今回はソラです。
「うし!じゃあ別行動開始だな!みんな気をつけてくれよ!」
宿屋の扉の前、朝日が俺らの顔を照らす。
異世界に来て初めて…じゃないか。初日からが濃すぎるからなぁ…今日が三日目って事を完全に忘れてたぜ…
まあとりあえず、無事に朝を迎えられたってのはいつでも祝福すべきことだもんな!
「一番危なっかしいお前が言うか?」
「僕もついて行くから、なるべく見張ってはおくよ…」
「すまないリア、迷惑をかける。」
「いやいや!そんなこと思ってないって!」
なんだよ!シュンもリョウも!
俺っていつも何かやらかしてんのか!?
「みんな俺の事をなんだと思ってんだ?!」
「歩く核爆弾」
「人間の形をした災害。」
「あはは…」
「おーまーえーらー!」
全く、人のことを散々言いやがって…
今に見てろ!今日の依頼でデカイ成果を上げてギャフンと言わせてやるからな!首を洗って待っとけ!
「はぁ…とりあえず、ここからは別々だ!みんな頑張れよ!」
「言われなくともそうするさ」
「もちろん。」
「頑張るよ!」
みんなの威勢のいい声が響く。
うん、いいなこういうの!冒険感が強まるってもんだ!
「よし、それじゃ行こうぜリア!」
「う、うん!」
「後でどんな魔物倒したか教えろよー!」
「あったりめえよ!」
リアと一緒に探索者集会所へダッシュする。
今日は何のモンスターと会えるのか楽しみだぜ!
「うひゃー、結構登るのキツイな…」
「ある程度整備されてるとはいえ、普通に山だからね…」
俺たちは今、アルデス王国の北部にある山岳地帯に来ていた。
今回受けた依頼は、この山岳に棲みつく『ルイユイ』って生物を倒すものらしい。
その『ルイユイ』ってのが、リア曰くちょっと面倒な鳥らしい。
鳥って弓で狙うの結構難しそうだけど…けどリアがいるから何とかなるかなとは思っている。
けどダメだなあ。すぐこんな誰かがいるからって考えになるのは。
もっと成長しなきゃ、この世界じゃやっていけないんだろう。
どうにかこの弓の感覚だけでも掴みたい!
気合いを入れ直し、山登りを続けた。
「あぁー!疲れた!」
「結構斜面がきつかったね…」
入れ直した気合が全部山登りに使われた気がする…
とはいえ!目的の『ルイユイ』がいるところに着いた!
善は急げだ!早いところ終わらせよう!
「よぉしリア!早速そのルイユイを倒すぞ!」
「あっソラ、ルイユイは知能が高くて、商人の荷物が見えてから襲いかかってくるんだ。この山岳の道はアルデス王国とリクシディア共和国を繋ぐ唯一の道で商人にとっては命も同然。ルイユイはそこを狙ってくる。だから何も無い僕たちが来ても反応はしないよ。商人が来るのを待たないと…」
「な…なるほど…?」
とりあえず商人が来るまでは待たなきゃ行けないってことか…
と思った矢先、ガラゴロ…とおそらく木製の車輪の音が向かい側から聞こえた。
「い…急がないと…!」
息を荒げながら荷台を引く、丸々とした人が登ってきた。台の上に何かを詰めた袋がごろごろと転がっている。
こりゃ十中八九商人だろ!ってことは…
「ソラ!ルイユイが来た!」
「しゃ!やっぱりな!」
気持ちいいほどの真っ青の空の下、なんか鳥をめっちゃ筋肉質にしたみたいな生物が山の影から十匹くらいすっ飛んできた。
すかさず弓と矢を構えて弦を弾く。
狙え狙え〜…?
「ここでどうだ!」
パチッという音と共に勢い良く矢が空へ飛んでいく。
このまま行けば当たるけど…
「「あっ」」
リアと声が重なる。
普通に避けられた。そりゃそうか。
しっかしこんなんこの距離からは無理ゲーじゃねえか?
「僕も行くよ!『────』」
「お、おう?リア?」
リアがよく分からない言語を喋り始めた。
手に持った杖に祈るみたいに目を瞑って…
「『スタースパーク』!」
そう言って杖を突き出すと、杖の先から眩い閃光が飛び出してきた。
瞬く間に閃光はルイユイへと届き、命中した三匹は飛び続けるのが困難になるほど怯んだ。
「今だよソラ!」
「えっ、あ、おう!」
リアの行動に呆気にとられすぎていた。急いで矢を構え弦を弾く。
さっきとは違い動きの鈍いルイユイは、そのまま胴を貫かれ重力に従い落下する。
「しゃあ!ナイスだリア!」
「この調子で行こう!」
リアと互いを励まし合う。後ろから商人の驚いた声が聞こえた。まだいたのかよ。
にしてもほんとにこの世界は魔法があるんだな…さっきのリアの謎の言語は『詠唱』だったんだろうな…
…あれ?俺たち詠唱なんかしてないのに使えてたけど…なんでだ?
試しに手に火を出してみる。ふわりと小さい炎が出てきた。
ちょっと集中しないといけないけどちゃんと出せるようにはなった。昨日の夜練習した甲斐があったな!布団をちょっと焦がしたのは内緒だ。
けどやっぱり詠唱なんていらないし…
「『スタースパーク』!」
リアの声が耳に入る。と同時に閃光が辺りを包む。
やっべ!矢の準備!急ぎすぎて矢筒から二本取っちまった!戻さないと…いやちょっとやってみるか!
好奇心で二本矢を弾いてみる。弦引っ張るのきついな…けど!
「ほら行けっ!」
バチッと二本同時に矢が空に飛んでいく。勢いは一本の時よりかなり弱いけどどうだ?
矢は二手に分かれ、なんとかどちらとも矢はルイユイに命中しそのまま落下する。貫通はしなかったな…
けど二羽同時にやれたのはデカイ!今度二本練習してみるか?
今はまだ一本ずつでいい!とりあえず全員撃ち落とす!
そのままリアとのコンビネーションで次々とルイユイを討伐して行く。
ルイユイが飛びかかってきてちょっと頬をかすったけど、そのまま首根っこ掴んで地面にたたきつけて矢を突き刺した。人間舐めんな!
「ようやく最後の一匹だな!」
「ちょっと疲れたよ…でも最後だからね!『スタースパーク』!」
例の如く、リアの雷はルイユイへと命中し、そのまま怯む。
そこを俺の弓で…射抜く!
俺が弾いた軽快な音はそのままルイユイへと直行し、胴へ突き刺さ──
ビュン!
──ることは無く、黒い影が持ってきた突風によって矢は山岳の奥へ吹き飛ばされていった。
その突風で俺達も少し目を瞑らされる。目を開けると、ルイユイの姿はもう無かった。
「な、何!?」
「今なんか影が!」
視界の端、太陽の逆光で俺たちの足元へ影を落とす何かが佇んでいた。
「おい、あれって…」
「ものすごく大きいルイユイ…」
さっきのヤツらとは比にならないくらいにデカいルイユイが俺たちを見下ろしていた。
「ひ、ひえああああえええええぇぇ!!」
後方から悲鳴が聞こえ振り返ると、さっきの商人がまだそこにいた。
荷台を急いで引き、猛ダッシュで山岳の坂を下っていく。
再び、視界に黒い影が走る。
グシャリ!と荷台に向かって速度を付け着地したルイユイは、そのまま荷台をクチバシで物色する。荷台はボロボロに崩れ、荷物の袋はめちゃくちゃになっている。
幸い、商人は無事なようだが腰を抜かしている。
「逃げるぞ!リア!こんなん勝てっこねえ!」
「う、うん!はやく行こう!」
急いで撃ち落としたルイユイ数匹を回収し、坂を下る。
商人は腰を抜かしたままだ。さすがに見殺しにはできない。
「あんたなにしてんだ!早くしないとやばいぞ!」
「あ、あぁ…!」
うわ言の様に返事をするが、まだ腰を抜かしたままだ。
このままじゃ…
「っくそ!待ってろ!」
リアに回収したルイユイを任せて商人の元へ向かう。
まだデカいルイユイは荷物に夢中なようで、こちらに見向きもしない。
今しかない!
素早くルイユイの足元へ滑り込み、商人を抱えあげる。
「こいつ、重ッ…!」
ここまできてもまだ商人は上の空の状態で、ずっと荷台を見つめている。
それでも引きずって無理やりこの場から離さないとどうなるか分からない。あんまり力は無い方だが、火事場の馬鹿力ってやつかなんとか人一人は引きずれる。今火事じゃねえけどな!
「行くぞリア!全力で走れ!」
とにかくここから逃げろ!
全力で山を駆け下りた。
「はぁ…はぁ…」
「なんとか…無事に降りれたね…」
特にルイユイの攻撃はなかったが、山岳の入口まで死に物狂いで降りてきた。商人も無事なようだ。
コイツ重すぎる、ガチで死ぬかと思った。なんでこんな山乗り越えるくせにこんな太ってんだ。
にしてもあのデケえルイユイはなんなんだ…?
「リア、ルイユイってのはあんなでかくなるもんなのか?」
「僕も初めて見たよ…そもそも小さい種しか見つけられてないし、あんなに大きい個体がいるなんて聞いたこともないよ…集会場に報告しなくちゃ」
「とりあえず王国に戻るか…」
疲弊した重い足をなんとか動かして、王国へと向かい始めた。