彼女の心を救うべく、ユイの家がある村へ向かうのだった。

 

「と、言うわけで。今から我々は、ユイちゃんの家がある村、ヤチェ村へと向かう。目的は、ユイの家を襲った魔物の討伐、及び負傷者の治療だ。私も同行するから、怪我をした場合は遠慮なく言いたまえ」

「アンジェさんも来てくれるんですか!?」

「ああ。ローウェンだけじゃ不安だからね」

「心強いことこの上ないな。勇者さま、アンジェの能力は物凄い。何せ、死んで1時間以内なら、死者さえ甦らせることが出来る。だから、怪我したり毒を受けたらアンジェを頼るといいぞ」

「ま、ローウェンのことだ。この子らが怪我をする心配はないだろうがね」

「…ローウェンって、強いの?」

「強いよー!パンチで雲が晴れるもん!」

「嘘。そんなの出来るわけない」

「ローウェンさんはできるんだよー!」

「ま、今は信じなくてもいいさ。どうせ戦闘になったら、嫌でもこいつの強さがわかるんだから」

「…強いだけじゃ何も出来ないがな。とりあえず、とっとと行こう!」

 

4人は準備を済ませ、王都を出る。

途中門番が「近くで暴れないでくださいよ!大変だったんですから!」と愚痴ったが、ローウェンは手を振るばかりでスルーした。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

ヤチェ村へ向かう道中、王都を出て3時間ほど経った頃。

4人の前に、体長3メートル程の巨大な鳥型の魔物が現れた。

魔物は4人を喰らおうと、口を大きく開けて空から突進してくる。

 

「ローウェン」

「ああ、わかってるさ。勇者さま、ユイ。しゃがんで口を大きく開けておきな」

「なんで?」

「わかりました!ユイちゃん、急いで!」

「え、うん」

 

ふたりがしゃがんだのを確認すると、ローウェンは拳を握った。

 

「ふんッ!」

 

轟音。

ローウェンが放った拳―そこから発生した衝撃波は、魔物の嘴を正面から砕き頭を吹き飛ばした。

頭部を失った魔物は、地上へ落下する。

恐る恐る目を開けたノエルとユイは、目の前の首のない魔物に驚きの声を上げた。

 

「え、ええぇぇぇええええ!?」

「嘘…。バーバディを、一撃で……?」

 

先程の鳥型の魔物、バーバディ。

巨大な肉体と獰猛な性格で知られる、強力な魔物の一体である。

鋭い爪と長い嘴が特徴的で、知能は低いが恐るべき身体能力を誇る危険な魔物の代表格だ。

以前この魔物が王都を襲った時、王国の騎士が4人がかりで何とか退治したことからも、並の強さでは無いことが窺える。

そんな魔物を、わずか一撃、しかも触れてさえいない状態で退治したローウェンは、ぽかんとした顔を浮かべるノエルとユイに手を振った。

 

「おーい、もう大丈夫だぞー」

「…ノエル、ローウェンって何者?」

「…さ、さあ?凄い人ってのはわかるんだけど」

「『百龍狩りのローウェン』って聞いたことないかい?」

「ーッ!それって、ペール村の?」

「お、知ってるのかい。そう、ペール村を襲った魔物の軍団、『百龍魔軍』を1人で滅ぼしたのがあいつさ」

「ユイちゃん、知ってるの?」

「母さんが言ってた。昔、ペール村に住んでたって。物凄い強い騎士の人に助けられたって」

「へぇ、あの村の生き残りの子だったのかい」

「ん?どうした?」

「あ、ローウェンさん。ユイちゃんにローウェンさんの話を聞いてたんです」

「あ、バカやめ―」

「ユイちゃんのお母さん、ペール村の方らしくて。ローウェンさんに助けられたんですって!」

 

その瞬間、ローウェンが纏う雰囲気が変わった。

先程までの明るい表情は消え、能面のように無機質な目でユイを見る。

 

「な、なに?」

「ユイ。君のお母さんの名前を聞かせてもらえるかな」

「ミ、ミーシャ。ペール村の、ミーシャ」

「…ありがとう。怯えさせてすまなかった」

「う、ううん。大丈夫」

 

ローウェンは大きく息をついた。

少しでも冷静になろうと頭を振るローウェンに、ノエルが声をかける。

 

「ろ、ローウェンさん。ユイちゃんのお母さんと、お知り合いなんですか?」

「ああ。……当時、ミーシャはまだ15でな。両親と婚約者を、魔物に殺されている。しかも、目の前でな」

「え―」

「あの子は魔物に人生を壊された。しかも今、夫に成り代わられて娘まで心を壊された。―許さんぞ」

 

ひゅッと喉が鳴った。

自分に向けられた訳でもないのに命の危機を感じる程の殺意。

ローウェンとは出逢って間もないが、いつも明るく優しい人だと思っていた。

なんでも奢ろうとしたりマントを着せようとしたりと変わってはいるが、暖かな人だった。

そんな彼が、怒っている。

ノエルは、無意識に腰に提げた剣のグリップを握った。

何かを握っていないと、恐怖で手が震えそうだった。

 

「ローウェン、今怒ってもどうしようもないだろう。その怒りは、魔物にぶつけな」

「アンジェ…そうだな。よし、じゃあ急いでヤチェ村へ向かおう。勇者さま、ユイ。俺の肩に乗れるか?」

「へ、肩?」

「肩。少し走るから、肉体強化のできるアンジェはともかく2人は着いて来れないと思う。だから俺が肩に乗せて運ぼうと思うが、良いか?」

「…うん。良いよ」

「ぼ、ボクも大丈夫です!」

「よし、じゃあ乗って…そうそう。腕をあげておくから、しっかり掴まっていてくれ」

「は、はい!」

「お、おお。高い。楽しい」

「うん、2人とも大丈夫そうだな。アンジェ、いけるか?」

「ちょっと待っておくれ。……よし。あ、2人にも落ちないように『空間安定』と『振動制御』をかけとこう。これであまり揺れを感じないし、揺れても投げ出されることは無いよ」

「ありがとうございます!」

「ん、ありがと」

「すまん、助かる。―よし、じゃあ行くぞ」

 

ドンッ!と爆音と土煙を上げ、ローウェンは駆ける。

その斜め後ろにアンジェが着いてきているのを確認して、ローウェンはアンジェが出せる最高速度に合わせて走った。

 

「ユイ。こっちで合ってるか?」

「うん。その山の中腹に村がある」

「アンジェさん、大丈夫ですか?」

「はぁ…はぁ……。ま、待って、くれ。話し、か、けられると、困、る………」

「アンジェ、運動不足か?速度が落ちてるぞ」

「ロー、ウェン。なん、で、私より、速い、んだ…。わ、たしは、まほ、ゴホッ…魔法、つ、使って、るんだぞ」

「この程度なら鍛えれば余裕だ」

「いや、無理だと思います…」

「うん、無理。ローウェンがおかしい」

「あれぇ…?」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

ヤチェ村に着いた一行。

ぶっ通しで走り続けた結果、酸欠で死にかけていたアンジェが回復するのを待ち、一行は村へ突入した。

村は一見何の変哲もないのどかな村だったが、ノエルは違和感を覚える。

「あの、ローウェンさん。この村、なんか変じゃないですか?」

「気づいたか。ユイ、この村には家の数的におよそ50人くらいが住んでると思うんだが、合ってるか?」

「うん。46人。最近ロイとマーダの家に子ができて、47人になった」

「…詳しいな?」

「爺ちゃん、この村の村長。よく村の話をしてくれる」

「なるほど、村長の孫だったのかい。道理で村に詳しいわけだ」

「お、アンジェ。もう大丈夫なのか?」

「ああ、大丈夫さ。もう二度と走りたくはないがね。それでローウェン、この村には47人が住んでいるとの事だったが―」

「ああ。ノエル、この村に入ってから、人を見たか?」

「…いいえ、1人も。農作業をする人も、洗濯物を干す人も、広場で遊ぶ子も、いませんでした。そんなことって有り得るんですか?」

「いいや、有り得ない。普通なら、な」

「……不味いね。手遅れかもしれない」

「急ごう。ユイ、君の家に案内してくれ」

「うん。こっち」

 

ユイを肩に乗せ、一行はユイの家へ向かう。

ユイの家は、村の端、森の隣にあった。

 

「ここ。私の家」

「…嫌な匂いがするね」

「こ、これ…血の匂い、ですよね?あと、もうひとつ別の嫌な匂い……」

「ああ。…これは、魔物が放つ魔力の臭いだ。俺たち人間は、魔力を生成、貯蔵する臓器を持たない。だから違和感や臭いとして、魔力を感じるらしい。もっとも、魔結晶の時は感じなかったから、眉唾物だがな」

「ともかく、この臭いがするということは中に魔物がいるということだ。準備はいいかい?」

「勇者さま、ユイを守っていてくれ。俺が魔物を家から追い出し、外でけりをつける。その間にアンジェが家の中にいるユイのお母さんを救助、または処理する」

「処理って…」

「ユイには悪いが、最悪のパターン―殺され、魔物の苗床になっている可能性があるからね。その場合は焼き払い、魔物の発生を抑えなければいけないんだ」

「でも、ユイちゃんが可哀想です!」

「ううん、大丈夫。母さんが言ってた。『誇り高く生きろ』って。魔物の苗床になるくらいなら、母さんは死を選ぶ」

「ユイちゃん……」

「勇者さま、覚悟を決めな。この中で一番あまっちょろくて、現実を見てないのはアンタだ」

「アンジェ、やめろ。勇者さま…辛かったら、下がっていていい。ユイと一緒に、安全な…そうだな、物置とかに隠れていていい」

「い、いいえ。ボクは勇者ですから。でき…できます。やります」

「……そうか。じゃあ、行くぞ!」

 

バン!と扉を勢いよく開く。

薄く笑い部屋の中には、女性が倒れていた。

顔色は悪く、息も絶え絶え。

一刻も早く治療が必要な状況であるが、まだ息はある。

しかし問題は魔物の姿が見えない事だった。

 

「―お母さん!」

「あの倒れているのはユイの母親だね」

「魔物が、いない?」

「いいや、いる。俺の目を誤魔化せると思うな、魔物」

 

ローウェンはツカツカと部屋に入ると、ユイの母を抱き抱えた。

 

「アンジェ!」

「ああ、わかっている!」

 

アンジェはローウェンとユイの母へ杖を向けると、白色の光が2人を包んだ。

光はローウェンとユイの母を包んだかと思うと、一瞬広がり、ユイの母だけを包み込む。

ユイの母は無表情で倒れていたが、突然苦しげに呻き、暴れだした。

 

「アンジェさん!?」

「お母さん!」

「ローウェン、今だよ!」

「ああ!―お、オォォオオオオアア!!」

 

咆哮。

ローウェンはユイの母―の中に潜む魔物へ敵意を篭めて、咆哮した。

アンジェの魔法により傷つけられ悶えていた魔物は、目の前の敵へ牙を剥く。

ユイの母は、両手でローウェンの首を絞め始めた。

爪が皮膚にくい込み、ローウェンの首から血が漏れる。

 

「ローウェンさん!」

「大丈夫だ!―カァッ!!」

もう一度、咆哮。

今度はユイの母にのみ向けた、短いが殺意と敵意を存分に篭めたものである。

魔物は自身に向けられた濃密な殺気により狂乱し、ユイの母から飛び出した。

 

「よし、出てきたな」

「赤い瞳に質量を感じさせない黒い身体…。まさかとは思っていたが、本当にドッペルゲンガーだったのかい」

『■■■■■■■■■ー!!』

「なんて言ってるか全くわからんが……逃がさんぞ」

 

ユイの母から現れた魔物は、人型の黒い影、ドッペルゲンガーと呼ばれる魔物である。

ローウェンは魔物の首を掴むと、暴れる魔物の腹部へ拳を叩き込んだ。

 

「―じっとしていろ。次動けば腕を捥ぐ」

「どっちが悪役だったかな?まあいい。勇者さま、ユイ。こっちは彼女の治療だ。魔物が体内に入っていたのだから、ちと面倒ではあるが…安心しな、キミの母親は助かるよ」

「―ッ!うん…!」

「勇者さま。私は今から治療にかかりきりになる。ユイちゃんを守っていてくれ」

「わかりました!まだ剣の使い方も分からないし、不安だけど……頑張ります!」

「…ふふ、流石は勇者さまだね」

 

アンジェがユイの母、ミーシャの治療を始めた頃。

ローウェンはドッペルゲンガーを連れ、ユイの家の隣の森にいた。

 

「よし、ここなら邪魔は入らないな。周りを巻き込む心配もない。―行くぞ、貴様は塵ひとつ残させん」

『■■■■■■■■■!!』

 

ローウェンとドッペルゲンガーの戦闘が始まった。





ご覧頂き、ありがとうございます。
この作品を見てくださっている方、感想、評価等この作品を応援してくださる方、ありがとうございます。
これからもどうぞ、この作品をよろしくお願いします。

P.S.
新米ニルスさま、誤字報告ありがとうございました。

作品の路線を見失ったため、書き直してもよろしいでしょうか。

  • いいよ!(ほのぼの系に書き直し)
  • ダメです(R-15のまま続行)
  • えぐめマシマシで(R-18Gへ路線変更)
  • 別作品としてほのぼのを書けば?
  • 別作品としてR-18Gを書いて♡
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