「お、おぉ…?」
「今の暴風、もしかしてシュンが?」
「た、多分?」
感覚的には、確実に感触があった。
手を突き出した時、肩から手にかけて痛みのない電流が走ったような感覚がした。そして何より自分の手から風が出ている感触が、確実にあったのだ。
「どうなってんだ…いったい…?」
「すげぇ…」
「やはり、この世界に来た影響?」
「まあ、そう考えるのが妥当だろうな…」
というかリョウ、落ち着きすぎだろ。今さっきまで命落とすかもしれない寸前まで来てたんだぞ。
リョウのメンタルのタフさにはいつも驚かされる。
「だとしたら、俺たち3人全員影響を受けているだろうから俺たちにも使えるのかもしれないな」
「やっぱそうだよな!楽しみだぜ!」
「はは…」
未だに頭の整理がついていない。
たとえこの世界に来た影響だとしても驚きがすごい。自分の身体から風が出るなんて誰が思うだろうか。いやソラなら多分思ってたな。
ソラとリョウが先程の俺のような手を突き出す動きをしていた
「うーん…出ないな…」
「なにかコツや条件がいるんだろう。シュン、さっきの風を出した時の感覚、思い出せるか?」
「さっきの感覚…こう、肩から腕にかけて電流がずっと流れていくような、そんな感覚がしたんだ。」
「電流〜?」
そんな事言われても今の一瞬の感覚を、それも驚きで頭が回っていない状態で言語化しろと言われると厳しい。
「電流のイメージ…こうか」
そういうとリョウは手を突き出した。
その手の先には手のひらサイズの水の塊が浮かんでいた。
「おぉ!」
「すげぇぇぇ!」
「なんとなく感覚は掴めたようだ。俺は血液が一気に流れ出す感覚がしっくりきたな。」
「電流…電流…」
ソラも手を突き出す。
その手の先にはリョウの水の塊よりほんの少し小さい火の塊が出来ていた。
「うぉぉぉぉぉぉ!!すげえぇぇぇぇぇぇ!」
「やっぱり…これが異世界の影響か…?」
「だろうな。それと、この身体の中に電流が流れるような感覚、というのは元の世界の方でも聞いたことがある。『氣』と呼ばれる人の身体の中にあるオーラを操り、攻撃に転用する。武術なんかでよく耳にする語だ。」
「元の世界の方でもそんなのがあったのか…」
リョウの話に返事を返したその直後、糸が切れたように身体がぐたりと倒れ込んだ。
どっと疲れが全身にのしかかる。
「うぁ…なん…で…」
「シュン!大丈夫か!?」
「本当にこの能力が『氣』を使っているのなら、『氣』というのは本来その生命体を動かすためのエネルギーだ。当然『氣』を使い過ぎれば体を動かすエネルギーはなくなる。エネルギーがない状態で体は動かせない。今のお前はイノシシを吹き飛ばした爆風で『氣』を使い果たしたんだろう。今日は休もう。ちょうどイノシシ肉も取れた。」
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「にしてもリョウ、お前なんでも出来るな…」
「何でもは出来ないさ。たまたま知識があっただけの事だ」
「いやそれでもすげえよ…」
すっかり日は沈み、星空が綺麗に見えるようになった。
リョウの適切な行動と判断と調理によって、焚き火、焼き猪肉、簡易的な寝床が手に入った。
いやマジでなんでも出来すぎだろ。イノシシの血抜きの作業とか普通知らないし、知ってても出来ないからな。
リョウの素性の謎と、長年一緒にいながらも未だに素性を把握出来ていない悔しさを胸に抱きながら猪肉を頬張った。
「明日はこの森から抜け出して、集落かなにかでも探しに行こうか」
「そうだな。ここで暮らしていくのにも限界がある。」
「そういや、ここに来る途中に丘みたいなとこ見つけたんだ。明日はそこ行ってみようぜ」
方針は概ね決まった。
あとは明日に備えて今十分休養を取るだけだ。
だんだんとワクワクしてきた。こんなにも異世界が興奮が溢れているとは。ソラの異世界好きも分かるようになってきたかもしれない。
この森に潜む脅威を知らないまま、俺たちは眠りについた。