「…なんで何も反応がないのよ」
ジュンが不機嫌そうな顔でつっこむ。
「いやぁ…反応しずらいというか…」
「これは俺らも自己紹介する流れ…か?」
「そういえば分かんないわね、貴方達の名前」
気付かなかった、という風に反応するジュン。この人本当に博士なんだろうか。
「シュン、16歳です」
「えぇ…ソラ、同じく16歳…です?」
「リョウ、同じく16歳です」
改めてこう自己紹介をしてみると小恥ずかしいというか…
てかソラはなんでそんな疑問形なんだよ。自分のことだろ。
ソラは昔から少しコミュ障気味なところがある。初対面の人に対しては声が上ずったり、言葉に詰まったり。この先知らない人しかいないのに大丈夫だろうか。
「ふぅん…全員同い年か…旬の時期ね♪」
一瞬ゾクリ、と背中を不快感が這いずった。
旬の時期って…
「ま、いいわ。シュンにソラにリョウ、覚えたわ。よろしくね。
で、早速なんだけど私のラボに来てもらうわ。着いて来てちょうだい」
あれから5分程度歩いただろうか、門に入って真っ先に広がっていた商店街の横道をしばらく道なりに進んでいくと…
「…民家?」
「失礼ね、立派な私のラボよ」
レンガ造りの一般的な家に着いた。
いやこれをラボと言われても信じられない、どっからどう見てもここまでの道で見てきた民家だ。カモフラージュ的な効果があるのだろうか?だとしたら絶対に分からないだろう。少なくとも俺は自信無い。
「ま、取り敢えず入りましょう」
「お邪魔します…」
家の中に入ってみると、やっぱりマジで普通の家だった。
床は木造、壁はレンガ。入って右側には台所や竈、左側にはベッドや机や椅子などの生活スペースが広がっている。
ジュンは家に入るなりそのまま直進し、何も無い床をひたひたと触り始めた。
「やっぱ民家だろ。これの何処がラボなんだ?」
「外見までそれらしくしちゃ不味いからね。私のラボは隠されてるのよ」
「…それは外部に漏れては襲われる可能性がある、他国や平民にとって反感を買うようなモノと判断していいのか?」
「いいえ?寧ろ国や人には尊敬して欲しい位のものだわ。私が襲われる危険のあるものはそれじゃない。……お、あったあった。」
ジュンがそう言い、触っていた床の一部を強く押す。ガコンッという音が聞こえた後、どういう仕組みか押した部分を中心に床が正方形に沈み、恐らく鉄製の梯子がかかった穴が出てきた。
「ほら、この下が私のラボ。最近はあんまり出入りしてなかったから鍵探すのにちょっと時間かかっちゃったわ。…こういう秘密の地下みたいなのってちょっと興奮しない?」
「すっげえわかります…初めて見た…」
すっごいわかる。これを嫌いな男子はいないレベル。ましてや厨二病真っ盛りの高校生男子には刺激が強すぎる。
…そんなことを思っているとジュンが梯子を降り始めた。それに釣られてリョウ、ソラが降り始める。
俺も降りようと梯子に足をかけた時、ふと家のドアが閉まっていないことを思い出しドアへ戻る。
「…知られちゃいけないのになんで閉め忘れるかねあの博士」
ドアを閉め、鍵をかけると背後の穴の中からジュンの急かす声が聞こえた。
あんたのせいで遅れてんだよ。
俺はそこそこ急ぎつつ地下へと進んだ。
地下に入ってみると、橙色の明かりは点いてはいるが少し暗い。
少し先の薄い明かりで照らされている机には資料の山。その右側に設置されているのは四肢に付ける枷が鎖で繋がれている台。その脇には鋏やナイフの置いてある台がある。
「これは…」
少し先にジュンが見える。その後ろにリョウとソラ。2人もこの部屋を興味深そうに見回している。…暗いのはちょっと苦手だから2人に近づこう。
「…さて、みんな来たわね。ここが私のラボ…『モンスターラボ』よ!」
……
「な、なによ!なんでそんな固まって黙り込むわけ!?もうちょっと反応くれてもいいじゃない!?」
「なんていうか…名前がなんの捻りもないのが逆に…」
「…もう少し何かあるものだと」
「く、くぅ……まあ、まあまあまあ、まあいいわ!この素晴らしさが分からないのは許すとして…本題はここから!」
ジュンが改まって話し始める。
「見て分かる…というか名前を聞いて分かるように、ここはモンスターについて研究をしている所。貴方達にはこのモンスターの研究の手伝いをして欲しいの」
「モンスターの研究…?具体的には何をすればいいんだ?」
「貴方達にやってもらうのは研究材料の収集、つまりモンスター本体、及びモンスターの素材の収集をしてもらうわ」
そう言うとジュンは少し奥へ行き、人一人が入れそうな程の大きな、ホコリを被った箱を持ってきた。中からはガラガラと金属がぶつかり合う音がする。
「この中に色んな武器が入ってるわ。自分の使いたい、慣れている武器を好きに持って行って。壊したらとかは別に考えないでいいわ。どうせ私使わないし。」
箱の中身を見てみると、片手剣、槍、弓、盾…どれも厨二心を擽られるような西洋の武器ばかり。
「すげぇ、本で見た様な武器がいっぱい…!」
「どれにするか少し迷ってしまうな…」
「…やっぱ俺はこれだな!」
俺は目に付いた両刃の片手剣を取る。想像していたよりも金属のずっしりとした重みがあり少しよろけるが、少し力を入れれば全然耐えれる範囲のものだった。
少し剣を振ってみると、ここでこんなことを思うのも少し変だが自分が本当に異世界にいる、自分が何かと戦うという実感が湧いてなぜだか感動してきて、同時に興奮もしてきた。
「うーん…これもいいしなぁ…でもこれも捨て難いっ!」
「…なぁジュンさん、盾だけでもいいんだよな?」
「? 盾だけ?まあ別にいいけどそれだけで大丈夫なの?」
「あぁ、これがいい。」
「そう?なら好きにするといいわ。」
リョウは少し大きめの盾を取ったようだ。縦に長い、菱形の一角だけを延ばしたような広めの盾。元々身長の高いリョウが持つとその盾はなんというかイメージ的にピッタリだった。
「本当に盾だけで良かったのか?」
「あぁ。何故だか分からないが、一番これが自分に合うと思ってな。」
「あ、盾で思い出したけどシュン。片手剣を使うのなら小さい盾も持っておいた方がいいわ。」
そう言うとジュンは、箱から探り出した小さい丸型の盾を投げ渡してきた。受け取る瞬間、やっぱり案外重くてよろけてしまった。フィジカルが弱すぎる。鍛えよう。
「…で、ソラはまだ迷ってるのか?」
「これも良い…これも良い…!」
「…これは決まるまで少しかかりそうだ。」
「…うーんよし、これだ!」
ソラは高々と木製の弓を掲げる。迷うの長すぎだろ10分くらい待ったぞ。ちょっと剣に慣れてきたレベルだわ。
「弓ね。矢はどれくらいあったかしら…」
「決めるのに時間かかりすぎちゃったなぁ…でもすげぇ今楽しい!」
「まあ無事に会う武器が見つかって良かったな」
「にしても決めるのが遅いような気もするがな」
「それは…ごめーん…」
ソラが苦笑いをしたところで、ジュンがコホンッ、とわざとらしい咳払いをした。
「それじゃ、武器も決まったところだし早速モンスターを倒しに…と行きたいところだけど、ちょっとその前にやらなきゃいけないことがあるのよねぇ…」
「なんだ?それは」
「正直私はあんまり行きたくないんだけど…『