勇者一行とバケツさん   作:(`・ω・´)ノ

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第7話です。
楽しんで頂けたら幸いです。


第7話 勇者ちゃんと霧の魔物

ノエルとアンジェはユイの家へ入った。

さすがに家の外に置き去りは可哀想だったため、ローウェンも家に入れ部屋の外で待っていてもらい、2人はユイに続いてミーシャがいる寝室に入る。

ミーシャは、ベッドに横たわり、上半身だけ起こして2人が来るのを待っていた。

 

「…あなた方が、ノエルさんとアンジェさんですか?」

「は、はい!ノエル・ホワイトです!」

「アンジェリカ・フローレンスだ。体調はどうだい?体力回復に加えて念の為に解毒と状態異常回復の魔法もかけたから、問題は無いと思うが」

「はい。おかげさまで、いつもよりも調子が良い程で…。操られていたユイを保護し、私まで助けてくださって…本当にありがとうございます」

「構わないよ。私はただユイが放っておけなくてね」

「ぼ、ボクは何もしてなくて…。ただ着いてきただけですし」

「それでも、ありがとうございました。貴女方のおかげで、私も、ユイも、命を救われました」

「お母さん、もう1人いる。魔物倒してくれた人」

「まあ、じゃあその方にもお礼を言わないと…」

「ん、連れてくる。―ローウェン、来て」

「…ローウェン?まさか……」

ミーシャは目を見開く。

ユイが連れてきたのは、12年前、自分を助けてくれたあの人だった。

 

「この人。ローウェン」

「やあ。無事でよかった」

「ろ、ろろろローウェンさんッ!!?」

「わ、びっくりした…」

「驚いた。そんな大声出せたんだねぇ」

「お、嬉しいな。覚えていてくれたのか」

「まさか!一時も忘れたことはありませんでした!―ゴホッ」

「ミーシャ、あまり大きな声を出さない方がいい。魔法をかけた時に分かったが、キミはあまり体が強くないからね」

「は、はい……。ろ、ローウェンさん。あの時も、そして今回も。私と、私の大切な娘を救って頂き、ありがとうございました」

 

「ま、百龍の時はユイはいなかったがね」

「アンジェさん、今いいところですから静かに」

「…い、言うようになったね」

 

ミーシャは、12年前の百龍の件での感謝とあれから今の旦那と出会い、ユイを産むまでの話をする。

ローウェンはそれを聞き、時には冗談を言って、笑い合った。

大きな声で笑うミーシャを見て、ユイは微笑む。

家にいた頃、父は余り喋らない人で、ミーシャもそれに習って静かな人だった。

ユイが絵を描いたり、甘えたりすると微笑んだが、今みたいに大きな声を出したり声を上げて笑うことは少なかった。

静かな母も好きだったが、ユイとしては今の大きな声で笑うミーシャの方が自然で好ましく思える。

「…お母さん、嬉しそう」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

2人の話が一段落着いて。

ローウェン達は、この村のことについて尋ねた。

 

「なあ、ミーシャ。俺たちは村を通ってここまで来たが、道中村人を見かけなかったんだ。一人もだ。この村に何があったんだ?」

「ユイちゃんの話だと、少なくとも47人はこの村に住んでるはずなんですけど…」

「そう、ですね…。みんな、食べられました」

 

場が凍った。

 

「食べられた、って……何にですか?」

「信じて貰えないかもしれないんですが…『霧』です」

「きり?きりってあの、白いやつかい?」

「そうです。あの視界を遮る白い霧です」

「霧型の魔物ってことですか?」

「影の魔物ならいるが、霧の魔物なんているのかい?」

「俺が知る限りではいない。新種か…?」

「魔物、なんでしょうか…。とにかく、霧に皆やられました。村を覆い、外に出ていた者は霧に覆われ、姿を晦ましました。窓を開けていると、窓から入ってきて、食われました。私は、あの魔物がいたからでしょうか、襲われることは無かったんですが…お隣の方もお向かいの方も、皆音もなく消えました」

「霧、か…」

「襲われなかったとわざわざ言うってことは、遭遇はしたようだね」

「はい。戸を開けた途端に霧に覆われ、舌で舐められたかのような不快感を感じました」

「なるほど、だから捕食か」

「はい。舌で舐められたような気持ち悪さの後、吐き出されたかのように勢いよく吹き飛ばされて、リビングまで飛んで…お恥ずかしながら気絶していました」

「…待て、それはいつの話だ?」

「えと、つい先程です。気がついたらユイやノエルさん、アンジェさんが近くにいてくださったので―」

「不味いぞローウェン」

「ああ。まだ近くにいるってことだ」

 

ローウェンとアンジェはミーシャとユイに背を向け、武器を構えた。

一瞬遅れて、ノエルも剣を構える。

ローウェンは窓を睨みつけた。

先程まで晴れ遠くの山が見えていたのに、いつの間にか一寸先も見えないほど濃密な霧に覆われている。

 

「あれ、のようだね」

「しまったな。家の外なら吹き飛ばせるんだが…」

「家の中だからね。アンタが斧を振ると家ごと吹き飛ばしちまうよ」

「い、今霧に目がありました……」

「「え?」」

 

ローウェンとアンジェは窓を見る。

しかしそこには何も無く、ただ白い霧が広がるばかりだった。

 

「何も無いじゃないか」

「え、ほら!今も!こっちを見てるじゃないですか!」

「……アンジェ。魔力を俺たちにも見えるように可視化することってできるか?」

「ああ、できるよ」

「じゃあ頼む」

「任せな。5秒とかからず仕上げてみせるよ」

 

アンジェは目を閉じ、杖を窓に向けた。

アンジェの力で魔力に色を着け、魔力が見えるようにする。

結果―

 

「ひッ!」

「ミーシャ、ユイ!見るな!」

「…驚いたね。勇者さま、キミが見た『目』ってのはこれかい?」

「は、はい。こんなにはっきりとは見えてなかったですけど…。まさか、家の中にあるとは思いませんでした……」

 

窓の内側に、巨大な目玉が浮かび上がっていた。

目玉はぎょろぎょろと忙しなく動き、こちらを観察している。

目が合った瞬間嫌な感じがしたローウェンは、ミーシャとユイを背後に隠した。

 

「いい判断だよ、ローウェン。先程あれと目が合ったが、一瞬だけだがかなりの生命力が吸われた。ミーシャとユイなら、一瞬で干からびるほど持っていかれるよ」

「マジか。俺は吸われた感じはなかったが…」

「アンタ程になると、吸われるより回復の速度の方が早いからね。並の人間が目を合わせるとまずい。勇者さま、キミも気をつけていたまえ」

「は、はい!わかりました!」

「それにしてもまさか、私でも感じ取れなかったこの微弱な魔力を感じ取るとは。流石は勇者さまだね」

「そんな、大したことじゃないです」

「いや、大したもんだ。勇者さまが言ってくれなきゃ、窓に近づいた途端に俺らは食われてたかもな。お手柄だ」

「さて、勇者さまのおかげで敵も見えた。口があるのはミーシャの話でわかっていたが、まさか目もあるとはね。視線から感じる人類への敵意と殺意、こいつは間違いなく魔物だ」

「ああ。しかもこの嫌な感じからして、おそらく俺が倒したドッペルゲンガーと同じく魔結晶から産み出されたやつだ」

「二体で組んでたとみていいのかね」

「それはわからんが…。目など体の一部を壁や窓の隙間から入れることができるなら、口もこちらに入ってこれるとみていいだろうな。入ってこられると不味いぞ」

「ならどうする?ローウェン」

「決まっている。魔物なら屠る。それだけだ」

「でも、どうやってですか?家の中にいたら倒せないし、外に出たらその瞬間食べられちゃいますよ」

「うむ、そこなんだよな。ミーシャとユイに迷惑をかけず、この家を傷つけずに霧の魔物を倒すにはどうすればいいか……」

「ローウェン、外に出ればあいつを吹っ飛ばせるかい?」

「ああ。霧だから斬撃や打撃など物理攻撃は効かないかもしれないが、風圧で散り散りにできる」

「よし。なら私が道を作ろう。ーミーシャ、魔法を使うが良いね?」

「はい。構いません」

「じゃあ行くよ。ーふッ!」

 

アンジェは杖をローウェンにかざした。

その瞬間、杖から暴風が吹き荒れ、ローウェンの背を押す。

ローウェンは風に乗って加速すると、戸を壊さないように慎重に、しかし手早く開閉し、外へ出た。

外へ出ると同時に霧がローウェンを包もうとするが、アンジェがかけた暴風が霧を遮る。

 

「オオォォオアアア!!」

 

ローウェンは刃を横にし、斧を下から上に切りあげた。

斧を巨大な団扇のように扇ぎ、霧を晴らす。

霧はローウェンが起こした暴風により散り散りになったが、少し離れたところでまた元の形へと戻る。

 

「…霧だからな、吹き飛ばしても効果は薄いか。やっぱ核を狙わなきゃ…にしてもこいつの核ってどこだ?」

「ーやァッ!」

 

ローウェンが斧を構え直した瞬間、ノエルの気合いと共にユイの家の寝室の窓からノエルが借りた剣が投げられた。

素人が投げたとは思えないほどまっすぐ飛んだ剣は、霧に飲み込まれて姿を消した。

しかし霧は剣を飲み込んだかと思うと、広がったり縮んだり薄くなったり濃くなったりと暴れだした。

 

「ローウェンさん!核は霧の中心にあります!ボクの剣が刺さってると思うので、それを目印にしてください!」

「分かった!助かったよ、勇者さま!」

 

ローウェンはもう一度斧を振り回し、霧を払う。

霧の魔物は自身の体のほとんどを消し飛ばされたが、それよりも核のダメージが大きかったのだろう。

剣の刺さった拳大の紫色の結晶が、光を反射しきらりと光る。

 

「行くぞ!オーッラァッ!!」

 

ローウェンは思い切り斧を核に叩きつけた。

核を粉々に砕かれ、霧の魔物はその身を保てなくなり霧散する。

 

「ふう、討伐完了っと。勇者さまー、ありがとなー!」

「お役に立てて何よりですー!」

 

ローウェンはノエルに手を振ると、霧の魔物の核に突き刺さっていた剣を拾い上げた。

剣を色々な角度から光に当て、ローウェンはつぶやく。

 

「さっきこの剣…金色に光ってなかったか?この角度ならーいや、違うな…。もっとこう、反射っていうか放出?してたみたいな…」

「ローウェンさん、大丈夫ですか?どこかケガでもー」

「ああいや、大丈夫だー。すぐ行くー。……まあ、考えてもしょうがないか。アンジェに聞こう」

 

窓を開けこちらを見つめるノエルに手を振り、ローウェンは立ち上がった。

 





ご覧いただきありがとうございます。
最近少し忙しくなり、書き溜めがない状態で連日投稿するのが難しくなったため、しばらくして忙しさが落ち着くまでは2-3日に1話程度のペースで書いていこうと思います。
ちゃんと完結はさせますので、安心してご覧下さい。
感想、ご意見等ございましたら、気軽にお書きください。

作品の路線を見失ったため、書き直してもよろしいでしょうか。

  • いいよ!(ほのぼの系に書き直し)
  • ダメです(R-15のまま続行)
  • えぐめマシマシで(R-18Gへ路線変更)
  • 別作品としてほのぼのを書けば?
  • 別作品としてR-18Gを書いて♡
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